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☆ラブ先生☆『デート』こそ愛よ!


ストーリー Story

 教壇には1人の男性教師が立っている。
 筋骨隆々とした逞しい肉体。精悍ながらどこか優しさを携えた瞳。
 厳ついけどちょっと優しそうなおじさん。そんな表現がしっくりくる。
「はぁーい、みんな! ラブ先生から次の課外授業のお話よん。よぉく聞いてね?」
 厳つい(中略)おじさんこと、【ライオット・ブランドー】先生は低音ボイスのオネェ言葉でそう言った。
 ライオット先生……自称『ラブ先生』。
 武神・無双コースを担当する教師の1人であり、ごく一部の生徒からは人気があったりする。
 そんなラブ先生は逞しい肉体をくねらせながら生徒達に問いかけた。
「勇者にとって1番大切なものって、何か分かるかしらぁ?」
 なかなか深い問いかけだ。
 生徒達は各々が思い描く勇者像をもとに返答する。
 強さ、勇気、魔力、信念、名声、権力、野望――。
「あぁん! どれも悪くはないわ! でも違うのよ!」
 生徒達の答えにラブ先生が教卓を叩いて反論した。
 教卓がメキッと嫌な音を立てた気がする件については、ラブ先生も生徒達もスルーしている。
「答えは『愛』よ! 愛があれば何だって解決できるわ!」
 生徒達は内心思っていた。
(先生の場合、筋肉で全て解決できそうです……)
 そんな生徒達の心中などお構いなく、ラブ先生は続ける。
「と、言うわけでぇ……。次の課外授業のテーマは『デート』よ! うぅん、愛を感じるわ!」
 そんなラブ先生の言葉に生徒達の反応は多種多様。
「よっしゃ! あの子を誘おう!」
 待ってましたと言わんばかりの生徒。
「デートの授業って具体的に何をすればいいのかしら……」
 デートもまた授業の一環として冷静に分析しようとする生徒。
「相手いない。リア充爆発しろ」
 思わず応援したくなるような生徒もいる。
「うふふ、不安になっちゃうのも愛よね。分かるわぁ」
 でもぉ、と続けるラブ先生。
「ラブ先生、ちゃんと見守ってるからっ! あと成績にもちゃんと影響するから!」
 思いっきり覗いてると宣言された生徒達は複雑そうな顔をするしか無かった。
「みんなの愛、先生に思いっきり見せつけちゃってねん!」
 かくして、ラブ先生の覗き付き愛の課外授業デートに向けて、生徒達は各々準備を始めるのだった……。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2019-12-08

難易度 簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2019-12-18

登場人物 3/8 Characters
《模範生》レダ・ハイエルラーク
 ドラゴニア Lv16 / 黒幕・暗躍 Rank 1
将来仕えるかもしれない、まだ見ぬ主君を支えるべく入学してきた黒幕・暗躍専攻のドラゴニア。 …のハズだったが、主君を見つけ支えることより伴侶を支えることが目的となった。 影は影らしくという事で黒色や潜むことを好むが、交流が苦手という訳ではなく普通に話せる。 ◆外見 ・肌は普通。 ・体型はよく引き締まった身体。 ・腰くらいまである長く黒い髪。活動時は邪魔にならぬよう結う。 ・普段は柔らかい印象の青い瞳だが、活動時は眼光鋭くなる。 ・髭はない ・服は暗い色・全身を覆うタイプのものを好む傾向がある。(ニンジャ…のようなもの) ・武器の双剣(大きさは小剣並)は左右の足に鞘がついている。 ◆内面 ・真面目。冗談はあまり効かないかもしれない。 ・立場が上の者には敬語を、その他には普通に話す。 ・基本的に困っている者を放っておけない性格。世話焼きともいう。 ・酒は呑めるが呑み過ぎない。いざという時に動けなくなると思っている為。なお酒豪。 ・交友は種族関係なく受け入れる。 ・伴侶を支えるために行動する。 ◆趣味 ・菓子作り。複雑な菓子でなければ和洋問わず作ることができる。
《ゆうがく2年生》グラニテ・フロランタン
 ドラゴニア Lv11 / 賢者・導師 Rank 1
名前:グラニテ・フロランタン(偽名) 年齢:25歳 性別:女性 種族:ドラゴニア 外見:白い前髪パッツンのおかっぱ たれ目の青い目 色白 巨乳 性格:大人しくおっとりしていてマイペース 普段は余りわがままを言わない 家出したのを気にはしてる 本来の性格は寂しがりで無邪気 お菓子が大好き ちょっと世間知らず 服装:明治の女学生さんスタイル 日傘をさしている
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に

