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樹 志岐 GM 

はじめまして!ゆうがく公認DD&GMの樹 志岐と申します。
皆さんの冒険のサポートを全力でさせていただきます。よろしくお願いいたします。
あ、ちなみにDDはダイニングディレクターの略です。

◆作風
気を抜くと要所要所にギャグを入れたがったり、プランに表記のない心情を書いたりします。
絶対やめて!という、方はお手数ですがプランの最初か最後に『×』の一文字をご記入ください。

上記の理由でシリアスよりもギャグの方が得意です。
ラブロマンスはかけません。残念。
いつの間にか飯テロのひとと化してしまった。なぜだ。

担当NPC


《先輩》リーエル・アムフィリム
  Lv29 / Rank 1
フェアリータイプのエリアル。 2年ほど前、とあるエリアルの部族からの依頼を受け、 学園に預けられる形でやってきた。 リーエル自身じっとしていられないタイプのため、 すぐふらっと何処かへ消えてしまうので、 いつもエルフタイプの従者2人が学内を探し回っている。 専攻は王族・貴族コースだが、 普段自分が経験したことのない授業を行っているという 村人・従者コースの授業に、よく出没している。 学園での勉強は、将来を考えての選択と言うよりは 好奇心と気まぐれで選んだ部分が大きく、 授業に出席しないことも日常茶飯事である。 サイコロが好きで、良く転がして遊んでいる。 右目の怪我に関しては、本人曰く飛んでいて壁に強打したため らしいが、詳細は不明。 楽しい事、誰かとお喋りする事が大好きなので、 割と学園内で絡ま……会うことも多いだろう。
《先輩》咲良・佐久良
  Lv10 / Rank 1
■公認NPC □担当GM:樹 志岐 「こんにちは。佐久良・咲良といいます」 「花が綺麗ですね。……お兄さん(お姉さん)は、どんな花が好きですか?」  熊のルネサンス。普段は髪や服で特徴は隠してある。  名前と名字、どっちを読んでも構わないと儚げに笑う青年。  学園に来る前は自分自身や育ての親が育てた花を売って生計を立てていた。  接客はするが、あまり人付き合いが得意でない。 『人より草花を相手にした方が気が楽』とは本人談。  学園に至った理由は『(人間の)友人がほしい』から。 「友人と一緒に、僕が作ったハーブティーを一緒に飲んだりしたら……、それって素敵ですよね」 【備考】  名前→咲良・佐久良  ※読みは『さくら・さくら』  二人称→お兄さん、お姉さん  ※彼にとって自分よりも若くてもお兄さんだし、自分よりも遥かに年上の老人でもお姉さんである。  目の色→青  ※紫陽花、もしくは雨上がりの空のような青色。  ※この生徒は『樹 志岐』の『公認NPC』です。   規約により、できないことがありますので悪しからずご了承下さい。 【出来ないこと】  →こちらのキャラクターからお客様のキャラへのフレンド申請  (受けとることはできます! お気軽にどうぞ!)  →公式クラブ以外への参加と発言  

メッセージ


作品一覧


おいしいナポリタンがたべたい (ショート)
樹 志岐 GM
●富豪 ナ・ポールタ=スパゲティーニの依頼  その日、とても不思議なチラシをあなたは拾った。 『求む! おいしいナポリタン!  貴殿の考案したおいしいナポリタンを振る舞うだけの簡単なお仕事。  きれいなキッチンと豊富な食材を用意して貴方をお待ちしております。  詳細はこちらまで……。                ナ・ポールタ=スパゲティーニ』  チラシの右端にはナ・ポールタ=スパゲティーニの屋敷と思われる簡素な地図が書かれている。  必要な情報だけが書かれたチラシ。 『なんだ、この程度か』  誰かがチラシを丸めて捨ててしまおうとすると、地図のさらに下に小さくこう書かれているのを見つけた。 『僅かながらですが御礼もご用意しております』  報酬がもらえるならいくしかない。 ●  屋敷を訪れた貴方達を、老齢の使用人――おそらく執事だろう――はなにも言わずにキッチンへ通してくれた。 「旦那様はずっと『おいしいナポリタン』を探しておいでで御座います。ですが、私どもにはどのようなナポリタンが旦那様の言う『おいしいナポリタン』であるのか、教えてはくださりませんでした」  だから若い力に助けを求めたのだ。学生のような、独創性のある者ならば、きっと答えにたどり着けると信じて。  心なしか執事の目は潤んでいるように見え、それはこの依頼がただ事ではないことを物語っているようにも感じられた。 「旦那様の願いを叶えるのが使用人の、私の務めに御座います。何卒、力をお貸し下さいませ」  深々と頭を下げ、執事は厨房を後にした。  さぁ、これから先はスパゲティーニと自分達の戦いだ。自分がおいしいと思うナポリタンを作り、彼を唸らせろ!
