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ミラちゃん家――ある晴れた日に


ストーリー Story

 呪いが離れた。
 彼女を地上に繋ぎとめていたくびきが外れた。
 魂よ、自由になれ。
 羽ばたいていけ。

●このよき朝に
 時刻は朝。
 場所はなにがし山の保護施設。
 目を覚ました【カサンドラ】はベッドから降り、窓際に歩み寄る。
 空が青かった。
 雲は白かった。
 紫色の朝顔が咲いている。
 山々の向こうには、フトゥールム・スクエアの校舎群。自分が通っていたころと少しも変わらない姿でそびえている。
 カサンドラは、なんだか長い夢から覚めた心地がした。
 随分と体が軽い。まるでそう、雲にでもなったよう。
 目の前に手をやってみる。
 それは、これまでにないほど透けて見えた。
 ああ、と息を吐く。来るべきものが来たのだと悟って。
 自分はここから去らなければならない。
(……長く持ったものね……)
 リバイバルになる前も、なった後も、死ぬことをあれだけ恐れていたのに、どうしてだろう、今はちっとも怖くない。
 描きかけの絵を残して行くのは心残りだけれど。トーマスや、皆と別れなければならないのは、寂しいけれど。
 でも、明るい。見えるものなにもかもが。
(世界がこんなにきれいなものだということを、私は、今の今までどうして忘れていたんだろう)
 物思いに耽った後、カサンドラは顔を上げる。
 いつのまにか【ミラ様】が近くに来ていた。
 精霊はその思いを彼女の心へ、直に伝える。
「……ええ……そうですね。私は……なくなってしまうわけじゃない。風に、光に、溶け込んでいくだけ……」
 私はもうすぐ、ここからいなくなる。
 でもその前に、伝えておかなければならない。黒犬と赤猫にかけられた呪いを、どうすれば解くことが出来るのかを。
「ミラ様、皆を呼んできてくださいますか……」

●行く人、残る人
 カサンドラは、これまでいっぺんもなかったほど健康そうだった。
 痩せこけていた顔は肉付き血色がよい、褪せていた髪の色も目の色も、鮮やかに色づいている。
 ――だけどその輪郭は、極度に薄らいでいる。
 彼女がもうすぐいなくなるのだと直感した【トーマス・マン】は、泣きたいような気持ちになった。
 【トマシーナ・マン】は顔をクシャクシャにして、カサンドラに取りすがる。
「先生、消えちゃだめよう。いなくなっちゃだめよう」
 だけどカサンドラの体はもう触れる状態ではなくなっていた。空気をつかむように、小さな手が擦り抜ける。
 そのことがショックで、トマシーナは泣いた。
 カサンドラはそれを慰める。
「泣かなくていいのよ、トマシーナちゃん。私は今、とてもいい気分なの。これまでで一番ね。なんだか、空も飛べそうな気がするのよ」
 アマルはそのやり取りを、口をへの字にして見ていた。
 共に時を過ごした相手がいなくなるというのは、彼にとっても寂しいことだった。つぶらな丸い瞳に涙が溜まっている。
 【ドリャエモン】が太く落ち着いた声で、カサンドラに尋ねた。哀惜を込めて。
「カサンドラよ、思い出したのか?」
「ええ。そうです――だから、話せるうちに急いで話しておかなければと思いまして……呪いの解除法を……」

●黒犬と、赤猫と、指輪と、それから――
 壊そうとしても壊れない指輪。
 見ているほどに腹が立ってしょうがない。
 だが捨てるわけにはいかない。絶対に。そんなことをしたら、二度と手に入らないかもしれないのだから。

「くそっ、くそっ」
 唸りながら黒犬は、地面に置かれた指輪の回りをぐるぐる巡る。
 彼は頭の中で、何度となく反復させる。見知らぬ人間共が、赤猫からと称し伝えてきた言葉を。
『指輪を手にいれたとしても、何も出来ない。壊せない。自分から手放すことも出来ない。仮に捨てたって戻ってくる。お前の頭を狂わせる。サーブル城の、あのムカツクつがいが住んでた部屋の、宝石箱の中へ戻さない限り。最もお前は、狂うほどの上等な頭なんて、もともと持ってないから、その点は心配要らないね』
 赤猫の言葉は信用出来ない、というか、信用したくもない。
 だがこのまま睨んでいたところで、何も進展しないのは確実だ。指輪がひとりでに壊れるなんてことはあり得ないのだ。ただただノアに対する憎悪をかき立てられ、疲労感が蓄積していくばかり。
(……サーブル城の……ノアのつがいが住んでいた部屋……)
 その場所を黒犬は知っている。何しろ飼い主の部屋なのだから。
「――くそおっ!!」
 黒犬は指輪を咥え走りだした。サーブル城へ向かって。
 たどり着いてみれば城はいつものように、陰気にそびえ立っていた。
 不審そうに集まってくる猫を炎と怒声で追い散らし、堂々と正門から侵入を図る。
 もし赤猫が出てきて邪魔したらこの前のお返しをしてやろうと、堅く心に誓いながら。
 しかし、城内に足を踏み入れた瞬間、ガコンと床が抜けた。
 黒犬はとっさに本来の姿に戻る。四つ足を踏ん張り、着地する。
 足裏がちくちくした。
 打ち付けてあった鉄の杭が触れたのだ。
 人間なら串刺しになって終わるところだが、鋼のような巨体にかかっては、杉葉を踏んだ程度の刺激しかもたらさない。
 ひゅー、と口笛が聞こえた。
 大嫌いな酒臭い匂い。大嫌いな声。
「久しぶりね、ポンコツ――おっと。私、今日はあんたとケンカするつもりはないの。教えたいことがあるのよ」
 黒犬は赤猫の後ろに、女のローレライがいるのに気づく。
「まずね、呪いの指輪と宝石箱関連の話はぜーんぶ、う・そ。騙された? だったらあんた、やっぱり馬鹿だわ」
 唸り声を前にローレライを親指でさし、赤猫が言う。
「でも、呪いをどうにか出来るかもしんないのは本当――この人間、私たちにかかった呪いが欲しいって、言ってんの」
 無作法にけらけら笑いながら。
「それを自分と、セムって奴に、移し替えたいんだってさ! 愛して愛して、愛してるから、自分から逃げられないようにしたいんだって!」


