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偶には故郷に里帰り


ストーリー Story

「やっと終わった」
 疲れた声で、学園生の1人が息をつく。
 それも無理は無い。
 ここしばらく、瓦礫の後片付けや破壊された施設の修理に駆り出され、ろくに休む暇も無かったのだ。
 一月ほど前、魔王の軍勢に学園が襲撃され撃退したものの、その爪痕は広範囲に残り、表面を取り繕うだけでも時間が掛かっていた。
(本格的な修繕は、またこれからみたいだけど)
 教師達から話を聞くと、この際なので改修も兼ねた修繕を行うらしい。
 これまで学園は、魔王の脅威に対抗する為の側面も持っていたが、これからはそれも変わる。
 今まで以上に授業の専門性を上げることを提唱する者もいれば、外部との連携を強め研究都市としての特色を出していこうという者もいた。
 魔王の撃破という、歴史の転換点とも言うべき状況に、祭めいた熱狂が広がっているようだ。
(まぁ、要は、浮かれてるってことだよな)
 教室に戻りながら、彼は思う。
(しょうがねぇよな。それだけ大きなことを成し遂げたんだから)
 どこか誇るように思いながら歩いていると、同じ学年の友人に声を掛けられた。
「よう、そっち終った?」
「ああ。今回の課題は、これで終わり。次、どうすっかな?」
「だったら、帰省の課題に参加してみねぇか?」
「帰省? 故郷に帰るってことか?」
「そういうこと。学園以外でも魔王軍は暴れてただろ? それに異世界に避難してた所もあるみたいだし」
「あー、それってつまり、学園の後始末に片が付いたから、労働力を外部に放流しようと」
「そういう意味もあるみたいだけど、ほら、やっぱ故郷がどうなってるか気になる生徒もいるだろ? そういうのも汲んで、課題という形で手配してくれてるみたい。帰省するのにかかる費用とか、諸々を用立ててくれるみたいだし」
「なるほどね。なら、参加してみるかな。お前はどうする? あと――」
 彼は友人の名前を口にした。
「あいつは、どうだろうな? なんか、故郷は異世界らしいけど」
「そっちも、手配してくれるらしいぜ。異世界転移門の研究してる、ほら、なんつったっけ?」
「セントリアか?」
「ああ、そこそこ。そこと協力して、出来る限り異世界転移者が元居た世界に戻れるように便宜を図ってくれるらしい。向こうとしても、研究データが入るんで乗り気みたいだ」
 以前は眉唾物とも思われていた異世界ではあるが、実証された今となっては、新たな研究テーマとして熱を帯び始めている。
「俺は折角なんで、あいつが異世界に帰省するのについて行こうかと思ってるんだ。研究論文の良いテーマになりそうだからな」
「そっかー……そっちもそそられるなぁ。故郷にはいつでも帰れるし」
「なら、お前も連いてくる?」
「んー……悩む」
 などと、友人同士で喋りながら、2人は教室に戻っていった。

 そうした帰省に関する課題が、学園から出されました。
 故郷が気になったので帰るのでも良いですし、友人や知人が異世界に戻るのに同行してついていっても良いようです。
 ひょっとすると、故郷が既にない人がいるかもしれませんし、あるいは、故郷に何かしらの因縁がある人もいるかもしれません。
 そうしたことを解決するためにも、一度故郷の地を踏むのも良いでしょう。
 魔王に勝利し、新たな時代が訪れる中、新たな区切りを迎えるためにも、この課題に参加してみませんか?


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 6日 出発日 2022-07-06

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2022-07-16

登場人物 4/8 Characters
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv17 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。
《光と駆ける天狐》シオン・ミカグラ
 ルネサンス Lv14 / 教祖・聖職 Rank 1
「先輩方、ご指導よろしくお願いしますっ」 真面目で素直な印象の少女。 フェネックのルネサンスで、耳が特徴的。 学園生の中では非常に珍しく、得意武器は銃。 知らない事があれば彼女に訊くのが早いというくらい、取り扱いと知識に長けている。 扱いを知らない生徒も多い中で、その力を正しく使わなくてはならないことを、彼女は誰よりも理解している。 シオン自身の過去に基因しているが、詳細は学園長や一部の教員しか知らないことである。 趣味と特技は料理。 なのだが、実は食べるほうが好きで、かなりの大食い。 普段は常識的な量(それでも大盛り)で済ませているが、際限なく食べられる状況になれば、皿の塔が積み上がる。 他の学園生は、基本的に『○○先輩』など、先輩呼び。 勇者の先輩として、尊敬しているらしい。 同期生に対しては基本『さん』付け。  
《剛麗なる龍爪龍翼》カゲトラ・トウジロウ
 ドラゴニア Lv9 / 村人・従者 Rank 1
「炉の炎が如く、我の血も滾っておる」 筋肉質な巨躯が目を惹くドラゴニアの女性。 鋭い目つきと古めかしい口調が印象的。 正式な名前表記は藤次郎景虎。 現役の刀工であり、武具甲冑の職人。 代々、鍛冶製錬を生業としてきた由緒あるドラゴニア一族の長女であり、その技術の後継者。 炎の加護を受けた種族であるため、武具づくりに欠かせない炉に灯る炎を神聖なものとして崇めている。 幼少から鍛冶職人としての技術を学び、現在に至るまでの長年に渡って炉の炎を近くで見てきたせいか実は目が悪い。 そのため、勉学の場では眼鏡を掛けている。 戦闘にはあまり影響はない。 体格のせいで時々、武神・無双コースや魔王・覇王コースの生徒と間違われる。 身長は約2メートル。 発達した筋肉は幾万回も鉄塊や金床に向き合った結果、自然と身についたもの。 外見よりも実年齢は数十年ほど上。 趣味は作刀や工芸製作。 好きなものは風呂(高温下で仕事すると汗をかく為)
《新入生》ザコバ・モブロフ
 ヒューマン Lv14 / 魔王・覇王 Rank 1
サブカルチャー大好きな34歳独身。 彼女いない歴は我が生涯である! 元居た世界ではブラック企業に勤務していたらしいが、会社で2月目の缶詰め状態に入ったある日、夜中にデスクでうたた寝してたら……この世界に転移してしまった。 とりあえず、元の世界に戻って大事なフィギュア達や薄い本を転売の魔の手から守るのが今の目標。 「そのためならば、拙者は悪にでもなれるでござるよドゥフフフ……」 でも、ファンタジーの世界にいるはずのエルフっ娘やらを生で見られるので、この世界も満更ではないようだ。 なお、大変なメタボでいらっしゃる。 健康診断はこわいけど、白衣のナースは大好物。 失ったもの:頭髪 実年齢:34歳(2020.3.22現在) 身長:151cm 体重:3桁の大台

