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ミラちゃん家――幻惑の森探検隊


ストーリー Story

●虫食いだらけの初夢
 私はランプを手にして暗い廊下を歩いていた。
 柱にも壁にも華麗な装飾が施されている廊下には、窓が一つもない。外からの明かりは入ってこない。
 足を進めるたび起こる細かな波音。
 廊下は一面水で覆われているのだ。深さは膝下くらいまで。だが、もともとはもっと深くまで水没していたはずだ。天井近くまで浸っていた形跡がそこかしこに残っているのだから。
 どうして急に水がここまで引いてしまったかについては、思い当たるふしがある。グラヌーゼ南部における新規貯水池の掘削だ。あれでここに注がれていた地下水の流れが変わったのだ。
 ランプに閉じ込められた魔法石の輝きが床に反射し、細切れとなってたゆたう。
 進んで行った先は行き止まりだ。ドーム型の天井がある小空間。礼拝室のような趣がある。正面にある壁の窪みに、魔王を象徴する像が安置されている。
 そこに『あの』本が置いてあった。
 私はランプを像の脇に置き、その本を手に取った。開こうとした。
 その瞬間本が燃え上がった。後から思えば、第三者が触れた時点で消滅するような仕掛けが施されていたのだろう。
 私は思わず本を水の中にほうり込んだ。激しい蒸気が上がる。
 はたと我に返り、震える手で本を取り上げた。分厚い表紙がぼろっと崩れ落ちた。
 でも、大丈夫、中身が全て焼けているわけではない。読めるところもある。
 ランプの光でバラバラになった頁を読みふける。呪い、呪い、呪いに関係する記述はどこだろう。
 ああ、あった。ここに。
 ――ああ、そうなのか。呪いにはそういう作用も含まれていたのか。
 やっぱり彼は私に嘘をついていたのだ。そうなんじゃないかとは薄々感じていたけれど。
 もし呪いを解いたら、彼は、そして赤猫は××××××××。
 それは人間全体にとって危険なことではないだろうか。
 だけど私は彼に約束した。呪いを解くと。その約束を反故にしていいものだろうか。私の身に危険が及ぶことについては、もちろん覚悟している。最初から想定してもいる。
 だけどもし家族に、あるいはこの地に住む人々に、彼が怒りの矛先を向けるようなことでもあれば。
 ……決められない。私だけでは手に余る問題だ。
 とにかく、少なくとも、これは彼には見せられない。
 ××××に×××××て××××隠す×××幻惑の森××××××××××××。

「!?」
 【カサンドラ】は跳ね起きた。
 数秒間はあはあ息を荒げ両手を握り締め、自分がどこにいるのか思い出す。
 窺うように窓へ視線を向ける。夜明け前だというのに、やけに明るい。雪が積もっているのだ。
「夢……」
 呟いて自分で否定する。いいや今のは夢ではない。夢にしては生々しすぎる。あれは実際に起きたことなのだ。でなければこんなに冷や汗が出るものか、胸が苦しくなるものか。

●夢の続きの現実
 新年早々カサンドラは言った。ひどく張り詰めた顔で。
「あの本をどこで見たのか、思い出しました。地下通路の中です」
 その言葉を聞いた【アマル・カネグラ】が思い浮かべたのは、『果て無き井戸』の一つ――【赤猫】とその仲間が通用口として使っているもの――だった。
 そこからはすでにノアの遺物が複数発見されている。カサンドラが探している『本』もまた、そのノアたちが所有していたもの。だからてっきり同じ場所のことを言っているのに違いないと考えたのである。
 だがカサンドラは彼の見立てに対し、『いいえ』と首を振った。
「その井戸ではありません――別の井戸です。一応思い出せる限り絵に起こしてみたのですが……こんな感じなんです」
 アマルは、カサンドラが広げたスケッチブックをのぞき込む。
 それは『地下通路』という単語からイメージされるものとは掛け離れていた。予備知識がないままだったら、宮殿の一角を描いたのかなとしか思えない。浸水してはいるが。
「これが通路の終着点です」
 ドーム型の天井がある小部屋についても同様だ。不必要なほどの装飾に満ち満ちている。
「身分の高い者専用の通路、とかだったんですかねえ……これで行き止まりだったんですか?」
「はい。この地下道は、多分、転移魔法によって城への出入りを行うタイプのものなのではないかと。私はここで本を見つけたんです。それから、隠した。幻惑の森のどこかに」
 こうまで断定的な言い方をするからには、相当量の記憶が蘇ってきているらしい。
 アマルはふと、カサンドラが生前最期にいた場所が、他ならぬ幻惑の森近辺であったことを思い起こした。
(あの森にもそういえば、ノアが呪いをかけていたんだっけ……今も生き続けているほど強力な)
 すうっとアトリエが薄暗くなった。厚い冬雲が太陽を遮ったのだ。ここのところ雪模様が続いている。
「……私は、今から幻惑の森に行って、その本を探そうと思います」
「えっ、い、今からですか?」
「はい。今でなければ出来ないと思います。これだけ天気が悪いなら、赤猫も容易に城から出てこない。だから、グラヌーゼでもある程度安全に探索が出来るのではないかと……」
 それは確かにそうだ、とアマルは納得した。真ん丸い顔をほころばせ、どん、と自分の胸を叩く。
「じゃあ、善は急げだ。僕も一緒に行きますよ。他の皆にも声をかけます。ところでカサンドラさん、【黒犬】にはこのことを知らせますか? 話を聞いたらついてきたがるんじゃないかって思えるんですが」
「……いいえ。探索が終わってから経過を知らせることにします。どの道彼は、まだ満足に動けないでしょうから」
 カサンドラがそのように言ったことに、アマルはほっとした。この調査に黒犬が参加してきたら、マイナス要素にしかならない。本には、呪いの解き方が載っているかも知れないのである。黒犬たちの呪いを解くべきか解かざるべきか一致した方針が出ていない段階で、それを相手に見せる形になるのは、さすがに避けた方がいい――そう思ったから。
 