解説 Explan

・場所
 学園敷地内にあるカフェ『ラヴァーズ』と、その近くの中庭が課外授業の範囲になります。
 ラヴァーズは簡単な洋風の軽食と様々な飲み物を扱うカフェです。
 中庭は湖のほとりに花畑があり、なんとなく良い雰囲気が作れそうです。
 どちらか片方のみ、両方訪れる(中庭でくつろぎお腹が減ったらカフェへ、など)、どちらも可能です。

・【ライオット・ブランドー】について
 深い愛と厳つい肉体を兼ね備えた先生です。
 彼は「家族愛!」から「友情愛!」といった迷言を残していますので、デート=異性でラブラブする事にこだわる必要はありません。
 異性・同性関係なく、どんどん愛を見せつけて下さい。

・お相手について
 プランにてお相手様をそれぞれ明記下さい。
 また、絡み歓迎、カップルお任せ、などの記載ございましたらプラン内容などから独断でお相手を決めさせて頂きます。
 1人でも示せる愛はあるかと思いますが、『デート』が課外授業のテーマである事を留意頂けますと幸いです。
 参加者様が奇数であったり、1人で過ごすしか選択肢が無い場合、他の生徒(NPC)が声をかけてくる事も……?
※本エピソードに『公式NPC』は登場致しません。公式NPCが声をかけてくる事はありません。

・その他
 アドリブを極力入れてほしくない際にはプランにアドリブ×など記載お願い致します。


作者コメント Comment
 はじめまして! 間代 空(ましろ そら)と申します。
 ご興味を持って頂き誠にありがとうございます!

 寒くなると人恋しいですよねー、というわけでデートです。
 プロローグはコメディのようなノリですが、ロマンスです。
 是非、ラブ先生に皆様らしい愛を示して頂ければと思います。
 皆様の愛……もとい、素敵なプランに応えるべく尽力させて頂きますので、よろしくお願い致します!


個人成績表 Report
レダ・ハイエルラーク 個人成績:

獲得経験:19 = 16全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
・デート
・見せつける

◆お相手
・グラニテ・フロランタン

◆プレイング
・【事前調査】【推測】でカフェ及び中庭で、メニューや休憩場所等を調べておく
・【料理】【味覚強化】でデート前にクッキーやマドレーヌ等を作って袋に入れておく
・コースは、中庭の散歩→カフェでケーキ→自由散歩→広場(どこかにありそう、なければなし)
・デート中は【危険察知】【博愛主義】でハプニングで彼女に危険がないように気を配る
・万一の場合【即断即決】で早く対処
・散歩中にお菓子の詰め合わせを食べさせる
・軽食はケーキをしこたま(レダは半分程度)
・最後に彼女から不意打ちで頬キス
・【即断即決】で素早くお返しの口キス→告白→お付き合い の流れ


グラニテ・フロランタン 個人成績:

獲得経験:19 = 16全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
デートする

【お相手】
レダ・ハイエルラークさん

【行動】
レダさんをデートにお誘い
『嗅覚強化』でお菓子を嗅ぎ分ける
お菓子を食べながら中庭散歩
ちょっと恥ずかしがりながら「恋人握り」なるものを実践

お菓子を食べた後、カフェでケーキをしこたま食べる
女子の甘い物は別腹
ケーキをあーんして食べて貰う

ケーキを食べ終わったら再び散歩
不意うちでレダさんのフードを外して自分から頬にキス

かみかみになりながら告白

多分『恋愛小説(バイブル)』の影響強し

【心情】
ここの所ずっとレダさんの事を考えてしまいますわ
これは、あの「バイブル」にあった恋なのでは…?

