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異世界留学


ストーリー Story

 世界は、無数に存在する。
 それは異世界転移門があるセントリアが証明していた。
 なにより、他の世界から訪れ、こちらの世界の『人間種』に変化した者が学園にも多数在学していることからも明らかだ。
 その内の1人、高度な科学技術により『星の海』を渡ることさえ出来る世界から訪れた【レネンヴィオラ・ウェルス】は、今後のことを話し合っていた。

「メフィちゃんの申し出~受けることになったわ~」
「おーう。ありがたいですねー」
 レネンヴィオラに礼を言うのは、【メフィスト】。
 学園がある世界とは別の世界の人間だが、彼はレネンヴィオラ達に提案をしていた。
 それは全界連盟(ワールドオーダー)と呼ばれる、異世界間の共存組織に入らないかというものだった。
「助かりますよー。星の海を渡れるほどの科学力を持った世界はー、中々お目に掛かれませんからねー」
 メフィストが言うには、その段階に行くまでに、大抵の文明は滅ぶか停滞するとのこと。
「それでー、そちらの本部はどこに置くつもりですかー」
「いま~避難民を受け入れている惑星に~置こうと思うの~」
 魔王との決戦時、レネンヴィオラの世界は惑星1つ丸ごと避難地にした上で引き渡すという離れ業をやってのけた。
「元々は~こっちの生物全部~避難させるつもりだった場所だから~広さも~居住性も十分だし~」
 それだけ好条件の惑星を用意していたのは、いまレネンヴィオラが言った通り、場合によっては、こちらの世界の生き物を全て移住させるつもりだったからだ。
 なぜならレネンヴィオラが所属している組織、CGFは、こちらの世界の住人の力では魔王を倒せないと判断していたのだ。
 高度な科学を前提とした分析により、それは正しい見解ではあったが、幾つもの条件が重なり、魔王は無力化された。
 結果、CGFは評価を改め、むしろ学園側に力を借りれないかと思っていた。なぜなら――
「広さは十分だけど~ちょっと~大き過ぎるかもしれないの~」
 何しろ惑星ひとつ分である。
 それに比べ避難民は少なく、とてもではないが星を維持することができない。
「他から人を呼ぶことは出来ないのですかー?」
「ちょうど~そういう申し出があったんだけど~それはそれで問題があるの~」
 メフィストの問い掛けに、レネンヴィオラは説明した。
「新しく入植してくれる人達の方が~すごく人数が多いの~」
 余りにも数に差があるせいで、肩身の狭い思いをしてしまうかもしれないとのこと。そもそも――
「避難民で~あちらに残る人は~こちらの世界で~肩身の狭い思いを~してきた人達だと思うの~。詳しく話せる人に~説明して貰っても良い~?」
「お願いしまーす」
「分かったわ~」
 レネンヴィオラは応えると、空間投影型ディスプレイに1人の人物を映し出す。
『始めまして。私の名は【ダゴン】。異界の方、どうか見知りおいていただきたい』
 それは頭髪がうねうね動く触手で、牙が百本はありカチカチと音を鳴らした、目が血のように赤いダゴ星人だ。
 見た目は怖いが、理知的な声で物腰は柔らかい。
「ダゴちゃんは~参謀副長なの~」
「おーう、お偉いさんですねー。どうもでーす」
 微妙にごまを掏ろうとするメフィスト。
 そんなメフィストに、ダゴンは説明した。
『我々が最も懸念しているのは、最終的に戦争に発展することです』
 ダゴンは恐れを口にする。
『避難民の健康診断で、そちらの世界の人は、こちらの世界では大幅にパワーアップすることが確認されています。その拡大した力で大きな戦争に発展したら、ただでは済みません』
「おーう、それはー……新たに入植する人達がー、一方的にやられちゃうかもってことですかー?」
『いえ、それは無いと予想しています。なぜなら入植を予定している人達は、遠い昔に、そちらの世界からこちらの世界に訪れた者達の子孫ではないかと推測されるからです』
 遺伝子レベルで近しい種族である事は既に確認しているという。
『1人1人が、稀なレベルの力を持っています。幸い、問題行動をとるような人達ではないので大事にはなっていませんが、そちらの世界の住人と接触することでどういう変化が起きるか、予想も出来ません』
「おーう、それはー……こちらの世界のようにー、世界からの制約も何も無いってことですかー?」
『我々と、そちらの世界。そして貴方の世界の大きな違いは、恐らくはそれだと思います』
 ダゴンは、思案するように無数の牙をカチカチ鳴らしたあと続ける。
『そちらの世界の上位者は、うまく力の制限をかけているようだが、こちらの上位者は野放図なようです。でなければ、宇宙怪獣だの、L01i星人だのは、生まれぬ筈ですから』
「おーう、それは恐らくー……世界を創った者がいなくなってるかー、自然発生タイプの世界ってことですねー」
『どういうことなのだろうか?』
 ダゴンの問い掛けにメフィストは応える。
「世界と一口に言ってもー、色々あるのですよー。世界の外側に単独で存在できる『超越者』が創造神として創った世界もあればー、世界そのものが外界から創造者となるモノを喚び寄せる世界もありまーす」
 学園のある世界は後者らしく、無限の魔力が存在する世界が『人』を喚び寄せ、世界のバックアップにより創造者とした世界とのこと。
「自然発生型の世界の場合はー、恣意的な制約が無い『自然な』世界になりますしー、世界を創った者がいなくなってればー、制約を課す者はいませーん。もっともー、なにか意図があって掛けてない可能性もありますがー」
『ふむ。興味深い話だが……と、申し訳ない。話が逸れそうなので元に戻させて貰うが、我々は今までになく稀有な力を持つ同胞の発生を恐れていると同時に、期待もしています』
「どういうことですかー?」
「一言で言うと~人手が足らないの~」
 レネンヴィオラは言った。
「第一級侵略型生命体のせいで~CGFの隊員が~たくさん殉職しちゃったの~」
 憂いを込めた声を一瞬だけさせ、気持ちを切り替えるようにレネンヴィオラは続ける。
「だから~学園生の子達に~一時留学して~もらえないかと思って~。そうすれば~抑止力の証明にもなるし~移民問題も和らぐわ~」
「なるほどー。それは学園生ならだれでも良いのですかー?」
「ある程度は力がないと~危ないわ~。学園の評価基準で言うと~レベル45以上ね~」
「おーう、それはどうにかできますよー」
『できるのかね!?』
 ダゴンにメフィストは応える。
「こちらの世界にはー、魔王を封じた勇者の魂を核にした霊玉がありまーす。その力を使えばー、一時的にレベルを上げられまーす。試してみますかー?」
「いいかも~」

