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死に臨むもの


ストーリー Story

●生を摘むもの
 その日【ノエル・アトキンズ】は修道院を訪れていた。
 腰まで伸びた、赤い真っすぐな髪。黒いタイトなドレス。名前は男のものに違いないが、どこか物憂げに翠緑の目をすがめる彼女は、一見すると華奢な、美しい女性だった。
 到底、百戦錬磨の学園教師に見えはしない。
 辺りの墓石はぱっくりと斬り開かれ、烏や野犬の死骸が散らばっている。
「……ああ、やはりな」
 ノエルは低い声で呟き立ち上がった。
「先生……」
 修道女が不安げにノエルを見つめる。
「すぐに人払いを。この修道院に誰も近づけてはならない」
「……やはり、魔物の仕業でしょうか。人の悪戯、ではなくて……」
「人間だとして、どちみち暴徒だ。墓石を大鎌で斬り倒し、むやみに魔法を使うような連中を、修道院が迎え撃つ必要もあるまいよ」
 ノエルは修道女に向かって薄く笑った。
「日が暮れる頃までに、お嬢さんも逃げるんだよ」
 その姿はどこか、楽しげにも見えた。

●命を賭して
 原始生命理論。
 長ったらしく埃臭い本講義が『何を』取り扱っているのか、はっきりと答えられる生徒はほとんどいないだろう。
「それが言えるようになれば、教祖・聖職者として私から教えてやれることはない」
 ときっぱり言い放つノエルの、人を煙に巻くような講義は、それでも不思議と生徒が途絶えることはない。
 なぜ生きるのか。
 それはすなわち、なぜ死ぬのかに直結する。
「死に方はすなわち生き方。死はすべて生に起因する」
 それをすべての原理とした本講義が生徒に選ばれる理由は、他ならない『課題活動』の独特さによる。
 ノエルいわく。
「魔物が死ぬ様を、つぶさに観察し、死と対面すること。すべての死と、死に至るまでの生命へ敬意を払い、送ること」
 課外活動に出たあとの1万文字近いレポート課題は苦痛だが、それでも死と向き合って得られるものは大きいと、コアな人気を誇っている。
 その日、授業の最後に告げる課題にノエルが選んだのは、アーベント修道院の怪奇事件だった。
 怪奇事件の謎を探り、その元凶を始末し、7500文字のレポートを提出せよ。
 それが課外授業の内容だ。
「おそらく『グレイブスナッチ』だろう」
 とノエルは言った。
「奴らは知能も高い。狡猾で、好戦的で、相手の命を摘むことだけを目的としている。十分な戦闘経験が無い生徒にはあまり勧めない」
 そう告げつつ、ノエルはにやりと唇をゆがませる。
「……もっとも、ここで『死に瀕する』体験をしてみたいというのなら、私は諸君らの蛮勇を止めやしない。最低限の手助けはするが、諸君らの探究心は称賛に値するものだからね」
 授業の終了をつげる鐘がなる。
「諸君らの命に、学びが溢れんことを」
 約束の言葉を口にして、ノエルは教室を後にした。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 4日 出発日 2020-07-27

難易度 難しい 報酬 通常 完成予定 2020-08-06

登場人物 6/8 Characters
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《ゆうがく2年生》ヒューズ・トゥエルプ
 ヒューマン Lv21 / 黒幕・暗躍 Rank 1
(未設定)
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け
《新入生》イアフ・ドゥアト
 ルネサンス Lv6 / 黒幕・暗躍 Rank 1
「ここなら飯、そして寝床が確保できるから入学しただけ。…まぁ、ちゃんと、それなりに、働くよ。」                                ―――――― ■容姿 身長175cm。 引き締まった褐色の肉体の、黒いジャッカルのルネサンス。 フサった黒髪短髪に、黒曜石の様な黒い瞳を持つ。 全体的に古代エジプト、アヌビスを彷彿とさせる容姿の男。 表情筋も目も死んでおり、ついでに声に抑揚もない。棒読み気味。 本来、瞳は赤色らしいが、ヤル気が無いので消灯している…らしい。 ■人物 声は覇気がなく、表情も眉間にしわを寄せるくらいしか出来ない生まれついての鉄仮面族。 面倒事はとにかく他人に擦り付け、全体的にやる気がなく適当。 本人曰く「真面目に仕事してたのに迫害されたのでもうなーんにもしませーんバーカおうどん美味しい~」とのこと。 詳細は話さないが、完全に[萎え]モードらしい。 非常にリバイバルやアンデッド系を嫌う。 理由は[死を拒絶]している存在として目に映り、自分を否定されている気がする為。 「お前達は終わった、サッパリ死ね、潔く。」 「そんなに兄貴(生)が良いのんかー?はーあ、陰キャ心折れそうー。」 ただトラブルは面倒なので、眉間にしわを寄せて露骨に距離を取るだけに留めている。 ■好き 怠ける 惰眠を貪る うどん 辛味 ■嫌い 偏見・迫害 リバイバル アンデッド系エネミー 死に対する過剰な恐怖・嫌悪反応
《野性のオオカミ》ヘルムート・アーヴィング
 ルネサンス Lv8 / 魔王・覇王 Rank 1
「自分はヘルムート・アーヴィング。誇り高きロイニデッド出身、種族は狼のルネサンスだ。優れた軍人になるべく、この学園へと入学する事となった。諸君らと良い学友になれることを願っている。」                               ―――――――― 【性格】 軍人を目指すだけあって、堅さがある口調だが社交的に見えるよう、人前では口角を意識して上げて笑みを作っている。 己に厳しく、そして他人と一定の距離を置く様にしている。 ポーカーフェイス、冷静で居るよう意識してるが、狼なので尻尾に意識せず感情が現れてしまう。 『優れた軍人であるべき』アーヴィング家の血を引きながら、放蕩な1期生のプラムに嫌悪感をあらわにするが、半年経った現在、態度は軟化してきている。 根が善人の為、厄介事に巻き込まれがち。 【口調】 一人称:自分、僕(感情が高ぶると俺) 二人称:君、諸君、(男女共に)名前+君 「本日の授業の仲間は…諸君らか。勉学ばかりで実戦経験が乏しい自分だが、どうかよろしく頼む。」 「課題を一緒に乗り越えてきた仲間は、一生の宝だ。特に先日のマラソン大会は、少し自分に自信を持てたよ。」 「プラム…貴様さては何も考えてないな????」 【好き】 長姉 家族 酸味 【嫌い】 プラム・アーヴィング 自堕落な人間 侮られる事 傷の舐め合い

解説 Explan

修道院に夜な夜な現れるグレイブスナッチを討伐する課題です。
課題終了後にはレポートの提出もありますので、どんなテーマで課題に挑むのか考えるのも一興かもしれません。

なお、NPCのノエル・アトキンズが指導する『原始生命理論』は「教祖・聖職者コース」の授業ですが、他コースの生徒も受講が可能です。
課外活動には、ご自身のコースに関わりなくご参加ください。

また、本課題に登場する外敵は非常に強力です。
課題には十分に注意して臨んでください。

●舞台情報:アーベント修道院 墓地
辺鄙な田舎にある小さな修道院です。
近くの村で亡くなった人はほとんどこの修道院の墓地に埋葬されます。
木々が視界を遮るため、見通しは聞きづらいでしょう。
またグレイブスナッチの出没時刻が夜であるため、光源をもとに攻撃されるリスクはあるものの、必要に応じてランタンなど光源の持参をおすすめします。

●外敵情報
《グレイブスナッチ》
【生態】
 死後の世界との狭間に住むと言われる生物の特性を真似て作られたという魔物。
 剥き出しの頭蓋骨に、漆黒のローブ、大鎌を持つ姿は現世に現れた死神のよう。

【属性得意/苦手】
 闇/無

【得意地形】
 夜、墓場

【戦闘スタイル】
 大鎌を振り回す。
 闇系魔法「死のいざない(アインラドン・サム・ドット)」を使う。
 対象者に過度の不安や破滅願望を起こさせ、自傷行為などを引き起こす。
 また、回避や防御は訓練を受けた人間と同程度に行う。


作者コメント Comment
今回はややシリアスな物語です!

