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ゆうしゃのふゆやすみ。



ストーリー Story

 ――時計の針を、少しだけ。巻き戻して。

 冬休み最後の夜、学生寮。室内温度を心地良くする魔法に包まれた自室にて、『きみ』は明日の準備にいそしんでいた。
 といっても、別に大掛かりなものではない。いつも通り、授業で必要な羽ペンやインク壺、羊皮紙の束に教科書類を鞄に詰め込み。
 着慣れたいつもの服――まだ寒い日は続いているから、ウィンターコートの毛玉取りも必要だろうか――の手入れをしていただけだ。
 けれど、たったそれだけのことなのに、どこか心が躍る気がするのは何故だろうか。
 明日から始まる新学期で、久しぶりに学友と、憧れの先輩と、話ができるから?
 それとも、何をしても良いという、『自由という難題』から解放されたから?
 どちらにしても、『きみ』は思ったのかもしれない。もう冬も終わりか、と。
 ふっと息をつき、窓の外へと視線を寄せれば、冬らしいクリアな空気の中、雪が降っている。
 真白な月明かりを浴びながら、ひらり、ふわりと舞い遊ぶ雪は、月の光を反射してはきらりと煌めいて、輝いて。
 そうして、ふと、『きみ』はユールのために飾り付けられた街並みに浮かぶ、ホワイトスノウを思い出した。
 冬休みを迎える頃に始まったユールという催しは、今年もまた一年無事に過ごせたことを祝い、そして新しく来るだろう一年に感謝するものだという。
 そのため年末では、レゼントの街の屋根や並木道に赤、白、黄色と、魔法による鮮やかな装飾が施されて。
 『サンタクロース』が(おとぎ話かと思っていたが、実際に存在するらしい)プレゼントをくれるかも、とはしゃぐ子どもの姿を見かけたりもした。
 そういえば、当たり前のように過ぎ去っていた『クリスマス』の起源が、『精霊から各種族が魔法を授かった事に感謝する日』だったことにも驚いた。
 何事にも、意味があるのだろうか。もしかしたら、自分がこの学園に来たことにだって。
 そうして新しい年を迎えた頃には、学園の広場からクリスマスツリーも撤去され、代わりに『カドマツ』という東方の飾り物が置かれたりもした。
 そういえば、芸能・芸術コースの生徒が行う特別授業として、紅組と白組に分かれて芸を競い合う『歌合戦』などもあったようだが。
 結果を聞いていなかった。今年はいったい、どちらが勝利したのだろう?
 精霊が宿るといわれている大木や、神秘的な湖などの神霊スポットへお参りに行く『初詣』という行事もあったが、友人たちも行ったのだろうか。
 それから、それから……――。
 冬の夜空を見上げながら思い浮かべるのは、きらきらと瞬く星の輝きにも似た、思い出たち。
 それは『きみ』がこの冬を過ごした証でもあり、雪の上に点々と残した足跡でもあるのだろう。
 ならばこの夜、『きみ』の胸の中には。
 どんな思い出が、灯ったのだろう――?


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 7日 出発日 2020-02-17

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2020-02-27

登場人物 8/8 Characters
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《ゆう×ドラ》シルク・ブラスリップ
 エリアル Lv17 / 村人・従者 Rank 1
「命令(オーダー)は受けない主義なの。作りたいものを、やりたいように作りたい……それが夢」 「最高の武具には最高の使い手がいるの。あなたはどうかしら?」 #####  武具職人志願のフェアリーの少女。  専門は衣服・装飾だが割と何でも小器用にこなすセンスの持ち主。  歴史ある職人の下で修業を積んできたが、閉鎖的な一門を嫌い魔法学園へとやってきた。 ◆性格・趣向  一言で言うと『天才肌の変態おねーさん』  男女問わず誘惑してからかうのが趣味のお色気担当。  筋肉&おっぱい星人だが精神の気高さも大事で、好みの理想は意外と高い。 ◆容姿補足  フェアリータイプのエリアル。身長およそ90cm。
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《ゆうがく2年生》蓮花寺・六道丸
 リバイバル Lv13 / 芸能・芸術 Rank 1
名前の読みは『れんげじ・りくどうまる』。 一人称は『拙僧』。ヒューマン時代は生まれ故郷である東の国で琵琶法師をしていた。今でもよく琵琶を背負っているが、今のところまだ戦闘には使っていない。 一人称が示す通り修行僧でもあったのだが、学園の教祖・聖職コースとは宗派が異なっていたため、芸能・芸術コースに属している。 本来は「六道丸」だけが名前であり、「蓮花寺」は育ててもらった寺の名前を苗字の代わりに名乗っている。 若い見た目に不釣り合いな古めかしい話し方をするのは、彼の親代わりでもある和尚の話し方が移ったため。基本的な呼び方は「其方」「〜どの」だが、家族同然に気心が知れた相手、あるいは敵は「お主」と呼んで、名前も呼び捨てにする。 長い黒髪を揺らめかせたミステリアスな出で立ちをしているがその性格は極めて温厚で純真。生前は盲目であったため、死んで初めて出会えた『色のある』世界が新鮮で仕方がない様子。 ベジタリアンであり自分から肉や魚は食べないが、あまり厳密でもなく、『出されたものは残さず食べる』ことの方が優先される。 好きなもの:音楽、良い香りの花、外で体を動かすこと、ちょっとした悪戯、霜柱を踏むこと、手触りのいい陶器、親切な人、物語、小さな生き物、etc... 嫌いなもの:大雨や雷の音

解説 Explan

・時刻/場所
 冬休み期間内でしたら、自由に設定が可能。
 PL情報として、冬休み期間では主に第四回全校集会やシチュエーションノベルが開催されていました。

・冬休みについて
①期間は約1か月半程。
 この期間内は出席義務のある通常授業のみ休講となり、課題の参加は生徒の自主性に委ねられる。
 授業の担当教諭ごとに宿題の有無は違うため、レポートに追われるひともいれば、読書感想文のみなひとも。
 生徒の希望が多い且つ教員の予定が合致すれば、特別授業(いわゆる『ウィンターセッション』)が開かれることもある。
 (特別授業に関するプランを頂いた場合、当エピソードでは原則的に【シトリ・イエライ】が担当します)

②寮や帰省について
 寮に滞在/里帰りは生徒の自由。
 例えば、1週間だけ実家に帰り、あとは学園内で過ごすなどの帰省の仕方も可能(逆も然り)。
 寮内で冬休みを過ごす場合、通常通りに門限などの学園規則が発生する。

・できないこと
 時間を超越したり、世界を越えたり等『この世界の常識で不可能とされること』については不可。
 世界設定的に不可能な内容についてはそのまま描写されませんので、ご理解ください。

