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ゴブリンジェネラル現る


ストーリー Story

●狩りの始まり
―シュターニャ近郊のとあるゴブリンの巣―
「クイタリナイ……エサ、トラエル」
 重厚な鎧を装備したゴブリンがペッと骨を吐き捨てた。
 その骨は牛の頭蓋に当たり、カランとなる。
 鎧を装備したゴブリンの周囲には牛や、豚の骨が多数散らばっていた。
『カリ! カリ!』
 4体のゴブリンが声高らかに叫び、剣をぶつけてキンキンと甲高い音を立てる。
「イクゾ……カリノジカンダ」
 ゴブリン達を率いるゴブリン、ゴブリンジェネラルは通常のハイゴブリンよりも何倍も大きな体を揺らしながら、先陣を切った。

●ゴブリンの襲撃
「今回も貴方達には難しい課題を持ってくることになったわよ」
 【ユリ・ネオネ】はすっと掲示板の前に現れると、まだ張り出されていない最新情報を話はじめる。
「やることはゴブリン退治。よって報酬は決して多くはない。リスクに合わないタイプの依頼ね」
 ユリの話を聞く生徒が一斉に減った。
 どうせ課題を遣るのであれば楽して稼げる方がいいと考えるのは当然のことである。
 予想通りのリアクションに落胆するユリの耳によく通る声が聞こえてきた。
「ゴブリンが相手なら、やるわ。どんな依頼でも」
 人込みの中かをかき分けて出てきた【アスカ・レイドラゴ】はユリの落胆しがちだった目を強い意志を持つ目で見返す。
「早く話なさいよ、張り出されてないという事は緊急性の高い依頼なんでしょ?」
 数日前までは新入生と思っていたのだが、見違えるほどに成長したのだとユリは思った。
「ええ……でも、あなたではまず無理ね。どうやら敵はゴブリンジェネラル率いる殲滅部隊だから」
「ゴブリンジェネラル?」
「そう、まぁこっちで分類上そう呼んでいるだけで種族として強いゴブリンね。でも、知能があり人語も理解するわ」
 人語を理解するゴブリンと聞いて、アスカは顔をしかめる。
 ただの怪物ではなく、意図して殺しなどを楽しめるやつかもしれないのだ。
「確認数が少ないケースだから、同じかどうかはわからないけれど知能が高く、装備もいいものを持っているとされているわ」
「やっかいね……」
「ええ、本当に。もっと厄介なのは殲滅部隊として4体のゴブリンライダーも確認できていることよ」
「ゴブリンライダー……確か馬などに乗っているゴブリンよね?」
 ゴブリンについて調べていたのか、アスカはユリが驚くほどの知識を見せる。
「ええ、そうよ。ただ、どうやら属性装備をもっているのか得意属性がある4体が確認されているわ」
 面倒な相手だなと思った生徒がさらに減った。
 報酬も低く、難易度が高い課題で怪我などしたくはない。
「速度は早く、馬の方はただの馬でなく麻痺を与える蹄を持っているわ」
「麻痺対策と……上に乗ったゴブリンは毒矢を持っている可能性もあるから毒対策も必要そうね」
 アスカは顎に手を当てながらじっくりと考えていた。
 普段は粗暴で手が付けれない問題児と他の教師からは聞いていたが、ゴブリンに関してはそんな様子はない。
 その理由をユリは知っている。
「ええ、とにかく倒そうと思わないで、多少でもダメージを与えて撤退させれればそれで充分よ」
「分かっているわ……消滅したら……何にもならないもの……」
 ユリの言葉に血濡れのロケットと、指輪をぎゅっと握りしめてアスカは依頼を受けることを決意した。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2020-09-22

