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ニーズに応えて


ストーリー Story

「頼まれてたもん、出来たは出来たが……。本当にこんなのが金になんのか?」
「うちの情報を疑うん? 今まで外したことあらへんやろ?」
「別にお前を信用してねぇわけじゃねぇが……にわかにゃ信じられねぇな」
 学園都市『フトゥールム・スクエア』内、研究棟。
 その研究棟を、地下へと進んだその場所で、話し込む影が二つ。
 明かりが少ないにもかかわらず、輝いて見える金色の髪の毛と尻尾の持ち主の【カグラ・ツヅラオ】と。
 こちらは闇に溶け込むような、薄紫の髪の毛と羽のドラゴニア、【チャロアイト・マリールー】。
 方や教員、方や研究員。あまり接点のなさそうな二人だが、どうやら何かを企んでいるらしい。
「ほな、もろてくわ。捌いたらしっかりお金は渡すさかい、待っててな」
 そう言ってカグラがチャロアイトから何かを受け取って研究棟を出ようとしたが。
「待て」
 チャロアイトから呼び止められる。
「どしたん?」
「出来たっては言ったが、完成したとは一言も言ってねぇぞ?」
「? ……何が足りひんの?」
 どうやら、チャロアイト曰くカグラが受け取ったものは未完成らしく。
 何をもって未完成なのかとカグラが尋ねれば……。
「データが足んねぇ。ちゃんと効果があるのか、元に戻れるか、その辺のデータがさっぱりねぇんだよ」
 と、およそ開発の最終段階の工程が終わってないと告げられて。
「……そのデータ、どれくらいあれば十分なん?」
 であれば、と逆にカグラが質問すると……、
「最低十例前後。あとは多けりゃ多い方がいい」
 とのこと。
「ちょい待ち。……ん-、どないしよか。……うちとあんたで二例は確保できるとして、残り八前後――」
 それを聞いて少しだけ考え込んでいたカグラは、
「そや、あんた魔法薬学の教員証持っとったよな?」
 およそ生徒たちには見せられないような、悪い顔をしてチャロアイトへと尋ねるのだった。



 突如として実習になった魔法薬学。
 それも中級の魔法薬学として、危ない魔法薬を実習出来ると聞いて、生徒たちは授業を楽しみにしていた。
 やがて始業時間になり、実習室へと入ってきたのは……。
「おう、チビッ子達。揃ってんか?」
 商人系の座学を扱うカグラであった。
 なぜカグラ先生が? 生徒たちが首をかしげる中、カグラに続いて入ってきたのは見たこともない教員。
 薄紫の髪、髪と同じ色の羽と尻尾。白衣と眼鏡、マスクをつけたドラゴニアのその教員は、
「今日の魔法薬学実習を担当するチャロアイト・マリールーだ」
 と簡素な自己紹介をすると――、
「早速だが授業の内容について説明すっぞ。まずは各人一つずつ、オレが調合した魔法薬を渡す。別に危険なもんじゃねぇが、体に異変を起こすよう調合してる」
 という説明が続き。
 その説明を聞いて、生徒たちにどよめきが起きるが、
「別に大した変化じゃねぇって。んで、この授業の目的は、そもそも落ち着いた状況で調合出来る場合なんざ限られてるって話で、目の前で毒に犯された知り合いがいて、普段通りに調合出来ると思うか?」
 落ち着けよ、と声をかけ、今回の授業の目的について話し始めた。
「出来ねぇ……違うな。今は無理だろ? だから、普通じゃない状態で調合するっつー場数を踏んで、いつでも冷静に調合できるようにする必要があるわけだ。……魔法薬の調合が繊細なのは今まで習ってきてるよな?」
 チャロアイトの問いかけに、静かに生徒たちは頷いた。
「うし、じゃあ、今回の授業の課題。身に起きた変化に惑わされず、その状態の解除薬を作ってみろ。……あ、ただ、材料も作り方も最初は教えねぇぞ? 試行錯誤して辿りつけりゃあその経験は絶対に忘れねぇからな」
 生徒たちへ薬を手渡しながら、何かとんでもない事をチャロアイトは言う。
「時間ごとに作り方のヒントは出すが、絶対に自分で作ること。んで、早く出来たやつは余分に作れ。オレとこっちの狐も薬飲むからよ」
 さらにとんでもない事を言いながらカグラに薬を手渡して。
 手渡されたカグラは、それを躊躇いもせずに飲み干して。
「んで、肝心の体の変化の部分だが――」
 ポンッ、と。カグラの周囲に煙が発生したかと思えば……、
「こんな風に、性別を変えてしまう薬だそうやわ」
 現れたカグラは、タヌキ耳尻尾の褐色少年へと変貌しており。
 身長は半分くらい。毛色も、先程までの金色はどこへやらで、焦げ茶色へと変わっていた。
「姿かたちがどう変わるかは飲んでからのお楽しみ。とはいえ流石に種族までは変わらへんから、勝手が変わることはあまりないはずや」
 と先程までとは違う少年声で生徒へと話したカグラは、実習室の教卓へと飛び乗り腰を掛けると。
「ほな、時間もあまり長ないし、さっさと始めよか?」
 と授業開始の宣言をした。
 その隣で、チャロアイトが高身長お兄さんへと変わっていることに、一切の目もくれず。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2021-12-02

