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猫は夜中に踊りだす


ストーリー Story

●海辺の町アルチェ。漁港地区(北側)。

 坂通りの突き当たりにある居酒屋『黒牛亭(くろうしてい)』。
 客層は地元の労働者。
 夜もとっぷり更けていることとあって、柄の悪そうな人間が目立つ。男も、女も。
 時々扉が開閉し、客が出入りする。そのたびに喧噪が、どっと路上まであふれ出る。
「いよう、お前も一杯やりに来たのか……いいぜ、奢ってやるよ……なあに、気にすることはねえさ」
「そうとも、自分の稼ぎで飲んでるんだ、自分の稼ぎで……文句は言わせねえぞ……もし何か言ってきたら、一発食らわせてやるとも……!」
 煙草の煙に霞む店内の一角で、客同士の喧嘩が起きた。
 原因は酒を賭けてのサイコロ博打だ。
「てめえ、このインチキ野郎、サイコロに細工してやがるだろ! こんなに俺ばかりが負けるのはおかしい!」
「なにい、俺がインチキだと……馬鹿も休み休み言え! 単にてめえの運が悪いだけじゃあねえか!」
 そうかと思えば店の亭主に食ってかかる客もいる。
 こちらの原因はお勘定だ。
「冗談じゃない、こんな料金になるわけがない――酔ってるからってぼったくれると思ったら大間違いだ!」
「困りますねお客さん、飲んだものは飲んだんですから、きちんとお支払いいただかないと……出るところに出るはめになりますよ」
「ほおお、脅しやがるのか、上等じゃねえかこの悪党!」
 客同士の喧嘩と違ってこちらの喧嘩は、勝敗が知れている。黒牛亭の亭主はこの飲み屋界隈で、一ニを争う腕っ節の持ち主なのだ。
 チンピラまがいの客をひとひねり。金をポケットから抜き出し襟首を掴んで、勢いよく店外へほうり出す。
 それを見た女客が仲のよい男客にもたれ掛かり、けらけら笑った。
 亭主はこれ見よがしに両手をはたき扉を閉め、カウンターへ戻る。
 そこでまた扉が開く。外から。
 何人かの客がそちらへ目を向け、妙な表情になった。
 年の頃13、4位かと思われる少女。
 背中まで伸びた赤いくせっ毛。きらきらよく光る緑色の目。幾分小生意気そうな、愛嬌のある顔立ち。
 ビーズを縫い込んだ絢爛なガウン。
 明らかにこの界隈の人間ではない。身なりがよすぎる。
 観光客が物見遊山に、ここまで足を運んできたんだろうか?
 少女はしなやかな足取りでカウンターへ近づき、亭主に言った。笑顔で。
「酒。ちょうだい」
 亭主は多少いぶかしみながら、彼女に聞き返した。
「そりゃ、くれというならあげるが。金はあんだろうねお嬢ちゃん?」
「金? ない」
 そこに至って亭主は、少女から猛烈なアルコール臭が漂ってくるのに気づいた。どうやら、もうすでにどこかで飲んできているらしい。
「じゃあ酒はやれないね」
「酒、くれないの?」
「やらん。よそへ行きな」
 そのやり取りに客たちが大笑いした。
 ふざけた一人がこんなことを言い出す。
「よう、よう、お嬢ちゃん。金が無いなら踊りでもして見せてくれよ。裾をめくって脚跳ね上げてよ。そしたら一杯奢ってやるよ」
 少女は陽気な調子で軽くステップを踏む。
「そうね、踊るの私好き」
 直後彼女の口から猫の鳴き声が飛び出した。
 鳴き真似とかいうものではない、本物の猫の声だ。
「いよーお、やああ、ううう」
 それに応じて外から大合唱が返ってきた。
『いよーお、やああ、ううう』
 続けて窓から覗きこんでくる、たくさんの猫の顔、顔、顔。
 少女の周囲に電流が走る。
 それに打たれた亭主がゴム毬みたいに跳ね飛び、ぶっ倒れた。
 続けて彼女は、つま先だって独楽のように一回転し、楽しげに言った。
「あんたたちも踊って」

●海辺の町アルチェ。観光地区(南側)。
 イルフィナ海の波間で月明かりが、銀の粉のように、ちらちらと踊る。
 夏を迎える今この界隈では、長期滞在を目的とした観光客の数が増してきていた。
 豪奢なホテルや別荘の庭園には花のような形をした提灯が張り巡らされ、ビュッフェ用のテーブルが並ぶ。
 カクテルグラスが盆に乗って、メインホールにしつらえられたバーから、夜の庭園にあふれ出て行く。
 そこでは、眠気などちっとも感じない紳士淑女たちがさざめきあっていた。
 オーケストラが奏でるワルツ。
 黒い礼服の間に咲き乱れる、花のような色とりどりのドレス。
 意味深な囁きや目配せ。
 胸躍らせるような甘い香りは、飾られている花々から漂ってきているのか、それとも女の肌から立ち上ってきているのか。
 一群れの若い男女が、ホテル入り口の石段に腰掛け話をしている。
「あなた、あの紫色のドレスはどうしたの? この前見せてくれた」
「今夜の夜会には来てこようと思ったんだけど、うっかり破いちゃって。ついてないわー」
「そういえばカサンドラの遺作が新しく見つかったらしいね。高値がついたとか」
「ああ、学園でオークションがあったって」
「そんなつまんない話よしてちょうだい。もっと楽しい話をしてよ」
「じゃあ、あそこにいる伯爵の話でもいたしましょうか? あの人ね、近々破産するみたいですよ。僕の友人のところにね、手形が回ってきたんです」
「あらやだ、本当?」
「ええ。屋敷も土地も売り払って、今じゃただひとつ残った別荘に愛人と住んでるとか。ほらあの、二流歌姫のアンナ」
「へー、あのオペラハウス座長に枕営業かけたって評判の」
「あれ本当と思う?」
「本当だろ。じゃなきゃあんな音痴の大根役者、舞台で使ってもらえるもんか」
「確かにね。で、奥方は?」
「奥方とは、離婚が成立したみたいで……破格の賠償金を払ってね」
 忍び笑いしながら盛り上がっていた一同は、ふとそれを中断した。
「猫の声が聞こえないかい?」
「あら本当。どこかに隠れてるのかしら」
「この町、猫が多いものね」
「港町だから」
 彼らから少し離れた所にいた同じような一団が、顔を一斉に上へ向け、どよめく。
 何事かと思った次の瞬間、男女のちょうど目の前に男が落ちてきた。
 張り出したテラスや木の枝に衝突した挙句だったから、即死はしないですんでいるようだが、起き上がることも出来ず呻いている。
 若い男女たちは息を呑んだ。
 いくらかしっかりした数名が、何事が起きたのかと場から離れ、ホテルの建物を見上げた。
 そして息を飲んだ。
 ホテルの屋根の上にびっしり猫が群れていたのだ。200、300くらいの数は余裕でいそうだった。
 その中で数人の人間が踊っている。