・シトリについて
 シトリは季節を通じてオフィスアワーを設けているため、気軽に執務室を訪れることが可能です。
 授業等に関する質問や相談事意外にも、クリスマスパーティに必要な買い出しの荷物持ちなど。
 個人では難しいプランのお相手にでもご利用ください。
(シトリについての簡単な説明はGM頁をご参照ください)

・その他補足
 参考:同GMの過去リザルト「ゆうしゃのなつやすみ。」
 過去を振り返る形でなく、現在進行形/三人称視点による描写になります。
 一緒に参加されているご友人と共通の思い出を作られたい場合、その旨をどこかにご記載ください。
 ただし、描写されるのは『本エピソードに参加されているキャラクターのみ』となりますのでご注意ください。


作者コメント Comment
 エピソードの閲覧をありがとうございます、GMの白兎(シロ・ウサギ)と申します。
 本エピソードは、授業でも課題でもない、何気ない日常のお話です。

 夏休みと違い、冬休みといえば。クリスマスや年越し、年明けなど、様々な行事が目白押しですよね。
 そんな慌ただしい日々の中、冬休みが明けるまでの間、皆さまはどのような時間を過ごされたのでしょう?

 イベントごとなどなんのその、鍛錬や課題の日々に明け暮れていましたか?
 それとも大切な誰かとクリスマスパーティをしたり、精霊の宿る場所へ、初詣に出かけていたのでしょうか。
 『勇者の在り方』と同様に、お休みの過ごし方もひとそれぞれ。
 もしかしたらその間に、かけがえのない思い出を得たかたもいらっしゃるのかもしれません。

 こちらの文章としましては、プロローグや既出リザルトをご参考ください。
 それでは、皆様の『冬休みの思い出』を、心よりお待ちしております。


個人成績表 Report
シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
冬休みの思い出…白紙の手紙

名前は無かったが絶対、絶対父親からであろうプレゼントを受け取り
ぶつくさ言いながらも手紙を書こうとするも…書けない
白紙、とにかく白紙
思ったことを書けばいい?それが一番困るの!できたら!苦労してない!!
机に突っ伏し、言葉にならない呻き声を上げて

う゛ー…
でも本当に困る 思ったこと?ありすぎる
こんな紙じゃ収まらなくらいたくさんある
聞いて欲しいことも 聞きたいこともある
でも今更 聞いてくれるのかわからない
「あの時」は見てもくれなかった
…今更 聞いてくれるのかな

シルク・ブラスリップ 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
●夏休みの過ごし方
自主課題という名のライフワーク。
装備の改良、新たな素材をいじってました。

●行動
「何やら剣呑な空気…けど、それってチャンスってことよねぇ~」
秋口の『彷徨う黄昏に宵夢を』事件に始まり、『残照の番人』のような授業ではない【課題】が増えている事に何かが起きるのではと予感。

ただ受け取り方は割と前向き
『勇者が必要とされるなら、武具が日の目を見るチャンス!』
といった感じで、最近入手した防具(SALFスーツ)や武器(試作型高圧魔力収束砲)の解析に余念なし。

「後はこれを使ってくれる勇者様が見つかれば、ねぇ」

ひとまず自分用に仕上げつつも溜息一つ。

「どっかに転がって…るわけ、ないか」

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
実地での回復魔法及び医療行為の宿題ですか……そうだ
前にグリフォンで復興支援に向かった村(【優灯】きみと、大空へ。)に行ってみましょう

お母さんのことを思い出したあの子が、どうしてるかも気になりますし……もし、村で悪い病気なんかが流行っててもいけません
いつもの質素な服装で、旅の癒し手に扮し徒歩で村へ

道中で怪我してる人が居たら治療して、村のことや近辺の様子を尋ねてみます

村についたら、村の長にご挨拶し、しばらく村に滞在して負傷者や病人の手当てを
持ち込んだ簡易救急箱と祈祷で傷を癒し、病人の病状は羽根ペンで記録

薬が無ければ、応急処置、植物学、医学を活かし村人と一緒に薬草を集め利用
合間に食事の用意等お手伝い

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
…冬休みって名目なのに、休めてなくない?課題もあるし。
体休める時間は増え重ねんでしょー、って意味なのかもだけど。

ザコちゃんも同じくなんだけどさぁ。
年明けても暇いし、面白い課題ないと空気感ゆるゆるでー。
やりたいことやる気分でもないし、やらなきゃめんどいこともないし…
…あー、あったわ。読書感想文、って宿題のやつ。

本読まなきゃなんだし、大図書館行こ。
課題で行ったり、ちょっと本読んだりはしたけど、それだけ目的に来んのは初めて最初かも。違うっけ。

でもザコちゃん、本のことあんまし詳し博識じゃないからぁ。
大図書館の職員様とか委員様達に聞き尋ねよ。
分類0から12までのそれぞれで『1番忘れられない本』何?って。



エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
シトリ先生に会い、『残照の番人』で得られた情報のまとめや、今後予測される事態の対応などを話し合う

可能なら、井戸の下の通路やサーブル城を魔族やそれに操られた存在が利用した痕跡がないか、何か持ち出されていたりしていないかなどを調べる

夏以降アルチェの町周辺での事件の増加、リーバメントやその周辺での大規模な事件などには魔族が関係しているような気がしてならない
華鬼事件では人の心を操って傀儡にする存在が暗躍していた
それは魔族の技ではないだろうか?
魔族は自らは身を隠し、そうやって操る傀儡を使って事件を起こしているのではないか?
そして事件を起こし何を成し遂げようとしているのか?

同じ部のタスクさんの同行は歓迎

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
冬休みなぁ・・・
里帰りしようにもできるわけもなく結局居残り組になるんだよなぁ・・・
取り敢えずは冬休み中は依頼受けるのは少なめにして休んだり遊ぶことにしよう

受ける依頼は学園の中のものに限ってあんまり激しくないものを受けよう
・・・受けないと生活費がなぁ
最低限の生活は保障されているとはいえあんまり生活のランク落としたくないしな
特に食生活

遊ぶのは他の人とか誘って遊べたらいいんだが、どうなるだろうな?
まぁ、寝正月ってことにならない程度には活動していこう


他の人との絡み、アドリブ大歓迎だ

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
冬休みはほぼ図書館と秘密情報部を往復
寮には寝に帰る毎日

図書館に缶詰めになり
グラヌーゼ、アルチェ、トロメイアなど事件のあった場所
鬼面など魔道具
そして魔王の関連書籍を読み漁り
部室に通い詰めてエリカ部長さんと意見交換
睡眠と、いつも楽しみにしてる校内放送を聞く時間を削ってでも頑張る

