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ピーチビーチピッチ!


ストーリー Story

 ピーチ!!(挨拶)
 ……諸君、吾輩だ! 桃色軍曹だ! ついにやってきてしまったな、この季節が!
 色づく紅葉、爆ぜる芸術、血反吐に塗れるスポーツ、そして全てを喰らう暴食の秋!
 そう、つまり桃の俎上の季節だ!
 ご存じの通り春先、川に放流された桃の稚魚は豊かな清流に抱かれ、その後大海を知り、人生……もとい桃生の荒波にもまれる! やがて産卵時期に入ると故郷の川へと戻り、命がけで子孫を残そうと、どんぶらこして、果てる!
 まさに自然の神秘というやつだな! 
 そして何より、酸いも甘いも乗り越え、子孫を残そうと必死にもがき、あがき、がむしゃらに川を俎上して桃生を全うした桃たちの果肉は最高に引き締まっており、その味は至高にして至福なのである!
 この桃を食している時に感じる多幸感などは、まさに桃源郷と表現して差し支えない程であろう!
 ピーチッチッチ!!(笑)
 吾輩、またしてもうまい事を言ってしまったようだな!
 ……さて、歓談もこれくらいにして、本題へと入ろうではないか! じつは諸君にはこの一大イベントの陰に潜むと噂される――む? なに? 桃の俎上なんて知らないし、聞いたこともない? ましてや、桃が川や水の中を泳ぐなんて信じられない? 鮭と間違えていないのか……だとォ?
 ピィィーッチ!!(怒)
 諸君、世間知らずにも程があるぞ! 今までの桃生……もとい、人生を如何様に過ごしてきたのだ!! 己が無知と無関心さを恥じるがよい!!
 ……などと怒っていても仕方がない!
 本題へと入ろう! 事は一刻を争う!
 じつは最近、桃の俎上する地域に桃狩りに来ているクマさんが出没していてな……いや、クマさんが桃を食べること自体は何も問題はない。問題は、それが一頭や二頭ではないというか……同志たちによるクマさん目撃情報は相当数で、中には狂暴化しているクマさんもいるらしいのだ!
 この時期、例年通りであれば、子供たちからご年配の方まで、様々な方々がやってきて、桃の俎上を通して大自然の過酷さ、美しさ、壮大さを肌で感じてもらっているのだ! その間、吾輩たち『すもももももももものうち隊』がクマさんたちを一時的に川から引き離し、ギャラリーの安全を確保していたワケだが、こうも数が多いと吾輩たちの首も回らん……ということで、『すもももももももものうち隊』は現在、猫の手も借りたいという状況なのだ!
 そこで諸君らには、我々の手伝いを頼みたい!
 なに、心配するほどの事でもない! 何もクマさんを殺して追い返せなどとは言っていない! 桃には桃の、吾輩たちには吾輩たちの生活があるように、クマさんにもクマさんの生活がある! それを脅かすことは何人たりとも許される行為ではない! 吾輩たちが行っているのは、一時的な誘導! それもあくまで生態系に影響を及ぼさない程度でだ! こちらから危害を加えることは決してない! ……だがまあ、たしかにクマさんたちの攻撃を喰らってしまえば致命的だろう! しかし、我々には秘密兵器である、特別製の熊鈴だ!
 熊鈴をひとたびガランゴロンと鳴らせば、クマさんたちは尻尾を巻いて逃げ出していくのだ!
 諸君らには期間中、特別製の熊鈴を配布する! これを所定の位置について、時折鳴らすのが諸君らの仕事だ!
 報酬についてだが、通常報酬に加え、別途現物支給(桃)も視野に入れている! 是非、奮って参加してくれたまへ!
 ……あと、これは注意というより警告だが、海と川の境目……河口付近の浜辺には近づかないほうがいい! どうやらクマさんを狂暴化させ、操っている原因である『セインディーネ』がいるとの噂を耳にした! やつらは美しい女性の見た目に反し、非常に狂暴かつ、残忍で冷酷無比! 敵とみなしたものには問答無用で襲い掛かかるうえに、なんと好物は人肉とのこと!
 ピーチ……(震)
 そして最も厄介なのが、通常のセインディーネは歌声で水を操るのだが、このセインディーネはクマさんを操っている! つまり、吾輩たちも操られてしまうかもしれないという事だ! 以上の事を念頭において、この一大イベントを管理かつ楽しんでもらいたい!
 そして……いいか! セインディーネには決して近づくんじゃないぞ! 絶対だぞ! 特別討伐報酬は出すが、絶対に近づいちゃダメだぞ! 桃色軍曹の約束だ!