難易度 とても簡単 報酬 少し 完成予定 2021-12-12

登場人物 4/8 Characters
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《ゆうがく2年生》樫谷・スズネ
 ヒューマン Lv14 / 勇者・英雄 Rank 1
「ただしいことのために、今の生がある」 「……そう、思っていたんだけどなぁ」 読み方…カシヤ・スズネ 正義感の強い、孤児院生まれの女性 困っている人には手を差し伸べるお人好し 「ただしいこと」にちょっぴり執着してる基本的にはいい人 容姿 ・こげ茶色のロングヘアに青色の瞳、目は吊り目 ・同年代と比べると身長はやや高め ・常に空色のペンダントを身に着けており、同じ色のヘアピンをしていることも多くなった 性格 ・困っている人はほっとけない、隣人には手を差し伸べる、絵にかいたようなお人好し ・「ただしいことをすれば幸せになれる」という考えの元に日々善行に励んでいる(と、本人は思ってる) ・孤児院の中ではお姉さんの立場だったので、面倒見はいい方 好きなこと おいしいごはん、みんなのえがお、先生 二人称:キミ、~さん 慣れた相手は呼び捨て、お前 敵対者:お前、(激昂時)貴様
《新入生》神鵺舟・乕徹
 ドラゴニア Lv10 / 芸能・芸術 Rank 1
 文字通りの意味で流れ着いてやってきた、異国の侠客。  用心棒や刺客、はたまた小間使いや芸子としてあらゆる手段で食い扶持を稼いできた苦労人。切った張ったの世界に居座り続けていた為か、思考が少々短絡的。  それだけに本来はそれなりの実力を持っていたが、エイーア大陸の魔物や勇者の戦技は祖国とは勝手が違うため、経験や知識から学び直し、自らの流れに取り入れている最中である。  元の世界では、『戮妓』と呼ばれる剣闘士のようなものをしていた。屈強な戦士や魔物を舞の如き動きで殺め、強さと美しさを見世物にする、絶望の時代ならではの卑賎な稼業である。だが、滅びを求めている魔族や権力者には強く支持されており、人気のある戮妓にはパトロンが付くこともあったという。  人気はあったものの、それ以上に悍ましき本性が勝っていたからか、彼女には誰も寄り付かなかったため、生活には結構苦労していたらしい。  また、過去の果し合いにより、左目の下に裂傷を負い、更に角をねじり折られた後遺症で枯れ木の枝のような醜い角が生えるようになってしまった。が、本人は名誉の負傷としている。  尚、今の名前はかつて愛用していた脇差から借りた偽名である。  話に聞いたエイーア大陸は、魔王の居城があるとされる場所の筈だった。人などが到底住める土地ではなかったとずっと信じていた。  ようやく大陸や学園での生活に慣れてきたものの、今度は平和ボケで腕が鈍りそうになることを恐れている。  また、同性でも自分より背の高い人が多く(というより元の世界の国ではこのくらいが平均だった)、少しだけ気後れしている。  油断すると稀に訛りが強く出てしまうらしい。非常に荒っぽくまるで喧嘩腰のように聞こえるため、極力出さないようにしている。(広島弁や播州弁に似ています。難しいと思いますので、用意された台詞以外はあまりリプレイに反映しないで大丈夫です) 『何だか、妙なとこに来たみたいじゃねえ』 『消えた後に地獄でも待っとるとしたら、そんなのでも救いになり得るのかのぅ?』 『そりゃ誰もが全て見えてりゃ苦労せんわい。目を逸らせるなら、都合のいいものしか見たくないじゃろ』 『えぐい化生共がぎょうさんと。あー邪魔くさいのぅ。わっち、せっせと帰にたい』 出身地:極東の島国 身長:五尺 体重:十貫(よりは少し重いらしい) 実年齢:数え年で二十二 好きなもの:粋な音楽、刃物 嫌いなもの:説教や小言 特技:剣舞、推察 読み:カヤフネ・コテツ
《勇往邁進》ツヴァイ・リデル
 カルマ Lv11 / 教祖・聖職 Rank 1
「このコースに来た理由?回復って使えると便利だよ…えっ?うん、それだけ」 「僕は僕のやりたいようにやるだけさ」 容姿 ・黄色のメッシュをいれているショートウェーブ ・釣り目、少しまつげあり ・眼鏡着用、度が入ってるのか入ってないのかは不明 ・魔法陣は右手、もう一つは胸の中央 性格 ・のらりくらりのマイペース、基本的にのほほんとしてる ・穏やかであろうと努めているが、仲間が傷つけられると口調が荒れる傾向がある ・宗教に興味はあまりなく、蘇生の技術に関心を持ってコースを選択している ・ある目的を以て造られたカルマ、使命と願いを守るつもりではいるが、縛られたくはない模様。というより反抗心バリバリ ・一方的に知っている子どもたちがいるらしいが…? 好きなもの 物語、魔術本、こどもたち 趣味 おやつの食べ歩き 一人称:僕、お兄さん 二人称:きみ、激昂時:お前