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2021-07-24

難易度 簡単 報酬 通常 完成予定 2021-08-03

登場人物 8/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《幸便の祈祷師》アルフィオーネ・ブランエトワル
 ドラゴニア Lv23 / 教祖・聖職 Rank 1
異世界からやってきたという、ドラゴニアの少女。 「この世界に存在しうる雛形の中で、本来のわたしに近いもの が選択された・・・ってとこかしらね」 その容姿は幼子そのものだが、どこかしら、大人びた雰囲気を纏っている。  髪は青緑。前髪は山形に切り揃え、両サイドに三つ編み。後ろ髪は大きなバレッタで結い上げ、垂らした髪を二つ分け。リボンで結んでいる。  二重のたれ目で、左目の下に泣きぼくろがある。  古竜族の特徴として、半月型の鶏冠状の角。小振りな、翼と尻尾。後頭部から耳裏、鎖骨の辺りまで、竜の皮膚が覆っている。  争いごとを好まない、優しい性格。しかし、幼少より戦闘教育を受けており、戦うことに躊躇することはない。  普段はたおやかだが、戦闘では苛烈であり、特に”悪”と認めた相手には明確な殺意を持って当たる。 「死んであの世で懺悔なさい!」(認めないとは言っていない) 「悪党に神の慈悲など無用よ?」(ないとは言っていない)  感情の起伏が希薄で、長命の種族であった故に、他者との深い関りは避ける傾向にある。加えて、怜悧であるため、冷たい人間と思われがちだが、その実、世話焼きな、所謂、オカン気質。  お饅頭が大のお気に入り  諸般の事情で偽名 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを胸に、学園での日々を過ごしている
《猫の友》パーシア・セントレジャー
 リバイバル Lv19 / 王様・貴族 Rank 1
かなり古い王朝の王族の娘。 とは言っても、すでに国は滅び、王城は朽ち果てた遺跡と化している上、妾腹の生まれ故に生前は疎まれる存在であったが。 と、学園の研究者から自身の出自を告げられた過去の亡霊。 生前が望まれない存在だったせいか、生き残るために計算高くなったが、己の務めは弁えていた。 美しく長い黒髪は羨望の対象だったが、それ故に妬まれたので、自分の髪の色は好きではない。 一族の他の者は金髪だったせいか、心ない者からは、 「我が王家は黄金の獅子と讃えられる血筋。それなのに、どこぞから不吉な黒猫が紛れ込んだ」 等と揶揄されていた。 身長は150cm後半。 スレンダーな体型でCクラスらしい。 安息日の晩餐とともにいただく、一杯の葡萄酒がささやかな贅沢。 目立たなく生きるのが一番と思っている。
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。
《奏天の護り姫》レーネ・ブリーズ
 エリアル Lv29 / 芸能・芸術 Rank 1
いろいろなところをあるいてきたエルフタイプのエリアルです。 きれいな虹がよりそっている滝、 松明の炎にきらめく鍾乳石、 海の中でおどる魚たち、 世界にはふしぎなものがいっぱいだから、 わたくしはそれを大切にしたいとおもいます。

解説 Explan

ミラちゃん家、続きです。
寂しいですが、カサンドラとは今回でお別れです。
ノアの呪いが離れ去った今彼女は、黒犬に対する過剰な憎悪と、それに基づくこの世への執着から解き放たれました。そしてようやく、自分がなりたかった姿になることが出来ました。
この後丸一日は持ちますが、日没と同時に昇天致します。
言いたいこと、聞きたいこと、一緒にしたいことなどあったら、どしどしプランに明記してください。
気持ち良く彼女を、来世へ送り出してやってくださいませ。

今回の行動指針は、以下の2つ。

1:カサンドラから指輪の解除法について聞き出す。
2:カサンドラの最後の時間をともに過ごす。

1と2は同時に選択することが出来ます。


※これまでのエピソードやNPCの詳細について気になる方は、GMページをご確認くださいませ。
そういうものが特に気にならない方は、確認の必要はありません。そのままプランを作成し、提出してください。エピソードの内容に反しない限り判定は、有利にも不利にもなりません。



作者コメント Comment

Kです。
悲しいですが、カサンドラとは、ここでお別れです。
ノアの呪いは彼女の身から去りました。彼女をこの世に縛り付けておくことが出来なくなりました。
シリーズに参加してくださっている皆様、これまで彼女にまことによくしてくださり、ありがとうございました。
とても、とても感謝しています。そのおかげで、このように、穏やかな旅立ちをさせてやることが可能になったのですから。
今回得た知識は次回以降、大いに役に立ちます。黒犬達を生かすにしても殺すにしても。





