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悪の秘密組織のロボを粉砕せよ!


ストーリー Story

 見上げるほどの鋼の巨体。
 騎士を思わせる風体のそれは、異世界の技術を組み込んで作られたものだ。
 全長十m。
 型は、大きく分けて二つ。
 機体と操縦者の感覚を一体化させる、『人機一体型機体(エクステンションマシン)』と、機体にパイロットの補佐をするAIが組み込まれた『相棒型機体(パートナーマシン)』だ。
 機体性能は、次の通り。

 人機一体型機体。
 武装。目から放たれるビームと、指先から撃ち出される機関砲。
 それに加え盾と剣を装備し、操縦者の魔法を増幅して使用することも出来る。
 防御面では、光学兵器を拡散する特殊な塗料が塗られ、魔法で強度自体が上げられていた。
 操縦者の感覚と一体化する性質から、戦いに集中し過ぎると、機体状況の把握が疎かになる可能性があったが、逐次操縦者に状況を把握できるように表示することで問題点は解決している。
 機体を起動させると同時に、最初から全力を出し易い機体で、先行部隊に適している。

 相棒型機体。
 武装。剣と盾。近接戦タイプ。人機一体型機体と同じく、操縦者の魔法を増幅して使用することが出来る。
 防御面では、人機一体型機体と同じ物を使用。
 そして機体を制御しサポートするAI――リュミエールが内蔵されている。
 学園生の協力により生まれたリュミエールは、株分けされL型AIとして全ての相棒型機体に組み込まれていた。
 L型AIは、操縦者の生存を第一の命題としており、防御や回避といった守りに秀でた性質をしており、それが相棒型機体と相性が良い。
 相棒型機体は、起動と共に出力が上がっていく性質のため、戦闘の初期では力を出し切れないが、逆に言うと時間が経てば経つほど強くなる。
 出力が上がった状態では、全身に魔力を纏い防御力を強化したり、推進力として使用することで急加速も出来る。
 また、掌に収束した魔力を撃ち出すことで、高い攻撃性能も持っていた。
 先行部隊が進攻したあと、第二陣として突撃する追撃部隊に適している。

 この二種類の機体が、それぞれ50。
 合計100機が、魔導列車に搭載され目的地に向かっていた。

「最終チェック急いで! 万全の状態で送り出すわよ!」
 整備員達に檄を飛ばしながら、自分も忙しく機体整備に動き回っているのは、【シルク・ブラスリップ】。
 相棒型機体の、GD-X1シリーズの設計者であり、フトゥールム学園生でもある。
「【ヤン】! そっちの進捗は?」
 人機一体型機体の整備チームリーダーに声を掛けると、テンションの上がった声が返ってきた。
「万全だ! 折角の貴重な実戦データが取れるチャンスだ! これ以上ないほどに仕上げてみせるとも!」
 ノリノリである。
 それもその筈、巨大人型兵器の軍団戦がこれから行われるのだ、マッドサイエンティ――もとい、熱心な科学者なら興奮しないわけがない。しかも――
「人の成果をパクろうとした異界同盟にはキッチリ落とし前をつけて貰わねばな!」
 恨みもあるのでひとしおである。

 いまシルク達が向かっているのは、異界同盟と呼ばれる秘密組織の拠点のひとつだ。
 異世界の技術を使って世界に覇を唱えようという、その組織に、シルクとヤンは一時所属していた。
 もっともシルクは、潜入工作員ではあったが。
 異界同盟の危険性を知った学園が壊滅させるために送り込み、そこで巨大人型兵器の開発をしつつ工作していたのだ。
 その工作が功を奏し、ヤンを含めた技術者を多数学園側へと引き込み、いま異界同盟の拠点のひとつに向かっている。
「向こうにもこちらに匹敵する数の機体がある。全て叩き潰せるよう、機体を仕上げるぞ!」
 ヤンの檄に整備員達は応える。
 いま向かっている異界同盟の拠点には、ほぼ同数の機体があるのは調査していた。
 シルクやヤンの設計した機体をベースにしているので基本性能は近いが、こちらの機体は学園生の協力により性能が上がっている。
 それでも油断なく整備を続け――
「あと20分で目的地に到着予定。操縦者は準備されたし」
 先頭車両からの連絡が響く。それに続けるように――
「さあ、始めるわよ! 戦闘準備!」
 シルクが改めて檄を飛ばし、出撃の準備が急ピッチで進んだ。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 7日 出発日 2022-11-29