教祖・聖職者コースの学問の魅力を掘り下げたくて用意しましたが、もちろん、他コースの生徒さんの受講も大歓迎です!
どなたも振るってご参加くださいませ。


個人成績表 Report
ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:213 = 142全体 + 71個別
獲得報酬:7500 = 5000全体 + 2500個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
◆分担
私は後方から仲間の援護を主に動いて

◆応戦
まずは囮役や前衛が敵を食い止めてる隙に、敵へ重力思念を行使
敵の弱体化を図って、味方が優位に動けるよう援護

その後は、祈祷で負傷者の傷を治しつつ、敵を追い込んで魔力的にも余力があればアクラで敵を攻撃
重力思念の効果が切れて、敵をもう少し弱体化させておかないと厳しいようなら、続けて重力思念を行使

仲間が敵の魔法で自傷行為等し、傷ついてる隙を敵に狙われそうなら、祈祷で対処療法的に回復

敵が木々や墓石の陰等に隠れて姿をくらましたら、魔法感知、第六感で敵の魔力を探り、不意討ちを受ける前に敵を見つけたいです

敵の動きや味方の消耗を把握し、仲間が不意討ちされないよう声かけ

ヒューズ・トゥエルプ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:427 = 142全体 + 285個別
獲得報酬:15000 = 5000全体 + 10000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
【戦闘】
光源を持った囮を攻撃する為に姿を現したら
【奇襲攻撃】を仕掛けて徹底的にマーク。【通常反撃】【競争心理】
取り回しが効きにくそうな大鎌に対しては殆ど密着状態の零距離で戦闘を心掛ける
宙に逃げたとしても、【二段ジャンプ】や『グロリアスブースター』で徹底的に追い立てる。敵の怪しい動き、特に手の動きには【動作察知】で、注意を払う。
咥えた煙草を相手の顔に吹き飛ばして距離を置く。

【書き出し】
結論から述べれば、グレイブスナッチは生の体現者である
『生きる』を突き詰めるなら、奪うか奪われるかの二者択一
草花さえも大地を食い奪って生きる
生き方が死に方に起因する
それは、奪う側が奪われる側に回ったという話なのだ。

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:171 = 142全体 + 29個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
また知らない魔物じゃん。
とりま仕留めたら分解し………レポート?いる?えー、めんどい。
ザコちゃんのテーマは『知らない魔物の初見感想~場合によっては分解試食』とかかな。
見た目の感想は「まおー様も意外と人間の考えそーな系統の、ありがち外観デザインの魔物つくんだなー」で。
味は…仕留めなきゃわかんないけど。ホコリっぽそ。

ザコちゃん囮やるかなー。囮率高くない?世の村人は襲われる役目的なあれ?いーけど。
目立たなきゃなにがしだし【キラキラ石】抱えてあの骨の前で【挑発】しとく。少なくとも見つけてはくれんでしょ?
ダメなら石何個かぶん投げ【投擲】して気引くけど、あんまりやりたくない、他のゆーしゃ様照らしかねないし。

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:171 = 142全体 + 29個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【マド/マドガトル】での遠距離攻撃をメインに、
【二段ジャンプ/跳躍】と【ウィズマ・アーダ】での近接攻撃で相手の意表を突く。

回避を【跳躍/緊急回避/フェイスシール:翡翠】で行う。

【魔法感知】で[死のいざない]に警戒、及びベイキ嬢に重力思念のタイミングを知らせる。

[死のいざない]により連携が崩れ窮地に陥る前に、正気を失った仲間に対し【甘美の口づけ】の魅了で上書きし【説得/信用/心理学/人心掌握学】で言い包め、戦闘に戻らせる。

敵が囮に喰いつかなくなった時、【キラキラ石】で一帯の光源確保。

レポートは[グレイブスナッチボーンラーメンのレシピ]を提出。
魔物であれ、何であれ大切に命を頂くとかなんとかの話で。

イアフ・ドゥアト 個人成績:

獲得経験:171 = 142全体 + 29個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【聴覚強化】で索敵。
【隠れ身/忍び歩き】や【隠密/沈黙影縫】で闇夜に紛れ、【魔牙】や通常攻撃で奇襲、一撃離脱…ヒット&アウェイで立ち回る。
【ダガーステップ/やせーの勘/緊急回避】で回避。

光源を狙う、ってことは視覚で獲物を追うタイプ?
なら、視覚を【写法術】で遮ったり、見ている方向とは逆の映像を映し攪乱して仲間のサポート。

【聴覚強化/追跡】で敵を見失わない様にし、仲間の立ち回りに合わせ【跳躍/祖流還り/魔牙】で追撃などの連携。

【天文学】と【占い】でグレイブスナッチ君が来る大体の方向とかなんとか、戦闘に有用な情報得られないかなー。

ま、弱いなりに頑張りまーす。帰りたい。

■交流/アドリブ度:A

ヘルムート・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:171 = 142全体 + 29個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【行動習性/嗅覚強化/聞き耳】で索敵。
【息止め/隠れ身/忍び歩き】で隠密。
【三日月斬り/暴君誕生】で攻撃。
仲間の奇襲、攻撃に合わせ【支援補正:追撃Ⅰ】。
【やせーの勘/緊急回避/フェイスシール:翡翠/身代わりうさぎ】で回避。

同じ大鎌を振り回す者として、仲間の役に立てればと思うが…。
そうだ、互いの鎌を絡める様にして自由を奪えないだろうか。
自分がダメージを食らう事は承知だが、少しの隙くらいは作れるだろう。
出来れば、ダメージを食らう前に【身代わりウサギ】を消費して離脱したい所だが。

…あぁ、破滅願望か。
そうだな、精神的に脆い自覚はある。
自分の存在意義はあるのか、と常に問うているよ。

■交友/アドリブ度:A

リザルト Result

●快活な揺り籠から、静謐(せいひつ)の墓場まで
 夕焼けが空を朱に染めていた。
 赤く昏い輝きを浴びる二輌の馬車が進むたび、蹄が土を抉る。
 道沿いに鬱蒼と多い茂る草木からは声。
 そこに潜む小さき者達の、何かを訴えかけるような耳鳴りが彼らを迎え入れる。
 湿気を帯び、纏わりつく空気。
 滞留する陰鬱。
 目的地『アーベント修道院』への道程は、夜の帳が下りるにつれてその姿を、役割を変えつつあった。
 聖なる祈り場へ至る道から、死の嘆きを抱く悲しみの淀みへと。