そんな中
エリカ部長さんと一緒にシトリ先生に会いに行き
特別授業の提案をする
内容は「残照の番人」で分かったことについての追跡調査
意見交換や出来れば現地調査など
先生や仲間と一緒だからこそ出来る活動を希望

グラヌーゼに魔城が有る限り不安な日々は続くはず
せめて少しでも状況がわかり
住民の安心に貢献したい

万一戦闘なら仲間かばってから全力撤退

蓮花寺・六道丸 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
アドリブ絡み歓迎

入学してすぐ冬休みを迎えた拙僧は三つの問題に悩まされていた
一つ目は読み書きがまだ万全ではないこと
生前は和尚が根気強く教えてくれていたが、異邦の地の言語となると流石にのう…
教材の中には難しい専門用語が出てくることもあろうし、学期が始まる前に身につけておかねば…
二つ目は全校集会で何をするか
いきなり戦闘でないだけマシだが何をしたらよいかさっぱり分からぬ
三つ目は…これが一番問題なのだが、拙僧が学校で上手くやっていけるかどうか…
なにせ学校に通うのも、同じところにずっと留まるのも、(外見的には)同年代の若者と過ごすのも初めてのこと
無事に仲間ができるとよいが…。話し方、直した方がよいかな…?

リザルト Result

●不変
 冬が来た。【蓮花寺・六道丸】(れんげじ りくどうまる)にとっては、幾度目かにあたる、雪の季節。
 しかし彼は今、初めての状況にさらされていた。すなわち『学び舎への入学』であり、『異文化への順応』だ。
 彼は、生まれも育ちも、こことは違う場所であるものだから。
(やはり、拙僧の『異国語』は……いや、こちらではこれが『国語』となるのだろうが、完璧ではないようだ)
 思いながら、六道丸は右手と左手で、別々の書物を捲る。
 どちらも大図書館から借りたものではあるが、左はこちらの言語を東方でよく使われる言葉に変換する辞書で、右は物語小説だ。
 別に辞書なしの状態で、読めないわけじゃない。しかし、全ての内容を辞書なしに理解できるほど、習熟してはいなくて。
 その上、文字には『読み』以外にも『書く』がある。正直に言えば、六道丸にとってはこちらのほうが問題だった。
(そも、文字の形が違い過ぎるのだ。こちらの文字は、まるで一筆書きではないか)
 だが、ゆくゆくは筆記試験もあるだろうし、できれば授業が始まる前に完璧にしておきたい。
(……困ったのう。生前は和尚が根気強く教えてくれたゆえ、どうにかなったが。異邦の地の言語となると)
 教えを賜れる先生も、おらぬしのう。
 零れるように呟くと、視界に影が差す。
「呼びましたか?」
「おぉっ? シトリ先生……!」
 視線を向ければ、この学園のいち教師、【シトリ・イエライ】がいた。
「あ、いえ、シトリ先生を呼んだというわけではなく……その、独り言と言いまするか」
「そうですか? 何かお困りでしたら、私でよければ……」
 告げながら、シトリの視線が六道丸の手元に行く。『なるほど』。そんな言葉が聞こえて、六道丸は照れくさそうに頬を掻いた。
「お恥ずかしい。拙僧、まだこちらの言葉に不慣れゆえ、新学期が始まる前に自習をと」
「『せっそう』? あぁ、そうでしたね。六道丸さんは確か『仏様』に纏わる教えに属するかたでしたか」
 うんうん、と頷いてから、前の席――今は学園の広間に居るので、テーブル越しである――に座るシトリに、なるほど、と六道丸も思う。
(そうか、こちらでは『僧』という言葉も、珍しいものなのか)
 一人称だけでも、直した方がよいかのう。考えていると、シトリはポケットに手を突っ込んでから、折り畳まれた紙片を差し出した。
 思わず受け取った六道丸は、そこに綴られている文字に瞳を瞬かせる。
「『ウィンターセッション』……シトリ先生、こちらは?」
「冬限定で行われている、特別授業の一覧です。それで、ここ、私の担当の1つに……」
「ほう! 『国語入門:(読み書き)』とな!」
「はい。六道丸さんのように異国出身のかたや、文字の文化を持たないルネサンスの皆様からの要望で、開講することになりました」
 いかがです? 微笑みと共に尋ねられ、六道丸は頷く。
「是非、お願いしたく!」
 弾んだ声が、広間に響いた。



 そんなわけで、六道丸は特別授業に参加することになり。
「ふと、思ったのですが――」
 何度目かの授業の後、シトリに書き文字の添削をして貰っていた彼は、呟いた。
「拙僧以外にも。外から来たかたは、たくさんいらっしゃるのですなぁ」
 それだけではない。自分と同じリバイバルにも多く出会ったし、自分のような東方出身と思われる名前の生徒もたくさん見かけた。
 しかも、異国出身者が珍しくなくとも、外に興味のある人は少なくないようで。休憩時間には距離を置かれるどころか、囲まれたのである。
 『ゲイシャ?』『ハラキリ?』『六道丸ニンジャ?』など、なかなか偏ったことばかり聞かれたが、浮いてしまうよりは余程いい。
「安心しました?」
 穏やかな声で添削を続けるシトリに、六道丸は頷く。
「はい。本当は、少し不安だったのです。拙僧がこの学校で、上手くやっていけるかどうか」
 なにせ学校に通うのも、同じところにずっと留まるのも、(外見的には)同年代の若者と過ごすのも。初めてのことだったから。
「けれど、杞憂でありました。この学園の者は皆、優しいかたのようで」
「優しいというよりは、六道丸さんと同じなだけだと思いますよ」
「と、いうと?」
 不思議がる六道丸に、シトリが顔を向ける。
「知らないことには興味が湧く、美味しいものを食べると心が弾む。鮮やかな景色には立ち止まり、美しい音色には耳を傾けたくなる」
 同じでしょう? たずねるシトリに、六道丸はぱちりと瞳を瞬かせてから、
「あぁ、そうですなぁ……! 拙僧、新学期が始まるのが、楽しみでありまする!」