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2022-12-09

登場人物 2/8 Characters
《ゆう×ドラ》シルク・ブラスリップ
 エリアル Lv17 / 村人・従者 Rank 1
「命令(オーダー)は受けない主義なの。作りたいものを、やりたいように作りたい……それが夢」 「最高の武具には最高の使い手がいるの。あなたはどうかしら?」 #####  武具職人志願のフェアリーの少女。  専門は衣服・装飾だが割と何でも小器用にこなすセンスの持ち主。  歴史ある職人の下で修業を積んできたが、閉鎖的な一門を嫌い魔法学園へとやってきた。 ◆性格・趣向  一言で言うと『天才肌の変態おねーさん』  男女問わず誘惑してからかうのが趣味のお色気担当。  筋肉&おっぱい星人だが精神の気高さも大事で、好みの理想は意外と高い。 ◆容姿補足  フェアリータイプのエリアル。身長およそ90cm。
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。

解説 Explan

●目的

敵の機体を破壊し、異界同盟の拠点を壊滅させる。

●戦場

荒廃し捨てられた村。魔王決戦時に荒らされ住民は他所に出ている。

異界同盟が見つけ拠点としていた。

荒れ果てているが平地であり、戦闘に支障はない。

●状況

巨大人型ロボットに乗って、敵のロボットを倒します。

輸送されている魔導列車から降ろされ、敵も戦闘準備が整い、500メートルほど離れた状況で始まります。

乗り込む機体は2種類。

人機一体型機体と、相棒型機体。好きな機体に乗って戦って下さい。

味方を指揮したりできますし、逆に単独で戦場を駆けるとかも出来ます。

性能については、プロローグを参照ください。

●敵

巨大ロボット×100

性能は、PCたちが乗り込む物より多少低いです。

死人兵と呼ばれる死者に操縦させています。

解放するためにも、完全に倒して下さい。

●やること

巨大人型ロボットに乗って、敵のロボットを倒す。

以外に、

敵の拠点に他の人員(数十人います)と協力して乗り込み、研究員などを制圧し資料などを抑える。

事も出来ます。敵の戦闘員は巨大ロボットに乗り込むため、制圧には苦労しません。

●その他

現地へは、異世界の魔法を使った魔導列車で到着します。

魔導列車は、異世界の妖精が動かす列車で、空中を飛んで走ることが出来ます。

今回の制圧作戦のため、異世界から呼び寄せました。

以上です。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、異界同盟ロボット兵器部門壊滅エピソード(決着編)です。

派手な動きとかしてもオッケーですので、自由にプランをお書きくださいませ。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。


個人成績表 Report
シルク・ブラスリップ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:252 = 112全体 + 140個別
獲得報酬:10800 = 5000全体 + 5800個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
いよいよ決戦!
『相棒型機体』のほうの整備と指揮を担当
場合によっては自分も持ち出した予備の『GD-X1』で出撃し、拠点の制圧を行う


●行動
基本は一点突破で強襲。
NPC機体にはアンリの援護を頼んで、ダメージは早めに下げて整備
パイロットの大部分が死人兵のようなので、戦場を俯瞰し、有人機を見極めて戦力を集中
体力で不利になる長期戦は避けて早期決着を目指す。
味方には敵能力を見極めつつ、『攻撃拠点Ⅰ』および『防具適合I』でアシストを。

敵が強い、数で押されるなどで劣勢な場合や予想外な動きがあった場合、最後の手段で予備の『GD-X1』に乗り出撃。
アンリとヤンを援護し、共に撃破を目指す

アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:168 = 112全体 + 56個別
獲得報酬:7500 = 5000全体 + 2500個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
相棒型機体で出撃。
「リュミエール、先日はありがとう。助かった。今日もよろしく」
序盤は味方が乗る人機一体型の後についていく。
出力が上がるまではあまり前に出ないよう注意して。
一体型の側で隙が生じないようカバーしたり。
人機一体型のビームや機関砲などで手負いの敵ロボを狙ったり。
【プチラド】を放って遠距離攻撃もしよう。
前に出て戦うのに十分なほど出力が上がれば、推進力を上げて進撃。
回避や盾の防御をしながら敵に接近して、出来るだけ下半身を狙って破壊し、動きを止める。
とはいえまだ操縦は上手くないので、リュミエールの指示に耳を傾けて。
剣が使えなくなったら、両手からの魔力放出で敵を破壊する。