難易度 とても難しい 報酬 ほんの少し 完成予定 2020-10-02

登場人物 3/8 Characters
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  

解説 Explan

●目的
集え! ゴブリンを倒すものよ!
ゴブリンジェネラルに率いられたゴブリンライダーが村を襲いに来るので食い止めてください。

●ロケーション
周囲は見晴らしのいい平地にある村です。
先に村にいって罠を仕掛ける時間は罠を仕掛ける数と仕掛ける人数によって変わります。
一人で村の周囲すべてに罠を仕掛ける時間はないものとし、2人いれば何とかできるものと考えてください。

村人はただの村人のため、戦力には全くなりません。
男は容赦なく殺され、年頃の女性は連れ去られることになるでしょう。

ゴブリンの襲撃には気づいておらず、平和に過ごしています。
逃げ場としては村の中央にある教会に村人全員が収容できます。

●敵について

≪ゴブリンジェネラル 【格】5≫
※ただし、各種装備のためこれ以上の強さを持つ可能性あり。
ゴブリンにしては知能が高く、戦闘力も高いです。
魔法抵抗力のある鎧に斧に盾と装備も立派なものを装備しています。
性欲と食欲が旺盛で、家畜が片っ端から食べていくでしょう。
将軍とついている通り、ゴブリンには珍しく武人らしい性格をしています。
魔法使いを卑怯とみる傾向があります。
人語をかいするため、交渉ごとに応じる場合もあります。


《ゴブリンライダー単体 【格】4》
※ただし、各種装備のためこれ以上の強さを持つ可能性あり。
馬にまたがったゴブリン達です。
四天王と呼ばれ、それぞれ火、水、地、風の4属性を持っています。
こちらも魔法抵抗力のある鎧を装備しています。
弓による毒矢攻撃が得意です。
また、またがっている馬自身は素早く、突撃が脅威です。
麻痺を与える蹄のキックにも注意が必要です。

●補足
①ゴブリンジェネラルは高レベルの生徒でようやく戦えるレベルです。
 倒すことは困難だと思ってください。
②行動不能/重傷/失敗の可能性が他エピソードよりも高い課題です。


作者コメント Comment
こんここーん♪ 橘真斗です。
ゴブリン退治シナリオですが、ストーリーがつながっているものではないので
初めてはいる方でも遠慮なくご参加くださいませ。

依頼の成功は殲滅させることではありません。防衛できれば御の字なので、無茶はしないようにしましょう。




個人成績表 Report
ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:37 = 31全体 + 6個別
獲得報酬:828 = 690全体 + 138個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
まずは迎撃準備ね。
村人には申し訳ないけど、家畜はゴブリンの囮&罠のために使わせてもらうわ。その後の非難は甘んじて受けるつもりよ。言い訳もしないわ。
罠は主にゴブリンライダー対策(落とし穴、ロープ)用にいろいろと。
村に障害物になりそうなものがあれば道にばらけておいておきたわね。

あとはライダーを隙をついて迎撃。【隠れ身】からお馬さん狙いで。
あるいは【コード】でこれもお馬さん狙い。ライダーやジェネラルは魔法が効きにくそうなので。
お馬さんを倒して機動力をそぎたいところね。
万が一、私を無視して村人を追う気配があれば【挑発】でこちらに意識を向けさせたいところね。
必殺技の【ドヤ顔】も使用していきたいわね。

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:37 = 31全体 + 6個別
獲得報酬:828 = 690全体 + 138個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆方針
戦力的に村の防衛は困難
村人を最寄りの街等に逃がし、村人生存を最優先

◆流れ
村人を説得し、重荷になる家財や避難の妨げになる家畜は村に残し、ゴブリン達を食い止める罠に使う

◆分担
私は村人の説得と、避難の際の先導

◆説得
・村にゴブリンジェネラル、ゴブリンライダーの群れが迫っていること
・救援に駆けつけたが、この戦力では食い止めるのも困難であること

等を村の長達に伝え、避難に同意して貰いたい

◆避難
ゴブリン達が侵攻してくる反対側のルートに村人を逃がし、馬がいるなら村人に最寄りの街へ馬で急を伝えて貰う
最寄りの街に傭兵や冒険者が居るなら、村人の避難ルートの途中で村人と落ち合って貰い、保護しながら街へ向かって貰う

クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:37 = 31全体 + 6個別
獲得報酬:828 = 690全体 + 138個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
まずは村人を説得だ
俺も話術と人心掌握術を活用し説き伏せてみるよ

村人達を村の反対側まで避難誘導し、ゴブリンが来たら知らせて外へ逃がす
見晴らしがいいから、来たことを確認してから逃がす方が安全だ
終えたら急いで三人の元へ戻ろう

合流したら挑発で皆が体勢を立て直す時間を稼ぐ
立体機動で馬の速さに対応しつつ物体透過で回避に専念

ダードとヒドガトルは馬に対して放つ
通常攻撃は木染の書でなるべく有利な属性の魔弾を撃つ

またリ7で動きを止め、仲間と連携して攻撃
仲間が毒を受けたら余裕のない者を優先にデトルだ


もし危うくなれば……賭けだ
重力思念を指揮権を持つジェネラルにかけ、自然な流れで一芝居打つ
大勢の援軍が遠くに見えた、とね

リザルト Result

●苦渋の決断
 教会の鐘が鳴り、昼休みをしようと村人達が仕事を終えて休憩に入るころ、4人のゆうしゃが村へと到着した。
「まず初めに、ここにゴブリンライダーとゴブリンジェネラルがやってくるわ。応援は私たちだけよ……」
 【ニムファー・ノワール】の言葉に村人たちはぽかんとした顔でニムファーの言葉を聞く。
「だから、一旦村から逃げてもらうわ。ここが戦場になるのよ」
 ニムファーに続き【アスカ・レイドラゴ】が村人に避難するように指示をだした。
「そんなことを急にいわれても、村から離れたらワシらの生活は……」
 村長と思われる老人が村人の間から出てきて実情を話す。
 20人余りの小さな村で、農業を中心に牛や豚を飼っていて自給自足をしている村なのだ。
「捕まれば最後、か弱い女のこんな細腕、一瞬でへし折られてしまいます。貴方の娘のそんな姿を見てでも留まりたいですか? 」
 自分の細い腕を見せて【ベイキ・ミューズフェス】は村長に語る。
 その瞳の意志の強さは冗談を言っているようには思えなかった。
「村長である貴方は村を守る義務があることもわかります。ですが、貴方が動かなかったために男達も残り戦う道を選ぶ……本当にそれが村長としての立場として正しいのだろうか?」
 ベイキに気おされている村長に向けて【クロス・アガツマ】が諭すようにはなすと、村長は頷く。
「わかった……まずは避難しよう」
「村長!」
 村の血の気の多そうな男が村長につかみかかろうとするのを、シスターが止める。
「村長さんも好きで村から離れるわけではございませんし、従いましょう。命は尊いものですから」
 シスターの言葉に男もつかみかかろうとした手を止めて引きさがった。
 生き延びるための決断をした戦いがはじまる……。