 というわけで、一時的にレベルを上げ、レネンヴィオラの故郷である世界で任務を手伝う課題が出されることとなりました。
 この課題、アナタ達は、どう動きますか?


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 7日 出発日 2022-11-06

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2022-11-16

登場人物 2/8 Characters
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。
《光と駆ける天狐》シオン・ミカグラ
 ルネサンス Lv14 / 教祖・聖職 Rank 1
「先輩方、ご指導よろしくお願いしますっ」 真面目で素直な印象の少女。 フェネックのルネサンスで、耳が特徴的。 学園生の中では非常に珍しく、得意武器は銃。 知らない事があれば彼女に訊くのが早いというくらい、取り扱いと知識に長けている。 扱いを知らない生徒も多い中で、その力を正しく使わなくてはならないことを、彼女は誰よりも理解している。 シオン自身の過去に基因しているが、詳細は学園長や一部の教員しか知らないことである。 趣味と特技は料理。 なのだが、実は食べるほうが好きで、かなりの大食い。 普段は常識的な量(それでも大盛り)で済ませているが、際限なく食べられる状況になれば、皿の塔が積み上がる。 他の学園生は、基本的に『○○先輩』など、先輩呼び。 勇者の先輩として、尊敬しているらしい。 同期生に対しては基本『さん』付け。  

