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きれいなコルネさんは、好きですか。


ストーリー Story

「おっすおーーっす! いやあ、良い朝だねえ!」
 この人に『眠い』とか『だるい』とかいう感覚はあるのだろうか。
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』学園長、元気一杯の【メメ・メメル】を前に、早朝から課題に駆り出された学生達はそんな想いを新たにする。
 ここは『スペル湖』にほど近い森の入り口。少し進んだ先には、学園長所有のログハウスが建てられているらしい。
 独りで研究や骨休めを行うために確保した場所ではあるが、神出鬼没のメメたん先生がじっとしている事などそうあるはずもなく。
「最近全然行けてないから、水やりをしてない『花』が凄く怒ってると思うんだよね。悪いんだけど、様子を見てきてもらえない?」
 ……水をやらなければ、花は枯れるのではなかろうか。
「ログハウスの鍵はこれね。ちゃんと水やりをすればすぐ大人しくなるから、かっとなって火を付けたりしたらメッ! だぞ☆」
 学生達の疑問をよそにぽんぽん話を進める学園長と、自由奔放なメメたんらしいと思いながら課題の説明を受ける学生達。
 ここまでであればよくある学園生活のひとコマ、というだけなのだが――今回は少し様子が違うようだ。
「水やりが終わったら、ログハウスや近くの施設を使って存分に楽しんでいいからね。で、一つお願いがあるんだけど……それにコルネたんも加えてもらえないかなあ?」
 【コルネ・ワルフルド】。学園教師にして新入生の対応や広報まで担当する優しいお姉さん。
 そんな彼女の事を学生達も知らない訳ではないが、何故今その名前が出てくるのだろう?
「最近何かと忙しかったからね。コルネたんに無理させちゃったかなって、メメたんちょっち反省してるんだ。……で、これはせめてもの埋め合わせ」
 学園長が取り出したのは、白地に葡萄の柄があしらわれた木綿の着物と赤色の帯。
「これは『浴衣』っていう東方の着物でね。夏の暑い日に、これを着てお祭りに行ったりするんだって。でも、これはあくまで小道具。コルネたんを本当の意味で癒す事が出来るのは、君達しかいないと思うんだ。……だから、頼むね☆」
 コルネたんにはちゃんと纏まった休みを取ってもらうから安心してね、と言いながら、我らが学園長は学生達にウインクを飛ばすのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-08-12