 赤い髪の少女はご機嫌で踊っている。ブランデーのボトルを手にして。
 その前で、居酒屋の客たちも踊っている――ように見える。だが実のところそうではない。電撃によって、飛んだり跳ねたりせざるを得ないだけだ。鞭で芸を仕込まれる動物のように。
 少女はまず居酒屋の屋根へ彼らを追い上げた後、ずっと踊らせ続けている。自身も踊りながら。屋根伝いの移動を続けている。まるで疲れを見せないで。
 このホテルにたどり着く前に何人もの客たちが、足を滑らせ高所から落ちていった。
 そしてたった今、亭主が落ちた。
 残った数名もほどなく同じ運命を辿ることだろう。皆、限界を超える疲労に押しつぶされているのだから。口に薄い泡を吹き、目が飛び出しそうになっている。
 だが少女はそのことに気づいていないのか、それとも気にかけていないのか、ひたすらご機嫌で踊り続けている。
 取り巻きの猫たちがごろごろ喉を鳴らす。何匹かの猫は彼女の動きに合わせ、くねくね体を揺すっている。それはもう、とても楽しそうに。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2020-07-04

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2020-07-14

登場人物 6/8 Characters
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。
《奏天の護り姫》レーネ・ブリーズ
 エリアル Lv29 / 芸能・芸術 Rank 1
いろいろなところをあるいてきたエルフタイプのエリアルです。 きれいな虹がよりそっている滝、 松明の炎にきらめく鍾乳石、 海の中でおどる魚たち、 世界にはふしぎなものがいっぱいだから、 わたくしはそれを大切にしたいとおもいます。
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て

解説 Explan

こんにちは、皆さん。Kです。

今回の課題は、
1:ホテルの上で踊っている少女(魔物)を追っ払う。
2:躍らされている人(女1、男2)を助ける。

PCは全員、「何らかの理由でこの町に来ていて、偶然事件に遭遇した」という形をとっていただきます。
戦闘開始時点においては全員「地上にいる」状態です。

少女については、ここで倒すということでなくて全然かまいません。
「なんか面倒くさそうな相手だな。簡単にはやっつけられないな」と思わせることが出来れば成功です。彼女から引いていきます。
可能ならホテルで夜会が開かれていることを気づかせないようにしたほうがいいです。酒があると分かった瞬間、この少女はそっちに向かっていきますので。踊らされる人間が増えてしまいます。

少女が退散すれば、取り巻きの猫たちも散って行きます。
彼らは人間に対し敵対的ですが、束になってPCへ積極攻撃を加えてくるということはありません。個々で嫌がらせをする程度です。『アウェー試合における敵対チームの熱烈ファン』くらいに思って対処していただければ。
ちなみにこの少女、現段階では客たちに対し『攻撃する』という意識を持っていません。本人的には興が乗ってきたので遊んでいるだけです。相手の生死とか意思とか度外視して。

ホテルは地上8階建て。
ビルディングではなく、ヨーロッパ宮殿調の建物をイメージしています。周囲に木がある他、庇やバルコニーといった突起物が多いので、外側からも上っていきやすいです。
屋根部分は平らではなく急勾配。足場悪し。
動き回れる広さは150マス×50マス(300m×100m)程度です。



最後に、北側から南側へ移動してくる間に屋根から落ち脱落した客の回収を、事後にお願いいたします(数は10)。回収後は最寄の診療所へ直行させてください。
居酒屋の亭主はエピソード本文の中ですでに命が危険水域ですが、他にもまずい状態の人が何人かいるかもしれません。


作者コメント Comment
また出ました魔物。前回は犬でしたが、今回は猫系統の何かであるもよう。
どこかの誰かの絵で見たような姿かたちです。
100パーセント泥酔していますが、油断は禁物。早め早めにこの危険な酔っ払いを、場から追い払ってください。


個人成績表 Report
ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆やるべきこと
にゃんこ娘にお帰りいただくのと、現在進行形で踊ってる3人の救出が最優先

可能であれば更なる被害拡大を避けるため、にゃんこ娘がホテルに向かわないようにしたり、既に地上に落下した人の救助
特に怪我の状況が危険な方は、優先して救出

◆分担
私は地上で仲間の援護や救助を優先
時系列的には、踊らされてる人達の救出はにゃんこ娘対処と並行もしくはその後になりそう

ある程度救出に移れるメドが立つまでは、私は既に地上に落下した人のうち、危険な人を優先して救助に回って

救助や仲間の治療には軽傷なら応急処置
深手なら祈祷で回復

魔法感知、第六感で敵の魔法や想定外の事態に備えて

余裕があればお魚をばらまき猫達の分散を試みる

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
外側から屋根上に登った後、【生物学】の知識と【匂い袋/投擲(小物)】を利用し、猫を散らし足場/行動範囲を確保する。

