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見せた一面


ストーリー Story

 異変は、静かに起きた。
 学園に通う生徒達が暮らす寮。
 その一室で、雨漏りが発生した。
 雨漏り……なのだが、天候は晴れ。
 ましてや最上階でも無いその部屋で暮らす生徒は、一度首を捻る。
 何故水が? と。
 そして、自分の上の階に住む先輩が誰かと思案して――。
 即座に寮長に相談し、上の階の様子を確認して貰うと……。
「ようやく……誰ぞ来てくれたか。……すまぬのじゃ。……助けを」
 弱々しい声に、ベッドに投げ出されたままの身体。
 ローレライ特有の浮遊する水は全て床に落ち、それが下の階へと滴っていたらしい。
 トレードマークたり得る赤ぶち眼鏡を掛けたまま、救いが来た、と手を伸ばすその存在は。
 妖艶にてクール系。知識欲の権化、【フィリン・アクアバイア】その人であった。
 一体どうしたのかと聞く声に、
「体調が優れぬ。……原因が分からんのじゃ」
 と弱々しく返した直後、がっくりと全身の力が抜けて、伸ばした腕すらベッドに沈む。
 どうしたもんかと慌てる寮長と生徒へ、フィリンは魔力を帯びた水に乗せて、一枚のカードを渡した。
 魔力による遠隔決済を可能にした支払いカード。
 通称『メメペイ』という、現在試用中の支払いシステム。
 それを可能にするメメペイカードである。
「ソレを使えば、妾の支払いで購買部で購入できる。……頼む、何ぞ買ってきてもらえぬか?」
 あまりにも突飛な話だったが、それだけフィリンの余裕が無いのだろうと察し、カードを受け取った生徒は走った。
 目標は購買部――ではなく談話室。
 そして、談話室に居た皆へ、状況を説明する。
 イタズラ好きでも知られるフィリン先輩。
 そんな先輩が弱っているときに、お眼鏡にかなう物を買っていけなければ、快復したときにどんな報復をされるかなど想像すら出来ない。
 ならば、自分一人ではなく大勢を巻き込んでしまえば、誰か一人くらいはお眼鏡にかなう物を買うだろう、という魂胆だった。
 かくして、この話を聞いた生徒達はメメペイカードを持って購買部へと向かう。
 大量の品揃えを持つ購買部に、果たして弱ったフィリンを満足させる物は陳列されているのだろうか……。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2019-12-10

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-12-20

登場人物 6/8 Characters
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。

解説 Explan

 体調を崩してしまったフィリン先輩を看病するエピソードとなります。
 動けないほど具合が悪いそうなので、様々な身の回りのことが出来ていません。
 買い出しだけに囚われず、色んな看病をしてあげてください。
 また、フィリン先輩は女性寮に居ますが、特例として、男性陣もフィリン先輩の部屋にのみ立ち入る許可が出されています。
 特例が出ていないときは決して女性寮には侵入など試みないように。

 ・メメペイについて
  どこかで聞いた事のあるような名前ですが、基本的に思っている運用方法で間違いありません。
  フィリン先輩のポケットマネーを本人以外が使用できるという都合上、悪用は避けてください。
  バレた時の報復がありますので。

 また、特定の条件を満たすと【称号】を取得出来る可能性があります。取得出来る称号と条件は以下。

 取得可能称号・犠牲無き献身
 取得条件・与えられた条件で、無理の無い範囲で最大限の看病をする


作者コメント Comment
 さて、性癖を詰め込んだエピソードの始まりだ。
 病気で弱々しくなってしまった先輩を看病する。
 これ以上にそそるシチュエーションが他にあるだろうか……いや、無い。
 他にも書きたいことは山ほどあるが、それを書くには、このスペースは文字数が足りなさすぎる。