●時遊
(ザコちゃん思うんだけど。『冬休み』ってつけてんのに、全然休ませる気なくない?)
 だって課題も、宿題もあるじゃん。そんな物思いと共に、薄笑いを浮かべた【チョウザ・コナミ】が歩く。
 チョウザは今、『ワイズ・クレバー』の中にいた。ここならあらゆる知識が揃うと誉れ高い、フトゥールム・スクエアの大図書館だ。
 だが、今日は知識を求めて足を運んだわけではない。冬休みに出された宿題……『読書感想文』を片付けるためだ。
(まー年明けても暇いし。面白い課題ないと空気感ゆるゆるだから、いいんだけどねぇ)
 思いながら、手にしたリストと小冊子を見比べる。蔵書量の分だけ広く、大きいワイズ・クレバーは、ガイドが作られるくらいには、迷いやすいのだ。
 ゆえに、本来ならば学園で認定を受けた図書委員が、指定された本を探して持ってきてくれるシステムなのだが。
 チョウザは『面白そうだから』という理由で自ら探すことを決め、本棚の群れに単身で乗り込もうとして。
 それに気付いた図書委員が大慌てで止めようと試み、『ならばせめて、これだけでも!』と差し出したのが、この小冊子……ガイドブックなのである。
(てか、これだけで百科事典レベルじゃん。しかも『0』の総記だけで、こんな棚数あんの? おもしろ)
 そういや、課題で行ったり、ちょっと本読んだりはしたけど。読書目的に来んのは初めて最初かも。……違うっけ?
 思考を転がしつつ、棚と棚の間を歩き、進んでいく。
 『読むつもりリスト』にはご丁寧に『請求記号ラベル』(本の所在を表す、暗号みたいなものだ)まで書かれているものだから、探しやすい。
(さっすが、大図書館の職員様、委員様が『一番忘れられない本』。ラベルまで覚えちゃってるなんてねぇ)
 当の職員たちが聞いたら、『それはチョウザさんが探しやすいようにだよ!』と反論しそうなからかいを笑みにのせ、手を伸ばす。
 あった。最初の本は――。
(『郷土研究概論』。この辺の地理歴史、民俗研究みたいなもん?)
 表紙を眺め、職員から借りたブックトラックに乗せる。さあ次は、『1:哲学・宗教』の棚だ。
 チョウザは気紛れに、分類0から12までのそれぞれを職員たち一人ひとりに当て嵌めた上で、各々に『一番忘れられない本』を書いて貰っていた。
 ゆえにリストにあるのはあと11冊。このガイドブックと共に、星の数ほどある本の中から探し出す必要がある。
(ながーい道草になりそうだねぇ)
 図書館に来てから既に数時間。今だ一冊も読み始められず、読書感想文のスタート地点にも立ててはいないが、これはこれで悪くない。
(次は何だろねぇ。宗教って括りだし、『黄金のちくわ像』についてとかもあんのかな……お? あった)
 ――少しずつ重くなるブックトラックを押しながら。チョウザの思考遊びは続く。

 そうして、ピタリと。チョウザの足が止まる。
(この辺は、分類『9』……文学ぅ? 悪趣味思考染色剤とかの記入間違いミス?)
 思いつつ、並ぶ背表紙に視線を向ける。そのまま左から右へ流していけば、まぁどれもこれも……。
(これはあれ。親の教え守り続けた子が、富豪のお貴族様と結婚で何もかも最高っての。こっちのはあらすじだけ知ってる。高貴な女の子の家出だけど)
 どーせ最後は、不幸辛い系でしょ?
 緩慢な動作で手に取り、ぱらぱらと捲る。乾いた紙から香る古書特有の匂いが、やけに鼻についた。
(ほら、拷問と葬式で終わってんじゃん、知ってた。今も昔も、お貴族様の思考は変わんないねぇ)
 ため息を付いたチョウザは、本を棚へと戻す。それからリストにあった一冊を見つけると、ブックトラックに乗せ、それから。
 迷うことなく、次の棚へと向かった。



 すべての本を見つけ、寮に帰ってくる頃には、夜になっていた。
 机の上に積まれた十二冊の本を眺めたチョウザは、まず最初の一冊を『どれにしようかな』と選ぶ。
(ま、どれもこれも、ザコちゃんが知らないのばっかで良さみ。一通り読んだら、感想と選んだお人書いて並べとこ。十二冊分)
 それを提出すれば終わりだ。感想を言葉にするのは気に食わない気もするが、それはそれ。
(そも、個々の考え主義主張に点数つけようとすんのだって、ねぇ?)
 そんな思いと共に、表紙を開く。いつも通りのチョウザの笑みが、水煙草の瓶に映りこんだ。

●花冠
「書けない……っ!!」
 フトゥールム・スクエア内、食堂。
 新年を迎え、冬休みを満喫する生徒達で賑わうこの日、【シキア・エラルド】はテーブルに突っ伏していた。
 テーブルの上には、宛名の書かれた便箋。しかし、その下は清々しいまでに真っ白で、
「手紙って何? 何書けば良いの……?」
 思わず呟けば、思ったことを書けばええやん、なんて(若干の笑いを含んだ)声が聞こえたような気がして、頭を抱える。
(いや、それが一番困るんだって! それができたら、こんなに苦労しないんだって!)
 ――そう。シキアは今、人生最大(かもしれない)難題に直面していた。
 父親に手紙を書こう。そんな思いが芽生えたのは、クリスマスの夜のこと。
 差出人不明のプレゼントが届き、けれど同封されていた翡翠色のメッセージと、プレゼントから香るラベンダーの香りに、気付いてしまったのだ。
 これは、父からの贈り物であると。
(あの時は、『何をいまさら』って思ったけど)
 でも、そんなのはきっと、お互い様なのだ。手紙の一枚も送らず、今まで何の反応も示さなかったのは、自分も同じなのだから。
 だからこそ。
(書けない……)
 言いたいことは、沢山ある。聞きたいことも、聞いてほしいことも、こんな紙一枚では収まらないくらいに、あるはずだ。
 それなのに、胸の奥に押し込んでいた気持ちに言葉を当て嵌めた途端、また仕舞い込みたくなってしまう。
 だって、自分は。
(あの時、『関係のないこと』だって、言い切ったんだから)
 去年の春。個人面談にやってきた学園長が、両親はどうしてるのかと尋ねてきた時。
 自分は言ったのだ、知らないと。今の自分には、『関係のないことだから』と。
(あんなに憧れていた、二人なのに)
 逃げ出して、自分自身を得ることに躍起になって、切り離そうとした。
 なんて薄情で、身勝手で、……あぁ、やっぱり、同じ。
(そんな俺が、今更手紙なんて……)
「う゛~っ」
 難儀やなぁ。そんな声がまた脳内に響いたものの、もやもやとした思いはやはり言葉に固まらず、唸ることしかできない。
(でも、父さんだって、『あの時』は見てもくれなかったじゃないか)
 あぁ、だけど。俺だって。
 ぐるぐると。回る思考は、最初と最後を行ったり来たり。
 そんなシキアの視界にふと、影が差した。思わず顔をあげると、金髪の女性と目が合う。
「相席しても、よろしくて?」
「あ、はい、どうぞ」
 ありがとうございますわ。そう告げて前の席に座った女性は、透けるような白の翼を持っていた。
 アークライトだ、と思うと同時に、その顔に見覚えがあることに気付く。
(もしかして、グリフォンに乗る課題で、一緒だった……)
「あら、この香り……ラベンダーですの?」
 記憶を掘り起こしたところで、声がかかった。青い瞳を柔く緩める【ラスク・シュトラール】が、尋ねる。
「あ、うん……そうなんだ。その、貰い物で」
 言い淀みながらも答えれば、ちゃんと使ってるんやなぁ、なんて声がまた聞こえたような気がする。
 反射的に、『プレゼントに罪はないし……父さんはセンスが良いから、使ってるだけだし……』と呟いていれば、ラスクはくすりと笑い、
「わたくしも大好きですの、ラベンダー。香りもですが、花言葉がとても素敵で」
「花言葉?」
「ご存じありません? ――『あなたを待っています』」
 好きな男の子に想いを告げられず、振り向いてくれるのを待っていたら、花になってしまった女の子のお話が由来なんですのよ。
 微笑まれ、『そうなんだ』と返しつつも、少しだけ寂しく感じてしまう。
(それって、結局。何も伝えられなかったって、ことじゃないか)
 どうなのだろう? それで女の子は、幸せだったのだろうか。
 考えていれば、ラスクが言葉が繋げる。
「お父様のこと、お嫌いなのです?」
(ズバッと来るひとだなぁ……!)
 はは、と苦笑いが漏れたが、何て返すべきか、とも思う。
 どうなのだろう。自分は、父のことを。
(……会いたいって。気持ちがないわけじゃ、……ないかな)
 思いが形になる頃には、もうラスクの姿はなかった。どうやら足休めに寄っただけらしい。
 けれど何となく、彼女との会話が心に残っていたシキアは、寮に帰って一冊の本を手に取る。
 本の表題は『花言葉辞典』、開いた頁は『ガーベラ』。
 ――『前進』『希望』という文字が、綴られていた。

