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霧の中の吸血鬼


ストーリー Story

「助けて……」
 そう言った女の顔は、恐怖で歪んでいるように見える。
 瞳からは大粒の涙が流れ、化粧がスルリと落ちていた。
 真っ黒い服は血にまみれ、大怪我を負っているのだろう。
 その目の前には背の高い大きな男が彼女を見つめている。
 手には大きなハンマーを持ち、女に向かって大きく振り上げていた。
「私を助けて……」
 女は二言目を呟き、大きく口を開いた。
 男は何も言ってはくれない。
 目を見開いたまま命を落としてしまっているから。
 女は首筋に噛みつき、命の残り香を吸い尽くした。
「ああ、おいしい……助けてくれてありがとう……」
 女は涙をぬぐう。
 人であった時間を思い返して、涙しているのだろう。
 既に死んでいた男は、黒色の灰となって崩れ果てる。
 その事件が起こったのは、バグシュタット王国の統治しているある地域だ。
 この国では、すでに何人もの犠牲者と目撃者により、吸血鬼が出ると噂が広がっている。
 吸血鬼を見た目撃者は多く、誰もが、もの凄く美しい金髪の女だと証言していた。
 切れ長の目と美しい白い肌、薄いピンクの唇。
 黒い帽子をかぶり、爪の先まで、全てが黒で統一された女である。
 その顔を見たならば、興味のない同性であっても恋に落ちるほどだという。
 女に襲われた犠牲者達も幸せであったのかも知れないが、事件は解決しなければならなかった。
 その居場所を探る為に、王は調査員を走らせている。
 しかしそれでも犠牲者は出続け、何日もの調査を余儀なくされていた。
 掛かったのは一月という時間。
 その手掛かりを発見したのはただの偶然だった。
 旅の詩人がからっと晴れた真夏日の昼間に、霧を見たという。
 雀の涙の可能性に賭け、その霧を見つけ出すまでには、更に一月を要したらしい。
 なぜならば、週に一度の月の日の正午、たった一時間しか現れないからである。
 見つけたのは川に囲まれた中州のような地。
 その場を調べに、調査隊が派遣されたのは、一週間後の正午だった。
「何処に居る吸血鬼!」
 十人の調査隊が霧の中に足を踏み入れ、居るかどうかも分からない吸血鬼を探していた。
 やはり向うからの返事もなく、ただ霧の中を彷徨う調査隊の十人。
 しかし探している内に、一人、また一人と消えて行く。
 もう残されているのはたった二人で、二十歳にも満たない若い男と、歴戦の老兵だけである。
 既に敵の術中にいると考えた二人だが。
「私を助けに来てくれたの?」
 若い男の背後から、女の声が聞こえて来る。
 老兵は剣を引き抜き構えるが、その声を聴いてしまった若い男は、宝石よりも美しい女へと手を伸ばした。
 吸血鬼の美しさに魅了されているのだろう。
 その男も霧の中に消え果て、残されたのは老兵の一人である。
「貴方は……要らないわ」
 何が起こったのかも分からず、老兵はその場に崩れた。
 彼が意識を取り戻した時、霧は消え果て、仲間は誰一人存在していなかったらしい。 
 老兵はたった一人で王都へ戻り、城の王へと伝えたという。
「もし私を助けてくれるのなら、もっと人数を連れて来なさい」
 玉座の間で王に伝えられた声は、ハッキリと女の声であった。
 この老兵が発する声ではなかったという。
 声を発し崩れ落ちた老兵に、事態を重く見た王は、部下に命じて吸血鬼の文献を調べさせた。
 城の書庫に隠されるようにしてあったとても古い文献には、吸血鬼の女の正体が書かれている。
 四百年もの昔、この女の吸血鬼が出現した時に書かれた物らしい。
 その女の正体は、あり得ない程遠い地に、遥か昔に生誕した王女だという。
 家臣の裏切りにより生きながら焼かれた過去があり、民からは罵倒され、恋人に蔑まれたとだけ書かれていた。
 しかしその死の間際、生を呪い運命を嘆いて、吸血鬼へと落とされたようだ。
 その際、裏切者へと死を与え、愛していたはずの民も皆殺しにして、たった一人生きながらえたらしい。
 遥か時が流れ、国が風化して歴史が消滅しても、彼女はまだ存在を続けている。
 空腹を満たす為に人を襲うが、涙を流すほどには悲しみ続けている。
 延々に生きざるを得なかった時の中で、凶悪な気性と生への渇望を持ち続け、それでも自身の死を望んでいるのかもしれない。
 そう書かれた文献を読み、王は勇者となる者へと知らせを送った。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-10-02

