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サンタクロースバウト


ストーリー Story

 子供にプレゼントをくばるサンタという存在は誰もが知っているだろう。
 恰幅の良い白いヒゲを生やした老人が赤い衣装を着ているのが有名だ。
 しかしサンタと言えど、一人で世界中を回っている訳ではない。
 各地に点在する仲間と一緒に働き、子供達に夢と希望を与えている。
 この男【サンタクロース・バトルロード】もサンタの名を持つ一人だった。
「ぐふぅ、この間の黒王クマと格闘した傷が痛むわい。これでは今度の試合にも勝てぬかもしれぬわ。前回王者であるワシが棄権するわけにはいかぬ。どうしたものか……」
 背中と胸に傷を負ったサンタクロースだが、その肉体は老人のそれではない。
 分厚い大胸筋、六つに割れた腹筋、丸太のような両腕と、はち切れんばかりの大腿四頭筋。
 バッキバキの筋肉美は二十歳のものと言っても過言ではないだろう。
「こうなったらもっと鍛えねばならぬな。ぐふぅ……」
 赤い帽子と赤い服は、サンタの職業に就く者にとっての憧れである。
 とある地域のサンタクロースは、サンタクロースバウトで優勝者しなければ赤い服は着られない。
 とても栄誉なものなのだ。
「赤い衣服はこのワシが身に着けねばならぬ。だがこのままではサンタクロースバトルロワイヤルに負けてしまう。ぐふぅ、ワシの相手になれる戦士を見つけなければ。だがどこにいるものか……ぐふぅ……」
 サンタクロースは考える。
「ぐふぅ、あの学園に頼んでみるのもありか? ぐふふぅ、ワシを倒せる者が居るのか楽しみだわい。ぐふぅ……」
 サンタクロースは自身の傷を筋肉の締め付けで止血している。
「ぐふぅ、まずはトレーニングだ。それを終えてから学園に依頼を出すとしよう。そして生徒達に我が肉体の仕上がりを見せつけてやろう」
 サンタクロースは自分の背丈よりも大きな岩を背負い、腕立て伏せを続けている。
 回数を行うごとに彫刻のような肉は切れ味を増し、汗でテカテカと光り輝く。
「ぐふぅ、楽しみだわい。若い力を吸収してこの身に力が宿るのをな! グワハハハハハハハ!」
 学生が来るまで、サンタクロースはトレーニングを続けた。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2019-12-19