解説 Explan

 金になると言われて作られた性別変更薬のモルモ……げふんげふん薬を用いての実習授業となります。
 まずは、薬を飲んだ結果、どんな見た目になるか(性転換後の容姿)をプランに忘れずに記載ください。(身長を変化させる場合、着ている服がどうなるかも記載いただくと助かります)
 (例)身長が低くなり、着ていた服がずり落ちるが両手で押さえる。等。
 また、目的は薬を作ることではなく解除すること。解除薬の材料はチャロアイト先生が用意してくれていますが、ダミーもいくつか混じっております。
 以下、素材を記載しておきます。

 ●購買部で購入可能な素材
  ・上級薬草、きつけ草、軟体草の三種類が材料として用意されています。効果は購買部を確認ください。

 ●購買部で購入出来ない素材
  ・ヒレウオのエラ……乾燥させて粉状にすると胃薬として機能する。
  ・オーピン花……蜜に鎮痛効果がある鮮やかなピンク色の花びら。
  ・グリフォンの爪……学園内のグリフォンから拝借してきた爪。滋養強壮効果がある。

 材料は上記の六点で、それらの組み合わせで解除薬を作れます。
 ……が、解除薬でない場合、その調合薬がさらなる何かしらの作用をもたらすかもしれません。
 急に胸が大きくなったり、あるいは髪が伸びたり、身長が縮んだり。
 つまり、性別が変わった後、さらに見た目を変化させる事が出来ると思っていただいて構いません。
 みなさんの子がただでさえ性別が変わって困惑しているのに、解除薬が作れたと思って飲んでみれば、解除されないどころかまた体が変化したとなれば大慌てすることかと思います。
 そんな反応を見るための措置と考えてください。
 もしそんな反応見なくていいから早急に元の姿に戻りたい場合は、プランに、『一発で解除薬を成功させる』と記載ください。そのようにしますので。


