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ダンジョンで『福』あつめ


ストーリー Story

「ねえねえ、『ダン福』行ってみた? 私、中吉しか取れなかったー!」
「すげーじゃん、俺末吉だった」
「あんたのことだから、一人で行ったんじゃないの? あのダンジョン、協力プレイしないと集められないコインもあるんだって」
「マジかよ!? ボッチにもっと優しくしとけよ!!」

 学園都市の居住区域『レゼント』の一角にある体験型レジャー施設『勇者の穴』では、期間限定イベントが行われていた。
 今回開かれているイベントは『ダンジョン・福・福』、略して『ダン福』だ。 
『力試しの運試し。罠あり、敵あり、隠し扉あり。仲間と協力して、最高エンディングを目指せ!』
 そんなキャッチフレーズを掲げるこのイベントでは、誰でもミニダンジョンに挑戦する事が出来る。
 罠を回避したり敵を倒したりするとゲット出来る『福コイン』を集めて、最奥の部屋へ進もう。
 罠は落とし穴やタライ落とし。敵はミニオルトロス(小さな二頭犬)の魔法人形だ。
 全て無視しても先には進めるが、その場合は福コインを諦める事を意味する。
 怪我はしない仕様になっているので、安心してチャレンジしていこう。
 ダンジョンの達成度によって『末吉・中吉・大吉』のエンディングがあるらしい。
 しかし、今までのチャレンジャーの中では、まだ誰も『大吉』に到達した者はいないとのこと。

 今日はイベント最終日。
 最後に完全クリアしてみせる!
 意気込んでイベント施設に訪れた生徒達は、協力プレイが必要だという噂を耳にして。
 他の生徒達と即席のパーティを組み、ダンジョンへ挑むのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-02-04

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2020-02-14

登場人物 4/8 Characters
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《妖麗幽舞》サクラ・ブラディー
 リバイバル Lv14 / 黒幕・暗躍 Rank 1
イタズラ好きのリバイバル。 自分の名前や常識等以外記憶から抜け落ちている。 リバイバルになるための強い感情も抜け落ちておりなんで今ここに存在しているのかも本人にもわからない。(という嘘をついている) 取り敢えず毎日が楽しく過ごせればいい。 黒幕・暗躍コースなのは自分の特性がうまくいかせそうだったから 楽して成績優秀なら空いた時間は自由に使えるじゃろ? 趣味は人を揶揄うこと。 特技はなぜか舞踊、剣舞ができる。 また、占いもすることがあるようだ。 偶に変な雑学を披露する。 とある生徒の部下ではあるがそれを理由に相手をおもちゃにするために部下になってる ただ、ちょっとしたことならお願いは聞いているようだ 二人称:おぬし、または 名前殿

解説 Explan

 ●目的
 『ダンジョン・福・福』の踏破。
『力試しの運試し。罠あり、敵あり、隠し扉あり。仲間と協力して、最高エンディングを目指せ!』
 部屋が幾つか連なったワンフロアのミニダンジョンです。
 『罠の間』『番犬の間』『何もない間』『最奥の間』と一本道で続いています。
 途中で手に入る『福コイン』は全部で五枚です。
 全ての福コインを集めて、『大吉』を目指しましょう。
 (末吉・中吉でも踏破出来れば、依頼は成功となります)

・罠の間
 『落とし穴』と『タライ落とし』が一つずつ、設置されています。
 注意して見ればすぐに発見出来ます。
 それぞれを発動させて回避出来ればコインをゲット出来ます。

・番犬の間
 魔法で動く人形、ミニオルトロス(小さい二頭犬)がいます。
 二つの口で、キャンキャンと鳴いてずっと威嚇してきます。
 『せーので止めよう!』と看板が立っています。
 生徒達なら一発攻撃を当てれば、鳴き止むでしょう。
 成功すればコインをゲットできます。