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2019-12-29

登場人物 4/8 Characters
《新入生》鳥珠・菖蒲
 ルネサンス Lv12 / 芸能・芸術 Rank 1
名前:鳥珠 菖蒲(ぬばたまの あやめ) 種族:黒狐のルネサンス 【外見】 ・黒髪ゆるウェーブで右側お団子サイドテール ・グラマーな巨乳 ・紫の瞳 ・左目に泣きぼくろ ・妖艶な色香が漂う女性 【服装】 ・黒のオフショルダーミニ着物 ・制服のマント着用 【性格】 はんなりマイペース お茶目で悪戯っ子だがドジっ子な為に悪戯が成功しない 料理が壊滅的に下手なのに出来るはずとやりたがる 舞妓に憧れており舞を習えるのが嬉しい ゆうがくの皆の事を「我が子」と同然と捉えておりすんごく可愛がる 基本的にポンコツお姉さん 【口調】 普通の時は ~ですわ。 ~かしら。 テンション高い時 ~でありんす。 どうやら素は~でありんす。の方で意識してないと方言が出てしまうらしい。
《サンタ見習い》だすく・じむ
 カルマ Lv15 / 魔王・覇王 Rank 1
「おで、まおう。 なまえ、だすく。 おでをうみだしたひと…じむぅ。 おで、まおう。おまえら、くう! …はらへった(ぐぅぅ)。ねむぅ…(ぐーすか)」 とある洞窟で、とある男が創造した「魔王の素体」 闇の魔力変換を肉体増強に全振りしているためか、物理的にあり得ない筋肉量を誇る巨体、まさに魔神と形容するにふさわしい肉体である。 膨大な魔力注入により、とうとう目覚め、ダスク(夕闇)の名を与えられたが、何しろ二言三言話しただけで力尽きてねんねしてしまうので、完全なる目覚めのため魔力供給を続けることにし、放置。 創造主と入れ違いで、授業で洞窟に探索に来た学園生と交戦。 暴力的なまでの筋肉で学園生を圧倒するが、何しろ生まれたばかりなので体の使い方がまるで分かってない。 当然ガス欠となり、しおしおのぷ~とばかりに力尽きたところを学園生に連行され、学園に保護された。 まま(母親がわり) 【マーニー・ジム】 リスク・ジムの元婚約者。リバイバル。 あにぃ(兄がわり) 【タスク・ジム】 マーニー・ジムの孫。広場でうろついていただすくを発見・保護。 アルチェの海蝕洞窟で、似た雰囲気の甲冑の巨人と交戦したようだが…?? *** 【魔王育成計画】 1 レベリング ★レベル1 ひらがながはなせる 一人称「おで」 ★レベル3 カタカナもはなせる 一人称「オデ」 ★レベル5 漢字も話せるし、敬語も使えます 一人称「俺」 ★レベル7 複雑な概念を表現出来ます 一人称「私」 ☆レベル10 魔王としての思想を持ちます 一人称「我」 2 コミュニケーション ・たべものをあげたら、なつきます ・ことばをおしえたら、おぼえます ・つよさをしめしたら、みとめます 3 技能 職業技能は物理攻撃、一般技能は運動系に全振りの見通し
《真心はその先に》マーニー・ジム
 リバイバル Lv18 / 賢者・導師 Rank 1
マーニー・ジムよ。 普通のおばあちゃんとして、孫に看取られて静かに逝ったはずなんだけど…なんの因果か、リバイバルとして蘇ったの。 何故か学生の時の姿だし。 実は、人を探していてね。 もし危ないことをしていたら、止めなければならないの。 生きてる間は諦めてたんだけど…せっかく蘇ったのだから、また探してみるつもりよ。 それに、もうひとつ夢があるの。 私の青春、生涯をかけた行政学のことを、先生として、みんなに伝えること。 これも、生前は叶える前に家庭持っちゃったけど、蘇ったいま、改めて全力で目指してみるわ。 ※マーニーの思い出※ 「僕と一緒に来てくれませんか?」 地方自治の授業の一環でガンダ村に視察に行ったとき、そこの新規採用職員であったリスク・ジムからかけられた言葉だ。 この時点で、その言葉に深い意味はなく、そのときは、農地の手続きの案内で農家を回る手伝いといった用件だった。 「よろしくお願いします。」 これ以降、私たちの間では、このやり取りが幾度となく繰り返されることとなる。 その後、例のやり取りを経て婚約に至る。 しかし、幸せの日々は長くは続かない。 結婚式の前夜、リスクは出奔。著作「事務の危機管理」での訴えが理解されない現状に絶望したとのことだが… 「現状の事務には限界がある。同じことの繰り返しじゃ、世界は滅ぶよ」 結婚前夜の非道な仕打ちよりも、消息を絶つほど思い詰めた彼の支えになれなかったことを今も後悔している。 ※消滅キー※(PL情報) リスク及びリョウに感謝を伝えること 片方に伝えると存在が半分消える(薄くなる) メメ・メメル校長はこのことを把握しているようで、これを逆手にとって消滅を遠ざけてくれたことがある。 (「宿り木の下に唇を盗んで」(桂木京介 GM)参照)
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に

解説 Explan

・目的
 サンタクロースとの対戦
 鍛えるのが目的なので勝っても負けてもどちらでも良い。

・特徴
 白髭白髪の老人。
 ただし体はムッキムキ。
 鍛えすぎて剣の刃も通らない。
 武器も防具もなく、冬場でも上半身は裸。
 クマにつけられた傷はまだ塞がり切っていない。狙うならそこ。