作者コメント Comment
 性転換エピをいろいろ構想を練った結果、こんなエピになりました。
 恐らくそう回数がないであろう性転換の機会。この機会に思う存分楽しみませんか?
 プラン次第ですが、よその子に飲ませて勝手に姿変えたりもOKです。ただし、このエピソードに参加している子限定です。
 必ず相手の了承を得てから勝手に飲ませるように。
 また、カグラ先生やチャロアイト先生に飲ませたい場合も歓迎です。
 現在カグラ先生がタヌキのショタルネサンス、チャロアイト先生が高身長ドラゴニアお兄さんの見た目をしております。


個人成績表 Report
クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:43 = 36全体 + 7個別
獲得報酬:1152 = 960全体 + 192個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
魔法薬に興味はあるが……これはなんとも……
……いや、飲んだらさっさと解除の薬を作るとしよう

うーむ、種族は変わらず、性別の変化が起こるということなら肉体の在り方を変えるもののはず

俺はきつけ草、軟体草、グリフォンの爪が目星をつける
元の姿に戻すことを肉体に促すことで、性転換した時と同じきっかけを引き出すわけだ
転換の転換……それで戻せるはず

仮に失敗したとしてもトライアンドエラーだ
失敗をもとに微調整や調合法自体の見直しなど、様々な方法を試しつつ解除薬を作ろう
他の皆にも早いところ解除薬を作ってあげたいからね、そこは真剣になるさ
なにより、このまま続けたら俺自身も危うい……

樫谷・スズネ 個人成績:

獲得経験:43 = 36全体 + 7個別
獲得報酬:1152 = 960全体 + 192個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
何でだ!!!!(心の声)
他の生徒も大惨事になってる……笑ってる場合じゃありませんよツヴァイさん…!

・見た目
高身長男子に変化、なお服はギリギリセーフで守られました。やぶれなかったよ!
(それでもパッツパツ)
何でだ!!!!(頭抱え)


ともかく解除薬を作らないと……ええと…
その前に性別反転の結果服が大変なことになった面子(主に女子)には制服のマントを着せてやり
手始めに上級薬草を使用したレシピから作成
何も心配することはない、パニックにならなければいいだけだ…
と言いつつかなり動揺しているので素材が粉々になってる

神鵺舟・乕徹 個人成績:

獲得経験:43 = 36全体 + 7個別
獲得報酬:1152 = 960全体 + 192個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
:容姿
考えなしに薬を飲んだら、身体の線は細めだが背が高め(であってくれ!)の多少軽薄そうな優男になりそう。然しそうなると、着物に違和感はなくとも下着が少しきつくなるか?
【付いている】事に大いに違和感は覚えそう。どうなっているか気になるが…。

:行動
然し薬は傷薬くらいしかまともに使ったことがない為……適当に片っ端からぶちこんでみる。
多少おかしな物体にはなるだろうが、素材の組み合わせのパターンはそんなに多くないから、いずれは答えに辿りつけるに違いない。まあ、諦めずに挑めば何とかなるだろう。
毒ガス? 爆発? いやいや、そのような古典的な漫画のような現象がそうそう起こるはずがない。(フリ)


アドリブA以上

ツヴァイ・リデル 個人成績:

獲得経験:43 = 36全体 + 7個別
獲得報酬:1152 = 960全体 + 192個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
のっけから物凄く笑ってるお兄さん
いやいや言いたいことは分かるけど、パニックの種類が違うくない?
楽しそうだからいいよ!率先して転換薬を飲み