●未来のための防衛戦
「ニミィ! 引っ張って縛ったわよ」
「障害物になりそうなものといったらあまりないけど、こうしてロープの罠だけでも……」
 牛や豚をかこっていた柵を壊して放し飼いにし、柵を利用して罠をニムファーとアスカが協力して作り上げていた。
 その間にも、村人が1人、また1人と名残惜しそうに村からでていく。
「先祖からの土地を放り出して逃げなくてはいけないなんて……あの牛を育てるのにどれだけ時間がかかったのか……」
「すみません、私たちが皆さんの命を助けるためにはこの方法しかないんです。本当に……ごめんなさい……」
 目を伏せて、謝るベイキに男は毒気を抜かれたかのようベイキの後に続いていく。
「こちらこそ、すまねぇ……そうだよな、いい牛を育てれるのは俺がいなくちゃだもんな」
 逃げだしていく村人を見送りながら村の外へ先にでたベイキへクロスは大きく声をかけた。
「逃げ遅れがいないかは俺が確認するから、早く行ってくれ……馬の足音が聞こえはじめた、そろそろゴブリンライダーがやってくる」
「わかりました! 皆さん、老人は男性がフォローを子供は女性がフォローをして進んでください!」
 ベイキが大きな声を上げて避難を急がしているとき、複数の足音が地鳴りのように響いてくる。
(この先で協力してくれる方が……いるといいのですが)
 悔しいけれど、手の届く人々だけでも守りぬくために救援を呼びにいくのだ。
「見えた! アスカ! ライダーの迎撃、やっていくわよ! 新人だからって援護はしないわよ」 
「わかってるわ! ゴブリンの好きにはさせない……絶対に!」
 罠をあらかた仕掛け終えたニムファ―とアスカがゴブリンライダーと時間稼ぎの闘いが始まろうしている。
「今度は……逃げる側にはならない」
 血濡れのロケットと指輪をちらりと眺めたアスカはドラゴニア特有の羽を広げ、尻尾で地面をたたき気合をいれるのだった。
  
●罠! 罠! 罠!
 黒い馬に乗ってきたゴブリンライダー達が村の周囲を見回り、罠のない入り口に向かって固まって入ってくる。
「グヒヒ、ゲヒャヒャヤ!」
 罠など見破ったと言いたげな顔でゴブリンライダー達は唯一罠が見えていない畑の方から4体まとめて村へと突入してくる。
 小麦畑が踏み荒らされ、たわわに実った穂も散っていった。
 だが、その中にも罠が仕込まれていたのだ。
「ギギィッ!?」
 小麦のカンを結んで作った罠をところどころ仕込んでおいたのだ。
 バリケードは作れなかったが、その分不意打ちとしては効果が高い。
「アスカは上乗っていたゴブリン! 私が馬をどうにかする!」
 麦畑に背をかがめて控えていたニムファーとアスカが飛び出て、バランスを崩したゴブリンライダーへと肉薄した。
「OK! グレートアスカキィィィックッ!」
 バランスを崩したゴブリンに飛び蹴りをかまして馬と分離させたアスカがゴブリンに拳を叩き込んだ。
「すごい気合ね。こりゃ、負けてられないわ……さぁ、こちらも相手してもらうわよ」
 乗り手のいなくなった馬が暴れるがニムファーはすんでのところでかわし、左右で長さの違う剣で切り込む。
 背丈の高いニムファーは大きな馬と戦いあうにはちょうど良いし、『Clock au Dew』という名に恥じぬよう一滴でも多くの時間を稼ぐのだ。
 だが、ニムファーの背の高さは他のゴブリン達の的にもなる。
 罠をよけたゴブリンライダーの1体が毒矢をニムファーに向かって放つ。
 回避をしようにも、目の前の馬がニムファーの攻撃を受け止めているため、毒矢が刺さった。
「ニミィ!」
「いいのよ、多少ダメージは受けるのは織り込み済みよ……引き付けるのが役目だから、ね!」
 ドヤ顔をしながら、押しつぶしにかかっていた馬を押し返して、さらに斬りつける。
「まだ3体分いるんだから、アスカも頑張りなさいよ」
「わかっているわよ」
 ゴブリンにとどめをさしたアスカは立ち上がり、ニムファーと共に3体のゴブリンライダーに向かって駆け出した。