 サンタクロース武術体現者。
 クリスマスの日にプレゼントを運ぶために体を鍛えまくっている。
 体が大きくなりすぎて煙突からは入れなくなり、手刀で家の壁を切り裂き進入する。
 プレゼントを置き次第家を脱出し、壁は元通り修復する。

・攻撃
 額から爪の先まで全て凶器。
 パンチ、キック、頭突き、手刀、掌打と肉体を使った攻撃が得意。
 サブミッションはしない。

・連撃拳
 極限の拳を連打する。
「サンタタタタタタタタタタタタアア!」

・幻影の足捌き
 足の運びで幻影を生み出す。
 雪の上に足跡も残さず。
「サンタの幻影……お前はワシを捉えられない」

・サンタからのプレゼント
 拳を突き上げるアッパーカット。
 暴風を巻き起こして辺りの人間を全て巻き込む。
「降り注ぐプレゼントにしてやろう!」


作者コメント Comment
 天に死兆星が輝く。


個人成績表 Report
鳥珠・菖蒲 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:195 = 65全体 + 130個別
獲得報酬:6000 = 2000全体 + 4000個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
栄養価の高いご飯を食べて貰い養生して貰う

【行動・心情】
サンタのおじいちゃんはいい人でありんすよ
でも、怪我しながら仕事するのは駄目でありんす
しかも戦うなんて、怪我が悪化してしまうでありんすよ!
わっちが手ずから作ったお鍋を食べて養生するでありんす!
え?食べたくない?
好き嫌いは駄目でありんす!
もう、仕方ない人でありんすね〜
はい、あーん♪(口に<やみなべ>突っ込む

むむ、まだ抵抗するでありんすか?
仕方ない…この色々混ぜた栄養価の高いお鍋ならきっと
すり込んでもきっと効果あるはずでありんす

えっとでも体内に吸収させるなら…
あ、丁度いい所に傷口がありんすね!
体内に吸収されるようにすり込んで行くでありんす

だすく・じむ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
最強のサンタ「サンタクロース・バトルロード」(以下、サンタ氏)に
強さとは何か、それを教わりに来た!

サンタ氏の居城に着いたら
不器用かつ少ない語彙数なりに一生懸命挨拶し
「お見舞い兼レッスン代」として黒騎士ジェムを献上
兄貴分の【タスク・ジム】のチョイスで
滋養にいいしお酒に合うから喜ばれると思う、とのこと

まずは十爪ヒグマをミットがわりにサンタ氏のアップ相手
パンチを受けながらサンタ氏の動きを熱心に観察
【運動神経】【肉体言語】でサンタ氏の体運び、技の切れを
覚え込むように見つめる

そして栄養補給後にサンタ氏に勝負を挑む
これまでに覚え込んだサンタの動きをトレースした上で
今の自分の全てをぶつける!

アドリブ超A

マーニー・ジム 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【事前調査】【読書】大図書館で伝説的なサンタについて調べ
サンタクロース・バトルロード(以下、サンタ氏)の記述を見つけたら
戦闘方法を徹底的に調べあげる

サンタ氏の居城に着いたら
まずは最大限の敬意をもってご挨拶
お役に立つため
だすくをスパーリング相手に使ってほしい旨申し出る

サンタ氏の調子が上がってきたら
せっかくなので
未熟なだすくに技を教えてほしい旨
【説得】【信用】でお願いする

技を覚えたら
だすくに応急処置と栄養補給をし
今日の記念に
だすくと勝負してほしい旨お願いする

承諾なら、だすくのセコンドにつき
リング(ありますよね?)に送り出し
ゴング(ありますよね?)を鳴らした後
実況席に着き解説を担当する

アドリブ超A

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
この時期で格闘・・・なんか、某おまつりを思い出すんだが気のせいか?
まぁ、それはそれとして
ルールは改めてバトルロードさんに聞くとして
戦闘範囲・・・リングがあった方が盛り上がるだろうなってことで
設計、陣地作成でリングを作っるとしよう
出来ればこの後も長く使えるように頑丈にだな
元々ある場合はメンテと補強でもしておくか・・・