難易度 簡単 報酬 少し 完成予定 2020-08-22

登場人物 5/8 Characters
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《新入生》セオ・フォスター
 カルマ Lv10 / 教祖・聖職 Rank 1
■容姿■ 見た目:褐色系高身長の細マッチョ男子、顔が少し怖い 髪:銀髪ショート 目:紅色 服:ローブ 魔法陣:両手の甲 ■性格■ 大人しいというかややコミュ障 時折自信がなくなり「…多分」と言う ■趣味■ ガーデニング ■好き■ 静か ■嫌い■ 墓で暴れる人 ■苦手■ 虫 ■口調補足■ 独特の間がある 怒ると口悪くなり、間がなくなりやや早口 怒る理由は墓で暴れる人を見た時 怒った時の一人称→俺 怒った時の二人称→てめぇ 怒った時の敬語→なし ■サンプルセリフ■ 「…セオ。……よろしくお願い致します。」 「…静かな方が…いいです。」 「…平和。……死者が静かに…眠れます。」 『てめぇら!いい加減にしやがれってんだ!!』 『墓場はライブ会場じゃねえんだ一昨日来やがれ!!』 『うっせぇ、埋めるぞ!!』
《新入生》セパル・ヤム・カホール
 ローレライ Lv3 / 王様・貴族 Rank 1
「現時点でも十二分にキュートなレディであるボクのどこに、学園で学ぶ余地があるのか不明ですがぁ……これも未来のハーレムのため、気合入れて励むですぅ」 綴りは『Separ Yam Kachol』。 『セパル(名前)』・『ヤム・カホール(国名)』。 「〜ですぅ」「〜ますぅ」と、間延びした口調で話す。 自称「人魚姫」。 海の国「ヤム・カホール王国」の第一王女であり、正統な後継ぎ。国を治めるに相応しい淑女となるべく、しきたりに従って学園に入学した。 人魚を自称しているが、魚は普通に食べる。サメは害獣。水棲哺乳類はお友達。 将来の夢は家督を継いでイケメンをたくさん雇い、自分だけのハーレムを作ること。 見た目と振舞いがイケメンであれば性別は不明だろうが女性だろうが構わないという、なかなかの強者。 ブルーとピンクの髪をツインテールにしており、パステルカラーのメルヘンチックな(いわゆるゆめかわ系の)ファッションを好む。 【好きなもの】 ・イケメン ・ファッション ・故郷の海 ・白身魚の香草焼き 【嫌いなもの】 ・海賊 ・海洋汚染 ・サメ
《新入生》白峰・雪菜
 ルネサンス Lv10 / 勇者・英雄 Rank 1
「…ここは、どこ?」 「ユキには…あった…大事な思い出が…」 【読み方】シラミネ ユキナ 【愛称】ユキ 【種族】 ルネサンス(ホッキョクオオカミ) 【口調補正】 一人称;ユキ 大事なことをいうときは、倒置法を使う 文節ごとに止まる癖がある 【容姿】 ・色白の肌に白のロングヘアに赤色の瞳 ・狼のルネサンスのため、狼の耳と尻尾がある ・やや身長は小さめ ・常に布を身につけている ・常にアザラシのぬいぐるみを持ち歩いている ・腕に星のような痣がある 【性格】 ・とてもおとなしい ・若干おバカ、時折的はずれな返答をする ・手が届く範囲は守りたい ・甘いもので簡単に釣れる 【好きな物】 ・小動物 ・甘いもの ・ゲーム(チェス等) 【苦手な物】 ・苦いもの
《商人の才覚》マリウス・ザ・シーフ
 カルマ Lv7 / 黒幕・暗躍 Rank 1
「マリウス・ザ・シーフ……『怪盗マリウス』だ」 「固すぎるビンの蓋、どこからでも開けられるはずの袋、開かずの金庫……そして、誰かに奪われた何が何でも取り戻したい宝物……」 「そういったものがあるならば、私のところに来たまえ。無論、相応の報酬はいただくがね」 本名不明。年齢不明。性別不明。国籍不明。 依頼を受けてターゲットを盗み出す、謎だらけの怪盗。 (性別に関しては、男物の服をよく着ているため、男性と仮定して扱われることが多い) 両利きで、魔法陣の位置は両手の甲。 カルマらしい球体関節の身体に、魔術的なものと思しき紋様が刻まれている。 どちらも露出の低い服で隠しており、一見してヒューマンと見分けがつきづらい。 話し方は紳士的で気障な口調、無機質で機械的な口調、フランクな若者口調の3つを、恐らくは気分によって使い分けている。 特技は鍵開け。好物はプリンアラモード。 【怪盗6ヶ条】 マリウスが己に課している、怪盗たるための6つの鉄則。 一、己の仕事に誇りと自信を持つべし 一、美意識は高く保つべし 一、日々、鍛錬に励むべし 一、道具は丁寧に扱うべし 一、暴力・破壊は極力慎むべし 一、一度定めたターゲットは必ず盗み出すべし

解説 Explan

 プロローグの情報と、プロローグに書き切れなかった情報を纏めます。

・課題の目的
 学園長所有のログハウスまで行き、『花』に水をやる事。(表向き)
 最近お疲れ気味の学園教師、【コルネ・ワルフルド】を癒す事。(真の目的)

・ログハウスについて
 広間や寝室、トイレといった設備に加え、オーブン付きのキッチンやお風呂まで備わったかなり豪華な造り。
 外は広場になっていて、複数人数が集まってのバーベキューなどは問題なく行える。
 徒歩数分の場所にスペル湖もあるので、魚の現地調達も可能。