・何もない間
 一見何もないです。けれど、何かがあるかもしれません。
 どんな仕掛けが隠されているのか、想像して挑んで下さい。
 『二人以上の協力』がないとクリア出来ない仕掛けとなっています。
 この部屋で協力するメンバーはプランで申告して下さい。
 協力するメンバーは何人いても構いません。
 最後まで諦めずに行動すれば、きっと何かを見つけられるでしょう。
 仕掛けをクリア出来ればコインをゲット出来ます。

・最奥の間
 ここに到達するまでに、五枚のコインがゲット出来るようになっています。
 コインの数により、『末吉・中吉・大吉』のエンディングとなります。
 エンディングが流れている間にお願い事をすると、ご利益があるかもしれません。

 なお、冒頭の少年少女はリザルト内では登場致しません。
 ボッチの少年は、少女に再チャレンジを付き合ってもらえるといいですね。


作者コメント Comment
 エピソードをご覧いただきありがとうございます。新人GMのハザクラです。
 お正月イベントのはずなのに、すっかり遅くなってしまいました。
 よって、イベント最終日のかけこみ依頼に。
 小さな仕掛けいっぱいのミニダンジョンをお楽しみ下さいませ。
 皆様の楽しいプランをお待ちしております。


個人成績表 Report
クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:66 = 44全体 + 22個別
獲得報酬:1800 = 1200全体 + 600個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
目指すは大吉。俺以外にも参加してくれた皆と共にダンジョンに挑戦する

・罠の間
タライは罠を作動させた瞬間、幽体化ですり抜け回避するよ
落とし穴は重心を後ろにし足を伸ばして起動させる。俺は脚が長いらしいからね
他の方が起動させるならその後ろで落ちないように見守り、手を貸そう

・番犬の間
二つの頭を同時に叩き、同じタイミングで停止させる
他の方と挑戦するなら合図で一緒に攻撃するよ

・何もない間
恐らく一人で挑戦した参加者も部屋はくまなく調べたろう、だが見つからなかった
怪しいのは天井か、あるいは一人だと見えないか出現しない扉か何かかもしれない
全員で死角を無くすように部屋を観察してみるよ
もし何かあればそれを調べてみよう

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:52 = 44全体 + 8個別
獲得報酬:1440 = 1200全体 + 240個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
…この世界、洞窟とかダンジョンとか多くない?
むしろ少ないから作られてるってなら、ザコちゃんの知ってた世界は小さ狭いねぇー、ほんと。

ご近所隣な施設だし、1回くらいは行ってもいーかな。なんか他のゆーしゃ様と参加被っちゃったっぽいけど、待つのもめんどいしそれはそれ。

ザコちゃんは適当に【キラキラ石】持ち込んでくかな。
遠目の罠探すにしても、なんかにぶち当てるにしても、ぶん投げ【投擲】したらだいたいなんとかなるだろーし。あと暗いなら光源になるし。

【視覚強化】で周囲見といて、違うとこないか【推測】しとく。
…落とし穴?あー、それはてきとーに【六角棒】でつついて開けて終わり。
ザコちゃん探すのそっちじゃなくてー。

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:52 = 44全体 + 8個別
獲得報酬:1440 = 1200全体 + 240個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
折角だし皆で行こう
その方が大吉狙えるだろうしな

最初の罠の間だが
まずは目視で確認

動き回らずに天井と床の確認だな
怪しいところがあったら投げれるものを投擲だ
あ、小石とか拾えるんなら小石を使う

次の番犬の間はタイミングが大事だと思うのせーので攻撃してみる
まずはザコちゃんと合わせて遠距離攻撃
失敗したらサクラと直接ぶん殴ってみるか
音楽、歌唱、踊り辺りでタイミング合わせられないだろうか?