個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:66 = 55全体 + 11個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
行動2:穏やかな時間を過ごす

わかってはいたことだけれど、お別れの時が来たのはさみしい。
だけど、それは変えられない自然の定め。
それならば、できる限り穏やかにそれを受け止めて
カサンドラさんが思い残すことのないように、良い時間を過ごそう。

取り乱したりすることなく、静かで穏やかな時間を作る。
美味しいハーブティーとお菓子を用意して楽しく過ごす。

カサンドラさんという素晴らしい芸術家に会えたことを感謝。
彼女のことは絶対に忘れない。
お別れの時は近いけれど、わたしたちもいつか必ず同じところへ行き、再会できる。
それまで待っていて欲しい。

自然友愛で風の精霊を呼び、ミラちゃんの光と共に良い風で彼女を送る。

アドリブ歓迎

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:66 = 55全体 + 11個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
カサンドラさんに心残りが無いように、笑顔で送り出すとともに、呪いの解き方を教えて貰う

◆用意
クローゼットを漁って、カサンドラさんに似合いそうな服を用意したり、お化粧道具を用意

◆おめかし
カサンドラさんの髪を梳かしたり、うっすらと頬紅で薄めにお化粧したり
口紅は淡い桃色等で派手になりすぎないように

トマシーナさんもしたがったら、同じように薄めにお化粧でお揃いに

センスに自信がないので、お手伝い大歓迎

靴はサンダルが夏らしいですよね

◆屋外にて
摘みたてのミントやカモミール等の香りを、カサンドラさんにも堪能して貰って
折角ですしハーブティにして、お茶の時間に出したり

頃合いをみて、呪いの解き方をお聞きしますね

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:82 = 55全体 + 27個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
先ずはトマシーナ様とお話してみます。そして貴方はカサンドラ様の事を忘れてしまうのですか?と尋ね、きっと否定すると思いますから。なら彼女が笑っている姿を覚えていられるようにしましょう、と話しますわ

その後は可能なら

「さぁ、外へ行きましょう!」

とカサンドラ様が生前出来なかったろう、外を駆け回る遊びをしたいですわ。トマシーナ様と、タロと、追いかけっこをしたり、隠れん坊をしたり、触れずとも出来る遊びを。きっとトマシーナ様もタロも、そして私も。彼女の事を忘れないよう心に刻む為に

そしてお別れの時はトマシーナ様の肩を抱き、涙を堪えつつ笑ってカサンドラ様を見送りますわ。また何時か会いましょう、と言葉を添えて

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:66 = 55全体 + 11個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
2:カサンドラの最後の時間をともに過ごす。
彼女との別れを祖母マーニーとの(リバイバル復活前の)死別やメアリ・レインさん(桂木GM様「霎雨」)に重ねて、ひっそりと涙する。
しかし切り替えて、2のアクションをするほかの仲間を積極的に手伝う

パーシアさんの案で
トーマスがカサンドラの絵を描くということについて
自分も後押しする

朱璃さん提案の駆け回る遊びをカサンドラさんが楽しんでるようなら
例えばこの場面を描いたらどう、と提案し
ああ、本当に楽しそうだ、と自身の安心と彼女の楽しい姿への喜びを遠慮がちにトーマスに向かってこぼす。

絵を披露するとき
描かれたキャンバスの周りに写法筆で線を描き
呪いから解放された様子を表現


アルフィオーネ・ブランエトワル 個人成績:

獲得経験:66 = 55全体 + 11個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
行動1

呪いの掛け方は知っているのか?解除した場合、その術者になにか反動等はあるのか?
カサンドラは黒犬らをどうして欲しいのか?今まで出来事と、カサンドラからの話を、一旦まとめて現況を推測する。

.カサンドラか病弱なままだったのは、呪いのため、本来のリバイバルとは別の形で、存在が維持されていたためと、考えられる。おそらくは、指輪をか黒犬に渡ったため、解けた。しかし、カサンドラが呪われたのは、件の本に触れたときから。それが綺麗さっぱりきえしまった。用済み。と、言うことなのだろう。だとすれば、黒犬に指輪が渡るのは、
ノア一族の望んだ結果なのだろうか?

行動2

施設の庭で、世界各地の名物を集めた食事会をする。 

パーシア・セントレジャー 個人成績:

獲得経験:82 = 55全体 + 27個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
カサンドラさんの最期の時間を共に過ごし、呪いの解き方を教えて貰う

◆行動
トーマスさんにお願いして、カサンドラさんの最期の姿を描いて貰うように頼むつもり
彼も辛いでしょうけど、画家としては最期の姿を弟子に描いて貰うってのは、悪くはないんじゃ……と思ってるの

必要なキャンバスやデッサンセットは用意するわ

カサンドラさんにも時々見てもらって、しっかり最期の直接指導をお願い
カサンドラさんの技術を……トーマスさんの感性で更に昇華させて、カサンドラさんが生きた証を遺しましょう

お昼過ぎには、呪いの解き方をカサンドラさんに尋ねてみるわ
最期の時間に聞くのは野暮でしょ?