「はーまったく。虫ちゃんもよくもまぁワンワンギャンギャン鳴いてんなー。どうせ聞くならイケてるメンズ達がギシギシしてる音の方が興奮するんだが」
 だが馬車の中にあるのは、和気藹々とした学生達の語らいだ。
 天を仰ぎながら【プラム・アーヴィング】がそういうと、腕を組み静かに瞼を閉じていた【ヘルムート・アーヴィング】がにらみつける。
「おいプラム、いい加減にしろ。ここにはチョウザ先輩やベイキ先輩といった淑女もいるんだぞ」
 彼が自分達を示している事に気づいた【チョウザ・コナミ】は、右手を上げるとヒラヒラと振る。
「別にザコちゃんは気にしなくていいよー。性別なんて生物学的な区分に過ぎないじゃん? 淑女でも奴隷少女でも、お姫様でもさ。てかヒールだった神父様の話って性別どうこう関係あんの? 骨が痛むとかの話っしょ?」
「私も別に構いませんよ。プラムさんのそういう荒ぶるハートを持っているところは、素敵な個性だと思いますし」
「は、はぁ……」
 チョウザや【ベイキ・ミューズフェス】の思っていたものとは違うリアクションに、ヘルムートは思わず言葉を失ってしまう。
「カカッ。分かったか? 俺の方がザコちゃんやベイキ嬢との付き合いは長いからなぁ? この超絶紳士な修道士様は、本当に嫌悪させるような事は言わねぇわけよ」
「そうか。それはすまない。自分には嫌悪感を抱かせる言葉しか言わないものだから誤解していたようだ!」
「ほらほら、2人共そこまでにしておけって」
 まるで愉悦と言わんばかりの表情を浮かべるプラムと、今にも噛みつこうと疼く狼のように歯を食いしばるヘルムート。
 その間に割って入ったのは【ヒューズ・トゥエルプ】であった。
「しかしヒューズ先輩!」
「俺にはお前さん達の事は何も分からない。けど経験上1つ言えるとすれば、兄ってのは弟を弄ってんのが楽しいもんなのさ」
「ひゅー! さっすがヒューズ分かってる~! お礼にこの課題終わったらイ・イ・コ・トしてやるよ☆」
「そうかい。それじゃあプラム君。久々にあの部屋で博打勝負でもどうだい? 先に爆発した方がプロテイン10個おごりで」
「あ? この爆発の女神に愛された私めに喧嘩を売ってらっしゃる?」
 しかし今度は舌の根も乾かぬうちに、プラムとヒューズの言い争いが始まる。
 そんな様子を傍観者として見つめる【イアフ・ドゥアト】は、気怠そうに欠伸をこぼす。
「なんでもいいけど元気だねー、アンタら。萎えモードな俺はついてけそうにないけど……博打ってクラブ棟にあるドロップデッド部屋だっけ? あそこは結構好きだよ。爆死の匂いがして。おうどんの三割引くらい好き。てか眠い」
「眠いのですか……では私の膝でも使います? 水枕とまではいきませんが、少しは涼を提供できるかと」
「ベイキやーさーしーい。味は辛い方が好きだけど、人はどうせなら優しい方が良いよね。出来れば『一生貴方を養います』くらいのが。真面目に働くの面倒だし」
 そして始まるクロストーク。
 件の修道院は学園からそこそこ距離がある辺鄙(へんぴ)な田舎に位置することもあり、長時間馬車にすし詰め状態では、いいかげん緊張感が持たないのも無理はない。
 ヘルムートはこめかみを押さえずにはいられなかった。
「……くっ。どうにも学園所属の人物は自由で調子が狂う」
「軍人志望の律儀ルネサンス様が嫌ってんなら拒絶すんのは自由だと思うけど」
 にしては割と口角上がりみあっかもね。
 ゆらりと向けられたチョウザの言葉に、彼は思わず自分の顔に手を当てる。
「じ、自分は……」
 自分は立派な軍人となるために。そして一族の恥じたる『ディック』を抹殺するためにここにいるはずだ。
 だが、学園に入学して半年は経つというのに、今日もこうして憎き兄と共に課題へと向かっているではないか。
(確かに、ここに来て全く成長が無かったかといえばそうではない。だ、だが……)
「ここは個性が多様性の名の下に切磋琢磨ならぬ正面衝突してっから? 流されんのも己を貫くのも自由だよね」
 そしてチョウザもまた僅かに口角を上げる。
「とりま、ザコちゃんも自由気ままに観察させてもらうからさ。ルネサンス様がどうなっていくのか」
 この先彼とプラムの運命がどうなるかは分からない。
 けれど……。
「……今は目の前の課題に集中するだけです」
「そ。いいんじゃない? ふふふ」

 こうして、個性豊かな6名を乗せた馬車は、引率である【ノエル・アトキンズ】先生を乗せた馬車と共に、夕日の落ちる先へと向かっていくのであった。

●死から得た価値
「既に修道院側には話を通してある。完全に日が落ちれば、奴は……『グレイブスナッチ』はやがて現れるだろう。全力を持って死に臨むがいい。では蛮勇を持って集いし者達よ。諸君らの命に、学びが溢れんことを」
 アーベント修道院に到着するや否や、ノエルはそれだけ言い残すと自分の馬車へと戻ってしまう。
「言うこといったら自分はのんびり待機、そういうことね」
 先生がいなくなり気が抜けたのか、ヒューズは大きく伸びをすると、自身の双剣『フギン・ムニン』の調子を確認する。
「一応課題の名目ですし、最低限の手助けはすると言っていましたけど……」
「確かにベイキ嬢の言う通りだが、期待するだけ損だろ。んで、取りあえずどうするよ?」
 プラムが一行を見渡す。
「ザコちゃん、取りあえず墓場の方いってみるつもり。どーせ来んならあそこっしょ? 下見様子見しとけば役に立つんじゃ的なあれ」
「俺もザコちゃんに一票。良かったらヘルムート君も一緒に来ないか? このメンツなら俺も大鎌持ちのアンタも前衛だ」
「分かりました。同行させて頂きます」
「おっ、じゃあ俺もヘルムートと一緒に墓場に行くぜ。可愛い弟のお化けにビビる顔が楽しみ……や、ジョークジョーク。お前の顔の方が怖えな」
 現着したという事もあり、再びピリピリ気を張り始めたヘルムートの目は、プラムを視線で射殺そうかという気迫だ。
 流石の彼も悪い悪いと両手を挙げる。
「それなら私は、修道院の方の様子を見ておきますね。墓地以外にも、何か気になるところがあるかもしれませんし」
「あーなら俺もそっちついてくー。膝枕の礼に手伝うよ」
 無関係そうなそっちなら何も考えなくて良さそうだし。という理由は隠して、イアフもまた考えを述べた。
「っし。なら決まりな。んじゃ、日没頃に墓地の入口集合で」
 全員は頷くと、二手に分かれて行動を開始するのであった。