・変化後
ふわふわパーマのお姉さんに変化
体型が変わったので服もぶかぶかに
うわー、服がぶかぶか
スズネちゃんありがとー、なんか寒いね

どれが正解なんだろうね
上級薬草はスズネちゃんが試してくれてるし、僕は軟体草にしよ
周囲の生徒の様子も見つつ、冷静に調合
うーん。体を

リザルト Result

 【チャロアイト・マリールー】から手渡された薬を、特に何か思うわけでもなく飲み干した【神鵺舟・乕徹】は、自分の体に変化が起きることを待つことしばし。
 妙な感覚と違和感を覚え、思わず目を閉じて。
 次に目を開くと、目を閉じる前の光景……ではあるが、やはり違和感が。
 周囲を見渡して違和感の正体を探ると、どうやら身長が伸びているらしい。
「ほー。そう変化したのか……」
 と、チャロアイトに言われ、どのような変化をしたのか非常に気になる様子。
 先程の違和感の正体を探すため、周囲を見渡した時に見つけた姿見の前に向かうと……。
「何じゃ……これは?」
 身長は確かに伸びた。ただ、身長が伸びた代償……なのか、随分と体の線が細くなっている。
 全体的に着ていた服が窮屈になったと思う反面、胸元に関してだけは余裕のある感覚に一層戸惑う。
 ――が、
(そういった戸惑いを覚えながら調合をせよとの授業。ともあれ、まずは落ち着かねば……)
 そう言い聞かせて調合道具の前まで移動。
 目についた調合素材を片っ端から掴んでは投げ入れ、掴んでは投げ入れ。
 ぐっるぐっると雑にかき混ぜ――何故か目に染みる煙を発し始める調合薬。
 何か間違えたか? と思うが、それは飲んでみないと分かるはずもなく。
 とりあえず飲んでみるか、と一気に呷り……。
「う゛っ……」
 刺すような酸っぱさの調合薬を飲み干した乕徹の背中から……三本目の腕が生えてきた。
「なんじゃこれはーー!!?」

 目の前に置かれた性転換薬に手を伸ばしたはいいものの、それを飲むかどうかで葛藤を起こしているのは【樫谷・スズネ】。
 目の前で変化する教員や生徒たちの姿に二の足を踏んでいた。
 ――だが、
「そもそも薬を飲んでくれんと授業の評価が出来ひんよ?」
 と【カグラ・ツヅラオ】に言われてしまい、飲み干すしかなくなって。
 ええいままよと目を瞑って一気に呷る。
 体の感覚に違和感は無し。
 あるのは、纏っていた服が急にきつく感じるようになったくらい。
 あまり変化はなかった、と、ホッとして目を開けると……、
「スwズwネwちwゃwんw、そwのw見wたw目wどwうwしwたwのw」
 笑いに声が震えている【ツヴァイ・リデル】が視界に映る。
 ただし、それは普段の見知った姿ではなく、身長が二回り位縮んでおり、髪の毛が肩まで伸びた女性の姿のツヴァイであった。
 対するスズネも、髪の毛が短くなり、身長は伸び。
「って、ツヴァイさん! 服!」
「へ?w 何?w」
 発する声も、普段とは違う低い声。
 ただ、今のスズネにはそんなことよりも気にする事案が一つ。
 そう、元女性(現男性)のスズネが気にしたのは、ツヴァイの肩から今にも落ちそうな服であり。
 元男性という都合上、上着の下に隠すようなナニカを着ていないと判断したスズネは、目にも止まらぬ速さでツヴァイの所まで移動して。
 後ろから、マントをかけて最悪の事態を回避する。
「スズネちゃんありがとー」
 スズネの行動を理解し、お礼を言うツヴァイ。
 普段と違い、スズネの声が低い事と、ツヴァイの声が高いことに違和感が凄かったりするが、お互い様だと黙っている様子。
 最も、ツヴァイに関しては面白いから、という理由な気もするが。
「さて、解除薬の調合なんですけど……」
「手分けしてやる? そっちの方が効率いいでしょ?」
「そうしましょう。とにかく早く元に戻りたくて……」
 どうやら二人は効率を考えて手分けして解除薬の作成に取り組む様子。
 具体的には二人でそれぞれ違う素材や作成手順を試して総当たりするらしい。
「では、私は上級薬草を使ったものを試してみます」
「りょーかい。じゃあ僕は軟体草を主体にしたやつでも作ってみるね」
 そうして取り掛かる二人だったが、スズネの方は……、
(平常心、平常心)
 と、まるでお経のように心の中で繰り返しながら落ち着こうと努力して。
 一方ツヴァイは、
(身長低いとこんな感じなんだ。この目線は結構新鮮だね)
 スズネとは真逆に、これでもかと今の状況を満喫していたりする。
 その結果、
(平常心、平常心)
 心の中とは裏腹に、動揺が隠せないスズネは――素材の原型が無くなるくらいまで粉々に粉砕しているし、ツヴァイも、
(あっちの生徒はー? ……うん? 大丈夫なの? あれ?)
 何か一瞬目を疑うような光景を見た気がするが、そんな光景に気を取られてしまい、素材が塊で調合液の中にダイヴ。
(おっと……ま、何とかなるでしょ)
 それでも軽く考えながら、双方最初の調合薬が完成。
 そして、それが解除薬として正解なのかは当然飲んで確認する以外になく……。
 二人、意を決して飲み干して。
 ムキッ! ミチィッ!!
 と、スズネの身体の筋肉が一回り大きくなり、洋服が悲鳴を上げ始め。
「わぉ!?」
 ツヴァイは、ほんの少しだけ身長が戻る。
 突如として高くなった視界に、びっくりした声を上げるツヴァイと、
「…………」
 今にも弾けそうな洋服を押さえながら佇むスズネ。
 そんなスズネにツヴァイは、
「マント……返そうか?」
 と尋ねるのだった。

