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【新歓】最後のコンサート


ストーリー Story

「今日の~ティータイムは~♪ ミラクル・マジカル・ホシブドウパフェ~♪」
 鼻歌に合わせて茶色の尻尾がるんるんと揺れる。
 【コルネ・ワルフルド】はスキップでレゼントの街を闊歩していた。
 本来なら彼女は学園内で新入生歓迎のため走り回っている頃だったのだが、学園長からこんなお達しが。
『コルネたん、ちょっとお使い行ってきて~。ついでに2時間休憩してきていいから! 頼んだゾ☆』
 どういう風の吹き回しだろう……。若干訝しみながらも、コルネの足取りは軽い。
 両手には魔法道具が色々と詰まった紙袋。お使いはしっかりと済ませた。
 ついでに前から気になっていた新メニュー、試しに行っちゃおうかなぁ~。……なんて、ことを思って頭の中は干しブドウ一色だ。
 が、『コルネも歩けば棒に当たる』……もとい、『勇者も歩けば事件に当たる』とは誰が言ったか。
「んん……?」
 足を止め、コルネは首を傾げた。
 黒い服を着た男が前を歩いていた。それはいい。
 問題は男の足取りである。
 右へふらふら、左へふらふら。足元が覚束ないというか……見るからに危ない。
 それになんだか、魔力の気配が薄いような気もする。
 声をかけた方がいいかなぁ。なんてコルネが考えていた矢先。
 バターン、と大きな音を立てて男が倒れた。
「わあああああっ!?」


「助けていただいて、本当にありがとうございました……なんてお礼を言えばいいのか」
「いえいえ~。教師として当然のことをしたまでですから。もう体調は大丈夫ですか?」
 落ち着いたジャズの流れる喫茶店。コルネはパフェをつつきながら、目の前に座るカルマの男にそう声をかけた。
「はい。お茶をいただいて、少し落ち着くことができました」
 紅茶のカップを置き、男は穏やかにほほ笑む。
 右頬に刻まれた、カルマの命の源である魔法陣は半分消えかけていた。魔力の気配が薄いのはこのせいか、とコルネは結論付ける。
 彼は白い手袋の右手を胸に置くと、優雅に一礼した。
「私は【セイレン・ローダン】と申します。街のはずれの屋敷で執事をしております」
「ひつじ……じゃなくて、執事さん!」
 めずらし~。と興奮気味につぶやくコルネだったが、ふと気がついて首を傾げた。
「ん? でも、街はずれのお屋敷って、もう長い間人が住んでないって……」
 前に学園長から聞いたことがある。
 コルネが尋ねると、セイレンはうなずいた。
「ええ。主人がこの世を去ってから、もう三百年ほどになります。ですが、私は主亡き後もずっと屋敷の管理を担っておりました」
 カルマは忠誠心の強い種族である。彼はきっと、この長い時を、主に与えられた役割を忠実にこなして生きてきたのだろう。
「ところで……さきほど『教師』とおっしゃっていましたが、コルネ様はもしや魔法学園の先生でいらっしゃるのですか?」
「あ、はい。いちおーそうです」
「そうでしたか……」
 セイレンは自分の執事服の黒をしばらく見つめていた。なにかを伝えようと、顔を上げかけて、下ろす。
 それを何度か繰り返し――覚悟を決めたようにコルネを見つめた。
「あの、魔法学園の皆さんにご依頼をさせていただけないでしょうか。……コンサートの準備を手伝っていただきたいのです」


 セイレンの亡くなった主は、屋敷の温室でサロンコンサートを開くことが好きだった。
 お気に入りの音楽と、おいしいお茶菓子。綺麗な花と、たくさんの友人。
 それらに囲まれて過ごすときが一番幸せそうだった、とセイレンは話した。
「もう一度、主人の好きだったコンサートを行いたいのです。ですが、先ほどコルネ様もご覧になったとおり、私は体が弱く、一人ではとても実現できそうにない」
 セイレンは白い手袋に包まれた右手をぎゅっと握りこむ。
「……ずうずうしいお願いだとは思います。ですが、これが最後の機会になるかもしれないのです」
 だから、完璧なコンサートを。
 コルネはセイレンの右手――手袋の下を想像して、予感を抱く。
「もしかして、セイレンさんは、もう」
 セイレンは弱弱しく微笑みを返す。コルネはそれ以上の言葉を封じると、しっかりとうなずいた。
「分かりました。セイレンさんの依頼、アタシたちで引き受けます。生徒のみんなもきっと、協力してくれるはず」
「ありがとうございます……! みなさまにお願いしたいのは主に3つです」
 まず1つは、郊外の森に行って、花を調達してくること。屋敷の主人の好きな花だったらしい。
「最近は魔物の出現が多く、群生地に近づくことすら難しくなってしまい……」
「それならアタシたちが行った方が安心ですね。魔物にも慣れてますし」
「はい、ぜひ。そしてもう1つは、コンサートの出演者を務めていただける方がいれば、お願いしたいのです。主人は若い演奏家の演奏を聴くことも好きでした。魔法学園には芸術に長けている方もいらっしゃるとお聞きします。歌でも、楽器でも……なんなら、踊りを組み合わせていただいても。種類は問いません」
「音楽かぁ。アタシはそっちではお手伝いできそうにないかも……」
「私も楽器をたしなんでおりますので、いざとなったらお手伝いさせていただきますよ」
 最後にもう一つ、とセイレンは指をすっと立てる。
「ぜひ、コンサートを楽しんでいってください。お忙しい方もいらっしゃいますから、無理に出席してほしいとは申しません。ですが、にぎやかな方が主人も喜びますから……」
 コルネは任せてください、とうなずいた。
 学園にはちょうど多くの生徒が集っている。きっと協力してくれる子がいるはずだ。
 残りのパフェを掻き込み、コルネはダッシュで学園へと戻るのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-05-02