●燦然
 『着る』とは、何だろう。傷付きやすい肌を、外敵から守る手段だろうか。
 いや、敢えて露出を抑えないことで、身に着けた者の美しさを際立たせる衣装もある。
(ええ。だから自分を守るためだけに、『着る』わけじゃない。自分自身を輝かせるための、コスチュームでもある)
 なら、制服は? あれは皆と同じデザインを身に纏うのだから、一人ひとりが持つ個性を潰してしまいがちだが。
(けれど、そうして生まれる一体感が大事な局面もあるわ。誰かと同じという安心感は、心を安定させるもの)
 そして精神の安定は、たとえば魔法ならその効果を安定させ、体術ならば、無駄な動きを削ぎ落とす結果を招く。
 つまり『着る』とは。装着者のポテンシャルを最大限に引き出す、ワイルドカードであり……。
(そのための服や装備は。いつだって『最高』であり、尚且つ『着る者に寄り添ったもの』でなければならない)
 思いつつ、【シルク・ブラスリップ】は手を動かした。ミシンや縫い針を駆使し、手に入れたばかりの『SALFスーツ』に加工を施していく。
 シルクはフェアリータイプのエリアルで、その背には透き通った玉虫色の羽根が生えている。
 だから、羽を通すための穴がない、ヒューマン用に仕立てられた服をそのまま身に着けることはできず。
 それでも『着てみたい』と思ったものに関しては、こうやって自分で切り込みを入れ、処理をしているのだが。
(いつもより布のダメージが少ないし、これなら簡単に終わりそうね。異世界の勇者御用達っていうし、何か特別な材料で作られているのかしら?)
 ならば、なおさら身に着け、その質感を自分の肌で確かめ、『モノ』にしたい。
 夜明けの空のような紫青の瞳を輝かせながら、シルクは作業を進めていく。
 一月半にも及ぶ、長い長い冬休み。シルクはその時間を、自主課題という名のライフワーク……自分自身のアップデートに費やしていた。
 文字に表すと難しく感じられるかもしれないが、要は初めて目にした装備や武器を思いつく限りに弄り、構い、知識として吸収していたのだ。
 人によっては『それ、全く休んでないのでは?』と思うのだろうが、彼女にとってこのライフワークは研鑽であり、生き甲斐であり、趣味でもある。
 ゆえに、出席義務のない冬休みは、思う存分好きなことに没頭できる時間であり。
「ふふ……良い、良いわ。伸縮性も通気性も抜群! しかもこの美しいシルエット、完璧……! ボディラインが出易いようになっているのね!」
 こんなふうに、身に着けた服(今は加工し終わったばかりの『SALFスーツ』を着ている)への熱い思いを、鏡の前で好きなだけ言葉にし。
 そうして降ってきたインスピレーションを忘れないうちにデザインへ起こし、あまつさえ形にすることだってできる、至福の期間なのである。
 ステキ! 冬休み最高! たーのしー!
(それに、記憶を奪う事件とか、『ブリードスミス』とか。不穏な事態も相次いでるし、気が抜けないのよね)
 平和を脅かす事態が連続している。つまり、『勇者』の必要性が高まっているということだ。
 であるならば、きっと武具の需要も増えていくのだろう。もしかしたら、自分が関わる機会もあるのかもしれない。
(その時のためにも。毎日『新しい私』でいないとね)
 職人の世界には果てがない。技術は日々進歩し、刷新されて行く。
 ならば、自分も停滞していては駄目なのだ。置いていかれるわけにはいかない。
(今は服飾専門だけど、志望は武具職人だもの。それも『最高』で、『着る人に寄り添った武具』を、私は作りたい)
 手にした瞬間から、まるで昔から使っていたくらい手に馴染むような、その人のためだけの武具を。
(ま、作りたいと思っても。オーダーすらなければ、自分から作りたいと思える『勇者』にも、まだ出会えてないんだけど)
 はぁ、とため息をつき、寝台の上に転がる。
 もういっそ、自分が『勇者』になってそのための武具を? なんて思いが浮かぶものの、すぐに却下する。
(ダメダメ。私みたいなサイズじゃ、せいぜい囮役が良い所だわ)
 ――だからこそ、シルクは夢を見る。どうか、いつか。
(私の誂えた武器を、装備を身に着けた勇者様が。私の作った『ワイルドカード』と共に)
 『平和』『希望』……『憧憬』。
 そんな願いを、叶えてくれますように。