解説 Explan

●概要

故郷に帰る課題です。

この世界のどこでも良いですし、異世界でも構いません。

基本、どういう場所なのかについては、自由に出せます。

自分の故郷でも良いですし、友人などについていく内容でも構いません。

●やること

故郷で家族に会って団らんを過ごすことも出来ますし、何かしら問題が発生していれば、その解決に奔走することも出来ます。

PCの因縁にまつわる話を進めることも可能です。

基本フリーシナリオなので、どういうように進めていただいても構いません。

今後も、定期的にフリーシナリオ形式の物を出して行きますので、連作として進めることも可能です。

●NPC

PCの関連するNPCを出していただいて構いません。

あとは、私の運用していましたNPCなら、好きに出していただいて構いません。

●その他

それぞれ個別に進めることも可能ですし、何人かで話を進める物でも可能です。

複数人で話を進める場合は、プラン内に、その旨を書き込み下さい。

そして、話を進めていただく中で、場合によってはネタとして拾わせていただいて個別シナリオが出る可能性があります。

ネタを使用して個別シナリオを出しても良いという場合は、個別シナリオ可能、とプランに書いていただけると、個別シナリオが出る可能性が上がります。

以上です。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、アフターストーリーエピソード第二弾、になっています。

タイトル的には、帰省をテーマとした物になりますが、そこから自由に話を広げていただけます。

ほのぼのな話にするのも可能ですし、PCの因縁にまつわるシリアスな物に繋げていくことも可能です。

話の内容次第では、魔王軍の残党や、その他のNPCが出て来る可能性があります。

基本的には、連作のノベルにご参加いただくような内容になっています。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。


個人成績表 Report
アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
ココと一緒に俺の故郷へ里帰り。
「俺の家族、ココの新しい家族に、会いに行こう」
立派な姿を見せようと【お上品なローブ】を着て服装を整え、馬車に揺られて村へ辿り着き、久しぶりに会う村の皆へ挨拶しながら家へ。
家の扉を開け、一年ぶりに会う両親に抱き合って再会を喜ぶ。
そして並んで歩いてきたココと両親を会わせて紹介する。
「ココ。俺の父ティタと、母ミーヤ。二人とも優しい。皆、家族」
休憩してから、ココと連れて集団墓地へ。
そこに眠る弟チャアや祖父母にもココを紹介し、祈りを捧げる。
夜、村の広場で焚火を囲みながら、村人達が準備してくれた歓迎会。
村人の怪我を【祈祷】【デトル】で治療するなどして数日過ごし、学園へ帰る。

シオン・ミカグラ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
カゲトラ・トウジロウさんと同行

魔王との決着をカゲトラさんは報せたいらしく、一緒に彼女の故郷へ向かいます

ついていくと決めたその時は、ただカゲトラさんの一族の方に挨拶と、父がしたことへのお詫びがしたいなって思っていたんです
少し彼女が渋ったのを、察するべきだったのかもしれません


そこは風化し忘れ去られた廃村でした
カゲトラさんのすぐ後ろを歩いて、彼女の案内に従います

数十本の木の杭が打ち立てられたところ……お墓だそうです
彼女が唯一の生き残りなら……これをひとつひとつ、カゲトラさんが……

私はカゲトラさんの墓参りを静かに見つめ、そして共に祈ります

カゲトラ・トウジロウ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
シオン・ミカグラと共に我の故郷を訪ねよう
幻灯とトロメイア……その境ほどのアルマレス山から連なる山地の奥にある
そこまで歩くのはシオンでも一苦労だろうがな