実際の対戦時には実況をしよう
その際には空気察知、会話術、精神分析、心理学辺り使ってせいぜい盛り上げるとしよう

一対一か一対多数どちらでやるかはわからないが他の選手と戦い終わって疲れてる尚且つ隙を見せたらルールに抵触しない感じに飛び込み参加だ
・・・ただし、奇襲で一撃限りだがな

リザルト Result

 誰もが寝静まる聖夜。
 雪がチラつき気温は氷点を下回った。
 その只中に、赤い服をベストのように着こむ殆ど半裸の老人が立っている。
 彼こそ誰もが認める本物のサンタクロースなのだ。
「ぐふぅ、まずは仕事といこうか」
 その名を【サンタクロース・バトルロード】と言い民家の壁の前に立っていた。
 サンタの仕事といえば子供にプレゼントを運ぶ事だが、彼の体は強靭に鍛え上げられ、最早煙突を通り抜けることはできない。
 故に、一切の音もなく手刀で壁を切り裂くと、民家の内へと侵入した。
 俊足の足捌きで音もなく移動するが。
「きゃ……」
 家の者に見つかってしまったようだ。
 しかし叫ばれる前に口元を押さえると、太ったサンタクロースの幻影が女の前に残される。
 それを見た瞬間、彼女の意識は失われた。
「ぐふぅ、サンタクロースを見た者は夢の世界へ誘われるのだ」
 素早く子供の枕元にプレゼントを置き去ると、彼はまた壁を切り裂き脱出して行く。
 壁ははめ戻されると細胞がくっ付くようにピッタリと密着する。
「ぐふぅ、これで一仕事終えたわい。……あとは、人を待つのみだ。ホゥッホウッホウ……」
 サンタクロースは足跡も残さず、四人が来る自宅へ歩み始めた。

