;
学園生の日常 その2


ストーリー Story

 今日も今日とて、学園では学生たちの日常が続いている。

「最近、課題増えたなぁ」
 同期の呟きに、友人の学園生が返す。
「なんか、ズェスカの復興事業で人手が要るみたいで、手伝い募集してるみたいだぞ」
「あれ? それって、大陸横断鉄道事業のヤツじゃなかったっけ?」
「そっちも人手募集中らしいぜ。なんか、ボソク島とズェスカ結ぶ旅行ルートを開拓して盛り上げるとかなんとか」
「いいね。景気の好い話じゃん」
「だな。とはいえ、それだけじゃねぇけどよ」
 げんなりした声を上げる友人に、学園生は尋ねた。
「なんかあったのか?」
「んー、何か色々あるみたいでさ。デカい事業が続いてんのは良いけど、それに食い込もうとしてる胡散臭い業者とかの話聞くしさ。それに、魔族も事業に関わらせられないかって動きもあるみたいだし」
「あー、そっちか……まだまだ、わだかまりあるだろうしなぁ……でもそっちは、まだ良いんじゃねぇか。他の奴がなぁ……」
「なんかあったか?」
「んー、なんか異世界出身の奴等が怪しい秘密結社作ってるみたいでさー。それの調査とかの課題受けてんだよな~」
「あぁ……異界同盟だっけ?」
「そうそう。たまったもんじゃねぇよな。それで異世界の研究とか禁止されたらどうしてくれるんだってんだよ」
「ん? あ、そういえばお前、セントレアの研究職目指してるんだっけ?」
「そうだよ。こっちが日々伝手を積み上げてるってのに、関係ない所でおじゃんにされてたまるかってんだ」
「そういうのも含めて、課題こなしていくしかねぇよな~」
「だな」

 などという話が、学園では見られます。
 他にも学園生ごとに、それぞれの目的に沿った日常を過ごしています。
 中には、邪悪な何かと戦う者もいるでしょう。
 あるいは、力なき人々に手を差し伸べるため奮闘する者もいる筈です。
 ひょっとすると、過去の因縁にまつわる何かの決着をつけるため動いている人もいるでしょう。
 そうした重苦しいことだけでなく、明るい日常を送る者もいるのです。
 日常と一口に言っても、人によって千差万別。
 その日常を守るために、学園は力を貸してくれるでしょう。
 
 そんな中で、アナタ達は、どう未来を進みますか?
 自由に、好きなように、アナタ達の物語を進めてみてください。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 6日 出発日 2022-09-01

難易度 普通 報酬 なし 完成予定 2022-09-11

登場人物 2/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。

解説 Explan

●概要

全校集会後の、ゆうがく世界での、アフターストーリーです。

何をしても自由です。

魔王後の世界を、のんびりと満喫するも良し。
自身のまつわる因縁に関わるも良し。
この世界だけでなく、他の世界と関わっても良し。

好きに動いてみて下さい。

●舞台

学園でも、他の地域でも、または異世界でも可能です。

公式に出てきた異世界だけでなく、PCの自由設定に出て来る異世界と関連づけてもオッケーです。

また、ゆうがく世界でも、PCの故郷とか、自由に出せます。

これまでの結果を破綻させない範囲であれば、自由に出せます。

●NPC

PCに関連するNPCでも、自由に出せます。

自由にどうぞ。

●内容

自由です。

PCの設定に関する話を進めてみるのも良いですし、これまでのエピソードから話を進めても構いません。

●その他

今回の自由度の高いアフターストーリーエピソードは、連作として定期的に出して行く予定です。

なので、複数回に分けて進めるとかも出来ます。

方向性としては、ノベル形式のエピソード版、みたいな感じです。

個別にPCの話を進めるでも良いですし、複数のPCでひとつの話を進めるような内容でも構いません。

これらを進めていく中で、ネタ的に拾って、個別エピソードとして出す可能性があります。

その辺も自由度の高い物になっています。

以上です。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、アフターストーリーエピソード第八弾、になっています。