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2020-05-12

登場人物 8/8 Characters
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け
《ゆうがく2年生》ドリス・ホワイトベル
 リバイバル Lv12 / 芸能・芸術 Rank 1
【外見】 緑のショートウェーブ つり目 色白 実年齢は15歳だが昔から栄養あるものを食べさせて貰えなかったせいであまり成長出来なかった 【性格】 弱気な中二病 努力家 照れ屋 ちなみに、何故か光属性に拘ってるが名前がホワイトベルなんだから光属性であることを譲りたくない為らしい。 が、種族上どうあがいても闇属性である。 小さい頃に捨ててあった白猫のぬいぐるみ ボロボロで目がとれかけてたから眼帯をつけてあげた 今では白猫はお友達 名前は『ミルク』 よく腹話術でお話してくれるけど口が動いていて腹話術にならない。 【入学理由】 誰にも見向きもされなかった為、友達が欲しくて仕方がない ※アドリブ大歓迎
《不屈愛の雅竜天子》ミサオ・ミサオ
 ドラゴニア Lv18 / 魔王・覇王 Rank 1
「ミサオ・ミサオ。変な名前だろう。 この名前は誰よりも大切なあの子からもらったんだ。」 名前はミサオ・ミサオ。無論本名なわけがない。 外見年齢は20代、本年齢は不明。 本人曰く100越えてんじゃないの、だとか。 職業はギャンブラー。 学園に入る前は彫刻師、薬売りなどいくつか手に職を持っていた。 魔王コースを選んだのは、ここが楽だと思ったからだそうだ。 遠慮なくしごいてくれ。 性格はマイペースで掴み所がなく飄々としており、基本滅多に怒ることがない。 面白そうなことや仲の良い友人が居れば面白そうだとついて行き、 好きな人や大切な人にはドロドロに甘やかし、自身の存在を深く刻み付け、 飽きてしまえば存在を忘れて平然と見捨てる外道丸。 いい子には悪いことを教えたり賭け事で金を巻き上げ、 そして悪友のオズワルドや先輩先生にこってり絞られる。 恋愛したい恋人欲しいと言っているが、一途で誰も恋人を作ろうとしない。 たくさん養ってくれる人大好き。 趣味は煙草と賭け事。 特技は煙草芸、飲み比べ、彫刻。
《新進気鋭》ムーシュカ・スターリナ
 エリアル Lv6 / 芸能・芸術 Rank 1
アイドル、それは新時代の希望となる存在。 幼い頃からの憧れをそのままに、いよいよ夢を叶えるためこの学校へとやってきた。 そんな──どこにでもいるような少女が彼女、ムーシュカである。 戦う力はないけれど、導く知略もないけれど。 それでも彼女は信じているのだ。 いつの日か自分のパフォーマンスが、誰かの心を動かす事を。 ※コール&レスポンス!※ 「私が“みんなー、どこにいるのー?”って言うから、みんなは自分の居る場所を言ってね! そうしたら私が飛んでいくから!」 ※以上!※ 前向きな性格で人懐っこく、イベントが好き。 反面、考えなしに突っ込んで空回りする事もしばしば。 どちらにしろ、彼女が近くにいれば退屈しないのは間違いない。 好きな食べ物はリンゴ。 特に母親の作っていたアップルパイが最高なんだとか。

解説 Explan

●目的
サロンコンサートの準備・運営を手伝う

●依頼内容
1.花の調達
レゼント郊外の森に行って、『リリフラワー』を調達してください。
花の名前、特徴、群生地はセイレンが知っています。
量はお任せしますが、セイレンは各テーブルに飾る予定でいます。

森には以下の魔物が生息しています。
・ハイゴブリン
 魔法攻撃に弱い。状態異常:散漫を付与する。
・ジャバウォック
 素早さは低いが、物理攻撃力が高いタイプ。狼のような見た目。
・マヒノクサ
 状態異常:麻痺を付与する。

2.出演者になる
 コンサートで発表する出演者を募集しています。
 歌も楽器もジャンル不問。なんならミュージカルだっていい。
 どうやら主人の好みは相当幅広いらしい。
 楽器はセイレンが用意してくれます。
 
EX.セイレンのお手伝い
 セイレンは以下のような仕事も行っています。興味があれば声をかけてみてください。
 ・参加者にふるまうお菓子の準備
 ・会場の設営
 ・出席者としてコンサートを楽しむ
 

●会場について
・屋敷の温室
 テーブルが8卓あります。1卓につき4人が着席可能。
 ガラス張りで、屋敷の庭が見えます。当日の天気は晴れです。

●NPCについて
・セイレン・ローダン
 カルマの男性。見た目は30歳くらい。
 執事として屋敷の主人に仕えていた。主亡き後も、三百年間屋敷を忠実に守り続けていた。
 魔法陣の1つは消えかけていて、修復が追いついていない。もう1つは……。
 課題中はコンサートの運営を行いますが、演奏者が足りない場合はヴァイオリンで参加してくれます。

・コルネ・ワルフルド
 皆さんおなじみ学園のせんせー。
 課題中は花の調達に参加しますが、基本的に手は出しません。
 皆さんの身に危険が及んだ時は手助けしてくれるでしょう。
 今回は干しブドウ摂取済みでのスタートなので、おそらく終始穏やか。
 アタシだって、やるときゃやるよ!