1.
 学園で依頼を受けた四人は、サンタクロースの指定した場所に到着していた。
 そこには小さな家があり、扉は開け放たれている。
 目立つ場所に張り紙があり『自由に使え』と書いてあった。
「使えというのだから使うのでありんす」
 【鳥珠・菖蒲】(ぬばたまの あやめ)はサンタクロースの家の中に入ってやみなべを取り出した。
 火にかけて温め直し、置いてあった唐辛子とわさびをひたすら投入している。
「うぐ……完璧でありんす……」
 ぐつぐつと煮立った鍋は、異様な色彩と刺激臭を放つ。
「オレは……リングでも作るか?」
 【仁和・貴人】(にわ たかと)は、家の材料を使い、雪の上に立派なリングを作成した。
「だすく、大図書館で調べた結果、サンタクロース・バトルロードという方はバトルロワイヤルで三度も優勝するような兵よ。その人が来るまでにトレーニングするのよ!」
 【マーニー・ジム】はサンタクロースの家に置いてあったスパーリング用ミットを用い。
「まま、おで、れんしゅう、する」
 【だすく・じむ】とスパーリングを始めていた。
「はい、ワン・ツー! ワン・ツー!」
「ふぅん! ふぅぅん!」
 ミットを打つ音が静かな夜に響いている。
 充分な準備を終え、リングの前で四人が待っていると。
 誰もが見たことがある赤い太り気味のサンタクロースの姿が見えた。
「あれがサンタクロース、聞いた姿と違うでありんす……ハッ!」
「ぐふぅ、あれは残像だ。子供の夢を壊さぬためのただの虚像よ……」
 気がついた時、菖蒲の後ろに筋肉質なサンタクロースが立っていた。
「い、いつの間に後ろに!?」
「気配さえないとは、サンタクロースとは恐ろしい存在だな……」
 菖蒲と貴人はゴクリと喉を鳴らす。
「こんばんはサンタクロースさん、マーニー・ジムと申します。本日トレーニング相手をお探しということで、このだすく・じむの相手をお願いしたく思います。その際には是非サンタの極意を伝授して欲しいと考えています!」
 マーニーはサンタクロースに頭を下げた。
「おで、だすく・じむ。よろしく、だ。これ、みやげ」
 だすくは、黒騎士ジェムを手渡した。
「ぐふぅ、その意気や良し。極意が知りたいのであればかかって来るのだな。何時でも、何人でも、何をしても構わぬ! さあ全力で掛かって来い! ホゥッホウッホウ!」
 サンタクロースは土産をコーナーに置き、サンタっぽい笑いを上げてリングに飛び乗った。
 下に居る四人を見渡し両手を広げて待っている。
 その場に飛び乗ったのは手にやみなべを持った菖蒲と、やる気を見せるだすくの二人だった。
「はい、解説はこの私、マーニー・ジム、マーニー・ジムと」
「……仁和・貴人だ、よろしく頼む」
「解説はこの二人で行います」
 二人はリングから離れた場所で三人の動きを実況している。
 リング上では三人の握手が交わされ。
「ぐふぅ、さあ始めようか……んんんんん!」
 サンタクロースの肉体が膨張し、ゴングがカーンと鳴らされた。
「ふぅんんん!」
 まずは先制攻撃とばかりに、サンタクロースから拳が放たれる。
「むううう!」
 だすくは、十爪ヒグマをミットがわりに受け止めた。
 二発目、三発目とそれは続き。
「ぐふぅ、アップ相手でもしてくれるのか? もう充分だわい!」
 サンタクロースから伸ばされた拳がミットごとだすくを吹き飛ばした。
「サンタクロースさんも調子が上がって来たみたいですね。相手をするだすくにも、その極意を教えてくださると幸いです!」
 マーニーは解説席からお願いしている。
「ぐふぅ、手取り足取りなど性に合わん、その身に刻んで覚えるのだな!」
 サンタクロースの攻撃ががだすくに向くが。
「攻撃、行くでありんす! わっちが手ずから作ったお鍋を食べて養生するでありんすよ!」
 菖蒲は煮立った鍋の具材を箸で掴み。
「ぐふぅ、何という臭気、鼻が曲がってしまうわい。ワシはそんな物を食わん」
「え? 食べたくない? 好き嫌いは駄目でありんす! もう、仕方ない人でありんすね~、はい、あーん♪」
「ぬぐふ!」
 サンタクロースの口の中へ無理やり突っ込んだ。
「おっとぉ、あれは唐辛子やわさびを大量に投入したやみなべだぁ! これは臭い、ここも臭い!」
「……鼻が曲がるようだが、奴には効いていないようだぞ」
 二人の解説が騒がしく状況を伝える。
「……んんんんん美味いぞおおおおおおおお!」
 サンタクロースの目が光り輝き、口からは炎が吐き出された。
 よくわからないが、味が気に入ったようだ。
「んおおお!」
 食べ物に気を取られている今、だすくはサンタクロースに攻撃し、背中の傷が少し開いた。
 だが、筋肉が傷を締め付け止血されてしまう。
「始まりましたね貴人さん、この試合どう見ます?」
「うむ、あのサンタクロース、味にも鈍感なのかもしれないな。それにあの肉体、全ての部位が無駄なく鍛え上げられて、とても良い切れをしている。特にあの広背筋、まるで何かの生き物の……」
「おっとぉ、動きがあるようですよ」
 解説の二人はリングの様子を見守った。
「美味しく食べられるなんて想定外でありんす。仕方ない……この色々混ぜた栄養価の高いお鍋ならすり込んでもきっと効果あるはずでありんす! えっとでも体内に吸収させるなら……あ、丁度いい所に傷口がありんすね! 体内に吸収されるようにすり込んで行くでありんす」
 菖蒲は食べさせるのを諦め、傷口に塗り込むことを決めたのだが。
「おで、めし、くう」
 サンタクロースを見たていた、だすくはやみなべを求めた。
 菖蒲はマーニーを見ると。
「だすくはそのぐらいでは死なないわ! ついでにこれも食べなさい!」