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-11-24
完成 2019-12-11
まだみたことのない、すてきなたからもの (ショート)
樹 志岐 GM
 わたしにはママがいる。  わたしにはたくさんのきょうだいがいる。  でも、わたしにはおかあさんがいない。  わたしだけじゃなくて、ここにいるきょうだいはみんなおかあさんをしらない。  あいたい、あいたい。おかあさん。  どうしたらあえるんだろう?  太陽が街の一番大きな時計台の屋根に昇る頃、店が開店準備をはじめる。  魚屋の女将が魚の頭を豪快に切り落とし、肉屋の店主が大きな声で呼び込みをし、パン屋の旦那が店をサボっている。  そんな街の片隅、いつものように佇む孤児院の子供達。  ――孤児院へ寄付金を。恵まれない子供達に施しを。  いつものように子供達は呼び込みをし、いつものように決して多くはない収入を得る。  いつもの街の光景。ここから街が動き出すのだ。 「なぁ、聞いたか?」  普段は難しくて、あるいは興味を惹かれなかったからかスルーしていた会話が今日はやけに大きくはっきりと聞こえた。 「あぁ、街外れのボロ屋に住み着いた女の事か?」 「そうそう。なんでも探し物をしているらしい」 「……あの身なりだぜ? 何を探してるってんだ?」 「金目のもんとか、住み家とかじゃねぇの?」  まるで禿げ鷹のようだな。そう笑っていた大人達の言葉の意味はわからなかった。  けど、もしかして。  はやる気持ちを押さえきれず、少女は駆け出した。  その日、学園にやって来た男は慌てた様子であなた達に助けを求めてきた。  曰く、彼は孤児院を経営しているのだという。 「実は私の院で暮らしている女の子が行方不明になりまして……」  少女の名前は【プリムリリィ】  彼女は『母』というものに強い憧れを常日頃から抱いており、それを周囲にも度々話していたという。  そしてこうとも話していた。 『おかあさんにあいたい』と。 「最近街では、街の外れに住む女性の噂があります。きっとプリムリリィはその女を自分の母だと思い込んで会いに行ったのだと思います」  しかし、その女は彼女の母親ではないと院長は断言した。  何故なら、少女の母親である人物は少女を預けたそのすぐ後に息絶えてしまったから。  院長はその場に立ち会って、母親を院内の墓所に埋葬したのだと語った。 「プリムリリィには言い出せませんでした。事実を受け止めるには彼女はまだ幼すぎる」  しかし院長の説得を聞き入れるほど彼女は素直ではなく、確固たる意思を持っているようだ。 「お願いです、わたしたちのあの子を探してください……!」  そして院に戻るように説得をしてほしいと院長はあなた達に頭を下げた。
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-12-30
完成 2020-01-16
何の変哲もないただの生態調査 (ショート)
樹 志岐 GM
●ヴォンゴリーリ・スパゲティーニ博士の依頼  拝啓。  凛とした冷たい空気に、風花が美しく輝くこの頃、学園生の皆様におかれましてはご清祥のことと存じます。  さて、本日筆を執りましたのは他でもありません。  毎年恒例の『あれ』の季節が今年もやって参りました。  今年の『あれ』は例年以上に活きがよく、学者たちの間でも優秀な護衛を二人以上は連れていかないと危険だと噂されております。  つきましては、学園生の皆様に研究調査のお手伝いをして頂きたく存じます。  大変ご無理を申し上げて恐縮ではございますが、何卒お力添えのほどお願い申し上げます。  敬具。 ●なんかこんな感じの名前の人、前にも見た気がする。  そんなわけで、学園生である貴方たちの前には一人の女性がいる。  