攻撃は【マド】で行う。
迅速に重力思念の射程内に収める為、青嵐の支援も計算に入れつつ立ち回る。

【魔法学/魔物学/魔法感知】で少女の雷撃が魔力生成を伴うと判断出来た場合、【二段ジャンプ】で距離を詰め【重力思念】で妨害。
その間に被害者等を少女から引き離し、より立ち回りやすくする。
被害者はベイキ嬢らに回復含め任せ、戦闘に専念する。

雷撃は【魔法感知】で【プチシルト/紅バラのキャンドル】で防御、もしくは【緊急回避】。



■アドリブ/交友度:A

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
以前お手伝いした土産物屋を訪れる最中事件に遭遇、私は急いで未落下の方の救出に回りますわ

建物の中を通っていく時間が惜しいので、立体機動を用いて壁や木々を駆け上がって屋根まで進んでいきますわ。万一登っている途中未落下の方が落ちた時はそのまま飛びついて受け止め、立体機動で壁や木を蹴りブレーキに

誰も落ちず屋根まで辿りつけたら、仲間が猫娘へ攻撃を仕掛けている間に未落下の方を、体力が一番落ちている方から優先して屋根の入り口まで猫から護りながら運んで行き建物の中へ。途中猫に進路を塞がれたら群れ思考で猫達の考えを読みつつ新鮮なお魚を投げて注意を逸らしますわ。また雷に打たれた時は心頭滅却と新陳代謝で耐えますわ

ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:

獲得経験:90 = 60全体 + 30個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
魔物(たぶんシャパリュ)と絡む

■行動
屋根の上に登って…まずは雷撃から客を守らねば。
長柄の斧を投擲技術に純真無垢を駆使してブン投げるのじゃ。
狙いは魔物と客の間、攻撃ではなく避雷針の代わり…ブッ刺されぃ!

そして、名乗りながら乱入。魔物の名を尋ねるのじゃ。
名乗り名乗られの挨拶は大事なのじゃ。

その後は戦闘。
あちきの斧は投げてしまったから無手…攻撃は他の者に任せてあちきは防御や陽動に専念じゃな。
前に出て、雷装を纏って魔物の雷撃を受け止めたり受け流したりして防御。
さらに競争心理であちきも華麗に踊り、無視するようなら体当たりで注意を引くのじゃ。
ここからはあちき達の舞台じゃ!

レーネ・ブリーズ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
魔物の少女をエリアルの種族特徴のフドで攻撃します。
エリアルが属する風の魔法ですから同属性効果で命中しやすくなりますし。

特別にはなしかけたり、おこったりはしません。

魔物の少女をたのしませたり、おこらせたりしたら、
その場にずっといることになっちゃうかもしれません。

つまんない、めんどうだなっておもわせてたちさらせたいんですもの。

ですから金属鎧をしっかりみにつけて防御も固めます。

鎧の下にはしっかりとした布地の服をきておいて、
電流は金属だけをながれて、わたくしにはこないようにしますね。

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
月夜にダンス、シチュエーションだけなら最高なんだけど…
はー…無理矢理踊らせて、それで一緒に踊ってるって?
……腹立ってきた 邪魔してやろ
幸い、皆もいるし、ねぇ?

事前にホテルの方向を確認
あちらを気取らせないように……ね
【演奏】の効果で味方の射程を引き上げ
少女の意識が味方に向いている間に屋根へ
【2段ジャンプ】とグロリアスブースターを駆使して登り
少女と踊らされてる人の間に割って入り【二連切り】【マド】
【演奏】で味方をサポート