●希望の光
 ニムファーとアスカが戦っている頃、村から街につながっている道沿いに村人たちは歩いていた。
 先導するベイキは進行方向から向かってくる人影たちを警戒して、魔導書を構えて戦闘準備をする。
「おいおい、どうしたんだ。村で火事でもあったのか?」
 やってきた集団は装備は整っていないが野盗ではないようで、ぶっきらぼうな口調の中に心配する声色があった。
「あなた方は?」
「俺たちは傭兵組合『シュッツェン』の傭兵だ。ガイドを終えて根城に変えるところさ」
 男が身分をあかすとベイキの顔が初めて緩む。
「お願いです。村の方に向かってください。今、仲間が村人避難のためにゴブリンライダーやジェネラルと戦っています」
「ゴブリンジェネラルだと!? かなりの強敵だな、お前はボスへ報告と、街から手の空いているヤツをすぐに村へ援軍として寄越すよう言ってくるんだ」
 リーダー格の傭兵に言われた若い傭兵は馬を走らせて急いで街へ戻る。
「どうして、そこまでしてくれるのですか?」
 あまりの展開にベイキは不思議そうに傭兵のリーダーに尋ねた。
「あんたらは学園の生徒だろ? うちのボスが臨時傭兵として雇っていたりしているんだ、だから仲間のようなものさ。数をそろえりゃ、追い返すくらいはできるだろうよ」
「俺も連れて行ってください。一人でも戦力は多い方がいいでしょう?」
 傭兵が快くベイキの願いを聞き届けると、クロスが傭兵たちの馬に同乗して援軍に向かった。
「よかった……まだ、希望は消えていない」
 村へ向かってかけていく傭兵たちを見て、ベイキは村人の避難をより一層気合を入れて行う。
 あとは自分のやるべきことをやるだけだ。

●苦境
「ウタゲダ、ウタゲ……マズハ、クウ……ソレカラ、オカス」
 ゴブリンジェネラルが生きている牛や豚を引きちぎって食べながら、傷ついて動けないアスカとニムファーをみている。
 2体のゴブリンライダー達も鶏を生きたままむさぼり、まずは食欲を埋めながらアスカとニムファーをいたぶろうか考えているようだった。 
「ウ、ウゥゥ……」
「クッ、ソ……」
 ゴブリン達になめるように見られながらも、気力では戦おうとするが傷ついたからだが動こうとしない。
 ただ、家畜を囮にしていたおかげで今生きているとしか言いようがないのは事実だった。
「おいおい、このありさまは……」
 そこへ傭兵達とクロスが到着する。
「大丈夫……ではないか……」
 傷つき動けない二人を傭兵達が丁寧に自分たちの馬に乗せた。
「オマエラ……ジャマヲスルノカ?」
「人語を解すゴブリンとは珍しい。興味深いが……俺の前で……誰も消滅なんてさせやしない!」
 クロスが3属性の精霊の力を宿している魔導書を開く。
「キサマ……マホウツカイカ、オマエラ、イクゾ!」
「へぇ、随分と魔法への意識が強いじゃないか……」
 もしや敗れたことがあるのかと心の中で思うクロスだが、引き付ける囮としては十分だ。
 『重力思念』をそれぞれに放つと、ゴブリンライダー達は混乱をしはじめる。
「ヒギィィィ」
「ハァ……ハァ……連続三発は辛いものがあるね」
 魔力の大量消費がクロスに疲労感に近い感覚を与えていると、鎧によって魔法をはじいてきたゴブリンジェネラルが迫ってきた。
「マドウシ、ニクイ!」
 ゴブリンジェネラルの片手斧がクロスを斬り裂く。
 一瞬のことで何が起こったのか理解できずに、胸から大量の魔力が血しぶきのように吹き出した。
 膝をつくクロスではあったが、その目は闘志を失ってはいない。
「立て、立つんだ……まだ、腕が、脚が、血が、心臓が……動くじゃないか」
「トドメ!」
『させるか!』
 二人の傭兵がクロスをかばうように飛び出すがゴブリンジェネラルの横凪の一撃を受け止めながらも吹き飛ばされる。
「思った以上にパワーがありやがる」
「こりゃぁ、ヤバいっすねぇ……」
 辛うじて致命傷は防げたものの、冷や汗を流す傭兵達に希望の足音が聞こえてきた。
 援軍として大量の傭兵が向かってきているのである。
「フン……ハラゴナシノウンドウニハナッタ……カエル」
 ゴブリンジェネラルはクロスへの怒りを傭兵達を吹き飛ばしたことで発散できたのか、まだ生きている牛などを引きずり去っていった。
「賭けは……成功なのか……な」
 薄れゆく意識の中でクロスはそう思う……。