個人成績表 Report
朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
先ずは買い出しにまいりますわ。お食事を摂っておられないかもしれませんから、お米と卵を買って卵粥を作りましょうかしら。後はローレライですから、いいお水を摂れば元気になって下さるかも、と思い売っていれば何処かの天然水を購入、それと水羊羹とリンゴも買っておきますわ

戻ったらお粥を作りますわ。お米を美味しい水に入れて煮立たせ、そこに塩、昆布出汁を入れて味付け、溶いた卵を入れて最後に青葱を散らして完成ですわ。先輩の具合の状態に合わせ、最初は死をを軽めに、具合が上向いてきたら塩気を少し強くしてみますわね。水羊羹を添えてお出ししますわ

先輩の具合が良くなったら、これで一安心ですわね、と先輩の手を取って喜びますわ

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
長期在学ローレライ様、病気?風邪だっけ。
ザコちゃんヒューマンのこともよく知らないヒューマンだから、その辺の事情現状よくわかんないけど。
なんせよ、病気の時に欲しいものってったら一択くない?
優秀有能なおいしゃ様。他ある?

とりま買うの何にもないから、さっさとめーめーの教官様呼びに行っとく。
ザコちゃんは知らないけど、教官様が見たなら何したらいいー、だめー、ってのは少なくとも確実に教えてくれんじゃん?
秒速の高速で治せるお薬くれるってならそれはそれでおけまるちゃん。

胃になんか入れなきゃなら【魔力の実】あるからあげる。ローレライって魔力じゃん?無いよりいいでしょ。
【サバイバルナイフ】で剥くぐらいはしたげる。

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
フィリン先輩が臥せっておられるとか
購買で食材を調達して、体が温まるお料理でも用意しましょう

購買で牛乳やバター、馬鈴薯、人参、玉ねぎ、サーモンとかの食材を探し、無ければ近くの商店街や市場へ買い出しに

入手した食材を使って、サーモンのシチューを作りましょうか
サーモンが無ければトラウト等で代用

魚は三枚におろして丁寧に骨を抜いて食べやすく
中骨で出汁を取って煮込んで、仕上げに魚を投入し荷崩れないように

林檎が手に入ったら、シナモン、生姜を利かせたコンポートにして体を温めるデザートに

食べづらそうでしたら……はい、先輩あーんしてくださいね
量は多目に作ったんで、お腹がすいた方もどうぞ

体が温まったらお着替えします?

ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
元気になる一品・・・なかなか難しいわね。
私の気持ちが伝わってくれればいいかしら。
うーん、そうね。いろいろ考えたけど靴(スニーカー)にしてみたわ。
普段あまり外にでないイメージだけど、早く元気になってこの靴を履いて色々といろんなところに一緒におでかけしたいわね。

さて私が看病すると病気が悪化しそうなのでやめておくわ。
暇が潰れるように話し相手になるくらいかしら。
紅茶でも飲みながらのんびりなんでもない話しをダラダラしたわね。


仁和・貴人 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:40 = 13全体 + 27個別
獲得報酬:1080 = 360全体 + 720個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
アクアバイア先輩が風邪ひいたってことで
買い出しと看病すればいいのか?

病気で弱ってる女子の部屋に入るのは抵抗があるんだがそういっててもしょうがないし気にしない方向で行こう


買い出しか
風邪の時とといえばよく聞くのが玉子酒、桃缶だよな

玉子酒の材料である卵とお酒、桃缶(なければ何かしらの果物)買っていこう
あ、オレの部屋にあった魔力の実も持っていこう
ついでに保健室行ってリタイナー教諭に後で様子見に行ってもらう様に話しておく

部屋に戻ったら玉子酒を作るんだがアルコールはそこまで飛ばさなくてもいいか
作るもの作ったらさっさと部屋から退散しよう
好きでもない男子に長時間部屋に居座られるの嫌だろうしな
・・・お大事に

ビャッカ・リョウラン 個人成績:

獲得経験:16 = 13全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
先輩を看病しよう

【行動】
とりあえず、まずはベッドにちゃんと寝てもらわなくちゃ!
投げ出されたままの体制じゃ良くなるものも良くならないよ。
ベッドにちゃんと寝かせて、掛布団や毛布もちゃんと掛け直して、
あ、眼鏡も外しておくよ。他意はなくて、寝返りとかで割ったりしたら大変だからね。
可能なら新しい寝間着に着替えさせたいかな。

暖炉やストーブなどの暖房機具があるなら付けておきたい。
こういう時は部屋を暖かくしておいたほうがいいからね。

あとは、ほとんど部屋で待機かな。
病人を一人にするのは危ないからね。
部屋を軽く片付けたり、喉が渇いたら水を持っていったりとか、
簡単な身の回りをお世話もしながらね。

リザルト Result

 【フィリン・アクアバイア】の部屋に、ノックの音が響き渡る。
 音を鳴らした主は【ビャッカ・リョウラン】であり、フィリンの体調を心配し、購買には寄らずに部屋へと直行していた。
 しかし、ノックの後にいくら待っても返事は無く、扉の向こうから聞こえてくるのは呻き声のみ。
「失礼します」
 やや大きめの声でそう言って部屋へと入ると……。
 目に飛び込んで来たのは布団に投げ出されただけのフィリンの姿。
 思わず駆け寄り声を掛けようとするが、どうやら眠ってしまっているらしい。
「せめて布団くらいは掛けないと……」
 そう言ってフィリンの身体へと手を伸ばし、起こさぬようにとゆっくりゆっくり体勢を変えていく。
 ようやく投げ出された、という体勢から寝ていると呼べる体勢になった頃、部屋の入り口に人影が一つ。
「んお? 凜々しめドラゴニアの女ゆーしゃ様じゃん。そっちも看病?」
 独特な口調と抜けた言葉遣いが特徴の【チョウザ・コナミ】が、開きっぱなしの扉からヒョッコリと入ってきた。
「そっちも、と言う事はきみも看病を?」
「そのつもりだったんだけどね。ザコちゃん以外も来そうなら退散撤退しようかね。ほら、集まると五月蠅くなりそうだし? それを好まないかもじゃん?」
 来た目的をビャッカが尋ねれば、そうだけれども状況次第、とチョウザは返す。
 続けて、
「本当は保健室の先生でも連れてきたかったんだけど、最近極寒寒い感じだし? 保健室は保健室で手一杯みたいなんよね」
 と、ここに来る前に保健室へと立ち寄ったことと、助力は得られ無さそうだと言うことも告げた。
 が、
「んでもやっといた方がいいことは聞いたから、とりまザコちゃんはそれやろっかなーと」
 そう発言して部屋から出て行く。
 つまるところ、フィリンを見てくれている間に出来るだけ動く、と言う事なのだろう。
 その旨を理解し、ビャッカがフィリンへと視線を向けると、うっすらと瞼が開かれていた。
「大丈夫ですか?」
 騒がず、慌てず。静かにそう尋ねると、
「大丈夫……では無いのじゃ。久方ぶりにここまで酷く崩したのう」
 小さくもしっかりとした声で。
 今回の騒動の中心たるフィリンが応答した。
「何か私に出来る事は?」
「ふむ……。着替えたいのじゃが――頼めるかや?」
 同性だからこそお願いできることを、フィリンは容易く口にする。
 そんなフィリンのお願いにビャッカは、少しだけ顔を赤くしながら頷くのだった。

