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自称歌姫の苦悩


ストーリー Story

 ……アルチェのサビア・ビーチにセインディーネが出た……。
 そんな『勇者活動』が、フルゥールム・スクエアにて行われる事になった。
 担当の係が概要を、学生達に説明している。

「サビア・ビーチは観光向けの一般ビーチなのだが、毎晩夕暮れになると、セインディーネが1体と、ウィルオー2体が現れるらしい。ウィルオーは鬼火や人魂のような類でウロチョロする以外は無害だが、幻惑を使い不運のステータス異常をもたらすことがある。セインディーネは歌声で水を操り、人肉を好む見た目は美女の魔物だ。当然、人肉を狙って全力攻撃を行うので気をつけてほしい。いずれ、アルチェのミルトニア家が苦慮しているようでな。何しろ、観光業で持っている国だから、梅雨の時期にセインディーネが出てしまったのは夏に大変な被害を予測されるため、早めに退治して欲しいということだ。報酬はそこそこだが、帰りに、観光地区で羽根を伸ばすぐらいは大目に見てもよい。学生達自身のためにも頑張ってほしい」

 ……そういう事が予測されるのだった。
「ちなみにこのセインディーネは、どういう訳か、物凄い音痴でな。美しい歌声というのは本人談なので、惹きつけがきくとはあんまり考えられないのだ」
 そこで担当がそう言った。
「その、物凄い音痴を矯正してやれば、人肉を喰わせなくても、多少は大人しくして海に帰る……かもしれない」


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2020-06-18

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2020-06-28

登場人物 4/8 Characters
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《新入生》シェイミル・ウッズ
 エリアル Lv10 / 芸能・芸術 Rank 1
「うちは、シェイミル・ウッズ。村の外は初めて来たから教えて欲しいんだよ」 「縫い物なら任せてね」 「一緒に音楽はどう??」 【容姿】 体型→やや小さい 髪 →若緑/やや癖毛/腰までの長さ 瞳 →深緑/ぱっちり 服装→ノースリーブワンピース、グラディエーターサンダル、ゼラニウムの花飾り 【趣味】 歌、演奏、裁縫、お絵描き 【性格】 楽しいこと好き、世間知らず
《新入生》オリヴィア・レヴィ
 エリアル Lv5 / 芸能・芸術 Rank 1
学園中を踊りながら骨組みのみのヴァイオリンを奏でながら踊る少女は オリヴィアと名乗った。 踊ることや楽しいことが好きで 学園の広場ではヴァイオリンを弾きながら踊る姿が見られる事だろう。 ※※※ただし声楽に関しては音痴である。※※※ そんなことより、オリヴィアの歌が聞きたい。

解説 Explan

セインディーネ1体、ウィルオー2体との戦闘になります。

セインディーネは、最初は歌声でパーティを惹きつけようとしますが、それが空振りに終わると、沖合から人肉を狙って突進してきます。

その間、ウィルオーは、イタズラを引っかけようと幻覚を使いその周辺を漂っていますが、無視しても構いませんし、退治しても構いません。

サビア・ビーチは、現在危険なので立ち入り禁止になっています。そのため、ミルトニア家はしょっぱい思いをしているようです。

セインディーネを無事に倒してしまったら、観光地区にて、打ち上げで遊泳を楽しんだり、飲食を楽しんだりしても、大目に見ると仰ってます。こちらはおまけですのでスルーして下さっても構いません。パーティ内の交流などにお使い下さい。

●セインディーネが凄い音痴だということが、むしろ近隣住民の大迷惑になっています。

●凄い音痴なのですがフルボリュームで歌ってます。観光客にとっても大迷惑が見込まれています。

●寂しがりのウィルオーを連れて居るのはそのへんがネックなのかもしれません。仲いいかも。

●音痴を矯正する特訓を行うと、好感度が上がるようですが、大変なツンデレも見込まれます。

●音痴が矯正されるか、音痴でも矯正が出来そうだと思えると、嬉しそうに沖合のセインディーネ仲間の方に帰って行くのではないか……という話です。
(ミルトニア邸談)