リザルト Result

●事件は夜に起きている
 アルチェ観光地区。
「それでは、漁港グルメを求めて立ち寄られたのですか?」
「うむ。ひとまずこれからマリシュケリア(魚介料理専門店)へ行ってみようと思うておる」
 【ラピャタミャク・タラタタララタ】と【朱璃・拝】が連れ立って歩いている。
 もう夜も更けているのだが、街は眠ろうとしない。店先からは光と音が溢れている。
「朱璃は何を求めてここに来たのかの? あちきと同じように食かの?」
「いえ、私は、何を求めてというのではないです。以前お手伝いした土産物屋に、ちょっと用事がありまして、それで」
 話をしいしい通りを曲がれば、ひときわ大きなホテルが見えてきた。広大な庭園に、花のような形をした提灯が張り巡らされている。たくさんのテーブルが並んでいる。
 聞こえてくるのはオーケストラの演奏するワルツ。楽しげなざわめき。
「おお、なんぞ祭りでもやっておるのかの」
 興味をひかれたラピャタミャクは、ホテルの門前に立ち止まった。柵に角をくっつけるようにして、中をうかがう。
 つられて朱璃も立ち止まる。
 直後、叫び声が上がった。『屋根に』という単語が聞こえたような聞こえないような。
 何事かと思い、両者そちらへ顔を向ける。
 そこには大量の猫と、踊る少女と、踊る人間4人の姿があった。
 4人のうちの1人が足をもつれさせ屋根から落ちる。バルコニーや木の枝に衝突しながら地面に激突する。
 その墜落者のそばに深緑の髪をしたローレライ、【ベイキ・ミューズフェス】が駆け寄っていく――理由は定かでないが、ちょうど場にいたらしい。
「大変ですわ!」
 叫ぶと同時に朱璃は、庭園へ飛び込んだ。ラピャタミャクもそれに続いた。
「ベイキ、その者生きておるかの!」
 ラピャタミャクの問いにベイキは頷きを返し、祈祷を始めた。生きてはいるが、かなり悪い状態であるようだ。
 朱璃は改めて屋根を見上げた。大量の猫と、踊る少女と、踊る人間3人の姿。
「【カサンドラ】様の描かれた絵に似てますわね……」
 その呟きを引き継ぐように、ラピャタミャクが言う。
「うむ。あの絵の娘によく似ておる……たしか、シャパリュ、じゃったか?」
 そこへ【レーネ・ブリーズ】、【プラム・アーヴィング】、【シキア・エラルド】が駆けつけてきた。彼女らと同じく近くを歩いていたところ異変を耳にし、駆けつけてたのだ。
 プラムは断然犬派の人間だ。猫がいくら群れていても何とも思わない。それと一緒になって踊っている少女についても。
 なのでシキアに対し、無造作にこう言い放つ。
「近所迷惑だから、さくさく追い払っちゃいましょーか。魔物だろアレ」
 シキアは屋根を見上げながら答える。気取った感じに茶色い髪をかき上げて。
「なんなら俺、あの子とダンス勝負してもいいけど? もしかして踊り負けたら立ち去るかもしれないし。昔話だとそういうパターン、よくあるじゃない」
 レーネがそれに対し疑義を挟んだ。穏やかな口調で。
「それはどうでしょう。魔物をたのしませたり、おこらせたりしたら、その場にずっといることになっちゃうかもしれません」
 駄目出しを食らったシキアは、しょんぼりする。
「そんなー。ちぇー」
 だがすぐに『後で部屋で踊ろ』と気を取り直し、別の案を提示する。
「じゃあ、打ち上げ花火使っていいかな。群れている猫、邪魔になるでしょ? 大きな音させれば、びっくりして散るかも」
 その提案には、場にいる誰も反対しなかった。
 かくして彼とプラム、レーネ、ラピャタミャク、朱璃は、屋根に向かう――ベイキだけは引き続き、地上に残る。重症者の癒しと、援護に専念するために。
 夜会に来ていた客たちは、事態を収めるに足る力をもった人々が現れたことで、危機感を俄然薄らがせた。野次馬的に騒ぎ始める。
「怖いわあ、あれ、魔物なのかしらね」
「多分そうだろうけど、まあ、そんなにたいしたものじゃないだろ。見た感じ小さいじゃないか。腕のありそうな連中が束になって行ったんだから、すぐ退治出来るよ」
「何分で片がつくか、賭けるかい?」
「何を賭けるの?」
「オペラハウスの特別席。ディナーつきで」
 ベイキは複雑な気持ちになる。
 自分たちへの絶対的な信頼感があるからこそ、そういう会話をしているのだろうが、しかし、それにしても、怪我人がいるすぐ脇で無神経過ぎやしないだろうか。
 そんなことを考えているところ、数人の紳士淑女が寄ってきた。深刻ではないまでも、心配そうな顔をして。
「その人、大丈夫ですか?」
「死んでない?」
 ベイキはほっとする。赤の他人に起きた出来事を気にかけてくれる人も、ちゃんといるのだと知って。
「大丈夫です。安静は必要ですが」

●屋根の上で踊れ
 どん、どんと花火が打ち上がった。
 突然の大きな音で、屋根に群れていた猫たちはどきっとする。思わずバルコニーや庇に飛び移る。
 だが、少女は。
「おーわ。わあ」
 ごきげんな鳴き声を上げ、タップを踏む。手を叩く。
「いいぞ、いいぞ、もっとどんどん景気よくやろー」
 その様を見て安心したグループは、またもとの場所に戻ってきて座り込み、毛づくろいをし始める。
 しかし警戒を解かないグループは、そのまま移った場所に留まる。

 シキア、プラム、朱璃、レーネ、ラピャタミャクは、ホテル最上階のバルコニーへ身を潜め、より詳しく様子を探る。
 それによって分かったのは『少女は確かに踊っているけれども、人間はそうではない』という事実。
 今にも倒れそうになりながら休むことすら許されず、足を、手を、強制的に跳ね上げさせられているだけ。電撃によって。
「月夜にダンス、シチュエーションだけなら最高なんだけど……」
 シキアは腹が立ってきた。こんなものは一緒に踊っているとは言わない。相手を振り回しおもちゃにしているだけのことだ。
「邪魔してやろ」
 と呟くなり彼は、青嵐を弾きにかかる。
 だが、そこで彼らのいるベランダに多数の猫が飛び移ってきた。いかにも気に入らないような顔をし、陰にこもった鳴き声を出してくる。
「これ、しっ。静かにせい。向こうに行かんか」
 ラピャタミャクが手を振り追い払おうとしても、ふてぶてしく場に居座り鳴き続ける。
 プラムは手にした匂い袋を、猫たちに向け振り回した。ピンク色の目は終始醒めている。重ねて言うが彼は猫好きではない。
「ほらほらどけ、どけ」
 強烈な匂いが嫌だったのか、猫たちはくしゃみを連発した。次々バルコニーから離れ、近くの庇に飛び移る。
 だが数匹は残る。威嚇し猫パンチを繰り出し、ちょっかいをかけてくる。
 朱璃はなんとなく、前回犬の魔物と戦ったときのことを思い出した。
(やはり猫、ということでしょうか。こぞっての集団行動はとらないようですわね……シャパリュも命令らしい命令を下していないようですし)
 ついで荷物から新鮮な魚を取り出し、猫の目の前で振ってみせる。
「ほらほら、取れたての、おいしいお魚ですわよー」
 唸っていた猫たちが目を丸くして動きを止めた。小鼻をぴくぴくさせた。
 朱璃は魚を庇の上へ投げる。
 そこへ移動していた猫たちが、わっと餌に飛びついた。
「早くしないとほかの猫さんたちにとられますわよ」
 と促しが終わらない間にベランダの猫らもそっちに向かう。そして仲間と大喧嘩を始める。
 シキアは咳払いし、改めて演奏を始めた。