あやつが一緒に行きたいと言ったときは……正直、複雑な気持ちだった
我にはまだ、どこかにあるのだ。魔銃の男と同じ血が、我が一族の焔神に祝福されし地にふたたび足を踏み入れることを許していいのかと
……何より、故郷とは呼ぶが、そこにはもう人ひとりいないのだから

荒れ果てた故郷に着いたら墓に向かう
皆に魔王との決着を報せねば
毒弾に殺められた母様、爺様、一族の皆をここまで引きずって、三日かけて全員を埋葬した
フトゥールム・スクエアの名を炎へ帰した一族の皆に伝えようぞ

ザコバ・モブロフ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
元の世界(現代日本)に戻って、失踪扱いになってるであろう、かつてのブラックなお仕事とか清算するでござるよ

◆行動
と思ったら……家のポストに解雇通知が届いてたでござるの巻
とりあえず、お宝は搬出済み故、家財を処分し、アパートを引き払うでござる
これで、心置きなく学園に戻れるでござるな

こっちの樹海に避難させた生き物や魔物達を元の世界に戻したら、拙者も学園に戻るでござる

……って、なかなか野生動物が捕まらないでござるよ!?
このままじゃあ、「樹海で新種発見!?」とか週刊誌に書かれちゃうでござる!

新種以前に、妖怪と言った方が良いのも居るでござるが
まあ、気長に何回か連れ戻しに来るしか……なさそうでござるなあ

リザルト Result

 学園生達は、それぞれ帰郷を行っていた。

●ココと一緒に里帰り
 ある日、【アンリ・ミラーヴ】は魔法犬【ココ】に、ひとつお願いをしました。

「ココ。俺と一緒に、遠出をしてくれる?」
「わふ?」
 どこ行くの? というように、アンリを見上げながら小首を傾げるココに言いました。
「俺の故郷に、ついて来て欲しいんだ。俺の家族、ココの新しい家族に、会いに行こう」
「わん!」
 嬉しそうに鳴き声を上げ、尻尾をふりふり。
 アンリも嬉しそうにココを撫でてあげると、帰省のための準備をします。

「ひゃん♪」
 似合ってるよ、というようにココは鳴き声を上げます。
「ありがとう」
 お礼を言うアンリ。
 今のアンリの姿は、いつもよりも立派です。
 身嗜みを整えて、上品さを感じさせるローブを羽織っています。
 機能性よりも見た目の良さを第一にしているので着こなしが大変ですが、アンリは巧く着こなしていました。
 そんなアンリを見上げながら、ココは小さく尻尾をふっています。
 なぜなら、折角おめかししたアンリに毛を付けないようにしているからです。
 それに、ココもアンリにおめかしして貰っているので、おすまししていました。
 丁寧にブラッシングをして貰い、首輪代わりに着けているリボンも綺麗にして貰い、ちょこんと頭に乗せている、小さなシルクハットも磨いて貰っています。
 アンリもココも、立派な姿をしていました。
 それをお互い確認し合うと――
「行こうか、ココ」 
「ひゃん♪」
 アンリの故郷に出発です。

 長い道のりを歩いていくと、折角のおめかしが崩れてしまいます。
 だからグリフォン特急便で、途中まで運んで貰うことにしました。
 乗り場に向かうと、予約していたグリフォンと御者さんが待っててくれました。
 ひときわ大きなグリフォンが、背中に籠のようなものを載せています。
 直接グリフォンの背中に乗ると、おめかしが崩れてしまうので、立ったまま乗れるようにしてくれたのでした。
「用意が出来たみたいだね。それじゃ早速、乗っていくかい?」
「はい。お願いします」
「ひゃん」
 アンリとココは御者さんに声を掛け、グリフォンの背中に載せられた籠の中に乗ります。
 するとグリフォンは力強く羽ばたきすると、魔法で風に乗り高く浮かび上がり、空を翔けていきます。
 とても速いです。
 見下ろす地面が目まぐるしく移り変わります。
 けれど魔法の力で守られているので、風ひとつない快適な空の旅をすることが出来ました。
 アンリの横でココが、籠のふちに前足を、ちょこんとかけて一緒に移り変わる地面の景色を眺めていると、あっという間にアンリの故郷近くの駅に辿り着きました。
「ありがとうございました」
「ひゃん」
 アンリとココは、御者さんと乗せてくれたグリフォンにお礼を言うと、今度は村に向かう馬車に乗り換えます。
「ココ。ここに乗って」
「わふ」
 アンリは荷物カバンに入れておいたココ用の座布団を取り出すと、座っている座席の横に敷く。
 そこにココは、ぴょんと乗り、一緒に馬車に揺られてアンリの故郷であるモクハク村に向かいます。
 しばらく馬車に揺られ、村の入口まで辿り着くと降ろして貰います。
「ありがとうございました」
「わん」
 アンリとココは馬車の御者さんにお礼を言うと、家に向かいます。
 草原の中で木やレンガの家が並ぶ小規模の村の中を歩いていると――
「アンリじゃないか。里帰りかい?」
 知り合いの村人に会い挨拶します。
 みんな、アンリが立派な姿をしていたので感心した様子でした。
 アンリは、年に一回は里帰りしていましたが、一年は短いようで長いもの。
 懐かしそうに言葉を交わしていくと、故郷に帰って来たのだと実感が湧いてきます。
 村の人達と、幾らかお喋りしたあと、両親の待つ家に向かいます。
 しばらく歩き――
「ただいま」
「おかえり」
「おかえりなさい」
 寡黙で気難しそうな顔をしている父、ティタと、優しく快活な性格でコロコロと表情が変わる母、ミーヤが出迎えてくれました。
「疲れてない? 今日は、アンリの好きな物を作ったからね。村の人達も手伝ってくれたのよ。あとでみんなで一緒に食べましょう」
 寡黙なティタの分も喋る様に、ミーヤが話しかけてきます。
「ありがとう。楽しみだ」
 アンリが礼を言うと、ミーヤは大きく、ティタは小さく笑顔を浮かべます。そして――
「その子が、ココちゃんなの?」
 ミーヤがココに興味津々といった様子で、腰を落とし視線を合わせます。
「かわいいわ」
「ひゃん」
 ありがとう、というようにココは鳴くと、小さな馬の姿に変わり、ミーヤやティタの回りを周ってみせます。
「わぁ、本当に姿が変わるのね」
 ミーヤは歓声を上げ、ティタは興味深げにココを見詰めます。
 事前に手紙で、ココとの出会いや特殊能力も伝えていたので、大きく驚くことは無く、ココを受け入れてくれました。