解説 Explan

●目的

宇宙文明レベルの異世界で、任務を手伝う。

●方法

異世界転移門から転移して訪れることになります。

●舞台となる異世界

宇宙航行が普通に出来る超科学文明世界。

宇宙戦艦や宇宙怪獣、星々を股に掛ける犯罪組織も存在します。

科学だけでなく魔法も存在します。

科学が誰でも同じ結果を出すのに対し、魔法は使い手によって結果が左右されるため、あまり普及していません。

反面、使い手次第で科学を超える力を発揮するため、各々が高い魔法の素養を示す学園生に期待をよせています。

●任務

以下の選択肢から選んでください。

1 避難民と入植民の間を取り持つ

避難民は、ゆうがく世界の人間種や魔族。

入植民は、ゆうがく世界の住人を祖先に持った種族。

近世レベルと宇宙文明レベルの接触なので、色々とズレがあります。

話し合いの仲介者になったり、争いが起りそうな場合は止めに入る任務になります。

2 宇宙怪獣と戦う

どういった環境で戦うかは自由。

惑星上でも宇宙空間でも可能。

武器などは、宇宙文明に出てきそうな物なら自由に出せます。

3 宇宙犯罪組織の悪事に対処する

複数の惑星で蔓延るレベルの犯罪組織と戦ったり捕縛したり潜入したりして下さい。

その辺りは自由にお書きください。

それを元にアドリブ入れつつ描写します。

●レベル

今回のエピソードでは、霊玉の力により一時的にレベル45以上に上がります。

ですので、45までのスキルは所有していることになり、プランで書いていただければ使用している場面が描写されます。

●協力組織

CGF(コズミック・ガーディアン・フォース)

舞台となる異世界の、宇宙規模の治安組織。

移動や武器供与など、様々な協力をしてくれます。

ゆうがく世界と今後も協力関係を結び、世界間の相互協力組織である全界同盟(ワールドオーダー)の一員となることが決定している。

そのため、今後の事も考え、PC達には最大限の協力をしてくれます。

以上です。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、リクエストでいただきました内容を元に作らせていただいています。

今回、舞台となる異世界の説明協力者として、PCレネンヴィオラ・ウェルスさんにプロローグで登場いただきました。

今回作った内容ですと、設定上御参加いただくのが難しくなってしまいました(元の世界に戻ると、ゆうがく世界の住人から元の種族に戻る)ので、御参加いただけないのですが、登場協力ありがとうございました。

基本的に今回は、高レベル帯(L45)のスキルを好きに使っていただきたい、あるいは高レベル帯での活躍を楽しんでいただきたい、という趣旨の内容になっています。

ですので皆さま、お気軽にご参加いただければ幸いです。


個人成績表 Report
アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
パワードスーツを装備して宇宙怪獣と戦う。
宇宙怪獣のせいでCGF隊員さんが大勢亡くなったと聞いた。
これ以上犠牲者を出さないため、霊玉で増強された力を使いたい。
使う武器を選んでると、目に付いたパワードスーツが気に入った。
使い方の指導と訓練を早く済ませて、CGFのジェット機で怪獣退治に出動する。
現場に到着したら、ジェットから投下の後、反重力装置で飛行して怪獣に接近。
空中で巨大怪獣の周りを飛びながら、ビームキャノン、ガトリングガン、ミサイルポッドで攻撃。
それを倒して着陸したあと、小型の怪獣たちとビーム斧を両手に持って戦闘。
途中で【目覚めし獣心】を使って怪獣をせん滅する。

シオン・ミカグラ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
わあ〜〜〜っ!これが宇宙ですか!?
船がなにもないところを飛んでます!

3にて、犯罪組織の摘発のお手伝いをします

借りれるなら、この世界の銃も試してみましょう
複数の敵にはトライショット。無力化して拘束する時は聖鎖陣を使います
身体がとっても軽いです!思う以上に力が湧いてきます!