最期はしっかり……弟子やみんなと話したいでしょ

ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:

獲得経験:66 = 55全体 + 11個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
呪いの解呪方法とカサンドラの考えを聞く。

■行動
カサンドラから、黒犬と赤猫に掛けられた呪いを解く方法を聞くのじゃ。
聞き逃さないようにしっかりと聞いて、後で見返せるようしっかりとメモも取るぞ。

あと、あちきから呪いに関して、今一度確認しておきたいことがあるのじゃよ。
カサンドラよ。
汝、黒犬と赤猫の呪いを解いてやりたいか?
最初は呪いの謎に振り回され、さらに途中から呪いのせいで色々と不安定じゃったしのぉ。
それが晴れた今だからこそ、それを改めて聞いておきたいのじゃ。

レーネ・ブリーズ 個人成績:

獲得経験:66 = 55全体 + 11個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
2:カサンドラの最後の時間をともに過ごす。


とはいいましてもそのあいだ、わたくしはなにもしません。
ただ、まってるだけです。

わたくしがすることはその方がいなくなったあとのおかたづけ。

保護施設は思い出をのこしておけない場所です。
なにか事件があれば、保護が必要な人々をうけいれなければならない。
それはいつあるかわからないのですから、すぐにやります。


そして、それは課題でふかく関わったひとたちにはつらいことだとおもうから。

だからわたくしがひきうけます。
保護施設をかんがえ、だからこそ個別の事件にはかかわらないようにしていた。

そのわたくしが最後にひきうける役目だとおもいますから。

リザルト Result

●伝えておきたいこと
 消滅を前にした【カサンドラ】は、これまでにないほど明るい表情をしていた。憑き物が落ちたように。
 そのことに【ラピャタミャク・タラタタララタ】は、一抹の安堵と寂寥を感じる。
(呪いが解けて心が晴れたのは喜ばしいことじゃが、やはり別れは寂しいものじゃのぉ)
 【朱璃・拝】がしゃがみこんだ。泣きじゃくる【トマシーナ・マン】と目線を合わせるために。
「トマシーナ様……貴方はカサンドラ様がいなくなってしまったら、カサンドラ様の事を忘れてしまうのですか?」
「ううん、ううん。そんなことない、わたし、せんせいのことおぼえてる。パパやママみたいに、おぼえてる」
「なら、カサンドラ様が笑っている姿を覚えていられるようにしましょう。あなたが泣いていると、カサンドラ様は心配で――笑えませんわ」
 トマシーナは指を噛んで、涙をこらえようとした。だがなかなかそうしきれなかった。
 【エリカ・エルオンタリエ】が彼女の小さな背を優しく撫で、言い聞かせる。
「トマシーナちゃん、先生は、消えてしまうんじゃないの。ただ、先に行くだけよ。わたしたちもいつか必ず同じところへ行き、再会できる――それまでの間の、お別れなの」
 【パーシア・セントレジャー】は悄然と佇む【トーマス・マン】に話しかける。
「ねえ、トーマスさん。カサンドラさんの肖像画を描く気はない?」
「……え……」
「画家として、最期の姿を弟子に描いて貰うっていうのも、悪くないんじゃかな……と思うの。もしその気があるなら、手伝うわよ?」
 トーマスは戸惑いつつ、アトリエの片隅にあるイーゼルに目をやる。
「……描けるかな、僕に」
 その呟きを【タスク・ジム】が、後押しした。
「もちろんだよ。トーマス君。むしろ君にしか描けないと思う」
 【アルフィオーネ・ブランエトワル】と【ベイキ・ミューズフェス】は、カサンドラに本題を切り出した。
「カサンドラ、呪いを解くカギについて思い出したそうね?」
「はい」
「それは、どんなものですか?」
 ラピャタミャクは急いでメモを取り出す。タスクも。全てを書き留めるために。
「カギは、ある『言葉』です。『言葉』の内容がどんなものかは分かりません。『言葉』がある場所と、その『言葉』をどう使えばいいか以外、ノアは手記に書き残していませんでしたので」
 では、呪いのかけ方などは分からないわけか。
 思いつつアルフィオーネは、続きを促す。
「分かったわ。それで、『言葉』はどこにあるの?」
「指輪の中です。ノアはこう書いていました。『呪いの要である指輪に、呪いを解く言葉を封じる。言葉を呼び出すには、指輪を炎に当てなければならない。炎は、地の底より生まれた炎でなくてはならない。』」
 謎掛けのような言葉に、【アマル・カネグラ】は首を傾げた。
「地の底より自然に生まれた炎……ってなんでしょう?」
 これについては【ドリャエモン】がすぐに答えを見つける。
「それはもしや、火山の炎のことではあるまいか?」
 なるほどと一同納得したところでカサンドラは、解除手続きについての説明をした。
「『――我々ノア以外の第三者が呪いを解除するためには、その者が指輪を手に持ち、黒犬、赤猫のいる場で、黒犬、赤猫と同時に『言葉』を最後まで読み上げなければいけない。そうすれば呪いは解ける。黒犬、赤猫、第三者、全員死なない。
 黒犬、赤猫のどちらかが場において読み上げを拒否または中断し、もう一方が完遂した場合、中断したものは死なない。かつ呪いは解ける。完遂したものは死ぬ。第三者は死なない。
 黒犬、赤猫の両者が読み上げを拒否または中断し、かつ第三者が読み上げを完遂した場合、赤猫、黒犬、ともどもに死ぬ。その死によって呪いは消滅する。第三者は死なない。
 第三者が読み上げを完遂し得なかった場合、呪いは解けない。かつ黒犬と赤猫は死なない。』」
 朱璃は天井近くに浮いている【ミラ様】に顔を向けた。
「……ミラ様、カサンドラ様に残された時間は、いかほどでございますか?」
 ミラ様は例のごとく、単語帳で答える。
『イチニチ』
 それを知って皆は、ほっとした。ともに過ごせる時間は、まだあるのだ。なら、めいいっぱいそれを使おう。カサンドラを快く送り出すために。彼女との最後の思い出を作ろう。
 ベイキがぱん、と手を叩いた。空気を変えるように。
「折角ですし、カサンドラさんにおめかししてもらいましょう! こんなに血色がいいなら、きっとお化粧の乗りもいいでしょうし、綺麗な服も肌に映えると思います」