(う~む……何が正解だろうか?)
 と、素材を前に腕組みし、考え込んでいる【クロス・アガツマ】。
 ただし、普段なら組んだ腕が見えるはずのソレは、現在見慣れない双丘によって遮られ。
 さらに言えば、結構なグラマラスボディとなっているらしく、普段気にしない部分の張りが気になり続ける。
 ……具体的に言えばお尻。
 別に普段は気にしていなかったが、女性へと変化したのを機に、どうも締め付けられる感覚があって落ち着かない。
 落ち着かないと言えば、下を向けば視界を遮る双丘もである。
 やはり普段と違う、というその点で言えば「性別」、という持って生まれたものを変化させられているわけであるから違和感が凄い。
 そして、
(というか早く元に戻らないと色々と危ない)
 という、正気度がガリガリと削れている音が、脳内に響いている気がするのだ。
 そんな中でクロスが選んだ素材が、
(よし、きつけ草、軟体草、グリフォンの爪でやってみよう)
 の三つ。
 性別が変化したということは、体の何かが崩れたということ。
 そして、崩れたということはそれを元に戻そうと何かしら作用するはずだと考えたクロスは、その元に戻ろうとするきっかけを作るための薬が必要だと考えた。
 そうして三つの素材を調合するわけだが……、
(む、胸が邪魔で分量が見えない。だが、この胸を持ち上げて分量を確認するのは……)
 思わぬところで葛藤と戦うことになっていたりする。
(くっ。ひ、ひとまずある程度の分量で作って反応を見てみるしか……)
 と妥協し、完成した薬を飲み干して。
「どうだ?」
 そう発した声は、よく聞いた自分の声。
 まさか一発目で成功か? と思いきや、下を見ると見慣れぬ光景が……。
「なんだこれ!?」
 クロスの視界には、床まで伸びた立派な白い髭が映っているのだった。