博士、と呼ばれるくらいには偉いのだろう。彼女の専門分野はわからないけど。  出されたお茶が磯の香りが仄かにするのと、添えられたお茶菓子が……これは、なんだ? 「どうぞ召し上がってください。スパゲティを油で揚げたものにアサリのダシパウダーをかけたものですわ」  スパゲティ。アサリ。嫌な予感がする。  そんな学生のことなど気にもとめず、彼女は深々と頭を下げた。 「改めまして、今回はお集まりいただき有難うございます。わたくしは【ヴォンゴリーリ・スパゲティーニ】と申します」  毛先に向かうにつれグレーになっていく、ブロンドのウェーブのかかった髪が揺れる。  前髪を留めているグリーンのヘアピンは彼女のトレードマークのようだ。 「皆様にお願いしたいのは、あるモンスターの生態調査です。彼らは毎年、この時期になると新しい住み処を求めて大移動をするのです」  なんでも彼女はそのモンスターの生態調査を毎年行っているらしい。  だが手紙にも書いた通り今年は例年にましてモンスターの気性が荒く、学者のみのフィールドワークは学会によって禁止となったらしい。 「わたくしは毎年この季節を楽しみにしておりました。調査が出来ないのは、わたくしに死ねと言っているようなものなのです。お願いいたします、どうか生態調査の間、わたくしの護衛をして頂けませんか?」  再度頭を下げる彼女。  彼女にとって研究こそが唯一の生き甲斐なのだろう。その肩は僅かに震えているように見えた。  わかりました。誰かがそう答えると、彼女は太陽のような明るい顔で貴方達を見た。 「有難うございます! あぁ、そういえば皆様の中には『あれ』を知らない方もいらっしゃいますよね」  知らない者も、というか皆知らないと思うが。 「そうだと思いまして、こちらに『あれ』の生態をまとめた資料を用意しました。調査日までにお読みください!」  そう言われ渡された資料の表紙には大きくこう書かれていた。 『【ヴォングォレスパゲティ・モンスター】の生態』
参加人数
8 / 8 名
公開 2020-01-28
完成 2020-02-15
わたしはパフェが食べたいの!! (ショート)
樹 志岐 GM
●こう叫びながら振ると盛り上がるんです(個人差があります)  勇者暦2020年。  魔法学園『フトゥールム・スクエア』では学生発案のある遊びが流行していた。  目の前にあるのはサイコロと、36のマスに食材の名前のかかれた表。  ふたつのサイコロを3回まで振って、出目によって盛り付ける食材を決めるゲーム。  人呼んで、『パフェの中身はなんじゃろな』!  どんな食材になるのか、その決定権はサイコロのみぞ知る。  そんなギャンブル的な要素と、シンプルだが予想もつかない結果になるドキドキ感が学生たちの間でウケ、瞬く間に広場は大にぎわいとなった。  そんな参加者の一人、――仮に学生Aとしよう――はふと思った。 「このパフェ、おいしそうだなぁ……」  そう考え出したらもう止まらない。このはやる気持ちはまるで恋する乙女のよう。  そう、この学生Aはとても食いしん坊であった。 ●料理、それは魂の調べ(パーフェクト・クッキング)  というわけで、学園の調理室には広場の表に沿った食材が並んでいる。  あちらでは作ったパフェは提出してしまうので、自分達の口には入らない。  しかしここは調理室。作る為の材料は自ら揃え、作ったものは残さず食べなくてはならない暗黙のルールがある。  つまりここでなら、作ったパフェを自分で食べれるというわけだ  広場のイベントで作ったものの再現をしてもよし、ここで新たにサイコロを振り、作り直してもいい。  もちろん、自分の好きな食材ばかりを使ったパフェを作っても構わない。  ルールはただひとつ、『作ったものは残さず食べきる』こと。  さぁ、あなたはどんなパフェを作るだろうか?