●つかんだ未来
「はっ! ゴブリンジェネラルは!?」
 クロスが意識を取り戻したとき、そこには【ユリ・ネオネ】の姿があった。
 周囲を見回せば街の宿屋の一室のベッドで寝ていて、自らのからだは包帯でまかれている。
 隣のベッドにはアスカが寝ているが、ニムファーは起き上って、自ら用意した治療薬を口にした。
 重傷とはいわないまでも、戦闘の疲れがおおいのは見てわかる。
「撤退したわ……見逃してくれたというのが正しいのかもしれないけれど」
 同席していたベイキがおずおずとユリに尋ねた。
「先生……あの村の復興とかは依頼として正式に出していただけるのでしょうか?」
「そこはわからないけれど、学園長とも協議してみるわ」
 ベイキの願いをきき遂げて、ユリは宿屋の窓から村の方を見る。
 村の被害状況はこれから詳細を確認しなければならないが、畑は荒れて家畜も食われているのだ。
 そして、ゴブリンライダーを2体倒しただけでジェネラルは生存していることも問題である。
「不安もあるだろうから、まずはジェネラルの方からどうにかしないといけないかしらね」
 ユリは誰にともなくそうつぶやいた。
 



課題評価
課題経験:31
課題報酬:690
ゴブリンジェネラル現る
執筆:橘真斗 GM


《ゴブリンジェネラル現る》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 1) 2020-09-17 08:24:53
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
村の防衛が目標といえども、ゴブリン達を追い返すなら「割りに合わない」と思わせるなりの被害を与え撤退させるとか、交渉でうまく勝ち負けのルールでも決めて勝負に勝つとか……。

ぶっちゃけると、私達でできそうな落としどころを考えて、それを目指す位しか現状では対処できそうにないですね。
まあ、あとは出発までにどのくらいの戦力が揃うかですが……。

仮に撤退させるなら、四天王とやらの半数は戦闘不能にする必要があるかも。
まあ、その時点でこちらもボロボロだと、敵さんごり押ししてくるかもですが。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 2) 2020-09-18 06:08:34
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ

ジェネラルはプロテクション2枚重ねで圧死させ・・・ってこの世界にはプロテクションはなかったわね。

とりあえず村の要塞化、罠の設置はやっておいた方が良さそう。
【罠設置】は私持ってるんだけど、陣地設営が得意な【設計】は私持ってないのよねぇ・・・。持ってる方が来てくれることを祈るわ。
来なければ下手なりに私がなんとか。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 3) 2020-09-18 06:10:46
最悪は焦土化戦術で村への興味をなくさせる手も(それはやめとけ

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 4) 2020-09-18 08:30:19
このままの人員なら、罠での遅滞戦術プラス家畜を村に残し餌にして足止め……その隙に村人を逃がす位しか、選べる手がないのも秘密ですが。
勝負に出るなら、前衛ありで最低4人は欲しいですし……最悪、私が鈍器持って前に行くのも、選択肢としては考えてはいます。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 5) 2020-09-20 18:12:50
( ´ー`)フゥー...ほんとに焦土戦術やりたくなってきたわ。
村人は郊外に脱出させた後に、畑は焼き払い、家畜は処分後毒を撒いてゴブリン達の口には入らなくする。
全てが終わった後に村人を追いかけて避難誘導と護衛。
課題的には失敗濃厚だけど、村人の生命優先を考えればね・・・
流石に何も手に入らないと解かれば撤退するでしょうし。