●現実の続きの現実
 【トーマス・マン】はカサンドラから『幻惑の森』探索に行くこと、並びに自分達が帰ってくるまでそのことを黒犬に知らせないよう言い聞かせられた際、直ちに反論した。
「どうして?」
 彼は敏感に察したのだ。カサンドラの黒犬に対する物言いに、これまでになかった微妙な陰りが生じていることに。
 だからしつこく食い下がる。
「本が見つかりそうなことは教えてあげてもいいじゃない。森へ一緒に来て欲しくないなら、そのことを手紙で言えばいいじゃない。そしたら黒犬も無理して先生達について来たりしないよ」
 カサンドラは笑うとも泣くともつかない微妙な表情を浮かべ、言った。
「……それだと、彼をぬか喜びさせることになるかもしれないから。本がちゃんと見つかるかどうか、分からないのよ」



エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2021-01-21

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2021-01-31

登場人物 6/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《幸便の祈祷師》アルフィオーネ・ブランエトワル
 ドラゴニア Lv23 / 教祖・聖職 Rank 1
異世界からやってきたという、ドラゴニアの少女。 「この世界に存在しうる雛形の中で、本来のわたしに近いもの が選択された・・・ってとこかしらね」 その容姿は幼子そのものだが、どこかしら、大人びた雰囲気を纏っている。  髪は青緑。前髪は山形に切り揃え、両サイドに三つ編み。後ろ髪は大きなバレッタで結い上げ、垂らした髪を二つ分け。リボンで結んでいる。  二重のたれ目で、左目の下に泣きぼくろがある。  古竜族の特徴として、半月型の鶏冠状の角。小振りな、翼と尻尾。後頭部から耳裏、鎖骨の辺りまで、竜の皮膚が覆っている。  争いごとを好まない、優しい性格。しかし、幼少より戦闘教育を受けており、戦うことに躊躇することはない。  普段はたおやかだが、戦闘では苛烈であり、特に”悪”と認めた相手には明確な殺意を持って当たる。 「死んであの世で懺悔なさい!」(認めないとは言っていない) 「悪党に神の慈悲など無用よ?」(ないとは言っていない)  感情の起伏が希薄で、長命の種族であった故に、他者との深い関りは避ける傾向にある。加えて、怜悧であるため、冷たい人間と思われがちだが、その実、世話焼きな、所謂、オカン気質。  お饅頭が大のお気に入り  諸般の事情で偽名 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを胸に、学園での日々を過ごしている
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」

解説 Explan

明けましておめでとうございます。Kです。
新年早々ミラちゃん家続編。探索課題がやってきました。
同行者はカサンドラとアマル。行く先はグラヌーゼ、幻惑の森。探すものは本(の焼け残り)。

カサンドラはかなり記憶が戻ってきた模様。そのため黒犬への警戒感が強くなってきています。
とはいえ虫食い状態なところがまだまだ多い。本をどこへやったのかはかなりのところまで思い出せていますが、本の内容についてはモザイクがかかったような状態です。
トーマスは彼女がこの件を黒犬に連絡しないことについて、ちょっと納得いかない気持ちを抱いております。勝手に自分が連絡出してやろうかというところまではいきませんが、もやっとはしています。

カサンドラの読みどおり、赤猫は城から出てきません。ので、今回彼女とぶつかる危険性はありません。
今回うまく行けば、『呪い』についてかなり重要な情報が得られます。


以下、幻惑の森へ入るに当たっての注意点。

○カサンドラと行く道には、低級な魔物が生息しています。
あえて強いものに向かっていくという性質は乏しいので、勇者オーラ全開にしていけばほぼ向こうから避けるのですが、もしかすると何か勘違いする雑魚がいるかもしれないので、念のため武器など所持しておいてください。

○森にはノア一族によって、『時間・方向感覚が乱れやすい』という幻惑魔法がかけられています。
しかしその効果には、そこここの場所で強弱があります。
カサンドラと行く道は、特に効果が薄くなっている場所ですので、『自分は○○をする』『自分は○○に行く』等の目的意識を強く持つことで、迷わずにすみます。


※これまでのエピソードやNPCの詳細について気になる方は、GMページをご確認くださいませ。
そういうものが特に気にならない方は、確認の必要はありません。そのままプランをかけてきても、エピソードの内容に反しない限りは、有利にも不利にもなりません。