きゃっ!?
……え?な、なんともないです……?
種族特性の先祖から授かりし力で状態異常まで跳ねのけるようです

私、本当に強くなっているんですね……なら遠慮なく!
ドド感覚でドドーガを使ってみたり、祖流覚醒で身体能力を大幅に上げて魔牙を使ってみます


仕事が全部終わったら、帰る前にこの世界のグルメも堪能します
これが、未来の食べ物……!

リザルト Result

 異世界への留学を名目とした協力課題。
 参加した学園生は、それぞれの受け入れ先で話を聞いていた。

●怪獣を討ち倒せ!
「よろしく、お願いします」
 受け入れ先に丁寧にあいさつしたのは、【アンリ・ミラーヴ】。
「宇宙怪獣のせいで、CGF隊員さんが、大勢亡くなったと、聞きました。これ以上、犠牲者を出さないためにも、力になりたい」
 これに応えたのは、四足型無脊椎人である【タウ・アルタ】だった。
「助かりますわ!」
 四本の腕を動かしながらタウは言った。
「うちの同僚もぎょーさん殺られてもうて、仇うっちゃりたい思っとったんですわ。こちらこそ、よろしゅうお願いします」
 タコのような軟体動物から進化したらしいタウは、訛りの篭もった声で喋る。
「あ、こっちの言葉分かりまっか?」
「大丈夫です。ちゃんと分かります」
 今アンリは、タウも含め皆の喋ることが翻訳されて聞こえている。
 それは針の先程のチップを、耳元に張り付けただけで出来たことだ。
 これぐらいの技術は、こちらの世界では普通らしい。
「それじゃ現場に向かう前に、兵装の用意するから、ついて来てくれまっか?」
 タウに案内され、アンリは後をついて行く。
 通路を進んでいくと、途中途中で、様々な種族に出会う。
 アンリのような人型もいれば、ゴーレムのような種族や、水槽の中に浮かんでふわふわ進んでいる魚のような種族もいる。
「珍しいでっか?」
 興味深げに視線を移すアンリに、タウは訊いた。
「そっちの世界やと、直立二足歩行型の知性体が多いんでっしゃろ?」
「はい。でも、ドラゴニアやローレライみたいに、元々は違う姿の人もいるから、色々です」
「はーっ、そっちって、星ひとつ分に知性体が集まってるんでっしゃろ? それでそないバラエティやなんて、おもろいなぁ。一回調査に行ってみたいもんやね」
 生物学者でもあるらしいタウは、興味津々にアンリと話をしていき――
「――ととっ、ここやここや。すまへんな、話に夢中になってもうた」
 格納庫の前に辿り着く。
 そこはアンリが今乗っている宇宙船、イスプアーの兵装格納庫のひとつだ。
「近接戦で戦えるようなんがええんでっしゃろ?」
「お願いします。その方が、戦い慣れてるから」
「よっしゃ、それやったら――」
 タウがタッチパネルを操作すると、自動で兵装が運ばれてくる。
「これなんてどうでっしゃろ?」
 いくつか用意された兵装を見て回り――
「これが良いです」
 選んだのは、パワードスーツ型の兵装だった。
「鎧みたいに、纏って戦えそう」
「できまっせ」
 タウはパワードスーツをアンリ用に調整し装着させる。
「どんな感じでっか?」 
「快適です。重さを感じないぐらい」
 瞬時にアンリの全身を覆ったパワードスーツは、武骨な見た目に反して服を着るぐらいの感覚で体に合っている。
 リアルタイムで周囲の状況が内部ディスプレイに映し出されるので、視界も良好だ。
「武器は、何がありますか?」
「色々あるで。まず右肩に付いとんのがビームキャノン。左肩のがガトリングガンやね」
 タッチパネルでタウが操作すると、アンリの視界に兵装の説明が浮かぶ。
「あとは両腕と両足に小型ミサイルポッドが付いとるし、腰の左右にはビームエッジを発生させる片手斧が付いとるわ。ちょっと試しに使ってみて」
 言われてアンリが意識すると、それだけで左右の腰についたビームエッジの片手斧が両手に収まり展開。
 試しに展開したまま動いてみると――
(うん、すごく使い易い)
 使い慣れた武器のように手に馴染んだ。