今まで他のエピソードで進めたお話の続きでも良いですし、全く関係ない個別の話でも大丈夫です。

基本的には、連作のノベルにご参加いただくような内容になっています。

自由度が高いですので、それぞれ個別にPCの物語を進めていただいても構いません。

PC達の物語に区切りをつけるような進め方でも良いですし、他にも、何か思いついたことがあればプランにお書きください。

それに沿って進行し、描写されます。

今後もちょこちょこ出して行く予定ですので、今回一回で終わりにしても良いですし、続けて話を進めてみたりも可能です。

書いていただいたプランによっては、関連エピソードが出て来る可能性もあります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。


個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:冒険者ファルコン
パド・ゲン・シアを元の世界へ帰す

他の同盟メンバーにばれないように、学園に捕まり、投獄されたことにして
一時的に保護施設に身を寄せてもらい、しばらく様子を見て信用できるか調査
信頼できそうならセントリアに移送して、門を開いてもらい元の世界へ帰ってもらう
信頼できない場合は更生施設送り

学園が隠している異世界技術のアイテム(エスバイロなど)を奪取するという
ダミーの作戦を用意し、ユリ先生やコルネ先生が待ち伏せ&逮捕という筋書きで
潜入した同盟メンバーを保護してもらう

親密になった3人にはあらかじめ計画の全容を知らせておくが
他のメンバーはまだ信用できるかわからないので
保護施設で様子を見てから適時送還や留置を判断

アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:ココの大好きな人
ココを連れてメフィストに会うため学内を探したり、適当に名前を呼んでみる。
出会えたら、ココと会話が出来る魔法を教えて欲しいとお願いする。
教わったらメフィストに頭を下げて感謝し、自室に戻って魔法を使う。
「ココ、喋れる?こんにちは?」
ココが答えたら、ココの体を撫でながら少しの間、何度もココの名前を呼ぶ。
まず何を話すか急いで考え、「一緒にいてくれて、ありがとう」と言う。
普段のご飯の味は口に合っているか、苦手なものある?好きなものは?人が食べるものもココは食べれる?
など尋ねてからズェスカの話をする。
凄い様子だった、精霊王の力も凄かったね。
ココも精霊王になれるかもしれないんだって。なりたい?と尋ねる。

リザルト Result

 それぞれの日常を、学園生達は過ごしていた。

●保護プログラムの始まり
「ファルコ~、ゲームしようぜー」
 観光地であるアルチェの、とある建物の一室。
 そこで【ゲン】が、気安い口調で【エリカ・エルオンタリエ】に呼び掛けた。
「いいけど、それ、どこで手に入れたんだ?」
 潜入スパイとして【ファルコン】の偽名を名乗っているエリカは、男装をしているので口調を変えて応えた。
「こっちの世界の物にしては、随分と珍しいな」
「いひひっ、ガメて来た」
 トレーディングカードの類に見えるそれをエリカに配りながらゲンは応える。
「学園が異世界の技術応用して作ったのを異界同盟が手に入れて、それをちょろまかして来た」
 これに同室している少女、【シア】が呆れたように言った。
「何してんの? バレたら大変じゃない」
「んだよ、これぐらい役得だって」
 そう言ってゲンは、可愛らしい猫のイラストが描かれたカードをシアに渡す。
「シアにもやるから、黙っとけよ」
「……他にも可愛いのある?」
 興味を持ったシアも傍に寄り――
「これ、可愛くない?」
 エリカに動物系カードを見せる。
「えー、んなもんよりこっちの方がかっこよくて良いだろ」
「可愛い方が良いじゃない。ねぇ? ファルコ」
「……あぁ、そうだな」
 心苦しさを感じながらエリカは応えた。

 エリカがスパイとして潜入してから、幾らか過ぎている。
 最初は窺うようにエリカと話していたゲンやシアだが、今では気安く声を掛けてくれるほど親しくなっていた。
 どうやら2人とも、エリカの元居た世界と似たような異世界出身らしく、話が合ったのだ。
 だからこそ余計に、エリカは現状をどうにかしたいと思っていた。

