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おいしいナポリタンがたべたい


ストーリー Story

●富豪 ナ・ポールタ=スパゲティーニの依頼
 その日、とても不思議なチラシをあなたは拾った。
『求む! おいしいナポリタン!
 貴殿の考案したおいしいナポリタンを振る舞うだけの簡単なお仕事。
 きれいなキッチンと豊富な食材を用意して貴方をお待ちしております。
 詳細はこちらまで……。
               ナ・ポールタ=スパゲティーニ』

 チラシの右端にはナ・ポールタ=スパゲティーニの屋敷と思われる簡素な地図が書かれている。
 必要な情報だけが書かれたチラシ。
『なんだ、この程度か』
 誰かがチラシを丸めて捨ててしまおうとすると、地図のさらに下に小さくこう書かれているのを見つけた。
『僅かながらですが御礼もご用意しております』
 報酬がもらえるならいくしかない。


 屋敷を訪れた貴方達を、老齢の使用人――おそらく執事だろう――はなにも言わずにキッチンへ通してくれた。
「旦那様はずっと『おいしいナポリタン』を探しておいでで御座います。ですが、私どもにはどのようなナポリタンが旦那様の言う『おいしいナポリタン』であるのか、教えてはくださりませんでした」
 だから若い力に助けを求めたのだ。学生のような、独創性のある者ならば、きっと答えにたどり着けると信じて。
 心なしか執事の目は潤んでいるように見え、それはこの依頼がただ事ではないことを物語っているようにも感じられた。
「旦那様の願いを叶えるのが使用人の、私の務めに御座います。何卒、力をお貸し下さいませ」
 深々と頭を下げ、執事は厨房を後にした。
 さぁ、これから先はスパゲティーニと自分達の戦いだ。自分がおいしいと思うナポリタンを作り、彼を唸らせろ!


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2019-12-02

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-12-12

登場人物 4/8 Characters
《やりくり上手》ルーノ・ペコデルボ
 カルマ Lv10 / 村人・従者 Rank 1
【外見】 褐色肌 丸関節 眼鏡 銀髪外ハネ短髪 赤目 紋章は右手の甲と左目 【性格】 感情が余り出ないが無い訳じゃない 合理的 上からの命令に従順 入学の一番の目的は『感情を理解して表に出す事』 家事が得意 【備考】 人間と同じになりたい願望があるのか普段は手に手袋をつけている 見られるとちょっとだけ罰が悪そうな顔をする ※アドリブ大歓迎!
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《スイーツ部》ルージュ・アズナブール
 リバイバル Lv15 / 村人・従者 Rank 1
生前の記憶を失った、どこにでも居そうな村人の女性。 挨拶や返事はとてもいいが、実は面倒くさがりで、目を離すとすぐに手抜きをしようと画策するグラマラスなリバイバル。 『生前の記憶を探したい』という、ありがちな目的を達成するために学園へ来た。 名前を表すような真紅の髪が自慢。 酒好きで、節約なんて言葉は知らない。 身長は167cmほどで、体重はヒミツ★ 驚異のEを自称。もっとすごいかもしれない? 生前は海の近くに居たのか、魚や海産物の料理が得意。 特にお酒に合いそうなスパイシーなものや、煮込み料理が何故か得意。 なお、近親者に名前が4つあったり通常の3倍だったりする人はいない。 もちろん仮面や色眼鏡の人もいない。 赤いノースリーブなんて言語道断らしい。

解説 Explan

●登場人物
 ナ・ポールタ=スパゲティーニ(82)
 富豪。『おいしいナポリタン』を20年以上探し続けている。
 最近、大病を患ったという噂があるがはたして……?