「ようこそおいで下さいました、勇者様。ノエル先生から話は聞いております。どうぞこちらへ」
 分かれてから暫く。
 修道院へと向かったベイキとイアフは、1人の修道女に連れられ建物の中を歩いていた。
「わざわざ来て下さったのに、申し訳ありません。大したおもてなしもできないで……」
「いいえ、そんなこと。それよりも、あなたは逃げなくて宜しかったんですか?」
「先生にもそう言われました。でもここには、沢山の方の思いが集っていますから。それに私だけが己が身可愛さに逃げてしまっては、神もきっとお救い下さらないでしょう?」
「神が全てをお救い下さる、と?」
 大きな扉の手前。ベイキの問いかけに、修道女は立ち止まる。
「……いいえ。神は、全ては救ってくれません」
 暫し俯いていた彼女だったが、振り返ると、潤んだ瞳で2人を見つめた。
「私の親友は魔法を扱う事ができて。曰くそれは、精霊から授けられた加護だと言っていました」
 学園の中にいるとつい霞んでしまう事だが、この世の誰しもが、己に宿る魔力の恩恵を受けられる訳ではない。
 誰にでも、何にでも宿る魔力を、魔法という奇跡に変え得る術(すべ)――呪文。
 それは精霊より授かりもの。
 そして使いこなす生まれながらの才能か、容易ならぬ研鑽を求める強大な力。
 精霊に愛されし者。それが魔法を扱える者達に対する認識の1つだ。 
「でも、そんな奇跡を得た彼女も、魔物と相打ちになり亡くなりました。勇者様達ならよく聞くであろう話です。村を襲われ、誰かを守ろうとして消滅してしまう」
 瞳を閉じ、その光景を脳裏に浮かべているのであろう。
 暴れ回る魔物の凶爪。命を失っていく村の仲間達。血を流しながら脅威に立ち向かう友の姿……。
 涙をこぼしながら彼女は続ける。
「魔物に引き裂かれた痛みは、ずっと辛いものであったはずなのに。彼女、消えてしまう前に言ったんです……『ずっと皆を守れなくてごめんね』、と」
 再び瞼を開いた彼女は涙を拭うと、最初と同じ笑顔を浮かべた。
「その時、思ったんです。私達を救ってくれたのは彼女が得た精霊様の力だけじゃない。彼女の思いと行動なんだ……って。それから私は旅をして、ここに辿り着きました」
 修道女は再び振り返ると進行方向の扉を開く。
 ギギギという音と共に開けていく先には、大きな十字架と幾つかの長椅子が並んでいた。
「礼拝堂……ですね」
 ベイキの言葉に頷くと、彼女は十字架に向かい、赤いカーペットを一歩一歩進んでいく。
 天井のステンドグラスは沈みかけの夕日の力を借りて、彼女に続くイアフ達を紅く照らした。
「大陸は広いですから、宗教観にも色々な考え方があります。このあたりでも『神様』という存在が信じられているんですよ」
 一口に神様とまとめても、これといった定義すら定まらない程、大陸には色々な考え方、生き方が根付いている。
 彼女によればこの地域における神様とは、善行を重ねようと心がけ努力する者を、生前は知らず知らずの内に危険から遠ざけてくれるというのだ。
「そして死んでしまった暁には、大地に死者の身を捧げ神の剣たる十字に魔力を託す事で、その魂を神という高位の存在と一体化させてくれるんだそうです」
 それがここの常識。精霊を超えた存在たる神様に対する認識らしい。
「精霊様のような人智が及ばぬ存在がいる以上、絶対とは言えません。でもそんな万能で素晴しい存在、きっといてくれないと思うんです」
 話を中断した修道女は、十字架の前に跪くと祈りを捧げ、やがて振り返る。
「けれど、神を信じることで前を向ける人がいる。苦しみの思考から解放される人がいる。……だから私は、修道女(シスター)になりました」
 自分に人を救う力はない。
 けれど、自分の思いと行動が誰かを救う事に繋がるのなら。
 それが彼女が己に課した指命。神の力を信じさせる、他者への救い。
「さぁ勇者様方。もし宜しければ、祈りを捧げて行かれませんか?」
 
 日没が迫る頃。
 彼女から修道院の墓地に関する話を聞いたベイキ達は、礼拝堂を離れ墓地の入口へと向かう。

●生から得た価値
 イアフ達と分かれた面々は更に二組に分かれ、暮れ始めた少ない陽の光を頼りに、墓地周辺の調査を進めていた。
「なんてーか、普通の墓地だな。周りの木が高すぎて薄暗れぇけど」
「同感だ。ひどく荒されてはいるが、荒し方にも、墓地の様式等にも特に怪しい部分は見られない」
「戦闘に当たっての不都合はなさそう、ってわけか。取りあえずそれで充分だ」
 墓地の敷地内を中心に見回ったアーヴィング兄弟。
 100はあろうかという墓石のほとんどは過日の襲撃によって壊されてしまっていたが、無事なものであれば、小さくかがめば大人1人が体を隠せるくらいの大きさ。
 石版の上に十字が象られた物で、故人を偲ぶ習慣がある文化圏であれば良く見られるような形だ。
 墓石に刻まれた文字を確認すれば、人の名前もあればペットにつけるような名前もある。
 そして簡素ながらも全ての墓石に備えられた花は、普段この墓地は手入れが行き届いている事を感じさせた。
 そこにチョウザとヒューズのペアも合流し、情報を共有する。
「こっちの状況は把握了解。森の方も特に怪しい感じはなかったかな。一般基本的な群生林。姿は隠せそうだし見通しは最悪最低だけど、墓地の真ん中まで引き込めばあんまり関係なさげ。だよね?」
「……」
「謎めきフード様? 起きてる?」
「あ、ああ! 勿論、起きてますよ?! 起きてますとも!」
 チョウザに視線を向けていながら、どこか意識が離れていたヒューズ。
 呼びかけられた拍子に落とした煙草の火を踏み消すと、また新しく火をつける。
「おいおい~、一応相手は強敵なんだろ~? 気ぃ抜けてたら困るぜぇ~」
 そのあからさまな態度に、プラムは肩を組むようにして近づき、それとなく彼とチョウザの距離を離す。
「……そ・れ・と・も。ザコちゃんが綺麗で見とれてた、ってか?」
 そして耳元で、囁いた。
「なっ!? ち、ちょっと待て!」
 ゴホゴホと咳き込むヒューズ。
 確かにプラムの言う通り、もしきちんと着飾ったなら、チョウザ自身は男性に美人と称される部類の人物であろう。
 だがそんな彼女の女性的部分は、古びたボロ布の衣装やその独特な口調といった、普段の印象によって隠されてしまっている。
(俺に分かるのは、彼女がとても頼りになるということ。そして俺同様。人には見せない一面を持っていることだけ)
 ただ。
『んー、最近雨でも降ったんだが、結構ジメってんね。こういう時は……うん。結構良い感じ』
『ザコちゃん、何してんすか?』
『泥団子作ろうかなって。こういうの固まると武器にもなっし、大きめ肥大に作って枯れ葉なんかで包めば、一瞬くらいは簡易運搬具にしたりもできっからオススメ』
『へぇー。俺もサバイバル知識的なのはちょっとは知ってるつもりだけど、泥の使い方はあんまり考えた事なかったな』
『知識なんつーのは所詮お飾り。身につかなきゃ錆びた鉄くずと変わらない。でもさぁ? 伝聞推量実体験、身につけられればどういう形で知ろうが関係ない……じゃん?』
 その時の、彼女のうっすらと浮かべる笑みが。
 普段よりもどこか。何故か遠くあるように見えたから。
(詮索するつもりはない。けど気になるんだ。そんな彼女の小さな違いが。どこから生まれるのか)
 この気持ちをどう表現して良いか分からなかったヒューズは、プラムの会話に適当に相づちを打つ。
 知ってか知らずか、プラムもまた適度に話を盛り上げると彼から離れた。
 その様子を、チョウザとヘルムートは不思議そうに見つめている。