 そのあと、両親とお喋りを楽しんで、アンリは村から少し離れた所にある集団墓地に、ココと一緒に訪れました。

「チャア。おじいさん。おばあさん」
 お墓の前で、アンリはココを紹介します。
「この子は、ココ。新しい、家族だよ」
 幼くして病気で亡くなってしまった弟と、祖父母にココを紹介します。
「ひゃん」
 ココも自己紹介するように、お墓に向かって鳴きました。
 そしてお墓の掃除をすると、祈りを捧げます。
(みんな、どうか安らかに)
「……」
 アンリは祈り、ココも合わせるように、静かにお墓を見詰めていました。

 穏やかな時間が過ぎたあと、ティタとミーヤの待つ家に戻ったアンリは、ローブを脱いで動き易い姿になると、村の歓迎会の準備を手伝います。

「今日は主役なんだから、休んでて良いのに」
「気にしないで。俺も手伝いたいんだ」
「わふ」
 アンリとココも一緒に準備して、気が付けば日が暮れていました。そして――

「アンリの帰郷を祝って!」
 賑やかに歓迎会が始まりました。
「ほらほら、食べて食べて」
 美味しい料理が沢山です。
 アンリの好物の、ニンジンを使った料理も沢山あります。
 みんな笑顔になって、飲んで食べて、お腹いっぱいになったら、腹ごなしとばかりに踊って歌います。
「ひゃんひゃん♪」
 一緒に踊ろうというように鳴くココに――
「うん、踊ろう、ココ」
 アンリも一緒に踊りました。

 楽しい歓迎会が終わったあと、アンリは数日村に滞在しました。
 その間、魔法を使って、怪我をしている村人がいれば癒してあげました。そして――

「行って来ます」
「いってらっしゃい」
「いつでも、帰って来い」
 ミーヤとティタに見送られ、アンリとココは学園へと戻ることにしました。
「行こうか、ココ」
「ひゃん」
 村での楽しい想い出をお土産に、アンリとココは学園に戻るのでした。

●亡郷にて
「私も同行しては、いけませんか?」
「……」
 頼みこんでくる【シオン・ミカグラ】に【カゲトラ・トウジロウ】は、すぐに返すことが出来なかった。
(どう応えるべきか……)
 心の奥底に、仄暗い激情を押し込めながら、カゲトラは返答を迷っていた。

 事の起こりは、学園から帰郷に関する課題が出たことだ。

(故郷、か……)
 課題の張り出された掲示板を前に、カゲトラは暗い表情を浮かべていた。
 そこでシオンに声を掛けられる。
「カゲトラさん」
 シオンは声を掛けると、カゲトラの視線を追って掲示板を見詰める。
 そこに書かれた内容を知って、シオンは表情を硬くした。
 シオンの表情に気付いたカゲトラは後ろめたさと同時に、嗜虐心にも似た感情を胸の奥で感じてしまう。
(我は……なにを……)
 気付けと言わんばかりに、胸の奥を鋭い爪で掻かれるような感覚が湧き立つ。
(……やめろ)
 振り払うように、カゲトラは湧きあがる感情を心の奥底に押し込めようとした。けれど――
「故郷に、戻られるのですか?」
 シオンの言葉が、押し込めようとした感情を浮き上がらせる。
「なぜ……」
 僅かにかすれたような声をカゲトラは返す。
 それは問い掛けの言葉ではなく、シオンを遠ざけたいという気持ちから出た物だった。
(駄目だ……)
 一言そう言えれば、どれほど楽だっただろう。
 けれど言葉にすることが出来ない。
 どれほど自分に言い聞かせようとしても、望んでいるのだ。
 シオンに、全てを知らせることを。
(我は……)
 自身の内にそれほどの感情があることに、カゲトラは驚く。
(納得していたと、思っていた……)
 それは欺瞞だと、心の奥底に押し込めた感情が叫ぶ。
 ぶちまけてしまえ、思い知らせろと、塞がらぬ傷口から血を溢れさせるように、カゲトラを苛んでいた。でも――
(駄目だ)
 自分の心を切り裂くようにして、激情を無かったことにしようとする。
 だって、怖いのだ。この想いを曝してしまえば――
(我と、シオンは……)
 違えてしまうと、カゲトラは思っていた。
 なのにシオンは言った。
「帰っても、良いと思います」
 それはカゲトラが口にした「なぜ……」への応えでしかなく、その奥にある真意からは程遠い言葉。
「……」
 無言のまま、カゲトラはシオンの言葉を聞き続ける。
「故郷は、大切ですから。迷っていたとしても、機会があるなら、戻っても良いと思うんです」
 それはカゲトラのことを思っての言葉だった。
 シオンの真摯な眼差しが、そうであると伝えて来る。
「そうか……」
 カゲトラは空に視線を向けながら、応えを返す。
「一度、帰っても良いのかもしれん……皆に、魔王との決着がついたことを知らせるためにも」
 遠い空の果てを見詰めながらカゲトラは言った。
 そこでシオンは頼みこんだのだ。
「私も同行しては、いけませんか?」
「……」
 頼みこんでくるシオンにカゲトラは、すぐに応えを返すことが出来なかったが、迷いの果てに問い掛けた。
「どうしても、ついて来たいのか?」
「はい」
 応えは迷いなく、すぐに返って来た。
「そうか……分かった」
 カゲトラはシオンの選択を否定することなく、共に故郷へ向かうことを受け入れた。