 *
 『メメタァン!!』
 フィリンへの看病に必要だと思ったアイテムを抱え、受け取ったメメペイカードで決済を行った【ベイキ・ミューズフェス】、【仁和・貴人】、【ニムファー・ノワール】、【朱璃・拝】(しゅり おがみ)は、その決済音に思わずずっこけそうになってしまう。
 随分と主張が強すぎやしないか、と。
 けれども決済は正常に行われたようで、無事に購入することが出来た。
 予想外の出来事……というよりは音に驚きはしたが、それでも四人は各々が思う看病に必要な物を抱えて購買部を後に。
 目指すはもちろん、寮のフィリンの部屋。
 一名は入った瞬間にたたき出されやしないかと懸念したが、その時はその時だ、と割り切ることにしたようだった。

 *
「こんくらいでいーかな」
 何かをするために部屋から出て行ったチョウザは、水を汲んだ、恐らくどこからか借りてきたであろうと思われる水差しを持って戻って来た。
「それは?」
「んー、何か空気が乾燥してっと良くないんだって。喉とか。だから水張ったボウルとか置いとけって聞いた」
 行為の意味を聞いたビャッカへ、恐らく保健室で仕入れたのであろう情報を披露するチョウザ。
 そこへ、
「フィリン先輩! 体調が悪いと聞いて馳せ参じましたわ!」
「大丈夫ですか?」
「お届け物を届けに来ましたわ」
「オレ、入っても大丈夫です?」
 と、買い物組である四人が合流。
 一人、部屋の前で入る許可を仰いでいる貴人以外は部屋に入っていきフィリンと対面。
 「良いと言えば嘘じゃな。が、主らを見ると幾何(いくばく)かはマシになったのじゃ」
 お見舞いの一番の効果は元気のお裾分け。
 それが出来ていると分かり、先入り組の二人は密かに安堵する。
「そしてそこの主も入ってよい。下心のみで来たわけでは無いのじゃろう?」
 未だにドアの外で待機する貴人へ、そう伝えると、ゆっくりと。
 恐る恐る入ってくる貴人。
「先輩、食欲の方はありますか?」
「あるようでしたら、調理を行って来ようかと思いますが……迷惑でしょうか?」
 食材を買ってきた二人、ベイキと朱璃がそうフィリンへと尋ねると、フィリンは少し間を置いてゆっくりと頷いた。
 では、という言葉を残し、部屋を後にする二人。
「ん、食欲はあんのね。てかさー、こんだけ人来たし、そこまで人手いる?」
 六人へと増えた看病者の中で一人、チョウザが疑問を口にした。
 が、
「賑やかなのは良いことじゃ。少なくとも、妾は気にせぬ。こうして人と絡むと言うのもあまりしてこなかったからの」
 そんな疑問に返って来たのは、意外な、というか、ちょっぴり弱気な回答だった。
「ん、じゃあ話し相手暇潰し程度にはなれそうだから居座ろ」
 何やら思うところがあったらしいチョウザだったが、その回答を聞いてまだ部屋に居ることに決めたらしい。
 と、
「フィリンさん! わたくしのお見舞いの品、受け取ってください!」
 唐突に。
 箱を差し出したのはニムファー。
 どこぞのおばちゃんのような見た目の彼女が選んだお見舞いの品とは果たして――、
「靴……かや?」
 開けて出てきたのは靴。
 お見舞いの品として相応しいかと言われると疑問だが、それでも想いは込めてある。
「早く体調を治して、一緒に色んな所へお出かけを、と思いまして。その為に、耐久力があり、軽くて丈夫な靴を見繕ってきましたのよ」
 どうやら彼女のこだわりが詰まった靴らしい。――が。
 そのこだわりは、機能だけに留まらない。
 七色ラメ入り虎柄の靴。むしろ購買に売ってあるのかとか、何なら自作なのではと疑いたくなるような外観だった。
「なるほど、奇をてらった見舞い品じゃの。その時があれば使わせてもらおうかの」
 からかいやふざけでは無い、ニムファーの善意であり好意なそれを、笑うも拒否することもせず。
 フィリンはゆっくりとそれを受け取り、ベッドの脇へと置き、そこから雑談へ。
「体調を崩した原因って心当たり有ります?」
 そう尋ねたのは貴人。
 それに対するフィリンの解答は、
「分からぬのじゃ。別段変わった事無く普段通りに過ごしておったからのぅ」
 であり、その解答の中の単語にニムファーが反応した。
「普段通りというのは?」
 と。
「調べ物をしておってのぅ。かれこれ三日ぐらいか? ずーっと本とにらめっこしていただけじゃぞ?」
 そしてフィリンの口から出てきた言葉は、何というか。
 体調を崩しても不思議ではないような内容で。
「その間ご飯は?」
「摂ってないのじゃ」
「睡眠は――」
「寝る暇なぞ無かったぞ?」
「お風呂は……」
「流石にお風呂は入っていたのじゃ。その時くらいかの、本から目を離したのは」
 ビャッカが、貴人が、ニムファーが。
 質問を代わる代わる行った結果導き出された答えは――。
 不養生……ではなかろうか。
 思いはしても口には出来ないその結論に一同は押し黙るしか出来ず。
 唯一口を出さなかったチョウザが、
「換気の為に窓開けんね」
 空気の入れ換えを提案するくらいには耐えがたい空気だったらしい。
 
