;
犬の名前は何ですか?


ストーリー Story

 大きなトカゲが鳴き声を上げた。
「わん」
「どういうことだメェ~?」
 可怪しなトカゲに、【メッチェ・スピッティ】は小首を傾げる。
 いまメッチェが居るのは、学園の一角。
 早朝に授業の用意をするべく教室に向かっていたのだが、その途中で可怪しなトカゲに出会ったのだ。
「犬みたいなトカゲだメェ~」
 好奇心にかられて近付く。
 可怪しなトカゲは中型犬ぐらいの大きさで、口を軽く開けて舌を覗かせている。
 それが余計に犬のように思えた。
(ひょっとすると――)
 ひとつの推測を抱いて、メッチェはトカゲを撫でる。
「手触りが好いメェ~」
 鱗の感触じゃなく、さらさらとした毛並みの手触り。
「幻惑魔法が掛けられてるみたいだメェ~」
 見た目が変わる魔法が掛かった犬らしい。それが証拠に――
「わん」
 一声鳴いて、姿が変わる。
「今度はフクロウだメェ~」
 大きめのフクロウの姿に変わる。
 もっとも見た目だけで本来の姿は変わっていないので、フクロウの背中から先、何も無い筈の場所を触っても、さらさらした手触りがあった。
「誰かが魔法を掛けたメェ~? それとも、自分で掛けてるメェ~」
「わん」
 知らないよ、とでも言うように鳴く犬(?)。
「この子、どうするメェ~」
 野良犬のようだが人に懐いているので、どこかで飼われていた犬なのかもしれない。
 それに魔法が掛かった、あるいは魔法を使える犬を放置するのも、気が引ける。
(どうするかメェ~?)
 などと考えながら犬(?)を見詰めていたメッチェは、ふと思いつく。
「何て呼んだら良いメェ~?」
 犬、と呼ぶのも味気ない。
「お前、何て名前だメェ~?」
「ひゃん」
 付けて、とでも言いたげに、甘えた声を上げる犬(?)。
 メッチェは少し考えて――
「めぇめぇでどうだメェ~?」
「わふぅ……――」
 不満を示すように鳴いたあと、またトカゲの姿になると、メッチェの前から走って逃げ出す。
 お気に召さなかったようだ。
「どうするメェ~?」
 逃げられたメッチェは、思案しながら教室へと向かった。

 その後も、件の犬(?)は学園内で頻繁に見つかる様になりました。
 時折、学園生が餌をやっていることもあり住み付いたようです。
 人懐っこいようですが、名前を付けようとして気に入らないと逃げ出す模様。
 気になったメッチェは、課題を出しました。
 内容は、学園に住み着いた犬(?)に名前を付けて、飼い主になって欲しいとのこと。
 この課題を聞いてアナタ達は、どう動きますか? 