リザルト Result

 決戦の地に向け、魔導列車は空を駆けていた。
 敵に反応される危険を最少にするため、過剰速度を出しているので景色は目まぐるしく移り変わる。
 それは本来なら、空を我がものとする鳥でなければ目にすることが叶わぬ視点。
 だからこそ、決戦の助っ人として手伝いに来ていた【アンリ・ミラーヴ】は、興奮して尻尾を高く上げながら外を眺めていた。
(すごい……)
 魔導列車に乗るのが初めてなので、珍しさだけでなく感動したように、目まぐるしく移り変わる景色を眺めている。
 その表情には、これから戦いに赴くのだという気負いはなく、あくまでも自然体だ。
 今まで何度も激しい戦いを経験し、死線から甦って来たこともあるので、余計な力みは無い。
 戦時であっても日常と変わらぬ余裕を持っている。
 そんな彼に、おっとりとした声が掛けられた。
「アンリ、準備が出来たから私に乗れるわ」
 声を掛けて来たのは、フェアリーのように小柄で、ドラゴニアのような姿をした女の子――のように見えるが、実際は違う。
 飛空艇世界のアニマ技術を流用した仮想実体であり、相棒型機体の制御AIだ。
 名前を【リュミエール】といい、L型AIのオリジナルでもある。
 とある学園生により生まれたのだが、それもあって、『母親』である彼女の姿を真似た形を取ることを好んでいた。
「すぐに、乗った方が良い?」
 アンリが尋ねると、リュミエールは応える。
「今から起動して出力を上げておいた方が、戦闘が有利になると思うわ」
「分かった。搭乗する」
 アンリは応じると、リュミエールの機体に向かう。
 その間、リュミエールはアンリのバイタルチェックをしながら声を掛ける。
「調子は良い? 何かあったら、教えてね。スキャンして、対応するわ」
「大丈夫。元気だから、やれる」
 以前、模擬戦闘で乗り込んで一緒に戦ったこともあり、気安い口調でアンリは返す。
 そのあとも軽く言葉を交わし、機体の足元に到着し搭乗する。
「シートベルトも付けたから、起動しても大丈夫」
「分かったわ。なら、機体を待機モードから戦闘準備モードまで起動するわね」
 魔力炉に本格的に火が入る。
 それに合わせ、各種機器が活性化。
 透過式モニターも活性化し、外部の景色が映し出される。
 忙しく足元で作業する整備員を見てアンリは心の中で感謝すると、続けてリュミエールにも礼を言った。
「リュミエール、先日はありがとう。助かった。今日もよろしく」
 これにリュミエールは、嬉しそうに返す。
「私も、よろしくね、アンリ」
 そう言うと、気遣うように続ける。
「今日は、前と違って実戦だけど心配しないで。アンリが怪我をしないように、守るから」
 リュミエールは『母親』である彼女の願いを受け、搭乗者の身体生命を第一に考えるAIだ。
 だからこそ、敵を倒すことよりも生き抜いて帰還することを至上命題としている。
「必要なら、私に出来ることは何でもするわ。戦闘中の機体制御もだけど、もし嫌じゃなければアドバイスも考えてるけど……それは、必要ない?」
 気遣うリュミエールに、アンリは応えた。
「話し掛けてくれる方が、嬉しい」
「そうなの?」
「うん」
 アンリは応えると、考えを纏めるような間を空けて続けて言った。
「俺、本当はあまり、戦うのが好きじゃない。戦っていても、色んな事を考える」
 本来のアンリは、人を癒したりすることの方が性に合っている。
「味方の事も、敵の事も。リュミエールがいて、話しかけてくれたら、余計な事を考えなくて済む。仲間が傍にいると思ったら、そのために戦える」
 戦いを厭うアンリだが、必要であれば臆することは無い。
 自分のためでなく、誰かのためであれば、余計に勇気が出るのだ。だからこそ――
「リュミエールがいてくれて、本当に助かってる。ありがとう」
 それにリュミエールは嬉しそうに応えた。
「お礼を言うのは私の方よ。貴方や、みんなを守るのが、ママに貰った私の存在意義だもの。一緒に戦ってくれてありがとう、アンリ」
 喜ぶリュミエールに、アンリは願うように言った。
「どこか遊びに行けるといいね」
「遊びに?」
「うん。出来たら、俺の家族を紹介するよ。ココって、とっても可愛くて賢い犬なんだ」
「可愛くて賢いのね……でも、私は戦闘補助AIだから、会いに行っても、してあげることが――」
「大丈夫」
 アンリは確信するように言った。
「戦い以外でも、必ずリュミエールの力が活かせる。だから――」
 決意を口にする。
「皆で生きて帰ろう」
「もちろんよ、アンリ」
 約束するように応えるリュミエールだった。