参加人数
2 / 8 名
公開 2020-02-21
完成 2020-03-09
【新歓】おむすびお結び (ショート)
樹 志岐 GM
●  それを手に取り彼の為。  具材込めるは誰の為?  握りしめたる誰かへの想い。  ほんの少しの人生(しお)を振りかけて。 「さぁさ、たんと召し上がれ」  一期一会の縁を結ぶ。  その食べ物を、人は『おむすび』と呼んだ。 「こんにちは。今、手は空いてますか?」  大掛かりな新入生歓迎イベント、『マジック・オブ・ディライト』でにぎわう校舎を通り抜けようとしたあなたに声をかけたのは、ルネサンスの学生だった。  手が空いているならば頼みたいことがある。  そう言った彼の懐には蓋のついた木製の入れ物。そしてもう片方には同じく木製の平たい杓子。  入れ物から漂ってくる甘いような香りの正体を、知っているものは少なくないかもしれない。  学生が入れ物の蓋を開けると、柔らかな湯気と共に姿を見せたのは白くて艶やかな白米。  そう、中にはぎっしりと炊きたてご飯がつまっていた。 「僕一人では中々手が回らなくて。もし手伝って頂けるなら手伝って頂けませんか?」  何を? 「おむすび作りを、です」  彼の話によると新入生歓迎イベントの一環としておむすびを配って回る予定だったようだ。  しかし一緒に作ってくれる筈だった知り合いは別のイベントの設営の手伝いで手一杯になってしまったらしく、困っていたところに通りかかったのがあなた達だったとの事。 「なにもお礼はできませんが、出来たおむすびはいくつか召し上がってくださって結構です」  これも何かの縁なのかもしれない。  彼がおむすび作りに借りた教室に、あなた達は集まって手伝いを始めたのだった。
参加人数
5 / 8 名
公開 2020-04-20
完成 2020-05-06
私をその事件の (ショート)
樹 志岐 GM
 ――学園長と話がしたい。  その日、何人かの男を連れて現れた【囚人服の男】はただ一言、そう言った。  なぜこんなところに? 何のために?  偶然その光景を目の当たりにした学園生は、誰ともなくそんなことを囁く。 「ほら、道をあけてください!」  好奇心や野次馬で様子を見にきた学園生の山をかき分け、ようやく現場に到着した学園職員に男はにこりと笑いかけた。 「ご苦労様です。学生さんたちをまとめるのはさぞ大変でしょう」 「あぁどうも……ではなく! ここに何の用でしょうか!?」  独特の空気感を感じさせる男の空気に飲まれまいと、問いかけるも男はただ『学園長と話がしたい』と繰り返すただけだった。  それはそれは、とても柔和な表情で。  学園応接室に古い羊皮紙が広げられている。  日付は十年ほど前のもので、紙面には小さな田舎町の片隅で凄惨な殺人事件が起きたということを知らせるというもの。  この世界において、殺人事件など滅多に起こらないものだ。  ――ましてや、それが人為的なものであるならなおさら。  故にそれを覚えている学生もいたのだろう。そんな誰かが吐いた小さな溜め息がやけに大きく聞こえた。 「ってぇわけで、チミたちにお願いしたい事があるんだぞっ」  そんな状態であっても学園長【メメ・メメル】の声は底抜けに明るく、良くいえば安心感のある、悪くいえば空気をぶち壊していた。  まぁメメたんだし。今日も彼女は通常運転だ。  そう、通常運転。……ということはトンデモな出来事が舞い込んでくるに違いない。 「いやぁ、流石彼の有名な『フトゥールム・スクエア』の学生だ。聡明そうな方達ばかりですね」  その部屋の片隅から聞こえた声に振り返れば、そこには学園長と生徒の他に数名の人影があった。  優しい言葉遣い、柔らかな微笑み。その青年はモンスターどころか虫の一匹も殺せないような雰囲気の青年だった。  ただ、彼の纏う衣服と手首にはめられた枷。彼を取り囲む屈強そうな男たちだけが異彩を放っていたが。 「諸君らの中には初めて見る子もいるだろう。彼はその新聞に書かれている人。数十年前の殺人事件を起こした犯人その人だ」  そんな人物が一体なんのために。危険ではないのか。何故学園長はこのような男を学園に招き入れたのか。  静かな水面に落とされた石のように生徒たちの間に騒めきが起こったところで、メメルが手を叩く。 「はいはーい静かに! コイツがキミたちに何かすることはない。