寂しがり屋の人魚を成仏させるか、友達(見込み)になって帰りましょう。


作者コメント Comment
梅雨の時期の沖合にセイレーンが……? だけど、大変な音痴でありますようで。
ホラーよりもコメディがお好きな人向けの冒険になります。


個人成績表 Report
プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◼︎音痴な奴にはラップさせとく風潮

【事前調査/魔物学/語学】でセインディーネの言語を習得or逆に人語を覚えさせる。
仁和のバケツを被せて【歌唱/ポエム/早口/挑発/会話術/人身掌握学/心理学/肉体言語】(通称ラップ技能)で音痴の矯正とリリック、ライム、フロウ技術を叩き込む。

レッスン中に聞き訳がない場合は【調理道具一式】をチラつかせ「Death or RAP?」で脅しやらざるを得ない状況に追い込む。

■エンカウント時の戦闘

【プチヒド/マド】で鎮静化させ、【リーラブ】で回復して特訓開始。

もしくはハチャメチャにDisる。
「歌唱命セインディーネ 音痴で話にならないね 俺のフロウ 参考にしたらどう?」的な感じで。笑

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
音痴ねぇ・・・
元の世界でバケツ被って歌うと自分の歌ってる音程が解りやすくなるから音痴改善の練習に・・・って聞いたことあるから試してもらおうか

まずは話が通じるか語学、魔物学、会話術、精神分析、説得でコミュニケーション取れるか試してみる
取れないで襲ってくるようならかわいそうだが退治する

まずはリズム感のズレの修正
音痴の多くはリズム感のズレという話も聞いたことがあるしな
曲を吹くので皆でリズムに合わせて皆で手拍子
次にバケツをかぶって歌ってもらう
その際、凍蝶で音階を解りやすく吹き音階を理解、自身の発声量の二点を覚えてもらう
アレだ
どの音階の時に音階でドー♪ってやるヤツ
大体これでなんとかなるはずだ

シェイミル・ウッズ 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
いざ、音痴なセインディーネを助けよう!
戦わなくていいなら、戦わない方がいいよね。
音痴を治すためにバケツを被ったままラップをするんだよ。
セインディーネが戸惑っていたら、自分が被ってやり方教えるよ。
音痴って言っちゃうと傷ついちゃうから、「もっと素敵にならない?」って聞いみるんだよ。
【音楽】【歌唱】でラップ指導をお手伝いだよ。
実演の時は、ラベイカで音楽担当になるよ。
無事に帰って貰えたら成功!お友達ゲットかな?

もし戦闘になった場合は、【演奏】を使用し、ラベイカの効果を付与するよ。
一歩下がってサポートするよ。
敵の位置等をしっかり見て、味方の皆様に報告だよ。

終わったら…皆に一緒に遊べないか聞きたいな。

オリヴィア・レヴィ 個人成績:

獲得経験:40 = 40全体 + 0個別
獲得報酬:800 = 800全体 + 0個別
獲得友情:300
獲得努力:50
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---