 *
「お待たせしましたわ! 食欲は有るとの事なのでお粥を作ってきましたわ!」
「まだ入るようでしたらシチューも作ってありますから言ってくださいね?」
 調理に行っていた朱璃とベイキが部屋に戻って来て、二人は小さな鍋を持っていた。
「ふむ、いただくとするかの。あぁ……何日ぶりの食事かのぅ」
 先ほどまでの会話を知らない二人は首を傾げるが、特に気にする様子も無く。
 まずは朱璃が作ったお粥がフィリンの前に。
 蓋を開け、立ちこめる湯気といい匂い。
 昆布の出汁のきいた、シンプルな卵粥。
 僅かに微笑み、ゆっくりと掬って、何度か息を吹きかけて。
 やっぱりゆっくり口へと運ぶ。
 噛み締めること二度三度。向けられた微笑みは満足だという証だろう。
「あ、炊事場が空いたならオレ調理して来る」
 思い出した様にそう言って、貴人は部屋を後にする。
 唯一の男性と言うこともあり居心地の悪さでも感じていたのだろうか。
「まだ食べられますか?」
 そうこうしているうちにあっさりと完食したフィリンへと、ベイキが声を掛ける。
「うむ。あまり自覚しておらなんだが、わりと空腹だったようじゃ。流石に三日間の絶食はよくなかったようじゃのぅ」
 かかかと笑い、近くへ、とベイキを促して。
 作ってくれたシチューとご対面。
「鮭は苦手では無かったですか?」
「大丈夫じゃ。食えぬのは蛇やそれに類似した見た目の物だけよ」
 意外な苦手な物を告白し、シチューを一掬い。
 体調を考慮した薄めの味付けと、各種素材の栄養を余すこと無く摂取出来るシチューという調理法。
 それらを堪能し、ゆっくりと目を細めたフィリンは食べ終えた後に小さなため息を一つ。
 しかしそれは、不満を現すため息などではなく、満足した事を現すもので。
 体調を崩した最初の頃の、それこそ死んだ魚のような顔は、食事を終えたこと。
 そして何より、自分の身を案じて来てくれた後輩達に看病されるというのが効いたようだ。
「他に何かして欲しい事はありませんか?」
 一通り食事を終え、一息ついた頃。
 後片付けを終えたビャッカがそう尋ねた。
「ふぅむ。腹は満たされたしのぅ。……しかしそうじゃな。汗をかいたせいかベタ付いて気持ちが悪い。幸い女子しかおらぬようだし、あの者が戻ってくる前に頼めるかや?」
 それに対したフィリンの要望は、看病を始めた頃と同じく、同性にしか頼めない事だった。