作者コメント Comment
年の初めのためしとて。Kです。今年はよい年になるといいですね。
ミラちゃん家には早速波乱が起きております。
皆様のご協力のおかげでカサンドラは、呪いの核心に、かなり早足で迫っていっております。




個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:90 = 60全体 + 30個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
●目的・行動
カサンドラを守って森で本を探す。

●捜索・遭難対策
危険察知、魔法感知、視覚強化、聴覚強化
感覚系スキルをフル活用し、道に迷わないよう、敵の接近をいち早くわかるよう、
本を早く見つけられるように充分気を付けて探索を行う。

●戦闘
戦闘発生時は、カサンドラには下がってもらい、
自分がかばいながらも敵から距離を取って戦う。
攻撃は『フド』、回避は『妖精の踊り』で行い、
負傷者へは『生命の息吹』で回復を行う。

●消滅対策
カサンドラがうっかり記憶が戻り過ぎて消滅してしまわないよう
森の中での回想が行き過ぎたり、本を見つけた時には充分気を付けて
必要なら彼女の目や口を覆ったり、別の話をしたりして消滅の回避に努める。

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
幻惑の森に向かい、カサンドラさんが隠した本を探し出し持ち帰る

◆用意
木や崖を登り降りしやすいよう、鉤爪付ロープを用意

◆捜索
簡単に見つからずに、在りかを見失わないようにするなら、森の奥の踏み込みにくいところにあるかも

道中はカサンドラさんの案内に従いつつ、敵襲に備え警戒

例の本には、魔法の仕掛けがあったようですし、魔法感知、第六感にも頼って本がありそうな場所を探す

◆応戦時
後方からリーライブで仲間の傷を癒しつつ、毒・麻痺を受けた仲間はデトルで解除
敵の動きや仲間の位置取り等をみつつ、仲間が不意討ち等受けないよう声かけ

強敵にはロ18で攻撃

応戦後は、必要なら簡易救急箱を利用し負傷者に応急処置を施しておく

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
トーマス様にはタスク様がついて下さるという事ですので、私はカサンドラ様の護衛に朱うちゅいたしますわ。時間や方向の感覚が狂うという事ですので、迷いそうな時は部分強化:五感や嗅覚強化、聴覚強化を用いたり、カラフルチョークで記しをつけたりしながら正しい道を探れるよう努めますわ

あとは時間に関してはおかしいと思ったら砂時計を使って確認してみましょう

もし魔物が現れたら魔牙Ⅱやヴェン・サドム。少し手ごわそうな敵は波濤拳乱舞を用いて撃退いたしますわ。ともかくカサンドラ様には傷一つつけないよう頑張ります

本を発見できたとして、カサンドラ様が内容を見て倒れたりするといけませんから支えられるよう傍についておきまわね

アルフィオーネ・ブランエトワル 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
・こちらの黒犬の扱いに対し、不満や不信感をいだいているトーマスに対し、説明をする。また、個人的にも黒犬をどう思っているのか、どのような規範を持って動いているか。腹を割って話し、トーマスの理解を求める。【説得/推測/信用/子供親和/会話術】

・探索組の帰還に備え、慰労、今後の行動の作戦会議ための会食の準備をする。【料理】(ポトフ・食後のハーブティー)

「あなたを監視する気なんてないわ。わたしは探索に適した技術は修得していないし、戦力としては十分。それよりも、クタクタになって帰ってくる皆のために、温かい食事を用意していた方が、良いからよ」

「みんなお疲れ様。お食事にする?先にお風呂にする?」

アドリブA

ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
本の捜索と回収

■行動
カサンドラと共に行動。
捜索は任せて、あちきは護衛に専念するのじゃ。

道中は強者の余裕っぽい感じを出しながら行動。
魔物が襲ってきたら、カサンドラの前で斧を構えて待ち構えて仁王立ち。
後ろには通さないのじゃ!

敵の攻撃が来たら、無痛のいたみや身代わりうさぎで受けながら通常反撃を打ち返す。
隙あらば雷装を纏っての覇道行進で蹴散らすのじゃ。
邪魔じゃ退けぃ!この魔神ラピャタミャクは止まらぬのじゃっ!!



■呪いについて
危険がどうかを考える余地があるのであれば、
解いたら周囲一帯が吹っ飛ぶとかは無さそうじゃ。
おそらく、呪いを解いたら弱体化も解けてパワーアップとかその辺かのぉ?

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
事前調査と推測で探索組に貢献

自分は探索に参加せず施設に残り
兄妹のそばにいて目を配る


トーマスの説得は
カサンドラさんの「ぬか喜び」に乗っかる形で、
「それに、呪いを解いたら逆に悪い結果になるとしたら、どうする?
例えば、解いたら黒犬が死ぬ、とか」
加えて
そもそも魔族が仕掛けたことだからどんな嘘や罠が混じってるかわからないこと
意図せずして黒犬を害することにでもなればトーマスくんも悲しかろうし
それで黒犬が逆上して学園を傷つけようものならいくらトーマスくんの願いがあってもさすがに対処せざるを得ないこと
そのあたりを話す