・『花』について
 ログハウス近くに植えられた、メメたん特製の巨大ヒマワリ2輪。2階建てのログハウスよりさらに大きく、近づくと野球ボール大の種を飛ばしてくる。
 種はそれなりに硬く、頭に当たればタンコブ程度のダメージを受ける可能性がある。
 根元にバケツ2杯程度の水をかければ、満足して動かなくなる。

・コルネについて
 何も知らされておらず、学園長には『夕方頃、学生達の様子を見に行くように』とだけ言われている。
 課題開始からコルネ到着まで、『半日』の猶予があるものとする。
 『浴衣』を見た事はあるものの、これまで着た経験は無い。綺麗な衣装に興味が無い訳ではないが、かなり戸惑う事が予想される。(着付け方も知らないし、自分には似合わないと言い出す恐れがある)

・その他
 学園長が話を付けているので、『フトゥールム・スクエア』内の各施設の協力を得る事が可能。(代金も学園長持ち)
 しかし、注文によっては対応できない場合もある。(超高級な珍味が欲しい・大規模な舞台を作りたい等)


作者コメント Comment
 正木猫弥です。

 教室を訪ねると、いつも素敵なウインクで出迎えてくれるコルネ先生。そんな彼女に関するエピソードを作ってみました。
 
 正直、コルネ先生を喜ばせる事はとても簡単だと思います。
 学生達が自分のために何かをしてくれる。それだけで彼女の疲れは吹き飛ぶのでしょうが――だからこそ、『どんなやり方で喜ばせるのか』を考えてみて欲しいのです。

 一つの例として『浴衣』というアイテムを描写しましたが、必ずそれを活用しなければならない訳ではありません。ぜひとも『貴方の子に出来る事』を考えてみて下さい。

 皆様のご参加、お待ちしております。



個人成績表 Report
仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
まずは事前調査でメメたんの所へ
色々と聞いておきたい事とかあるからな

聞きたいこと聞いて現地に着いたらまずはヒマワリに水やりとログハウスの掃除だ
掃除は好きではないが快適に過ごすためには必要だからな
掃除の際はログハウス内陣地作成を使うおもにキッチン回りだな

掃除や料理を料理を用意してる間コルネ先生を外の施設に追い出したいとこだが相手がいないようならオレが相手をして来よう
動くの好きみたいだし泳いだりとかからだ動かしてくればいいと思う

相手いるようなら掃除と料理だ

帰ってきたらお風呂に入って貰ってからお酒と料理を出し(主にメメたんに対しての)愚痴があるら聞いておこう



アドリブA 絡み大歓迎

セオ・フォスター 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
心情
「植物は、まかせてください…」

行動
最初に植物の手入れを行う
向日葵には、水やりに来たことを伝えながら、接近
種はハンマーで打ち返す
「大丈夫です…水やりです…」

水あげが終わったら、花の採取
【植物学】で良い香りの花を見繕う
飾り用とプレゼント用で少し多めに採取
採取した花は、水やり用のバケツに入れて持ち帰る
ログハウスは【掃除】できれいに掃除
掃除後は、花で室内を飾る
「やはり…掃除は…いいものですね…」

コルネ先生が来たら、花束を渡す
何を話せばいいのかわからないので、花の後ろなどに隠れようとする
(体格的に隠れられないが)
「いつも…お疲れ様です…」
「いえ…その…花は…いいですよ…」

セパル・ヤム・カホール 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
アドリブ絡み歓迎

同じ浴衣をもう一着ねだり、家庭科室の設備を借り、【裁縫】で上着と巻きスカートのセパレート浴衣に改造する
これに時間がかかるので水やりは他の人に任せる
終わったらログハウスに向かい、海の中を泳ぐお魚の柄の浴衣に着替えてコルネ先生を迎える
ユキ(白峰・雪奈)に渡して構造を伝え、着付けをしてもらい湖へ
【水質学】と【生物学】で湖に棲息する魚の種類を特定し、より釣れる釣り場、釣り方を探して豪華な釣り竿で釣りをする
釣果がどうあれ夕飯時には戻ってバーベキューの設営を手伝う