何もない間だな
部屋に入る前にグループを分けてはいるのを進めさせていただきたい
ないとは思うが入ってすぐにアクションを求められるかもだしな
やることが解れば手伝おう

最奥の間につく前の各部屋の通路にもコインがないか
確認はしていこう

サクラ・ブラディー 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:132 = 44全体 + 88個別
獲得報酬:3600 = 1200全体 + 2400個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
まずは事前調査で各部屋の聞き取りをしておくかの
何をすればわからないけど無事に出てきている者が居るじゃったら聞いておいて損はないじゃろ
それをもとに攻略じゃな


罠の間は罠の解除は他のに任せて
番犬の間は歌唱、踊りあたりでリズムを取ってタイミング合わせて攻撃じゃな


何もない間じゃが・・・
順当に考えればキャッチコピーにあった隠し扉はこの部屋にあるんじゃないのかの?
協力してとあるし、一人は隠し扉の解放の維持、もう一人がコインの回収だと思うんじゃがなぁ・・・

まぁなんにせよ楽しむとするのじゃ

リザルト Result

●いざダンジョンへ……と、その前に
 今日は体験レジャー施設『勇者の穴』、期間限定イベントの最終日。
 『ダンジョン・福・福』の入口には、魔法学園の生徒達が四名顔を合わせていた。
「折角だし皆で行こう。その方が大吉を狙えるだろうしな」
「ああ、勿論目指すは大吉だ。まだ誰も見た事がないというのなら、是非見てみたくてね」
 【仁和・貴人】と【クロス・アガツマ】は協力し合おうと士気を高めるが、一方で【チョウザ・コナミ】はどこ吹く風だ。
「なんか協力がどーとかってのはザコちゃん向いてないしー。他のゆーしゃ様と参加被っちゃったっぽいけど、待つのもめんどいしそれはそれ」
 ご近所の施設だし一度くらいはと覗きに来たチョウザは、同行はするが勝手にやらせてもらう、とひらひら手を振り先に受付へ向かってしまった。
「ちょっと待つのじゃ。中に入る前に、聞いておきたい事があっての……あ、おぬしら、少し話をよいかの?」
 【サクラ・ブラディー】はダンジョンから出て来たばかりの集団に、各部屋の仕掛けについて聞き込みをしようと声を掛けた。しかし、
「お客様。申し訳ございませんが、イベント内の情報漏洩は固く禁止させていただいております」
 残念ながら、入口の係員に止められてしまった。答えが初めから分かっていたら楽しみが半減してしまうので、当然の対応だろう。すると、一人の少女がこのくらいなら言ってもよいか、と係員の耳元に口を寄せる。係員が頷くと、少女は微笑んでサクラ達にアドバイスをした。
「一人では無理、二人なら可能、それ以上だともっと! ……かな?」
『私達は中吉だったから、頑張って! 目指せ、大吉!』
 少女の仲間からも元気なエールが送られる。詳しい情報は得られなかったけれど、俄然やる気が出て来た一行は、少女達に礼を告げてダンジョンへ潜っていった。