難易度 普通 報酬 多い 完成予定 2019-10-12

登場人物 7/8 Characters
《ゆうがく2年生》ヒューズ・トゥエルプ
 ヒューマン Lv21 / 黒幕・暗躍 Rank 1
(未設定)
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《未来を願いし者》エトワール・フィデール
 ヒューマン Lv8 / 教祖・聖職 Rank 1
私は恵まれている、愛されている。だから…今度は私が愛を返す番です ーーーーーーーーーーーーーーーー 容姿 ・緩くミツ編みにした腰まである長い黒髪、丸い大きな青い目にうっすらと紅い頬。何処か人形めいた容姿に柔らかく穏やかな表情が人間味を与えている。 ・学園の制服以外では孤児院を出る際にマザーとシスターから貰った修道服を着て過ごしている 名前 ・教会のマザーにつけてもらった。愛称はエト ・姓は孤児院のものである 【PL】 ・友達申請ご自由に
《イマジネイター》ナノハ・T・アルエクス
 エリアル Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
フェアリータイプのエリアル。 その中でも非常に小柄、本人は可愛いから気に入っている。 明るく元気で優しい性格。天真爛漫で裏表がない。 精神年齢的には外見年齢に近い。 気取らず自然体で誰とでも仲良く接する。 一方で、正義感が強くて勇猛果敢なヒーロー気質。 考えるよりも動いて撃ってブン殴る方が得意。 どんな魔物が相手でもどんな困難があろうと凛として挑む。 戦闘スタイルは、高い機動性を生かして立ち回り、弓や魔法で敵を撃ち抜き、時には近接して攻め立てる。 あまり魔法使いらしくない。自分でもそう思っている。 正直、武神・無双コースに行くかで迷った程。 筋トレやパルクールなどのトレーニングを日課にしている。 実は幼い頃は運動音痴で必要に駆られて始めたことだったが、 いつの間にか半分趣味のような形になっていったらしい。 大食漢でガッツリ食べる。フードファイター並みに食べる。 小さな体のどこに消えていくのかは摩訶不思議。 地元ではブラックホールの異名(と食べ放題出禁)を貰うほど。 肉も野菜も好きだが、やっぱり炭水化物が好き。菓子も好き。 目一杯動いた分は目一杯食べて、目一杯食べた分は目一杯動く。 趣味は魔道具弄りで、ギミック満載の機械的な物が好き。 最近繋がった異世界の技術やデザインには興味津々で、 ヒーローチックなものや未来的でSFチックな物が気に入り、 アニメやロボットいうものにも心魅かれている。 (ついでにメカフェチという性癖も拗らせた模様)
《ゆうがく2年生》不束・奏戯
 リバイバル Lv10 / 王様・貴族 Rank 1
【外見】 金髪セミロングの外ハネ 黄色人種 ややつり目の赤い目 見た目はイケメンなはずなんです 【服装】 基本改造制服 マント無くしてもっとロングコートにしよ! 萌え袖は外せないね! 中の制服の基本カラーが赤と黒で コートは緑で行こう! 【性格】 女子が大好きのチャラ夫 ともすれば一目惚れも多い 大体振られる メンタルは形状記憶合金 3日くらいで元に戻る 器用貧乏というか広く浅い為に中途半端 パリピ 彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい フェミニストではあるが男子の友達も大事にするよ! 地味に服装に拘りがあるおしゃれさん ※アドリブ大歓迎! GM様へ 思いっきり不遇にしてやって下さい

解説 Explan

●目的:吸血鬼の討伐


●吸血鬼について
 ・特徴
 常に涙に滲む目をした吸血鬼。
 霧を操る力を持つ。
 人を食べる吸血鬼に説得は不可能だが、話すことは可能。 
 華奢な見た目に反して力があり、霧に入った相手の血を飲む。
 空を浮遊し、瞳は魅了の能力を持つ。

 ・攻撃
 『噛みつき』
 牙を突き立て血を吸う。
 吸血鬼になることは無い。

 『魅了』
 戦闘中に目が合ったPC一人に、このエピソード限定の「状態異常:完全魅了」を付与する。
 完全魅了されたPCは、一定時間相手の支配下に置かれる。
 この魅了は最大一人にしか付与されない。
 時間経過か強い物理衝撃を受けると回復する。
 吸血鬼は魅了が回復された場合、まだ魅了されていないPCを狙い魅了攻撃を仕掛ける。

 『爪』
 近距離に鋭い切り裂き攻撃。

 『霧化』
 霧の粒子となって辺りに漂い、同化して突然現れる。
 太陽の光を浴びて、ダメージを受けると使う。

 ・弱点
 再生能力が高く、通常の攻撃では倒しきることができない。
 倒す為には『太陽の光』を一定量浴びせる事が必要。
 しかし通常は濃い霧の中に居る為、光は届かない。
 どうにか霧を吹き飛ばすか、弾き出す方法を考えよう。

●戦闘の舞台
 川に囲まれた中州のような地。
 少し大きな石が転がっていたりするが、小さな雑草が生える平地。
 中央に一本だけ大きな枯れた木が生えている。
 木の幹には、木にのみ込まれた小さな石碑があり、その周りだけ霧が晴れている。
 何かがはめ込まれていた窪みが一つあり、文字は朽ちて読むことが出来ない。
 吸血鬼は木の傍には寄って来ない。
 倒す為には、霧の内部での戦闘を余儀なくされる。

●霧について
 火を使うと霧が薄まり、その濃淡で敵の形を確認できる。
 しかし吸血鬼がダメージを受けるほどにはならない。

●アイテム
 『苦味葉の薬』(魅了の予防アイテム)
 口の中に入れておくと、激しい苦みで意識が保たれる。
 劣化が激しいので、取っておくと傷む。
 支給は全員で二つのみ。


作者コメント Comment
ダークダークシナリオダーク。
果て無き生を終わらせられるか、食料になり果てるか、それとも……。



個人成績表 Report
ヒューズ・トゥエルプ 個人成績:

獲得経験:93 = 78全体 + 15個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【行動】
枯木の前で【幻視】に耽ってみる。

⚫戦闘
周辺にランタン用の油を撒いてプチラドで引火させる。
炎の揺らめきや濃淡を見定めて、回避行動。

⚫吸血
霧化で回り込み噛みつくというのが常套手段と推測。
視界に揺らめきや濃淡を感じなかったら迷わず、後ろに一閃。

⚫魅了
支給品の薬をを貰ったため
魅了に掛かった仲間が居た場合は吸血鬼よりも対処を優先。
プチラドによるショック療法を試みる。

魅了攻撃を受けた場合はかかったフリして近付き、吸血鬼の首元を一閃します。

首を落とせたら剣で突き刺して、霧の無い枯木の方へ走る。
霧化等で逃げられたり、回り込まれそうな場合は霧の粒子を思い切り吸い上げて、阻害


シキア・エラルド 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:234 = 78全体 + 156個別
獲得報酬:7200 = 2400全体 + 4800個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
悲劇の国のお姫様が吸血鬼ね
…うん、やれることをやろう

・行動
突入時、仲間と協力して【プチフド】や扇で霧払いを試みる
炎を使う時はタイミングを合わせて
霧がどのくらい濃いのかも確認、仲間と随時呼びかけ合い居場所や立ち位置を把握