白峰・雪菜 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
■準備…頑張ろう…
まずは、水やりを手伝う。
【聞き耳/運動神経】で種を攻撃して見方を種から守るように立ち回る。
攻撃を受けそうな場合は【やせーの勘/緊急回避】で回避を試みる。
そのあとに、食堂でいくつかご飯を見繕ってもらう。
干しぶどう好きと聞いているため、干しぶどうも用意する。
ご飯は、ログハウスに持って帰り、並べる。

■先生…ありがとう…
先生が到着後、浴衣を着るように【信用/心理学】で促す。
着付けに関しては、手伝いを行う。
その際に、男性陣は出ていってもらう。
他の参加者で、着付けが苦手そうな人などは手伝う。
自分も白系統の浴衣を着用。
感謝の気持ちを持ってもてなす。

アドリブA

マリウス・ザ・シーフ 個人成績:

獲得経験:48 = 40全体 + 8個別
獲得報酬:960 = 800全体 + 160個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
アドリブ絡み歓迎

水やりに参加
他の生徒が格闘している隙に
【隠密】と【沈黙影縫】で忍び寄って水をかける

終わったら学園の施設で野菜を収穫
装備品の高級なお肉と、もし他参加者が食材を持ってきたらそれも纏めてバーベキュー用に【料理】で下拵え
また葡萄のフレーバーティーを作って冷やしておく
完了したら保管しておき、コルネ先生を出迎えてもてなす
夕飯時になったらバーベキューコンロを組み立て、火を起こして焼けにくいものから焼き始める
終わったら後片付け

リザルト Result

 早朝とは思えない強い日差しが、魔法学園『フトゥールム・スクエア』の校舎に降り注ぐ。
 今日も忙しい一日が始まる。少なくとも、学園教師【コルネ・ワルフルド】にはそのはずであった。
「ふぁあ……」
 まだ人の姿もまばらな学園の廊下を、欠伸を噛み殺して歩くコルネ。すると。
「はい、家庭科室の鍵。終わったら返してね」
「ありがとうございますぅ」
 職員室から出てきたローレライの学生が、足早に立ち去っていく。
 パステルカラーを基調としたファッションに、髪型はブルーとピンクのツインテール。後ろ姿だけで、彼女が【セパル・ヤム・カホール】であると分かる。
(あれ? でも今日は確か……?)
 学園長【メメ・メメル】のログハウスに植えられた『花』の水やり。セパルはその課題に駆り出されていたはずだが……。
(また学園長の気まぐれかな? 頑張ってね)
 常日頃メメたんに振り回されている身として、セパルに心からのエールを送るコルネであった。

 家庭科室にたどり着いたセパルは、作業机に広げられた浴衣を前に腕まくりをしていた。
「異国の素敵なドレスをプレゼント。でも、楽しめなければ本末転倒ですぅ」
 普段のラフな服装を考えれば、コルネが折角の浴衣を着こなせない可能性は高い。だからこそ、慣れない服には工夫が必要となる。
「さあ、お洒落番長のお仕事開始ですぅ」
 裁ちばさみを手に、浴衣の『魔改造』に取りかかるセパル。その脳裏には、コルネが纏う浴衣のイメージが既に出来上がっていた。