 少女はごろごろ喉を鳴らし華麗なスピンをする。
 それを強制的に真似させられた女が、前のめりに倒れそうになった。
 途端に電流が走った。バネじかけの人形のように立ち上がり、ぎこちなく手足を振り回そうとする。
 が、足がもつれてまた倒れ、斜めの屋根を転げていく。
「た、たす」
 悲壮なかすれ声を上げ落ちて行こうとした女の手を、誰かが掴んだ――朱璃だ。相手を安心させるため微笑みかけ、その体を引き上げる。
「助けに参りましたわ!」
 少女は急に出てきた朱璃を不思議そうに見た後、電撃を発した。
「誰だか知らないけど、ついでだから一緒に踊って」
 電撃は鞭のようにしなって対象を打つ。
 真っ赤に熱した針金を突き刺されるような痛みが、朱璃の首元に走った。銀の髪が一部焦げた。
 そこでシキアが動く。
 宙を蹴って跳び、一息に屋根の上へ。
 青嵐の棹に仕込まれた刃を引き出し、少女に向けて二連斬りを見舞う。
 少女は横転して身をひるがえし、避けた。そして彼に、雷撃を食わせる。シキアが思わずたたらを踏むのを見て、手を叩く。酔っ払い特有の緩み切った笑顔を見せながら。
「そうそう、もっとステップ踏んで、飛び入りさん」
 二度目の雷撃。
 今度はシキアが避けた。ニ連斬りをなんとか当てる。
 ガウンの肩口が裂けた。額に切れ込みが入り血が滲み出した。少女は頭を一回振って、猫が顔を洗うような仕草をする。傷口が塞がり、血がたちまち止まる。ガウンも元通りになる。
「んーん、今のは、踊りになってない」
 言いながらまた、立て続けに電撃を発する。シキアに当てる。
 そうやってシキアと少女が攻撃と回避の応酬をしている隙に、朱璃は客を負ぶい、改めてホテルの中へ避難させようとする。
 少女はぽんと屋根を蹴った。朱璃が逃げていくほうに先回りしようと。
 そこへ長柄の斧が唸りを上げ飛んできて、目の前に突き刺さる。
「んあ?」
 少女は特に恐れる様子もなく小鼻を蠢かし、斧の匂いを嗅ぐ。
 高らかな声を上げ、ラピャタミャクが飛び出してきた。雷装をまとって、役者のように大見えを切る。
 月を背景に浮かびがる紫の肌、白い髪、大きな角――なんだか彼女自身、小さな魔物のように見えなくもない。
「義を見てせざるは勇なきなり! あちきの名はラピャタミャク・タラタタララタあいたっ! ええい、汝らに用はない! 向こうに行かんか!」
 ふくらはぎを引っ掻いてくる猫たちを威嚇して散らした彼女は、少女に指を突き付けた。
「して汝、名は何という! あちきが今名乗ったのじゃから、名乗ってもらうぞ!」
 少女は口を横に広げた。実に楽しそうに。
「あんたも雷使えるの」
 ブランデーをラッパ飲みし、空き瓶を投げ捨てる。
「わたしの名前は、赤猫」
 瞬時にラピャタミャクの間合いに入り、彼女の両腕を掴んで、歌いながら回り出す。村祭りのダンスみたいに。
「踊ろ、踊ろ、輪になって踊ろ」
 足場の悪さを考えれば危険極まりない行為だ。彼女本人はどうってことないようだったが、ラピャタミャクはあやうく足を滑らせそうになる。
 何よりも閉口させられるのは、相手から漂ってくるアルコール臭だ。マッチを近づけたら燃え上がるんじゃないかと思わせるほど、強烈なのである。
 なのでラピャタミャクは、掴まれた腕を振りほどこうとした。だが、それが全然びくともしない。万力で締め上げられたように。
(こ、こいつ、目茶苦茶力が強うないか!?)
 赤猫がノリにノっている合間に朱璃は、大急ぎで最初の救助者一名をホテルの中へ連れて行く。取って返すや残りの二人を脇にかかえ、同じように運んでいく
 その援護をする形でレーネは、赤猫にナジュム・ベガを向けた。可能な限り相手に対し、感情を出さないよう心がけて。
 柔らかな茶色の髪がふわりと動く。風の力が凝縮され、フドが発動される。
 当たった。
 赤猫が体をぐらつかせ、回るのを止めた。
 レーネの方を見る。同時に電撃を飛ばす。
 プレートメールの下に厚く布地を挟んでいるとはいっても、絶縁出来るわけではない。皮膚が焼けるような刺激が来る。顔が引きつる。
 だが、彼女がそうした甲斐は十分にあった。別方向に赤猫の注意が向いた隙にラピャタミャクは、なんとか腕を抜くことが出来たのだ。
 
●いつかどこかで見たような
 庭園の見物人たちから、波のようなどよめきが上がる。屋根の上で、激しく火花がひらめいたのだ。
 一方はラピャタミャクのもの、もう一方は魔物のもの。
 ベイキはつくづく、自分は屋根まで行かなくてよかったと思った。
(ぶっちゃけ、雷を使う魔物と私とは、属性的な相性が悪すぎるんですよね……)
 少女は相変わらず踊っている。ラピャタミャクも、張り合うように踊っている。
 体の大きさが似通っているせいか、離れたところから見ていると、子供同士がじゃれあっているようにも見えなくもない。
(……そう言えば、この状況ってカサンドラさんの絵に似てますよね。本来の絵の背景は岩山だったのに、今の絵の背景は夜の町の屋根の上……) 
 ベイキは不意に周囲を見回した。
 もしかしたらあの絵の男がどこかにいるのではないか、という胸騒ぎに捕らえられたのだ。
 だが、さしあたって男の姿は、どこにも見つけることが出来なかった。