 マーニーはまるごとチキンを投げつけた。
 だすくはそれを口で受け止め、骨ごとバリバリとむしゃぶり食う。
 やみなべを啜り呑み込むと、だすくはかっと目を見開いた。
「んんなああああああああああああ!」
 サンタ氏に勝るとも劣らない気を発し、今の彼を凌駕し全盛期の彼もかくやというほどの筋肉の魔神に変貌した。
「ほぉお、打ち合いを望むのか? それもよかろう!」
 サンタクロースとだすくの拳に力が増し。
「サンタタタタタタ、オワッ、タアッ!」
「マアタタタタタタ、マアッ、タアッ!」
 拳の連撃がぶつかり合い、熱い火花を散らしている。
「これは凄い、激しい打ち合いが始まった! あれは連撃拳と言われるサンタクロースの技ですが、遥か古代サンタクロースの里で編み出され、伝説では空気圧で鳥さえも撃ち落としたとあります! だが、だすくも負けてはいませんよ! がんばれだすく、がんばれサンタクローーーーース!」
「……やはりオレも出場すれば。いや、何でもありなら奇襲もありだ。隙が見えたら行くとしよう」
「おっとここで参戦予告! 今後も何が起こるか分かりませんよ! 引き続きご注目ください!」
 解説が終わり再びリング上では、菖蒲が残っているやみなべの汁をサンタクロースに投げつけている。
 飛び散る汁が傷口に吸い込まれ、紫色の変な煙を上げていた。
「ぐふぅ、傷に……しみるわい! だが、それがどうしたあああああ!」
 多少の効果があったようだが、サンタクロースはまだまだ倒れそうもない。
「おで、なぐる」
 だすくの体重の乗った拳が放たれるが、サンタクロースには躱されてしまう。
「ぐふぅ、先ほどの速さが無くなっておるぞ。サンタの幻影……お前はワシを捉えられない」
 太った赤い服の幻影を残し、サンタクロースは移動していた。
「き、来たああああああ! 伝説の足捌き、見た者をファンシーな世界に誘う大業だああああ! これはすごおおおおおおい!」
「……なるほど、各地に散らばる伝説はそのためか。あの幻影を見た者がサンタクロースを誤認したわけだな。これは恐ろしい業だな」
 司会の二人が大騒ぎしていると。
(ゆきにしずむまえに、ふみだす!)
 だすくの足捌きがサンタクロースに拮抗して行く。
 リングの上は黒いダルマとサンタクロースの幻影で満たされる。
「ほう、ワシの足捌きについてくるとは中々の逸材。ぐふぅ……」
 サンタクロースも感心して二人の速度がドンドン上がる。
「だすく、栄養補給よ、受け取って!」
 マーニーはサンタクロースの家に置いてあったリンゴを投げつけた。
「まま、うまい」
 だすくは動きながらもパシッとリンゴを受け取って口に運ぶ。
 菖蒲は動きに追いつけなかったが。
「その動きも延々には出来ないでしょう。止まった時が勝負でありんす。この孔雀扇をやみなべに浸して……」
 菖蒲は充分に浸した孔雀扇を取り出した。
 毒々しい色に染まり、振るう度に臭いがリングに拡散される。
「ぐふぅ……臭いがきつい」
「おで、はながいたい」
 漂う臭いが強くなり、リング上に居る二人の動きが乱れ始めた。
「そこでありんす!」
 動きを見極めた菖蒲が、リング上を舞い踊る。
「うおおおおおおおお!?」
 出現したサンタクロースの傷を狙い切り裂いた。
 毒が回るように傷口が紫色に染まって行く。
「これで決まったのかあああああ!?」
「いや、まだだ。奴はそれほど甘くない」
 盛り上がる実況の通り。
「この程度……なんッともないわあああああ! ……ぐはぁ、ぜはぁ……」
「おっとぉ、サンタクロースは傷を負いながらも尚も立ち続けているううう!」
「なるほど、あれ程の筋肉量だ、大型動物を仕留めるのには人の量では全く足りない。それと同じことだろう」
「とにかくすごおおおおおおい!」
 実況の二人が状況を伝えている。
「おで、たおす」
 だすくは弱ったサンタクロースに拳を振るう。
 今までの経験を活かした強烈な一撃だったが。
「んぐおおおおおおおおお!」
 両の掌で受け止められてしまった。
 二人はガッチリ硬直し、菖蒲のチャンスが来た。
「怪我しながら仕事するのは駄目でありんす。しかも戦うなんて、怪我が悪化してしまうでありんすよ! だから、寝てるでありんす!」
 扇での攻撃が毒を加速させる。
「……ぐううううぅ、流石だ。ワシをここまで追い詰めるとは流石と言えるだろう」
 全身が紫になり、ついに片膝をついた。
「今なら行けるな。宣言した通り行かせてもらうぞ! お前に夢と希望をプレゼントしてやろう!」
 貴人は解説席から飛び出し、大きな袋を持ってサンタクロースに襲い掛かった。
 それは相当重いのだが。
「ぐふううう、サンタクロースが夢と希望に潰されるかあああ!」
「うおお!?」
 両足を踏み直し、サンタクロースは耐えきった。
「ぐふぅ、真のサンタの力、見るが良い! 降り注ぐプレゼントにしてやろう! ぐおおおおおおお!」
 代わりにとばかりに、リングに擦るように力の限り拳を天に突き上げた。
 激しい暴風が吹き荒れ、強力な竜巻へと昇華して行く。
「あ、ありんすうううう!」
「おで、とんだ」
「これがッ、本物のサンタか……参った……」
 リングに居る菖蒲とだすく、貴人だけではなく。
「これはサンタクロース武術究極の、プレゼントフォーユー、ってこっちにも来る!? きぃやあああああああああ!」
 解説していたマーニーまでも飛ばされた。
 天に四つの星が輝き、四人へと降り注ぐ。
 ドゥウウウウン!
 四人はプレゼントの箱に包まれ地面へと激突し。
「ぐふぅ……充分過ぎる……訓練だった……わい……ガハッ!」
 サンタクロースもリングに倒れてトレーニングが終了した。