 アンリの準備が整う中、機体の設計主任であり整備責任者でもある【シルク・ブラスリップ】は、最終チェックを終わらせていた。

「さあ、いよいよ決戦よ!」
 スパナを指揮棒のように掲げ、シルクは無線を通じて搭乗者達に檄を送る。
「ロボもパイロットも、断然こっちの方が上よ! 思う存分、やっちゃいなさい!」
 シルクの檄に、応じるように搭乗者達の声が返ってくる。
 それに応えるように、シルクは続けて言った。
「目的は拠点制圧。でも無理はしないで。後方で私達が整備についてる。損傷しても急ピッチで直してあげるわ」
 安心させながら、作戦内容を伝える。
「部隊をふたつに分けて進行してちょうだい。先行は人機一体型部隊に任せるわ。トップスピードで敵の陣形に突貫して。これは敵を分断して連携を取れなくするのが目的よ」
 そこまで言うと、部隊を率いるリーダー、【ゼノ】に声を掛ける。
「やれるわよね? ゼノ」
 あえて挑発するように言うと、楽しげな声でゼノは返す。
「当ったり前だ! ギッタギタに引き裂いてやんよ!」
「頼もしいわね。だったら存分にやっちゃって」
「おう!」
「機体の損傷や魔力の消費は気にせずやっちゃいなさい。あたし達が控えてるんだから、戻ってきたらすぐに直して回復してあげる」
「はははっ! ぶっ壊れても良いってわけだな! 滾るな!」
「滾るのは良いけど、死なない程度にね。それで、ゼノたち先行部隊の突入後に、相棒型機体に後詰めで入って貰うわ」
 部隊を代表して、シルクはアンリに声を掛ける。
「アンリ達の部隊は、先行部隊が取りこぼした敵の殲滅を頼むわ。今回は長期戦は避けて早期決着を目指してるからスピード重視でお願い」
「分かった」
「頼りにしてるわ。それと敵の優先度なんだけど、敵方パイロットの大部分が死人兵と予想できるから、指示を出す有人機を見極めて戦力を集中しましょう。前線で戦っていると判断が難しいでしょうから、後方であたし達が索敵して指示を飛ばすわ」
 作戦全容を話し終り、質問タイムを設けたあと、全機配置につく。
 最終チェックも終わり、いつでも戦闘を始められる準備が整う。
(やれることは全部やった)
 不安を技術者としての矜持で飲み込みながら、シルクは後方支援の準備に動く。
(一族の秘伝まで持ち出して強化したんだから大丈夫)
 シルクの実家の一門は、過去に勇者の武具を仕上げたこともある一族であり、その業はシルクにも受け継がれている。
 それに加え、学園で学んだこともすべて出し切って整備は終わらせているのだ。
 予想できる敵のスペックが多少高くても問題は無い、筈ではあるが――
(胸騒ぎがするわね)
 嫌な予感を無視することなく、シルクは奥の手を用意している。
(使わないで済めばいいんだけど……)
 不安を抱きつつ、魔導列車は戦場に到着した。