●その他
 セイレンのお手伝い、コンサートへの出席は任意です。
 参加しなくても成績に影響はありません。


作者コメント Comment
この執事さん、名前はセバスチャンではない……。

今回はカルマにフィーチャーしたエピソードです。
彼らは自分の居場所、大切な人に奉仕する、とても忠義に厚い種族です。
ぜひ、彼の願いを叶えてあげてください。

少し変わった歓迎エピソードですが、これから先、長い時間を過ごす皆さんの中になにか残るものがあれば嬉しいです。


個人成績表 Report
フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:78 = 52全体 + 26個別
獲得報酬:2400 = 1600全体 + 800個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
◆方針
サロンコンサートの準備。
そしてセイレンと主人を忘れないように

◆事前準備
『リリフラワー』の必要量を確認。
また生態についても…戦闘で影響を与えないようにと、植樹できたらと。

◆行動
リリフラワーの調達に森へ。
出来る限り戦闘は避けつつも、戦闘なしで採集が難しい場合、影響受け辛いところで。
こちらから仕掛ける時は『勇者原則』で注意を引きつけ、先手を取りに。
『麻痺消し草』はマヒノクサ対策用。
花は量を取れたら一部を屋敷に植えてやりたい。

リリフラワーは

コンサートではセイレンと話をしながらメモを。
主人と、彼についてできる限り記憶を残したいと。
屋敷の記録や書物にまとめるなど、何か生きた証を残してあげたい。

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【1】花の調達
植物学を生かし、生命力が旺盛で多めに摘んでも大丈夫なら見栄えがするよう多めに
多めに摘みすぎると花が絶えそうな種なら量は控えめにして、近くに生えてる花で添え花によさそうな花を一緒に摘んで、リリフラワーに合う飾り付けができるように配慮

応戦時は後方から祈祷で仲間を回復したり、デトルで麻痺を治して

◆お手伝い
一緒に摘んだ花を飾ったり、お菓子の用意のお手伝い
お茶会映えするのは得意じゃないですが、パンケーキやアップルパイなんかを用意します

途中で摘んだミント、バターや蜂蜜に、アップルパイで余った林檎のコンポートを添えれば、パンケーキも美味しそうでしょ

アップルパイに干し葡萄をトッピング
引率ホイホイ

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
植物は嫌いじゃないよ、ザコちゃん。
この髪染めてんのも石と土と草だし。名前も知らないやつ。
花が好きか、って言うと面白ければって感じだけど。
知らない魔物はもっと好き…だけど、散々見た魔物しかいないし。飽きたし。
今回の目的は植物の方でいーかな。何とかふらわーとまひのくさ。まひのくさもきれーなら飾れるよね?
ほら、やばげな花粉部分摘んでさ。ふふ。


【麻痺消し草】あるし、多少は気にせず探し求め捜索するとしてー、
興味無い魔物とか会うだけ無駄だから、【危険察知】と【動作察知】、【聴覚強化】な【聞き耳】立ててはなっからの先から、会わないよーにしとく。
会ったらのちのちめんどいしー、しゃーなしで、ぽこしてから再開で。

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
亡き主人の為のコンサート…って言い方すると、何か物悲しくならない?
どうせなら楽しくやろうよ!

2、コンサートに参加
事前に主人の好みの曲調を聞いておく
え、わりと何でもいける?わぁ、俺とおんなじ
折角だからセイレンさんも出たら?楽器弾けるんでしょ
ならいけるいける 一緒にやろうよ

以前レゼントの舞台で来た衣装で参加
最初はリトラヴェルソの演奏
「音楽」「芸術親和」にて穏やかな曲調

少し演奏したところで演奏を止めダンスへ
タップダンスで音を多く奏でて、まるで複数人がそこで踊っているように楽しい雰囲気を
「踊り」「跳躍」で舞いながら味方の手を取り共に舞台へ
セイレンの手も取り
一緒に踊ろう セイレンさんも主役なんだから!

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
屋敷での雑用裏方役で参加だ。

会場の設営だが、演者それぞれの演目とテーマを聞いて、それに沿った小道具や装飾がないかセイレンに聞いて設営していこう。
こういうのは演者が納得するステージな程、熱も入るだろ?
【集中】してやってこ。

後は、コンサート中の演出。
上演中の司会者的な役割も必要だと思うんだわ。
【人心掌握学/会話術/演技/ポエム】で演者と演目を紹介し進行してく。
盛り上げ役も担えればいいが。

で、時間に余裕があれば…菓子作りな。

セイレンに指示されながらにはなるが、メイドな以上キッチリ奉仕してやるわ。
クッキー程度なら教会で腐るほど作って来たんで、指示されなくても自動生成器になれるぞ。

ドリス・ホワイトベル 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
コンサートに参加する

【行動・心情】
…コンサート…?
わ、私…参加してもいいかしら?
歌と楽器はちょっと得意なの!
…お母さんが昔、褒めてくれたから

楽器、ピアノ…あるかしら?
学校のは良く空き時間に使わせて貰ってるけど
1番好きなの

だから、頑張ってみたいな

ねぇ、ミルク
見守っててね?