(セントリアとの交渉も巧くいってるから、きっとどうにか出来るはず)
 エリカは、ゲン達のような転移者を元の世界に戻せないかと考え、学園を通してセントリアと交渉していた。
 幸い、ある程度の調整は必要だが、実現性は高いらしいので可能性はある。
(……色々と苦労を掛けちゃってるけど、これから先のことを考えると、どうにかしないといけないことだし)
 転移者の送還以外にも、エリカには懸念があった。
 だが、そちらは対処可能らしい。
(魔導蒸気機関車……聞いた通りなら、環境への負荷が少なくて済むみたいね)
 エリカは、魔法や精霊の力のような、この世界に適したエネルギーを使えないかと提案したのだが、異世界人の【メフィスト】を通して得た知識も組み込んで巧く出来るらしい。
(これなら【饕餮】さんが介入するような事態にはならないはず。あとは――)
 ゲンやシアを助けたい。
 エリカが思っている時だった。
「仕事だ」
 部屋に体格の良い男が入って来る。
 エリカ達のチームリーダーである【バド】だ。
「ファルコが手に入れた情報が上の琴線に触れたらしい」
 それは異界同盟にエリカが流した誤情報だ。
 学園に協力して貰い、バド達を保護するために立ち上げた計画が、順調に進んでいることを示している。
「エスバイロとかいう飛行機械の現物を奪取しろだとさ」
 計画が記された書類をエリカ達に差出し、バドは続ける。
「アルマレス山の近くに、修理不能になったエスバイロを保管しているらしい。それを手に入れろって話だ」
 詳細に話を詰め、それが終わるとエリカは部屋を出ていこうとする。
「あ、また今日も帰んのかよ。ゲーム一回ぐらいして行けよ~」
 これにエリカは苦笑して――
「分かった。少しだけ」
 シアも混ざり、3人でカードゲームを楽しむ。
 それをバドは、酒を飲みながら目を細めて見ていた。

 何戦か遊んだあと――

「よっしゃ、勝ちー」
「負けちゃった」
 ゲンもシアも楽しそうな笑顔のままゲームを終える。
 それを見ていたバドが言った。
「もう遅くなってきたから、部屋に戻って寝ろ」
「へいへい。んじゃまたな、ファルコ」
「またね」
 ゲンとシアが部屋を出て、エリカも出ようとすると、バドが言った。
「ファルコ。お前が手に入れた情報だが、俺が手に入れたってことにして上には報告しといた」
「……なんで」
「下手に有能だと上に思われたら抜け出せなくなるからだ。お前、抜けたいんだろ? ゲンやシアをつれて」
「……バドは――」
「俺は無理だ。上と連絡が取れる時点で、抜けようとしたら殺される」
(……どうしよう……計画のこと、話しておいた方が良い?)
 エリカは、バドも含めた3人を保護する計画を学園と立てている。
 エスバイロの奪取は、その為の布石だ。
 奪取に訪れた所に、【コルネ・ワルフルド】や【ユリ・ネオネ】を始めとした教員のチームで捕まえ保護する手筈を整えていた。 
(……ひとまずは、学園と相談してからね)
 3人だけでなく、その後も継続して異界同盟の人員を保護するつもりのエリカは、焦らず進めることにした。
「……分かった。ゲンとシアのことは任せて。バドは――」
「俺は巧く立ち回るさ」
 グラスを掲げ、バドは部屋を出ていくエリカを見送る。

 その後、外をしばらく歩いた時だった。

「こんばんは、ファルコンさん。私は異界同盟の人間です」
 粘つくような視線をした男に声を掛けられた。
「貴方のチームリーダー、学園と通じているかもしれません」
「どういうことだ?」
 話を聞くと、バドが学園と通じて情報を得ていると考えているようだ。
「どうにも都合よく情報が集まり過ぎでしたのでね。今回貴方達が奪取に向かうエスバイロのある場所ですが、そこに学園の人間が集まっている形跡がある。こちらを捕えるつもりでしょう。だから――」
 亀裂のような壊れた笑みを浮かべ男は言った。
「罠に掛けます。当日、我々も向かいます。貴方はチームリーダーを始末してください。そうすれば、上との連絡員に昇格させます」
「……他の2人は?」
「邪魔なら殺しておいて下さい。学園に捕まって無駄に喋られるより好いでしょう。期待してますよ」
「……分かった」