 執事(年齢不詳)
 スパゲティーニに仕える使用人。彼とは竹馬の友でもあるらしい。
 必要なものは彼に頼めば揃えてくれます。

●厨房
 乾麺から生麺、長いものから短いもの、ペンネにいたるまで揃えられたパスタと、料理長が吟味した最高の食材が取り揃えられています。
 料理に必要なものは大体揃っていますが、どうしてもない場合は取り寄せてくれます。
 ただし、モンスター肉や魔法動植物を用意することは出来ません。
 爆発などさせない限り、厨房は好きに使って構いません。

●その他
 食に関する一般技能があると有利になるかもしれません。
 おいしいナポリタンについて、スパゲティーニに聞き込みを行うことは出来ません。


作者コメント Comment
 はじめまして、勇者を目指す学生の皆様! 新人GMの樹志岐と申します。
 最近では海鮮ナポやオムナポ、白ナポなんてものもあるようですね。
 というわけでナポリタンを作る課題です。どんなトッピングをのせても、どんな具材を入れても自由!
 普段滅多にお目にかかれないトリュフなんてのもありますよ! 使ってみたくないですか?!
 さぁ、皆様の胃袋にガツンと一発ぶちかますようなプランをお待ちしております!


個人成績表 Report
ルーノ・ペコデルボ 個人成績:

獲得経験:14 = 12全体 + 2個別
獲得報酬:252 = 210全体 + 42個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
本気出す

【行動・心情】
ナポリタンは奥が深い
色々工夫が出来ますからね
僕が1番美味しいと思うやり方でやらせて頂きますね?

トマトケチャップは手作りしましょう
低温でトマトを煮詰めて
玉ねぎを甘くなるまで炒めて
塩、酢、胡椒、クローブで味付け

麺を茹でますが、こちらは固めに茹でます
何故ならこの麺炒めますからね
硬さをちょっと調節しないと柔らかくなりすぎる

玉ねぎ、ピーマン、ベーコン、人参を茹でたパスタを炒めていきます
人参は先に切って白ワインで煮る
最後にケチャップを入れて炒めますが、ここで酸味が少ないならトマト酢で調節しましょう
タバスコでも良いですが辛みが出てしまいますからね
苦手な人は食べれなくなりますから

ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:

獲得経験:14 = 12全体 + 2個別
獲得報酬:252 = 210全体 + 42個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的・行動
あちきが美味しいと思った大衆洋食なナポリタンを作るのじゃ!
これが気に入ってもらえるか知らぬが…自分が気に入らないものは勧めれんのじゃ。

茹で置きしたモチモチの太いパスタ。
アルデンテなぞ知らん!柔らかい方がいいのじゃ!

ソースはトマトケチャップのみ。
軽く熱して水分と酸味を飛ばす。
隠し味など入れぬ!それは蛇足なのじゃ!

具材は玉ねぎ、ピーマン、ソーセージ。
先に軽く炒める。
主役は麺じゃぞ!多過ぎない程々の量を入れるのじゃ!

それらをフライパンに入れて炒める。
べチャッとならぬよう強火で一気に仕上げるのじゃ!

そしたら…完成なのじゃ!
粉チーズとタバスコは、個人の好みでご自由に入れるのじゃ。

仁和・貴人 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:36 = 12全体 + 24個別
獲得報酬:630 = 210全体 + 420個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
ナポリタンだ
昔懐かし家庭の味のナポリタンだ
材料は
玉ねぎ、ウインナー、ピーマン、ニンニク、ケチャップ、隠し味に顆粒タイプのコンソメスープの素か顆粒だしを少々
あとスパゲティー
玉ねぎはタテ薄切りにし、ウインナーは斜め薄切り、ピーマンはヘタと種を取り、薄切り、ニンニクはすりおろす
フライパンに油を熱し、おろしニンニクをいれ香りを引き立たせたら玉ねぎ・ピーマンを弱火で炒める
しんなりしてきたらのウインナーを加え弱火で焼く
コンソメ(顆粒だし)トマトケチャップを加えてひと炒めする
パゲッティを加えて炒め完成だ
お好みで粉チーズ、タバスコをふって、召し上がれだ

他のナポリタンも気になるな
味見させてもらえないだろうか?