●黎明
「歩き通しだが、疲れてはいないだろうか」
「これくらいなら大丈夫です。慣れておりますので」
 微笑みと共に、【ベイキ・ミューズフェス】が答える。
 それに対し、【サフィール・エルネスト】は『そうか』とだけ返した。
 サフィールは、ベイキと同じコースに所属している生徒であり、グリフォンと共に復興支援に回る課題でも一緒だった、いわゆる顔見知りだ。
 そんな二人が共に歩いている理由は、少し前。
 教祖・聖職コースに関するお知らせが張り出される掲示板の前で、『実地での回復魔法及び医療行為』という宿題の詳細を確認していた折。
 そこにサフィールがやってきたかと思えば、『おや、女王様だ』なんていう呟きを耳が拾い。
 『違います!』と否定して、『あ、すまない』と謝られて、それから少しの会話を交わした後――。
(あの村に、一緒に行くことになったんですよね)
 自分は数日、復興支援で向かった所に行く予定だ。そう口にした時、サフィールが護衛を申し出たのは、きっと謝罪のつもりだったのだろう。
 だから、その厚意を有難く受け取り、一人旅が二人旅となった。
(今回はグリフォンを使わずに、旅の癒し手に扮して徒歩で向かうつもりでしたので)
 荷物を分散して持ってくれたり、馬を引いてくれるのが、有難いですね。
 思っていると、木陰で座り込んでいる老婆を目にし、歩くスピードを速める。
「あの、どこかお怪我を?」
「実は転んだ拍子に、足を挫いてしまってねぇ」
「でしたら、湿布薬を……あ、それではかぶれてしまう可能性もありますか」
「だったら祈祷をするのはどうだ? 今の僕達では完全に治すことはできないかもしれないが」
「体力の回復と、痛みを和らげることは出来るかも。精霊の力を借りてみましょう」
 頷き合い、膝を折り。両の指を交差するような形で手を合わせ、瞳を閉じる。
 しばらくして、『わぁ』という声が聞こえた。目を開けると、老婆を包んでいた淡い水色の光が、ふっと消える。
「だいぶ楽になったよ。ありがとうねぇ、二人とも……それでもまだ、村には帰れそうにないけれど」
 休んでいれば大丈夫だから。そう微笑む老婆に、ベイキは暫し思案してから。
「あの、私達。この道の先にある村に行くのですが、そちらで休まれるのはいかがでしょう?」
 この場所では、魔物が出る可能性もありますし。馬の積み荷を私たちが持てば、乗って運ぶこともできますから。
 そう告げるベイキに、老婆は『おや』と笑う。
「それじゃあ、お願いしてもいいかい? その村が、私の帰るところなんだよ」



 村に着くと、老婆を家に送り届ける役にサフィールが手を上げた。だからベイキは彼女を彼に任せ、村の中を歩く。
 まずは村長にご挨拶をし、村の近況を聞き。
 それから冬の寒さに体を壊した人がいれば看病し、無くなりそうだと耳にした薬を調合し、必要とあらば薬草だって取りに行った。
 『まるで聖女様だ』と拝まれたのは計算外だったが、概ね計画通りに動き、支援し、予定の日数を過ごした、最後の日。
「聖女様! たくさんたくさん、有難うございます!」
(あっ……)
 二人が村を出ると聞き、集まってくれた村人たちの中に、彼女はいた。
 あの日、自分の腕の中で子守歌を聞き、大切な母の思い出を取り戻した少女。
 彼女はその指で作ってくれたのだろう、小さな花輪をベイキに差し出しながら、
「わたし、お姉さんみたいに強くて、かっこよくて、優しいひとになりたいの! 大きくなったら、絶対フトゥールム・スクエアに通うんだ!」
「……強くてかっこよかったことなんて、ありましたっけ?」
「ふふふ……!」
 楽しげに笑う少女に、ベイキも笑う。ああそうか、やっぱり、あなたが――。
(私がこの前、夢に見た。いつか『勇者様の助けになるかた』なの?)
 どうだろう、わからない。
 けれど、ベイキはほのかに感じる胸の熱さを、信じてみたいと思った。
 元より、この村に来ることを選んだのだって、夢で見た『希望の芽』の有無を確認したかったからなのだ。
 現実や運命はいつも残酷で。悪魔の甘言に惑わされたくなるような絶望の味も、自分は知っている。
(けれど私は。闇に呑まれて、『願うこと』をやめたくない。希望を、見失いたくない)
 思いつつ、ベイキは花輪を受け取る。
 白と黄色の花で編まれたそれは、ベイキの頭に鮮やかな色を載せた。

●起点
 ぱちんと。まるで泡が弾けたみたいに、意識が戻った。
(ここは……?)
 机の上に伏せっていた体を起こし、顔を上げる。そうしてようやく【タスク・ジム】は、自分が大図書館『ワイズ・クレバー』にいると理解した。
(……調べ物をしている間に、寝落ちてたのか)
 伸びをするように両手をあげ、息を吸えば、古びた本特有の匂いが肺を満たす。
 与えられた冬休みを、どう過ごすか。タスクはその問いに考えるまでもなく、『事前調査』を選んだ。
 何に対しての事前か。それは漠然とした、けれどこの世界で確実に起きているだろう『何か』に対する、だ。
(夏にはアルチェで『海喰い』が、秋にはジャック達が起こした『記憶を奪われる』事件、そしてこの前の『カリドゥ・グラキエス』……)
 いや、その前だって、気になることはあった。あれはもっと昔、約一年前――。
『ケガラワシイユウシャノタマゴタチ……カナラズヤ、マオウサマノフッカツヲ……!』
(鬼面の奥から聞こえたあの声を、僕はまだ、覚えている)
 忘れられるはずもない。あれはきっと、この世界に起きている何らかの脅威の一端なのだ。
 ならば、勇者の卵として。大切なひとや、この世界を守るために。
(どんな手がかりだって見逃さずに、拾いあげてみせる!)
「とは、思ったものの……」
 言葉にするだけなら簡単だが、それを実感として得るのは、やはり難しい。
 グラヌーゼ、アルチェ、トロメイアなどの事件があった場所に関する伝承や、魔道具について、そして『魔王事変』に関する資料の数々。
 今、自分の周りには思いつく限りに棚から引っ張り出したものが山になっていたが、その中から『これ』だと思える情報はない。
(一度、秘密情報部に戻ろうかな……)
 煮詰まった時は、所属しているクラブの部室に顔を出し、部長である【エリカ・エルオンタリエ】と意見を交わす。
 これもまた、冬休みが始まってからのタスクの日課だった。
 ゆえに、椅子から立ち上がり、資料を棚に戻す。
 『あまり根を詰めると、逆に効率が落ちますよ』なんて言葉を司書さんから貰い、苦笑して、図書館を出る。