●夏の一日
 【レーネ・ブリーズ】は保護施設の庭先に一人、腰掛けていた。そして静かに眺めていた。施設の中から、朱璃に手を引かれたカサンドラが出てくるのを。
 彼女はこれまで、保護施設にかかわる個別案件から距離を置いてきた。一歩引いた距離から、施設全体を見通せるように。私情を挟まぬ形でないと出来ない貢献というものがあると考えて。

 白ワンピースにサンダルといった、夏姿のカサンドラは、まるで子供のように眼を輝かせ、彼女とお揃いの格好をしたトマシーナと、かくれんぼを始める。
「せんせい、こっちよー!」
「あら、そっちにいたの。待ちなさーい!」
 今日は風が少し強い。
 犬のタロと一緒に庭を駆け回るトマシーナは、早々に麦藁帽子を被るのをやめた。あんまり何度も吹き飛ぶから。
 だけどカサンドラは被ったままだ。彼女の麦藁帽子は、彼女自身の想念が作り出したもので、実体ではないから、吹き飛ばないのだ。
 彼女は夢中になっていた。息切れを起こさず咳も出さず、力いっぱい走ることに――これまで一度もそう出来たことがなかったから。
 それを朱璃は痛いほどに理解する。だから、真剣に遊びに参加した。旅立つカサンドラが何一つ憂を残さずすむように。
「カサンドラ様、次は、追いかけっこをしましょう! あそこの結界柱から、こちらの柱まで!」

 日の光の下ではしゃぐカサンドラの姿にタスクは、目を細めた。
「ああ――本当に楽しそうだね。カサンドラさん」
 傍らにいるトーマスが、しみじみした表情で頷く。
「うん……あんな先生の顔。見たことないや」
「……どうかな、この場面を肖像画にしてみたら。あんなふうにしてる姿を記録しておかないなんて、すごく勿体ないと思わない?」
 そこでパーシアが口を挟んできた、それ素敵ね、と。
「残しておくなら、一番楽しい姿がいいわよね」
 トーマスの肩を励ますように叩き、彼は、そそくさと場を離れた。アルフィオーネとラピャタミャクがいる調理場へ向かう。食事会の準備を手伝うために。
 その胸には、悲哀が渦巻いていた。
 どうしても、重ねあわせてしまうのだ。かつて味わった親しい人たちとの別れと、消えゆくカサンドラの姿を。
 
 リズミカルに野菜を刻むタスクに、ラピャタミャクが聞いた。アルチェ産鮮魚の身を、花びらのように薄く削ぎながら。
「汝、泣いておるのか?」
「ええ。タマネギの汁が目に染みまして」
「それ、キャベツじゃぞ。まあ、いいが……のう、喜んでやろうではないか。カサンドラがあれほど生き生きしとるの、見たことがないでな」
 ライ麦パンの生地をこねていたアルフィオーネが、二人に背を向けたまま言った。独り言めかして。
「カサンドラさんって、もし、元気だったら、色々なところを旅して、人々や風景を、一杯描きたかったのではないかと思うのよね。まぁ、ちょっとした卓上旅行ってところかしら? せめて、あと、一週間ぐらい居てくれたら、実際に連れて行ってあげられるのだけど」
 外から歓声が聞こえてきた。トマシーナとカサンドラの。
 アルフィオーネは丸めた生地をボールにいれ、手をはたき、しんみりと零す。
「今まで星の数ほど、見送ってきたのに慣れないものね。割り切らなければやってられないって、わかっているのに」
 タスクは袖口で目の下を拭った。口元を引き締め気持ちを切り替える。送り出す側が悲しみに溺れていてはいけない、と。
 祝おう。カサンドラが自由になることを。少なくともその心構えでいよう。彼女が逝ってしまうまでは。