不審な動きは第六感で感知
例えばトーマスが黒犬からの手紙で秘密裏に呼び出されるなどは防ぎたい

リザルト Result

●幻惑の森探索
 合計30匹からなるハイエナ型ジャバウォックの群れは、森に入ってきた人間たちが格好の獲物であると認識し、襲い掛かった。
 しかしすぐに分かったのだが、それは、とんだ勘違いだった。
「来るなら来てみい! 後ろには通さないのじゃ!」
 カルマが大斧を振るって脳天を叩き割る。
 豚のルネサンスが尻尾を掴んでぶん投げる。
 狼のルネサンスが爪牙で喉笛を引き裂く。
 エリアルが風の塊をぶつけ吹き飛ばす。
 以上のようにしてまたたくまに4匹がやられてしまった。
 圧倒的な戦力差を見せ付けられた残りのジャバウォックたちは、たちまち戦意喪失。回れ右して逃げて行く。

「もしかしたら牙に毒など持っていたかも知れませんから、一応」
 ジャバウォックが撤退した後【ベイキ・ミューズフェス】は、仲間の受けた噛み傷に『デトル』をかけた。それから深緑の髪をさらりと撫でた。時々思い出したように舞ってくる雪の欠片を払い落とすために。
 あたりは静かだ。聞こえるものと言えば自分達の足音と、風が梢を振るわせる音ばかり。葉をすっかり落とした冬の木立に、曇天ごしの弱い日が降り注いでいる。
 【ラピャタミャク・タラタタララタ】は、拍子抜けしたような声を出した。
「しかし……意外と普通の森じゃな『幻惑の森』。魔物も雑魚しかおらんようじゃし」
 【アマル・カネグラ】もその意見に同意する。
「ですね。呪いがかかっているっていうから、もっと凶々した雰囲気なのかと思ってました」
 果たしてそうだろうか、と【エリカ・エルオンタリエ】は思った。
 彼女はベイキ同様、魔法感知の能力に長けている。だから、より強く感じ取ることが出来ている。自分が既に幻惑の影響を受けつつあることを。
 ふとした瞬間、曖昧になるのだ。どちらから歩いて来たのか。どこを歩いているのか。【朱璃・拝】が道々カラフルチョークで木に印をつけてくれているので、すぐ確認は取れるのだが……。
(重々気をつけないと)
 肝に命じつつ彼女は、一行の先頭を行く【カサンドラ】に目をやる。迷いない歩の進め方――どうやら本の在りかについて、相当の確証があるらしい。
 ベイキが彼女に話しかけている。
「カサンドラさん、持ち帰った本をどう隠したかは、まだ思い出せていないのですよね?」
「はい、申し訳ないのですがまだ……でも、どこに隠したかはほぼ分かっていますから……現場につけばそちらについても、多分思い出せると思います」
 それが思い出していい範囲内の記憶であることを、彼女は願って止まない。本発見→記憶が蘇りカサンドラが消滅という流れは、関係者の誰にとっても最悪なものだから。
 ……進んでいくにつれ、木立は密になっていく。木自体もより大きくなっていく。
 朱璃は木の表面に印をつけながら、カサンドラに尋ねた。
「カサンドラ様、よろしければもう少し詳細に、何故黒犬にこの本の事を告げないか教えていただけませんか? 呪いを解く事に関して何か懸念が出てきたのなら私達もそれを知って考えておくべきだと思いますので」
「それは……彼が呪いについて嘘をついているからです」
「嘘? どういう嘘でございますか?」
「呪いを解いた際、赤猫との繋がりが消える他に、何か相当重大なことが起きるはずなんです。それを彼は隠しているんです――」