 そして当日。
 現場は大混戦になった。

「なんなんだよ!」
 学園と異界同盟の戦闘に、ゲンは顔を引きつらせる。
「くそっ、逃げるぞ! シア! ファルコ! オッサンも早く!」
 焦るゲンに、エリカが言った。
「こっちだ。前にこの辺りに来たことがある。こちらから逃げられる」
「やるじゃん! シア早く行こうぜ!」
「うん」
 ゲンとシアがエリカの後についていき、険しい顔でバドが後に続く。
 そこは戦闘から外れた山道。
 迂回の出来ない一本道だった。
 エリカ達は走り続け、その先には――
「……なんだよ、これ」
 着いた先は崖だった。
 落ちれば助からないほど下に、川が流れている。
「どうすんだよこれ」
「大丈夫」
 エリカは、首から下げた小瓶を取り出しながら言った。そして――

「3人はどうしました?」
 異界同盟の男が崖の前で立ちつくすエリカに言った。
「ちゃんと始末しましたか?」
「……死んだ筈だ。止めは刺せなかったが、3人とも崖から落ちた。気になるなら探してくれ」
「ふむ」
 確かめるように崖下を覗き込む男。
 その上空には、隼が3羽。
 まるで、『初めて空を飛んだ』かのように、たどたどしく飛んでいた。
「お疲れ様でした」
 崖下を覗きこんでいた男はエリカに言った。
「ここから落ちたなら助からないでしょう。約束通り、上との連絡員に推薦しておきます」
 離れる男にエリカは呼び掛ける。
「襲撃してきた学園はどうなった?」
「こちらの人員が何人か捕縛されましたが、別に構いません。今回は、学園の関係者を殺せれば好し。無理でも、組織の中で疑わしい者の処分をすることが目的でしたから」
「……随分と、不穏分子の処分に手間をかけるんだな」
「組織に余計な不和を作りたくないですからね。貴方も気を付けておいて下さい」
 そう言って離れる。
 姿が見えなくなると、エリカはひと息つく。
 そして空を見上げると、ズェスカの変身温泉の水で姿を隼に変えたゲン達が、エリカから聞いた通りの場所に向かって飛んでいるのが見えた。
(これで良いわ。あとは学園が保護してくれる)
 すぐにでも顔を見に行きたい所だが、用心深く時間が経ってからに決めていた。
(疑われないよう、慎重に進めないと)
 より多くを助け出し、異界同盟を潰すため、エリカは巧く立ち回っていくことにした。

 これにより、今まで以上に異界同盟の情報が学園側に流れることになる。
 その上で、潜入を行っている他の学園生の誤情報を、バレないよう慎重に流すこともしていた。
 さらに、保護したバド達からの話も参考にし、保護するための準備も整う。
 その中で、異界同盟に気付かれないよう、慎重に保護対象者を学園に送るエリカだった。
 