 ベイキはミントとカモミールの花束を、カサンドラに見せる。
「せっかくですから、これでハーブティーを作りましょう。お昼の後の、お茶の時間に」
 花束に顔を押し当てたカサンドラは、無邪気に笑う。
「いい香りね」
 これまでの彼女を思えばまるで別人のようだ、とエリカは思った。
 記憶の欠如や、呪いや、生来の不健康や。そういったものに悩まされないでいたら彼女は……もっと穏やかな人格でいられただろうか。自分達とも、うまくコミュニケーションがとれただろうか。
(……いえ、たらればの話は止めましょう。彼女との出会いはわたしに……人の生死や幸せについて考えるきっかけを生んでくれた。それは他の何にも代えがたい、素晴らしい経験だわ)
 己に言い聞かせながら彼女は、朗らかに笑う。
「いいわね、ハーブティー。わたし、お菓子を持ってきたの。それも一緒に出しましょう」
 彼女らの間近で絵を描いていたトーマスが、言った。
「カサンドラ先生、下書きが出来たから見てほしいんだけど、いいかな?」
 カサンドラが花束から顔を上げた。挑戦的な言葉をトーマスに投げかける。
「分かったわ。あなたがどれだけ腕を上げたか、確かめさせてもらうわね」
 だが、トーマスも負けてはいない。
「うん、お願い。悪いところがあったら言って。すぐ直すから。先生がいる間に、完成させるから」
 カサンドラに続いて皆も、トーマスの下書きを見に行く。
 キャンバスの中には、両手を広げているカサンドラの姿があった。向かい風にスカートの裾がはためいている。麦藁帽子も頭から飛んでいる。
 だが、不思議と、前進を止められている印象は受けない。今しもふわりと浮き上がりそうな躍動感がある。
「……トーマス、これは実際の姿と違うわ」
「うん。でも、僕にはこう見えた」
 数秒の沈黙の後カサンドラは、しょうがない、というように息を吐く。
「見えたのなら、仕方がないわね――あなた、デッサンが本当にうまくなったわ。今のところは及第点よ」
「うん」
 パーシアは安堵した。トーマスが別れをこらえ切れずに泣き出したら、どうしようと思っていたのだけれど、そういう心配はなさそうだ、と。
「実は、カサンドラさんにヌードモデルをお願いしようかと思ったんだけど、さすがにお弟子さんへの刺激が強そうだからよしたのよ――」
「え、え?」
「――も、勿論冗談だから脱がないでね?」
 三者のやり取りを微笑ましく見ていたベイキは、改めて花束をまとめなおす。
(薬草達も、枯れたら終わりじゃない。薬や香辛料になったり、香りや思い出の風景を残してくれる。カサンドラさんも、たくさんのことを……きっと)
 胸を締め付ける感傷を振り払おうと、深呼吸する。
 そのとき、立ちくらみのような感覚が襲ってきた。幻視だ。
 目の前に豪奢な部屋が見えた。窓の外の景色を見るに、どうやら高い場所にある部屋のようだ。
 そこにノアの男女がいる。
 黒犬が彼らの足元に指輪を置き、部屋を出て行く。
 ノアの女は笑みを浮かべ、指輪を拾い上げる。そして言う。こちらを見て。
『欲しければ、来たりて取れ』
 
●夕べに去る
 アルフィオーネたちが企画した食事会は、世界各地の名物料理が並ぶという、豪華なものだった。
 一同庭にしつらえられた食卓について、舌鼓を打ち、話を弾ませる。トーマスだけはあまり喋らず、一心に絵筆を動かしている。

 ラピャタミャクはカサンドラに聞いた。アルフィオーネとエリカも、気になっていたことを。
「呪いに関して、今一度確認しておきたいことがあるのじゃ。汝、黒犬と赤猫の呪いを解いてやりたいか?」
「……私自身は……解かない方がいいと思ってる……」
「それは、黒犬のことが憎いからかの?」
「……そうね……」
 エリカはこの答えを、当然のこととして受け止めた。黒犬が彼女に対し、あまりにも敬意や尊重を欠いた言動を繰り返していたから。
 実のところエリカ自身、今後もああいう言動が続くなら、呪いの解除はやめよう、少なくとも一時的停止しようと考えているところなのだ。
 そこでカサンドラが、言葉を続けた。
「……それもあるけど……第一には、呪いを解くことが、解こうとする側にとってリスクが高すぎるから……赤猫、黒犬と同席した上で解除法を説明し、納得させて、手順どおり言葉を唱えさせるなんて……無理だと思うから」
 アルフィオーネは今までの出来事と、カサンドラから聞いた話を頭の中でまとめる。
(カサンドラがリバイバルになっても病弱なままだったのは、件の本に仕込まれていた呪いが、本来のリバイバルとは別の形で、彼女の存在を維持していたため……指輪が黒犬に渡った途端、その呪いは解けた。ということは、呪いが、彼女をもう用済みと見なしたということ。だとすれば、黒犬に指輪が渡るのは、ノア一族の望んだ結果……)
 黒犬を呪うことと、呪いの要となる指輪を黒犬に渡すことは矛盾する――これまではそう思っていたのだが、呪いの解除法を聞いた今、あながちそうとも言い切れなくなってきた。
(指輪の解除には第三者を介在させなければならない。第三者は自分達に対し意図的に死をもたらすことが出来る……彼らのいる場で第三者が、読み上げを完遂出来ればの話だけど。加えて解除に協力しないことで、嫌いな相手を死に追いやり自分だけ助かることが出来る……こういうことを知った上であの二匹が、こちらの思い通り動くかどうか……)
 いつの間にか日が傾いていた。
 涼しい風が不意に吹く。食卓の中央に飾られた花の回りをクルクル回る。明らかに意志があるように。
 ミラ様がそれを追うように、これまたクルクル回る。
 エリカが微笑んで言った。
「風の精霊を呼んだの。人数が多いほうが、賑やかでいいから」
 ベイキがハーブティーを持ってくる。
「さあさあ、皆さんお口直しにどうぞ。いい味が出ていますよ」
 皆は、琥珀色の液体を楽しむ。
 そのときカサンドラに異変が現れた。
 たださえ薄れていた姿がなお薄まっていく。
 トーマスは早口に叫んだ。
「絵、出来たよ!」
 タスクは写法筆を使い、キャンバスの周りに、光が放射しているような線を描く。呪いからの解放を、より強く印象付けるために。
 カサンドラが立ち上がり、絵を見る。顔をほころばせる。
「……合格よ……とてもいい絵が描けているわ」
 エリカは急いで彼女に聞く。
「カサンドラさん、何か家族や知人に伝えたいことはある? あるなら、わたしから伝えておくけど」
「……そうね……『ありがとう』って伝えてくれるとうれしいわ……私の絵を、大事に残してくれて……」
 アルフィオーネは別れの言葉を送る。
「次、生まれてくるときは元気な体にしてもらうのね。あなたは本当によく生き抜いた。神様だって、そのくらいの我が儘、聞いてくれると思うわ」
「……そうするわ……走ったり飛んだり跳ねたりするって、すごく楽しいことだから……」
 朱璃はトマシーナの肩を抱き、笑顔で手を振る。
「また何時か会いましょう」
 カサンドラの最後の言葉は、次のようなものだった。
「……ええ……それじゃあ私……行ってくるわね……トーマス、私の画材は置いていくから、よかったら使って頂戴……」
 なんだか旅行にでも行くような明るさであり気軽さだった。言葉の調子も、表情も。
 風が吹く。彼女を持ち上げ運び去るように。
 夕まぐれの光の中、カサンドラの姿は、完全に消えた。
 長い沈黙をへてエリカは、彼女が座っていた席に一輪の花を手向ける。
 アマルはというと、お菓子を置いた。お供えでもするように。
 シクシク泣き出すトマシーナに、朱璃が優しく語りかける。霊樹の葉を見せながら。
「木の葉は木から地面に落ちても、やがて肥料になってその木を成長させ、再び葉として生まれ変わる。カサンドラ様はいなくなってしまいますがその魂はきっとトマシーナ様や私達に受け継がれて、いつかまたこの世界に――」
 パーシアは、悲しみを飲み込んでいた。泣き崩れるのは、みんなと別れたあとでと言い聞かせて。
 ドリャエモンがそっと場から離れ、施設の中へ入って行く。
 