●死に臨む価値
 やがて夜が来た。
 暗い暗い夜が。
「さーってと。そろそろお目見え出現すっかな」
 墓地の中心付近。
 チョウザはポケットから袋を取り出すと、中身を地面にばらまいた。
 零れ落ちる『キラキラ石』が、彼女の周囲の闇を照らす。
「神様ー精霊様ー死神様ー。わざわざこんな暗闇漆黒に、敬虔なるモブな村人が祈りお参りしてっけどー?」
 言っている内容とは裏腹に、欠伸の1つもこぼしながらチョウザはまだ無事な墓石の前にいた。
 しかし、決して油断している訳ではない。
 闇に輝くキラキラ石の光は、彼女を灯りに誘われた蝶のように映し出している。
 そんな彼女に魅了されれば最後、チョウザの周囲に潜む他の学園生達が一息に息の根を止める算段だ。
 一瞬の、しかし遠大にも感じられる時間が流れていく。
(可能であれば短期決戦に持ち込みたいところですが……)
 その時。
 それまで静粛を保っていたベイキの髪から、僅かな風の揺らめきによって雫が零れた。
 刹那。闇から現れるのは、不釣り合いな程に白い骨張った腕と、真っ黒なローブから顔を覗かせるしゃれこうべ。そして突如煌めく命を刈り取る鈍い輝き。
『きた』
 大きな鎌を振りかぶる姿に全員がその存在を感じ取った。
 これこそが、光に魅せられた死神――グレイブスナッチだ。
「っ」
 死神と最初に対峙したのは、囮であるチョウザ。
 間一髪飛び退くことで、首元への直撃は避ける事が出来たが、刃は腹部を捉えていた。
 切裂いた。死神が得る確かな手応え。
 けれど実際、彼女の服には裂け目が生じたものの、彼女の肌には傷1つつけることはできていなかったのだ。
「……ふーん。まおー様も意外と人間の考えそーな系統の、ありがち外見印象の魔物つくんのね」
 そういいつつポケットから真っ二つに避けた『身代わりうさぎ』を投げ捨てると、素早く臨戦態勢を取る。
「ほらほら、やんなら早くやんないと、ザコちゃんはモブだよ? ゆうしゃ様の1人や2人、呼んじゃうけどー?」
 彼女の挑発に言葉は返さない。
 だが意図は分かるのだろう。
 最初の一撃を凌いだことで、チョウザへの認識を改めた死神は、鎌を構えながら浮遊するようにしてゆっくりと近づいてくる。
「あっそ。じゃあその余裕な態度に甘んじちゃお。きゃー助けてーゆーしゃ様ー」
 すると、チョウザはあろうことか死神に向かい駆けだした。
 これに反応し死神は、急ぎ鎌を振り下ろす。
「ざーんねん」
 先程同様鋭い一撃が振るわれるが、性別の有無は別にして、今度意表を突かれたのは彼の方だ。
 スライディングで死神の足下を通り抜けたチョウザの背中越し。
「いきます……『アクラ』っ!」
 ベイキが放った水流が死を狙う。
「――」
 回避しようと体勢を崩したグレイブスナッチだが避けきれず、その肩に水流を受ける。
「仕掛ける!」
「支援します!」
 そこにすかさず飛び込んだのは、ヒューズとヘルムートだ。
 双剣と大鎌が、左右から同時に振るわれる。
「やりましたか?!」
「ダメだ、まだ浅い!」
 2人の攻撃は確かに死神を捉えた。
 しかし彼もまた『死そのもの』と畏れられる凶悪な魔物。
 受けた刃をものともせず、鎌で柄でなぎ払うように殴りつけると、もう一方の手でヘルムートの首を掴みかかる。
「……がはっ!」
「――――」
 言語として、文字として認識できない不快な音と共に。
 ドクロの奥に、瞳のような形の赤く昏い魔力が高まっていく。
「はな……せ!」
 逃れようとヘルムートが力を込めるが、骨の腕は一層の力で顔を近づけると、彼の瞳を深く見つめる。
「ヘルムート!」
「止めろっての」
 そこにプラムの『マドガトル』とイアフの双剣『フギン・ムニン』が襲いかかる。
 激しい攻勢を前に彼を解放したグレイブスナッチは、イアフと再び戦列に戻ってきたヒューズ、2人が持つ4本の剣と切り結ぶ。
「おい、大丈夫か?」
「…………」
 イアフ達にその場を任せ、プラムとベイキはヘルムートへと駆け寄った。
 だが、兄の言葉に弟の返事はない。
「聞こえてるか? なぁ? ヘルムー――」
「触るなぁぁあぁあああああああ!!!!」
 次の瞬間。
 プラムが触れようとした事をきっかけとするかのように、突如暴れ出すヘルムート。
 彼の澄んだ碧色(へきしょく)の眼(まなこ)は、淀んだ赤に染められてしまっている。
「ディッッック! 俺は、俺は貴様がああああぁぁ!?」
 募る怨嗟(えんさ)の言葉は、プラムへ呪詛のように紡がれる。
 何故お前がアーヴィングの跡取りなのか?
 何故お前が姉君の実弟なのか?
 何故お前はその血を持ちながら、こうも不浄でいられるのか?
「何故……俺はそんなお前の代わりになれないのか……!」
「はぁ……。ったく。お前は世話のかかる弟だよ。そんなに知りたきゃ教えてやんよ」
 プラムは持ち込んだ杖『クロノスタシス』越しに大鎌をその身で受け止める。
 けれど湾曲した鎌の切っ先は、彼の背中に確かな傷を刻んでいた。
「プラムさん!」
「心配すんなベイキ嬢。躾はすぐ済む」
「近寄るな! 消えろ! お前がいてはアーヴィング家の誇りが!! 俺の居場所が!!!」
「うるせぇな。お前狼のルネサンスなんだから、あんま吠えると負け狼呼ばわりされちまうぞ?」
 うぜーもんには蓋をしろ、ってな。
 痛みなどまるで意に介さず、『甘美の口づけ』がヘルムートの唇に押し当てられる。
「!?」
「リードしてやる。快楽に酔いな」
 鎌が手を離れ、地へ落ちた。
 灼熱地獄のような苛烈さが、滑らかに揺れるお湯で溶かされるチョコのように崩れていく。

 その口づけは、確かに甘かった。
 いや、優しかった。というべきだろうか。
 こんなにもコイツを嫌っているはずなのに。
 自身の無力さに、消えてしまいたいと。
 ――確かに思ったはずなのに。
(お前は真面目過ぎんだよ。なんでもかんでも。自分の気持ちに素直になれば、お前のやりたいがお前のいる理由になる)
 そんな事全てがどうでも良くなって。
 唇の感覚器官を伝う何かが、俺に思い出させる。
 この感覚を味わっていたい。
 軍人には不釣り合いな、甘く、それでいてほろ苦い。
 ずっと心に居座り続ける邪魔で邪魔で仕方ない心の躍動。
 こんな感覚……どこかで……。
(気にしてないです! そこまでしてもらうほど気にしてませんから!)
 い、いかん!
 