 ひと通りの試しをしている間に現場に到着。

「それじゃ投下するけど、危なくなったらすぐ後退してな。回収するから」
「うん。その時は、お願いするね」
 怪獣のいる惑星上空をジェット機で移送されていたアンリは、管制官とやり取りをしたあとカウントダウン。
「射出まで五、四、三――」
 アンリは体勢を整え――
「――0、射出します」
 管制官の声を聴きながら、ジェット機のハッチからマスドライバーで射出される。
 急加速に伴う反動を受けるが、すぐにパワードスーツの機能で緩和。
 反重力で慣性制御しながら上空を飛行し――
(見つけた)
 怪獣の群れを発見する。
 それは数えきれない小型の群れと、その後方に控える巨体の軍勢。
 本獣である怪獣と、随伴獣である余獣だ。
 怪獣と呼称されているが、今回の物はどちらかというと見た目は昆虫に近い。
 卵が隕石のように惑星に撃ち込まれた後、怪獣が急成長。
 100m近い巨体になったあと余獣を生み出し、惑星進攻を開始したのだ。
「余獣の数が減ったら怪獣の進行速度は一時的に止まるさかい、出来る限り倒してくれるか?」
「分かった」
 アンリは応えると、急加速。
 一気に怪獣に近付くと、注意を引くようにガトリング発射。
 轟音と共に撃ち出された無数の弾丸を怪獣は受け――
「オオオォォォォ!」
 雄叫びを響かせ磁場を展開。
 全身から放電し磁場に収束すると、ビームを放つ。だが――
(反応が、鈍い?)
 攻撃の予兆を読んでいたアンリは危なげなく回避。
(そんなに、強くない?)
 聞いていた話より、怪獣に対して脅威を感じない。
(怪獣、様子見をしてる? それとも――)
 ビームキャノンで怪獣の目を集中して撃ちながら、アンリは状況を把握する。
(俺が、思ったより強くなってる?)
 こちらの世界に来る前、霊玉によりアンリは一時的に強化されている。
 それは実感していたが、今戦っていると、それ以上の物を感じていた。
(こっちの世界だと、元いた世界より強くなるって言ってたから、それが理由? なら――)
 アンリは怪獣の足止めではなく、殲滅に動く。
 全てのミサイルを一斉発射。
 全弾命中し爆発。
 爆煙で視界が隠され、怪獣が周囲を確認できない隙を突き、余獣の掃討に動く。
 衝撃波が発生する勢いで急加速。
 地面にぶつかる寸前に急停止し、余獣が迎撃に動くより早く戦場を疾走する。
 両手にはビームエッジを発生させた片手斧を持ち、余獣の群れを駆け抜けながら打ち振るう。
 切り飛ばされ吹っ飛ぶ余獣。
 あまりの勢いに、切り飛ばされた破片は宙に跳ね上がる。
 余獣は反撃しようとするが、アンリは寄せ付けない。
 周囲一帯を埋め尽くすほどの余獣の群れが、ザクザク削られていく。
 まさしく無双。そこに――
「気ぃつけぇ! 怪獣が攻撃してくるで!」
 タウから警告。
 怪獣が同士討ちお構いなしで、ビームを放つ。
 余獣は吹き飛び、大地は抉れるが、アンリは回避。
 回避しながら余獣を切り飛ばし戦闘続行するが、エネルギー切れで片手斧は使えなくなる。
 その間も怪獣からのビーム攻撃は続き――
「帰還しぃ! 回収するから――」
「大丈夫」
 切羽詰まったタウの言葉に、アンリは静かな声で応えた。
「これなら、いける」
 魔力を両手に収束し、強靭な爪を具現化。
 さらに血脈に流れる先祖の力を覚醒させ――
 怪獣の放ったビームを爪で切り裂いた。
(うん、強くなってる)
 正確に今の自身の力を確認し、さらに一段押し上げた。
 荒々しい気配がアンリの内から吹き上がる。
 ルネサンスが持つ、野生の獣心。
 それを目覚めさせた。
(倒す)
 理性を沈め、獣の本能を解放する。
 目の前には余獣の群れが壁となって立ちはだかり、アンリを消し飛ばそうと怪獣は磁場を展開しているが――無駄。
 腕の一振りで余獣の群れを吹っ飛ばし、残像が生じる勢いで加速。
 立ち塞がる余獣を爪で薙ぎ払い、怪獣の足元に到着。
 怪獣は恐慌をきたしたように自分の足元にビームを放つが、それをアンリは爪で切り飛ばす。
 余波で消し飛ぶ余獣。
 怪獣は堪らず後退しようとするが、アンリは許さない。
 爪を振い、怪獣の足の一本を切り飛ばす。
 体勢が崩れる怪獣に、さらにアンリは攻撃。
 巨体を足場に駆け上がりながら、爪を振い続ける。
 その度に怪獣の身体は切り飛ばされ、足掻くように暴れるが、それ以上の暴威でアンリは叩き潰す。
 放たれるビームを切り飛ばし、抉るように怪獣の身体を粉砕。
 小山のようだった怪獣の身体は削られていき――
(これで、終わり)
 怪獣の頭部を真っ二つに叩き割り、アンリは単身で討ち取った。
「嘘やろ」
 呆然とするようなタウの声に――
「まだ残ってるから、全部倒そう。残したら、危ない」
 アンリは疲労した声で応える。すると――
「よっしゃ分かった! それより退避せんでええんか!?」
 慌てつつ心配するようなタウの声が聞こえる。それにアンリは返した。
「疲れたけど、まだいけると思う」
「無理せんでえぇんやで!」
「ん、ありがとう。でも、頑張る」
 アンリの応えに――
「おおきにな! ありがとうやけど儂らもガンバるけぇ、儂らも頼りぃ!」
 タウ達が積極的に応援に来てくれる。
「ありがとう」
 アンリは助けを借りながら、余獣を皆と共に殲滅。
 怪獣に制圧されつつあった惑星をひとつ、解放するアンリだった。