不穏な動きを見せようモンならそこの看守たちが即座に取り押さえるし、それが破られたとしてもオレサマがすぐに対応するから安心したまえ!」  屈強そうな男たちは看守だったらしい。二重の防衛システムを用意しているならば安心だろう。  さて、そうとなれば……この男は何故ここにやってきたのだろう。 「ではその説明は私が」  そんな疑問を誰ともなくこぼせば、青年は学生の前に歩み出て話し始める。 「数十年前に起こった凄惨な『殺人事件』……、」  ――私をその事件の『犯人』にして欲しい。  空き教室の一つに家具やインテリアの類が用意されている。  聞けば、簡略化はされているものの事件現場の状態をほぼ再現されているのだそうだ。  暖炉があり、ベッドがあり、机がある。机の上にはティーポットとカップが並べられている。 「部屋のちょうど中央に、彼女は倒れていた」  被害者が倒れていたとされるそこを男が指差すと、そこには人形が代わりに置かれている。 「私は彼女のすぐそばに立っていました。手には血塗れのナイフを持って」  彼女が倒れ、その姿が消えて無くなるその時まで、ただ呆然とその様子を眺めていた……らしい。  彼はその瞬間を覚えていない。彼が自分の意識を取り戻した時、彼は自警団に現行犯で取り押さえられていた。  だから本当に自分がやったのかわからない。わからないが、周囲はみんな自分を指差して言うのだ。  ――お前が犯人だ。  ――お前が彼女を殺したんだ。  ――犯人はお前しかいない。 「皆、私が犯人だというのです。しかし私にはわからないのです」  だから、どうか。この事件が忘れ去られてしまう前に。 「私をこの事件の犯人にしてください」
参加人数
8 / 8 名
公開 2020-05-11
完成 2020-05-30
【想刻】悪計の敵意 (EX)
樹 志岐 GM
●外出許可と特別課題  刺すような日差しを煌々と校舎を照らし、開け放たれた窓から転がり込む風がいくらかその暑さを和らげている。 「……なので、外出の許可を頂きたくて」  職員に外出許可を貰おうとやってきた【咲良・佐久良】は、申請書を手渡そうとして……、何者かに奪われた。 「ふーん? 出かけるのか、王国に」  隅から隅までそれを読んで、ニヤリと笑った犯人……【メメ・メメル】はその羊皮紙を摘んだままペラペラと宙に踊らせた。 「ちょうどいいや、王国に行くならチミに特別な任務を与えよう」  ――頼りにしているよ、“先輩”。  いつものような無理難題ではないため安堵する反面、何処か不穏な空気を感じていた。 ●王国内『恩賜市場(グロリア・マーケット)』にて 「わぁ……」  感嘆とともにため息が漏れる。  物資、人脈、情報。その全てが集まる王国『バグシュタット』の市場は今日も人々の活気に満ちていた。  先日『オミノ・ヴルカ』で相見えることとなった琥珀色の眼をした純種ドラゴニアから得た意見と【馬場・カチョリーヌ】からの有力な情報を得てこの場所にやってきたのだが、その圧倒的な人の量に【カズラ・ナカノト】は落ち着かない様子で視線をあちこち彷徨わせていた。 「大丈夫ですか?」  お兄さん、と声をかけたのは咲良で、その手には沢山の花を抱えていた。 「あ、……えっと、だいじょう、ぶ」  カズラの返答を聞いてにこりと微笑んだ咲良は、荷物を置いてから貴方たちに向かう。 「さて、今日は忙しい先生方の代わりに僕がお兄さん、お姉さん方の引率をさせていただくことになりました」  あきらかにそれだけが理由ではないだろう、何を教員に――おそらく学園長に――言われたのか、想像にたやすい。 「王国は明るい街です。しかし光が明るければ明るいほどその足元に落ちる影は黒く、暗いものです」  故に今回の調査にはいくつかの約束事……ルールを守ってもらう必要がある。  一つ、制限時間は太陽が山の稜線に半分隠れるまで。  一つ、迷子になったら市場に戻ってくること。  一つ、昏い場所に立ち入ってはいけない。 「くらいばしょ、って?」  市場に積み上げられた木箱の上で足をぶらぶらと遊ばせながら【フィーカ・ラファール】が首を傾げた。 「いわゆるスラム……、ならず者が集まる場所があるんですが、そういうところですね。確かに情報は集まりやすいですが、その分危険度は上がっていきますので……」  言いながら咲良は目を伏せる。  引率を任せられた手前、後輩たちを危険な目に合わせたくないのだろう。 「お兄さん、お姉さんが足を踏み入れなくても、闇はいつの間にか背後に忍び寄っているものです。……どうか、お気を付けて」  今の時刻はまだ昼前。これから世界が動き出していく時。  集合場所の確認を行った上で、あなたたちは王国の各所へと繰り出していった。