「っいてぇ?!」
 背中から鎌が抜ける。代わりに顔面に走る淡い痛み。
 噛みつかれた口を押さえ、プラムが距離を取る。
 一方のヘルムートも、顔は紅潮しているものの、瞳は落ち着いた緑色を取り戻していた。
「貴様っ! ふざけるなよプラム・アーヴィング!! 将来を誓った男女でもあるまいに、せ、接吻など!!!」
「だからって噛むなよ、助けてやったってのに! もっと別なとこ噛みちぎってやろうか?」
「ああほらプラムさん。動かないで、今背中のケガを見ますから」
 一触即発、再び戦闘が始まろうかという空気であったが、ベイキの言葉にプラムは引き下がると、彼女の治療を受ける。
「後少し遅かったら舌引きちぎられてたぜ、ったくよ」 
「でも、まんざらでも無さそうでしたね。お二人とも」
「中々に濃ゆーくイッたからなぁ。興奮したかいお嬢も? 昔でも思い出して?」
「どうでしょう。ま、あと少し長ければヒューヒューと口笛くらいは吹いたかもしれませんけど」
「良いねぇ。そういう底の知れなさ、俺は嫌いじゃない」
 プラムの言葉にベイキはただ聖母の様な微笑みを返すのであった。

 一方。
 チョウザとヒューズ、イアフの3人は暗闇から放たれる魔法に苦戦を強いられていた。
「くそ! 姿が掴めなきゃ、狙いようがねぇぞ!」
 回避には限界がある。3人とも
「音もほとんどない。あっちの方が一撃離脱は得意って訳ね。はぁー帰りたい」
 イアフのため息が零れる。
 プラム達が戦場の中心で愛(?)を感じている最中、できる限り肉薄を心がけた彼らであったが、距離を取られ見失ってしまっていた。
「でもさー? 姿を掴もうにも……」
 ヒューズの言葉に応えるように、チョウザは足下のキラキラ石を先程魔法が放たれた箇所へ放る。
 すると、闇が照らされていく中で、一部分のみ明るくならない空間があった。
「あんな風に黒み強めな魔力で体覆われちゃ、目で発見認知はしんどみあるよね」
 暗闇はグレイブスナッチのテリトリーだ。
 闇を遮る光を優先的に狙う敵の性質を考慮したチョウザ達の囮作戦は見事であった。
 しかし時間を経るにつれ、ヒューズ達が加える有効打と、彼らの手傷の釣り合いは、どんどん比重が変化してしまう。
「次、後ろ」
 イアフの野生の勘が迫る切っ先を感じ取った。
 言葉に素早く反応し、3人はかがむことで死の刃を回避する。
 攻撃の瞬間のみ、姿をくらます魔法が消える事で、まるで死神の鎌が空中に舞っているようにも見えた。
(このままじゃじり貧。確実に奴を止めるなら……あれを出させるしかねぇか)
 兄以外には礼儀正しく実直な後輩。
 彼を乱した『死のいざない(アインラドン・サム・ドッド)』の名を冠する闇の魔法。
「イアフ君。後は頼む。もし俺が狂ったら……躊躇なくやってくれ」
「え?」
「いくぜ骸骨野郎!」
 イアフの返答を聞くことなく、ヒューズは暗闇の中へ飛び込んでいく。
 迎え入れるは死神の放つ魔法弾。
 意識を集中させ避ける。だが、数が数だ。
 その内の一発が直撃。まるで馬車に正面から跳ねられたような鈍痛が彼を蝕んだ。
「ごふっ……! そんなんじゃ俺は死にきらねぇぞ……!」
 痛みを堪えつつも僅かな鎌の揺らめきを感じ取り、ヒューズは双剣を交差させて受け止める。
「……ぐっ!」
 鎌を抑える事に力を集中すれば、増した痛みが彼に膝を突かせた。
「――――」
 勝利を確信したグレイブスナッチは、ヒューズの首を捕まえると、彼の深淵を覗き込んでいく……。
(――くるか!)

 何かが流れ込んでくる。
 そう誤解するほど溢れ出してくる。
 沸き出づるは死の夢? 妖精がくすねた誰かの記憶?
 答えはない。
 あるのは飢餓。隷属。家畜。矛盾。決別。戦争。死別。悲壮。背信。無力。道化。
 打ち払う事のできない葛藤と苦悩。
 これが虚像だと知識はあれど。
 幻想の中で舞う血しぶきに同調し、己の感情が砕けて弾ける。
 斬っても射抜いても燃やしても。
 この手を染めてまで掴んだ解放は、勇敢ではなく野蛮と揶揄されて。
 理想と心を引き換えに。
 熟成された猜疑心は、死生が救いであり贖罪であると根付かせる。
 どんなに拭おうと。薫煙(くんえん)に依存しようと。
 血の臭いが消えない。
 背中に負った傷が疼く。
 腐った鉄錆びの香り。
 くさいくさいくさいくさい。
(ちょっと臭ったらごめんね。フード様)
 僅かに脳裏に届く平坦な言葉。
 その小さな一石が、思考の流れを狂わせる。
 くさいが消える。