 同時刻、『スペル湖』近くの森にあるログハウス。
 早朝の森に漂う静謐な空気は、ログハウスの屋根よりなお高い、巨大ヒマワリの『怒り』によって乱されていた。
「大丈夫です……水やりです……」
 荒れ狂うヒマワリをなだめるように、【セオ・フォスター】が声をかける。
 頭上から降り注ぐ種をハンマーで打ち返しながら、ゆっくりと、だが確実に歩みを進めていく。
 そんなセオを、花にあるまじき素早さで狙うヒマワリだったが――突然、糸が切れたように大人しくなった。
「対象沈黙」
 そう呟いたのは、ヒマワリの根元に水をかけた【マリウス・ザ・シーフ】であった。
 セオがヒマワリの気を引き、その隙にマリウスが忍び寄る。見事な連携プレーで、ヒマワリの鎮静化は滞りなく完了した。
「そっちも終わったみたいだな」
「水やり……お疲れ様……」
 ログハウス内の巨大ヒマワリは2輪。もう1輪の水やりを終えた【仁和・貴人】と【白峰・雪菜】が、マリウス達に話しかけてきた。
「お疲れ様。特に問題はなかったみたいだね」
「ああ。あの時使った『魔法の杖』があれば、もっと楽だったんだが」
 貴人の言う魔法の杖とは、先日、とある課題で学園長が用意した水の出る杖の事である。
「メメルでポン……やりたかった……」
「色々便利そうですよね……」
 その杖は現在整備中であるらしく、今回の為に借りる事はできなかった。貴人から杖の話を聞かされていた雪菜とセオは、少々残念そうな表情を浮かべている。
「さ、本番は此処からだね。忙しくなりそうだ」
 気を取り直すように、マリウスが全員に声をかける。
 ログハウスの清掃や料理の準備等々、『真の目的』を果たすための仕事は山積している。
 己のやるべき事に向け、学生達は行動を開始した。



 時間は進み、お昼時の学食。
「おっすおっーす! コルネたんもご飯? こっちにおいでよ!」
「学園長?」
 『干しぶどう丼』をトレーに載せ、席を探していたコルネは、学園長と複数の学生達が食卓を囲む光景を目の当たりにした。
「珍しいですね。どうしたんですか?」
「朝早くから働いた学生達に、メメたんからのご褒美さ! さあさあ、遠慮なく注文したまえ!」
 5人の顔ぶれは、ログハウスの課題に参加したメンバーのようだ。
 学園長に促され、思い思いにメニューを眺める学生達。その横には、木箱や麻袋が積み上げられている。
 荷物の中からは、大好物である干しぶどうの匂いが確かにする。それ以外にも、肉や野菜といった食材や雑貨が詰め込まれているらしい。
「ずいぶん大荷物だね。何かやるの?」
 近くの席に腰を下ろしたコルネは、干しぶどう丼を食べながら隣の雪菜に話しかけた。
「先生を……むー、むー!」
「折角だからログハウスで楽しもうと思ってね。色々計画を立てているのさ」
 セパルに口を押さえられた雪菜に代わり、マリウスがコルネに答える。
 食材はバーベキューや他の料理に。釣り竿はスペル湖での釣りに。
 バケツの中の切り花は、何かの飾り付けに使うのだろう。
「あ、そうだ。例のブツが用意できたから、貴人たんはこの後付き合ってね」
「人聞きの悪い言い方は止めて下さいよ……」
 貴人とのひそひそ話をしている様子から見て、その計画にはメメたんも一枚噛んでいるらしい。
(いいなあ……)
 正直、かなり羨ましい。最近休みを取れていないので、楽しそうな学生達が余計に眩しく見えてくる。
「あの……大丈夫ですか?」
 セオの声で我に返ったコルネは、自分がテーブル中の視線を集めている事に気付いた。
「え? あ、はは。ちょっとね」
 教師として、学生達に疲れた姿は晒せない。残りの干しぶどう丼をかき込んだコルネは、急いで席を立った。
「後でアタシもログハウスに行くから、羽目を外し過ぎないようにね? それじゃ!」
 そそくさと立ち去るコルネを、学生達はどこか気遣わしげに見送った。



 昼食を済ませ、沢山の荷物と共にログハウスへと戻った学生達。
 コルネが様子を見に来るまで残り数時間。学生達の準備は大詰めを迎えつつあった。

「何か手伝える事はあるかい?」
「助かる。じゃあ――」
 ログハウス内のキッチン。
 バーベキューの下拵えを終えたマリウスに、貴人はサラダ用野菜の切り分けを頼んだ。
(少し干しぶどうは控えめにしておくか)
 干しぶどう丼などというものを食べている時点で、コルネの食生活の偏りは明らかだろう。
(でも、完全に抜くのも可哀想か……)
 コルネをもてなす上で、やはり干しぶどうは欠かせない。
 ドレッシングを作りながら、レシピを脳内で再確認した貴人は、適切な干しぶどう量の料理を作る事にした。
「こんな感じでどうだい?」
 マリウスが切り分けたトマトや茄子、ズッキーニといった夏野菜が、サラダボウルの中で瑞々しい輝きを放っている。
「ありがとう。……よし、始めるか」
 マリウスに礼を言った貴人は、干しぶどうを適量つまみ、ボウルの中に振りかけた。