リザルト Result


 青い空、白い雲、広い海!
 フトゥールム・スクエアの勇者活動で訪れた4人は、サビア・ビーチの開放的な美しさに目を奪われた。
 海の風――。
 潮の匂い――。
 夏の豊かな海に響き渡る、セインディーネの歌声は――。
「ヴォォ! オオオオオ! グェエエ! グゲエエ! エエエエエ~~~♪」
 割れ鐘を百回連続バズーカで撥ね上げたような素晴らしき音程のシャウト!
「う~~ん、こうでなくっちゃ」
 それを聞いた【プラム・アーヴィング】はいっそ清々しい笑顔でその絵に描いたような、否、音楽にしたような音痴に耳を澄まして、やがて頬を引きつらせた。音痴が一周して素晴らしすぎる。
 同じく【仁和・貴人】、【シェイミル・ウッズ】、【オリヴィア・レヴィ】も、一体どこでどうしたらそんな素晴らしすぎる音程になってしまうのかと、耳を澄ましては顔を引きつらせ、具合の悪そうな笑顔になっていた。本当にそんな効果が出てくるような音痴っぷりであった。
 しかし、セインディーネの周囲には、イキの良さそうなウィル・オーが楽しそうに飛び交って、ある意味、彼女を応援しているようにも見えた。
「それでは作戦開始といこうか」
 貴人が重々しい口調で言った。その表情は仮面のためにうかがいしれない。
「いざ、音痴なセインディーネを助けよう! 戦わなくていいなら、戦わない方がいいよね」
 シェイミルも元気よく言い切った。
 その隣でオリヴィアも頷いている。
 その間も、セインディーネは凄い調子っぱずれな音程で何事か叫び歌っている。
「ヴォォー! グギャア! グゲゲゲっ! ボゲェエエエエエエ~~♪」
 それに合わせて、不思議な回転をしているウィル・オー二匹。
 沖合から砂浜まで響き渡っているのだから大したものだ。これでは、封鎖されても仕方がない。
 呆れながらも、まずはプラムが、波打ち際に駆け寄って、セインディーネに向かって声を張り上げた。
「歌唱命セインディーネ 音痴で話にならないね 俺のフロウ 参考にしたらどう?」
 弾けたラップ調にハチャメチャにdisりまくるプラムであった。
 セインディーネは沖合からきっとした表情でプラムを向き直った。
「ブギャアア! ボォオオオオエエエエエエエエ!!」
 さっきとは違う調子で怒りをこめて歌っている……ようである。到底、歌とは言いたくないのだが。
「うーん、あれはなんでしょう?」
 シェイミルが首を傾げている。
「恐らく、歌で張り合っているつもりなんだろうね……全く、歌になってない歌というのがこんなに罪深いとは……」
 貴人はただただ嘆いた。
「ちょっと試して見ようか。セインディーネに、語学が通じるといいんだが」
 そういう訳で、貴人はまずは話が通じるか語学、魔物学、会話術、精神分析、説得でコミュニケーション取れるかどうか試みた。
 同時進行で、プラムが弾けるラップで煽り続けた。
 小一時間後――。
 そこには。
 頭にバケツかぶって仲良く砂浜に座っているセインディーネとオリヴィアがいた。
 しかもその周辺に仲良くふよふよ漂うウィル・オー。
「もっと素敵にならない? 音痴を治すためにバケツを被ったままラップをするんだよ」
 シェイミルがにっこり笑ってそう言って、おもむろに自分もバケツをかぶってセインディーネの反対側の隣に座った。
(本当は、一年越しのセインディーネ肉おかわりが来たかと、一応調理道具持ってきたけど矯正する方向らしいのでRAP教えてみよ的な?)
 プラムは内心、最初、依頼を聞いた時の話を思い出しながらバケツ三人組を見つめた。
 バケツの下でどうやら上機嫌ににこにこ笑っているらしいセインディーネを見て何とも言えない気持ちに襲われる。
 肉おかわりにバケツラップ教えるのか、そうか……。
「うん、まず一回、バケツを外してもらおうか」
 貴人はそう言った。
 すると、素直にバケツ三人組はバケツを取って砂の上に置いた。
 貴人は、そのうち一つを自分の手前に持って来た。ちなみにブリキのバケツである。
「まずはリズム感のズレを修正する。音痴の多くはリズム感のズレという話を聞いた事がある。これから曲を吹くが、その前に、メトロノームのかわりにこれで調子を取るから聞いてくれ」
 貴人は、砂浜で拾った木の棒で、ブリキのバケツを、調子を取って叩いてメトロノームがわりにした。
 トン、トン、トン、トン。
「大体この調子で、曲を吹くから、皆でリズムに合わせて手拍子してみて」
 それから貴人は凍蝶を構えた。
 簡単なメロディーを先程のリズムで吹き流して見る。
 音痴のオリヴィアはリズムの整った曲の流れに感心した眼差しを向ける。曲が終わると拍手をした。
 一方、セインディーネの方は明らかにむすっとした無表情になってしまった。そのことに気がついたプラムとシェイミルの視線を受けると、プイッと横を向いてしまった。