「……くさっ!?」
 目から自然と涙が溢れる。嗅覚が痛覚すらも引き起こすような強烈な刺激。
 意識を取り戻したヒューズの瞳に映るのは、赤い邪な光が泥に汚れた姿であった。
 そして同時に、数時間前の記憶も蘇る。
『あ、ストレミシュールカメムシじゃん。珍し』
『うおっ、それは俺も知ってるな。触んない方が良いかと思うんだが』
『くっさーい液体ばらまくかんね。でも潰さなきゃ無害無問題』
(そうか、泥団子の中に入れてたあれを潰してぶん投げたのか)
 かつて死神を前にして、死のいざないに飛び込んだ者が何人いたであろうか。
 かつて死神の顔に向かい、異臭を放つ泥をぶつけようと思うものがどこにいたであろうか。
 それを聞いた誰かが、蛮勇と称するか命知らずと嘲るか。
 その答えはここにない。
 だが仮にも『神』の異名を持つこの悪魔にそれをなした、恐れ知らずの『ゆうしゃ』達がいたことは史実となった。
(助かったぜ、ザコちゃん。こいつは多分……)
 ヒューズは渾身の力で鎌を弾き、残り僅かな距離を詰め。
 フギンを首に。ムニンを眼へと突き立てる。
「勝算って奴だぁぁ!!!」
「――――――?!?」
「ヒューズ!」
「ああ、分かってる!」
 プラムの言葉は僅かだが、意志は確かに伝わっていた。
 ヒューズは剣に体重をかけると思いきり敵を蹴り飛ばす。
 その勢いに彼の体が離れるや否や、降り注ぐのはプラムが放ったマドガトルの嵐。
「ヘルムート!」
「お前に命令されるまでもない!」
 その身へ、銀に近い白き体毛を纏わせるヘルムート。
 だが死神も終わってはいない。
 プラムの攻撃を浴び続けながらも、嵐の中を後詰めに動く彼を、骨張った手が捉えた。
 収束する魔力は、先程ヒューズを苦しめたものよりも満ちていく。
「させません!」
「もう辞めたら? 悪いけど俺には見えてるよ。アンタの死が」
 合図はない。
 だが彼らは既に、全員が次に為すべき事を知っていた。
 ベイキは後方から『重力思念』で魔力を歪め、イアフはグレイブスナッチの眼前に飛び込むと『写法術』を展開し視界を歪める。
 一瞬のたじろぎ。
 放たれる強力な魔法はヘルムートを逸れて僅かに右へ。
「喰らえっ!」
 吹き飛ぶ墓石を背に、彼の大鎌が死神の首へと突き刺さった。
 切り落とそうと力を込めれば、紫を帯びた魔力がどんどんと吹き出していく。
「――――――」
「後少し……トドメを!」
「ハイハイ。なんか仕事みたいでちょっとサゲだけど……」
 ヘルムートと挟み込むような位置に移動していたイアフ。
 その姿は、黒いジャッカルのそれへと変化していた。
「サッパリ死ね。潔く」
 イアフの右手は、大きな魔力を纏った爪となって、ためらいなく振るわれる。
 鎌と魔牙。
 6人のゆうしゃ達がつなげた二つの刃は、こうして死を断ったのであった。
 
●死と生の価値
「さて、お前達に来てもらったのは他でもない」
 あれから数週間。
 グレイブスナッチとの死闘を制した6人は、仁王立ちで待つノエルの執務室に呼び出されていた。
「改めて。まずはご苦労だったと称賛を送ろう。お前達の蛮勇は私の想像を超えていたようだ。最も、悪運が良かっただけとも言える節は多々あるが」
「そいつぁどうも? ま、寝不足のヒューズとセイ職の俺様がいたんだ。悪運担当は不在だが、一番大事な賭けには負ける気が死ねぇよ」
 プラムの軽口に思わず微笑むヒューズ。
 6人は互いの協力と作戦によって勝利を収めた。
 学園に入学して数年でグレイブスナッチを討伐。
 しかも1人の犠牲者も出さなかったというのは、大きな功績だ。
「帰る間、魔力のギリギリまで全体の治療に励んだそこのローレライに感謝するんだな」
 だがノエルがいうのも、正論ではある。
 直接的な攻撃を多く受けたイアフやチョウザはまだそこかしこに包帯を巻いており、精神に干渉するような魔法を受けたヒューズやヘルムートは、暫く保健室漬けとなっていたのだから。
 治療を担当したベイキや攻撃に徹したプラムも、相当な消耗であった事は間違いない。
 何か1つでもピースが欠けていれば、勝利はあり得なかったであろう。
「ザコちゃん達がどうだったかはともかく。教官様は、そんな話すっためにここに呼んだわけ? やっと全員保健室からだつご……解放外出できたわけだし。この後予定あんだけど」
「そうだったな。お前達がメッチェ先生の治療の合間に書いたレポート。実に愉快な出来であった」
 そういってノエルが指を鳴らすと、それぞれの前に羊皮紙が出現する。
「まずはベイキ・ミューズフェス。『グレイブスナッチはなぜ死を求めるのか』。実に学生らしいレポートだった。相対した相手を分析し、自身の考察を交えて語る。そして至った答えも実に模範的だ。命を糧に生きる我々とも違う。正確な答えなどここにありはしないが、あれはその手でただ命を奪う者。と学者間でも解されている。アーベント修道院周辺に根付く宗教観の例を用いて、解釈を定めることでの安息に触れた事も、実地にいった経験を上手く生かしているようだ」
 ベイキ同様、グレイブスナッチそのもの存在意義やこの世界の宗教観について記したヘルムートのレポートもまた、一定の評価を受けた。
 次に名を呼ばれたのはイアフだ。
「お前の考察は他と一線を画していた。確かに、生と死は表裏一体、という考え方は私も授業で思考の一例として教えている通りだ。そして死を『終わり』ではなく『次へ進むための区切り』と解釈しているな? 死という自称を一義的な見方で終えていない所は評価に値する」
 褒められているというのに、イアフの表情は変わらない。
 まさか立ったまま寝ているのか?
 寝不足を司る不良(他称)の存在を知る者であればそう誤解もし得るだろうが、これは彼の素の状態なので安心してほしい。
「だが。些か思考が偏っているな。特に生に対して記載がない……いや、避けている印象だ」
 しかし、この一言には彼の眉間が僅かに皺を刻んだ。
「特に『あんなのが居るから余計に死が嫌われるんだと思います。生物が死を受け入れやすいよう、少しくらい工夫してほしいものです。怖い物だと感じるような黒い外套じゃなくて、皆が大好きなシルバーってか白色なおうどんでも身体中に捲くとかさ。いや、実際冗談だけど。そんな風におうどん雑に扱われるとかまじもぅむり……』とのことだが? このあたりはどうにかならなかったのか?」
 ノエルがイアフを見やる。
「えー。これでも陰キャなりに社会体験だと思って頑張ったんですけどー。取りあえず萎えときますねー」
 その時には、イアフは少し前と寸分違わぬ素の表情を装着していた。
 それを見たノエルは小さくため息をつく。
「分かった。次、ヒューズ・トゥエルプ」
 ヒューズのレポートも、ノエルから高めの評価を与えられた。
「一般的な解釈よりも発展して思考しているな。我々が食糧として他の生命を刈り取るように、意図の分からない死神が『死をもたらす』行為を『生きている』と評価し、生の体現者として研究した事は着眼点として悪くない」
 だが。
 その言葉に、ヒューズは視線を逸らす。
「お前もイアフ同様、『7500文字キツい。てか自分の好きなように生きりゃ良いんだよ。どうせ死ぬんだから、もう、そうしよう。俺はそうする。だから、これ書き終わったら寝る』……ここで思考を放棄したな?」
「……うっす!」
「ふん。その開き直りは認める。やりたい時にやりたい事をやるのはいいが、肉体的な調整を怠れば、それも叶わなくなるぞ?」
 もちろんっす! 快活な声と共に右手で敬礼するヒューズ。
 彼の左手が、煙草を持っていることには、ノエルは触れないことにした。
「さて、チョウザとプラム。お前達は、3時間後に校庭10周だ」
「先生~。そりゃねぇぜ? 頑張ってレポートは埋めて出したじゃねぇかよ?」
「そうだな。そこを評価し、20周ほど減らしてある。チョウザは理由が分かっているな?」
 はいはい、と頷く彼女に対し、その後も文句を垂れるプラム。
 ノエルは聞く耳を持たないと執務室から全員の退去を命じた。
「ったく。命を頂く大切さをしっかり書いてやったってのによ」
「教官様の命令は退屈苦痛で死んじゃいそうなほど面倒みあるけど、3時間あるから、先にあれはやっちゃえるよね」
 わいわいと出ていく一同。
 その一番後方にいたベイキに、ノエルは声をかけた。
「おっと。悪いがこのレポート2枚は再提出だ。あいつらに渡しておいてくれ」
 ベイキが受け取ったレポートの拍子にはそれぞれこう記されていた。
 『グレイブスナッチボーンラーメンのレシピー予定ー』。
 『初めての分解試食ー死神様版。喰ったらレポート出すー』。
「うふふっ。分かりました。それでは、失礼します」
 最後の学生がその場を去った。
 それを確認し、ノエルは椅子に体を投げ出すようにして座り込む。
(まさかあの薄気味悪い骨を喰おうとはな。恐れ入ったよ)
 片手で頭を抱えるようにして天を仰ぐ。
 少し、笑いが漏れてきた。
(この世の全ては魔力を宿す。仮にそれが本当ならば、我々と奴らは何が違うのだろうな。生と死同様、
この世界には互いが互いを成り立たせるものが多すぎる)
 そして彼女は、椅子の上で姿勢を正すと、残った4枚のレポートを魔法で棚へとしまっていく。
「生命に敬意を払い送ったかは怪しいが……。少しは骨のある連中もいるということだな」
 ならば。
 そんな彼らの生が。死が。
 誰の何をどう成り立たせるのか。
「面白い」
 新たな興味深い研究対象を前に、ノエルはただこの言葉を贈る。
「諸君らの命に、学びが溢れんことを」
 そして3時間後。
 再び出会ったのは、まるで粉薬のような味とパッサパサの触感に、走る前から水を所望する者達。
 そして彼らに付き合うためやってきた者達。
 自由気ままな『ゆうしゃ』の姿であった。