参加人数
4 / 8 名
公開 2020-08-20
完成 2020-09-07
ある一族のはなし (ショート)
樹 志岐 GM
●ワタシは悩んでいた。  ――やれやれ、揃いも揃って困った者達ばかりだ。  背もたれに体を預ければ、木で作られた古い椅子はわずかばかり悲鳴を上げた。  階下では親族が、……血が繋がっていると言うだけで偉くなった気でいる無能共が甲高い奇声や怒号、罵声を浴びせていた。 「おじさま」  そんなワタシに話しかけるのは姪だ。親族のなかで数少ない、資産に興味をあまり持たない彼女は確か魔物を研究する仕事をしているとか。 「お疲れのご様子ですね、お茶はいかがです? それともお酒の方がよろしいかしら」 「ははは。医者にはあまり飲むなとは言われているが……、少し酔いたい気分ではある」  ワタシのわがままを聞いた姪は、困ったように笑って戸棚を探る。  そこにワタシ秘蔵の取って置きの酒を用意してあるのは、ワタシと彼女だけのひみつなのだ。  透明なグラスにそれをほんの少し注いで、舐めるようにして少しずつ味わっていく。  あぁ、やはりこれはいい酒だ。 「どうぞ」  そういって彼女が差し出したのはからり、と揚げられたフォーク状のなにか。つまみのようだ。  ひとつつまんで口の中にいれれば、老いた身にはやや硬いがこの酒に合う。 「旨いな」 「ありがとうございます。『フォークナイト』の足の唐揚げ、お気に召していただいたようで何よりですわ」  なにやら聞こえてしまった不穏な言葉に目を背けるようにして、再びグラスに口をつける。  あぁ、そうだ。確か姪はぶいえすえむ? という魔物を研究していたが、研究し尽くしたとかで最近では別の魔物の研究をしているそうじゃないか。  しかしこれが本当に研究している魔物なら、人生初の魔物食だ。そう考えると実に感慨深い。  そういえば、姪もワタシも『フトゥールム・スクエア』の学生に助けて貰ったことがあった。  あの未来ある学生達は、元気にやっているだろうか……。 「そうだ!」  あの日あった彼らに想いを馳せていると、不意に思い至った。  いまの状況を打開するには、これが良い方法かもしれない。  ワタシは机に向かい、筆を取った。 ●それは遠縁の僕のもとにも届いた。 「っ、はぁぁ……」  溜め込んでいた息を大きく、長く吐き出す。  いっそため息と一緒にこの『問題』も消えてしまえばいいのに。そんな儚い望みが頭を過った。  どうした? と。誰か(学園生)が声をかける。 「いえ、その、……いきなり遠い親戚から無理難題をふっかけられたといいますか……」  言葉を濁して答えるのは【咲良・佐久良】(さくら さくら)で、その手には封蝋のされた手紙が握られていた。 「親戚は努力を重ねて今の地位に上り詰めた資産家なんです。けど、お歳がお歳なので家督を譲るという話になったのですが、彼には子供がおらず……」  そこでやってきたのが親戚のそのまた親戚たち。今まで当たらずさわらずだった者達が、いきなり資産目当てで集まってきたものだから嫌になってしまったらしい。  そして彼のSOSは、遠い親戚であり学園に通っている咲良の元に来たのだそうだ。 「『揉め事が起きないように平和的に解決する方法』、なんて僕が思い付くハズないじゃないですか……」  再び大きいため息をついて、机に突っ伏す咲良。  暫しして、上体をゆっくり上げて彼は貴方達を見た。 「お兄さんお姉さん、お願いですから手伝っていただけませんか? 報酬は依頼した親戚が支払ってくださると思うので……」  これより7日後に開催される親族会議。その場で新たな家長を決めるので、会議前に選定基準を決めてしまいたいのだそうだ。  旅費も寝床も食事も出してくれるし、報酬もしっかり払う。  これはなかなか……いや、だいぶ……悪い話ではなさそうだ。 「ちなみにその親戚は昔お兄さんお姉さんに助けて貰った、と話していましたが……この名前に覚えのある方はいらっしゃいますか?」  咲良が持っていた手紙を開くと、文末の署名にはこう書かれていた。  ――【ナ・ポールタ=スパゲティーニ】