●宇宙犯罪シンジケートを叩け
「わあ~~~っ! これが宇宙ですか!?」
 闇の中に瞬く星々。
 宇宙船の内部から見詰める【シオン・ミカグラ】は感嘆の声をあげた。
「船がなにもないところを飛んでます!」
 透過型ディスプレイから見る星々は、見て分かるほどの速さで流れていく。
「流れ星が一杯です!」
 今シオンが乗っている宇宙船は、空間の伸び縮みを利用して光速以上の速度を出している。
「すごいです! この世界の技術は、とっても素敵です!」
「そう言って貰えると、我々としては誇らしいよ」
 シオンに言ったのは、二足歩行型のCGF隊員【レノラ・リュリューグル】。
 ヒューマンによく似た、けれど額に第三の目を持つ彼は、今回のミッションについて尋ねた。
「貴女に助力を頼んだ件について、詳細は聞いているだろうか?」
「はい。犯罪組織の摘発をするんですよね?」
「ああ。厄介な相手を摘発したいんだ」
 レノラは難しそうに、眉をひそめて言った。
「どうも精神操作系の魔法を使うらしくてね。基本的に魔法を使わない我々では抵抗できない。なので貴女に先行突撃して貰うことになるのだが――」
「分かりました! 難しいと思いますけど、期待に応えられるように頑張ります!」
「……すまない、感謝する。もちろんバックアップは可能な限り行う。武装で必要な物があれば何でも言って欲しい」
「なら、こちらの世界の銃を貸して貰えますか?」
 好奇心を浮かべながら、シオンは頼む。
「こちらの世界の銃に興味があるんです。お願いできますか?」
「もちろんだ。それなら、武器格納庫に案内しよう。あそこなら、射撃場も完備している」
 そうして向かった先で、シオンは様々な銃を試した。
「うわっ、標的が消し飛んじゃいました」
 用意して貰ったハンドガンを試し撃ちしたシオンは、その威力に驚く。
 3600本の極小針弾を飛ばす短針銃に、電磁加速を利用した相転移銃。
 個人携帯できる過電粒子砲も試させて貰ったが――
「使い慣れた銃を使おうと思います」
 シオンはオクタルヴァを取り出して言った。
「これなら加減も出来ますから、殺さずに捕まえる事も出来ます。犯罪組織が相手なら情報は必要でしょうから、可能な限り捕縛しようと思います」