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2021-12-18

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2021-12-28

登場人物 5/8 Characters
《光と駆ける天狐》シオン・ミカグラ
 ルネサンス Lv14 / 教祖・聖職 Rank 1
「先輩方、ご指導よろしくお願いしますっ」 真面目で素直な印象の少女。 フェネックのルネサンスで、耳が特徴的。 学園生の中では非常に珍しく、得意武器は銃。 知らない事があれば彼女に訊くのが早いというくらい、取り扱いと知識に長けている。 扱いを知らない生徒も多い中で、その力を正しく使わなくてはならないことを、彼女は誰よりも理解している。 シオン自身の過去に基因しているが、詳細は学園長や一部の教員しか知らないことである。 趣味と特技は料理。 なのだが、実は食べるほうが好きで、かなりの大食い。 普段は常識的な量(それでも大盛り)で済ませているが、際限なく食べられる状況になれば、皿の塔が積み上がる。 他の学園生は、基本的に『○○先輩』など、先輩呼び。 勇者の先輩として、尊敬しているらしい。 同期生に対しては基本『さん』付け。  
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。
《ゆうがく2年生》グラニテ・フロランタン
 ドラゴニア Lv11 / 賢者・導師 Rank 1
名前:グラニテ・フロランタン(偽名) 年齢:25歳 性別:女性 種族:ドラゴニア 外見:白い前髪パッツンのおかっぱ たれ目の青い目 色白 巨乳 性格:大人しくおっとりしていてマイペース 普段は余りわがままを言わない 家出したのを気にはしてる 本来の性格は寂しがりで無邪気 お菓子が大好き ちょっと世間知らず 服装:明治の女学生さんスタイル 日傘をさしている
《模範生》レダ・ハイエルラーク
 ドラゴニア Lv16 / 黒幕・暗躍 Rank 1
将来仕えるかもしれない、まだ見ぬ主君を支えるべく入学してきた黒幕・暗躍専攻のドラゴニア。 …のハズだったが、主君を見つけ支えることより伴侶を支えることが目的となった。 影は影らしくという事で黒色や潜むことを好むが、交流が苦手という訳ではなく普通に話せる。 ◆外見 ・肌は普通。 ・体型はよく引き締まった身体。 ・腰くらいまである長く黒い髪。活動時は邪魔にならぬよう結う。 ・普段は柔らかい印象の青い瞳だが、活動時は眼光鋭くなる。 ・髭はない ・服は暗い色・全身を覆うタイプのものを好む傾向がある。(ニンジャ…のようなもの) ・武器の双剣(大きさは小剣並)は左右の足に鞘がついている。 ◆内面 ・真面目。冗談はあまり効かないかもしれない。 ・立場が上の者には敬語を、その他には普通に話す。 ・基本的に困っている者を放っておけない性格。世話焼きともいう。 ・酒は呑めるが呑み過ぎない。いざという時に動けなくなると思っている為。なお酒豪。 ・交友は種族関係なく受け入れる。 ・伴侶を支えるために行動する。 ◆趣味 ・菓子作り。複雑な菓子でなければ和洋問わず作ることができる。
《枝豆軍人》オルタネイト・グルタメート
 リバイバル Lv15 / 魔王・覇王 Rank 1
■性別■ えだまめ(不明) ■容姿■ 見た目:小柄で中性的 髪:緑のショートヘア 目:深緑色 服:生前の名残で軍服を好む。 あとなぜが眼帯をしてる。 ※眼帯に深い理由はない。 ■性格■ 元気(アホの子) 意気揚揚と突撃するが、結構ビビりなのでびっくりしていることもしばしば。 ■趣味■ 枝豆布教 ■好き■ 枝豆(愛してる) ■苦手■ 辛いもの(枝豆が絡む場合は頑張る) ■サンプルセリフ■ 「ふはっはー!自分は、オルタネイト・グルタメートであります。」 「世界の半分を枝豆に染めるであります!」 「枝豆を食べるであります!おいしいのであります!!怖くないのであります!」 「これでも軍人さんでありますよ。ビビりじゃないであります!」 「食べないで欲しいでありますー!!自分は食べ物ではないであります。」

解説 Explan

●目的

学園に住み着いた犬(?)が気に入る名前を付けて飼い主になる。

参加した誰かが成功すれば、他のPCは失敗しても全体で成功に成ります。

●犬(?)

幻惑魔法が掛けられているらしく、色々な姿になる。

人懐っこく、頭が好いです。

気に入った名前を付けて貰えれば、魔法が解けて飼うことが出来ます。

●方法

学園のいたる所に出没するので、好きな場所で接触して名前を付けてあげて下さい。

プランで書いていただいた場所に、犬(?)は出没します。

犬(?)に対して、どのような行動をとるかも、犬(?)が名前を気に居るかどうかの判定に関わります。

もちろん、名前自体も判定に入ります。

餌を沢山やったから「犬っころ」でも気に入るだろう、ということはありません。普通に、砂とか掛けて逃げます。

名前が気に入らなくても、接し方が良ければ懐きはします。

●MVP

今回MVPを獲った方は、犬(?)を飼うことが出来ます。対象者は、お1人のみです。

ペットとして、後日配布されます。

以上です。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、リクエストで運営に投げていただいた物をエピソードにした物になります。

今後も、こうしたリクエストがエピソードとして出る可能性もあります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。


個人成績表 Report
シオン・ミカグラ 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
ワンちゃん可愛いですよね〜
まあ今はワンちゃんかどうかも不明なのですが!姿違って見えるので!