丁度、デートの授業もありますし
思い切って、私の気持ちを伝えてみましょう

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:19 = 16全体 + 3個別
獲得報酬:540 = 450全体 + 90個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
独り身にデートに行けとは・・・
なかなか酷なことを・・・言う

しょうがないから誰か知り合いにお相手お願いしよう
この間ブラインドデートしたのが初めてだし・・・ってかあれはデートでいいのか?
・・・そもそもデートっていうのはどういうことすればいいんだ?

ちょっと調べてみよう
具体的にはデートしてる奴らの尾行だ!
バレない様にこっそりとな

大丈夫大丈夫、邪魔する気は全くないし
いつかオレがデートするときの参考にするだけだから

デート相手にトナカイのポロくんプレゼント
デート覗き見して口の中が甘くなったら珈琲の葉を噛むことにしよう

リザルト Result


 授業前夜。

 【レダ・ハイエルラーク】の部屋にカシャカシャと彼自慢の『泡だて器』の小気味良い音が響く。すでに焼きあがっているクッキーが部屋に甘い匂いを漂わせているが、まだ作業は続くようだ。
(グラニテは喜んでくれるだろうか……)
 授業――デート――に誘ってくれた【グラニテ・フロランタン】の喜ぶ顔を浮かべながら、レダはオーブンの温度を確認し、仕上げにかかった。

 一方、レダをデートに誘ったグラニテは、バイブルとも言える恋愛小説の1冊を読み終わり、ふうっとため息をついた。
(やはり、このところ……今も、レダさんのことばかり考えてしまいますわ。これは、あのバイブルにあった『恋』なのでは?)
 明日が待ち遠しいと同時に怖いような。不思議な緊張感を紛らわせようと、グラニテは別の恋愛小説を手に取る。
(レダさんは私の事をどう思っているのでしょう……? いいえ、不安がる暇があるなら勉強しなくては)
 グラニテは、恋愛小説……バイブルに集中する事で不安を払拭しようと努めた。

(独り身にデートに行けとは……なかなか酷な事を……言う)
 【仁和・貴人】(にわ たかと)は憂鬱な気分で眠りについた。

 夜が明ければ、【ライオット・ブランドー】こと『ラブ先生』の(監視付きの)デートの授業が、始まる――


 授業当日。時刻は昼食時を回った頃。

 グラニテはレダとの待ち合わせ場所の中庭に予定よりも15分程早く到着していた。
(さすがに早すぎたかしら?)
 少々空回りするほど気合いじゅうぶんなようだ。
 しかし、品のいい白と蒼のコート、そしてマフラーが寒さを忘れさせてくれる。
 あと10分程。そう思った時、遠くから見慣れた黒装束の男性が足早に近付いてくるのに気付く。
(レダさん……!)
 グラニテの胸が高鳴る。
「すまない。待たせてしまっただろうか?」
 約束の時刻の約10分前に到着したレダだったが、グラニテを待たせてしまった事を申し訳なく思い、素直に謝罪する。
「いいえ、大丈夫です。私も今来たばかりですわ」
 顔が火照るような感覚をごまかすように、笑顔でバイブルから引用した台詞を告げるグラニテ。
「そうか……。良かった」
 心底安心した様子のレダは、そういえば、と付け足す。
「今日もお菓子を作ってきた。良かったら食べてくれないか?」
「まあ! じつは楽しみにしていましたの」
 いつもの、といったレダの振る舞いに安心感を覚えるグラニテ。レダが取り出した袋からは甘い良い匂いが漂ってくる。
「クッキーとマドレーヌですのね。美味しそうですわ」
 いただきます、と丁寧に言ってからクッキーに口を付ける。
「今日のお菓子もとても美味しい! レダさんは本当に器用でいらっしゃいますわね」
 笑顔でクッキーを1枚、ぺろりとたいらげる。そんなグラニテを見ているレダもまた、どこか幸せそうだった。
「気に入ってくれて良かった。まだ沢山ある、少し歩きながらどうだろう?」
 レダは今日の為に、昨日のうちに事前に授業が行われる場所について下調べしていた。少しでもグラニテが楽しめるように、万一その身に危険が及ばないように。
 今も何事も無いようにと周囲に注意を払っている。そんなレダはラブ先生の気配にも勘付いていたが、むしろ彼に見せつけるのが目的と言っても過言ではないので気にしていない。

