ルゥラ・リリは名の知れた武闘家であった両親と共に、自然豊かな山奥の小さな村で、平穏な日々を過ごしていた。
幼い頃より両親から武術を教わり、将来は悪者から弱者を守ることを夢見て鍛錬を積み重ねた。
修行の時は厳しくも普段はとても優しい両親、そして悩みを何でも打ち明けられる気の知れた友人に恵まれ、充実した日々を過ごしていた。
平穏ながらも充実した日々。そんな日々が崩れ始めたのはリリが10歳になったばかりの頃だった。
ある日、父・アヴェルの元に、彼の恩師・ギグが危篤状態であることを知らせる手紙が届いた。アヴェルは二人にすぐ戻ると告げギグの元へ向かったが、それ以降彼から連絡がくることはなかった。それか3年、アヴェルの居ない2度目の誕生日を迎える娘の暗い表情を目にした母・ミナージュは、もう一度父を探しに行くことを決意する。
母が家を出た1週間後、近所の家に預けられていたリリは、朝目が覚めるとすぐさま異変に気付く。普段はとても賑やかで、子供のはしゃぐ声や料理を作る音が聞こえてくるにも関わらず、聞こえてくるのは無音。村人の声もしなければ、小鳥の囀りさえ聞こえなかった。慌てて外に出るとそこには無残に倒れ微動だにしない村人の姿が至る所に転がっていた。その中で一人佇む怪しい人物。彼はこちらに迫りつつこう言った。「お前の両親は死んだ」と。ただただ佇むリリの目に最後に映ったのは、振りかざされる鋭い血刃だった。