場所はスペル湖の公園です
ぽかぽかいい天気なのでお散歩してました!……私が

私はボールを持ってきてワンちゃんと遊びます
取ってきてもらえたらいっぱい褒めてあげましょう
え、絵面は幻惑魔法のせいで良くないかもしれませんが……きっと口にボールをくわえているはずです

それから、祖流還りでフェネックに変身して、同じくらいの目線でワンちゃんとじゃれ合ってみましょう
一緒にボールを追いかけたり、素敵な遊び相手になれたらうれしいです!

名前は、そうですね……
『ソナタ』はいかがでしょうか?
親しみやすい響きだと思って考えてみました!

アンリ・ミラーヴ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:156 = 65全体 + 91個別
獲得報酬:4800 = 2000全体 + 2800個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
犬?に会って、怪我がないか確かめ、あれば治療をしたい。
大丈夫なら、遊びたい。もともと犬は好き。
犬?を保護する目的もあって、出来れば俺は飼いたい。
だから名前を伝えてみる。

植物園「リリー・ミーツ・ローズ」周辺で犬?を探す。
犬?が身を隠して過ごしていそうだから。
動物と出会ったら、怖がられないよう距離を詰めずに、しゃがんで「わんわん」と犬の鳴きまねをして、犬?かどうか確かめる。
舌を鳴らしたり「おいでおいで」と呼びかけ。
近づいたら俺の手の匂いを嗅がせて、警戒を解かせる。
そして優しく体を撫でていく。どんな姿か、怪我が無いか確認。
怪我があれば簡易救急箱で応急処置をする。

グラニテ・フロランタン 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
ワンコの名前を考える
クリスマス前だしクリスマスっぽい事したい

【同行者】
レダ・ハイエルラーク(恋人)

【行動】
レダさん!
もうすぐクリスマスですわね!
という事で…ケーキのお時間ですわ!(握り拳)
クリスマスと言えばケーキです!
ブッシュ・ド・ノエルを作りましょう♪

せっかくですから作ったケーキは皆さんと一緒に食べましょう!

…あ、そしてこれは聞いた話なんですが
最近学園に迷い犬が迷い込んでるみたいなんです
せっかくだから迷い犬さんにもケーキを食べて貰いましょう♪…え?犬はチョコレート食べれない?
(犬用ケーキも作って持っていく)

わぁ!見てくださいレダさん!
わんって鳴いてるのにお馬さんですよ!
凄いですわね!

レダ・ハイエルラーク 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
目的
◆犬の名前を考えつつ、皆でクリスマス気分を

同行者
◆グラニテ・フロランタン(恋人)

行動
◆恋人同士なのでイチャイチャしている事が多い
◆現地に行く前に2人でブッシュドノエルを作る(味覚強化・料理Lv20)
◆ケーキを作る際、泡立て器を投げて掴んだりジャグリングしたりする
◆作ったケーキは解決後に参加者やNPCにもおすそ分けして食べる
◆作っている時に犬の名前を「ノエル」と決める
◆内緒で恋人にマカロンを作り、全て終わった後に贈る
◆現地では危険感知・気配察知・第六感と使えそうな一般技能で探す
◆もし犬が砂などをかけて来た時は危険感知・第六感・一般技能でグラニテさんに被害が及ばないように守る


オルタネイト・グルタメート 個人成績:

獲得経験:78 = 65全体 + 13個別
獲得報酬:2400 = 2000全体 + 400個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
心情;枝豆以外に名付け……久々でありますな〜

場所;植物園(枝豆コーナー)

行動;相棒のカカオポッド共に、自慢の枝豆(ネイト)をお世話中に遭遇
その見た目のワンと鳴く生き物だと思い込む
(トカゲの姿ならトカゲ)