・戦闘時
霧の濃淡や【第六感】で敵の居場所を探る
敵攻撃時は「緊急回避」「跳躍」「運動神経」で回避
敵へは【プチフド】【マド】
敵が近接攻撃時を狙う

味方が魅了状態になった際は正妻の制裁で解除を試みる
解除後は【踊り子のすべきこと】で回復
体力が少ない味方(残体力3割以下)へも回復
負傷者が多い場合は枯れ木の傍への一旦退避を提案




フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:93 = 78全体 + 15個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
囮、戦闘、援護と役割を分けて行動。吸血鬼の撃破、成仏を目指す

●事前準備
出現場所の歴史について、調べる時間があれば確認。説得や討伐のヒントを得られたら

●行動
自分は戦闘担当として最前線。
霧の中に入る時は皆の明かりを頼りに『危険察知』も駆使して奇襲に注意。
魅了にはオーパーツ・レンズとミラーシールドによる『創意工夫』で対抗。
戦闘時はシールドを鏡代わりに見て戦い、更に視線が合ってしまった場合はレンズのビームを発動。
視線があってるなら目を焼けるかも?
また『部位狙い』で目を潰しに行き、魅了を封じられたら『勇者之斬』で一気呵成に。
追い詰められたら日光を呼び込める皆に頼みつつ、降伏(成仏?)勧告。

ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:93 = 78全体 + 15個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
まずは事前準備ね。

中洲で焚き火ができるような乾いた木材や丸太、油の調達。火の勢いを増すのと風を起こす為のかなり大きめの団扇も必要ね。
団扇には虎のかわいい絵を描いておくのも忘れないわよ。
それと全てが終わった後の消火用にバケツもないとね。水は川があるから問題ないわね。

さてここからが本番ね
中洲に着いたら焚き火の準備。ガンガン燃やしていきたいわ。
戦闘中は回避優先で、火の管理&風起こしに徹するわ。
余裕があれば職業技能の「権威」使用して相手の気力を削ぎたいわね。まぁ、流石にここまでできるかどうかわからないけど。

持ってるたいまつは吸血鬼の確認&万が一、火が消えてしまった時の種火に使いたいわね。

エトワール・フィデール 個人成績:

獲得経験:93 = 78全体 + 15個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
吸血鬼の討伐
討伐が成功した場合、王女へせめてもの祈りを

【行動】
おとり役
・あえて吸血鬼へ話しかけて注意を引き、討伐準備の時間稼ぎをする。
・【完全魅了】を攻撃能力の低い自身ににかけさせる事で仲間への状態以上を軽減させる
・戦闘には加わらず、何度も吸血鬼へと話しかけてわずかな隙を作ったり視線を自分へと向けさせたりと『おとり』に徹する

ナノハ・T・アルエクス 個人成績:

獲得経験:93 = 78全体 + 15個別
獲得報酬:2880 = 2400全体 + 480個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
吸血鬼の討伐

【行動】
僕はフィリンと一緒に攻撃に専念するよ。
吸血鬼が他の人達に気を取られているところを片手弓を構えて吸血鬼を攻撃。
荷物カバンに詰め込んでおいた矢を撃ちまくって、時にはマドガトルで畳み掛けるよ。
この攻撃だけじゃ倒しきれそうにないけれど、ダメージは入っている。
だったら、少しでもダメージを与えるために、とにかく撃ち続けるんだ!

基本は狙われないように動くけど、もし吸血鬼に狙われたら回避優先で対応するよ。
盾は念のため構えておいて、当たらないように後ろに下がる感じ。
華奢な見た目なのに凄い力だ…でも、当たらなければどうとことはないよ!

もし魅了された時は…ヒューズ、バチバチをよろしくね♪


不束・奏戯 個人成績:

獲得経験:78 = 78全体 + 0個別
獲得報酬:2400 = 2400全体 + 0個別
獲得友情:1
獲得努力:1
獲得希望:1

獲得単位:0
獲得称号:---

リザルト Result

 学園である程度の資料を調べ終え、依頼を受けた六人は馬車に積み荷を運んでいた。
「よいしょ、これで準備完了! フィリンそっちは?」
 【ナノハ・T・アルエクス】は、馬車に荷物を積みこんだ。
「薪も積んだし、こっちも大丈夫よ」
 【フィリン・スタンテッド】は、自分の積んだ荷物を確認している。
「しっかし吸血鬼ってあれでしょ。ニンニクとかダメなやつなんですよね? 十字架とかもってけば楽勝なんじゃないですか?」
 【ヒューズ・トゥエルプ】は油を積み終え、皆に聞いた。
「もう試したって書いてあったよ? 駄目だったからこっちに依頼が来たのでは?」
 【シキア・エラルド】は馬の状態を確かめている。
「なんであれ倒せばいいんですわ」
 【ニムファー・ノワール】は準備を終えて馬車の席に座っていた。
「……主よ、この旅に幸運を……」
 【エトワール・フィデール】は膝を突き祈りを捧げている。
 六人は出発の準備を終えて、馬車を動かし現場に向かおうとしていた。
 さらにそこに【不束・奏戯】(ふつつか かなぎ)が加わった。
 学園でちょっとした準備を済ませ、七人は吸血鬼の居る地に向かう。
 無事に到着したのだが、まだ吸血鬼が出て来る時間にはなっていない。
 戦いの前にと調査を行うことになった。