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-11-30

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2019-12-10

登場人物 3/8 Characters
《ゆうがく2年生》不束・奏戯
 リバイバル Lv10 / 王様・貴族 Rank 1
【外見】 金髪セミロングの外ハネ 黄色人種 ややつり目の赤い目 見た目はイケメンなはずなんです 【服装】 基本改造制服 マント無くしてもっとロングコートにしよ! 萌え袖は外せないね! 中の制服の基本カラーが赤と黒で コートは緑で行こう! 【性格】 女子が大好きのチャラ夫 ともすれば一目惚れも多い 大体振られる メンタルは形状記憶合金 3日くらいで元に戻る 器用貧乏というか広く浅い為に中途半端 パリピ 彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい彼女欲しい フェミニストではあるが男子の友達も大事にするよ! 地味に服装に拘りがあるおしゃれさん ※アドリブ大歓迎! GM様へ 思いっきり不遇にしてやって下さい
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《ゆうがく2年生》ドライク・イグナ
 ルネサンス Lv14 / 村人・従者 Rank 1
「あっしはライク・・・そう、ライクって呼んでほしいっすよ」 一人称は『あっし』『ライクさん』 二人称は『そちらさん』『~のにーさん』『~のねーさん』 ドラゴニアの方限定で『未来の我が主』 ただし、レダさんに限ってはホイッパーのにーさん 語尾は~でヤンス、~でゲス、~っスと安定しない。 三下ムーブ。 笑うのが苦手 身長:180㎝ 体重:85kg前後 好きなもの:自分を特別扱いしない人、自然に接してくれる人、美味い食べ物 苦手もの :家族、集落の人々。自分を持ちあげてくる人。 嫌いなもの:まずい食事。自分の名前。 趣味は筋トレ、狩り、釣り。 サバクツノトカゲのルネサンス 感情が豊かで涙もろい・・・が種族の特徴なのか能力が暴走しているのかよく血の涙を流す。 その血に毒性はないし、勢いよく噴射することもできないが血には変わりはないく不健康そうなのは常に貧血気味のため。 シリアスはホラーにコメディではカオスになる? ちょろい。よく餌付けされる。 将来の展望は特になく卒業までに何かしらの職につけるだけの技能を習得出来たり、ドラゴニアの主君を得られればラッキーくらいにしか考えてない。 祖流還りによる必殺技は『毒の血の涙(目からビーム)』 そこそこの量の毒性を持った血液を相手に向かって噴射する。 自分は貧血になりぶっ倒れる。 相手はびっくりする。血がかかったところが痒くなる。

解説 Explan

 このエピソードでは非戦闘ルートと戦闘ルートで分かれており、非戦闘ルートでは桃色軍曹(幼女)の指定した場所に立って、俎上してくる桃を狙うクマを特製の熊鈴で追い払っていただきます。時折熊鈴を鳴らすだけなので、難易度は低いです。
 戦闘ルートでは桃色軍曹(幼女)の忠言を無視して元凶であるセインディーネ(特殊個体)と戦っていただきます。このセインディーネは通常種とは異なり、歌声で水を操るほかに、クマを操って狂暴化させ襲わせてきます。この操られているクマについてですが、その戦闘力はほぼ熊型のジャバウォックと同等と考えていただいて構いません。ちなみに、こちらのクマにも熊鈴は問題なく効くので、上手く利用して立ち回りましょう。このセインディーネには水とクマ以外を操る能力はありません。もちろん、セインディーネ自体もそれなりの戦闘力があるので、楽には倒せないと思います。外見は人魚に近いです。知性はあり、人語を理解は出来ますが、あくまで食物として認識しているため交渉などには決して応じません。遭遇したら最後、倒すしかありません。クマと水を操る際、ピッチが違うので聞き分けて行動すると楽に攻略することが出来ます。
 以上のことを踏まえて、桃の俎上というビッグイベントを楽しんでいただきたいと思います。見事達成された方には桃色軍曹(幼女)から素敵な桃(非戦闘ルート)か極上の桃(戦闘ルート)が支給されます。どちらも非常に傷みやすいため、その日のうちに消費しなければいけませんが、その味は格別とのことです。