 同時刻。エリカは身支度を整えると、寮の自室を出た。
 行先は、シトリ・イエライの執務室だ。
(グラヌーゼの近くにあった井戸の底、あの転移魔法陣の行き先は、サーブル城の目の前だった)
 ということは、あの坑道にはサーブル城とグラヌーゼの村を繋ぐ役割があったのだろうか。
(だったら、誰が。何のために……?)
「あっ、エリカ部長」
 歩きながら考えていると、声を掛けられる。タスクだった。
「ちょうど良い所に。今、部長さんに会いに、部室に戻ろうかと……部長さんは?」
「私はシトリ先生のところに。この前の井戸について、お話を聞きたいなって」
 タスクさんもどう? 尋ねる声に、青年は力強く頷いた。
「ぜひ、ご一緒させてください……!」
 何らかの脅威を感じていても、何を調べてもわからず、どうすれば良いのか見当もつかない。
 まるで暗闇の中を歩いているような気持ちであったタスクの胸に、ふわりと明かりが灯る。
(そうだ、たとえ何もわからなかったとしても)
 ――僕には、一緒に同じ方向を見つめてくれる、……『仲間』が、いるんだ。



「ん~……あの井戸について、ですか」
「はい。何か、わかりましたか?」
 突然やってきた自分たちに嫌な顔もせず、紅茶を振る舞ってくれたシトリに礼を告げてから、エリカは本題に入る。
 しかしシトリは『そうですね……』と告げてから、ソファの向かい側に座ったまま、黙りこんでしまった。まるで言葉を選んでいるみたいに。
(今の私達では、うかつには話せない。ということなのかしら)
 自分たちは、まだ勇者の卵と言っていい。学園で学びの席を得てから約一年、それでも、やれることには限度がある。
 ゆえに安全性を考えるなら、『魔王』が絡む内容はまだ早いと、教員側が口を噤むのもわかる気がするのだ。
(でも……)
「できることをしたいんです。私は、最近起きている事件は何かの前触れで、もしかしたら魔族が魔王復活を試みようとしているんじゃと、思っていて」
「それは、どうして?」
「去年の終わり頃、夢を見たんです。たぶん、あれは知らない誰かの過去で。でもみんな、魔族に心の隙や弱みを利用されて、呪いをかけられて……」
 思い出すだけで、心臓をぎゅっと掴まれるような心地になる。
 それでも伝えようと、たどたどしく言葉を繋げれば、シトリは『理由はわかりました、もう大丈夫ですよ』と微笑んだ。
「確かに、魔族……とは、まだ言い切れませんが、魔王側の勢力が動き始めている気配はあります」
 ですが、それ故に。
「学園長も、私達も、慎重にならざるを得ないのです。相手側に悟られずに、尻尾を掴む必要がありますので」
 だが、そうだとしても。
「その時が来れば。リーバメントの時のように、皆さんの助けを必要とする機会が必ず訪れます。だから、そんなに不安がらずとも大丈夫ですよ」
 にこりと微笑まれて、でも、という言葉を呑み込む。
 そんなエリカの様子に気付いたのだろう。シトリは笑みを崩さぬままに、
「ちなみにあの井戸についてですが。誰かが誤って落ちたりしないよう、私が魔法で封をしておりますので。強引に破られた場合はすぐにわかります」
「なら、あの魔法陣を使った『誰か』が、またあの道を使おうとした時には……」
「いち早く把握できますし、また向かうことになるでしょう。その時には宜しくお願い致しますね」
 ほっと息を吐く。それは隣のタスクも同じだった。
 シトリの言葉は続く。
「ですが、せっかく来て頂いたのです。少しばかり歴史の授業でも開きましょうか。例えば……」
 ――魔王と勇者と、八つの宝玉。そしてそれを守る、守護者についてなどは、いかがでしょう?



 シトリの話は、至極簡単なものだった。誰もが知っている、この世界の歴史の話。
 かつて、平和だった世界に突如現れた『魔王』という存在。
 そしてその魔王を封じるために力を合わせた、後に『勇者』と呼ばれる九人のヒューマンと。
『その九人に力を貸した各種族の有力者、すなわち七選の代表者がおりまして。彼等は魔王を宝玉に封じる際にも、力を貸したと言われています』
 それが八宝玉であり。もし魔族が魔王の復活を目論んでいるのなら、喉から手が出るほど欲しいと思うでしょう――。
 今しがた聞いた内容を思い出しながら、エリカは膝を落とす。ふわり。柔らかな風が金糸の髪を揺らした。
 授業を受け終わった二人は、グラヌーゼの西部にある『いのちの花畑』に来ていた。
 シトリが言うに、グラヌーゼでは毎年この季節になると『慰霊祭』を開催しているらしく。
 いのちの花畑の中央に置かれている、鎮魂碑『セルラ・ビエラ』にグラヌーゼ麦のパンと花畑の花を供え、黙祷を捧げているのだという。
 その話を聞いて、行きましょう、と言い出したのは、二人同時で。
(急いで遠出用のグリフォンを借り、やってきましたが……祭り、と言えるような雰囲気ではありませんね)
 もちろん、慰霊という名がついているのだから、タスクも賑やかなものを想像してはいなかった。
 しかし、予想以上に人がいないのだ。村の集会と言えるほどですらない、なにせ、自分たち以外に人の気配はなく。
(お供えのパンも。僕とエリカ部長が持ってきた、二つだけ)
 仕方がない。グラヌーゼはまだ復興途中で、自分たちの生活すら危うい人が多いのだろう。
 もちろん、かつて呼ばれていた『黄金郷』の由来であり、今もなお根強い人気を誇るグラヌーゼ麦は、この村の貴重な財源にはなっている。
 商品価値だって昔から落ちてはいないし、売れば売るほど利益になることは、間違いないだろう。
 だが、しかし。
(需要がどれだけあっても。きっと今のグラヌーゼには、それに応えられるだけの人手がないんだ)
 そして人手がなければ、多くの麦を育て、収穫することは疎か、新たな麦畑を開拓することだってできない。
(……なら、僕は。出来ることから、少しずつ)
 積み重ねていきたいと。思いつつ、立ち上がる。
 もしかしたら、とてもゆっくりな歩みになるのかもしれない。それでも。
「エリカ部長。まずは僕たちにできることを、していきましょう」
 同じく、黙祷をし終わったエリカが立ち上がったのを確かめてから、声をかける。
 すると、エリカは考える素振りを見せてから、ちらりと村のほうへ視線を向け、それから。
「そうね。未来への不安はもちろんあるけれど。今目の前にある問題だって、放ってはおけないもの」
 帰ったら、新しい復興案を考えましょ? そう微笑む少女に、タスクは『はい!』と、答えた。