ルージュ・アズナブール 個人成績:

獲得経験:14 = 12全体 + 2個別
獲得報酬:252 = 210全体 + 42個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
そうですわね……折角ですし、普通に作ったナポリタンと、少し手を加えたものを作りましょうか

まずは、斜めに薄く切った腸詰めウインナー、細切りピーマンを炒め、そこにトマトピューレを入れ更に炒める
火が通ったら、別に茹でてたスパゲッティを湯切りし投入
しっかりソテーして仕上げに刻みパセリを散らして

もう一品は、オイルサーディン、アスパラを炒めて、トマトピューレを入れて更に炒める
形を崩さない程度に火を通して、別に茹でてた細めのスパゲッティを湯切りし投入
しっかりソテーして、仕上げにレモンジュースと白ワインで生臭さを抑えて、刻みバジルの香りを添えて港町の酒場風に

この2品を大皿に盛って、取り皿をつけてお出ししますわ

リザルト Result

●今に至る運命の日
 富豪【ナ・ポールタ=スパゲティーニ】は語る。
 ――ワタシがここまで財を築き上げてきたのには幼い頃の苦い思い出があるからだと。
 決して裕福な家とは言えなかった。両親は朝も昼も働いていて、幼心にも『構ってくれ』とは言えずにいた。
 結局自分の相手は近所に住む老婆の孫か、その辺の野良猫くらいなものであった。
 それでも両親は祝賀祭の日には必ず、外食に連れて行ってくれた。
 そんなとき、自分が頼むものは決まってあのメニューだった。

 時は流れ、ようやく働ける年になった頃、自分は迷わず進学ではなく就職の道を選んだ。
 漁師の仕事は過酷だったが、大物さえ獲れれば報酬はまぁまぁで、来るべき日への貯蓄と自分の小遣い分を差し引いた全額を両親に仕送りしていた。
 感謝祭の日、仲間達に連れられて酒場に行った。
 何を注文したらいいのか分からず、悩んだ末に頼んだメニューをみて『子供みたいだな』と笑われたことは今でも覚えている。

 いずれも自分の人生において、懐かしく温かい優しい記憶だった。
 今ではなんでも望めば手に入るようになった。親の顔色を気にすることも、注文するメニューにこまることもなくなった。
 しかし、だからこそ。自分は今、それを欲しているのだ。
 ――おいしいナポリタンが食べたい。
 
●十人十色のナポリタン
 ナポリタンは奥が深い。
 様々なアレンジができ、大体の場合『まぁまぁな味』に仕上がるのだ。
 故に、どこかで他者とは違う独創性が必要だと思った【ルーノ・ペコデルポ】は今、ケチャップから手作りしていた。
 湯むきをしたトマトを弱火でじっくり、コトコト、クツクツと鍋の中で煮詰めていく。
 焦がさないように細心の注意を払わねばならない。
 声なき声を聞くように耳をすませている姿は、普段の課題と同じようだと思った。
 ケチャップの味付けは塩と胡椒、酢、それからグローブで。甘みは別に炒めていた炒めた玉ねぎがもたらしてくれる。
 煮詰まってきたら火を止め、手近な匙ですくい上げる。トロリと濃厚でやや酸味の効いたケチャップソースの完成である。
 さて、本来の目的を忘れてはいけない。
 先程玉ねぎを炒めたフライパンにオリーブオイルと薄くスライスしたニンニクを入れて、ニンニクの香りを油に移す。
 そこにベーコンを加え、ベーコンの旨味も油に溶け出した頃、玉ねぎとピーマンを入れて火を通す。
 別の火口で臭み消しの下処理をしていた人参も加え、薄くケチャップソースで味をつける。
 麺は茹で上がってからさらに火を通すことを見越して硬めに茹でて、フライパンの具材と合わせる。
 ケチャップソースを麺に絡めて水分を飛ばせば完成だ。
 出来上がったナポリタンを一本、試食として口に運んでみる。
 悪くはない。が、何か物足りない。
(酸味が足りないですね。ならば……)
 こんなこともあろうかと。取り出したるは細長い瓶に赤い果肉と青々とした葉が浮かんでいる液体――ルーノのとっておき、自家製トマト酢だ。
 ナポリタンに酢を加え、その分さらに水分を飛ばせば完成。
 酸味の効いた、程よい大人の味わい。
 これがルーノのおいしいナポリタン。