(これは……チャンスですのに、なんと切り出せばいいのか迷いますわ)
 レダの提案に従い2人で中庭を散策中、グラニテはお菓子を食べながら悩んでいた。せっかくのデート、手を繋いで歩きたい。
(さりげなく。そう、バイブルにもごく自然な感じに書いてありましたわ……!)
「レ、レダさん。せせ、せっかくですから、手を繋ぎませんか?」
 あくまでさりげなく口にした風を装おうとしたグラニテだが、緊張で声がうわずってしまう。
「ああ、そうだな……」
 心なしかレダも緊張しているように見えるが、そっとグラニテの手を握る。
「あ……。少し違いますわ。その、恋人繋ぎを……」
 レダの手の温もりに顔を赤くしながらグラニテが告げた。
(恋人繋ぎ、とは……?)
 内心戸惑うレダの手をグラニテはそっとほどき、指と指を絡めるように繋ぎ直す。照れ隠しに微笑むグラニテをレダは愛しく思った。


 そんな2人の様子を、貴人はこっそり覗いていた。
(甘い……あれがデート……なのか?)
 甘い空気に耐え切れず、コーヒーの葉を口に含みながら。
 独り身の貴人にとって、デートなど未知の領域であり、それならば、とカップルの尾行をして見識を深め、ついでに今後の参考にしようと考えていた。邪魔をする気は全く無い。
(ラブが何をもって『愛』と言っているのかも気になるな)
 貴人はラブ先生の視線にも気を配る。
「ねぇ、何やってんの?」
 唐突に背後から声をかけられ、危うく物音を立てそうになる。いや、声をかけられた時点でアウトかもしれない。
 半ば諦め気味に振り向く事を決めた貴人の脳裏には、1人の女性の姿が浮かんでいた。
 期待と、なぜか僅かな不安を感じながら振り向いた貴人の視界には、銀の髪に控えめな胸のルネサンスの少女が貴人に視線を合わせるようにかがんでいた。
(別人、だな……)
 思わずため息をつく貴人。
「ええっ!? なんでため息むぐぅ!?」
 少女が大きな声を上げるので、思わず咄嗟に手で口を塞ぐ貴人。

 そんな2人の様子をちゃっかりこっそり窺っていたラブ先生。
(あれは、貴人くんね。まだ愛に戸惑ってるのかしら? 青春だわ……!)

「オレは今、重要な研究の為に尾行……いや、調査をしているんだ。少し静かにしてくれ」
 ルネサンスの少女は耳をピクピク動かしながら貴人の言い分を聞き、口を塞がれたまま、了解したと言いたげに首を縦に振る。貴人に意思は通じたらしく、少女は解放された。
(思わぬ邪魔が入ったな……)
「ねぇ、キミもラブ先生の授業中だよね? アタシは【ノア・ハミエイル】。良かったら、協力させてよ」
 ルネサンスの少女、ノアが小声で提案する。
(……人手が多い方が有利、か?)
「いいだろう。オレは仁和・貴人だ。ハミエイルくん、邪魔はするなよ」
「ノア」
「……?」
「ノアって呼んで。なんかよそよそしいし」
 貴人は少し気の強そうな少女に反論しても面倒なだけだと思い至る。
「ノアくん、でいいか?」
「うんうん。よろしくねっ」
「あ、ああ……。ん? ラブはどこへ行った!?」
 ノアとのやり取りとの間に、ラブ先生を見失ってしまったようだ。
「なんかゴメン……。あっち! 中庭の方に探しに行ってみない?」
 特にあての無い貴人は、ひとまずノアの提案に乗る事にした。