●遊びはおしまい
「これ、出来る?」
 赤猫がラピャタミャクに呼びかけ、高く跳び、スピンする。
「ふん。その程度、やれないでか!」
 負けじとラピャタミャクも跳び、スピンする。赤猫より半回転多く。互いの雷が飛び交う中で。
 その様を観察していたプラムは、赤猫が繰り出す鞭のような雷が魔力生成を伴うものであることを確信し、シキアにそのことを告げる。
「もしそうなら、重力思念で攻撃を封印出来るはずだ。手伝ってくんねえ? 射程をちょい稼ぎたいのよ」
「もちろん」
 シキアは雷撃でミミズ腫れだらけになった腕をさすり、改めて青嵐での演奏を始めた。
 プラムは攻撃の命中率をより上げるため、赤猫の動きを鈍らせることにした。声かけという手段によって。
(しかし、さて、何を話したら気が引けるかね)
 思案して彼は、相手が猫(に近い存在)である点に注目してみた。別に猫に限ったことではないかもしれないが――とりあえず猫は雨を嫌う。
「おーい、そろそろ踊りを止めたらどうだ。雨が降りだすって誰かが言ってたぜ」
 読みは的中した。赤猫が反応を示した。
「うそ。きれいに晴れてるし、月も出てる」
「そりゃあ今はそうだけど、そのうち天気が崩れるんだと。んで、明日は一日土砂降り」
「えー……」
 眉をひそめて空を見上げ、しかめ面をする赤猫。
 直後プラムは二段ジャンプで相手との距離を詰め、重力思念を仕掛けた。
 当たる。
 赤猫の周囲にあった雷流が、急にか細くなり消える。
「んあ?」
 赤猫は首をかしげた。
 プラムを見、体をゆっくり左右に揺する。
 直後跳躍しプラムとの間合いを一瞬で詰め、彼の腹に拳を入れた。立て続けに二発。
「あんた今、変な魔法かけたよね? 解いてよ」
 胃が潰れるかというくらいの衝撃がプラムを襲う。すっぱい胃液が喉まで戻ってきた。
 そこへラピャタミャクが体当たりをし、割り入る。
「気をそらすでない赤猫よ、ここからはあちきの舞台じゃ!」
 彼女の体当たりに飛ばされた赤猫はパッと体勢を立て直し、スキップしながらラピャタミャクに近づく。猫がそうするように、素早くパンチを繰り出しては引く。
 一見ふざけているような仕草だし、多分本人もそれに近い感覚なのだろうが、レーネは強い危惧を覚える。
(まずいですわね……遊びに熱がはいってきてますわ……これでは立ち去らせるどころではありませんわ)
 そのとき、救助者を全員避難させた朱璃が、再び場に戻ってきた。
 祖流還りし、狼の姿で赤猫に突っ込む。真中正拳突きを繰り出す――当たった。
 赤猫は屋根の際まで弾き飛ばされ、ハッと短く息を吐く。再び周囲に鞭のような電流を生じさせる。電流は大きく波打ち、横なぎに朱璃を打つ。
「……!」
 朱璃は歯を食いしばって激痛に耐えた。不敵に笑った。
「バスカビル様はお元気ですか?」
 その言葉を聞いた途端、赤猫のいい意味でも悪い意味でも楽しげだった表情が、険悪なものになった。
「バスカビル……どのバスカビル?」
 そういえばバスカビルは種族名であって名前ではなかった。思いながら朱璃は続ける。
「確か、黒犬とおっしゃる方です。お知り合いなのでしょう?」
 赤猫の瞳に嘲笑が浮かぶ。
「知ってる。あのポンコツ野郎、まだ生きてるんだ――ああ、それも当たり前か、わたしが生きてるんだから、当然あっちも生きてるはず」
 言っている内容はよく分からないが、とりあえずこの赤猫という魔物、黒犬という魔物をすこぶる嫌っているらしい。
「で、黒犬はどこにいたの?」
「グラヌーゼです」
「あ、そう……グラヌーゼ」
 赤猫は、一声わああと高く鳴く。体高2メートルはありそうな、巨大な猫へと姿を変じる。毛色は赤。瞳は緑。
 相手がこの場を去るつもりだと察したラピャタミャクは、声をかけた。
「あまり人を虐めてやるな。酒が消えてしまうぞ? 風が吹けば桶屋が儲かる……と言う訳ではないが、売り手が傷つき、作り手に被害が出れば、当然作られゆくものも無くなる。グルメも酒も然りなのじゃ」
 赤猫はそれに答えることなく、ホテルの屋根から飛び降りた。猛速度で家並みの上を走りぬけ、あっと言う間にどこかへ姿を消してしまう。
 残された大量の猫たちは鳴き交わし、めいめい好きな方に散って行く。

●喉に引っかかった小骨のような
 赤猫が去った後皆は、町中をめぐって、赤猫に踊らされた挙句墜落していた人々を残らず救助した。
 朱璃の気付け薬、レーネの痛み止め、ベイキの応急処置等のおかげで被害者達は、すぐに意識を取り戻した。何故踊らされていたのかについても話してくれた。

 最後の一人を運び込んだ学園生徒たちは、揃って診療所を後にする。
「どうやら、ほんとうにただ遊んでいただけのようですね、あの魔物」
「まぁ、煽った客も客ではあるんじゃがな……そも、無銭飲食しようとは許せんのじゃ!」
 レーネとラピャタミャクの会話を聞きながら、朱璃とベイキは、雲など一つもわいてきそうにない夜空を見上げた。
「結局、マスチフの言う『呪い』とはなんなのでしょうね」
「分かりません、まだ。でも、多分あの赤猫も関係しているような気がします。それに、カサンドラさん自身も……」
 シキアは口笛吹いてタップを踏み、即興のダンスを披露している。友人であるプラムに向けて。部屋まで戻るのが待ちきれなかったらしい。
 天高くかかる月が、六人分の青い影を路上に落としている。



課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
猫は夜中に踊りだす
執筆:K GM


《猫は夜中に踊りだす》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 1) 2020-06-28 01:12:23
犬派のプラム・アーヴィングだ。
猫とは和解しない。以上。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2020-06-28 07:47:50
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

確かに何処かで見たような光景な気がしますわね。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 3) 2020-06-28 21:32:23
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
なんか……あの油絵のモチーフってこんな状況かも?