「おいしいナポリタンと聞いてきたが……作る方じゃったか」
アテが外れてほんの少ししょんぼりとした【ラピャタミャク・タラタタララタ】であったが、はたと気づく。
(これはもしかして、伊達に食巡りをしておらんってところを見せるチャンスなのではないか?)
 そうと決まればやるしかない。自分が感じるおいしいナポリタンを作ろうではないか。
 彼女はやる気満ち溢れる顔で拳を突き上げた。
 さて、そんな彼女のナポリタンだが。
 玉ねぎ、ピーマン、ソーセージを手にまな板に向かう。
 普段は斧を使っている手前、包丁のような小回りの効くものの扱いはより慎重になる。
 ゆっくり、怪我のないように、玉ねぎに包丁を入れれば、均一な鱗葉(りんよう)が姿を現す。
 白い肌から滲み出てくる水分は、玉ねぎが新鮮であることの証だ。
 繊維にそって切り進めると、ツンとした香りが目を刺激して少し目が潤んできた。
 なにを。泣くものか。未来の魔神はこんなことでは泣かないのだ。
 切り終わった食材を、油を熱したフライパンで軽く炒める。玉ねぎの外側に火が通りうっすら透明になってきたら太めのパスタを入れ、ケチャップで味を整える。
 ここがラピャタミャクのこだわりポイント。
 麺は具材とのバランスを考えて多すぎないほどほどの量を。
 アルデンテではなくあえて柔らかめにしてもちもちとした食感が楽しめるようにして、味付けは思い切ってケチャップのみで食材の甘みなどを引き立たせるシンプルなものに。
 ケチャップや食材から出た水分を強火で飛ばして、最近食べに行った食堂のパスタのように皿を回して、高さが出るように盛り付けちゃったりなんかしたら、ほら、なんだか少しプロっぽく見える……気がする。
 フライパンにわずかに残したナポリタンを小皿にとり、自分でも試食をしてみる。
 ――うん、悪くない。おいしい。
 美味いと思えるものが美味いのだ。きっとこれもおいしいに決まっている。
 これがラピャタミャクのおいしいナポリタン。

「これだけナポリタンを追い求めるとは……、いったいどんな出会いをしたんだろうな」
 こういうのは大抵、ファーストインパクトが凄かったとかそういったものが往々にしてあるわけだが。
 そう呟きながら【仁和・貴人】は今、食材を切っている。
 ピーマンは種とヘタをとり、玉ねぎと同様に薄切りにし、ウインナーは斜めに切る。
 すり下ろしたニンニクを油で熱したフライパンに入れて香りを引き立てたら、そこに野菜を投入する。
 弱火でじっくり、しんなりとするまで炒めたら、ウインナーを加えてウインナーに焼き目がつくくらい加熱する。
 ウインナーが加熱され、その身を反らせ始めた姿はまるで生き物のようにも見えた。
 さぁ、仕上げだ。味付けは基本のケチャップ。それから――。
「お待たせいたしました。こちらでよろしかったでしょうか」
 執事である男が声をかけてきた。手には小さな容器に入った粒状の何かを持って。
 これは貴人の裏ワザ。
 持ってきてもらったものはコンソメの素――いわゆる顆粒だしと呼ばれるものである。
 これを湯に溶かせば簡単にスープが出来上がるし、今回のように隠し味としても使える。
 まさに庶民の味方、洋食作りのマストアイテムである。
「そうそう、これこれ。ありがとう」
 礼を添えてそれを受け取り、適量を匙ですくい上げる。
 それをフライパンに加えてもうひと炒め。パスタを入れて馴染むように混ぜ合わせれば完成だ。
 ほんの少しの隠し味は昔懐かし家庭の味。
 これが貴人のおいしいナポリタン。

