あなたのキャラを教えて下さい
(ショート)
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夏樹 GM
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このたび入学してきたある生徒が、大図書館『ワイズ・クレバー』に入って来た。
課題図書を探しているのだが、なにぶん、つい先月に入学してきたばかりで、不慣れである。
巨大な本棚の間を、物珍しげに行ったり来たり。
そのうち、棚の片隅に置かれていた本に気がついて、手を伸ばしてみる。
それはあまりに無関心な本であった。
どんな装丁で、どんな大きさだったかは、今となっては思い出せない。
彼が、本を取ってページを開いた瞬間、見開きから刹那の光が放たれた。
「え、き、君は……」
愕然とする新入生。
何しろ、そこには、『自分とそっくり』の人間が、無邪気な笑顔でこちらを見つめているのである。
「君の名前は?」
「【ローラン・アンバー】」
やはり、自分の名前が返答された。
「年は?」
「15歳」
「趣味は?」
「読書とジョギング」
「特技は?」
「特にないけど、まあ、料理はうまい方かな」
……。
…………。
………………。
君は、しばらく、『自分』の鸚鵡返しを聞いていた。
「それで、最初の冒険はいつだったっけ」
逆に、ローランに対して『ローラン』が話しかけてきた。
「ああ、ぼくの最初の冒険か? それはね、初めてこの学園で出来た仲間のことだったかな。それとも、故郷の昔話だったかな……どっちを聞きたい?」
そしてローランは、『ローラン』と向かい合った。
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参加人数
8 / 8 名
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公開 2020-06-05
完成 2020-06-23
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自称歌姫の苦悩
(ショート)
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夏樹 GM
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……アルチェのサビア・ビーチにセインディーネが出た……。
そんな『勇者活動』が、フルゥールム・スクエアにて行われる事になった。
担当の係が概要を、学生達に説明している。
「サビア・ビーチは観光向けの一般ビーチなのだが、毎晩夕暮れになると、セインディーネが1体と、ウィルオー2体が現れるらしい。ウィルオーは鬼火や人魂のような類でウロチョロする以外は無害だが、幻惑を使い不運のステータス異常をもたらすことがある。セインディーネは歌声で水を操り、人肉を好む見た目は美女の魔物だ。当然、人肉を狙って全力攻撃を行うので気をつけてほしい。いずれ、アルチェのミルトニア家が苦慮しているようでな。何しろ、観光業で持っている国だから、梅雨の時期にセインディーネが出てしまったのは夏に大変な被害を予測されるため、早めに退治して欲しいということだ。報酬はそこそこだが、帰りに、観光地区で羽根を伸ばすぐらいは大目に見てもよい。学生達自身のためにも頑張ってほしい」
……そういう事が予測されるのだった。
「ちなみにこのセインディーネは、どういう訳か、物凄い音痴でな。美しい歌声というのは本人談なので、惹きつけがきくとはあんまり考えられないのだ」
そこで担当がそう言った。
「その、物凄い音痴を矯正してやれば、人肉を喰わせなくても、多少は大人しくして海に帰る……かもしれない」
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参加人数
4 / 8 名
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公開 2020-06-09
完成 2020-06-29
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梅雨時のイタズラ妖精
(ショート)
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夏樹 GM
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あなたは、学生寮『レイアーニ・ノホナ』の寮生である。
ある日、いつもの通りに登校しようと寮の玄関を一歩外に出た途端、物凄い勢いで顔が冷たくなった。
何かと思ったら、次々次々と飛びかかってくるのは『絵の具水』!
「な、なんだ!?」
途端に、響き渡るのは子どもの声。
遠目に、ローレライの子どもと、エリアルの子どもが走り去っていくのが分かった。
朝から全くの災難。一回は寮の部屋に戻り、着替えをし、汚れた衣服を洗濯し、登校した時間は遅刻寸前であった。
それから、無事になんとか学校の授業を終えて、寮の部屋に戻る。
夕方なので、干していた洗濯物を取り込もうとしたところ……。
朝に洗濯していった衣服は絵の具水でそれはもう大変な汚れようになっていた。
愕然とするあなたの前で、響き渡るのはやはりローレライの子どもとエリアルの子どもの声。
「いい加減にしろ!」
思わずそう怒鳴ってしまうあなたの隣の部屋から、ひょっこり、同じ寮生が顔を出してきた。
「……私もやられたんですよ。なんでしょうねえ、アレ……」
話を聞いてみると、このところ、ローレライの子どもの【ローラ】と、エリアルの子どもの【リル】が、一緒になって、レイアーニ・ノホナとその周辺の住民に、絵の具水をぶっかけるイタズラを行っていると言う。
お互いに話し合っているうちに、こうしていても仕方がないという結論に達し、あなたは隣の寮生とその知り合いとともに、フトゥールム・スクエアに掛け合ってみることにした。
その結果、ローラとリルを捕まえて、イタズラをやめさせるという『勇者活動』が組まれる事になったのである……。
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参加人数
5 / 8 名
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公開 2020-06-20
完成 2020-07-07
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夏の星空に夢を見ましょう
(ショート)
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夏樹 GM
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学生寮『レイアーニ・ノホナ』から出て、あなたは、超大型商店『クイドクアム』へ買い出しに訪れた。
「あれ? なんだろう」
思わず声に出して言ってしまう。
クイドクアムの巨大な玄関の周囲が、緑色の細い葉を持つ見慣れない木々を束ねて置いてあるのである。そこには、色とりどりの長方形の紙が綺麗に飾り付けられていた。中には、色紙を切り貼りして作ったらしい装飾も随分ある。
その隣に、その綺麗な長方形の紙を束にして重ねているカルマの少女が、店員の制服を着て立っていた。
「なんですか? これ」
あなたがたずねると、カルマの店員は愛想良く笑って言った。
「七夕なんですが、当店ではこんなイベントを用意しています。星が願いをかなえてくれるというおまじないなんですが、あなたもどうですか?」
「おまじない?」
「本来なら、彦星と織姫が願いをかなえてくれるという伝説なんですが、それは現実的に無理ですから、ちょっとした魔法をかけているんです」
「例えば?」
「あなたの願望、夢、祈り、目標……そういうものが『かなった瞬間』を、魔法の夢の中で見る事が出来るんです。こちらの神に願い事を書いて、そちらの木に飾ってください。有料になりますけど」
「へえ……」
珍しい商売もあるもんだと、あなたは感心してしまった。
「ただし、当店が想定しているのは、いたずら好きの神様たちですので、願いが必ずしもかなった瞬間とは限らないかもしれません」
「え?」
「ランダムで、願望が逆夢になったり、あるいは何の関係もない夢が流れ込んで来たり、何故か、他人の夢と混ぜ合わせになったり、時には願望が他人と混ざった上で逆夢になったり、そのへんは、賽子を転がしたような状態になることもありますので、あらかじめご了承下さい」
「……それ、本当に神様なんですか?」
「いえー、それは、私も分かりません」
「はあ……」
妙な商売もあるもんだ……と思いながら、ついつい財布を取り出して相談しようかと悩むあなたであった。
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参加人数
8 / 8 名
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公開 2020-06-23
完成 2020-07-10
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