2.
 四人が目を覚ました時、寒くないように毛布でグルグル巻きにされていた。
「ぐふぅ、全員目を覚ましたようだな。お前達のおかげで肉体も強化された。喜びに打ち震えておるわ! グワハハハハハハハ!」
 サンタクロースの肉体は元あった傷も残されていない。
「……おい、何故傷が塞がっているんだ、まだそれほど経っていないはずだろう?」
 貴人はサンタクロースの変化に気がついていた。
「ぐふぅ、サンタクロースたる者、充分なトレーニングをすれば傷ぐらい完治するのだ。見よこの照りを!」
 盛り上がる筋肉がテカテカ光っている。
「それはおかしいでありんす。サンタとは一体なんなんでありんすか?」
 菖蒲はサンタクロースという物に疑問を抱いた。
「おで、まけない!」
 だすくは筋肉を誇示してサンタクロースと張り合っている。
「何も不思議じゃないわ。サンタクロース武術の宿命がそうさせるのよ。至極当然のことなのよ!」
「その通りだ、グワハハハハハハハ!」
 マーニーの言葉にサンタクロースは頷き笑った。
 四人は食事をご馳走されて食べ終わると。
「……ふぅ、そういえば極意を知りたいのだったな。ここまで頑張った礼に教えてやろう。この鍛えた肉体は一秒たりとも無駄にせずプレゼントを運ぶために。足捌きは子供達を起こさぬために。もし泥棒が居たら撃退し、幸せな日を与えるために。その全ては、世界の子供に夢と希望、未来をを与えるための物よ! つまり、筋肉を鍛えれば良いということだ! グワハハハハハハハ!」
 サンタの言葉に四人は納得した。
「……筋肉……やはり筋肉か」
「筋肉は素晴らしいでありんすな」
「きんにく、さいこおお!」
「ありがとうございますサンタクロース筋肉さん、今度まただすくと戦ってくださいね」
 筋肉の凄さに驚いていた。
「何時でも歓迎しよう! 今この瞬間でもなぁ、グワハハハハハハハ!」
 こうして四人は帰って行くが、一週間筋肉が頭から離れなかったという。