1.
 両側に川が流れる広い中州の様な場所。
 地面には川から流されてきたような小石が目立ち、中心に一本の枯れた木がある以外は特に何も無い。
「まずは事前準備ね」
 ニムファーは、学園から調達してきた木材や丸太と油を準備し、火を消すためのバケツを用意した。
 更には、風を起こす為のかなり大きめの団扇を用意して、そこにかわいい虎の絵を描いている。
「話を聞く限り、可哀想な人ですね。このまま続けさせるよりキッチリ終わらせてやりたいですぜ。奏戯さん、そこの石碑を見てくれませんか?」
 ヒューズは奏戯に指示を出して辺りを調べていた。
 戦闘の為に気持ちを整え、辺りの景色を目に焼き付ける。
「悲劇の国のお姫様が吸血鬼ね。……うん、やれることをやろう」
 シキアは木に埋まった石碑を見る。
 雨風にさらされた文字は、劣化して読むことができないようだ。
「吸血鬼……人を食らう怪物は倒さなきゃならない!」
 ナノハは倒すのが重要だと、武器の確認を始めている。
「私……フィリンならどうする……戦う? 救えばいい? どうやって……」
 フィリンは王女の物語を思い出していた。
 しかし思い返した所で、それは遥か過去の出来事である。
 吸血鬼以外は真実を知らず、たった一つの文献は同じ言葉しか語らない。
 記録されたであろう石碑には、もう文字すらも消えている。
「戦闘は不馴れですが……出来る限りのサポートをします!」
 エトワールは石碑に祈りを捧げている。
「よし出来ましたわ!」
 絵を描き終えたニムファーは、焚き火を作りガンガン燃やしている。
「もうすぐ時間ね、それじゃあチーム分けをしましょう」
 フィリンの指示でエトワールとニムファーを囮とし、フィリンとナノハ、奏戯が戦闘を引き受ける。
 残りのヒューズとシキアは援護に回った。
 苦味葉の薬はヒューズとシキアに持たされ、口の中に放り込まれている。
 頬に張り付けるように固定し、喋るのには問題はない。