 その途端に、プラムが思い切りよくセインディーネのバケツを頭の上にひっかぶせた。
「グギャギャギャギャ……!!」
「音痴を直したいんだろ! 今から手拍子一緒に取ってやるから、素直にやれ!!」
「グ……」
 そんな一幕を挟んだところで、貴人がまた同じ曲を凍蝶で吹く。それに対して、まずはシェイミルとプラムが、促されてオリヴィアがメトロノームの真似をして、手拍子を取り始めた。
 最初は反抗的だったセインディーネだが、やはりどうしても、音痴が気になるらしく、バケツを被ったまんま、ぺちぺちと手拍子を取り始めた。
「うん、だいぶマシになってきたな。それじゃ、みんな、バケツをかぶってもらおうか」
 15分ほども経っただろうか。セインディーネとオリヴィアが、どうにか手拍子のコツを覚えた辺りで貴人がそう言った。
 仕方なさそうにプラムが、それからシェイミルが、バケツを頭にかぶる。
「じゃあ、これから、ドレミファのドの音を出すから、ドー♪って発声してみて。発声量に気をつけて」
 そういう訳で、凍蝶でドー♪ と吹き鳴らす貴人。
「グギャー! ……ギャッ!!」
 早速、悲惨な事故が起こった。
 バケツの中で、先程の大音声割れ鐘ボイスを流したセインディーネ。バケツの反響でもんどりうって、その場に倒れた。
「うわわっ」
 バケツがガンガラ鳴った音で、何が起こったか察したシェイミルがバケツを外してなんとかセインディーネを起こそうとする。
 心配そうにふよふよ漂うウィル・オーを連れて、セインディーネは何とか身を起こした。
「だから言ったのに……」
 愕然としてしまう貴人。
(本当に自分のボリュームが分かってなかったんだね)
「ねえ、セインディーネさんって、グギャー! ってしか歌えないの? プラムさんの真似をして、ラップとかしてみたら、今のような事故は起こらないんじゃないかな」
 シェイミルが、ふてくされてバケツかぶったまま硬直しているセインディーネにそう言った。
「そうよ。ラップしてくるタイプのセインディーネなんて観光資源に最適じゃない。ちょっと、サビア・ビーチに貢献してみよう的な流れはないのかしら?」
 プラムがわざとらしいオネエ口調で畳みかけると、セインディーネはふてくされるのをやめて、バケツごと首を傾げた。
「ラ、ラッ……プ?」
「そう、さっき、アタシが歌っていたあれ。あんたもあれを目指してやってみなさいよ。大声で叫ぶだけが歌じゃないでしょ?」
「そうだよ。歌って、フルボリュームで怒鳴るだけじゃないんだよ」
 プラムに続いてシェイミルがそう教えてやった。
 さらに、貴人が凍蝶で、ラップ調の音楽をテンポよく吹き流すと、セインディーネはグギャアとも言わずに聞いていた。
(バケツの中で聞こえてるのかしら)
 プラムが逆に心配になってくる。
「青い海には白い雲、海の家には熱い焼きそば、焼きそばよりも香ばしい、俺のこんがりハート受け止めろ♪ year!」
 意味があるのかないのか分からないような歌詞を、その場のノリで歌い上げて、プラムはバケツかぶって立ち上がった。
 そのまま、調子のいいラップを何度も流し続ける。
「あ、青い海……青い雲っ」
 それに対して、セインディーネは訳の分からない発音で訳の分からない事を言い、バケツかぶったまま立ち上がった。
「青い雲ってなんでしょう?」
 シェイミルが首を傾げると、貴人とオリヴィアは首を左右に振る。
「セインディーネには雲が青く見えるのかもしれないし」
 一方、プラムは、時折、セインディーネのバケツをとんとん叩きながらラップを一方的に繰り返している。
「あ、青い雲には、鰯……雲っ♪ 鰯の海流、鰯の大群……おさかな~♪」
 突如、調子っぱずれながらも、セインディーネがそんな歌詞を歌い始めた。
 歌っているというには、ちょっと、がさばったような音程と曲調だったが、少なくともグギャアッッボェエエエエ!! よりはよっぽどマシである。
「リズムがズレてる!」
「でも、いいセン、いってるよ!」
「頑張ってください!」
 そこですかさず三人が声をかけて、歌い始めたセインディーネを励ました。
 セインディーネは、それを聞いて、びっくりしたように体を強張らせたが、他の三人はそれをスルーして励まし続けた。
「おさかな~おさかな~♪ セインディーネは風が好き、海も好きなら波も好き、セインディーネの好きなもの……人肉♪」
 思わずぞっとしてしまう三人だった。
 だが、セインディーネは、目論見通り、バケツをかぶっているため自分の声がよく聞こえる状態であるらしい。
 音程は発声量はがさつそのものであったが、先程教えた通りにリズムはかなりマシになっていて、何とか聞きとれるレベルのラップになってきた。