課題評価
課題経験:65
課題報酬:2000
サンタクロースバウト
執筆:秀典 GM


《サンタクロースバウト》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《新入生》 鳥珠・菖蒲 (No 1) 2019-12-17 20:27:31
芸能・芸術コースの、烏珠 菖蒲(ぬばたまのあやめ)でありんす♪
どうやらおじいちゃんが怪我しちゃったみたいでありんすね〜。

栄養満点のお鍋を傷口に刷り込んだら良くなるような気がしてきたから実行しに行くでありんすー!

あ、勿論お口にも入れるでありんすよ?
病人でありんすからね!
食べさせてあげに行くでありんすよー!

【PL訳】
おじいちゃんの傷口にやみなべすり込んでくる。
拒否しようとも100%の善意で口にも突っ込むぞ。
病人は黙って寝ていろ。

という事を実践してきますね?

《サンタ見習い》 だすく・じむ (No 2) 2019-12-18 08:26:27
まおう、だすく・じむ、だ。

おなべ、うまそう。おでにも、くれ。

さんた、つよそう。おで、たおす!

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 3) 2019-12-18 08:31:16
賢者・導師コースの、マーニー・ジムよ。
よろしくね!

菖蒲さん、全校集会のときはありがとう!
今回も、やみなべでボランティア精神を発揮するのね。

実は、お願いなのだけど、やみなべを、うちの子にも分けていただけたら助かるわ。
出発日になって急な相談で申し訳ないけれど、良かったら考えてみてもらえると助かるわ。

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 4) 2019-12-18 18:42:34
私たちのやりたいことは、だすくに、サンタ氏の練習相手を勤めさせながら、彼の技を吸収させて、最後には勝負を挑むことなの。

だすくは燃費が悪くて、すぐお腹すいちゃうのが弱点なんだけど、トレーニング後に、もし、そのやみなべを分けていただいて、エネルギーを補給出切れば、意外といい勝負になるんじゃないかと思うの。

もちろん、前回同様の菖蒲さんの「そおい!」は私も楽しみだから、一番適切なタイミングでかましてくれたら、サンタ氏に一泡吹かせられると思うわ、ふふふふふ
(↑どうやら黒マーニーが顕現した模様)

私は、だすくのセコンドにつくと同時に、試合の解説者を勤めるわ。
【事前調査】でサンタ氏についてもばっちり予習して、出来るだけ説明するつもりよ。

※PL発言
「さんたたたたたた、おわっ、たあっ!」
「まぁたたたたたた、まあっ、たあっ!」
こういうハチャメチャコメディバトルをウイッシュ案件として展開し、採用不採用はGM様にお任せするつもりです。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 5) 2019-12-18 21:13:49
ギリギリだが、参加させてもらう
解説・・ということは実況もいるよな?
実況、やるか

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 6) 2019-12-18 21:55:07
貴人さん、ありがとう!
孫がお世話になってる秘密情報部の一員でもあるし、
安心して実況をお願いできるわ!

《サンタ見習い》 だすく・じむ (No 7) 2019-12-18 23:40:31
おで、やりきった…っ!
(訳 渾身のプランを完成させました(笑))

あやめ、やみなべ、たのしみ。おで、くえなくても、「そおい!」で、さんた、たおす。

たかと、じっきょう、たのしみ。ままと、いっしょに、しゃべる、ありがと。
(訳 実況と解説のことをよく分かってないなりに、彼なりにお礼をいいたい模様)

ぷらん、だしわすれ、ちゅうい。
みんな、いっしょに、さんかできて、うれしい。ありがと。