 一度決めてしまえば、行動は早かった。

「我の故郷は、幻灯とトロメイア……その境ほどのアルマレス山から連なる山地の奥にある。途中まではグリフォン便で行けるが、そこから先は徒歩になる」
 野宿の仕度をしながらカゲトラは説明する。
「日帰りで学園に戻ることは出来ん。その準備をしておけ」
「はい」
 カゲトラの言う通り、素直に準備を進めるシオンに、カゲトラは苦笑する。
「あまり意気込むと、途中で疲れてしまうかもしれん。ほどほどにな」 
「はい、気をつけます。ありがとうございます、心配してくれて」
 尻尾をふりながら笑顔を浮かべるシオンに、カゲトラは心が痛む。
 それでも準備を止める気にはなれず、代わりに気遣うように言葉を掛ける。
「我の故郷まで歩くのはシオンでも一苦労だろうが、無理はするな」
「はい!」
 変わらず笑顔を浮かべるシオンに、カゲトラも小さく笑顔で応えた。

 そしてカゲトラの故郷に向け、出発する。

「行って来ます!」
 教師達に挨拶をすると、シオンはカゲトラと共にグリフォン便の駅に向かう。
「いつもより人が多いですね」
 駅は、これまでになく賑わっている。
 多くは笑顔を浮かべ、あるいは柔らかな表情をしていた。
「皆さんも、故郷に戻られるんでしょうか?」
「……かもしれんな」
 頷くように、カゲトラはシオンに返す。
 それだけのことでも、シオンは嬉しかった。
(好かった。カゲトラさん、応えてくれる)
 そう思ってしまうのは、シオンには不安があったからだ。
(故郷への同行……断られても仕方ないのに、カゲトラさんは許してくれた)
 もし駄目だと言われたなら、シオンは諦めるつもりだった。
 なぜなら、自分には資格がないと思っていたからだ。
(カゲトラさんには、迷惑を掛けないようにしないと)
 自分を戒めるように、シオンは思う。
(これは、私の勝手な気持ちが原因なんですから。私が訪れることで、カゲトラさんが責められないようにしないと)
 シオンがカゲトラの故郷に訪れたいと思ったのは、父の非道の行いを知ったからだ。
(少しでも、償うことが出来れば……)
 カゲトラの話で、シオンの父が彼女の里を襲ったことは知っている。
 けれど具体的に、どれほどの被害を与えたのかは聞けないでいた。
 聞こうと思えば、聞けたかもしれない。
 でもそれは、カゲトラに辛い過去を思い出させてしまうことにも繋がりかねない。
 カゲトラを傷つけてしまうことが怖くて、シオンは詳細を聞けないでいた。
 それを明らかにするためにも、カゲトラの故郷への同行を許して貰えたことは感謝している。
 同時に、覚悟も抱いていた。
(どれだけ傷つけられたとしても、受け止めたいです)
 それが自分の出来る精一杯のことだと、シオンは思っていた。