●ココとお話
 その日は、気持ちの好い晴れた日だった。

「見つからないね」
「わふ」
 学園を、【アンリ・ミラーヴ】は魔法犬【ココ】と一緒に歩いていた。
 いつものように、散歩をしているようにも見えるが、今日は人探しをするため歩いている。
(メフィストさん、どこにいるんだろう?)
 アンリが探しているのは、異世界人のメフィスト。
 何故かと言えば、ココとお話できるよう、魔法をかけて貰うつもりなのだ。
 居そうな所を歩き回り――
「見つからないね」
「わふ」
 なかなか出会えない。
「忙しいのかな?」
「わふ?」
 アンリが小首をかしげるのに合わせ、ココも同じように小首を傾げる。
 その後も歩いて回り、どうしても見つからないので――
「メフィストさん、いませんか?」
「ひゃん」
 アンリとココが呼ぶと――
「呼びましたかー?」
 にょいっとメフィストが現れた。
「何か御用ですかー?」
「はい」
 アンリは、突如現れたメフィストに、魔法をかけて貰えるように頼む。
「前に話して貰った、動物と話が出来る魔法を教えて欲しいんです」
「おー、いいですよー」
 すぐに掛けようとするメフィストに、アンリは言った。
「少し、待って下さい」
「どうしましたかー?」
「部屋に戻ってから掛けようと思うんです」
「おー、なるほどー。下手に喋れるところ見られてー、何か良くないことが起ると拙いですねー。分かりましたー」
 そう言うとメフィストは、ひょいっと何かしらアンリに魔法を掛ける。
「発動する直前にまでしときましたー。あとは貴方が好きな時にー、その子と話したいと思えば魔法が発動されまーす」
「それって、他の人にも、ココが喋ってるのが聞こえるんですか?」
「いえー、他の人は犬の鳴き声のままでーす。今の所はー、その方が良いでしょー。ではではー」
 簡単な説明をして、すぅっと消えるメフィスト。
「ありがとうございます」
「わふ」
 メフィストに頭を下げて礼を言うアンリと、合せるように鳴くココ。
「それじゃ、お家に帰ろうか」
「ひゃん」
 一緒に、アンリの部屋に向かう。
 しばし歩いて到着。
 部屋に入ると、ココのために座布団を出してあげ、そこに座らせてあげる。そして――
(ココは、どんな風に喋るんだろう)
 ドキドキしながら、魔法を掛ける。
(ココと、お喋りさせて下さい)
 静かに念じ、じっと見上げるココに声を掛ける。
「ココ、喋れる? こんにちは?」
 するとココは、アンリを真似するように幼い声を上げた。
「こんにちは?」
 小さな子供のような声だった。
 舌足らずというほどではないが、幼く愛らしい。
「すごい。本当に、ココが喋ってる」
 アンリの言葉にココは、ぴんっと耳を立て興奮したように言った。
「アンリ? アンリ!? わかる? ボクのことば、わかるの!?」
「うん、分かるよ」
 するとココは、ぶんぶんと尻尾を振りながら嬉しそうな声を上げる。
「すごい! すごいね! すごーい!」
 千切れるんじゃないかというぐらい尻尾を振り、ココはアンリを見詰めながら言った。
「アンリ、アンリ、あのね、あのね」
「うん、どうしたの?」
「ありがとー!」
 喜びを溢れさせながら、ココは言った。
「なまえ、なまえうれしい! うれしかったの! ココってなまえ、うれしい!」
 胸に抱いていた想いを告げるように、ココはアンリとお話する。
「ずっと、ずっとね、ありがとーっていいたかったの! ありがとー! アンリ!」
 嬉しそうに言いながら、お喋りができて興奮しすぎたのか、居ても立ってもいられないというように、ぐるぐる座布団の上を駆けまわるココ。
 部屋の中でなければ、アンリの回りを駆けまわっていただろう。
 そんなココを落ち着かせるように――
「ココ」
 アンリに呼び掛けられ、ピタッと動きが止まったココを、優しく撫でてあげる。
「ありがとう。喜んでくれたなら、俺も嬉しい。あのね、ココ――」
 呼び掛けられ見上げて来るココに、アンリは言った。
「一緒にいてくれて、ありがとう」
 アンリの言葉に、ココは嬉しそうに尻尾を振り続ける。
「ボクも、ボクもうれしい。アンリといっしょ、うれしい」
 親愛を示すように、身体を摺り寄せて来るココ。
 そんなココを、アンリは嬉しくて目を大きく見開いて、はしゃぎながら撫でてあげた。
 しばらく撫でてあげ、ココが落ち着いて来たら、アンリは尋ねていった。
「ココ」
「なに?」
「ココの好きな物って、なに?」
「アンリー!」
 ぶんぶん尻尾を振りながら嬉しそうに応えるココ。
「すきー! だいすきー!」
 ご飯の好きな物を訊いていたつもりのアンリは、ココを抱きしめるように撫でたあと、再び尋ねていく。
「ココの好きなご飯のこと、教えて欲しいんだ。いつも食べてるご飯、口に合ってる?」
「うん! おいしーよ!」
「そっか。じゃあ、好きな物は? 人が食べるものもココは食べれる?」
「おいもー! アンリのおかあさんがつくってくれたごはん、みんなすきー! アンリがたべれるものなら、ボクもたべるー!」
「じゃ、苦手な物は?」
「えーとね、からいのとか、にがいの」
 しゅんっ、とするように尻尾を丸めながら応えるココ。