『僕が、ドリスを見守ってるからミスなんて気にしないで頑張ってね!』


ミルクは頭に乗せて
ピアノを弾きながら歌を歌って

どんな曲が良いかな?
クラシック?ポップ?
ジャズみたいな即興も楽しいわよね!

ふふ、皆は何が聞きたいかしら?
リクエストも受け付けるわね!

あとは…皆に合わせて音楽を即興で弾いて
メインの邪魔をしないようにしないと

ミサオ・ミサオ 個人成績:

獲得経験:62 = 52全体 + 10個別
獲得報酬:1920 = 1600全体 + 320個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
オレぁ、花の調達と公演の手伝いに向かうぜぇ。

【花の調達】
やってみたかったんだ。
魔物を使って芸をするのも悪くねぇな。猛獣使い。

まぁ、期待せずに鞭で好き放題に暴れます。
挑発と組み合わせて号令の鞭、威圧感、鞭打ちの計で気を無理矢理引かせ、
仕留めるのは仲間に任せます。
また、麻痺にかかった仲間がいれば麻痺消し草を差し出します。

【公演】
オレぁーオレらしく遊びたいねぇ。
というわけで、ブリキのバケツを被って楽器を借りて雑に変な踊りをしながら曲芸を見せ、
ハッタリと隠匿を利用して楽器やお客さんから借りたものを消す手品を見せちゃろか。
巫山戯るのが好きだからねぇ。

ムーシュカ・スターリナ 個人成績:

獲得経験:78 = 52全体 + 26個別
獲得報酬:2400 = 1600全体 + 800個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
コンサートの演者募集!?
私の初陣を飾るにはぴったりの、とってもアイドル向けな課題だ! 張り切って演るよー!
というワケで、私のメイン行動は勿論ステージ上でのパフォーマンス!
伴奏は他のみんなにお願いして、歌って踊る事に全力を懸けるよ!

演目は場に合わせて激しすぎたり品のないものは避けて……明るめのトラディショナル音楽! これだ!
お祭りでよく使われてる、私の故郷でもわりと定番のものを演れば、セイレンさんやそのご主人にもきっと馴染みがあるんじゃないかな。
他のみんなも、聞き覚えがあったり調子が掴めてきたら、手拍子や伴奏、合唱で一緒にステージを作ろうよ! なんならこっちに来て一緒に踊っても構わないよ!

リザルト Result


 断末魔をあげて、魔物が倒れる。
 訪れる静寂。しかし気を抜くことはない。慎重に周囲の気配を探り続ける。
 【セイレン・ローダン】と準備のために残ったメンバーに見送られ、【フィリン・スタンテッド】、【チョウザ・コナミ】、【ベイキ・ミューズフェス】、【ミサオ・ミサオ】は森へと足を踏み入れていた。
 なお【コルネ・ワルフルド】は少し離れた場所で様子をうかがっていた。
「んー、この辺りにはもういないっぽい」
 チョウザの言葉に、各々構えをとくと、ふうと息を吐きだす。
「あちらから来られてしまうと、応戦しないわけにはいかないですね……」
「そうね。できるだけ戦闘は避けていきたいのだけど」
 ベイキの言葉にフィリンもうなずく。
「群生地まではあとどのくらいなのかしら」
「旦那の話だと、もう少しってところかねぇ」
 事前にセイレンから聞いた情報を思い出し、ミサオが答えた。
 一行は改めて気を引き締めると、森の奥へと進んでいく。
 しばらく歩いていくと視界が開けた。
 木々の間にぽっかりと現れた花畑。様々な花が咲き乱れていた。
「ここっぽいね」
 チョウザの言葉に、ミサオがぐるりと視界をめぐらせる。
「さて、お目当てはどこかねぇ」
 すると、1か所だけ白い花が固まって咲いている場所を見つけた。
「あれがリリフラワーですね」
 セイレンから聞いた特徴と自身の知識からベイキがそう判断する。
「必要な量は各テーブルに1輪と聞いたわ。多少余分に摘んでも問題ないみたいだけど」
 フィリンがセイレンの言葉を反芻する。
「他の花とあわせて多めに摘んでもいいかもしれませんね」
 ベイキが告げたその時――。
「ゆーしゃ様たち、ちょい待ち」
 チョウザが背後へと視線を向ける。
 がさり、と草を踏み分ける音とともに、獣のような唸り声。
「めんどーだけど、ぼこるしかないねぇ」
「数は5体くらいでしょうか」
 ベイキがそうアタリを付けると、フィリンがさっとその場を離れた。
「んじゃ、猛獣使いのショーを始めますかねぇ」
 ミサオの鞭が地面をたたく。
 それを合図に、狼型のジャバウォックが草陰から飛び出した。
「さーて、1匹残らず懐かせてやる」
 狼たちはギラリと目を光らせ、3人へと飛びかかる。
 チョウザはひらりと身をかわすと、六角棒で難なく狼の体を撃った。狼はボールのように転がり、少し離れた場所で再び立ち上がる。
「うーわ、しぶと」
 ミサオも向かってきた狼を一閃で下がらせると、地面を鋭く一度叩いた。
 鞭の音に気圧されたのか狼たちはじりと後退する。
「そうだ、そのまま下がれ」
 さながら羊飼いのように、ミサオは狼たちを元来た方へと誘導していった。
 時々歯向かって花畑へと戻ろうとする物には――。
「そっちじゃないってば。お花に興味あんのは分かるけどねぇ」
 チョウザが横から軌道修正をかける。
 そして群生地から十分に距離を取った場所では。
「来たわね」
 フィリンが剣を携え待ち構えていた。
「スタンテッド家の名にかけて、使命を遂行する!」
 宣言とともに、フィリンは飛び込んできた狼に斬りかかった。
「ここなら存分に戦うことができますね」
 ベイキはミサオに回復魔法をかけつつ、周囲にリリフラワーや他の花が無いことを確認した。
 魔物を群生地から離れた場所に誘導し、そこで仕留める。
 森の生態を保護するための策だった。
「わんこたちには興味ないんだよねぇ」
 今日の目的は植物の方なのだ。
 さっさと片したい。そんなことを思いつつ、チョウザも狼を的確に仕留めていく。
 ミサオはというと、あわよくばこの狼を……なんて考えていたが。
「……」
 両者沈黙す。心なしか狼の目は鋭く、反抗心丸見え。
 最終的に手首のスナップをきかせて、背中を思いっきり打ってやった。
「やー残念残念!」
 魔物を御すのは難しい。
 そんなミサオを一瞥し、フィリンは再び地を蹴る。
「一気に仕留める!」
 向かう先には2体の狼。
 道中に食らわせた鞭や棒での打撃が効いているらしい。足取りはさらに鈍くなっていた。
 この程度、様々な課題をこなしてきた彼女の敵ではない。
 喉元を一閃。まずは1体。
 身をひるがえし、もう1体。胴を斬りつける。
 どさりと音を立てて、ジャバウォックは沈黙した。
 そのあと群生地に戻り、リリフラワーを手に入れ、4人は屋敷へと戻ったのだった。
 