 だが、シオンは気付けない。
 どれだけ覚悟を抱こうが、どうしようもない空虚があるのだということを。
 気付けぬまま、カゲトラの故郷へ向かっていた。

 グリフォンの背に乗り、空を進む。
 風を置き去りにするような速さで空を翔け、やがてカゲトラの故郷に近い駅まで辿り着いた。

「ここからは徒歩で行く」
「はい」
 2人はグリフォンから降りると、カゲトラの故郷を目指し歩き始める。
 緩やかな坂道を進み、次第に山道へと入っていく。
 段々と険しさが増す中、2人は歩き続けた。
 共に、言葉は無い。
 無言のまま進む。
 それは巡礼への道のりにも似た歩みだった。
 一歩一歩確実に、義務を果たすかのように前へと進む。
 決して止まることは無い。
 いや、止まる事が出来ないでいた。
 何かに、あるいは誰かに急かされるように、歩を進める。
 その中でカゲトラは、故郷に近付くにつれ、怖いと思い始めていた。
(足が、重い……)
 かつて何度も通った道のりだというのに、まるで知らない場所を歩いているようだ。
 故郷に近付くにつれ、破滅にも似た予感が圧し掛かってくる。
(我は、帰らなければならないのに……)
 一族の皆に知らせることは、自らの義務だと思っている。
 なのに、帰りたくないという想いが足取りを重くする。
 それは全て、シオンが共にいるからだ。だからこそ――
「我の故郷に着いても、歓迎されることは無い」
 シオンを遠ざけるように、カゲトラは口を開いた。
「戻るなら、今の内だ」
「大丈夫です。カゲトラさん」
 拒絶するかのようなカゲトラの言葉に、シオンは応える。
「たとえ、どんなことを言われても……どんな目に遭わされるとしても、私はカゲトラさんの故郷に行きたいんです」
「なぜだ……」
 純粋な疑問をカゲトラは口にした。
「分かっているのか、自分が言っていることを」
「分かっている、つもりです」
 一瞬言いよどんだあと、シオンは言った。
「少し前に、ある村に訪れたんです」
 それは教師である【ユリ・ネオネ】と共に、村を守るために訪れた時の話だった。
「親切で、良い人達の村でした。村に訪れたら、私達を歓迎してくれて……でも、私が父の娘だと気付いた人がいて……石を投げられました」
「それは――」
「父が殺した人達の生き残りだったんです」
「……」
 カゲトラは言葉を返せず、シオンは懺悔するように話し続ける。
「その時に思ったんです。私は、父の罪と向き合わなければいけないって」
「それは……シオンの罪では無いだろう」
「はい。でも、そうするべきだと、思ったんです」
 思いを告げ、シオンはカゲトラを思いやるように続ける。
「カゲトラさん、ごめんなさい」
「……なぜ謝る」
「それは……無理を言ってついて来てしまいましたから」
「許したのは我だ、シオンが気に病むことでは無い。だが――」
 カゲトラは言い淀んだあと、正直な気持ちを口にした。
「我にはまだ、どこかにあるのだ。魔銃の男と同じ血が、我が一族の焔神に祝福されし地にふたたび足を踏み入れることを許していいのかと」
 カゲトラの思いを聞き、けれどシオンの足取りは変わらなかった。
 それを横目で見たあと、カゲトラは続ける。
「それでも、我と共に里に訪れたいと変わらず思ってくれるか……シオン」
「はい」
 穏やかな声でシオンは応えた。
「覚悟の上です」
「そうか……」
 僅かな間を空けて、カゲトラは言った。
「すまぬ。余計なことを言った」
「そんなことないです。私は、嬉しかったです。カゲトラさんの想いを伝えて貰えましたから」
「……シオンも、話してくれたからな……我も、隠さず話すべきだと思った」
 カゲトラの言葉にシオンは、泣き出しそうな、それでいて嬉しそうな表情を浮かべ見詰めていた。
 その眼差しに、カゲトラは返せない。
(我は……酷い奴だな……)
 これからシオンの覚悟が全て無駄になることを知りながら、それでもそのことを告げずに故郷に向かう自分を、カゲトラは自嘲するように小さく笑った。

 そして2人は辿り着いた。

「ここが、我の故郷だ」
「……」
 シオンは言葉を返すことが出来ない。
(そんな……ここって……)
 血の気が引いていくのが自分でも分かる。
 寂れ、荒れ果てているかもしれないという覚悟はあった。
 けれどそこには、人の息吹は何も無かった。
 それも昨日今日の物ではない。
 もはや朽ち果て、風化し忘れ去られた廃村が、カゲトラの故郷だった。
 死に絶えた村が、そこにはあった。
「家族は、ここにはいない。居場所に案内する」
「……」
 振り返ることも無く進むカゲトラの後ろを、シオンは歯を食いしばるような必死さでついていく。
 歩いて歩いて歩いて……――村の奥、切り開かれたその場所に、カゲトラとシオンは足を踏み入れた。
「ここに、全員が眠っている」
 カゲトラが示す先にあったのは、無数の杭。
 それは墓標だった。
「毒の弾丸で殺されたからな。綺麗な死に顔をした者は、誰もいなかった」
 訥々と、カゲトラは語る。
「母様、爺様、一族の皆をここまで引きずって、三日かけて全員を埋葬した」
「……これをひとつひとつ、カゲトラさんが……」
「我以外、いなかったからな」
 それはつまり、カゲトラ以外の全員が殺されたということ。
「……」
 シオンは言葉が見つからず無言でいると、カゲトラは家族に伝えるべき事を口にする。
「魔王の脅威は、最早ない。我と……シオンが、フトゥールム・スクエアの皆が、立ち向かい打ち勝った。この先の世界は、魔王を恐れず在り続ける。だから、安心してくれ」
 穏やかに、語りかけるように、墓標を前にカゲトラは言った。
 大いなる炎に還った一族の皆に伝わる様に、精一杯の想いを込め伝えたのだ。
 そしてカゲトラは、どうしようもない空虚さに囚われた。
(もう我には――)
 何も無い。
 家族は全て殺され、故郷は死に絶えた。
 魔王の脅威は去り、人生を賭して成し遂げる目的も在りはしない。
(我にはもう何も、そう何もないのだ。故郷も、家族も、何もかも……)
 諦めという泥沼にカゲトラが沈みかけた、その時――
「カゲトラさん!」
 手を差し出し救い上げるように、シオンがカゲトラを抱きしめた。
「……シオン?」
 ポロポロと涙を零しながらシオンは言った。
「ごめんなさい。カゲトラさんは、こんなにも苦しんでいたんですね……気付けなかった……ごめんなさい」
「なぜ……シオンが謝る。……我に、何もないのは……シオンのせいでは――」
「違います!」
 泣きながら、シオンはカゲトラに呼びかける。
「何もないなんて、言わないでください」
 それは何よりも、カゲトラのことを想っての言葉だった。
「今のカゲトラさんには、一族から受け継いだ想いが、学園のみんなが」
 ぎゅっと、ひときわ強く抱きしめながらシオンは言った。
「私が、います」
 自身の言葉を証明するように、シオンはカゲトラを強く強く抱きしめる。
 それがカゲトラに自覚させる。
 今の自分は、独りではないのだと。
「なぜだ……なぜ……」
 溢れる問い掛けに、シオンは応えた。
「カゲトラさんが、大切だからです。それに私は、カゲトラさんのお蔭で、今ここにいることが出来る」
 涙を零しながら見詰め合い、シオンは想いを告げた。
「カゲトラさんがいなかったら、私はあのまま死んでいました。あなたが居たから、私はここにいるんです」
 不器用に、けれど精一杯の笑顔を浮かべ、シオンは言った。
「私が証のひとつです、カゲトラさん」
「……そうか」
 カゲトラは抱きしめ返しながら涙を零す。
「すまん……少しだけ、このまま……」
「……はい」
 カゲトラとシオンは、お互いを確かめ合うように抱きしめあった。