「人肉喰うならセインディーネ肉食うぞっ! やめろくださいDeathっ!」
「他種族喰うのはやめましょう、他種族には友好築きましょうっ!」
 プラムとシェイミルが、ラップ調にそう歌いかける。
「お、おさかな~♪……?」
 貴人はラップに合わせて凍蝶を吹いている。
 しかし、どうやら発声の仕方がよくなかたのだろう。
 セインディーネはやがて激しく咳き込んでその場にうずくまってしまった。
「おい、喉を酷使しすぎたんじゃないのか?」
 素に戻ったプラムが思わずそう声をかける。
「それじゃ、休憩を取って、リズムをもうちょっと上げる作戦に切り替えるか」
 そういう訳で、休憩を取りながら、みんなでバケツを脱いで砂浜に並べ、適当に木の棒でコンコン叩きながら雑談タイムとなった。
 雑談では、シェイミルが仲間やセインディーネに、様々な質問をしたり、話題を振って、周囲を和ませた。
 オリヴィアはセインディーネに話しかけられて、音痴の悩みについて話し合っていた。
「それじゃあ、本格的に、メトロノームの訓練をするぞ。また、笛を吹くから、みんなで、リズムを取ってバケツを叩いてみてくれ」
 貴人がそう言って立ち上がった。
 喉の調子が大分戻って来たセインディーネも、最初の頃のようなふてくされた態度はやめて、真顔で木の棒を構えている。
 凍蝶で簡単なメロディーを流すと、プラムは完璧に、一部アレンジを加えながら木の棒でバケツを叩いてみせる。
 シェイミルもまず完璧だった。
 セインディーネは、最初の頃に比べれば、大分まともになったものの、それでもやはり時々リズムがズレる。
「落ち着いてメロディーをよく聴いて、頑張って。大丈夫、出来てるから」
「そうそう。甘えないで頑張れ。ふてくされてないで自信もて!」
「うーん。聞き取りがよく出来てないのかな。音をよく聞けば、大丈夫だよ」
 貴人、プラム、シェイミルが順繰りにそう声をかけて、音痴のセインディーネと人間を見守る。
 セインディーネは一生懸命、木の棒でリズムを取っている。
 音楽に国境はないというが、まさか、魔物と人間の境まで越えるとは……。
 恐るべし、ラップ。そしてバケツ。
 メトロノーム作戦を一通りこなすと、プラムは全員で立つように言った。
「それじゃ、早速ラップの続きだ。根性入れていくぞ!」
「うん、まあ。音痴を直すための特訓だからな、リズムだけじゃないぞ、音楽は」
 貴人がそう受け継いだ。
 シェイミルとオリヴィアは顔を引き締め、セインディーネもやたらに真剣な顔になっている。
「音痴は音痴、音楽は音楽、それでもやっぱり歌は好き♪」
 調子を外さないようにプラムが歌い上げると、セインディーネはそれに続いてバケツをかぶりながら木の棒を振り回し、全身でリズムを取っている。
「音痴……は音痴、音楽は音楽っ、それで~もやっぱ~り、歌が……ッ」
「甘いッ!! なんでそこで、リズムがずれて変なメロディーが入るのか!?」
 シェイミルが突っ込むと、セインディーネは、一瞬、怯んだように沈黙した。
 それでも、やはり根性が入っているのか、懸命に歌い始める。
「音痴……でも、音楽……歌、好きは好きっ♪」
「いいとこいってるよ! 大分、音程合ってきたから、頑張れー!!」
 貴人が凍蝶から口を離してそう声をかけた。
 そんなこんなで、五人は海辺での特訓を夕暮れまで続けた。
 本当に骨が折れたが、やっとの思いで、セインディーネの超音痴を、ただの音痴ぐらいまでには矯正することに成功したのであった。
 夕暮れが過ぎると、流石に五人は疲れ切り、ウィル・オーだけが元気に空間を漂っていた。まるで大きめの蛍が海辺に風情を出しているようで、セインディーネまでが微笑んでいる。
「セインディーネは、もう、人を襲ったり、変なメロディーで観光客をあらしたりしないよな?」
 プラムがそう尋ねると、人肉好きのはずのセインディーネは、多少困惑の表情は見せたが、それでもやはり、コクンと頷いた。
 この個体はかなり特殊だ。
 これまで発見されたセインディーネは人語は理解すれど、その上で人間を餌として捉えているため、わかり合う事は決してしなかった。
 いくらわかり合えた(?)といえど、アルチェの人々に食人を魔物と認識しているセインディーネと、友達になることは可能であろうか?
 微妙な空気が流れる中、セインディーネは、ラップで何か歌い始めた。
 不思議な感じのラップを流しながら、彼女は海へ飛び込んだ。ウィル・オーを連れて。
 そのまま優雅な動きで沖の方まで泳いでいき、一回だけ振り返って、大きく学生達へ手を振った。笑顔だった。
 セインディーネと別れて、生徒達はアルチェの観光地区へ繰り出した。任務を成功させた事で満たされた気持ちで、観光を楽しみ、祝杯をあげたのであった。