●聞く耳持たせる
 机の端にことりと、ホットミルク入りのマグカップが置かれる。
 【トーマス・マン】は計算ドリルの手を止めて、マグカップを持ってきた人物【アルフィオーネ・ブランエトワル】に横目を向けた。
「……なんでアルフィオーネさんは、先生たちと一緒に行かなかったの? 僕を見張っていたいから?」
 刺のある言い方だ。
 とはいえアルフィオーネにとっては想定範囲内の反応である。
「あなたを監視する気なんてないわ。わたしは探索に適した技術は修得していないし、戦力としては十分。それよりも、クタクタになって帰ってくる皆のために、温かい食事を用意していた方が、良いからよ」
 さらりと流した後彼女は、トーマスの目を見て伝える。黒犬についての考えを。
「黒犬に強気で立ち向かったり、伝える情報を選んでいるのは、彼に力づくで解決しようとさせないためなのよ? 黒犬はあなたを利用しているだけだと思う。でも、あなたは違うと言う。たしかにそうなのかもしれない。けど、それは、あなたと黒犬の間だけのこと。だから、弱みを見せたり、内容がよく分からないうちから、彼を刺激する情報を与えるわけにはいかない」
 やはりというかトーマスは、彼女の言葉を素直に聞き入れなかった。むきになって反論する。
「おかしいよそんなの。黒犬はちゃんとカサンドラ先生が言った絵を見つけて、持ってきたんだよ。それなのに絵について分かったことを教えなくてもいいなんて、勝手だよ。先生も、アルフィオーネさんも、黒犬が魔物だからウソついてもいいって思ってるんじゃないの? 呪いを解いてあげる気、本当にあるの?」
 そこに【タスク・ジム】が入ってくる。彼もまた、幻惑の森捜索に同行しなかったのだ。トーマスとその妹、【トマシーナ・マン】の身を案じて。
「あのね、トーマスくん。僕らは黒犬の呪いを解くことを渋ってるわけじゃないんだ。でも呪いを解くのは簡単なことじゃない。しっかりした調査が必要なんだ」
 トーマスは蛙のように口の両端を押し下げていたが、タスクの次の言葉を聞いて、表情を変えた。
「黒犬はケガをしているだろう? そこに先生が言うような『ぬか喜び』をさせちゃったら、体力的にも気力的にも、より大きなダメージをくらっちゃうよ。それに、呪いを解いたら逆に悪い結果になるとしたら、どうする? 例えば、解いたら黒犬が死ぬ、とか」
「死ぬって……そんなわけないよ。もしそうだったら、黒犬が解きたいっていうわけないじゃないか」
「トーマスくん、僕はグラヌーゼの古い歴史について、ワイズ・クレバーの古書で調べたんだ。それによるとね、黒犬に呪いをかけたノア一族は、陰謀や策謀がすこぶる得意だったんだって。そんな人たちが自分のかけた呪いの内容を正確に当事者へ伝えるとは、僕にはどうしても思えないんだよ」
 トーマスはタスクとアルフィオーネに代わる代わる目を向け、再度反論する。
「そんなの、後の世の人が書いたことじゃないか。当てにならないよ。黒犬は実際ノアと一緒にいたんだから、黒犬が言うことのほうが正しいはずだよ」
 だが物言いが格段に弱くなっていた。タスクの問題提起に動揺していることは明らかだ。
 アルフィオーネはトーマスの言い分を否定せず、『そうね』と頷く。『でも』と続ける。
「万一、ということがあるわ――わたしはあなたを守ると約束した。それは単にあなたの身を守るだけじゃない。『思い』を守るということでもあるの。たとえ、友達になれなかったとしても、黒犬にはずっと元気でいてほしいんでしょう? そのためには、ただ黒犬の呪いを、解いてあげればいいというものではないのよ」
 彼女の台詞を追いかけるようにして、タスクが言う。
「呪いを解いたら、黒犬にとって不利益な何かが起きるかもしれない。そしたら彼は、あの性格から推測するに……すごく怒るんじゃないかなと思う。やけくそになって無辜の人々を害するようなことをするかも知れない。そしたらもう、学園として放っておけなくなるんだ。それは彼自身にとって不幸なことじゃないかな。トーマスくんは……どう思う?」
 トーマスは口ごもった。あれこれ考え合わせるに、『もしかして黒犬は、呪いの全部を知っているわけではないのかもしれない』という可能性を、頭から否定してしまえなくなったのだ。
 呪いを解いた結果黒犬が被害をこうむるとすれば、彼として看過出来ない。
「……タスクさん、グラヌーゼの古い歴史が書いてある古書って、僕にも読むことが出来る?」
「もちろん。何ならこれから一緒に、ワイズ・クレバーにいこうか? トマシーナちゃんも、新しい絵本を見たいって言っていたから、一緒にさ」