 *
 身体を全身拭き終えて。
 貴人が帰ってくる前に、と分担で急いで終わらせた頃。
「先輩、戻って来ましたけど……入っても大丈夫ですかね?」
 ラブコメ的には惜しいタイミングで。
 けれども貴人の生命を、社会的な立場を鑑みれば正しいタイミングで。
 しかもちゃんと確認するという手順を踏んだことで、少なくとも貴人の社会的な死は免れた。
「構わぬ。さてさて、何を持ってきてくれたのじゃ?」
 声を受け、貴人が部屋に入ると、いつの間にか普段通りに魔力の水を周囲に漂わせているフィリンの姿が有り。
 その脇ではチョウザがサバイバルナイフで器用にリンゴの皮を剥いていた。
「先輩がその……お酒が好きという噂を耳にしたので――卵酒を」
「すぐに寄越すのじゃ」
 言うが早いか間合いまで貴人が近付いた瞬間に。
 先ほどまで倒れていたとは思えぬ速度で、その手からマグカップを掠め取った。
「あぁ、酒は百薬の長という。これこそが妾にとっては一番の薬じゃ」
 頬ずりでもしそうな勢いのフィリンは、しかし冷静にカップへと口を付けて。
 一滴一雫を味わうように、ゆっくりゆっくり傾ける。
 程よく温められた卵酒は、アルコールも相まって身体の芯から温めるようで。
「くふっ。良薬は口に苦しと言うが、こやつは何とも蕩ける甘さじゃのぅ」
 上機嫌に、笑みを浮かべたフィリンは、こっくりこっくり。
 味わって卵酒を飲み干して、一度大きく伸びをした。
「リンゴ、剥けたよ」
 その伸ばした手の先へ、先ほどから剥いていた果実を差し出したチョウザ。
 無言で一つを掴みそのまま口へ。
 シャリシャリと、周囲へ咀嚼音を響かせて。
「そう言えば主ら、メメペイは使えたのじゃ?」
 気になったのかそんなことを尋ねてきた。
「? 使えましたけど?」
「そう言えば気になったんですけど、あの決済音は主張が激しすぎません?」
「周りに居た人が全員振り返ったもんね」
「もし私達にも配られるとして、あの音を毎回聞くのは……」
 何故そんなことを聞くのか? と首を傾げた朱璃に続き、ニムファーが決済音にツッコんで。
 それに乗っかる貴人と、今後各生徒に配布されたときの事を考えたベイキの発言に対し、
「どんな音じゃったかは知らんが、メメペイの決済音はメメル学園長の機嫌次第じゃぞ?」
 と衝撃的なことを口にしたフィリン。
「機嫌次第って……今日はどんな音だったのかな……」
「確か……『メメタァン!!』でしたわよ?」
 そんな発言をされては気になることは必然で。
 その必然から今日の音を尋ねたビャッカに返したのは朱璃。
「そうか。その音ならば大分上機嫌のようじゃな。何ぞろくでもないことを企んでおらぬとよいが……」
 決済音の解説の後に、何やら不穏な空気を漂わせる発言をしたフィリンだが、看病に来た皆としては興味はそちらよりも――、
「他の機嫌の時はどのような音が出るのでしょうか……」
「あの人の事だ。爆発音とかでも驚かない」
「無音にして不安を煽る可能性もありますわ」
「それらを知るためにも、私達が早く使えるようになって欲しいね」
 こちらの方に興味津々な様だった。