●さよならの後で
 レーネはてきぱきと箱詰めにして行く。カサンドラのアトリエの中に残されていた彼女の備品を。
 彼女は今日、このためにやってきたのだ。
 保護施設は思い出を残しておけない場所だ。常にまっさらでなくてはならない。保護が必要な人を、何時でも新しく受け入れるために。
 この作業は、故人に深く関わった人間には、精神的負担が大きい。
(だから、そうではなかったわたくしがしなければなりません)
 重い足音が聞こえた。
 ドリャエモンが入ってくる。
「面倒をかけるの、レーネ」
「いいえ、これがわたくしのお仕事ですので――よろしければ、整理したものを確認いただけますか? この場に残しておいた方がいいものなどありましたら、お教えいただけますと助かるのですが。後、必要でしたら扉や隔壁での区分もかえておきたいかと」
「うむ……そうだな、画材などは、トーマスの部屋に持っていくほうがいいのう……カサンドラが、あの子に譲ると言ったでな。区割りの更新は、また後でよい」
「そうですか」
 黙々と片付けを行うところ、黒い喪服を来た【ルサールカ】が入ってきた。
 さも悲しげな表情で礼をし、ハンカチで目元を拭う。
「この度はまことにご愁傷様で……カサンドラ様の残された絵を引き取りに伺いました」
 呆れ半分にドリャエモンが言った。
「おぬし、耳が早いのお」
 一通り場が片付いた後、レーネは魔法感知であたりを探る。
 怪しい気配は何もなかった。きれいさっぱり風に吹き払われたかのように。
 ここで過ごし去っていった人間に、彼女は、そっと言葉を手向けた。
「ご安心ください。ぜんぶ、きちんとおわりましたから」

 後日、タスクは皆に、図書館で調べてきた話を伝えた。
「真偽定かではないのですが……ノアは、城に魔王の礼拝場を持っていたそうです。そこで冠婚葬祭の儀式を行っていたとか……」



課題評価
課題経験:55
課題報酬:1500
ミラちゃん家――ある晴れた日に
執筆:K GM


《ミラちゃん家――ある晴れた日に》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2021-07-18 01:03:56
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。

ついに、その時が来てしまったのね……
だけど、穏やかにそれを迎える事ができるのなら、
それは、思っていたほど理不尽で悲しいばかりではないのかもしれないわね……
残された時間、彼女のそばで出来る限りのことをしてあげたいと思うわ。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2021-07-18 14:45:58
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

お別れは辛いですけれど、カサンドラ様が心残りなく旅立てるよう精一杯・・・

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 3) 2021-07-19 00:26:57
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
与えるふりして、奪う……それとも、奪うために与えたのか。

何にしろ、いずれはこうなる日が来るのが、今回になってしまった。
できることを考えましょう。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 4) 2021-07-21 00:12:52
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。よろしくお願いいたします。

う~む。
今回も何をしたら良いかさっぱり見当が付きませんが…
そして、カサンドラさんには全然力になれず、忸怩たる思いですが…
とにかく、カサンドラさんの言葉を確実に記録し、そして彼女を送り出すことが大事ですね。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 5) 2021-07-21 01:20:21
教祖・聖職者専攻のアルフィオーネ・ブランエトワルです。どうぞ、よしなに




《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 6) 2021-07-21 08:22:47
皆さん、よろしくお願いいたします!