「時間経ったしヒント出すで? 軟体草をベースに調合してみ」
 授業開始の時に言っていた時間経過によるヒントを口にしたカグラ。
 そんなカグラの横では、チャロアイトが生徒たちの変化を片っ端からデータとして取っており。
 一瞬たりとも止まることのない手に、集中力の高さが見て取れる。
「こ、高級薬草だとさらに性転換の過程が進んだので、これではないかと……」
「軟体草ベースに、何か足すだけでいいと思うんだよね。……オーピン花でも入れてみるよ」
 そのヒントを元に、二回目の調合を行うスズネとツヴァイ。
 まずはツヴァイが、身長が戻ったこととカグラのヒントから手を進め、
「では私は――ヒレウオのエラを試してみます」
 スズネは、先程のように素材を粉々にしないように慎重に取り扱い……。
 時間経過することしばし。
 出来上がった調合薬を口にすると……、
「あ、体が――」
「色々とおかしくない!?」
 本来の身長へと戻ってきたスズネと、身長は戻ったが、同時に胸のサイズが四段階ほど大きくなるツヴァイ。
 これにより、身長だけは二人とも戻ったわけだが……、
「あとは性別……」
「待って、これ結構重くて疲れるんだけど?」
 最後の壁というか、元の性別に戻るために何が必要かと考えるスズネと、それどころではないツヴァイ。
「足元見えないの結構怖いし、何より手元見れないから調合間違えそう……」
 なんて感想を漏らしつつ、
「オーピン花は除外。……グリフォンの爪を入れてみるね」
 と、割と冷静さを取り戻し。
「分かりました。私はきつけ草で」
 スズネは、残った試していないきつけ草を試してみることに。
 そうして出来上がった薬を飲むと……、
「良かった、一時はどうなるかと思ったよ」
 ようやく元の姿に戻れたツヴァイ。
 そして……、
「あれ? 私も戻れました!」
 同じく元の姿に戻る事が出来たスズネ。
 そんな二人へ拍手を送ったカグラは、
「誰も正解が一つとは言うてへんからね。そこが調合の面白いところや。違う素材使(つこ)ても同じ効果の薬が出来ることもある。逆に、同じ素材使(つこ)ても違う効果の薬も出来る。どや? 楽しいやろ?」
 と。満面の笑みで。
 ちなみにカグラはどうやら生徒の作った薬を飲んだらしく、一部を除いて元の姿に戻っていた。
 ――唯一、耳だけが狐とタヌキの両方一つずつという歪な状況で、誰かから悪戯されているらしいのだが、二人はそれよりも元の姿に戻れたことが嬉しくて。
「良かった……本当に良かった」
 と安堵するスズネと、
「もう少し遊んどけば良かったかな」
 少しだけ名残惜しい様子のツヴァイ。
 その後片づけをし、授業終了のチャイムが鳴るのを待った二人は、貴重すぎる体験と学びをしたと、深く心に刻むのだった。

「なゼJaああぁぁぁっ」
 現在腕三本。手の指合計十九本。腕はびっしりと毛に覆われた状態のおぞましい姿になっているのは乕徹。
 作った調合薬を飲むと、悉く悪化の一歩どころか三歩四歩を歩む彼(彼女)は、流石にその姿に見かねたチャロアイトから救いの手が差し伸べられる。
「何したらそんな大ファンブル連発みてぇな調合になんだよ」
「わっチが聞キタい! 危険な薬にはならヌはずナノでHAないのか!?」
「ならねぇようにしといたハズなんだよ! だからここまでなってるのはなんでだって聞いてるだろうが!」
 授業ゆえに、安全性は保障されているはずであった……のだが。
 今の乕徹を見るに、本当に保障されているのか疑問になる。
 もはや性別転換という枠を超え、とりあえず化け物になりかけている彼(彼女)を一般的なドラゴニアの姿に戻す必要があり。
「とりあえずこれ飲め! それで多少マシになるだろうから!」
 手早くチャロアイトが作った薬を飲むと、背中から生えた三本目の腕が消滅。
 急に生えた新たな腕の感覚がなくなり、ホッとする乕徹に、
「大丈夫なん? なんや大変なことになっとるみたいやけど?」
 と、カグラも合流。
「任せとけよ。試作段階じゃあこれよりひどい状況もあったし、理性もあって言葉喋れてりゃまだ軽度だ」
 カグラの問いに、少しだけ怖いことを口にしたチャロアイトは、次なる薬を乕徹に渡す。
 それを飲んで、ようやく正常な指の本数へと戻ってきた乕徹に、
「あとはさっきのヒント元に作ってりゃ大丈夫だ。……間違ってもヒント無視したりすんなよ?」
 と釘を刺して離れるチャロアイト。
「うぅ……生き恥じゃ。もう嫌じゃ、帰りたい。穴があったらそこに入ってもう出とうない…」
 そんなチャロアイトの背中を見送り、さめざめと涙を流しながら調合する乕徹は、その後三回ほどの調合を経て、ようやく元の姿に戻る。
 彼女の記憶には、今回の体験は深く深ーく刻まれることだろう。