課題評価
課題経験:142
課題報酬:5000
死に臨むもの
執筆:pnkjynp GM


《死に臨むもの》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2020-07-25 00:40:49
…レポートのテーマとかいんの?えー。
ザコちゃんのは『知らない魔物の初見感想~場合によっては分解試食』これでいーよね。

とりまザコちゃん思うんだけど、狙われ役が明かり持ってってー、攻撃する訳が持たずにー、ってしたら良くない?
そったら狙われ役が苦しんだり傷つけたりー、って方に気むかせられんだろーし。
その間にバレないよーにぐさー、ってかんじで。たぶんね?

自分傷つけるっても、危ないもん持ってなきゃそんなに致命傷にはなんないだろーし?
ってな訳で、ザコちゃんそれ訳でもいーよ。だいじょーぶだって。たぶん。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 2) 2020-07-25 23:46:37
ご挨拶が遅れましたが、教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
現状、前衛張れる方が少なそうですし……私もアクラでアタッカーに回って、短期決戦で臨む位しか思いつかないのは内緒ですが。

ただ、倒せなかったらじり貧一直線なんだなーこれが。

《新入生》 イアフ・ドゥアト (No 3) 2020-07-26 00:56:00
ノエル先生、それ、まさに「それな」だよ。
よく言ってくれた。ありがとう。じゃ…。
…え、討伐とレポート…?そんなー。

ええと…グレイブスナッチ君、ええ-ビジュアルが死に対するヘイトでは?
ああいう露骨なさぁ…あーまぁいいや。はい。黙る。ごめんなさいね。

で?ザコの俺に何しろって?無くない?
…一応手持ちの技能で戦闘してみるけどさ、期待しないでね。
レポートのテーマ?わー学生っぽい。じゃあ、「なんで毎回死ってそんなイメージなんだよ」で。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 4) 2020-07-26 01:14:10
おっす俺プラム!
レポートのテーマは「ポークボーンラーメンならぬグレイブスナッチボーンラーメンクッキング☆」だ!
…っと、お。ザコちゃんもやっぱ魔物食気になる感じ?わかるー。
ベイキ嬢もやっほー、頑張ろうぜー。

ほんほん、囮を一人決めて全員で叩く。
ザコちゃんも居るし、確かに良いかもな。
俺としては、安定信頼安全の【キラキラ石】を辺りに光源として撒こうかと思ってたけど。
とりま、俺は魔法攻撃メインに動くわ。

《ゆうがく2年生》 ヒューズ・トゥエルプ (No 5) 2020-07-26 13:35:21
黒暗のヒューズだ。
よろしく頼むぜ
なら俺は前に出るとするよ。
死神さんに何かマーキングできれば、良いんだがなぁ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 6) 2020-07-26 15:25:48
舞台は辺鄙な田舎にある小さな修道院での夜間戦闘。
近くの村で亡くなった人はほとんどこの修道院の墓地に埋葬され、木々が視界を遮るため、見通しは聞きづらいでしょう。

とのことですが、墓地の敷地内にも木々が植わってるような状況なんでしょうかね?
それとも、墓地のまわりに木々があって、墓地の外が見えないような状況なのか。

まあ、どちらにしろ、木々や墓石に隠れてる敵が、こちらの隙を伺うことができる状況ではあるようで。
逆に言えば、こちらも同じことができるんでしょうけど。

っと、プラムさんは平常運行のようで何よりです。
プラムさんまで真面目になったら、私怯える小鹿ちゃんみたいにブルってしまいそうですから。

レポート……何にするかな。

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 7) 2020-07-26 19:53:55
もう出発近いもんね。

誰もやるお人いなげだし、ザコちゃんさっき言ってた囮やるかなー。
棒も何もなしの素手でいって、自分のことポコしだしても多少時間稼げるよーにするあれ。
鎌に関してはそれなりよけっけど。よけれそーになかった時のために【身代わりうさぎ】しこんどくかなーって。
そんな感じで。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 8) 2020-07-26 21:50:29
現状、前衛2名に囮1、後衛アタッカー1って感じでしょうか?
定石なら、私は後衛ヒーラーで動くのが妥当でしょうかね。

私もアタッカーで短期決戦狙ってもいいですが、押しきれなかったときがじり貧になりそうですし、慎重策で行った方が安全牌でしょう。

敵の魔法が厄介そうですが、自傷行為等なら傷を回復して対処療法ですかね。
余力があれば、重力思念とアクラで援護にも回りましょうか。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 9) 2020-07-26 22:02:58
ベイキ嬢が重力思念持って行ってくれるのか。
なら、俺は火力に回るか…?
てか、ベイキ嬢と一緒に重力思念で押さえ続けてもいいが…。

…弟、呼んでこようかな。

《野性のオオカミ》 ヘルムート・アーヴィング (No 10) 2020-07-26 22:10:56
…叩き起こされたから何事かと思ったが…そんな課題が出ていたんだな。
力不足だろうが、精一杯励ませてもらう。

同じ鎌使いのようだ、何か立ち回りで読めるところがあるかもしれん。
前衛として戦うつもりだから、よろしく頼む。