 *
「ふわぁ……。ん、すまぬ。そろそろ眠気が来たようじゃ」
 切ったリンゴをみんなで摘まみ。
 色々な雑談に花を咲かせていると、フィリンが大きな欠伸を一つ。
「あら、もうこんな時間ですわ。私達も長居しすぎたかも知れませんわね」
「あんまり居座ってもって思ってたけど、時間立つのは一瞬すぐだねぇ」
「部屋の片付けして、私達は退散しますか」
「オレもそろそろ戻らないと、事情を知らない人が来たら捕まりそうだ」
「ではでは先輩、話の続きは又の機会にお願いしますね?」
「元気になったら一緒にお出かけ致しましょうね?」
 それを合図に、見舞いに来た六人はテキパキと片付けを始めて。
「それでは、失礼しますわ」
 と、全員揃って部屋から出て行った。
 その際に、貴人がひっそりベッドの脇へ、何かを置いていったのだが、それに気が付くのはもう少し後の話である。
「うむ。今日は迷惑掛けたのじゃ。くれぐれも、主達は体調を崩すでないぞ」
 自虐気味に、そうベッドの中から六人の背中を見送ったフィリンは布団を被る。
(くふ、後輩には弱いところなぞ見せられるわけが無いからのぅ。ま、快方に向かっているのは事実。まぁ、あの者らの手柄としておくかのぅ)
 可能な限り音を漏らさぬように、頭まで布団の中に入って咳き込んだフィリンは、ここでふと、ベッドの脇に何かあることに気が付いた。
(ん? 何じゃ?)
 手探りでたぐり寄せ、確認してみたそれは――。
(水分補給用の調整水と、栄養補給用のゼリー……か。かかか、ひょっとすると無理していたことがバレておったのかも知れぬのぅ)
 最後まで悟られまいと振る舞っていたはずなのに。
 ひょっとしたら、そんな思いから買ってきたそれは必要なさそうだと手渡さず。
 けれども強がりなのだと、隠しているだけなのかも知れないと深読みした後輩によって、去り際に置かれた思いやり。
(今回は……いや、妾が弱っておったからかの。かかか、やるでは無いか)
 一瞬……ほんの一瞬だけ感心したフィリンは、水分補給用調整水を口元に当てると。
 グイッと。
 先ほど出掛かった言葉ごと飲み込むように。
 大きく呷るのだった。



課題評価
課題経験:13
課題報酬:360
見せた一面
執筆:瀧音 静 GM


《見せた一面》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 1) 2019-12-06 00:01:55
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 2) 2019-12-06 07:29:12
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
個人的には、メメペイの決済音がになるところです。

さて、どうやって濡れ濡れ先輩をお助けしましょうかね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 3) 2019-12-06 22:18:24
んー、買い出しの他に色んな看病、という事ですわね。ローレライの看病はした事がありませんけれど、暖かい消化のよい食事や、体を拭いたり着替えさせたり、等がとりあえず思い浮かびますけれど。薬を飲ませた方がよいのかもしれませんけれど原因が解らないとの事なので下手な薬を飲ませると逆効果かもしれませんから悩みますわね。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 4) 2019-12-06 23:31:46
オレは取り敢えずアレだ。
アクアバイア先輩はお酒が好きらしいからな・・・
玉子酒とかそこらへん作ろうと思う。
・・・着替えとかは手伝えそうにないな。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 5) 2019-12-09 21:04:13
ギリギリの参加だけどよろしくね。

私は普通に看病するよ。
こんな状態のフィリン先輩を放置する訳にもいかないし、
身の回りをお世話をしながら部屋で待機する感じかな。

正直、買い物は必要なければ最後まで行かないかもしれない。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 6) 2019-12-09 22:03:12
とりあえずお米を買ってお粥を作りますわ。貴人様と被りそうですけど卵粥がよいかな、と。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 7) 2019-12-09 22:52:16
なんか言った気になってたけど、特になんも言ってなかったね。笑う。
ザコちゃんは手持ち持っていきつつちょっかい掛けに行くだけ。おわり。
…ちょっとだけ思い出してねぇ。あんまり楽しくない思い出。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 8) 2019-12-09 23:57:33
ニムファー・ノワール17歳です(ぉぃぉぃ

危うくまた白紙出しかけたわ(汗
看病したら病気悪化させそうなので買い物に頑張ってみるわ