 一方、屋敷ではメイド服姿の【プラム・アーヴィング】が動き回っていた。片手には今日の演目が書かれたメモを携えて。
「シキア様、いらっしゃいますか?」
 無駄に女声を作り、控室のドアを開ける。衣装の調整をしていた【シキア・エラルド】が振り向いた。
 一瞬面食らったものの、そこはかねてからの付き合いである。すぐにシキアはいつも通りの笑みを浮かべた。
「完全になりきってるね」
「やるなら徹底的に、でございますわ」
「あ、続けるんだ……というか、何か用があったんじゃ?」
「ああ、今日の演目を聞いて回ってるんだ。ステージの設営をするためにな。準備はお前らだけじゃできねぇだろ?」
 戻るんだ、そこは。内心ツッコミを入れながら、シキアはなるほど、と手を叩く。
「助かるよ。それじゃ、俺も張り切って準備しないとだね」
 シキアの上げた演目をプラムはメモに書き留め、部屋を後にした。
「演目は楽器演奏、歌、ダンス、ってミサオは手品か。ホントなんでもアリだな」
 とにかくこれでイメージはできた。
 さっそくセイレンに材料を提供してもらい、作業を始める。木でステージに段を作ってみたり、布で装飾を作ってみたり。
 よく働くメイドの姿がそこにはあった。セイレンは後にコルネにそう語り、たいそう感心していたという。
 続いてプラムはキッチンに向かう。
「ま、クッキー程度なら散々作って来たし」
 手慣れた手つきで材料を混ぜ合わせると、オーブンに放り込む。
 小一時間しないうちに皿の上には香ばしい匂いを放つクッキーが並べられた。
「ざっとこんなもんか」
 プラムが出来栄えを確認していると、玄関の方が騒がしい。森に出ていたメンバーが戻ってきたようだ。
「せっかくだから味見でもさせるか」
 プラムは皿を片手に親友を捕まえに行った。
 
 外から戻ったベイキは、さっそくお菓子作りを始めた。
 今日のメニューはアップルパイ。取り出したるは真っ赤な林檎。
 適当な大きさにカットし、火にかけた鍋へ。
 煮込む間に生地を作る。
 ことこと。ことこと。
 鍋の音が心地良い。ぱっと浮かんだ言葉を何気なしに口ずさむ。
「林檎や林檎、いつまで鍋に入っとる」
 鍋をかき混ぜ、火を止めて。
「パイのドレスを着込んだら、白いお皿で舞踏会」
 林檎と少しのスパイス。甘酸っぱい香りに胸も高鳴る。
「薫る紅茶のお手を取り……くるりくるりと踊りましょ」
 スカートの裾をひるがえし、ダンスを踊るように軽やかに。
 オーブンにパイを並べたところで、はたと気づく。慌てて入口へと視線を向けた。
「……だれも聞いてませんよね」
 つい興が乗ってしまった。
 気を取り直してパンケーキの準備へと取り掛かる。
 再び生地を作ると、フライパンに流し込む。
 巧みにフライパンを操り、何枚ものパンケーキを焼き上げた。
 森で摘んできたミントに、バターや蜂蜜。余ったコンポートも添えて。
「こうすればパンケーキも美味しそうですよね」
 一気に華やかになった皿に、ベイキは笑みをこぼした。
 ちょうどパイも焼きあがったようだ。
 と、その時。
「この甘酸っぱくて芳醇な香りは……干しブドウ!」
 茶色の毛玉……もとい、コルネが飛び込んできた。彼女のよく効く鼻はアップルパイに乗せられた干しブドウの香りを的確にかぎ分けたらしい。
「よく気がつきましたね、先生」
「干しブドウあるところにアタシあり!」
 それは……すごいのだろうか。呆れ半分、驚き半分。ベイキはパイの端を切り分けると、コルネへと差し出した。
「よかったら味見をしていただけませんか?」
「任せて!!」
 食い気味の返答に苦笑しながら、ベイキは窓の外にも視線を向ける。
 庭では黒髪の少女がせっせと作業をしていた。
 ベイキはその背中にも声をかける。
「もしよろしければお茶にしませんか?」