2.
「ん? 霧が出てきましたぜ。こりゃあ時間ですかね?」
 ヒューズは霧の出現にスッハッと浅い呼吸を繰り返し、体内に吸血鬼が現れないようにと保険をかけている。
「もし魅了された時は……ヒューズ、バチバチをよろしくね♪」
 ナノハはヒューズに声をかけた。
「了解っすよ」
 ヒューズは返事を終えて、再び早く浅い呼吸を繰り返す。
 七人は警戒して吸血鬼の出現を待つ。
 漂う霧は少しずつ色の濃さを増すが、焚き火の熱が一定の濃度に留めさせた。
 そして。
「……私を助けに来てくれたの? さあ、こちらにいらっしゃい……」
 突如美しい声が響き、黒いドレスを着た金髪の女性が現れた。
 目は涙にぬれている。
 その瞳が赤く輝くと、一瞬でシキアを捉えてしまう。
「俺を見たのかい? 残念だけど効かないよ」
 シキアは苦味葉の薬で魅了を回避した。
 その場でクルっと回って足を踏み、踊りながら自分の無事を確かめている。
「……あら? 魅了が効かないなんて、面白いわね……フフフ」
 吸血鬼は不思議そうに笑い、少し高揚している。
「あなたの事情はわかりたい、けれど……不法を放ってはおけない。ここで退治させてもらうわ!」
 フィリンはなるべく目を見ないように武器を構えた。
 だがそのまま動かず、仲間の行動を見守っている。
「王女殿下……そこにおいでですか? ……私の声は届いていますか?」
 エトワールは自ら囮になり、祈るように吸血鬼に語りかけた。
「……あら可愛い子ね。私に何かご用かしら……いいわ、さあ、こちらにいらっしゃい」
 吸血鬼の声に従い、エトワールは霧の中へ歩いて行く。
 そのまま赤い瞳に覗きこまれ、魅了に囚われた。
 成すがままにされて、首筋に牙を突き立てられようとしている。
「食いついたっすよ、行くなら今ですぜ!」
 ヒューズは仲間に声をかけ。
「この扇で!」
 シキアは扇で。
「食らいなさーい!」
 ニムファーは団扇を使い風を送る。
 薄い霧は吹き飛ばされ、吸血鬼は日の光にさらされた。
「ああ、熱い……」
 一瞬その体が炎に燃えるが、蒸発するように白い霧に姿を変えた。
 そのまま辺りの霧と同化して何処に居るのかも分からなくなってしまう。
「先制攻撃成功ね。よし行こう!」
 フィリンは仲間に声をかけ、危機察知能力を駆使して霧の中へ入って行く。
「戦闘開始だよ!」
 ナノハもそれに続き、霧の中へ突入した。
 しかし代わりに操られたエトワールが待機していた仲間へ向かっている。
「ごめん! 後でちゃんと治す!!」
 シキアは少し時間を置いて正妻の制裁で解除を試みる。
 思い切ってエトワールの頭にゴンと落とした。
「うぅ、いたい……。操られていたみたいですね、ありがとうございます……」
 エトワールは少し涙目になってお礼を言っている。
「見つけましたわ! 支援します!」
 その間にも動きがあり、ニムファーが吸血鬼を見つけたようだ。
 一度体が燃えたからか、ドレスはボロボロに変わっている。
「たいまつを食らいなさい!」
 ニムファーは、現れた吸血鬼にたいまつを投げこんだ。
 その火はそれて外れるが、近くに居たヒューズに場所を知らせた。
「そこですぜ!」
 ヒューズはそれを見ると霧に突っ込み、前線に居る仲間の支援に向かう。
「さあシキアさん、支援をお願いします!」
「任せてくれ……マド!」
 ニムファーの指示でシキアは頷き、ヒューズが来るまでの時間稼ぎをしている。
「らああああ!」
 完全に現れた吸血鬼に、ヒューズは双剣を振りきった。
 しかし相手は吸血鬼である。
「うおおお!?」
 傷を気にせずヒューズの体を鷲摑みにしてしまった。
 仲間達はまだ駆けつけては来ない。
 動けなくなったヒューズの目に、吸血鬼の瞳が輝く。
「うっ……あッ……我が君。私はこの首を差し出せば宜しいのでしょうか。それとも彼等を、この手で葬って見せましょうか」
 苦味葉の薬を使ったヒューズに魅了は効かない。
 これは吸血鬼を油断させる演技だった。
「……ええ、お行きなさい」
 演技に気付かなかった吸血鬼は、ヒューズから手を放す。
「じつは効かないんっすよね! とおおおおお!」
 一気に振り返ったヒューズは、吸血鬼の首に双剣を振る。
 人であるなら致命的な傷だが、相手は吸血鬼なのだ。
 傷など無かったように再生を始めている。
「退避いいいいい!」
 ヒューズは無理せず枯れた木の下へ戻って行くと、前線に出ていた二人が駆け付けた。
「シュート!」
 ナノハが吸血鬼の胸元へ矢を放ち。
「たああああ!」
 フィリンは背後から剣を突き刺し、そのまま前方に進み始めた。
「良いわ、もっと力を込めなさい、アハハハハ」
 吸血鬼は地に両足を踏みしめた。
 それだけでフィリンの動きは止まってしまう。
「華奢な見た目なのに凄い力だ……でも、当たらなければどうとことはないよ!」
 しかしナノハが駆け付けると。
『たああああああああああ!』
 二人の力が合わさり吸血鬼を押し進む。
「……私の力が負ける? それは良いわね、アハハハハ」
 動かなかった体が前に進んで行く。
「ここだ、プチフド!」
 シキアは吸血鬼が霧化しないようにと、日の光に照らされる前に魔法を撃ち込む。
 緑の風は霧を吹き飛ばし、吸血鬼は太陽の光にさらされた。
「……ああ、熱い」
 その体は燃え盛り炭に変わるが、黒色はまた白へと変わる。
 霧となった体は突き刺さった剣から抜け出し、霧の中へ戻って行く。
 そこに待ち構えていたのはヒューズである。
「うおおおおおお! 喫煙者の心肺機能なめんなァァ!」
 息を吸い込み霧の体を吸い込もうとしていた。
 かなり頑張って半分ほど吸い込んだが、吸血鬼の体は半分実体化している。
 息を吸い込んだヒューズに、赤い爪が振り下ろされようとしていた。
「危ない!」
 フィリンはヒューズを庇い、背中に傷を負ってしまう。
「……ああ美味しい……」
 体が半分の吸血鬼は、爪についた血液を舐め取って恍惚としている。
「クソ……がッ!」
 フィリンは傷の痛みで膝を突いた。
「不味い! フィリンさん一度撤退を!」
 シキアは撤退を指示し、フィリンは肩をかされて撤退して来る。
 吸血鬼は体がのみ込まれて動けないようだ。
「うぼはあああああああああ……!」
 息を吸い込んでいたヒューズにも限界が来た。
 口から白い霧が吐き出され、吸血鬼の体が元に戻り始める。
 ヒューズもとどまらず逃げ帰って行く。
 再生した吸血鬼のドレスはボロ布の様に変り果て、灰でも被ったように変わっていた。
「フィリンさん、治療を行います。もう少し我慢していてくださいね」
 枯れ木の下では一度体勢を立て直そうと、エトワールは祈祷を初め、シキアは舞踏を舞う。
 安全地帯でゆっくりと治療を終え、少し時間稼ぎをしようと、エトワールは吸血鬼と向き合った。
「王女殿下、私とお話をしませんか?」
「……嬉しいわ。さあ、こちらにいらっしゃい。ゆっくりお話をしましょう。フフフフフ」
 吸血鬼はエトワールに手招きしている。
「ではお茶でもご用意致しましょう。甘いお菓子もお付けします。少々お待ちください」
「アハハハハ、お茶もお菓子も貴女自身だと気付きなさい。さあ、私の目を見て」
 吸血鬼の瞳が怪しく輝いた。
「うっ、あ……ああ美しき王女殿下、私の血を捧げましょう……」
「助けてくれてありがとう。美味しく頂くわ」
 エトワールは魅了され、吸血鬼に向かって行く。
「まだ行かせないよ!」
 移動を阻止するようにナノハはチョップを放つ。
「うぅ、痛い……」
 エトワールの頭に強烈な痛みが走り、頭を押さえて蹲った。
 二度目も食らい頭に痛みが響く。
 そのおかげで魅了からは脱出している。
「……貴方でもいいのですよ?」
「真っ平だよ!」
 吸血鬼はナノハを見つめ、魅了の力を使おうとするが、この間にも仲間達が行動を起こした。
「では代わりにわたくしが行きますわ」
「フフフ……ではいらっしゃい」
 機を見たニムファーは、時間を稼ごうと足を進ませた。
 瞳を見ないようになるべく下を見てギリギリまで時間を稼いでいる。
 霧がある手前で足を止めるが、吸血鬼は出て来れないと油断した。
 燃えるのも構わず体を掴まれてしまう。
 そのまま首筋に牙を突き立てられようとした時、ヒューズが動く。
 吸血鬼の周辺にランタン油を撒いてプチラドを放った。
「させませんよ!」
 シキアは魔力の玉を使い吸血を防ごうとするが。
「……あッ……ん」
「……ああ、美味しいわ」
 弾が当たっても気にすることも無く、ニムファーの血を貪り始めた。
 一口飲むごとにその美しさが取り戻されているようだ。
『おおおおお!』
 しかし仲間達はただ見ている訳ではない。
 そこにフィリンとナノハが攻撃を仕掛ける。
「邪魔をするな……!」
 吸血鬼とフィリンの目が合うが、オーパーツ・レンズが光り輝く。
「……あああ!?」
 閃光が発射されて吸血鬼の目を焼いた。
 ナノハの矢が腕を貫き、ニムファーを助け出すと。
「行くよ、それええええ!」
 シキアは扇を振って霧を吹き飛ばした。
「あああああああ!?」
 光を浴びて、吸血鬼の体が燃えていく。
 今までより苦しんでいるようにみえているが、それでも体を霧へ変えて辺りに漂っている。
 再び一つとなった時、美の欠片もなくやせ細った女が立っていた。
「私を助けて……」
 その瞳の涙は止まってはいない。
 むしろ激しく流れ続け、死にたくないと願っている様な、解放してくれと叫んでいる様な、そんな表情にも見えた。
「うん、行くよ……」
 ナノハは弓を下げ、番えていた矢をカランと落とした。
 そのままフラフラと吸血鬼の前へ進んで行く。
 どうやら魅了に囚われてしまったようだ。
「助けるっすよプチラド!」
 ヒューズはナノハを助ける為に頭に魔法をぶつけた。
「うぐッ」
 霧の近くで頭を抱えたナノハに、燃えるのも構わす吸血鬼は腕を伸ばす。
「プチフドォ!」
 シキアが風の魔法を使い、霧を吹き飛ばそうとしている。
 だが吸血鬼は手を伸ばすのを諦めて霧の中に身を隠してしまった。
 フィリンはそれを追い掛ける。
「たああああああ!」
 魅了されないようにと吸血鬼の目を狙うが、先に瞳の輝きがフィリンを襲う。
「うぁ……」
 フィリンには吸血鬼が在りし日の彼女の姿と重なって見えている。
 瞳には大粒の涙が流れ、喜びなのか悲しみなのか分からない感情が押し寄せた。
「……抵抗しないで、私の言うことを聞いて。ねぇ、フィリン……」
 吸血鬼はフィリンに語り掛けるが。
「違う……絶対違う! 彼女はそう呼ばない! これは幻、幻覚だあああああ!」
 フィリンは誘惑に抵抗し持った剣を振り切った。
「……ぅ、目が……」
 吸血鬼の瞳は斬り裂かれ、魅了の力を一時的に失っている。
 しかし急がなければ再生が始まるだろう。
「これで終わりだ! 吸血鬼いいぃぃぃーーーーーっ!!!」
 痛みから回復したナノハは、自然友愛で精霊を召喚、さらに集中する。
 そして走って跳んで体当たりしながら、吸血鬼を直刺した。
 勢いのままに弾き飛ばすが、吸血鬼は足を踏ん張らせ耐えていた。
 そのまま耐えきり背中だけが霧の外へ出て火が燃える。
「シキアさん、風をお願いします!」
 ニムファーは指示を出す。
「ああ、任せてくれ! 扇よ、暴風を起こせえええええ!」
 盛大に扇を振り、周りの霧を吹き散らした。
「……ああ、太陽が、眩しい……」
 吸血鬼は炎に燃ゆる。
 天を仰ぎながら倒れ伏し、笑いながら涙を流す。
 漂っていた霧は風に乗り流されて、澄み切った空が見えている。
 吸血鬼の体は四肢の先から崩れ始めた。
 もう彼女の命は風前の灯火だろう。
「貴方はもうお終いですわ。消えるまでお話をしませんか?」
 ニムファーは崩れ去りそうな吸血鬼に声をかけた。
「私にはあなたを助けられない……けど……言い残す事や望みがあるなら、忘れない。できればそれを叶えたい。教えてくれないかな……」
 フィリンは膝をついて、崩れかけた手を握る。
 すでに熱はなく、触った場所が今にも崩れそうだ。
「……どうか、これ以上の責苦が貴女にありませんように……」
 エトワールは神に許しをこうように祈りを捧げた。
「……遅くなってごめんね」
 ナノハは今まで感じた事のない感情が胸に響く。
「もう泣く必要はないんっすよ」
 ヒューズはその場に片膝をついて吸血鬼の涙を拭う。
「キミがもし生まれ変わるのなら、次は俺達と友達になってくれないかい?」
 シキアは奏戯と肩を組み終わりを見守る様に笑いかけた。
「フフ……フフフ……まさか死ぬ間際に人の扱いを受けるとは……」
 吸血鬼は七人を見回しそれぞれの顔を瞳に刻む。
「……私に言い残す言葉などありません。貴方がたのおかげで救われたのですから……さようなら皆様お元気で……フフフ……」
 そう言った直後、突如として突風が吹いた。
 名も知らぬ吸血鬼の体は、全てが灰となって空に舞い上がる。
 風に乗ってバラバラに砕け散ると、太陽に吸い込まれる様に消えたのだった……。
 もう彼女を記す物は木に埋まった石碑だけだろう。
『…………』
 七人は空を見上げてただ願う。
 幸せな未来に生まれ変わりますように、と。