作者コメント Comment
 秋もより一層深まってまいりました。週末には近くの山へ紅葉などを見に行かれる方もいるのではないでしょうか?
 かく言う水無の週末は自室にて石像のようにじっと動かない生活が続いています。そろそろ人属性から石属性に変化しそうですが、それはそれ、これはこれ。楽しくどんぶらこと流れる桃を思い浮かべて感傷に浸ってみるのも悪くないのではと思い至って筆を執らせていただきました。
 はい、自分でも何を言っているのかよくわかっていません。
 兎にも角にも、皆さんがこのエピソードで笑顔になっていただければ幸いです。


個人成績表 Report
不束・奏戯 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
セインディーネちゃんの胸にダイブするんだぜ!絶対だぜ!(キリッ

【行動・心情】
セインディーネちゃんは見た目女子じゃん?
可愛いじゃん?
でも多分襲ってくるじゃん?
殺られるなら!
やり返してその胸にダイブしたらいいかなって俺様ちゃんは思うんだぜ!(本気の顔
なんていうかおっぱい!(オブラートに包まないスタイル

とりあえず、セインディーネちゃん見つけたら適度に距離を保ちながら足を狙って移動力を削ぐぜ!
あとは攻撃するタイミングで攻撃する事で攻撃阻害出来ないかやってみるぜ!
ま、最悪俺様ちゃんは『透過』出来るから
敵を挑発しながら気を散らしてこちらに攻撃を集中させるのもあり
倒したら!その胸元にダイブだぜ!

ニムファー・ノワール 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:195 = 65全体 + 130個別
獲得報酬:6000 = 2000全体 + 4000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
では桃色軍曹(幼女)の忠言を聞いて(ぇ、セインディーネ討伐にむかうわよ。
熊鈴はお借りしますわよ。

まずは厄介な歌声を封じ込めにいくわよ。
武器の鞭で顔、あるいは喉あたりを命中率優先で狙って歌声を阻害妨害していくわ。
それでも操られてしまった熊さんは熊鈴をガランゴロンして「森へおかえり・・・」していただくわ。あるいわ【号令の鞭】で森へ誘導するかたちかしら。
水は歌声をよく聞いてさけるしかないわね。
もし鞭が喉に絡めば締め上げて詠唱妨害していくわ。
終盤で喉に絡めば【覚醒】して【白翼飛翔Ⅰ】
首吊り状態にして一気にトドメを刺しにいくわよ。

ドライク・イグナ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
桃色軍曹どのは正気なんスかね?
なんかいろいろ大丈夫なのか気になるとこではあるでヤンスがそれはそれとして魔物退治でゲスよ
まずは熊さん対策として熊鈴を槍につけるッス
こうすればことあるごとにちりんちりん・・・うるさいっでヤンスね!

戦闘自体はセインディーネに鉤爪付ロープ(大)で絡めて手繰り寄せて槍で突くでゲスよ!
槍がうまく振るえない場合はル3、十分振るえる場合は二連突き
味方の攻撃に合わせる場合はル5も使うでヤンス

魔物からの攻撃は忍耐でひたすら耐えるでゲスよ

それにしても幼女からの桃・・・
あっしはきれいなおねーさんの桃が欲しいっすねぇ・・・
あ、貰った桃には美味しくむしゃぶりつくでヤンスよ!!