「ステージはよさげだから、ザコちゃんはこっちやろっかな」
 装飾の施されたステージを一瞥し、チョウザはテーブルに視線を落とす。
 大ぶりのリリフラワーと、それを引き立てる小さな花々。ベイキが先ほど摘んできたものが活けられていた。
「どーせなら個性あったほうが楽しいじゃん。げいじゅつ、ってそーいうもんでしょ?」
 まあよく知らないんだけどね。内心で付け足し、作業を始める。
 まずは木の枝を焚火を組むように積み上げ、花瓶を囲う枠を作る。
「こっちは石ー」
 別のテーブルでは石を積み上げ、同じように枠を作る。
 花瓶をすっぽりと収めると、森で摘んできた草や葉をアクセントに差し込んでオリジナル花瓶が完成。
 息を吸い込むと感じる森の匂い。
 チョウザは自分の髪にちょん、と触れる。懐かしい姿が淡く脳裏に浮かんで、消えた。
 

 温かな日差しが温室に差し込む午後。
「皆さまようこそいらっしゃいました。コンサートの開幕です」
 プラムのそんな言葉でコンサートが始まった。
 最初に出てきた演者。その姿に観客の目が点になる。
 なんだあのバケツ。
 妙な顔が描かれたバケツを被った青年は、これまた妙なステップを踏みながらステージに立つ。
「今日はあらゆる物をオレが消してみせましょう。ま、前座ってヤツ?」
 つーわけで、と司会のプラムに手を差し出す。
「なんか消すから貸せ」
「雑だなオイ」
 思わずメイド演技を解いてツッコミを入れたプラムだが、メイド服のカチューシャを手に乗せた。
 ミサオはその上から布をかぶせると、
「それでは、皆さま御照覧。3、2、1……」
 パチンと指を鳴らす。取り去った布の下にはなにもなかった。
 おぉ、と観客席が湧く。掴みは上々だ。
 そのあともミサオは何人かの私物を借りては手品を披露した。
 もちろん、消したものは演目が終わった後に持ち主に返したのだが。
「俺の戻ってきてないんだけど」
 袖へと下がっていく背中に、プラムがぼそりとつぶやいた。(ちなみにコンサート終了後に返ってきた)
 
 次に現れたのは【ドリス・ホワイトベル】。
 ステージの中央までやってくると、ぺこりとお辞儀。
 そして、
「し、白の天鵝絨(ホワイトヴェルベット)! ドリス・ホワイトベル見参!」
 これには観客席も一瞬固まったが、すぐに温かな拍手で彼女を迎え入れた。
 ピアノと歌はドリスが自信を持って披露できる特技だった。
 それでも彼女の手は震え、表情は強張っている。
 失敗したらどうしよう。なんて思われるのだろう。
 不安は尽きない。
 でも頑張ってみたい。そう決めたのだ。
「ねえ、ミルク。見守っててね」
『僕が、ドリスを見守ってるからミスなんて気にしないで頑張ってね!』
 頭の上にちょこんと座った白猫にエールをもらい、ドリスは鍵盤に指を乗せた。
 小さな手が紡ぐのは激しいジャズ。淀みのない動きが観客を魅了した。
 次の曲は一転して穏やかなバラード。ドリスの可憐な歌声は温室中に響いた。
 うっとりとして目を閉じ、体を揺らす観客たち。
 そんな姿を見て、緊張気味だったドリスの表情も和らいでいった。
 一通り演奏したドリスは客席に声をかけた。
「皆はなにが聞きたいかしら? リクエストも受け付けるわね!」
 ポップス、ジャズ、クラシック。
 様々なリクエストが客席から上がる。
 その1つ1つにドリスは笑顔を浮かべ、丁寧に応えていった。
 最後の曲を終え、盛大な拍手と共にステージを降りた。
 この盛り上がり、無事に成功できたようだ。
「お疲れ様でした」
 ふぅ、と息を吐くドリスの横からすっと飲み物とお菓子が差し出された。
「セイレンさん」
「とても素晴らしい演奏でした。いい演奏をありがとうございます」
 その言葉にドリスは思わずセイレンの方をまじまじと見てしまった。
「……セイレンさんは、あたしの演奏が良いって思う?」
「ええ、とても。ドリス様は楽しそうに演奏をされます。それを見て、私たち観客も楽しくなる。それは貴重な才能です。……人を楽しませ、喜ばせることができる。ドリス様はいい演奏家になれると思いますよ」
 ぽっ、と暖かい物が宿った気がした。
 幼い頃、褒められた唯一の記憶。それと同じ暖かなもの。
(他にもあったんだ……)
 ドリスはそっと、温もりを胸に仕舞った。