●隠された呪い
 話を聞くにカサンドラは、呪いを解いた際起きるだろう『相当重大なこと』が記された資料について『破棄』ではなく『秘匿』を選んだとのこと。
 ということはそれは『解いたら周囲一帯が吹っ飛ぶ』といった避けようがない危険ではないのではないか。
 ラピャタミャクはそう考え、カサンドラに問う。
「……呪いを解いたらあ奴らがパワーアップするとか、その辺かのぉ?」
「さあ……どうでしょう。はっきりしません」
 続いてエリカがカサンドラへ問いかける。
「とにかく、呪いを解いたり解こうとすると、予想できないことが起きるかもしれない。ということね? そこは分かったわ……けど、そもそも『命の連結』というのは本当のことなの?」
 もしかするとその話自体嘘かなのかも。黒犬たちがそう信じ込まされているだけなのかも――そんなふうに彼女は続ける。
 カサンドラはそれに明確な否定を返した。鉄塊が落ちてくるような、有無を言わせぬ物言いで。
「いいえ、違います。彼らの命はひとつです。片方が死ねばもう片方も確実に死にます。あれは、そのための呪いです」
 エリカは懸念を覚える。これまで呪いの核心について思い出す際、カサンドラは度々憑かれたようになることがあった。今もまた、その状態にあるのでは、と。
(そもそも今回の探索は彼女にとって、危険なのよね……本を隠した場所かその近辺で、落命した可能性は大きいのだし……)
 なので自分から、早々に話題をそらす。
「――ところで、今何時くらいかしらね。相当歩いてる感じがするけど」
 朱璃がすかさず応じた。彼女は移動している間中ずっと、砂時計で大体の時間を計っているのだ。
「いいえ、まだ森に入って一時間ほどですわよ」
 アマルが、ぶう、と鳴き声を上げる。
「ええ? まだそんなにしかたってないんですか? もうそろそろおやつの時間かと思ったのに……」
「まだまだ。先は長いですわよアマル様」
 一同はひたすら歩いていく。
 ラピャタミャクは再びカサンドラへ話しかけた。
「のう、カサンドラ。黒犬が嘘をついておるというのは本当なのかの? その事自体を知らないとか、語る程でもない些細な事と思っている可能性はないかの? あ奴は、あまり腹芸出来るように見えぬのじゃが」
 カサンドラはまたしても断定的な口調で言った。
「どちらの可能性もありません。確かに黒犬は腹芸が上手なタイプではありません。短気で、感情がすぐ表に出るし。でも、だからといって嘘をつかないというわけじゃない」
 ラピャタミャクは眉を潜める。呪いを解くか否かの迷いがあるとしても、黒犬について突き放しすぎではないだろうかと。
「……汝は何故ここにおる? 再び嘘つきの恩知らずと言われる為か? 裏切れば黒犬は今度こそ人を信じぬ。解く危険性もあるが、そこも忘れてはならん。どちらを選ぶにせよ覚悟するのじゃな。汝が無念を残さぬようによく考えるのじゃ」
 カサンドラは彼女の言葉が耳に入ってないかのように前だけ見て、声を上げた。
「この先、この先です!」
 傾斜のきつい下り坂が目の前に出現した。
 安全対策のためベイキは、大きな木に鉤爪付きロープを巻き付け、降りる際の手掛かりを作る。
 進んで行った先には、小さな池があった。
 一同目を見張る。
 池の水がどういう次第か、真っ黒だったのだ。全く中が見通せない。
 冷たい風が一陣吹いてきて、水面を揺すった。
 朱璃は鼻を鳴らす。
「ひとまず水の匂いではありますけれど……見るからに怪しいですわね」
 とりあえず皆で、池の傍まで行く。膝をつき、手を差し入れる。
 確かに水だ。掬った手に色がつき汚れることもない。
 ベイキは困惑した。隠し場所が水場の近くかもしれないとは思っていたが、池の中には島もなければ木も生えていないのである。
(カサンドラさんは、一体この池のどこに本を隠したのでしょう?)
 思い首を傾げていたところ、朱璃の叫び声ではっと我に返る。
「カサンドラ様、危ないですわ!」
 見ればカサンドラが息を弾ませながら、ざぶざぶ池に踏み込んでいた。
「そう、私はここに隠したのよ……雨がすごく降り出して……そうして、そうして――どうしたんだったかしら――」
 うわ言を吐きながら腰をかがめ肩まで水に突っ込み、水中を手探りし始める。明らかに尋常ではない。

●知ろうとすること
「たすくにいたん、このごほんもかりていい?」
「うん、いいよ。トーマスくんは、もう借りたい本はない?」
「ないよ」
「そう、じゃあ貸し出し窓口に行こうか」
 タスクは絵本と古書が満載されたカートを押し、迷路のようなワイズ・クレバー館内を歩いていく。
 好きな絵本をたくさん借りてもらって、トマシーナはご機嫌だ。兄の隣でスキップをする。
 そのいかにも楽しそうな様にタスクの顔は、ほころぶ。
「にいたん、またこようね。ごほんかりようね」
「トマシーナ、僕らは生徒じゃないから本を借りられないよ。タスクさんに頼まないと」
「そうなの? じゃあたすくにいたん、またきてごほんかりてくれる?」
「ああ、いいよ。いつでも言ってきて」

●呪い
 エリカは自分も池に入った。水深がさっぱり分からないので不安ではあったが、カサンドラの様子からしてせいぜい腰までの深さだと踏んで。
「カサンドラさん! 落ち着いてください、カサンドラさん!」
 水しぶきを跳ね上げ、カサンドラの肩を持ち、激しく揺すぶる。
 カサンドラはその呼びかけを無視した。水面に顔がつきそうなほど深く身をかがめ、黒い水をかき分ける。
 朱璃、ラピャタミャク、アマルも池へ飛び込む。エリカの手助けをするために。
 ベイキは『言の葉の詩』を歌った。大空に解けていくようなメロディーは、カサンドラの正気を引き戻すのに役立ったらしい。彼女は動きを止め、怪訝そうに瞬きをする。
 一瞬安堵しかけたベイキはしかし、次の瞬間凍りついた。カサンドラの周囲にぼこぼこと顔が――死相と笑いを浮かべた端正な顔が――幾つも浮いてくる幻視を見たのだ。
 金色の瞳、黒い髪、褐色の肌。
(――ノア!!)
 ベイキは声にならない悲鳴を上げた。
 同時に歌も途切れた。
 カサンドラは前のめりに倒れ、水中に没する。
「カサンドラさん!?」
 エリカは彼女を引き上げにかかった。
 視覚が役に立たないので、はからずもカサンドラ同様手探り作業となる。
 朱璃たちも引上げ作業に尽力する。我に返ったベイキも。
 カサンドラはすぐさま引き上げられた。激しく水を吐き出す。
 直後、真っ黒な水面にすうっと何かが、後から後から浮かび上がってきた。
 一同ぎくっとして浮かんできたものを凝視する。
 それはカサンドラが言っていた、『本』の一部だった。