(折角ですから普通に作ったもの手を加えたものと、二種類作ってみましょうか)
 バリエーションを揃えれば、どれか一つはスパゲティーニの求めるおいしいナポリタンに至るだろう。
 エプロンの紐を結びながら【ルージュ・アズナブール】はあれこれと思案する。
 トマトは肉とも魚介とも相性がいい。
 一般的なナポリタンに使われるのはウィンナーやベーコンと言った肉が多い。ならば趣向を凝らして、魚介を使ったナポリタンなんてどうだろう?
 安価な材料で作るナポリタンこそ、ナポリタンといえよう。
 故に、手を加えると言っても手軽に手に入るもの――例えば、魚のオイル漬け缶詰を使ってみると面白いかもしれない。
 フライパンに根本の皮を剥いて食べやすく切ったアスパラを入れて炒め、そこに缶詰の中身を加える。
 アスパラが鮮やかな緑色になったらトマトピューレをいれ、形を崩さない程度に火を通して、そこに湯切りしたスパゲッティーを加えてしっかりと混ぜ合わせる。
 臭み消しに加えた白ワインとレモンジュースは爽やかな香りを厨房いっぱいに広がって、そこにいる全員の嗅覚を刺激する。
 さあ、盛り付けだ。
 一品はシンプルに、ウインナーとピーマンを炒めてトマトピューレで味付けをしたナポリタン。上にパセリを散らせば彩りも良くなり、目も楽しませてくれるだろう。
 もう一品は魚の缶詰めを使った、港町の酒場で出てくるようスパゲッティー。刻んだバジルの香りが、異国感をさらに引き立たせてくれる。
 家にいながら、遠くの国を旅している気分を味わえる。
 これがルージュのおいしいナポリタン。

●おいしいナポリタン
 「あぁ、学生の皆さん。ワタシの為に集まってくださり、誠にありがとうございます」
 スパゲティーニという男は名を体で表したような、赤い髪を持ったふくよかな体格の老人であった。
 四人が作った五種類のナポリタンは一様に銀皿に乗せられてクロッシュをかぶせられている。
「さて、では皆さんが作ってくださったナポリタンをいただきます」
 一斉に蓋が開けられ、現れる赤、赤、そして赤。
 その様子はスパゲティーニの髪色も相まって、圧巻であった。
「すごいな、ナポリタンがナポリタンでナポリタンだからナ・ポールタさんがナポリタンだ」
 貴人が思わずくださりこぼした感想。
 なんだかナポリタンのゲシュタルト崩壊をしているような気がするが、それがわかるのは一部の学生だけだったようで、スパゲティーニはただ首を傾げるだけだった。
 執事が少しずつ取り分けたナポリタンはスパゲティーニの口に運ばれ、彼はそれをゆっくりと、味わっていく。
「この味は……、こちらで用意したケチャップとはまた違う味ですね、ここまで手作りしたこととお見受けします。追加で加えたのは……何か、酢のようなものですかな。酸味と甘味のバランスが良く、麺の固さも程よい。野菜も種類豊富に入っていて実に素晴らしい」
 手間のかかった料理には作り手の思いが込められるものである。
 ルーノの手作りケチャップソースのナポリタンは、気持ちのこもった味だと称された。

 次はラピャタミャクの作ったナポリタンだ。
「ケチャップだけで味付けしたシンプルなナポリタンですね。味付けが最小限であるということはそれだけ素材の味を生かしも殺しもする、とても難しい方法でもあります。しかしうまく素材の個性をまとめあげ、一皿として収めている。麺も老いぼれに優しい柔らかめで、ありがたい限りですね」
 学園に入って覚えた知識が、確実に実を結んでいた。
 ラピャタミャクのナポリタンは優しさの味と称された。