 ヒントを受け、自分の考えの方向性が間違っていなかったことを確認したクロスは、
(性別は戻ったが行き過ぎた……という感じか? 素材のどれかが余計だった?)
 長く伸びた髭を弄びながら、何がダメだったかを思考する。
(性別自体は戻ったが、今度はこの髭を元に戻す必要がある……か)
 そして、今のクロスに求められているのは性別を戻すことではなく。
 戻った結果、元よりも行き過ぎてしまった肉体を正常に戻す薬である。
(とりあえず今の状況に戻れる調合は見つけたんだ。あとはトライ&エラーで試してみるか)
 ただし、性別だけは戻れる調合を見つけたというのは大きく。
 これから作る薬によって、もう一度女性化しようとも、今の状況には戻ってこられるということで。
 それはつまり、今の状況を新たなスタートラインに出来たということ。
(さて、それじゃあ何から試してみるか)
 その後クロスは、三回ほどの調合を経て、元の姿に戻ることに成功。
 途中、胸がなさ過ぎて下半身の違和感に気が付くまで、男のままだと勘違いしていたり。
 身長が半分くらいになったりもしたが、何とか戻る事が出来た。
 そんな後、
「先生、早めに戻れたので先生の分も調合しました」
「あ、ほんま? 助かるわ。おおきにな」
 早く終わったから、と、カグラの分の調合薬を手渡したクロスは。
 それを飲み、ほとんど元の姿に戻ったカグラを見て、少しだけ頬を緩めた。
 耳だけが、タヌキのままのカグラの姿を見て……。

「ん、そろそろ片付けるで。元の姿に戻れてない生徒は居らへんな?」
 チャイムの鳴る数分前、そう声をかけたカグラは、部屋の中を一通り見渡して。
「大丈夫みたいやな。やっぱ魔法薬学は実践に限るな。百聞は一見に如かず、百見は一行に如かず」
 生徒の顔を見ながら、そう言ってうんうんと頷く。
「忘れたくても忘れられない生徒も居るやろうが、今日の体験は忘れたらあかんで? どんな状況でも冷静に、特に魔法薬なんて繊細なんやから、ちょっとの焦りで思った効果の薬が出来ひんくなる」
「何人か危なっかしいのが居たが、まぁ大丈夫だろ。性転換なんつー特殊過ぎる状況を体験しときゃあ、よっぽどの事がない限り冷静に立ち回れるだろうさ」
「ほな、今日の体験を忘れへんように。ほな、授業終わるで」
 カグラとチャロアイト二人でそうまとめると、タイミングよくチャイムが鳴った。
 生徒たちが部屋を出て行ったのを確認し、チャロアイトが一言。
「それで? お前はいつまでその耳なんだ?」
「ん? 何言って――戻ってへん!? ちょ!? 調合道具今片付けてしもたで!?」
 自分の耳を触って確認したカグラはその後、一人自分の姿を戻すための薬を調合するのだった。



課題評価
課題経験:36
課題報酬:960
ニーズに応えて
執筆:瀧音 静 GM


《ニーズに応えて》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《新入生》 神鵺舟・乕徹 (No 1) 2021-11-30 00:57:38
(効果の強い傷薬ができると思ったが、とんちきな薬の実験に付き合わされるとは………解除薬か、まあ適当にぶち込めば何とかなるじゃろ)

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 2) 2021-11-30 04:07:04
賢者・導師コースのクロス・アガツマだ、よろしく頼む。
うん……まあ、どのような結果になれど、気を確かに保つことにだけ気をつけておこうかな。
消滅しかねない……

《ゆうがく2年生》 樫谷・スズネ (No 3) 2021-11-30 23:34:21
勇者・英雄コースのスズネだ、よろしく頼む
あー……その…なんだ…
だ、大丈夫だ何があっても口外はしない約束しよう!!!
(珍しく混乱している)