3.
「ヒューズさん、そこの枝を切ってください。奏戯さんは落ちた枝を片してください」
「わかりましたっす!」
 ニムファーが指示を出し、ヒューズが返事をする。
 奏戯も頷くとせっせと枝を拾い始めた。
 少しずつ木は無くなり石碑の裏側が現れた。
 そこにはまだ消えていない文字が残されている。
 『愛するレイファリアへ、君を封じるのに誓いの宝石を使うよ。大丈夫、僕は何時までも見守っているから。安心して眠ってくれ。君の恋人アイケスより』
 そして更に彼女が封じられた経緯が載っていた。
 悲劇の先で吸血鬼となった彼女を愛した男の話。
 しかし吸血鬼との恋愛は上手くいかず、暴走しそうになった彼女は自らここに封じられたのだと。
 これはただの悲しい物語ではなく、愛の物語だと七人は知ったのだった。
「石碑の穴には宝石がはまっていたのですか、だから出て来て……貴方は愛されていたのですね。……このお花を飾っておきますわね」
 ニムファーは、信頼という花言葉をもつアゲラタムの花を石碑に飾る。
 七人は相談して宝石を捜すことに決め、吸血鬼が出現した町へ向かう。
 三日ほど探し続け、古物店が売り出していたのを見つけた。
 宝石とは名ばかりの赤い石は、二束三文にも満たない物である。
 だがどれ程の安物であろうと、これこそが彼女が望んだものなのだ。
 二度と外れないようにと石碑の中に埋め込み、きちんと整理して学園に帰って行った。