枝豆を食べるか聞く。
YESなら、まず持たせてもらい重さを測定。
重ければ10粒、軽ければ5粒。
「食べ過ぎは体に良くないであります!」

NOなら、干し肉を渡す。
「なら、お肉をどうぞであります!」

ご飯を一緒に食べたら一緒に遊ぶことを提案
純粋に楽しみたい


リザルト Result

 その日は年末だとは思えないほど、ぽかぽか陽気の好い天気だった。
 のんびりお昼寝したくなるような長閑さの中で【シオン・ミカグラ】は、お散歩していた。
「ここなら、ちょうど良いかもしれませんね」
 スペル湖をのんびり歩きながら、シオンは周囲に視線を向ける。
(ワンちゃんと遊んであげても、人に迷惑は掛からなそうです)
 ちょうど良い場所を探しているのだ。すると――
「あ、メッチェ先生! お疲れ様です!」
 こちらに近づいてくる【メッチェ・スピッティ】に気付き声を掛ける。
「私も課題受けてみました。ワンちゃんに会ったら、一緒に遊んであげるつもりです」
「なら、ちょうど良かったメェ~」
 そう言うとメッチェは、一緒に連れて来ていた犬(?)を紹介する。
「この子が、ワンちゃんですか?」
 視線を向けると、そこに居たのは犬ぐらいの大きさがあるフェレット。
「そうだメェ。見た目と違って、触ってみると分かるメェ~」
 言われて撫でてみる。
 フェレットの身体の少し上あたりに毛並みの感触があった。
(はぅ、ふわさらで気持ち好いです)
「中型犬ぐらいの大きさでしょうか? 人に慣れてますね」
 撫でられても、じっと見つめているだけで逃げ出す様子は無い。
 視線を辿れば、シオンが持って来ていたボールに向かっている。
「遊びたいですか?」
「ひゃん♪」
 嬉しそうな鳴き声を上げるので遊んであげる。
「取って来て下さい」
「わん♪」
 ボールを投げると、楽しそうな鳴き声を上げ走り出す。
「足が速い子ですね」
 素早く走って取ってくる。
「よしよしよーし! おりこうさんです!」
「ひゃん」
 あげる。と言わんばかりに、ボールをシオンに渡すと、期待するようにじっと見上げている。
 くすりとシオンは笑みを浮かべると遊んであげる。
「次は、ちょっと遠くまで投げますよ」
「わふ♪」
 それを繰り返し――
「わ、私も……我慢できなくなっちゃいました!」
 祖流還りでフェネックに変身し、一緒に遊ぶ。
「ひゃんひゃん♪」
(楽しいです♪)
 視線を合わせて戯れ合い、ボールを追い駆けっこ。
 時折、お互い鼻先でボールを転がして、キャッチボールのようにして遊んでいった。
 一緒に遊んで楽しんで、最後に名前を考える。
「ところで、先生はワンちゃんになんて名付けようとしたんですか?」
「めぇめぇだメェ」
(……めぇめぇ)
「わふぅ……」
 それは、ちょっと。というように鳴く犬(?)。
 なので今度は、シオンが名前を口にした。
「名前は、そうですね……」
 スペル湖に来る前に、芸能・芸術コースの授業を受けていたシオンは、その時の閃きを名前にする。
「『ソナタ』はいかがでしょうか? 親しみやすい響きだと思って考えてみました!」
「ひゃんひゃん!」
 好い名前。というように鳴くと、フェネックの姿に変身。
「わふ」
 フェネックの姿になったまま、もっと他でも遊ぶー、と言わんばかりに鳴いて走り出す。
 それをメッチェは追い駆ける。
「あとで結果を伝えるメェ~」
 それを見送ってあげるシオンだった。

 メッチェが犬(?)を追い駆けている頃、【グラニテ・フロランタン】と【レダ・ハイエルラーク】はカップルのひとときを過ごしていた。

「レダさん!」
 好いことを思い付いたというように楽しげに呼び掛けるグラニテに、レダは静かに視線を向ける。
 言葉を待ってくれているレダに、グラニテは明るい声で言った。
「もうすぐクリスマスですわね!」
「ああ」
「という事で……ケーキのお時間ですわ!」
 きゅっと握り拳を作って意気込むグラニテに、レダは柔らかな笑みを浮かべ応えた。
「ケーキは、好いな」
「はい! クリスマスと言えばケーキです!」
「分かった。好きな物を言ってくれ。作ろう」
「なら、ブッシュ・ド・ノエルを作りましょう♪ クリスマスにピッタリです」
「それなら材料も足りる。どのくらいの大きさの物が良い?」
「大きさは、これぐらいで」
 両手で示した後、続ける。
「いっぱい作りましょう。せっかくですから作ったケーキは皆さんと一緒に食べたいです!」
「それは、好いな」
 嬉しそうな笑顔を浮かべるグラニテに、自然とレダの顔にも笑みが広がる。
「数を作るなら、食堂を借りよう。今の時間なら場所を貸してくれるはずだ」
「はい!」
 そうして2人は、仲良く連れ立って食堂に向かう。
 道中、楽しく話し掛けていたグラニテは、課題のことも話題にする。
「あ、そしてこれは聞いた話なんですが、最近学園に迷い犬が迷い込んでるみたいなんです」
「ああ。メッチェ先生が課題で出していたな」
「はい。なので、せっかくだから迷い犬さんにもケーキを食べて貰いましょう♪」
「なら、犬用のケーキを作らないと。犬にチョコレートは禁物だ」
「え? 犬はチョコレート食べれないんですか?」
「ああ。中毒になる可能性があるらしい」
「だったら、犬用のケーキを作ってあげましょう!」