まぁ、まだ諦めてはいないけど。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 6) 2020-09-20 21:25:19
まあ、22日に日付が変わった時点で出発ですし、諦めないにしても……最悪に備えて、ぼちぼち動きを固めないといけませんね。
全く奪うものがないと、腹いせに村人を狙う可能性もあるんで、畑を先に焼くのは考えものかと。

どうせなら……村の家畜を貪って油断してるタイミングで、油でも撒いておいて、畑に火をかけ炎の壁でゴブリンどもを閉じ込めておいた方が……逃げる時間稼ぎにもなるでしょう。

それはさておき。

>罠
この状況ですし、先行してきそうな敵の騎兵の足を鈍らせるなり、馬を潰すような罠の優先度が高そうでしょうか?
見晴らしのいい平地となると、守るには適してませんが……草むらに隠れるようにロープを張っておいて、馬を転ばせたりする罠は定番ですかね。

一度引っ掛かると、距離をとってる後続には見破られますが、その避けた先にも罠を仕込めば……少しは進行速度を落とせますかね。

>ゴブリンライダー
こいつらがそれぞれ得意属性があるようですし、こちらが有利な組み合わせで対処したいですね。
そういえば、毒矢と麻痺の蹄があるんですっけ……そうなると、私はその解除に回った方がいいかもしれませんが。

戦力配分が難しいですね。

>アスカさん
今回は彼女も貴重な戦力です。
正面切っての応戦は無理でも、罠の用意や村人を避難させる場合の護衛。
敵を迎撃する場合の牽制等、いろいろお願いできることはありそうですね。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 7) 2020-09-20 21:56:09
あわせて、ある程度人員が集まった場合の方向性も考えておきますか。

>ゴブリンライダー
これは、なるべくこちらの有利な属性の組み合わせで戦うのは基本ですね。
そのうえで、できるだけ1対1ではやりあわず、敵1体に対し複数で対応。

騎乗してるということは、徒歩に比べ小回りは利かないでしょうし、誰かが気を引いてる隙に、蹄で対処できない側面から馬の足や腹を狙う等し、落馬したら一斉に畳み掛ける等すれば……勝機はあるかもしれません。

ぶっちゃけ、8人居れば2体は潰せるだろうと思ってます。

>ゴブリンジェネラル
こいつが問題です。
応戦するなら、現状の2年生トップクラスの前衛が複数居ないと……勝負にならないのではと。
ですんで、騎兵が先行してくるなら、こいつが来る前に騎兵を1体でも潰しておきたいところですね。

ジェネラルが来る前に騎兵を2体潰せたら、これ以上の損耗を嫌って退いてくれないかな……と、淡い期待を持ってるところですが。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 8) 2020-09-21 08:27:47
状況整理として、ゴブリンライダーはそれぞれ火、水、地、風の4属性を持っていて、魔法抵抗力のある鎧を装備していますとのこと。
そうなると、光属性、闇属性、無属性のアークライト、リバイバル、ヒューマンの方は属性相性をあまり気にせず戦えるかも。

私含めたローレライですと、苦手属性の雷属性は居ないので、属性面の不利を気にせず戦えて、特に火属性相手は有利ですね。

その辺の優位を活かすためにも、出発前にユリ先生から、ゴブリンライダーの各個体の外見特徴や属性を聞いておいて、「相手の得意属性は戦うまでわかりません」なんて間抜けな事態にならないようにしたいですね。

>村を放棄するか否か
こちらの判断の要否が、現実のものになってきました。
遅くとも、今夜の18時。
最大限引っ張っても20時には判断しないと、まとまって動けないでしょう。