4.
 何処かの民家に赤子の泣き声が聞こえる。
 男はその声を聞き、急いで前にある扉を開く。
「生まれたか!」
「可愛い女の子ですよ。名前はレイファリアなんてどうですか?」
「うむ、しっくりくる。それがいい! そう言えば隣の家にも赤子が生まれたようだぞ。名前はそうアイケスと言ってな……」
「あらまあ、将来の御婿さん候補かしら?」
 物語は回り続ける……。



課題評価
課題経験:78
課題報酬:2400
霧の中の吸血鬼
執筆:秀典 GM


《霧の中の吸血鬼》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 1) 2019-09-29 19:30:31
勇者・英雄コースのフィリンよ、よろしく。

会うまで、会った後も厄介な吸血鬼退治ね…
全体で詰めておくべきところは

・未了の対策は?
・霧(霧化、太陽の光の遮蔽)をどうする?
・誰が『苦味葉の薬』の薬を持つか

…あたりかしら?
霧を完全に晴らす方法があるなら、それだけで決め手にできそうだけど…今の私たちには難しそうね。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 2) 2019-09-29 20:37:21
ニムファー・ノワール17歳です(ぉぃぉぃ

戦闘は苦手だけどなんとか頑張ってみるわ。

・魅了の対策
う~ん、正直思いつかないわね、唯一救いなのは私がかかっても攻撃力が低いから味方を襲ってもダメージが少ないことぐらいかしら。
・霧
霧は暖かい湿った空気が冷やされて起きる現象だから、晴らすには火を大量に燃やして気温を上げてあげればいいんだけど手段と規模が問題ね。
気温の上昇と上昇気流を狙って、キャンプファイヤーのように井桁に丸太を組んで燃やして見てはどうかしら?完全に晴れるかどうかは流石に自信ないけどね。
・苦味薬
魅了対策でも言ったけど戦闘能力が低い私は、返ってかかったほうがいいかもしれないので不要よ、おとりとして敢えて武器を持たないという選択肢もあるわね。


《未来を願いし者》 エトワール・フィデール (No 3) 2019-09-29 23:49:57
ごきげんよう、教祖・聖職コースのエトワール・フィデールです。
少しでもお役にたてるように頑張ります

・おとり
ニムファーさんのおっしゃるおとりでしたら私にも勤まるかもしれません。それこそ私に戦闘能力はほとんどありませんし。説得は無理でも吸血鬼さんに話しかけて注意をそらし、霧を散らす為の時間稼ぎをするとか…

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 4) 2019-09-30 11:06:04
黒幕・暗躍コース専攻のヒューズです。よろしく。

霧…。油撒いて火つけて
ニムファさんの大きい羽で熱風を送りこんで
乾燥させちまうというのはどうです?

魅了の対策っつーか。予防じゃなくて対処の方になるんですけど。
こう、バチバチィ…っと
プチラドでショック療法なんてのはどーですかね?
宜しければ僕が面倒を見ますよ。
ただ女の子を痛めつける趣味はないから
もっと効果的な案であれば、そっちに乗っかりまっせ。



おっとー…吸血鬼も女の子。
なんてツッコミはナシですぜ

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 5) 2019-09-30 12:58:50
ヒューズさん
羽で扇ぐと私、空を飛んでしまいそうですwできれば大きな団扇を用意するあたりで勘弁してください。
後、太陽光を鏡で集めて吸血鬼を照らすという方法も考えてみたけどこっちはちょっと非現実的かしらね

それとちょっと気になったのは木に飲み込まれた小さな窪みのある石碑ね。
ペジテ・・・秘石・・・オーマ・・・うっ頭が・・・

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 6) 2019-09-30 18:47:18
なんてこった。
ならば吸血鬼の首根っこ掴んで太陽まで翔ければ問題ないですな。
うん、うん…。冗談。
大きい団扇、助かります。

枯木は墓標?
いや、流石に古代兵器が眠ってるなんて展開は勘弁だぜ〜。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 7) 2019-09-30 19:46:32
芸能・芸術コースのシキアです、みんなよろしくね
手強い相手だし、よく考えて動かないとね

>霧
今あげてもらってる以外だと思いつかないな…
扇といえば俺おっきい扇あるけど装備しておこうか?
風属性だから、こう、吹き飛ばす…とまではいかないと思うけど

>魅了対策
「目が合う」と魅了されるか…向こうから覗き込まれたら、咄嗟に目を瞑るとかできそうだけど…ずっと目を瞑るなんて出来る訳もないし
……えっと、流石に無茶だと思いつつ
魅了されてない相手>魅了した相手が優先順位で攻撃してくるなら…いっそのことなんだけど
まだ全員の体力や魔力がある内にかかる→攻撃してすぐに解除→まだ掛かっていない人間にアイテムを渡す、ないし庇うように行動
「完全魅了」に魅了を解くアイテムが効くか分からないけど、持って行ってみんなで叩けば効果ちょっとはあるかなー…なんて

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 8) 2019-09-30 19:49:07
ごめん、提案しておいてなんだけど…穴だらけにも程があるから忘れて…(ぷしゅう

枯木の側に吸血鬼がこないなら、一旦態勢を立て直す為に枯木の側に行くとかはできそうだね

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 9) 2019-09-30 19:51:14
あ、太陽光を集めて…か。
レンズを二人以上で鏡で反射させりゃ、狙った箇所に光を届けるってのは可能かもね。ただ、向こうに神出鬼没の霧化がある以上、棒立ちとかオブジェクト頼みって危うい気がしますぜ。

《未来を願いし者》 エトワール・フィデール (No 10) 2019-09-30 20:10:52
うぅ…戦闘の経験が無さすぎて作戦が思い付きません。申し訳無いです…
せめて、内容のまとめだけでも!