 楽しくお喋りして食堂に到着。
 早速ケーキ作りを開始する。

「薄力粉とココアを合せておいてくれるか?」
「はい」
 料理上手なレダの助言を受けながら、グラニテは薄力粉とココアを合せながら振るっていく。
 その間に、レダは常温に戻した卵をボウルに割って入れると、愛用の泡立て器を取り出す。
 ジャグリングのように投げて掴んで、感触を確かめる。
(これなら良し)
 確かめた所で、卵を白っぽくふんわりするまで混ぜる。
 ほれぼれするほど手際が良い。
(さすがです、レダさん)
 料理上手なレダを、グラニテは見詰めていたが――
「私も手伝います!」
 グラニテもケーキ作りに加わる。
 生地を混ぜ混ぜ。
 その間にレダは、グラニテにバレないよう逸品を作っていく。
 2人で協力し合い、ケーキは完成。
「どうだろうか?」
「美味しいです! レダさんも、はい、あーん」
 フォークに刺したケーキを食べさせ合いっこ。
 味覚に自信があるグラニテの意見を大いに参考にしながら、美味しいケーキが出来あがった。
 レダは出来あがったケーキを見詰めながら――
(犬の名前は、ノエルにするか)
 浮かんだ閃きを名前にすることにした。
 そしてケーキは食堂に置いて貰う。
 あとで課題を受けた皆で食べるためだ。

 ケーキ作りが終れば、犬(?)探し。
 グラニテが見習いの箒に乗りながら精霊を呼び出し一緒に探していき、レダも龍の翼を使い上空から探していく。
 その甲斐あり、メッチェと一緒の所を探し出す。

「わぁ! 見てくださいレダさん!」
 レダと一緒に、グラニテは駆け寄る。
「わんって鳴いてるのにお馬さんですよ!」
「わんっ」
 グラニテの言葉通り、犬ぐらいの小さな馬が鳴き声を上げた。
「凄いですわね!」
「ああ」
 レダは頷きながら、グラニテをいつでも守れるような位置に動く。
 触れてみて犬のようだと判断できたが、万が一があるのでグラニテのことを思い動いていたのだ。
 そのあと2人は、犬(?)と遊んでやる。
 人懐っこいので、楽しそうな鳴き声を上げる犬(?)。
 ひとしきり遊んであげて、名前を付けてあげる。
「『ノエル』というのはどうでしょう? ケーキを作ってる時に浮かんだんです」
 笑顔を浮かべグラニテは言った。
「ブッシュ・ド・ノエルは『聖夜の木』って意味ですから。聖夜前に迷い込んで学園に居着いているからノエル」
「良いと思う」
 笑顔で応えてくれるレダに、グラニテは続けて言った。
「ブッシュ・ド・ノエルは暖炉の薪という説もありますけど、そっちの意味でも良いと思います。この子に会う為に、皆が集まっているのも良く似てますもの。暖かい場所には人が集まってくるものですから」
「ああ、そう思う」
 2人は見詰め合い、温かな空気が広がる。
「ひゃんひゃん♪」
 レダとグラニテを祝福する様に鳴くと、まだ遊び足らないのか犬(?)は走り出した。
 それを追い駆けるメッチェに――
「ケーキを作ったんです。あとで皆で食べましょう」
 レダが声を掛ける。
「楽しみだメェ~」
 皆に伝えておくと言いながら、犬(?)を追い駆けるメッチェだった。