現時点の僕の行動方針としては・・・

1:カサンドラから指輪の解除法について聞き出す。
解除法についての説明は彼女の最期の言葉となるだろうから、
一言一句漏らさぬよう大事に記録を取ります。
そして「お別れ」の後、図書館で、分かったことの裏付け・補足調査、
関連して発見できることを色々探してみます。
彼女の生きた証が、少しでも、何かの力になれたらと願って・・・

2:カサンドラの最後の時間をともに過ごす。
彼女との別れを祖母マーニーやメアリ・レインさん(桂木GM様「
霎雨」)に重ねて、悲しみをあらわにする。
「絵心はないですけど」と前置きして、写法筆で呪いから解放されるカサンドラさんを描いてみる

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 7) 2021-07-21 12:29:59
王様・貴族コースのパーシア。よろしくお願いします。
そうねえ……私もカサンドラさんの最期に立ち会おうと思ってるけど、トーマスさんに、カサンドラさんの最期の姿を描いて貰うように頼むつもり。

彼も辛いでしょうけど、画家としては最期の姿を弟子に描いてもらうってのは、悪くはないんじゃ……と思ってるの。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 8) 2021-07-21 20:26:07
パーシアさん、よろしくお願いいたします。

トーマス君に絵をかいてもらう案、素敵ですね!!
これはぜひ、実現してほしいですね。
僕も、口添えするなど何か役に立てないか考えてみますね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 9) 2021-07-22 08:24:38
背後様が暑さでグロッキー状態だったのですが、やっと体調が戻ってきましたわ。出発が連休中で助かりましたわ。皆様もお体にはお気をつけてくださいませ。

私は2がメインになるかと思いますわ。字数に余裕があれば1も多少行うかも?くらいで。トマシーナ様とお話してカサンドラ様ときちんとお別れしていただけるようにもしたいですし。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 10) 2021-07-23 00:45:43
わたしは2をメインで行うつもりなので、
呪いなどについての聞き取りは他の人にお任せになっちゃうけれど、
よろしくお願いね。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 11) 2021-07-23 04:05:24
わたしは1.2半々ぐらいかしら。わたしは世界各地の名物を集めた、食事会を庭で開くつもり。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 12) 2021-07-23 08:48:59
ひとまずプランは提出しましたわ。現状カサンドラ様は触れる事はできませんが、お体自体は元気な状態という事ですわね?ですからトマシーナ様とお話した後、可能ならカサンドラ様が生前出来なかっただろう、外で駆け回る遊びをトマシーナ様やタロと出来れば良いなと思っております。触れる遊びは難しそうですけれど・・・。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 13) 2021-07-23 18:35:54
素敵な案が多数出ていますね。
僕は、出来るだけそのお手伝いに回った方が良さそうな気がしています。

出発当日にすみません、良かったらの提案なんですが・・・
パーシアさんの案の、トーマス君に書いてもらうカサンドラさんの絵は、
朱璃さんの案の、カサンドラさんが外で駆け回る姿にしてはどうでしょうか?

もし、カサンドラさんが、外で駆け回ることを楽しんでくれた場合は、
これまでになかったような笑顔を、トーマス君の筆で、残すことが出来そうですから・・・

もし、これをすることによる心配事や弊害が特になければ、
上記の部分は僕のプランで書いてみようと思いますが、いかがでしょうか。

そして、駆け回っておなかがすいたところでアルフィオーネさんの美味しいお食事会。
最高じゃないですか♪
僕も、文字数にもよりますが、【料理】でお手伝い出来たらと思います。

呪いについては、最初に述べた通り、「お別れ」のあと、
遺志を継ぐような形でまとめたり補足調査、というアクションになろうかと思います。
ただ、そんなに文字数を割けそうにないと思っています。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 14) 2021-07-23 20:22:21
今日が出発でしたね。うっかりしてました。
あまりセンスには自信ないのですが……折角ですし、カサンドラさんにおめかししてもらいましょう!

こんなに血色がいいなら、きっとお化粧の乗りもいいでしょうし。
綺麗な服も肌に映えると思います。

問題は、私が普段やらないことなんで、全くもって自信がないところですが。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 15) 2021-07-23 20:28:12
>肖像
駆け回る姿、いいんじゃないかしら。
まあ、時間が限られるから、デッサンで終わるかもしれないけど、そのデッサンが後々にトーマスさんの作品として世に出るかも?

そうなると、モデルを聞かれたらちょっと答えづらいかしら……それはそれで、うれしい悩みかもしれないわね。
師匠から弟子へのおっきな宿題になるか。

それとも……大きな贈り物になるか。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 16) 2021-07-23 21:58:49
>絵
タスク様、パーシア様、ありがとうございます。カサンドラ様が外で駆け回る姿を描けるなら素敵だと思いますわ。

見直したらアクションとウィッシュで一部同じことを書いていたので少し修正しましたわ。カサンドラ様が笑って旅立てますよう、そして私達が笑って見送れますよう、頑張りたいと思いますわ。

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 17) 2021-07-23 23:07:23
らぴゃたみゃくたらたたららた!
すっかり遅くなってしまってすまぬのじゃ。

あちきは解呪の件で話を聞くつもりじゃ。
それが終わったら、食事会の手伝いをしようと思うのじゃ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 18) 2021-07-23 23:12:04
パーシアさん、朱璃さん、ありがとうございます!
直前にも関わらず、案を受け入れてくださって、嬉しいです!

ベイキさんの、おしゃれに変身☆案もいいですね!

きっと、素敵な一日になりますね…!