「見当たらないな……いや、デートらしい事をすればラブを発見できる可能性が……?」
 貴人は考える。デートらしいとは何か。
(そういえば、あのカップルは手を繋いでいたな……)
 貴人は閃きのまま行動する。
「ノアくん、手を」
「手?」
 不思議そうに自身の右手を見つめるノア。貴人は少し躊躇った後、ノアの右手をとり、手を繋ぐ。
「えっ? キミって案外大胆……って、デートの授業だもんね! あはは……」
 照れ隠しなのかやや早口で告げるノアの言葉に、貴人は少し顔が熱くなるような感覚を覚える。
 暦の上では冬だが今日は幾分温かい。きっと仮面が熱いに違いない。貴人は半ば強引にそう思い、ノアと手を繋いだまま辺りを見渡す。
「やはり見当たらないな……」
「うーん、そうだね」
 2人して肩を落とす。
「……このまま少し歩いてみよっか? ラブ先生見つかるかもしれないし」

 その後2人は中庭を散策し、カフェにも寄ったが結局ラブ先生は見当たらなかった。
 授業終了の時刻は近い。
「ごめん、あんまり役に立てなくて……」
 ノアは気落ちしている様子だった。彼女なりに真剣に授業に取り組んでいたようだ。
「仕方ないだろう。……ああ、そうだ。これを」
 そう言って貴人が懐から取り出したのは『トナカイのポロくん』だった。
「わー! ぬいぐるみ可愛い! トナカイかな?」
「ああ、受け取ってくれ。ちなみに、部下はいつでも募集中だ」
 貴人から受け取ったポロくんのぬいぐるみを嬉しそうに抱きしめるノア。
「大切にするし、部下の件は……考えとく!」
 ノアは笑顔でそう言ってから、一歩、貴人から離れる。
 まだ夕刻だが、この季節は日が落ちるのが早い。

「それじゃ、今日は寮に帰るね」
 それだけ言って、寮に向かって駆け出した……かと思うとふと、振り向いて。
「貴人くん! 今日はありがとう! またね!」

 残された貴人も、寮へと向かう事にした。
(貴人くん、か……。なぜ最後だけ名前で呼んだんだ? ようやく覚えたんだろうか?)
 貴人が『愛』を理解するにはまだ時間がかかるかもしれないが、今日の授業は決して無駄ではなかっただろう。


 時刻は少し戻って。
 中庭の散策で少し疲れた足を休めにカフェへと寄る事にしたレダとグラニテ。
 カフェ『ラヴァーズ』。
 授業に使うからか他の客は見当たらず、レダとグラニテは清潔でお洒落な内装のカフェを貸し切ったような状態になっていた。店主が注文を取りに席までやってくる。
「どのケーキも美味しそうですわ。チョコケーキ……いえ、オレンジのタルト……?」
 グラニテは真剣にメニューを見て悩んでいる。
「両方頼むのはどうだろう。食べ切れないようなら私が残りをいただこう」
「よろしいんですの? では、チョコケーキとオレンジのタルトをお願いしますわ」
「私は……そうだな、ティラミスを」
「承りました。少々お待ち下さい」
 店主は一礼して席を離れる。すると、程なくして注文したケーキが運ばれてくる。
 ケーキを前に目を輝かせ、口に運ぶグラニテ。もちろん、いただきますは忘れずに。
「美味しい! 濃厚だけれど甘すぎず……」
 幸せそうにケーキを食べるグラニテを見て、レダは内心。
(今度はケーキ作りに挑戦してみるのもいいかもしれないな)
 などと考えながら、ティラミスを堪能していた。
「あの、レダさん。このケーキ、とても美味しいんですの」
「そうか。それは良かった」
「いえ、あの……」
 ケーキを手が震えてしまわないよう気を付けながら、レダの口元に近付ける。
「はい、あーん……ですわ」
 グラニテが何を望んでいるのか理解したレダは、迷っていては彼女に失礼だと思い、戸惑いを押し隠しグラニテのフォークからチョコケーキを食べる。
(こ、これは……バイブルにあった『間接キッス』では……?)
 今まで山のように読んできたバイブルの情報がグラニテを赤面させる。
「グラニテ」
「あっ、はい!?」
「あーん、だ」
 まさかのレダからのお返し。つい間接キスなどと意識してしまった後という事もあり、ますます顔が火照るが、せっかくの『レダさんからのあーん』を逃すのはあまりにも惜しく。
 ティラミスは美味しかった、と思うが、味わう余裕など全く無いグラニテだった。