リザルト Result

「美女じゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 海と川の境目――河口付近にある浜辺に、【不束・奏戯】の声が鳴り響く。
 桃色軍曹の忠告を振り切った奏戯、【ニムファー・ノワール】、【ドライク・イグナ】の三人はセインディーネを討伐すべく、件の浜辺へとやってきていた。
 セインディーネは浜辺で狂暴化したクマとライブを行っており、三人は比較的簡単に見つけることが出来ていたが――。
「うぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおっぱ……!!」
 奏戯はセインディーネを発見した途端、ものすごい形相と速度で突撃していった。
「ちょ、何なのですか、あのお方!?」
「あちゃあ……こりゃ計画がパーでヤンス……」
 ニムファーとドライクは二人して、奏戯の突然の暴走に頭を抱えた。
「アアアアアアアアアアアアアアアア……!」
 そんな奏戯の暴走に気が付かないわけがなく、セインディーネがその美声を上げると、狂暴化したクマたちが一斉に奏戯に襲い掛かっていった。
「こりゃまっずいっスね……! 不束のにーさん! 鈴! 熊鈴っスよ! さっき桃色軍曹どのに貰った鈴で、とりあえずそのクマをなんとかするでヤンス!」
「鈴ぅ……? ……ああ、そうさ! 俺様ちゃんは今、セインディーネちゃんに愛という音色を伝える鈴となっているんだ!」
「き、聞いちゃいないでゲス……」
「あの、ちょっと待って!? もしかして奏戯さん……熊鈴を持ってないんじゃ……?」
「ンなバカな!? それじゃあただの自殺行為っスよ!?」
 そんな二人の心配を他所に、奏戯とクマの群れが肉薄する。
 クマたちは奏戯を仕留めるべく、奏戯の胴ほどはある太い腕を振り上げ襲い掛かった。
「遅いんだよ!」
 振り降ろされたクマたちの手が空を切る。
 奏戯は寸前で透過を使用すると、クマの群れをまっすぐに突っ切って、セインディーネに急接近した。
「お、おお……! さすがっス! 不束のにーさん! そのまま行くでヤンスー!」
「セインディーネちゅわーん!」
 奏戯はぴょんと飛び上がると、そのまま、水に飛び込むようにセインディーネへダイブした。
「ァァァァァァァァァァァァァァァァ……!」
 セインディーネが再び声を上げると――ザッパーン!
 大きな水音。
「がぼがぼ……、がぼががぼがががぼぼ……?(ふむふむ、これがセインディーネちゃんの感触……なんというか、水に近い肌触り……なのか……?)」
 恍惚の表情を浮かべながら手をワキワキと動かす奏戯は、やがてその違和感に気が付く。
「おーい! 不束のにーさーん! そこ、セインディーネが作り出した水の中っスー!」
「がぼ……?(え?)」
 奏戯はそこで目を開けた。
「がぼぁー!?(なんじゃこりゃー!?)」
 奏戯は空中に浮く、水の塊の中に閉じ込められていた。
「はやく出ないとおぼれるでゲスよー!」
「がぼがぼ……!(そんなこと言っても……!)」
 奏戯は水中で必死にもがこうとしたが、水の中から出る事はおろか、まともに体を動かすことさえ出来なかった。
 そこへ口を開けたセインディーネが奏戯に肉薄する。
 ――がぶり。
「がぼぁーーーー!!」
「ありゃりゃ……あれじゃあ不束のにーさん、溺れるよりも先にセインディーネに食い殺されちゃうでゲスね……」
「……あの、わたくしが言うのもなんですけど、ライクさん、ちょっと悠長すぎない?」
「え? いやぁ、そうは言われてもっスね……」
 ニムファーに指摘されたドライクは奏戯を指さした。
「が、ぼがぼが……(こ、これはこれで悪くないかも……)」
 奏戯は特に抵抗することなく、なされるがままになっていた。それを見たニムファーは肩を落とし、手で顔を覆った。
「……はぁ、とりあえず奏戯さんを回収するわ。反撃はそこからよ」
「はて……、なんか策でもあるんスか?」
「ええ。突破口はセインディーネの放つ声量で……て、策はあってもなくてもまずは仲間を助けるのが先手ですよね?」
「……おお、それもそうでゲスね」
 ドライクはポンと手を叩くと、鉤爪付ロープを取り出した。
「不束のにーさーん! 今からロープ投げるんで、出来るだけ暴れず、良い子にしててほしいっスー!」
 ドライクはそう言うとロープをぐるんぐるんと回し、勢いよく投げた。
 しかし、ロープは奏戯を無視し、まっすぐセインディーネに向かって飛んで行った。
「アアアアアアアアアアアアアアアア……!」
 セインディーネが声を上げると、クマがロープとセインディーネの間に割り込み、鉤爪を弾いた。ドライクはそれを確認すると、急いでロープを回収した。
「うーん、不意打ちもダメ……となるとこりゃ近づいて直接攻撃するか、周りのクマをどうにかしないとダメぽいでヤンスね……」
「……あの、ライクさん?」
「はい? どうかしたっスか?」
「ほんとうに奏戯さん、溺れ死ぬわよ」
 ニムファーに指摘され、ドライクは改めて奏戯を見たが、奏戯はすでに水の中で白目を剥いていた。
「おっと、失敬。今度こそ助けるでゲス」
 ドライクはそう言うと、再びロープを投げた。
 ロープが奏戯の胴に綺麗に巻き付くと、ドライクは思い切りそれを引っ張った。
 ――ザバーン!
 水しぶきを上げ、綺麗な弧を描いて、奏戯は二人のもとへ舞い戻った。
「げェほっ……けほけほっうおえっ……!」
「あー……だいじょぶっスか? 不束のにーさん?」
 呆れ半分で訊くドライクに対し、ずぶ濡れの奏戯は『なんて事をしてくれてんだ!』と、息を切らせながら食いかかった。
「それはこちらのセリフよ。まったく、何を考えているのかしら……とにかく、事前に桃色軍曹から聞いたセインディーネの情報……クマを操る時の声量と、水を操る時の声量の違いがだいたいわかったわ」
「おお、さすがでヤンス。ニミィのねーさん。あっしにはどれも同じに聴こえて……」
「ふふん。注意して聞けば何とかなりますわよ。ライクさんには聞き耳があるんですもの。しかし、やはり物事を冷静に捉えられるわたくしだからこそ聞き分けられたと言っても過言では――」