 そしてシオンは犯罪組織の拠点に向かい――銃撃戦になっていた。

「殺せ!」
 嵐の如き銃弾がシオンに襲い掛かる。
 しかし、すでにシオンの姿は視界から消えていた。
「ど、どこに――」
 銃を手にした男が周囲を探るより早く、壁や天井を足場にして背後に跳んだシオンが連続射撃。
 あまりの速さに複数撃ったにもかかわらず一発にしか聞こえない銃声をさせ、全員を戦闘不能にした。
(霊玉のお蔭で、すごく動けてます)
 こちらの世界に来る前、霊玉の力を借りて一時的に力量を大幅に上げている。
 それは筋力や魔力だけでなく、反応速度や知覚範囲にもおよび、全てを駆使して犯罪組織の構成員を圧倒していた。すると――
「シオン、後方制圧完了した。君が先行打撃を加えてくれたお蔭で、こちらに被害は出ずにすんでいる。ありがとう」
 レノラの通信が聞こえる。
 針先程のチップがシオンの耳元に張り付けられているのだが、それだけで近くで話されているようにクリアな声が聞こえた。
「そのまま進めば開けた場所に出る。そこに組織のボスである【ハイドラ】がいるようだ」
「その人が、魔法を使う人ですか?」
「ああ。我々では近付いただけで精神支配されかねない。すまないが――」
「任せて下さい。やっつけちゃいます」
 戦いの中で高揚したシオンは、そのまま走り抜け――
「あなたがハイドラですね!」
 2足歩行する爬虫類のような姿をしたハイドラに勧告した。
「大人しく降伏してください!」
「ふざけるな!」
 嘲笑うようにハイドラは返す。
「調子に乗るなよ! お前ら殺せ!」
 配下に命令し銃弾が降り注ぐ。しかし――
「ぎゃあ!」
 悲鳴は配下からしか上がらない。
 シオンは狙いをつけられるより早く動き、途切れることなく連続射撃。
 次々撃ち抜き無力化しながら、開けた場所を駆けまわる。
「クソが誰か止めろ!」
 シオンの動きを捕えられず、配下達はむやみに銃を撃つが、シオンには当たらず同士討ちになる。
 ならばと囲んで取り押さえようとするが、シオンの動きに付いていけない。
(このまま、全員無力化して――)
 勝てる、とシオンが確信した時だった。
「それ以上動くんじゃねぇ!」
 配下の1人が、子供を掴んで銃を突き付けようとする。
「動いたらこいつを殺――」
「させません!」
 狙いをつける暇を与えず、肩を撃ち抜き子供から引き離す。
「もう大丈夫です!」
 保護し、安全な場所に避難させようと子供を抱えようとした。けれど――
「――!」
 子供がシオンに抱き着き動きを止める。
(これは!)
 子供の虚ろな目を見て、魔法で操られているのだと確信する。だが――
「バカが引っ掛かりやがった!」
 対処するより早く、ハイドラが精神支配の魔法を放つ。
 避けられずまともにシオンは受け――
「きゃっ!?」
 小さな悲鳴を上げただけで、なんともなかった。
「……え? な、なんともないです……?」
(これは……種族特性の、先祖から授かりし力で、状態異常まで跳ねのけてる?) 
「何だお前……――!」
 自慢の魔法が効かず後ずさるハイドラ。その様子に――
(私、本当に強くなっているんですね……なら遠慮なく!)
 自信を得たシオンは攻勢に出る。
 片手を前に突き出し魔法陣展開。
「お前、ソーサラーか!?」
 ハイドラは今さら気付いたが、もう遅い。
「全員、逃がしません!」
 シオンの周囲を覆うように無数の土の弾丸が発生すると、一斉に放たれる。
「ぎゃあ!」
 次々食らい倒される犯罪者達。
(これは……加減しないと)
 一歩間違えると虐殺に近い状況になりそうだったので、シオンは加減して撃つ。
 それでも犯罪者達は倒されていくが、足掻きとばかりに秘密兵器を出す。
「パワードスーツを出せ!」
 ハイドラの怒声と共に、壁を粉砕し軍用パワードスーツを着込んだ一団が場に乱入。
「殺せ!」
 号令と共に一斉に襲い掛かってくる。だが――
「負けません!」
 シオンは祖流覚醒。
 肉体のみならず魔力も知覚も跳ね上がった状態で、逆に迎え撃つ。
 パワードスーツが狙いをつけ、ガトリングを一斉射撃。
 音よりも速い暴虐の嵐を、攻撃の予兆を嗅ぎ取ったシオンは先んじて回避。
 パワードスーツに内蔵されたAIが危険を警告するも、その時には既に間合いに入っている。
 シオンは腕を振り抜く。
 それだけで、複合素材で作られたパワードスーツは切り裂かれた。
 両手に構築した魔力の爪が、紙細工を破り捨てるような勢いで破壊していった。
「な、何だテメェ――!」
 ハイドラは顔をひきつらせながら叫ぶ。
「化け物が!」
「違います!」
 応えるシオンは堂々と、誇りと共に言い返す。
「私はフトゥールム魔法学園生、シオン・ミカグラです! 悪いことをしている貴方達は、全員やっつけます!」
 その宣言を証明するようにシオンは暴れまくり――
「――ふぅ……これで、お終いです」
 最後の1人の意識を狩り獲って、犯罪組織をひとつ壊滅させた。