とか思ってしまう状況ですね。

ホテルに少女が向かうと面倒ですし、ホテルのお酒に少女が気づく前に、お酒持ち込んで少女を誘い出すような手もありでしょうかね。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 4) 2020-06-29 01:06:43
お、顔馴染みのメンツ。
これは実家のような安心感。実家知らねえけど。

さて、犬の次は猫…、両派への配慮じゃねぇだろうな。ハハ。
何やら最近の課題に関係あるやもな感じだが…。

今の時点では何するにも何だか人手不足感が否めないから、役割分担よりは一つ一つ対処していく感じになりそうだ。

泥酔している魔物って次点で話し合いなんて望むべくもなし、今回は取引持ち掛けず、戦闘メインに考えようと思っているが、皆はどうだ?

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 5) 2020-06-29 06:38:42
芸能・芸術コースのエルフ、レーネです。よろしくお願いします。
役割分担か集中かはけがしてるひとたちをあとまわしにするかどうかの判断かなとおもいます。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 6) 2020-06-29 18:44:15
とりあえず私達が駆けつけたのが亭主様が落ちる前か落ちた後かでも何をするか変わりそうですけれど。落ちた瞬間に居合わせたなら地面に激突する前に何とかしたいですわね。立体機動で木や壁を駆け上がって受け止めるとか。その時点でそこにいたかどうかはプラン次第という所でしょうか。

少女に関しては、説得してる間にも踊りを止めないとかなら周囲の人が危険なのは変わらないですし、踊るのを止めさせる為にもそのまま攻撃でよいのでは、と思いますわ。


《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 7) 2020-06-29 20:43:06
踊る魔物がいると聞いて
俺は芸能コースのシキア……大体みんな一緒に課題取り組んだことある?今回もよろしくね!

そういえば、最初は全員地上なんだよね
ってことは向こうの少女を引きずり下ろす、ないし俺達が登る必要があるね。
踊りにはそれなりに自信はあるけど、流石に屋根の上で踊るのは…ちょっと。ということでとりあえず、攻撃するってのは賛成
意識を向けさせて地上に来てくれたら万々歳だけどねー

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 8) 2020-06-30 07:59:09
>分担
とりあえず、最低限の分担はできそうな人数になりましたね。
と言っても、精々にゃんこ娘に直接実力行使するとか、酒とか魚とか釣れそうなので誘い出し、地上に誘い出す間接支援。

可能であれば一般人の救出でしょうか?

ただ、一般人の救出は、にゃんこ娘が健在だと妨害される懸念は高そうです。
にゃんこ娘の折角のお楽しみを邪魔するんですから。

……いっそ、酒にマタタビ混ぜて酔わせてにゃんこ娘拉致らね?
とか一瞬思ったのは内緒ですが。

さすがにマタタビ持ってる理由が立たないし。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 9) 2020-06-30 18:40:50
>マタタビ
購買にないアイテムなのでよほど合理的な理由がないと持っていた、というのは難しそうですわね。

購買にあるアイテムだと新鮮なお魚や酔いどれ饅頭あたりなら興味を示すかもしれませんが・・・

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 10) 2020-06-30 19:55:27
らぴゃたみゃくたらたたららた!

今回もよろしくなのじゃ。
とりあえず、最初に斧を投げて避雷針代わりにならんか試してみるのじゃ。
後は流れで魔物に絡むつもりじゃ。
武器は投げてしまったから攻撃はせずに、雷撃を防御しながら華麗?に踊るのじゃ。
遊び足りぬなら、客の代わりに遊んでやろうではないか!(キリッ

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 11) 2020-06-30 22:07:36
恐らく、スタート時点が遭遇した…だから、落ちてきた後じゃねえかなァ…南無…

てか、普通に読み落としてたけど、落下事後の奴らは猫娘どうにかしてからいいワケね。
ラピャ嬢の言う様に、二の舞にならないよう雷撃の対策をしつつ、未落下の3人を救出&猫娘撃退か。

先に未落下組を助けられれば、人質的なハンデを背負う事なく戦いやすくなるんだが…足場悪いし色々考えないとナー。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 12) 2020-07-01 09:02:31
あ、ホテルににゃんこ娘が向かわないようにするなり、ホテルにお酒があるとばれないように何か手を打っておきますか?
と言っても、ホテルに居る酔っ払いが外に出ないようにしたり、しばらく騒ぐのを控えてもらうようホテルに頼む位しか思いつきませんが。

にゃんこは柑橘系や薄荷の匂いは苦手っぽいですけど、さすがにホテルをカバーできる量は用意できませんし。

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 13) 2020-07-01 11:20:51
課題として指示されたこととしましては

1:ホテルの上で踊っている少女(魔物)を追っ払う。
2:躍らされている人(女1、男2)を助ける。

そして

最後に、北側から南側へ移動してくる間に屋根から落ち
脱落した客の回収を、事後にお願いいたします(数は10)。
回収後は最寄の診療所へ直行させてください。

ということですから、おちちゃったひとについては事後でも
課題としてはだいじょうぶだとおもいます。
ただ、そのなかでおひとりは「すでに命が危険水域」で、
「他にもまずい状態の人が何人かいるかも」ということですから
回収して診療所に直行してあげることで課題はクリアしても
「助かりませんでした」ということになるかもしれません。