「……まあ、ほんとはあっしもわかってるんでゲスが……」
「なぜそんな優しい嘘を!?」
「こら、ライクちゃん! ここはあえて聞き流してやるのが良い男の条件だぞ! ちなみに俺様ちゃんも聞き分けられてたけどね!」
「なんかいま、物凄く恥ずかしいんですけど!? わたくし!?」
「大丈夫だニミィちゃん! 俺たち二人は聞き分けられなかったことにするから!」
「そっス。もうあっしはな~んも聞こえないでヤンスよ」
「これ以上わたくしを辱めないで!? ……コホン、それであとは……まあ、その……この中でただ一人、声を聴き分けられるわたくしがセインディーネにトドメを刺すので……」
「あ、そこは甘んじちゃうんでゲスね……」
「そうよ! 甘んじるわよ! ……だからお二方は援護のほうを――」
「ダメだ。俺様ちゃんが行く」
「……はい?」
「セインディーネちゃんにトドメを刺す役は俺様ちゃんがやるぜ!」
「……いや、だからここは適宜対処ができるわたくしが――」
「さっきのさっきまでセインディーネちゃんに食べられていた俺様ちゃんだ。もうセインディーネちゃんの事は手に取るようにわかる」
「あの、話を聞――」
「なに、心配はいらない。まっすぐ行って俺様ちゃんの愛を伝えるだけだぜ」
「また食べられたいの!?」
「いいや、それは違うぜニミィちゃん。今度は俺様ちゃんが食べる番だ」
「……はあ?」
「それに、セインディーネちゃんは間違いなく俺様ちゃんに惚れてる。俺様ちゃんにはわかる」
「どこからそんな自信が出てくるでヤンスか……」
「……そんなセインディーネちゃんのことだろ? 惚れた男が引導を渡してやれば、セインディーネちゃんだってきっと理解してくれるはずなんだ!」
「……ごめんなさい。わたくしは理解したくない」
「ダメっす、ニミィのねーさん。こうなったらたぶん、不束のにーさん引かないと思うっス」
 ドライクにそう諭されたニムファーは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべると、まっすぐに奏戯を見た。
「わかったわ。……では、わたくしが後方から奏戯さんに追随しつつ支援、指示を出すわ。それでいい?」
「ああ! 構わないぜ!」
「それで、あっしはどうするでヤンスか?」
「ライクさんには露払いをお願いするわ」
「露払いって……」
 ドライクはそう呟くと、大量のクマが三人めがけて襲い掛かっていることに気が付いた。
「こ、こんな数をあっしひとりがっスか!?」
「安心して。桃色軍曹から頂いた熊鈴があるから」
「おお、そういえば」
 ドライクはハルバートに括り付けた熊鈴を、ハルバートごと大きくブンブンと振り回した。
 ――ガランゴロンガラン!
 辺りに重い鈴の音色が鳴り響き、それを聞いたクマは蜘蛛の子を散らすようにして去っていった。
「うおお……なんかこの熊鈴、すげーでヤンス……!」
「アアアアアアアアアアアアアアアア……!」
 それを見たセインディーネが声を上げると、散り散りになっていたクマの群れが再度三人めがけて集まりだした。
「ふほへへはっ、何度来たって無駄でゲスよ!」
 ――ガランゴロンガラン!
 ドライクは頭上にハルバートを構えると、より広域に音が届くよう熊鈴をかき鳴らした。
 まるで寄せては返す波のように、クマが三人の周囲で縮小を繰り返す。
「今よ! クマに夢中になってる今のうちに!」
「おう、了解だ! 突撃するぜ!」
 ニムファーの声を合図に、奏戯がセインディーネに向かって走り始めた。そしてニムファーは奏戯の陰に隠れるように、こっそりと後ろからついて行った。
「ァァァァァァァァァァァァァァァァ……!」
 再び、セインディーネが声を上げる。
「――水! 水が来るわ!」
「うおし! 了解だ!」
 ニムファーが声を上げた直後、奏戯の進行方向に水の塊が生成された。奏戯はニヤリと不敵に笑うと、そのまま速度を緩めず、片足を軸に回転して水の塊を避けた。
「遅い遅い! そんなんじゃ、俺様ちゃんを止めらんないぜ、セインディーネちゃん!」
「ァァァァァァァァァァァァァァァァ……!」
「油断しないで! ……第二波、来ますわよ!」
 三度、セインディーネが声を上げるが――。
「――な!? しまっ――」
 ニムファーが目を見開き、驚愕の声を上げる。
 今度のセインディーネのターゲットは奏戯ではなく、ニムファーだった。人語を理解できるセインディーネはすぐさまニムファーが指示を出していることを察知し、それを潰しにかかった。
「くっ……!」
 ニムファーは奏戯と同じように回転して水の塊を避けようとしたが、不意を突かれたせいか反応が遅れ、まんまと水の塊の中に閉じ込められてしまう。
「ニミィのねーさん!?」
「がぼが……(迂闊だったわ……)」
「アアアアアアアアアアアアアアアア……!」
 トドメだと言わんばかりにセインディーネが声を上げる。
すると、ドライクに群がっていたクマが一斉に、身動きが取れないニムファーに襲い掛かっていった。
「まずいっス! 今のニミィねーさんじゃ熊鈴を鳴らす事は――」
「がぼ!(かかりましたね!)」
「アアア……グエッ!?」
 突然、どこからか伸びてきた鞭がセインディーネの喉に絡みつく。
 ニムファーがさきほど回転したのは、水の塊を避けるためではなく、鞭に勢いを持たせるためだった。
 セインディーネの声が止み、ニムファーが水の塊から解放される。ずぶ濡れになったニムファーは奏戯に最後の指示を出した。
「――さあ! 今よ! 奏戯さん!」
「わかってるよ、ニミィちゃん! 届け! 俺様ちゃんの想い!」
 奏戯は手にマジック・ブラスターを構えると二発、セインディーネの足元に向けて撃った。
 セインディーネはそれに驚き、体勢を崩すと、仰向けのまま倒れてしまった。
 奏戯はすかさずマジック・ブラスターを構え、三発目を打ち込むかと思いきや――手に持ったマジック・ブラスターを捨て去り、濡れた服すらも脱ぎ捨てた。
「……へ?」
「……え?」
「うおおおおおおお! セインディーネちゅわーん!!」
 奏戯は喉がイカレそうになるほど叫ぶと、セインディーネに向かって渾身のダイブを決めてみせた。