 白いシャツに細身のパンツ。まとう衣装はシンプルながらも、華やかな立ち振る舞いが観客の目を惹きつける。
 シキアは優雅に一礼すると愛用の笛を構えた。
 穏やか、それでいて切なさを呼び起こすような音色。ほう、とため息が客席から漏れた。
 1曲を終えるとシキアは楽器を置いた。
 客席がにわかにざわめく。
 シキアはにこりと笑うと、跳んだ。
 軽やかに鳴る靴の音。鮮やかな舞は、まるでにぎやかな祭りのようで。
 たった1人のステージなのに、目を閉じればたくさんの人が笑っている。そんな景色が思い浮かぶ。
(主人は俺と同じ、わりと好みは幅広いみたいだし、こういうのもアリだよね)
 みんなで楽しめるステージを。それがシキアの実現したいもの。
「さあみんな! 一緒に楽しもう!」
 シキアの呼びかけに、まずは学園生が動いた。
 ドリスがピアノの元へ。シキアのダンスに合わせて音を奏でる。
 次いで、【ムーシュカ・スターリナ】もステージへ上がる。
 アイドルを目指して学園へとやってきた彼女は、待ち望んだ初陣に心を躍らせる。
「シキア、私も一緒に歌わせて!」
 ムーシュカは鼻歌で旋律を紡いだ。それを聞いてシキアも気がつく。
「トラディショナル音楽……これなら」
「うん! みんな馴染みがあるし、一緒に楽しめると思うんだ!」
 頷きあうと、2人は肩を並べ、客席へと手を差し伸べる。
「今日はハレの日! みんなで一緒に楽しもう!」
「飛び入りだって大歓迎! 手拍子でもダンスでも、何ならセッションでもいいよ!」
 導かれるように何人かが席を立つ。
 少し緊張気味に歌う貴婦人。
 楽し気にステップを踏む紳士。
 目をキラキラと輝かせ手拍子を鳴らす子供たち。
 会場が1つになって音楽が奏でられていく。
 ここでシキアはミサオと共に観賞していたプラムの腕を引っ張った。
「ほら、プラムも参加する!」
「は!? 俺は音楽はそんなに――」
「なに言ってるのさ。前にスぺオケで合奏しただろ? いけるいける」
「あれは精霊楽器だろ!」
 なんてプラムは首を振るが、
「そうよ! プラムさんもまた一緒に演奏しましょう」
 ドリスにも誘われ腹をくくった。
「こうなりゃミサオ、お前も道連れだ」
「おっと、こっちに飛び火する? 仕方ないねぇ」
 ミサオもやれやれと席を立つ。
 ムーシュカはアイドルらしいキラキラの笑顔を浮かべ、さらに客席へと呼びかけた。
「手元に楽器があるのなら、是非とも合わせて弾いて欲しいな! 歌いたいのならその場で口ずさんで、身体を動かしたくなったらここまで上がって踊ろうよ! 手拍子や足踏みだけでも、この音に乗ればきっと楽しいよ!」
 子供の手を取り、ステージへと引っ張り上げる。視線を合わせて口ずさめば、子供たちは笑顔になって合唱を始めた。
「ほら一緒に踊ろう! セイレンさんも今日は主役なんだから!」
「え!?」
 次いでシキアはセイレンをステージに呼び込むと、ステップを踏んでみせた。
 セイレンは見様見真似でそれを真似る。
 コツを掴んだのか、徐々に足取りも軽やかになっていった。
 ムーシュカは隣で踊りながらセイレンに語りかけた。
「きっとね、あなたのご主人が生きてれば、私とは良い友達になれたと思うんだ。だって、あなたとこの風景を見てれば、私と同じで音楽と人がとことんまで好きな人だったんだなあっていうのがすごくよく分かるもん!」
「ええ、きっとそうですね。主人も今頃空の上で悔しい思いをしていますよ」
 冗談交じりにセイレンが言うと、つられたようにみんなが笑った。
 ベイキもチョウザもそれぞれ手伝いをしながら会場の端からこの光景を見守っていた。
 みんなで楽しいステージを。二人の発表は大成功だった。


「今日のお客様は、なんというか、色々な方がいらっしゃいますね」
 ステージから降りてきたセイレンに、フィリンは飲み物を差し出しながらそう言った。
 ステージの上ではまだ、種族も性別も年齢もばらばらの人々が一つの音楽を奏でていた。
「すべて主人のご友人やその子孫の皆様です。もう何百年も前の話ですから、すでに亡くなっている方も多くいらっしゃいますからね」
 フィリンはあの、と切り出す。
「ご主人のこと、もっと聞いていいですか? よければセイレン様の事も」
「ええ、それは構いませんが……」
 少し不思議そうに首を傾げたセイレンにフィリンはそっと付け足す。
「私も……三百はないですけど、忘れられない人がいて……忘れられないために、同じよう振舞ってるから」
「……そうでしたか」
 セイレンは目を細めると、口を開いた。
 この世に『生み出されて』、主人に拾われたこと。名前を付けてもらったこと。楽器を教えてくれたこと。
 長い記憶を辿るようにセイレンは言葉をつなぐ。
 フィリンは屋敷の羊皮紙を1枚借りると、それを一つも漏らすことなく書き留めていった。
 彼の主人を、屋敷を、セイレンを忘れることの無いように。彼らの生きた証をなにか残せるように。
 最後まで話し終え、セイレンはフィリンに頭を下げた。
「ありがとうございます。私の話を聞いてくださって。こうやって誰かに自分を覚えていてもらえる。こんなに幸せなことはありません」
 彼の頬に流れた物をそっと見ないふりをして、フィリンはその場を後にした。
 コンサートは終幕を迎えていた。