課題評価
課題経験:40
課題報酬:800
自称歌姫の苦悩
執筆:夏樹 GM


《自称歌姫の苦悩》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 1) 2020-06-12 19:42:45
魚人肉のおかわり一丁ってとこか?
ンー、音痴ならラップさせとけ感あるがな

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 2) 2020-06-14 04:31:52
音痴を治す訓練としてバケツをかぶって歌うってのがあったな・・・

《新入生》 シェイミル・ウッズ (No 3) 2020-06-14 12:21:50
つまり、バケツを被ったままラップをすればいいんだね。
大変そうだね…

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 4) 2020-06-15 00:13:32
>仁和
>シェイミル

天才の発想。
もうそれしか考えられないな。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 5) 2020-06-15 06:44:54
奇抜だな・・・

実際にやるとしたらバケツは俺が準備しよう。
あお、笛でも吹いてるとするか。

《新入生》 シェイミル・ウッズ (No 6) 2020-06-15 20:09:15
わわっ、遠ちゃったよ。
えへへ、嬉しいな〜

バケツはお言葉に甘えちゃうんだよ。
うちは…歌と楽器できるよ!!
入りたてでも芸能・芸術コースだからね、得意だよ!(えっへん)

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 7) 2020-06-15 20:46:37
ちなみにセインディーネって言語あるの?
語学で補える...?コレ

《新入生》 オリヴィア・レヴィ (No 8) 2020-06-16 21:31:34
あるんじゃないかなぁ…とと、挨拶が遅くなっちゃった。
芸能・芸術コースの新入生オリヴィアです!よろしくお願いします!

あ、私も歌とヴァイオリン限定だけど楽器もできるよ!(フンスー)

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 9) 2020-06-17 00:01:16
じゃ、言語があると信じて…ライムとリリックを叩き込んで、ラップが出来る唯一無二のセインディーネにするか…。

いやー貴重なデータとか取れそう。
知らんけど。

《新入生》 シェイミル・ウッズ (No 10) 2020-06-17 05:29:34
本人が美しい歌声って言ってたみたいだからきっと大丈夫だよ!!

バケツ被るからMC.バケツかな?
えへへ、楽しみだな〜

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 11) 2020-06-17 22:51:16
えー多分誰もここ確認してなさそうだけど一応。

RAPかロックかの夏フェスでウェイ出来るセインディーネに出来たらいいな、みたいなプランにしたからシコヨロ。