「フム……しかし、あれだな……諸君ら、元気ないな」
 甘い桃の香りが漂う浜辺。
 セインディーネを退けた三人と桃色軍曹は、報酬の桃でこしらえたピーチティーに舌鼓を打っていた。
「そうか? 俺様ちゃんはいつも通りだけど」
 奏戯はそう言うと、ティーカップに入っていたお茶をグイっと飲み干した。
「うんめー! このお茶最高だよ! ニミィちゃん!」
「……たしかに、君だけはなぜか顔がツヤツヤとしておるが……ほかの二人が……」
「はぁ、色々と疲れましたわ……」
「右に同じでヤンス……」
 そうは言いつつも、二人は桃を食べる手を止めなかった。
「しかし、何はともあれ、セインディーネの討伐、よくぞ達成してくれた! 礼を言う!」
 桃色軍曹はそう言うと三人に深く頭を下げたが……。
「討伐成功と言うか……」
「セインディーネにトラウマを植え付けただけというか……」
 ニムファーとドライクの二人が言葉を濁す。
「ム? 討伐はしていないのか?」
「あ、いや、でも安心してほしいっス。多分もう、あのセインディーネが陸に上がってくることはないでゲスから」
「うん、二度と……ね」
「よくわからんが……まあ、諸君らがそう言うならそうなのだろう! ピーッチッチッチ!!」
 ――色づく紅葉映える秋の山に、桃色軍曹と奏戯の笑い声が木霊した。