「あ、あれ?」
 夕暮れのログハウスを訪れたコルネは、ログハウスのひっそりとした様子に眉をひそめる。
「お、来たか」
「ようこそ、コルネ先生」
 コルネの気配に気付いた貴人とマリウスが、ログハウスの扉を開けて現れた。
(浴衣……?)
 貴人は黒、マリウスは白。シックな色合いのゆったりとした浴衣を纏った2人が、普段とは一味違う佇まいを見せている。
「皆どうしたの? 全然遊んでないみたいだけど、何かあった?」
「メメたんの差し金ですよ。『コルネ・ワルフルドを癒す事』――それが、オレ達の本当の課題です」
「え、アタシ? え?」
 貴人の言葉に理解が追い付かないコルネ。
「ふふっ、驚いたかい? 先生の笑顔は私たちがいただくよ」
 コルネの手を取ったマリウスが、恭しく今日の主賓をログハウスに招き入れた。

「コルネ先生、ごきげんよう。楽しんでいってくださいねぇ」
「先生……こんばんは……」
「こんばんは……」
 ログハウス内の学生達も、三者三様の『変身』を遂げていた。
 セパルは桜色の生地に、白抜の魚柄があしらわれた爽やかな浴衣。
 雪菜は白い生地に葡萄の柄の浴衣。
 そしてセオは、その長身を黒の甚平に包んでいる。
「凄い! 皆、良く似合ってるよ!」
「ふふ。他人事みたいに言ってるけど、先生の浴衣もあるんだよ?」
「あ、アタシの!?」
 コルネは、マリウスに振る舞われた葡萄のフレーバーティーを噴き出しそうになった。
「着付けのやり方は、ユキに聞いて欲しいですぅ」
 雪菜に着付けを伝授したセパルが太鼓判を押す。今着ているセパルの浴衣も、雪菜に着付けをしてもらったらしい。
「で、でも。アタシが浴衣なんて……」
 コルネはまだ決心が固まらないようだ。
「とりあえず、ひと風呂浴びてきたらどうです? 着るか着ないかは、その後決めれば良いでしょう」
 その間に晩御飯を並べておきますから、と貴人はためらうコルネを促した。



「よいしょ、よいしょ」
 コルネが入浴しているバスルーム、その脱衣所に、雪菜はコルネ用の浴衣を運び込んだ。
「浴衣……着てくれるかな……?」
 雪菜には懸念があった。それは、先ほどのコルネの様子だ。
 普段着る事のない衣装にかなり戸惑っていたし、髪の毛には干しぶどうが付いていた。
 そんなコルネを、果たして雪菜一人で立派な浴衣姿にできるだろうか?
(ユキ……後は任せたですぅ……)
「はっ!?」
 雪菜の脳裏に、『おしゃればんちょー』の言葉が蘇った。
 現在、セパルはスペル湖で釣りの真っ最中である。
 『海のプリンセスたるもの、淡水にも詳しくなくてはいけません』との事で、相当意気込んだ様子だった。
「ユキも……頑張る……!」
 セパルも、貴人も、セオも、マリウスも。皆それぞれ奮闘している。自分にできる事は何か、雪菜は必死に考えを巡らせた。