●帰路
(冬休み、なぁ)
 ぼんやりと。空を見上げながら、【仁和・貴人】(にわ たかと)はフトゥールム・スクエアの中庭(芝生ゾーン)に寝転がっていた。
 『冬休みは何したってオールオッケーフリーダム! 里帰りも自分探しの旅も許可するぞ☆』なんて有難いお言葉が広場に貼ってあったとしても。
(結局居残り組になるんだよなぁ、俺は。里帰りって言ったって、元の世界に帰れるわけもないし……)
 思いつつ、右へ左へ、ごろごろごろ。イテッ、仮面イテッ。
(いや、何してんのよ、俺。どうせ考えたって、わからんもんはわからんだろ)
「辛気気臭いのは辞めだ、辞め……ぅぐっ!!」
 立ち上がろうとして、言葉が途切れる。突然腹部に重みが加わったかと思えば、軽くなったり重くなったりがリズミカルに繰り返され始めた。
 ぼーん、ぼよよーん。ドムッ、ドムドムドムッ。
「おま、明らかに跳ねてたのが蹴りになってるじゃないかっ! おい、【マオ・マオ】っ!!」
 人の腹の上で、激しく上下に動き出したミニパンダ(だと思われる生物)を思いきり掴む。
 つぶらな瞳と目が合った。
「なんだお前……うるうるとした目で見たって、離さないぞ」
 とは言うものの、この理解の範疇を超えた謎生物のおかげで、さっきまでの湿っぽい空気が吹き飛んだのは確かだ。
(まさかコイツ、俺のことを元気づけようと……おぶっ!)
 ドスッ。考えている間に、頭突きが来た。諸に仮面(=顔面)への突撃を受け、そのまま後ろに倒れる。
(あ、なんかもー、どうでもいいわ。このまま昼寝しよ)
 だって冬休みだもん。いいじゃん、それでさ。



 とはいえ、ごろごろしてばかりでは、金は増えない。
 この世界の住人ではない自分には、例えば親のような、金銭的に援助してくれる人がいないのだ。
 ゆえに、食費に雑費、遊興費も含めた生活費を(主に課題報酬で)稼ぐのは、大事なことなのである。
(最低限の生活は保障されているとはいえ、あんまり生活のランクを落としたくないしなぁ……特に食生活)
 元居た所とはまるで違うこの世界でも、『美味い』『マズイ』はもちろんある。
 最近では『顆粒だし』なんて存在も確認できたし、食べ慣れた味を変わりなく楽しめるのは、ちょっとしたストレス緩和にもなるのだ。
(うん、働くかぁ。でも受ける依頼は近くのものに絞って、あんまり激しくないものにしよう)
 だって冬休みだし。思いながら、なんとなく目についた課題の案内を一枚手にする。
 それから受付を済ませると、貴人は指定された場所に向かった。



 そうしてやってきた貴人を迎えたのは、先日食堂にて噂話で盛り上がっていた、【東雲・陽】(しののめ よう)というルネサンスだった
「えっ、ウッソ貴人君じゃーん。マジ? 俺の相手、貴人君?」
 まるで遊び相手を見つけた猫のように、金の瞳を爛々と輝かせた青年は、貴人と同じ課題の案内を持っている。
 内容は『とある孤児院で、子ども達のために。勇者をモチーフとした冒険活劇をやってほしい』というものだが、まさか件の彼と一緒になるとは。
「……やるか? 『古の勇者ごっこ』」
「マ? えっイイの? やってくれんの?」
 フッフー↑! テンションアゲぽよになった陽を、子ども達が囲む。『陽兄ちゃん頑張れ!』。飛び交う言葉に、貴人は首を傾げた。
「あ~……実は俺、この孤児院出身で。だから、コイツらは弟みたいなモンで」
 頬を掻きながら、陽が笑う。
「だからまァ。ここが俺の『ただいま』って言える場所っつーか。帰省先、みたいな?」
「そうなのか。なら盛大にカッコよくやらないとな」
「えっ、そういうこと言っちゃう? やっぱ貴人君良い奴じゃ~ん!!」
 ちょっと待って、必殺技考えて良い? なんて言い出した陽に、貴人は頷く。
(……そうか。『ただいま』と言える場所は、別に生まれた場所じゃなくても、良いんだな)



 それから、それから――。
 貴人は幾つかの課題を終わらせて、学園へと戻ってきた。
 そんな彼の姿を見つけた【コルネ・ワルフルド】は、ふさふさの尻尾を揺らしつつ、
「おかえりー貴人君! 課題どうだった?」
「いつも通りです。騒がしくて、予想外で、楽しかったですよ」
「そっかそっか。それはよかった!」
 貴人の返答に満足そうに腕を組んだコルネは、続くもう一つの言葉に笑みを深めた。
「それと、……『ただいま』です。先生」



課題評価
課題経験:20
課題報酬:720
ゆうしゃのふゆやすみ。
執筆:白兎 GM


《ゆうしゃのふゆやすみ。》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2020-02-10 00:22:24
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。
シトリ先生に会いに行ってみようと思ってるわ。
よろしくね、

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 2) 2020-02-10 03:31:06
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。
よろしくお願いいたします!

今回は、特別授業の申請を検討しています。
どんなお困り事を解決出来るかな?

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 3) 2020-02-10 15:24:17
つっくづくさぁ、課題がある時点で休みっていえないよね、ここの冬休み。
普段よか体休める時間あるでしょー、って意味合いなのかもだけど。

ザコちゃんあれ、そーいや読書感想文?っての。やってなかったからやらなきゃなーって。
こっち来てからたまーに本は読んでたけど、じっくり読んでたわけじゃないし、たまにはいーかな。
感想を言葉にするってのは気に食わなさあるけど。それはそれ。

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 4) 2020-02-10 18:57:39
村人・従者コースのシルクよ。ヨロシク。
この時期は家にこもれるから有り難いわー。
一つ課題も仕上げなきゃ、と…

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 5) 2020-02-11 23:23:22
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。
よろしくお願いします。

さて、何をクローズアップしましょうか。

《ゆうがく2年生》 蓮花寺・六道丸 (No 6) 2020-02-13 04:11:33
芸能・芸術コースの六道丸。よろしく頼む。
……ふむ、冬休みのう。拙僧は学園に来たばかりだったゆえ、新学期に向けての準備に大わらわだった頃か。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 7) 2020-02-16 13:35:32
特別授業を目指して、納得のいくプランを書けました!
万一戦闘のときは専守防衛するようプランと装備を調整してます。

いよいよ出発日ですので、プランの書き忘れや装備漏れには
充分注意しましょう!

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 8) 2020-02-16 23:26:01
今回は、折角のお休みなのを利用して、実地での回復魔法や医療行為の宿題を片付けに、ハロウィンで行った村へ再度行ってみることにしました。

タスクさんやエリカ部長たんたんと一緒にシトリ先生に会いに……とも思ったのですが、実のところ、あまり詳しくない場所だとお力になりにくいな。
とも思ったりしたので。

とにかく、充実した冬休みになると嬉しいですね。