 そして一晩を村で過ごす。
 日が暮れ、今からでは帰り道が危険なので、寄り添うようにして夜明けまで共に居て――

「帰りましょう。フトゥールム・スクエアに」
「ああ。帰ろう、一緒に」

 シオンとカゲトラの2人は、学園へと帰るのだった。

●ゲンダイニホンに里帰り
(折角の機会であるから、一端戻るのも吉でござるな)
 学園から提案された、帰郷に関する課題の話を聞いて、【ザコバ・モブロフ】は思案した。
 といってもそれは、故郷を懐かしんだり、望郷の念に駆られたからではない。
 どちらかというとそれは、身辺整理をつけたいという気持ちからだった。
(別段、向こうの世界に固執するほどの未練はないでござるからな)
 ザコバは、異世界からこちらの世界に転移してきた者の1人だ。
 こちらの世界より、科学的にも文化的にも発展した世界から来ているのだが、だからといって戻りたいとも思わない。
(むしろブラック会社勤めの世界に戻るのは御免でござる)
 心底思う。
 元居た世界ではブラック会社にカテゴリーされる、違法労働すれすれ、というよりは余裕でぶっちぎってる会社で働きづめだったことは思い出すのも嫌な記憶だ。
 独身で、人間関係の繋がりも希薄なので、しがらみもありはしない。
 それならばこちらの世界でスローライフを過ごした方が良いに決まっている。とはいえ――
(向こうに置いてきたフィギュアや薄い本は取り戻すでござるよ!)
 ゲンダイニホンの人間社会に未練はないが、文化と副産物には大いに未練がある。それはもう、溢れんばかりに。
 なので、お宝のサルベージがてら戻るつもりなのだ。それに加えて――
(向こうに避難させた、こちら側の生き物を連れ戻さないといけないでござるしな)
 魔王との決戦の際、魔王の力の源となる生物達をゲンダイニホンに一時避難させたのだが、その多くは向こうの世界から帰還できないでいる。
(話の通じない生き物が多かったでござるからな)
 魔王は恐怖を自分の力と変えるため、知性のある生物だけじゃなく、いわゆる野生動物も含まれていた。
 ザコバは、そういった野生動物の避難に協力したのだが、その時の野生動物達が戻ってないのだ。
(向こうで馴染んでしまったら……こういうのも特定外来生物と言うのでござろうか?)
 冷静に考えると、かなりヤバい気がする。
「早く行った方が良さそうでござるな……」