 追い駆けるメッチェを犬(?)が振り切っている頃、【オルタネイト・グルタメート】は自慢の枝豆(ネイト)をお世話中だった。

「元気に育つでありますよ」
 水をじょうろで枝豆の根元に掛けていく。
「虫がつかないように気を付けないといけないでありますな」
 虫よけに木酢酢を掛けながら、一本一本愛情込めて育てていた。
「一年中育てられるのは、やはり好いでありますな」
 満面の笑顔を浮かべるオルタネイト。
 植物園の一角を借りて育てているのだが、魔法で温室になっているので年中育てることが出来る。
「水が切れたであります。代わりを貰えるでありますか?」
 オルタネイトの言葉に応え、じょうろを載せたカカオポッドが近付く。
「ありがとうであります」
 じょうろを受け取り水を掛けていくオルタネイト。
 相棒であるカカオポッドは珍しい変異種で、どう見てもでっかい枝豆なのだが、あくまでもカカオポッドである。
 そんな風に、相棒と共に枝豆の世話をオルタネイトがしていると――
「ひゃんひゃん」
 楽しそうな犬の鳴き声が聞こえてくる。そちらに視線を向けると――
「トカゲでありますか?」
 見た目がトカゲになっている犬(?)。
「珍しいトカゲでありますな」
 事情を知らないオルタネイトは、そういう生き物なのだと判断し近付く。
 すると犬(?)は、オルタネイトの持って来ていた学生カバンの匂いを嗅ぐようなしぐさをして鳴き声を上げる。
「どうしたであります……ひょっとして、枝豆が食べたいのでありますか?」
「ひゃんひゃん♪」
 嬉しそうな鳴き声を上げる犬(?)。
 当然、承諾するオルタネイト。
「枝豆が食べたいとは、見込みがありますな! もちろんあげるであります。でもその前に――」
 ひょいっと犬(?)を持ち上げるオルタネイト。
 リバイバルなので実体のあるものに触れるのは少し苦労したが、重さを図る。
「この重さなら、5粒が良いでありますな。食べ過ぎは体に良くないであります!」
「ひゃん♪」
 嬉しそうに食べる犬(?)。食べたあと――
「一緒に遊ぶであります!」 
「わふ!」
 追い駆けっこをしたり、ちょっとした芸を仕込んだりする。
「お手であります」
「わん!」
 ぽふ、っとお手をすると、カカオポッドも対抗する様に、オルタネイトの掌に、ちょんっと体を当てる。
「次は鬼ごっこでありますよ!」
「わっふー!」
 カカオポッドも加わって鬼ごっこ。
 楽しく遊んでいると、そこにメッチェが来て事情を説明。
「名前でありますか……」
 課題に参加することにしたオルタネイトは考えたあと――
「まめたん、というのはどうでありますか? 自分もめめたんにえだまめたんと言われたことがありますが、可愛い名前だと思うであります」
「わふ?」
 保留中、という感じの犬(?)に、もうひとつ。
「シード、というのはどうでありますか? 色々な姿になれて本来の姿が分からない。どんな姿になるのかワクワクするのが種と同じだと思うであります」
「わん♪」
 こっちの方が好き! という様に鳴くと、皆に教えようとするかのように走り出す犬(?)。
 それをメッチェは追い駆けながら――
「あとで打ち上げのケーキパーティするメェー」
 場所を伝えながら走って行った。