>霧
炎を起こしその熱風を巨大扇で送り込み乾燥させる
→炎の準備の方法、タイミングをどうするか?

>魅了
おとりになるメンバーを決める?
→早い段階で魅了にかかり解除、『苦味葉の薬』はその他のメンバーが所持・使用
魅了されたらショック療法で正気に戻す

【大きな枯れた木】
体制を立て直す際に集まる


取り零しがありそうで不安ですが…一応

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 11) 2019-09-30 20:33:58
大きな団扇、助かります。
あとは熱風をつくり出すための火起こしだけど…カンテラ用の油?
持ってこうかと。プチラドで引火点まで到達するかわからないけどネー。

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 12) 2019-09-30 21:19:25
エトワールさんが話し合いで時間を稼ぐ。
幕が開いたら、僕は戦闘集中で時間を稼ぎますよっと。
薬は貰っても良いかな?
やれるだけやりますが、長い間、立ち合えるかどーか。

《未来を願いし者》 エトワール・フィデール (No 13) 2019-09-30 23:19:19
現時点でメンバーは6人…なら、『おとり』『戦闘』『援護』と役割を決めて2人ずつメンバーを分けてみますか?……安易過ぎ、でしょうか…



《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 14) 2019-09-30 23:49:51
霧の対抗手段は結構みんな持っているのね。

私は調べた限り、ちょっと難しいかも…プチフドが効けばいいけど、コレ『風の玉』で突風を吹かせるとかではないのよね…
エトワールの分担案なら『戦闘』、真っ向勝負が一番向いているかな。

>対魅了
魅了については、衝撃で治るなら盾でぶん殴る形で与えられるかも。
あと…あまりやりたくないけど、『激辛ハバネロソース』とかも、衝撃って意味じゃ足しになるかしら?





《イマジネイター》 ナノハ・T・アルエクス (No 15) 2019-10-01 01:14:25
賢者・導師専攻のナノハ・T・アルエクス、挨拶が遅くなったけどよろしくね♪

僕は片手弓で攻撃に専念しようかな。
倒し切れないだろうけど、ダメージは一応入るみたいだから、牽制や撹乱や足止めくらいにはなる…はず?

霧の対策とかはまだ特にピンと来ていないので考え中。

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 16) 2019-10-01 03:21:04
僕はどれでも良いけど…
班を分けるなら、魅了にかかった仲間を引き付け、対応する人。
これは援護枠になるんかね。必要かと。
そんで、その人が薬を持てば良いかと。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 17) 2019-10-01 06:17:11
とりあえず会議の内容からプラン書いて提出したわ。
これからお出かけしちゃうから変更があったら夜書き直すわ。

分担・・・そうねぇ、私は援護&おとりかしら
薬も不要よ

《未来を願いし者》 エトワール・フィデール (No 18) 2019-10-01 07:12:01
分担案、皆さん検討してくださり有難うございます
私は『おとり』ですね。始めに言ったように吸血鬼さんに話しかける事で注意を引いて戦闘準備の時間を作ります

『おとり』…エトワール/(ニムファーさん)
『戦闘』…フィリンさん/ナノハさん
『援護』…ヒューズさん/(ニムファーさん)

今のところはこうなりますね

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 19) 2019-10-01 20:41:21
エトワールさんもまとめありがとう、助かるよ

基本は扇とプチフドで霧を晴らしつつ攻撃
体力が減ってきたら回復、魅了されたらアイテムで叩く
援護が主軸の戦闘って感じかな?

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 20) 2019-10-01 21:11:50
まとめありがとう。
私は前衛ね。ナノハと連携して攻めるようしてみるわ。
風と光は皆の方が色々と引き出しがありそうだし、あえてなしで。
最後はお願いね

《未来を願いし者》 エトワール・フィデール (No 21) 2019-10-01 21:36:24
ええっと…では

『おとり』…エトワール(時間稼ぎ)/ニムファーさん(『おとり』→『援護』)
『戦闘』…フィリンさん(前衛)/ナノハさん(後衛?)
『援護』…ヒューズさん(魅了解除)/シキアさん(戦闘+回復)

『おとり』(時間稼ぎ)→炎による熱風で霧を可能な限り薄める→攻撃でダメージを与えつつ『太陽の光』へ誘導、足止め?→魅了されたら『援護』メンバーが回復→始めに戻りループ

こんな感じでしょうか。もう時間あまり時間がありませんが、ご確認頂ければ。
『苦味葉の薬』はヒューズさんとシキアさんが所持なさいますか?

《イマジネイター》 ナノハ・T・アルエクス (No 22) 2019-10-01 22:21:45
うん、了解。

風とか光とか霧の対策は皆に任せて、フィリンと一緒に攻撃に専念するよ。
僕は基本的に後衛、後ろから矢を撃ち続けるよ。

《ゆうがく2年生》 不束・奏戯 (No 23) 2019-10-02 00:21:26
やった!
女の子一杯だ!

あ、ギリギリ参加メンゴ☆(てへぺろ
俺様ちゃん、王族・貴族コース!
不束 奏戯(ふつつか かなぎ)って言うんだけど…。
ところで、これ、なんて集まり?(今さら課題内容を見て)

……嘘やん!こんなヤバイ課題だったの!?
えー、下手したら食べられる…(がくぶる

>霧の吹き飛ばし
あー、炎で吹き飛ばしする感じなんだよな?
じゃあじゃあ!
俺様ちゃん「ロケット花火」持ってるからそれも使っていい?
どうせならさ~、ド派手にやりたいよなー!
た~まや~♪

【PLより】
緊張感なくて申し訳ない。
「ロケット花火」を設置する為に石碑が填まってる木に行こうかと思います。
石碑の情報がPL情報なのかPC情報なのか判断つかないけど、石碑完成させたら良いのかも?と思うのでリバイバルの特性を活かして石碑探してみようかと。
木を燃やす事も考えたのですが、メリット、デメリットが分からないので一応わかるまで避けようかと。