「外壁解放! 敵との距離三百で移動停止!」
 オペレーターの指示に従い、停車した魔導列車の外壁が開き、先行部隊の五十機が姿を見せる。
「周辺索敵終了! 地雷および魔法を使用した罠の存在無し! 出撃可能です!」
 停車した魔導列車は指揮車両へと役割を変え、各機体に最適な指示を出す。そして――
「いくぞ!」
 一番槍を得ようと、人機一体型部隊が先行突撃。
 対する敵も、襲撃を察知し起動した機体で陣形を組む。
 それを素早く読み取り、シルクは先行部隊に指示を出した。
「敵の陣形は横陣。こっちが踏み込んだ所を囲んで潰すつもりでしょうけど――そのまま突っ込んで食い破って!」
「任せろ!」
 獰猛な応えを返し、ゼノが真っ先に突っ込む。
 敵は反応しようとするが、速さに追い付けず粉砕される。そこに――
「追撃! 陣形の亀裂を広げて!」
 シルクが指示を出し、後続の機体も速度を落とさず突進。
 反撃しようとする敵を飲み込む勢いで蹂躙していく。
 それにより敵の陣形が中央から真っ二つに分断される。
 陣形を崩された敵は、一塊で突っ込んできた学園の部隊を囲んで潰そうと広がろうとするが――
「第二陣、出撃して!」
 敵が囲むより早く、シルクは後続部隊に指示。それに応じ――
「リュミエール」
「ええ。行きましょう、アンリ」
 相棒型機体の部隊が出撃。
 援護に向かうアンリ達に、シルクは戦況を確認し最適な場所に誘導する。
「左方面、援護お願い!」
「分かった」
 アンリは応じ、距離を詰めながら敵に照準をつけ攻撃。
 指先から機銃掃射し敵の動きを止めた所で、目に仕込まれた光学兵器で敵の装甲を灼く。
 実弾と光学兵器で敵の守りを削った所で――
「攻撃に集中して。防御と回避は私がするわ」
「頼むね」
 アンリは、リュミエールと作業分担し、装備している大剣を振う。
 狙いは脚部。
 完全破壊よりも、まずは動きを止めることを重視して攻撃。
 鋼を砕く重い音をさせ、一機の足を破壊。
 追撃を掛けようとするが、リュミエールが回避行動に出て後方に跳ぶ。
 ほぼ同時に、機銃掃射が今まで居た場所を通り過ぎる。
「ありがとう、リュミエール」
「気にしないで。このまま進めていきましょう」
「分かった」
 リュミエールの助けを借り、アンリは危なげなく戦闘を続ける。
 それは他の機体も同じで、確実に敵の戦力を削りながら、危険を避けて戦っていた。
(このままいけば、勝てる……?)
 アンリは戦いながら、無意識のうちに戦局を分析する。
(最初に、突撃してくれた人達も、すごく強い。お蔭で、相手に連携させないで、俺達は戦えてる。リュミエールと同じ、AIも助けてくれているし、こっちが有利なはず……なのに――)
 どうしようもない胸騒ぎがする。
 それは今まで戦ってきた中で培ってきた経験が生きている証拠だ。だからこそ――
「気をつけて、リュミエール」
「アンリ?」
 疑問を浮かべるリュミエールに、アンリは言った。
「たぶん、まだ相手は、本気じゃない。何かを、仕掛けようとしてる」

 アンリの判断の正しさは、後方で指揮をとっていたシルクも感じ取っていた。

「敵機体の分析、出来るだけ早くお願い」
 切羽詰まった声でオペレーター達に頼む。
(おかしい。いくら何でも手ごたえが無さ過ぎる)
 敵が使う機体は、元々はシルク達が設計し作った物だ。
 性能は当然、シルクは知っている。
(こちらが有利に戦えるのは当然だけど、進攻率の推移が速すぎる。まるでわざと攻撃させて、こちらを疲労させようとしているような――)
 そこまで思いつき、オペレーターに確認する。
「伏兵が潜んでるってことは無いわよね?」
「無いです」
 確信を持った応えが返ってくる。
「周囲一キロ圏内で他の機体反応はありません。いま戦っている機体が全てです」
「だったら……」
 シルクが、まとまり切らない懸念を言葉にした時だった。
「敵機体の分析終わりました」
 オペレーターの声が返ってくる。
「機体スペックは当初の予定と合致。生命反応は――」
 言葉に詰まるオペレーター。
「どうしたの?」
「……無いです」
「……え?」
「全機生命反応なし。いま戦ってる機体は、全て死人兵です」
「なら、アタシ達は死者を相手に戦ってるってこと……?」
(それってまるで……全部使い潰しても良いと思ってるような……)
 シルクの懸念は現実となる。