●ノアが残した言葉たち
 探索組が施設に帰ってきたのは、ちょうど夕方だった。
「みんなお疲れ様。お食事にする? 先にお風呂にする?」
 扉を開き彼らを迎え入れたアルフィオーネは、探索が容易ならざるものであったと知る。何しろ皆濡れそぼってガタガタ震えているのだ。カサンドラに至っては朱璃に肩を貸してもらって、やっと立っている有り様である。
 アルフィオーネは大急ぎで脱衣所へ行き、人数分のタオルを取ってきた。
「どうしたの? こぞってずぶ濡れになって。何があったの」
 朱璃はタオルで頭を拭きながら、嘆息した。
「ちょっと一言では言い尽くせませんわ――タスク様とトマシーナ様とトーマス様は? お姿が見えませんが」
「三人とも今、一緒にワイズ・クレバーへ行っているわ。本を借りてくるって。もうすぐ戻ってくると思うけど」
 アマルが大きなくしゃみをした。鼻水をたらして。
「すいませんアルフィオーネさん、お風呂お願いします。ご飯もなるたけ早く」
「了解。今からお風呂を沸かすから、皆、暖炉の前で待ってて。もう火は焚いてあるから」
 一同急いで暖炉の前に行く。冷えた体を温めるために。
 物音を聞きつけたか【ミラ様】が飛んできて、探索組の上に光の粉を散らした。それだけで皆の体から、ぞくぞくした寒気が消えた。
 ほどなくしてアルフィオーネの呼び声。
「みんなー、おふろが湧いたわよー! 早く入ってちょうだい! ご飯は作っておくから!」
 待ってましたとばかり皆風呂に入って着替え、続けてポトフを食べ、人心地つく(カサンドラだけは風呂から出てすぐ、部屋に戻って寝込んでしまったが)。
 食後のハーブティーを皆の前に置きながら、アルフィオーネは、改めて尋ねた。
「で、何があったの?」
 長い話が始まった。ベイキの鞄の中から出された、古い本(の一部)を前にして。
 本に記されていた内容は、以下の通りだった。

『赤猫と黒犬の行動は制御しなければならない。戦闘において長である彼らが十分に協力しないがために、また、所構わず反目しあうがために、シャパリュ、バスカビル全体の損耗率が上がり、城の防衛に支障が出始めている。』
『あの二匹の力は分不相応に増大し過ぎだ。すでに、私たち単体の力を超えてしまっている。』
『私たちは相談して、彼らの命を一つに繋ぐことにした。呪いを維持するための魔力は彼ら自身より自動的に供給されるように設計する。そうすれば彼らは、作戦行動において協力しあわざるを得ない。加えて持てる力の多くが呪いの維持につぎ込まれる結果、適度に弱体化する。それは私たちにとっての利益となる。相手の命はそうでなくても、自分の命は惜しい。彼らがそう思っていることを、私達は知っている。』
『今回の呪いを作り上げるために、私たちの指輪を転用することにする。これを使うことは大変惜しいのだけれども、仕方がない。二つの指輪を一つにすれば、どんな力をもってしても砕けることのない呪いの要石となる。』
『もし私たちに面と向かって害をなすようなら、そのときには、二度とあのけだものたちの呪いが解けることがないように。死ぬまで心休まることがないように、そして、悲惨な結末を迎えるように。』

 アルフィオーネは黙って顔を上げた。
 玄関ベルが鳴ったのだ。トーマス、トマシーナ、タスクが帰ってきた――。




課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
ミラちゃん家――幻惑の森探検隊
執筆:K GM


《ミラちゃん家――幻惑の森探検隊》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2021-01-15 00:03:35
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。
よろしくね。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 2) 2021-01-15 07:30:58
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
トーマスさんがもやもやしてるのは、今後に影響しそうですし……可能であればそちらも対処したいですね。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 3) 2021-01-15 10:44:30
トーマスくんのことは、時間をかけて関係を築いてきた人が適任ね。
わたしは、幻惑の森での探索の方に集中しようと思うわ。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 4) 2021-01-15 16:30:24
アルフィオーネ・ブランエトワルです。どうぞ、よしなに

斥候はわたしの職分ではありませんし、あの子のことはずっと気がかりなので、トーマスと向き合いたいと思います。


《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 5) 2021-01-15 18:36:23
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

トーマス様の事は気がかりですが・・・ひとまず本の捜索とカサンドラ様の護衛に集中いたしますわ。何か思いついたら一言くらいはトーマス様に声をかけるかもしれませんけれど。


《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 6) 2021-01-17 14:14:11
時間・方向感覚が狂いやすいという事ですので注意は必要ですわね。意思を強く持つ事が大切なようですが、あとは部分強化:五感等も使って迷わないよう気をつけてみますわ。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 7) 2021-01-17 16:05:02
迷わないように、迷っても戻って来られるように、
わたしは感覚系のスキルをたくさん持って行くわね。

戦闘が発生するかもしれないから、それも想定しておくわ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 8) 2021-01-17 20:08:32
遅刻帰国~!勇者・英雄コースのタスク・ジムです!
よろしくお願いいたします!