 植物園を駆けまわる犬(?)。
 そこで出会ったのは、【アンリ・ミラーヴ】だった。

「こんにちは」
「わふ?」
 初めての出会いだが、親しげに話しかけて来るアンリに、犬(?)は不思議そうに見上げる。
「君が、メッチェ先生の言っていた子だね」
 アンリは怖がらせないように距離を取ったまま、腰を下ろしてしゃがむ。そして――
「わんわん」
 犬の鳴きまねをして、犬かどうか確かめる。
「わふ?」
 犬(?)は興味を持ったのか、トカゲの姿で近付いてくる。
 そこにアンリは、ゆっくりと自分の手を差し出した。
「おいでおいで」
 優しく呼び掛けながら、ときおり舌を鳴らしたりして興味を惹く。
 すると犬(?)は、アンリを確かめるように、差し出された手の匂いを嗅いでいた。
(うん、仕草は犬みたいだ)
 犬が好きなアンリは、犬(?)を保護することを第一に、事前に動物学を学びなおしている。
 その甲斐があって、仕草から色々と判断することが出来た。それを強めるため――
「撫でさせてね」
 警戒されないよう、頭上からではなく横手から手を伸ばし撫でていく。
(怪我は……無いみたい)
 ほっと胸を撫で降ろす。
 一番心配していたことは、犬(?)が怪我をしていないかどうかだったので安心する。
 念のために簡易救急箱も持って来ていたのだが、必要なかったようだ。
 体を撫でられ、心地好いのかアンリを見上げている犬(?)に、ゆっくりと語り掛ける。
「君を『ココ』と呼びたいんだ。良いかな?」
「わふ?」
 不思議そうに鳴き声を上げる犬(?)に、アンリは撫でながら気持ちを伝えた。
「姿が変わっても、君はココにいる。君を見失っても、君を好きな俺はココにいる。だからココ。どうだろう?」
 見た目が違ってても。どこかに行ってしまったとしても。変わらぬ想いはココにある。
 犬(?)のことを大事に想い、そのために行動し、一緒に居たいと告げるアンリに――
「ひゅん!」
 ひときわ強く嬉しそうに鳴くと、本来の姿をココは見せてくれた。
「それが、君の姿なんだね」
「ひゃん♪」
 真っ白な毛並みと、人懐っこく、同時に利発そうな顔立ちをしていた。
 どういうわけか、シルクハットを被り、赤い蝶ネクタイを首輪代わりに着けている。
「わんわん!」
 遊ぼう! というように鳴きながら見上げるココに、アンリは応える。
「うん。遊ぼう」
「わふ♪」
 一緒にお散歩しながら、あっちを見たりこっちを見たり。
 そうして遊んでいると――
「ここに居たメェ~」
 走り疲れたメッチェがやって来る。
「ひゃん」
 アンリの傍で鳴くココに、メッチェは驚く。
「犬に成ってるメェー」
「ココって名前を、気に入ってくれたみたいです」
「わん!」
 そうだよ! というように鳴いて応えるココ。
「良かったメェ~。なら飼うんだメェ?」
「はい。それでメッチェ先生、ココの住処が決まってなかったら、生物園のアニパークが良いと思うんです」
「アニパークかメェ?」
「はい。飼育に適した場所だし、園内の囲われた場所なら、変身し続けるココを安心して遊ばせられて、他の人達とも触れ合わせられると思うんです」
「好い考えだメェ。手続きは、こっちでしておくメェ」
「ありがとうございます」
「ひゃん」
 礼を言う、アンリとココだった。

 課題が終わり、レダとグラニテが用意してくれたケーキを皆で食べることにする。

 美味しいケーキに皆が笑顔になる中で、レダはグラニテにプレゼント。
「マカロン! 美味しそうです!」
 グラニテは1つ食べて美味しさとプレゼントの喜びに笑みを深め、レダにもひとつマカロンを取って食べさせてあげる。
「はい、レダさん。あーん」
 一口食べて、美味しさとグラニテの笑顔に、同じように笑顔を浮かべるレダだった。



課題評価
課題経験:65
課題報酬:2000
犬の名前は何ですか?
執筆:春夏秋冬 GM


《 犬の名前は何ですか?》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 1) 2021-12-12 20:29:23
教祖・聖職コース、アンリ・ミラーヴ。よろしく(尻尾ぶんぶん)
犬?と遊びたい、だけじゃない。犬?にかかった、魔法を解きたい。
俺の付ける名前、気に入ってくれたら、お世話する。

《光と駆ける天狐》 シオン・ミカグラ (No 2) 2021-12-14 01:11:10
教祖・聖職コースのシオン・ミカグラです。よろしくお願いします!

うーん、名前ですか……どうしましょう……
とりあえず出発日までにちゃんと考えておきましょう。メッチェ先生よりは頑張っていいネーミングを……!

《枝豆軍人》 オルタネイト・グルタメート (No 3) 2021-12-16 07:17:25
ふはっはーオルタネイトでありますよ〜

枝豆以外の名付けとか久々なので楽しみであります〜