判断基準としては、アスカさん(NPC)除いて4人以上の参加者が居て、うち前衛人員が2名以上。
辺りが最低ラインでしょうかね。

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 9) 2020-09-21 17:35:31
賢者・導師コースのリバイバル、クロス・アガツマだ。
見れば、難易度に比例して参加者が二人だけだったじゃないか……流石に不味そうだったので、最終日ながら参加させてもらった。
……とはいえ、それでも一人増えただけだ。やることは限られるだろうが……最善を尽くすよ。
今は取り急ぎ挨拶だけになってしまうが、会議室の作戦にはこちらもよく目を通して、加勢できるようにしておくので。
俺も、何か都合よく策が浮かべばいいのだが……時間的に、厳しいかな……

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 10) 2020-09-21 18:09:51
ふむ。
村の中を防衛ラインにするのは確かに良さそう。
罠の設置も外ではなくせまい村の中なら一人でもいけそうな気がするわ。
囮の家畜も有効に生かせそうだし、うまくいきそう。

>クロスさん参加助かるわ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 11) 2020-09-21 20:23:19
20時過ぎたようですが、ちょっと状況的に厳しいですね。
スタコラサッサと退散する用意に入りますか?

個人的なイメージは、ゴブリン達が侵攻してくる反対側のルートに村人を逃がし、家畜に馬がいるなら、村人に最寄りの街へ馬で急を伝えて貰う。
最寄りの街に傭兵や冒険者が居るなら、村人の避難ルートの途中で村人と落ち合って貰い、保護しながら街へ向かって貰う。

最寄りに都合よく傭兵の居る街があるかと聞かれたら……ウィッシュ案件でござると答えざるを得ない。

こちらに先導者アンド護衛で1~2名でしょうかね。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 12) 2020-09-21 20:30:11
で、村に仕掛ける罠としては、村のなかに牛や鶏、豚等の足の遅い・騎乗等に向かない家畜を残し、ゴブリンの足を止める餌にする。
あとは、村の周囲や村の中に罠を仕掛け、できるだけ長時間ゴブリン達を釘付けにする。

可能であれば、村の周りの柵や畑に油を染み込ませた枯れ草や薪を仕込んでおき、ゴブリンが村に入ったところで点火。
盛大な火計でどこまでゴブリン削れるか……。

まあ、命あっての物種ですからね。

村人の説得と先導は私がやっておきましょうか。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 13) 2020-09-21 21:24:21
とりあえず、村の男たちには、
「私があのゴブリン達に立ち向かっても、手足を折られ散々なぶりものにされた挙げ句、食い殺されるのが落ち。そんな仕打ちを、あなたの連れ合いや娘、姉妹に受けさせたいんですか?」

とか言っておけば、
「先祖からの土地を放り出して逃げるわけにいかない!」

とか駄々こねる子も……黙ってくれますかね?

一応、学園経由でこの地域を管理する領主や代官へ、村を追われた村人への当座の支援と、生活再建の手助けをお願いできないか、ユリ先生に掛け合ってみましょうか。

「ゴブリンと戦わなかった癖に、偉そうなこと言うな」
「自分等で責任とれ」

とか言われたら泣いちゃうかもですが。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 14) 2020-09-21 22:44:17
概ね了解よ。

罠設置は私がやってもいいかしら。
もちろん村にも残ってできる限り足止めも頑張ってみるつもりよ


《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 15) 2020-09-21 22:53:00
村での罠設置はニムファーさんにお願いできると助かります。
クロスさん次第ですが、クロスさんが村人の護衛に回るようでしたら、アスカさんに罠設置の方に回っていただけると、いざとなれば飛行して離脱もできなくはないですよね。

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 16) 2020-09-21 23:09:17
村人の護衛……となると、現在の相談から察するに外になってしまうのでは?
もし、村から出るまでの誘導ということなら承知した。

しかしながら、村の中にゴブリン達を誘い入れるにしても被害は最小限にしなければね、襲われるのを食い止めるのが本来の課題なのだから。
とりあえず誘導完了後に、俺も撃退に参戦するよ。魔法を使うときはよく考えないといけないね……

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 17) 2020-09-21 23:53:38
プラン提出完了と
あとは神に祈るわ。
どの神に祈るかは内緒☆彡