 そしてお話を続けていく。

「どんな遊びが好き?」
「はしるのすきー!」
「なら、散歩も好き?」
「うん! アンリとさんぽするのだいすきー!」
「好かった。でも、疲れたりしない?」
「ううん、しない。たのしいもん」
「そっか。それじゃ、玩具はどうかな? 欲しい物、ある?」
「ボールがいい。アンリといっしょにあそべるもん」
「そうだね。また遊ぼう。でも、休むのも大事だから。いま寝てる所は、ベッドはあるの?」
「ないけど、おうちでねてるよ。おうち、つくってくれたの」
「そうなんだ。でもベッドとかあると、もっと良いかな? いま座ってる座布団は、どう?」
「これすきー! アンリのにおいがするし、やわらかくってきもちいいの」
「なら、あとで寝床用のを用意してあげるね。あ、そうだ」
 ココのシルクハットとネクタイを見て、アンリは言った。
「素敵なシルクハットと蝶ネクタイは、もし汚れたら洗っていいの?」
「あらってくれるの!」
「うん」
「ありがとー! あのねあのね、これ、おとうさんがつくってくれたのー」
 それはココを作った魔法使いのことだろう。
 誇らしそうにココは言った。
「たからものなんだー」
「そっか。なら洗う時は、気を付けないといけないね」
 お喋りを続け、アンリは尋ねる。
「ココは、行きたい所はある?」
「アンリといっしょのところー」
「そうだね、一緒に行こう。どこが良い?」
「う~んと、ね……あー、あそこがいい!」
 それは少し前に訪れたズェスカのことだった。
「ひとがいっぱいいたし、それにそれに、おじちゃんやおばちゃんたちがすごかったのー!」
 思い出し興奮しているココの話を聞くと、それは精霊王達のことだった。
「おじちゃんもおばちゃんも、すごかったの!」
「うん。凄かったよね。凄い様子だった、精霊王の力も凄かったね」
 アンリは、気持ちを落ち着かせるような間を空けて、ココに一番の問い掛けをした。
「……ココも精霊王になれるかもしれないんだって。なりたい?」
 するとココは、アンリを見詰め言った。
「アンリは、なったほうがうれしい? それとも、いや?」
「気にしなくて良いんだよ、ココ」
 ココを撫でながら、アンリは言った。
「ココの気持ちが知りたいんだ。教えて?」
 これにココは、精一杯考えてから応えを口にした。
「せいれいおうになったら、ずっとずっと、みんなのことおぼえてられる?」
「どうして、そう思ったの?」
「あのね、ボク、おとうさんのこと、ずっとおぼえてたいの」
 じっとアンリを見上げ、切なる願いを口にする。
「おとうさんのこと、ぼくがわすれちゃったら、さびしくてかなしい。そんなのやだ。おとうさんだけじゃないよ。みんなのこと、ずっとずっとおぼえていたい。アンリのことも、だいすきだって、ずっとずっとおぼえていたい。ずっとずっとおぼえていられるなら、せいれいおうに、なってみたい……」
 将来の夢を親に語る子供のように、否定されるのではないかという不安を抱きながら、ココは言った。
 それにアンリは――
「それがココの、願いなんだね」
 ココを抱き上げ抱きしめる。
「……うん」
 抱きしめられる心地好さに、安堵するように応えるココ。
 それに応えるように、優しく抱きしめてあげるアンリだった。



課題評価
課題経験:0
課題報酬:0
学園生の日常 その2
執筆:春夏秋冬 GM


《学園生の日常 その2》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2022-08-26 05:16:53
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。
今は、さすらいの冒険者ファルコンと名乗らせてもらってるわ。

わたしは今、異界同盟の調査の件と温泉町だったズェスカの再開発と
二つの件を抱えているから、その片方か両方に関わるつもりよ。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 2) 2022-08-26 17:45:23
考えた結果、今回は異界同盟の方に集中することにしたわ。
構成員も必ずしも悪事を行いたい人ではないようだし、
異世界出身者はセントレア経由で元の世界に戻れるようにできないか
働きかけてみるわね

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 3) 2022-08-30 23:26:02
教祖・聖職コース、アンリ・ミラーヴ。よろしく(尻尾パタパタ)
ココと話しをするつもり。