参加人数
2 / 8 名
公開 2020-09-20
完成 2020-10-12
【体験】スイートスパイシーハンティング! (マルチ)
樹 志岐 GM
○甘くてピリッとした回想  ――お砂糖にスパイス。それから素敵なもの。  そういったもので女の子は出来ているらしい。  ならば、素敵なものを別のもの……たとえば、バターと小麦粉に変えて。  それにほんの少しの魔法を添えてみたらもっと素敵なものが出来上がるんじゃない?  そう思って丁寧に生地を作って、じっくり焼き上げて、ひとつひとつに想いという魔法をこめて作ってみた。  クリスマスだもの、沢山の人が幸せになればいいな。 ○そう思っていた時期が私にもありました 「いやぁ、オレサマはちょっと手助けのつもりでやってたんだぜ? いやほんと」  肌寒さを感じる朝と昼の合間のひととき。関係者以外立入禁止の札のかかった空き教室に、その人物――【メメ・メメル】は悪びれた様子も見せずあなたたちの前にやってきた。  傍らには机に突っ伏したまま泣きはらした表情の女子生徒がみえる。  なにやらうわ言のように『ひどいです、あんまりです』と繰り返す彼女の言動と学園長の様子からここに集まった何人かは何かを察したようだった。 「うーん、ちょっと今しゃべれないみたいだから、オレサマが代わりに説明させてもらうゾ☆」  星が飛んでいきそうなほど見事なウインクをし、メメルが代わりに説明する。 「この子が作ったジンジャーブレッドマンが意思を持って学園中に逃げて行ってしまったんだ」  ジンジャーブレッドとはショウガの入った焼き菓子のことで、特に人型の形をしたものをジンジャーブレッドマンと呼称する。  焼き菓子であるため、ひとつひとつ……もとい一体一体の背丈はそこまで大きくない。  それが学園中に逃げて行ってしまったらしい。  それだけならただ捕まえるだけでいいかもしれないが、意思を持っている以上、何かを企んでいるジンジャーブレッドマンもいるかもしれない。  それがただの悪戯程度ならいいのだが!、時間がたてば経つほど意思は強くなり、取り返しがつかなくなるらしい。 「というわけでチミたちにはジンジャーブレッドマンを捕まえてきてほしい!」  言いながらあなたたちの目の前に人数分の小袋が置かれる。  中には白い粉が入っている。香ると少し甘い匂いがした。 「それはパウダーシュガーです。それを振りかけるとジンジャーブレッドマンは普通のジンジャーブレッドマンにもどる……そうです」  机に突っ伏していた女子生徒がもごもごと説明をする。  イマイチふわふわとした様子であるのは、意思を持ち始めた原因が彼女にはないから、だろう。  その原因たる人物をちらりと見ると目をあからさまにそらしていた。 「私が作ったジンジャーブレッドマンは合計で20枚です。その、意思を持った時の『特典』で踏みつぶされたりはしないようになっているので……きっちり20枚、見つかると思います」  お手数ですがよろしくお願いします。  女子生徒は丁寧に頭を下げた後、再び机に突っ伏した。  現在時刻はお昼少し前。  日が地平線に消えてから学園の時計台が鳴るまでの間に20枚のジンジャーブレッドマンを捕獲しろ!
参加人数
5 / 16 名
公開 2020-12-11
完成 2021-01-20

リンク


サンプル


「例えば」
 手元でメモを取っていたペンをくるりと回しながら彼は語り始める。
「例えば、君たちの目の前で事故が起きて、大切な人が巻き込まれたら」
 各々の胸中に『大切な人』の影が浮かぶ。それは恋人か兄弟か、それとも親か。
 いずれにしてもそのあとに続く言葉は変わらないのだ。
「その大切な人は、自分が助からないことを感じていて、『自分よりもそこの小さな子供を助けてあげて』と君に頼んできたら」
 君はどうするだろうか。
 大切な人の望みを叶える? 大切な人を救う道を選ぶ? あるいはどちらも救える道を探すだろうか。
 悩んで、悩んだ末に口にした、貴方の答を聞いて彼は笑った。
「君ならそういうと思った」
 そんな君を見込んで、頼み事があるんだ。
 彼はメモ紙を破くと君に手渡してきた。

――例えば、そんなありきたりな物語