 街はずれの古びた屋敷はただ静かに佇んでいる。
 かつては賑わったこの家も、今はもう時を止めていた。
 アタシは時折思い出して、生徒のみんなと柵越しに屋敷の庭を覗く。
 すると、真っ白な花が力強く咲いているのが見える。あの時、一緒に来た子が植えてくれたものだ。
 いつも変わらないその鮮やかさ。
 アタシはそこに『彼ら』の姿を見るのだ。



課題評価
課題経験:52
課題報酬:1600
【新歓】最後のコンサート
執筆:海無鈴河 GM


《【新歓】最後のコンサート》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 1) 2020-04-27 22:56:54
勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしく。

最近、カルマの方に縁が続くわね…分担は『1.花の調達』で考えているけど、バランスによっては移動可能よ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 2) 2020-04-28 08:16:39
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
森には魔物が居るようですし、花の調達にはある程度人を充てた方がいいでしょうか?
それに、各テーブルに飾る花でしたら、結構な量になりそうですし。

個人的には、セイレンさんのお手伝いも考えてます。

《ゆうがく2年生》 ドリス・ホワイトベル (No 3) 2020-04-28 20:12:25
(扉からひょこっと顔を出しながら)

芸能・芸術コースのドリス・ホワイトベルよ!
出来たらコンサート参加出来たら良いなぁって参加してみたわ!
宜しくね!(嬉しそうにニコニコしながら)


《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 4) 2020-04-28 20:25:55
芸能・芸術コースのシキア・エラルドだよ、今回もみんなよろしくね
俺?勿論コンサートに参加するつもりだよ!
今のところ大丈夫そうだけど、もし人手がほしそうなら言ってね

《不屈愛の雅竜天子》 ミサオ・ミサオ (No 5) 2020-04-28 21:13:03
(チリチリ頭で登場)
魔王・覇王コースのミサオ・ミサオだぜ。
オレぁ、どれでもいけるな。
みんなが行くところを見て判断するぜ。

《新進気鋭》 ムーシュカ・スターリナ (No 6) 2020-04-28 23:25:37
滑り込み! 芸能・芸術コース、ムーシュカだよっ!
せっかくだからコンサートの演者をやりたいなって思ってるんだけど、今のところの人数配分なら問題なくいけそうかな?
ここからあんまりにも偏るようなら、ほかの手伝いに回る事も考えておくね!

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 7) 2020-04-29 00:18:40
シキアいるし賑やかし要員で参加しぴっぴとか思ったらチリサオ君じゃないですか。何してるんですか?

んー俺もラップ詠唱なら出来るけど、こういう場所でやるもんじゃねえしな。
出演者はやっぱその道の華やかなプロにお任せ~ってことで、俺は裏方でよろしくてよ。

『花の調達』係でもいいぜ、戦闘は得意だしな。
『設営』もほら、この肉体を見れば向いてそうってわかんだろ。
残念ながらこれも請け負えるぜ。

ただし、『菓子作り』は勘弁だ。宗教上の理由で料理は食う専門なんだ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 8) 2020-04-29 01:25:29
じゃあ、私は花の調達とセイレンさんのお手伝いを。
料理はできますが、お菓子って材料量るのがめんどくs……げふんげふん。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 9) 2020-04-29 01:47:28
まぁ、はい。
正直に言うと、教会でノイローゼ&ゲシュタルト崩壊になりそうなくらいクッキー作らされたんで、クッキーならレシピ無くても作れるんだ。刷り込みって怖いネ。

だけど、結局茶会映えする様なジャムでキラキラしたやつとか、凝ったのは作れねーからマジで戦力外だと思うぜ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 10) 2020-05-01 05:46:55
おっと、ドタバタしてて顔出しに間が空いてごめんなさい。
まあ、お茶会映えするのは私も得意じゃないんで、パンケーキとかアップルパイ辺りでよければやっとくです。
アップルパイには干し葡萄トッピングして、引率ホイホイにしておこう。

《不屈愛の雅竜天子》 ミサオ・ミサオ (No 11) 2020-05-01 21:14:50
プラムがいたから茶化しに来た!

といいつつ、考えた末、
出演者になって手品したり、花の調達の手伝いするくらいだねぇ。
お嬢に付き合わせてもらおうかね。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 12) 2020-05-01 21:43:48
ま、それぞれやりたいことあるみたいだし、得意分野で楽しくやろうじゃないの。
ってことで、俺は今投げたプランで固定だ。

ほら、冥途服着てるし?
馴染んでるし?
クッキー製造機と化しますよオレァ

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 13) 2020-05-01 22:19:28
…というのは冗談で、演目を回してく司会者と会場設営だな。
クッキーも作るけど。

因みにメイドはガチだ。
よろしく。

《ゆうがく2年生》 ドリス・ホワイトベル (No 14) 2020-05-01 22:36:21
プラン投稿ー!

えへへ、今回はコンサートだものね!
歌ってみたり、ピアノ弾いたりしてるわ!

『僕も忘れないでにゃー!(腹話術)』

ふふ、よろしくね!