トーマスくんのお困りごとは僕にお任せください!
細かいことは後程考えます!(笑)

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 9) 2021-01-18 22:42:37
魔王・覇王コースのラピャタミャク・タラタタララタじゃ。
よろしく頼むのじゃ。

あちきはカサンドラの護衛じゃな。
敵が襲ってきたら、前に立って通さないようにするのじゃ。

後は少しカサンドラと話しをするつもりじゃ。
あちきはトーマスよりこちらの方が気になっていてのぉ。
結論は出ぬじゃろうけど、一言二言言っておきたいのじゃ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 10) 2021-01-18 22:50:05
まずは、トーマスくんの説得ですが、
カサンドラさんの「ぬか喜び」に乗っかる形で、
「それに、呪いを解いたら逆に悪い結果になるとしたら、どうする?
例えば、解いたら黒犬が死ぬ、とか」
加えて、そもそも魔族が仕掛けたことだからどんな嘘や罠が混じってるかわからないこと、
意図せずして黒犬を害することにでもなればトーマスくんも悲しかろうし
それで黒犬が逆上して学園を傷つけようものならいくらトーマスくんの願いがあってもさすがに対処せざるを得ないこと
そのあたりを話そうかと(文字数)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 11) 2021-01-18 22:55:42
そこで悩むのが僕の行動でして、良ければご意見いただきたいです。

A トーマスくんに一言話して、探索に加わる
B トーマスくんを連れて探索に加わる(タスクが責任持って専任護衛!)
C 探索に加わらず、このエピソード中トーマスくんについてる

普通ならA一択ですが、今回、トーマスくんをほっときたくない気がしまして。
Bなら、少なくとも僕ら不在の間におかしな行動を取ることはなかろうし、
今回の戦力バランスを見ると、Cも、十分可能そうに見えます。

そんなわけで、悩み中ですので、ご意見いただければありがたいです。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 12) 2021-01-18 23:49:45
タスクさんの気持ちから考えると、
『C』でトーマスくんのそばにいるのが安心だと思うわ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 13) 2021-01-19 00:11:38
エリカ部長さん、ご意見ありがとうございます!
彼のそばにいて有効な時間(文字数w)の使い方を、よく考えてみますね!

(PL的に、タスクの気持ちに寄り添って下さったの尊い…感謝です!)

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 14) 2021-01-19 00:53:36
わたしもタスクさんと概ね同じ意見。黒犬はすべてを語っていないだろうけど、そもそも、黒犬自身も知らない何かがある可能性を否定できない。呪いの内容全部教えたら、対処されちゃって、かけた意味なくなることもあるしね。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 15) 2021-01-19 06:13:39
そうですね。個人的には、出掛ける前にトーマスさんにお話しして……という感じで行く位しか考えてませんでしたが、今回は人数はそれなりに揃ってますし、タスクさんがトーマスさん達とご一緒なら安心できますね。

さすがに、トーマスさん連れて行くのは大変ですし。

それに、カサンドラさんの黒犬への物言いに何か引っ掛かるものもあるので……呪いを解くのは、よからぬことに繋がる可能性があるのでしょうか。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 16) 2021-01-19 07:44:13
そういえば、トーマスさんが自分から黒犬のところに行くことはなさそうですが……黒犬からの手紙で呼び出されて、保護施設をこっそり抜け出したりしたら大変です。
よければ、タスクさんにはその辺りも注意いただけるといいかも。

赤猫も動き出してますし、今回は赤猫自身は動かなくても、赤猫が面白半分で「黒犬に手を貸してる人間の子ども」にちょっかいを出そうと、偽の手紙なんか送ってきても面倒ですし。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 17) 2021-01-19 13:20:45
アルフィオーネさん、ベイキさん、ありがとうございます!
今回もなんだか難しくって、行動もセリフも悩んでいたのですが、
おかげさまで少し自信が持てました!

こっそり呼び出される事態は確かに心配なので、よく注意(観察)しておきます!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 18) 2021-01-19 13:34:40
上記をもとに下書きを書いてみました!

もう少し時間があるので、最善を目指して詰めましょう!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 19) 2021-01-19 17:17:07
ではタスク様がトーマス様についている、という事ですわね。了解ですわ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 20) 2021-01-19 19:07:31
トマシーナちゃんとも遊んであげて、さみしくないように気遣うような
プランを書いてみましたよ!

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 21) 2021-01-19 19:08:33
わたしもトーマスを見守りますが、「監視」されているという印象を持たれると困るので、探索に向いた技能がない。十分に戦力が足りている。探索隊が帰還した後の、慰労兼、会議のための会食を準備するため。残る。ことににします

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 22) 2021-01-19 19:10:09
【推測】

もし呪いを解いたら、彼は、そして赤猫は××××××××。
                    ↓
                   封印が解けて暴走。

人間全体にとって危険なことというと、そのあたりの予感がします…!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 23) 2021-01-19 19:12:39
アルフィオーネさん、それすごくいいですね!

僕はトーマスくんと、がっつり話し、
トマシーナちゃんと遊んであげるプランを書いてみました!

警戒を悟られないよう、プラン文面を工夫すべきでしょうか…(悩)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 24) 2021-01-19 23:38:23
警戒という文言を外し、
それとなく注意して不審な動きは第六感で感知する、みたいに
監視感を減らすことを心がけて書いてみました!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 25) 2021-01-20 23:36:28
いよいよ出発ですね!
良い結果になりますように…!