「あー、良いお湯だった。でこれが、例の浴衣かあ」
 風呂から上がったコルネは、バスタオル姿のまま雪菜が持ってきた浴衣を手に取った。
 セパルの『魔改造』が施されたその浴衣は、コルネでも着やすいよう、上着と巻きスカートのセパレートとなっている。
 夏に着る、異国の装束。着てみたい気持ちが全くない、と言えば嘘になるが――どうしても、自分には不釣り合いに思えてしまう。
「や、やっぱりアタシには似合わないかな? 残念だけど――」
 そう言いながら振り返ると、雪菜のつぶらな瞳とばっちり目が合った。
「……嫌? お揃い」
「えっ」
 改めて自分の浴衣を確認したコルネは、その柄が雪菜の着ているものと同一である事に気付いた。
「ユキとお揃い……着るの、嫌……?」
 うるうるとした瞳でコルネを見つめる、上目遣いの雪菜。そのあまりの破壊力に、コルネのためらいは雲散霧消した。
「ごめん、アタシが間違ってた! 絶対着るよ! 干しぶどうに懸けて!!」
 これまでの動きが嘘のように、コルネは猛烈な勢いでバスタオルを引きはがした。



 ほう、という誰ともつかないため息が漏れる。
 白地に葡萄の柄があしらわれた浴衣と、赤色の帯。
 腰までのロングヘアはハーフアップの髪型へと緩やかに纏められ、形作られたシニヨンは葡萄の飾りが付いたかんざしで留められている。
「ど、どう、かな……?」
 雪菜に手を引かれて登場したコルネが、はにかみながら学生達に問いかけた。

「コルネ先生、素晴らしいですぅ。もし気に入ったら、その浴衣をこれからも着てみてくださいねぇ」
「良く似合っているよ。そうしていると、何だか姉妹みたいだね」
 釣りから戻ってきたセパルと、雪菜とコルネを交互に見比べたマリウスが、大変身を遂げたコルネにお褒めの言葉をかける。
「オレからはこれを。メメたんに交渉して貰ったやつなんで、安心して下さい」
 貴人が差し出したのは、干しぶどうから造られたという赤ワイン。学食で話していた『ブツ』とは、この事であったらしい。
 しかも、学生達の贈り物はこれだけではないようだ。

「いつも……お疲れ様です……」
 コルネの目の前に、喋る花束が立っている。
 グラジオラス、ヒマワリ、ブーゲンビリア、クレマチス。夏の花々の鮮やかな色彩と香りが、コルネの全身を包み込む。
 花束の正体は、照れくさそうに花の後ろに顔を隠したセオであった。
 セオから花束を受け取ったコルネは、ログハウス内の至る所にも、無数の花が飾られている事に気付いた。
「ありがとう。もしかして部屋の花も……?」
「いえ……。その……花は……いいですよ……」
 不器用な、だが確実に感じるセオの優しさと、温かな思いやり。
 それはコルネには止めだった。
「うっ……うっ……!」
 みっともない姿は見せまいと、これまで必死で堪えてきた感情が、コルネの中で怒涛となって溢れだした。
「先生……どうしたの? 浴衣……やっぱり嫌だった……?」
「違う、違うよ。アタシ……こんなに幸せでいいのかなって……!」
 心配そうに顔を覗き込む雪菜を、コルネは強く抱きしめる。
「皆ありがとう……! 今日の事は一生忘れないよ……!!」
 雪菜に頭を撫でられるのにも構わず、コルネはしばらくの間わんわんと泣き続けた。