 カフェでケーキをしっかり堪能した後、レダとグラニテは再び手を繋ぎ中庭の花畑などをゆっくりと散策していた。

(これ以上は野暮ね……。美しい『愛』見せてもらったわぁ……)
 こっそりとラブ先生が退散した事は、もはやどうでもいい事だろう。

「徐々に日が落ちてきましたわね」
「ああ、デートも終わりが近いな」
 2人は、どこか名残惜しそうに言葉を交わす。
「あ、レダさん。フードに葉っぱが。少しかがんで頂けます?」
 それは、今日1日を通して彼女の『憧れ』が『確信』に変わった、決意を込めた嘘だった。
「ああ、すまない」
 グラニテの言葉にレダは素直に身を低くする。
 レダの横顔が目の前にあり、緊張のあまり震える手でそっとフードを外す。
「……レダさんの髪、やっぱり綺麗ですわ」
「以前にも――」
 レダが言いかけた時デラニテの唇が、そっと。レダの頬に触れた。
「わ、私は……その、おひた、お慕いして……レダさんが……す、好き、で……!」
 必死で言葉を紡いだグラニテだったが、極度の緊張で思ったような、バイブルにあったような言葉にならない。
 しかし。その言葉は、想いは。しっかりレダに伝わって。
「先に言われてしまったようだ」
「――え?」
 レダは、そっとグラニテの肩に手を置き、自身の唇をグラニテの唇に重ねた。そして、そっと体を離した後にしっかりとグラニテの目を見つめて。
「グラニテ。私も好きだ」
 そう言うと、『片翼の水晶のネックレス』を愛しい女性の首にそっとかける。
 昨日、事前に下調べを行った際に、彼女に似合いそうだと購入したものだった。
「綺麗……。あ! 私からも……!」
 グラニテはコートのポケットからアクセサリーケースを取り出し、レダに差し出す。
 それは、青く美しい彼の瞳のような『ラピスラズリのピアス』だった。
「ありがとう、大切にする。グラニテ、あなたと共に」
「え!? は、はい……!? 不束者ですがよろしくお願い致します!」
「……もう暗くなってしまったな。グラニテ、寮まで送ろう」

 門限がある為、あまりゆっくりはしていられないが、それでも2人はゆっくりと寮へと向かった。
「レダさん、今日は本当に」
 感極まってそこでグラニテの言葉が切れてしまう。
「グラニテ、目を……」
 そっとグラニテを軽く抱き寄せるレダ。まるで、言葉は要らないとでも伝えるように。レダの言葉の意味するところを察したグラニテはそっと目を閉じる。
 目を閉じていても、唇から伝わる熱がレダと唇を重ねて――キスをしているのだと教えてくれる。
「グラニテ、好きだ……」
「はい。レダさん。私もです」

 2つの影が1つになり。
 ラブ先生も及び知らぬところで、1組の恋人達が誕生していたのだった。



課題評価
課題経験:16
課題報酬:450
☆ラブ先生☆『デート』こそ愛よ!
執筆:間代 空 GM


《☆ラブ先生☆『デート』こそ愛よ!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!