 貴人のナポリタンを一口、食べたスパゲティーニは一瞬動きを止めた。
 ゆっくり、ゆっくりと咀嚼しそれを飲み込むと自然と笑みが浮かぶ。
「なるほど、隠し味になにかを加えたようですね。恥ずかしながらそれが何かまでは分かりかねますが……。オーソドックスでありながら、隠し味が引き出す旨味が目新しさも感じる。しかしどこか懐かしさも運んでくる。とても不思議な感覚です」
 スパゲティーニは小皿によそわれた貴人のナポリタンをペロリと平らげて、こう称した。
 在りし日の味、と。

 最後にルージュが作ったナポリタンをみるとスパゲティーニの口からは笑いが零れた。
「ほほぅ、ベーシックなナポリタンと変わり種の二刀流ですか。これは凄い。こちらの魚を使っている方は、ペスカトーレにも似ていますが……なるほど、しっかりとナポリタンとして出来上がっている。とてもよい味ですね」
 何より色味が整っているのが素晴らしいと評価されたルージュのナポリタンは、革新的な味と称された。

●ナポリタン・パーティー!
 口元をナプキンで拭いながら、スパゲティーニはとても満ち足りた表情をしていた。
「皆さん、本当にありがとうございました。このように素敵なナポリタンに出会えて、ワタシは本当にしあわせであります。
さて、結果発表……と行く前に皆さんにお願いがあります」
「お願い?」
 ルーノが尋ねるとスパゲティーニは首を縦にふって肯定した。
「折角ですから、皆さんもご一緒にいかがでしょう。大勢で食べると、料理はさらに美味しく感じるものです」
「ひゃっほー!! その言葉を待ってたのじゃ!」
 それを聞き飛び上がって喜んだラピャタミャク。
 実は他の学生が作ったそれが気になって気になって仕方なかったらしく、我先にとフォークを握りしめた手を皿に伸ばしていった。
「あら、ナポリタンパーティーですわね。では折角ですし、調理に使った白ワインを飲んでしまいましょうか」
 といっても、ここにいるメンバーで飲めそうなのは自分とスパゲティーニくらいなものなのだが。
 ある者はワインを傾け、ある者はナポリタンを頬張り、一方で執事からトマト酢の作り方を尋ねられている者がいる中、スパゲティーニはある学生に密かに耳打ちをした。
「貴方が使った隠し味を、是非ともワタシに教えて下さい」
 未だたどり着けぬ終着点。
 しかし彼の作ったそれは、自分が捜し求めていたものにもっとも近かったと。



課題評価
課題経験:12
課題報酬:210
おいしいナポリタンがたべたい
執筆:樹 志岐 GM


《おいしいナポリタンがたべたい》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《やりくり上手》 ルーノ・ペコデルボ (No 1) 2019-11-27 10:39:57
ナポリタンは、奥深い。
ケチャップを使うか、自家製ソースを作るか。
野菜の甘味を出すのも大事ですが酸味が無ければいけません。

作りがいがありますね。
頑張らせて頂きます。

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 2) 2019-11-28 00:46:06
おいしいナポリタンと聞いてあちきがぁぁーーー…あるぇ?(キョトン)

ふむ、作る方じゃったか。
いつもは食べる側なんじゃが、たまには作る側として頑張ってみるのじゃ。
伊達に食巡りはしておらんってところを見せるのじゃ!

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 3) 2019-11-28 14:43:01
ある意味原点に返ってチープなのを作るつもりだ。
・・・家庭の味ってやつだな。

(顆粒だしってあるのか?無いんなら無いで如何にかするんだが・・・)

《スイーツ部》 ルージュ・アズナブール (No 4) 2019-12-01 06:51:37
村人・従者コースのルージュですわ。よろしくお願いしますわ。
折角ですし、海産物や白ワインを使って港町の酒場風に仕上げようかと思いますわ。