「――とまあ、それで終わればめでたしめでたし、だったんだけどね」
 とっぷりと夜が更けたログハウス。
 様子を見に来た学園長に、マリウスは室内の『惨状』を説明していた。
「このワイン、高級品なんだけどな……」
 床に転がった空き瓶を拾い上げながら、学園長は苦笑いを浮かべた。
 夕食の席は、和やかに進んでいたはずだった。
 セパルが釣り上げた大きなサーモンのおかげで、より豪華になったバーベキュー。貴人が腕によりをかけたサラダやドライカレー、パウンドケーキ。
 コルネは上機嫌でそれらのメニューを堪能した。というか、上機嫌過ぎた。
 貴人から上げ膳据え膳の歓待を受けている内、いつもより速いピッチで飲み続けたコルネは、あっという間に泥酔してしまったのだ。
「ぐおーっ。かーっ」
 高いびきをかいて眠りこけるコルネ。その腕には、貴人の頭ががっちりと挟まっている。
「う、うう……」
 未成年の貴人は飲酒をしてないので、半分睡魔・半分締め落とされて意識を失ったというのが正しい。
 延々コルネの干しぶどう談義を聞かされた貴人は、今頃干しぶどうの悪夢に悩まされているかもしれない。
「………………」
 うっかりコルネに付き合ってしまったセオは、テーブルに突っ伏したままピクリとも動かない。
「すう、すう……」
「ですぅ……」
 被害を免れた雪菜とセパルも、肩を寄せ合ってすやすや寝息を立てている。
「それでマリウスたん一人で後片付けしてた、と。悪かったねえ。今日一日、本当にお疲れ様」
「何、私も楽しませて貰ったからね。それに……」
「それに?」
 聞き返した学園長に、マリウスは穏やかな笑みを浮かべながら答える。
「前にもこんな風に、誰かと楽しんだことがあったような気がするが……。さて、どうだったかな……」
 マリウスの言葉は、誰かに答えを求めるようなものではないのだろう。
「………………」
 遠い目をしたマリウスに、学園長がそれ以上の追及をする事はなかった。
「そうだ。葡萄のフレーバーティーがあるけど、一杯どうです?」
「お、いいねえ!」
 よく冷えたマリウス特製フレーバーティーが、2つのカップに注がれる。
「じゃあ、何に乾杯しようか?」
「そうだね……」
「こらー! 言う事ちゃんと聞け~! がおーっ……」
 コルネの大きな寝言に顔を見合わせた2人は、吹き出すのを必死で堪えながらカップを手にする。
 そして――。
『きれいなコルネさんに!』
 本日の主賓に捧げられた言葉と、陶器の合わさる小さな音がログハウスに響いた。



課題評価
課題経験:40
課題報酬:800
きれいなコルネさんは、好きですか。
執筆:正木 猫弥 GM


《きれいなコルネさんは、好きですか。》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 1) 2020-08-07 02:38:21
魔王・覇王コースの仁和だ。
・・・上げ膳据え膳でさらに干しぶどう出しとけばいいような気がするのはオレの気のせいか?

《新入生》 セオ・フォスター (No 2) 2020-08-08 22:46:16
教祖・聖職…セオ・フォスター…

それ…すごくわかります。
干しぶどう以外…何がお好きなんでしょう…?

《新入生》 セパル・ヤム・カホール (No 3) 2020-08-10 03:54:15
セパル・ヤム・カホール、王様・貴族コース所属。
よろしくお願いしますぅ。(あら、イケメンぞろい……)

ボクの行動ですが、メメたんに同じ浴衣をもう一着ねだって、セパレートタイプに改造しようと思いますぅ。
着慣れない浴衣が気になって楽しむどころではなくなったら、本末転倒ですのでぇ。
すみませんけど、時間がかかりそうなので、できれば水やりはお任せしたいのですがぁ……、追加人員が来るかどうか、ですかねぇ。

《新入生》 セオ・フォスター (No 4) 2020-08-11 00:10:35
3人で…ですかね…?

水やりは…やります…
植物の世話…好きですので…

先生には…花でも…プレゼントしようかと…考えてます…

《新入生》 白峰・雪菜 (No 5) 2020-08-11 21:55:18
ギリギリ…間に合った…
ユキは…勇者・英雄専攻…
白峰…雪菜…

着付けの…お手伝い…するよ…?
あと…水やり…手伝う…
種をばこーん…って…する…

《商人の才覚》 マリウス・ザ・シーフ (No 6) 2020-08-11 23:42:33
やあ、キミたち。私は黒幕・暗躍コース、マリウス・ザ・シーフ。
コルネ先生の一番の笑顔は私がいただくよ。
……と言いたいところだけど、ギリギリでの参加だからね。
今のところ、水やりを表明している者が二名、私もそこに参加しよう。
あとはバーベキューの準備を行うよ。料理には自信があるのでね。