●罠の間
「ここは罠の間のはずじゃが……何もない間のように何もないのぅ……」
 サクラが期待外れのような声を上げるのも無理はない。気合を入れてダンジョンに足を踏み入れた一行の前にまず広がったのは、何ひとつ置かれている物がない、ただの空室だったのだから。
「隠されてる罠に引っかからないように、まずは動き回らず確認からだな」
「アレとかちょい怪しーねぇー?」
 視覚を強化したチョウザが遠目で見つけたのは、真っ平らな床の中で一部だけ窪んだように見える一角だ。
「何か投げられるものは……拾える小石があれば使いたかったが、しょうがない……」
 貴人が取り出したのは、なんとゴールド袋だ。小石の代わりにお金を投擲しようとしているらしい。
「流石仮面のまおー様、太っ腹ー。でも投げんならコレでもいーでしょ」
 カンッ、コンコンコン――。
 チョウザが掌で遊んでいたキラキラ石を放り投げて、狙いの場所に命中させると、石はそのまま床を跳ねて転がって行った。試しに他の場所にも石を投げてみたが、明らかに音が異なる。
「罠は発動せぬのか。小石では重さが足りないのじゃろうか……」
 首を傾げるサクラに、それなら、と。軽い足取りで罠らしき場所まで移動したチョウザは、愛用の六角棒でドンッと床を叩いた。ガラガラガラッ――衝撃により崩された床はポッカリと大穴を開ける。
「一丁上がりー。下はトリモチィ?……あ、コインもみっけー」
 チョウザが覗いた落とし穴の底にはトリモチが、そして穴の側面にはキラキラ輝くコインが突き刺さっていた。手を伸ばして引き抜いた『福』と書かれた掌サイズの大きなコインを、ありがたく頂戴する。
「ザコちゃんナイスー! 後はタライ落としか……オレなら、そういう罠なら部屋の出入り口に設置するが……」
「なるほど……ああ、大当たりだよ。よく見ると、出口にワイヤーが張ってある」
 灯りのない上部は肉眼では見えにくいが、タライが隠されているのだろう。
「ここは任せてもらおうか。長年リバイバルとして生きているからね、力のコントロールは得意なんだ」
 クロスは仲間にそう告げると、その長い脚をワイヤーに引っ掛けて自ら罠に掛かる。そして直後に落下するタライが、クロスの頭部に直撃するその前に――すぅっと、自分の身体を幽体化させたのだ。
 クロスを擦り抜けたタライは床に衝突し、クワンクワンッと乾いた音を部屋に響かせる。そして、その後にもうひとつ。クロスを通過したある物を、再び実体化させた手で拾い上げた。
「これでコインは二つ目だ。この部屋はこれでおしまいかな」
「アガツマくんもナイス! 至極順調だな」
 罠の間をクリアした一行は、速やかに次の部屋へと移動したのだった。

●番犬の間
 キャンキャンキャンキャンキャンキャン――。
 想像以上に賑やかに一行を出迎えてくれたのは、二つ頭が特徴のミニオルトロス人形だ。ずっと同じ間隔で常に泣き続けているので、正直、ちょっと、だいぶ、かなり、うるさい。
 すぐにでもこの音を止めたい所だが、看板には『せーので止めよう!』と注意書きの看板が立てられていた。
「なるほど(キャンキャン)、つまり二つの(キャンキャン)頭を同時に叩き、同じ(キャンキャン)タイミングで停止させればよい(キャンキャン)のかな」
 クロスの推理は半分くらい鳴き声でかき消されてしまったが、皆も同じ考えのようだ。
「こんな音、規則正しい手拍子だと思えばよいのじゃ。わっちと共に踊れる者はおるかの?」
「オレが合わせよう。さぁ、ダンスショーの時間だ」
 サクラと貴人が前に出ると、テンポの速い軽快なステップを踏む。堂々とリードをしながら揺れる影色のマントが、艶やかに舞う濃厚な桜色を見事に引き立てていた。
 二人の踊りを前にすれば、あれほど喧しかった鳴き声も、確かに手拍子のように思えてくる。ご機嫌に歌を口ずさむサクラは、番犬に近寄りながら鳴き声に負けないくらいボリュームを上げて――。
 番犬を間に挟んで、二人の拳が二頭犬の頭に同時に振り下ろされた。
 キャンッ――。最期の鳴き声と共に、番犬の二つの口からそれぞれコインが吐き出される。
「二人とも素晴らしいダンスだったよ。……ところで、君は何をしているのだろうか?」
 コインを拾うサクラと貴人にクロスが拍手を送っていると、協力プレイは完全お任せ状態だったチョウザが横から現れ、舌を出して稼働停止している犬人形を抱きかかえていた。
「この犬犬、持って帰っていーの?」
 今日でこのイベントは終わりだとしても、お持ち帰りは駄目だろう。他の皆に咎められたチョウザは首を竦める。
「だろーねぇ。世の融通に収拾つけらんないお方ばっかだし。ふふ」
 犬人形を元の場所に戻し、二枚のコインを新たに手に入れた一行は、最後のコインを求めて次の部屋へ向かうのだった。