それをふせぐのでしたら方法は二つ、

A 回収はできなくても危険なひとへのとりあえずの回復はしてあげる
B できるだけ急いでおいはらうことで、はやく診療所につれていく

こんなかんじじゃないかなっておもいます。
これは課題の指示をこえたことですし、協力がひつようですから
みなさんのご意見次第だとおもいます。


おちてないひとやホテルに向かわれるのを防ぐには「できるだけはやく攻撃などをはじめる」、のが無難そうです。

雷については種族の属性ですし、タラタタララタさんがおくわしいとおもいます。
事前に説明していただければ、「避雷針」について
わたくしの種族特性「言の葉の詩:フォルテ」をつかう応援の言葉を
タラタタララタさんの種族特性の「純真無垢」に必要な「指示」として
ブラン値を一気に増やせるかもしれません。
ただ、これはおきもちにかなりかかわるものですから、
タラタタララタさんのご判断ですね。

敵を急いでおいはらうとしましたら、説得・挑発・踊りなどは
避けた方がいいとおもいます。
敵に「つまんない、めんどくさい」とおもわせるのがいいみたいですから。

カルマの方でしたら「体当たり」とかもできるみたいですね。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 14) 2020-07-01 19:21:08
レーネさん状況のおまとめありがとうございます。
優先順位としては、にゃんこ娘にお帰りいただくのと、現在進行形で踊ってる3人の救出が最優先。

それに加えて、可能であれば更なる被害拡大を避けるために、にゃんこ娘がホテルに向かわないようにしたり、既に地上に落下した人の救助。
特に怪我の状況が危険な方は、優先して救出等の検討の必要あり。

といった感じでしょうか?

ぶっちゃけ、にゃんこ娘とは私は相性悪そうなんですよね。属性的に。
ですんで、私は前に出るよりは……後ろでこそこそ動いてた方がいいかもとか。

時系列的には、踊らされてる人達の救出はにゃんこ娘対処と並行。
もしくはその後になりそうですし、ある程度救出に移れるメドが立つまでは、私は既に地上に落下した人のうち、危険な人を優先して救助に回っても大丈夫ですよ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 15) 2020-07-01 19:33:51
あと、これは独り言的な内容ですが……この状況ってカサンドラさんの絵に似てますよね。
そうなると、にゃんこ娘と対になる男性がどこかに居るのか……。

あと、本来の絵の背景は岩山だったのに、今の絵の背景は夜の町の屋根の上で、にゃんこ娘は猫に囲まれてる……。
まるで、今回の事件を暗示するみたいに。

絵に描かれたことが、現実になるみたいに……考えすぎですかね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 16) 2020-07-02 11:50:04
対になる男性は次で出てくる可能性もありますわね。もし今回何処かにいるのであれば観察くらいは出来るとよいですわ。

それと、やはり私達が遭遇する時点で被害者の方は落ちた後、になりますか。怪我をされた方の対処が基本事後という事であれば私は先ず未落下の方を救出する方を優先して動こうかと思いますわ。

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 17) 2020-07-02 21:33:58
それではわたくしはフドで魔法攻撃してますね。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 18) 2020-07-02 23:45:21
とりあえず、まずは速攻で攻撃をしかけるってことだね
それじゃあ俺が最初に【演奏】で攻撃する人の射程をあげていくよ

意識がこっちに向いたら、俺そのまま踊らされてる人を助けにいこうと思う
楽器のおかげで「すばやさ」が結構な数値になったし、移動距離も伸びるはずだし

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 19) 2020-07-02 23:52:26
そういえば、周りの猫が邪魔するかもしれないんだっけ?
しかもめっちゃいる、うん、普通に邪魔だな!
ぱっと思いついたのは、それこそ匂いだけど…ベイキさんの言う通り、全体にカバーできるかと言われると…難しいよね
足場が悪くなる危険があるけど、いっそ水筒に水いれて、猫に向かって水をまくとか?

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 20) 2020-07-03 00:38:56
おっと、顔を出せぬ間に大分話が進んでおるのじゃ。

猫娘絡みで色々書いていたらプランが埋まってしまったのじゃ…
客の救出に関しては皆に任せるのじゃ。

> 避雷針に関して
おお、純真無垢が上手く働けばいい感じになるかもしれん。
ぶっちゃけ魔物と客の間に適当に投げてる感じじゃから、どの辺とかこんな感じとか指示を貰えると助かるのじゃ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 21) 2020-07-03 08:33:06
>にゃんこ
みんなで購買のお魚持ち込んで、てんでバラバラに放り投げてにゃんこの分散を試みるとか……。
丸のままだとあぶれる子が多そうですし、ぶつ切りにして餌付けとか……でも、前回のワンコのことを考えると、過信はできませんが。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 22) 2020-07-03 09:24:39
>猫(not娘)
ベイキ嬢が言う様に、犬を慮ったものの効果が見られなかったものが多数だったから、【匂い袋】とかの方が散らせるかもしれないな。猫は繊細らしいし。
まァ、これルネサンスの朱璃がキツい思いするリスクもあるが…。

【水筒(水)】は、猫にぶっかけることで副産物として魔物猫娘が下手に雷系技能を使用出来なくすることが出来るかもしれないが、俺達も感電する範囲が広がる可能性あるから一長一短だな。


>戦闘
俺はレーネ嬢の言う様に、即時攻撃に移る感じで行動するわ。
攻撃はコスパが良い【マド】で。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 23) 2020-07-03 10:03:36
>戦闘
…いや、もしかしたら両手杖じゃなく両手本で【重力思念】で相手の雷撃を封じた方が有効か?
魔法攻撃力は大幅に下がってしまうが。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 24) 2020-07-03 20:32:41
プランは提出しましたわ。私は先述の通り未落下の方の救出を優先して行いますわね。一応その後でまだ戦闘が行われている場合は加勢に参りますわ。

それと猫達の注意を逸らす為に私も必要な場合は新鮮なお魚を撒いてみますわね。