 戦い終わり――

「わぁ……これが、この世界の食べ物なんですね」
 色取り取り、様々な料理が乗ったテーブルを前にして、シオンは目を輝かせる。
「食べていいんですか!?」
「もちろんだ」
 レノラが応える。
「君のお蔭で被害もなく制圧することが出来た。これは我々からの、ささやかではあるがお礼の品だ。好きなだけ、食べて欲しい」
「ありがとうございます!」
 そして食べてみれば、どれもこれも美味しい。
「美味しいです……!」
 それは味だけでなく、食感も様々に凝った料理だった。
 話を聞くと、必要な栄養素を取れるカプセルや、分子プリンタにより作る料理もあるらしいが、やはり料理人の手が入った物の方が美味いらしい。
「ここまで凝った料理は我々もなかなか食べられないが、歓迎の意味もある、存分に食べてくれ」
「はい……あの、レノラさん達は食べないんですか?」
「ん? ああ、これは君のために用意した料理だからね。気にせずに――」
「なら、みんなで食べましょう!」
 シオンは笑顔で言った。
「皆で食べた方が美味しいです!」
 これにレノラは苦笑すると、宇宙船の乗組員に連絡。
 シオン用の来賓料理だけでなく、普段食べている日常の料理から携帯のジャンクフードまで持ち寄り、パーティを始める。
 賑やかな料理を皆で食べ、味だけでなく楽しさも味わったシオンだった。

 かくして、留学と共に力を貸し、相互の世界の交流を果たした学園生であった。



課題評価
課題経験:112
課題報酬:5000
異世界留学
執筆:春夏秋冬 GM


《異世界留学》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
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課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!