●何もない間
「問題はこの部屋じゃのぅ」
「通路にコインが隠されている可能性も考えて探してみたが、何も無かったな。と、いう事はこの部屋の中に必ず一枚あるはずだ」
 何もない間の入口前で、貴人はこの部屋に入る時はグループに分けて入りたいと提案をした。万が一、部屋に入ってすぐアクションを求められるものがあった場合の対策をしたいのだ。
「そんじゃお先ー。宣伝文句通り、どっかにあんでしょ? 隠し扉」
 一人と三人のグループでも問題ないだろうと言わんばかりに、チョウザが一足早く部屋に足を踏み入れた。足元をブーツの踵で軽く叩いてみても、何かが起こる様子はないようだ。
「入口の仕掛けは無さそうだね。怪しいのは天井か、あるいは一人だと見えないか出現しない扉か何かかもしれない。全員で死角を無くすように、部屋を観察してみよう」
 分担して捜索しようというクロスの提案を受けて、一行は部屋の中を隈なく探していく。
 部屋にある仕掛けは隠し扉だと見当は付いている。しかし、その攻略方法がまだはっきりとしないのだ。
 他の三人が床や天井を注意して探している中、チョウザは六角棒で壁を叩きながらその音の変化を探っていた。隠し扉がある場所なら、そこだけ音が異なるはずだ。すると狙い通り、とある場所を叩いた時だけ、僅かに音が奥に響くのをチョウザは聞き逃さなかった。
『見つけた!』
 全員の声が重なり、驚いて皆が顔を見合わせた。
 貴人は床の隅に隠されていたボタンを、クロスは壁の高い所に設置されたボタンを、そしてサクラはチョウザが見つけた隠し扉があると思われる壁と対面に隠されたボタンを発見したらしい。
「協力してとあるし、一人は隠し扉の解放の維持、もう一人がコインの回収だと思うんじゃがなぁ……」
「悩ましいね、どれかが当たりでどれかが罠なのだろうか」
「確かに罠がないとは聞いていないが、そもそも『何もない』間というのも嘘なわけだし……どうだろう?」
「『力試しの運試し!』悩んでいても仕方ないじゃろ。押してみるのじゃ」
 ぽちり。サクラが手元のボタンを押す。
 すると、チョウザの見つけた壁の一部がゆっくりと開かれ……。……。
 ゆっくり。それはもうゆっくりと、壁の隙間が徐々に大きくなっている。
「……遅過ぎなのじゃ。これはアタリか、ハズレか? はっきりしてくれんかのぅ」
「一回ボタンを離してみてもらえるだろうか? 今度は俺が押してみよう」
 サクラがボタンを離すと、壁の隙間は一瞬で閉ざされてしまった。続いてクロスがボタンを押すとまたゆっくりと開き、離すと閉じる。貴人のボタンも同様だった。
「今度はせーので押してみないか?」
 貴人の提案で、三人のボタンが同時に押される。すると、今度は隙間が大きく開いた。
「今度は三倍くらいの速度で開いてんねー。見える見える、奥にキラキラってんのがありありー」
 一人では無理、二人なら可能、それ以上だともっと!
 ダンジョンの入り口で聞いた少女のアドバイスは、この事だったのだろう。
「オレ達が押し続けてるから、ザコちゃんはコインを頼む」
 そうして力を合わせた一行は、最後のコインを手に入れる事に成功したのだった。

●最奥の間
 四人が到着した最奥の間には、見上げるほどの巨大なカプセルトイが設置されていた。
『集めたコインを入れて、レバーをまわしてください』
 福コインを一枚、二枚……五枚と全て投入して、大きなレバーを皆で回していく。
 ガチャリ、ガチャリ、ゴロゴロゴロ――。
 仲間と力を合わせて手に入れた努力の結晶、巨大なカプセルが落ちてきた。