課題評価
課題経験:65
課題報酬:2000
ピーチビーチピッチ!
執筆:水無 GM


《ピーチビーチピッチ!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 1) 2019-11-25 19:15:14
ニムファー・ノワール17歳です(ぉぃぉぃ

今回はフェナリナーサから来たミンキーな桃色軍曹さんの依頼ね。
人数集まれば戦闘ルート行ってみたいわね。
とりあえず様子見かしら。

《ゆうがく2年生》 不束・奏戯 (No 2) 2019-11-27 00:41:30
あのなんか、ピチピチしてるおっさんは討伐対象じゃないの?
1度殴って正気を取り戻した方が良くなくなくなくない?!

あ、俺様ちゃんは不束さん家の奏戯君でっす☆
しくよろ!

俺様ちゃん的にはセインディーネ行きたいんだぜ!
だって見た目可愛い女子なんだろ?
人語が伝わらなくても大丈夫!
俺様ちゃん愛(物理)を届けに行こうと思うんだ!

あとおっぱい!(オブラートに包まないスタイル)

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 3) 2019-11-27 22:29:45
ジト目・・・(まぁ、「幼女が好きー」って言われるよりは健全かしらね・・・)

戦闘ルート行くのでしたらついていきますわ。
でも私、自慢じゃないけどかなり【弱い】わよ。
今までこなした課題は大体奇襲か、弱点攻めるかだったし・・
不束さん、頼りにしてるわよ☆彡

《ゆうがく2年生》 ドライク・イグナ (No 4) 2019-11-27 23:06:20
村人・従者コースのライクさんッスよー
よろしくおねがいするでヤンスね

おっさん殴りたいにはわかるでゲスが我慢するッスよ。
ああ見えて、クラインアントでヤンスから・・・

かわいい女の子見たくなるのは男のサガでゲスから許してほしいでヤンスよ

女子がイケメン見たくなるのと同じもんッスかねぇ・・・?
まぁ、ここにイケメンっていうイケメンは居ないでゲスが。

熊さん危ないでヤンスし釣りするにも桃拾うのにも安全に行うには
セインディーネ倒さないといけないッスよね・・・

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 5) 2019-11-28 18:15:52
全員戦闘ルートってことでOKね。
頑張ってみるわ。

そうね。とにかくあの熊を呼び寄せる召喚?と水を操る詠唱はちょっと厄介そうね。
なのでこれを封じ込めつつ戦うのがいいかしら。
私的には武器の鞭で顔、あるいは喉あたりを命中率優先で狙って詠唱を阻害妨害しつつ、ダメージを与えればいいかなぁっと思っているわ。
うまく鞭が喉にでも絡んでくれればしめたものね。締め上げて詠唱妨害しつつ、ダメージも期待できそうね。
私はこんな感じいこうかと思うけどどうかしら?

《ゆうがく2年生》 ドライク・イグナ (No 6) 2019-11-29 20:02:19
んじゃ、あっしは前衛を務めるッスよ
獲物は槍なんで中衛よりではあるんでヤンスが・・・
セインディーネ倒したら熊さん方どっか行かないでゲスかねぇ…?

《ゆうがく2年生》 不束・奏戯 (No 7) 2019-11-29 20:43:39
なら、俺様ちゃんは遠距離がいいかな?
丁度銃もあるし。

ちょっと可哀想だけど、率先して足を狙って移動力を削ぐぜー。
んでさー、水を召喚するなら電気は良く通すんじゃないかと思うから。
雷系の魔法はなんか装備しておくかな?

状態異常を付けられればいいんだけど…ま、難しいよねー。
俺様ちゃんはなるべく足止めと撹乱、攻撃阻害に務めるんだぜ!

動かなくなったらその体にダイブだ!!(キリッ

>クマさん帰るか
帰るとは思う。鈴も一応あるしなー。
あとはセインディーネちゃんがどうなるかで決まる気がするんだよね〜。
多分倒せればクマは対応できると思う。

《ゆうがく2年生》 不束・奏戯 (No 8) 2019-11-29 21:54:18
ん、プラン脱稿!
一応挑発して攻撃を受けるよう仕向けたから近接戦闘に少し負担は減ればいいな!
俺様ちゃんはリバイバルだから物理はある程度大丈夫だから。
少しでも貢献できたら良いなぁ。