 色々と懸念もありつつ、故郷の世界に戻るべく、異世界転移門のあるセントリアに到着。

「それじゃ、送りますね」
「お願いするでござる」
 転移門を開いて貰い、元居た世界に戻る。

「代わり映えしてないでござるな」
 自室に戻り、万が一誰かに侵入されてないか確かめたが、前回訪れた時と変化はない。
「さて、これからブラック企業とバトルでござるが」
 陰鬱とした気分になりながら、居ない間に溜まっている郵便物を見に行く。すると――
「……手間が省けたでござるな」
 ポストを見に行くと、件のブラック企業からの解雇通知が入っていた。
(要約すると、勝手に来なくなったんだから退職金も何も払わないぞ、と)
 貯まっていた筈の有給分の給与が、しれっと無かったことにされていたりするのがブラック企業だ。
(……まぁ、賠償請求とか来なかっただけマシでござるな)
 ブラック企業には何ひとつ期待してなかったので、むしろ清々しささえ感じる。
「余計な手間が省けて好かったでござる」
 最大の懸念材料が勝手に消えてくれたので、ここからは自分のために動くことにする。
「新作で良いのは出てないでごさるかな?」
 ウキウキで春の新作アニメをチェック。
「おおっ、これはクる物があるでござるよ」
 キュンときた子のグッズを予約。
「……お金は足りるでござるか?」
 ネットバンキングで確認。
 支出は、家賃を自動支払いしているだけなので、まだまだ余裕があった。
(使ってる暇なかったでござるからな……)
 年中余裕なしで働きづめにされていたので、家賃と偶に衝動買いするオタグッズ以外で支出が無いので、それなりに貯金は残っていた。
(とはいえ、こちらの世界で収入が無いでござるから、いずれ尽きるでござるが……)
 学園では住居や食事の世話をして貰っているので、向こうの世界のお金ならあるが、こちらで使えるわけじゃない。
(向こうの魔法道具を持って来れば大金を手に入れられそうでござるが……)
 それをすると国レベルの騒動に巻き込まれそうなので二の足を踏む。
「まぁ、そんなことよりも、まずは身辺整理でござる」
 部屋にあるお宝オタグッズを、持って来ていたカバンに詰める。
 魔法の効果が掛かっているので、見た目以上に詰め込める上に重さも軽減されていた。
 それ以外の家電などは、出張買い取りを頼み全て片付け終ると、最後に部屋を引き払う。
「これで、心置きなく学園に戻れるでござるな」
 全部終わらせ軽く伸びをすると、もうひとつ片付けなければいけないことに向かう。
(こっちの樹海に避難させた生き物や魔物達を元の世界に戻したら、拙者も学園に戻るでござる)

 というわけで、乗り物を乗り継ぎ樹海に到着。早速捕まえようとするが――

「――って、なかなか野生動物が捕まらないでござるよ!?」
「はっはっは、頑張りたまえ」
「他人事だからって気軽に言うなでござるよ!」
 何故かいたHENTAI教授が、写真に撮ろうとする。
「おっと、教授。魔物の写真撮影はNGでござるよ?」
「えー」
「ちーず」
「魔物とツーショット撮ろうとしちゃダメでござるよ」
 幼女女神を止めつつ、HENTAI教授も一緒に魔物達の捕獲を手伝って貰おうとしたのだが――
「それにしても……環境に適応したのか、野生動物や魔物の動きがいいでござるな」
 捕まえたり追い込んで、元の世界に戻すのも一苦労だ。
「このままじゃあ、『樹海で新種発見!?』とか週刊誌に書かれちゃうでござる! 新種以前に、妖怪と言った方が良いのも居るでござるが!」
「楽しそうだね」
「だから写真撮ろうとするなでござるよHENTAI教授!」
 色々とあって、一度では捕まえきれないと判断する。
「まあ、気長に何回か連れ戻しに来るしか……なさそうでござるなあ」
「おや、戻るのかね?」
「ずっといる訳にはいかないでござるからな。それに新作の萌えグッズが出たら、ゲットに戻ってくるでござるよ」
「ちゃんと帰って来るのですね、主さま」
 幼女女神は嬉しそうだった。すると――
「彼女の名前を聞いてみてくれないかね? 私では教えてくれないのだよ」
 HENTAI教授に頼まれる。
(そういえば、名前聞いてなかったでござるな)
 訊いてみると――
「【岩長佐久夜比売(いわながさくなひめ)】です、主さま」
 古めかしい名前が返ってきた。それを聞いたHENTAI教授が尋ねる。
「どちらの分霊なのかね?」
「和霊と荒霊に分かれる前の直霊から産まれた分霊よ」
「……原初神霊の分御霊か。よく現代まで残れたね」
「消えて天に還る所だったのを主さまの濃い魔力で復活できたの」
 言いながら、ぴとっとザコバにくっつき魔力を吸う佐久夜。
「駄目でござるよ。魔力チュッチュはお仕事のあとでござる」
「主さまのいけず」
 聞こえないふりをして、魔物達の捕獲に戻るザコバだった。

 こうして、それぞれの帰郷を過ごした学園生達であった。



課題評価
課題経験:112
課題報酬:5000
偶には故郷に里帰り
執筆:春夏秋冬 GM


《偶には故郷に里帰り》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 1) 2022-07-03 01:16:21
教祖・聖職コース、アンリ・ミラーヴ。
久しぶりに、俺の故郷、村へ帰るつもり。

《光と駆ける天狐》 シオン・ミカグラ (No 2) 2022-07-04 17:51:53
教祖・聖職コースのシオン・ミカグラです、よろしくお願いします!

私はカゲトラさんの故郷に一緒についていく予定です。
それに父がしたことと向き合うにも、いい機会だと思いましたから。

《新入生》 ザコバ・モブロフ (No 3) 2022-07-05 23:09:47
拙者、魔王・覇王コースのザコバと申す。よろしくお願いするでござるよ。
拙者は、もと居た世界に戻ってみて、失踪扱いになってるであろう、かつてのブラックなお仕事とか清算するでござるよ(既に解雇通知が郵送されてることは知らない)。