 クラッカー! 拍手喝采! 豪華な音楽!
 魔法の光により照らされた室内は、おめでたい紅白のラインで埋められていく。
 いきなり真っ二つに割れたカプセルから弾けた音と演出に驚いていると、続いて一行の足元から大きな鳥が飛び立った。その鳥も写法術の魔法のようで、羽ばたいた軌跡にメッセージが浮かび上がってくる。
『大吉! 最後まで諦めなければ、仲間と力を合わせれば、あなたの願いはきっと叶う。最高の一年になるでしょう!』

 エンディングが流れている間、サクラと貴人は音楽に合わせて楽しそうに踊っていた。
 チョウザは少し後方で演出を眺めながら、いつものように薄い笑みを浮かべている。
 彼等に叶えたい願いがあるのかは分からないけれど。
(願い事は……そうだな、皆の願い事が叶いますように)
 共に協力し合った仲間達を想って、クロスは瞳を閉じて願いを捧げたのだった。

 こうして、一行はイベント初の『大吉』を見事に獲得してみせた。 
 今年も、もうひと月が経ってしまった? いやいや、まだひと月しか経っていない!
 これからも沢山の冒険や日常のイベントが待っているだろう。
 今年も良い一年になりますように。
 『ダンジョン福・福』スタッフ一同、イベントにご参加いただいた全ての皆様の幸を願って。



課題評価
課題経験:44
課題報酬:1200
ダンジョンで『福』あつめ
執筆:ハザクラ GM


《ダンジョンで『福』あつめ》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 1) 2020-02-01 23:59:13
賢者・導師コースのクロス・アガツマだ、よろしく頼むよ。

早速だが、俺は出来ることなら大吉を目指したい。そのエンディングとやらを見てみたくてね。
なので、俺と共にダンジョンに挑戦してくれる方がいれば是非とも組みたい。
あるいは、全員で挑戦してもいいかもしれない。

攻略法は一応、考えてある。コインはおそらく罠の間と番犬の間で2枚、何もない間で1枚なのだろう。
難関はやはり何もない間だが……俺の方でも仕掛けはひとつだけ予想しているところだ。
皆の意見も是非、聞かせてもらえるとありがたい。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 2) 2020-02-02 23:27:08
ぶっちゃけ、ここに集まったゆーしゃ様全員で挑み試みたら良くない?って思いみ。
それによって不利益不都合あるってならあれだけど。

とりまザコちゃん、罠探すにしても、わんこにぶち当てるにしてもちょうどいい【キラキラ石】持ち込むかな。
光源なしの暗い部屋とかあったら、そんときにも使えるし。
ただなんか協力が必須項目?なとこは他のゆーしゃ様にお任せ案件。そーいうのにーがて。
その分、周り見とくとか、なんかないかとかはしとくから。ばらんすばらんすぅ。

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 3) 2020-02-03 20:15:11
他の二人がどうなのか定かでないものの、こちらも皆でという形でプランを送らせてもらったよ。
各部屋の攻略も書いたので一先ずは大丈夫のはずだ……
ただ何もない間に関してはあくまでも俺の予想を書いただけだ。一人では見えないものがあるのかもとね。
個人での推測に過ぎないという点は了解してもらえると助かる。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 4) 2020-02-03 22:22:58
遅くなってすまない。
協力するのは構わないというか協力必須だろうこれは。
特に何もない間
取り敢えず二人以上で出来ることを考えないとな・・・
考えはするが基本アトラクション?を楽しむだけだな

《妖麗幽舞》 サクラ・ブラディー (No 5) 2020-02-03 22:40:30
とと、もうぼちぼち出発じゃったな。

協力するのは了解じゃ。
無事に大吉取れるとよいんじゃが・・・