「なんだ!?」
 敵機を破壊したゼノが訝しげな声を上げる。
 それは破壊した筈の機体が、ゆっくりと立ち上がり、再び襲い掛かって来たからだ。
「どういうこった!? オペレーター状況を教えてくれ!」
 これに、オペレーターは切羽詰まった声で返す。
「死者を操る魔法が使われています!」
「は? いやそりゃ知ってるよ。敵機の操縦者は死人兵なんだ――」
「人だけじゃありません! 機体にも掛けられてるんです!」
「どういうこったよ!」
「壊れて死んだ機体を操れるってことです!」
 その言葉を証明するように、破壊された敵機が、続々と立ち上がり襲い掛かってくる。
「まるで機械のゾンビね」
 後方で確認したシルクが悍ましげに言った。
「あれじゃ、完全破壊でもしないと止められない。最初、こちらに好きに攻撃させたのは消耗させるつもりだったってことね……だとしたら……」
 激烈に嫌な予感がしたシルクは、切羽詰まった声で全機に指示を出す。
「ゼノ達先行部隊は一端引いて!」
「は? なんでだよ」
「このまま戦ったら魔力が持たない。それに損傷も激しいから機体が壊れて――死にかねない。そうなったら、下手すると相手に操られるわ」
 恐らく、それが敵の狙いだ。
 序盤でわざと攻撃させ踏み込ませた上で、機械ゾンビで持久戦を行い、破壊して殺した機体すらゾンビにして押し潰す。
「こっちの機体も自分達の戦力にするつもりよ。どこの誰が考えたか知らないけど性格の悪い」
 どこかで誰かが亀裂のような邪悪な笑みを浮かべた気がしたが、それを振り払いシルクは言った。
「とにかくゼノ、いったん戻って」
「んなこと言っても――」
「大丈夫」
 アンリが通信に加わり、落ち着いた声で言った。
「戻って来るまで、持たせてみせる。リュミエールも、みんなもいる。だから大丈夫」
 それを証明するように、アンリは積極的に前に出て敵を倒していく。
 そこに、シルクが続けて言った。
「ゼノ、戻って来て。復帰する時間は稼げるから」
「なにかあるのか!?」
「あるわ。とっておきのが」
 こんな時もあろうかと、万が一の時を考え用意していた秘密兵器を出すことにする。
「すぐに用意するから、今すぐ一時撤退を始めて」
「……分かった、信じるぜ」
 そう言うとゼノは、アンリと回線を繋げる。
「すまんアンリ、すぐに戻って来る。それまで時間を稼いでくれ」
「任せて」
 アンリは応えると、他の相棒型機体と共に、一時撤退がし易いよう攻勢に出る。
「助かる」
 ゼノは応えると、仲間の部隊に檄を飛ばす。
「撤退するついでに行きがけの駄賃だ! 手当たり次第に潰して一端引け!」
 回線を通じ応じる声が上がり、狂戦士の如き勢いで敵を潰しながら撤退していく。
 それに敵は追い縋ろうとするが、アンリたちが立ち塞がる。
「アンリ、細かな操作は私が受け持つから、目の前の敵を倒すことだけに集中して」
「任せたよ、リュミエール」
 アンリたち相棒型機体の部隊は、その真価をいかんなく発揮して敵を抑えていく。
 元より相棒型機体は、防御と持久力に優れている。
 数で勝る敵を、確実に抑えていた。
 そこへさらに、シルクの秘密兵器が援軍に加わる。
「準備は出来てる?」
「当然だ」
 戦闘の序盤から密かに動いていた【ヤン】が、シルクに応える。
「魔力充填は終わらせている。いつでも撃てるからぶっ放せ」
「助かるわ。それで、ゼノ達の整備なんだけど――」
「任せろ。既にうちのチームが準備している。十分で良い、持たせろ。それで復帰させる」
「頼んだわよ」
 シルクは後のことをヤンに任せると、魔導列車の後続車両へと飛ぶ。
 そこには予備の魔力炉が備え付けられているが、そこから供給される魔力を貪欲な勢いで飲み干す機体が一機。
 GD-X1シリーズをベースに、大型化した『試作型高圧魔力収束砲』を装備した長距離狙撃用機体。
「シルフィード、行くわよ」
「了解です、マスター」
 制御AIを起こし、シルクは機体に乗り込むと――
「薙ぎ払うわよ、ファイア!」
「了解。吹っ飛ばします」
 高圧高密度の魔力弾が放たれ、命中した敵機を粉砕する。
「命中。残数十八。どうします、マスター?」
「全部ぶっ放しなさい!」
 景気の良いシルクの言葉に従い、連続狙撃。
 次々粉砕される敵機。
 その勢いに乗るように、アンリも全力を尽くす。
「リュミエール」
「大丈夫。そのまま進んでアンリ」
 リュミエールに助けられながら、アンリは敵との距離を詰め、魔力を収束した両手を接触させると一気に解放。
 純白の輝きと共に、敵を吹っ飛ばした。
 バラバラに砕かれ、さすがに敵機は復活できない。
 アンリとシルクは次々数を削っていき――
「悪ぃっ待たせた!」
 魔力を充填し換装したゼノ達先行部隊が復帰。
「一気に押し潰すわよ!」
 シルクたちは更なる勢いを得て、敵を一機残らず粉砕した。そして――

「お疲れさま、アンリ」
「うん。リュミエールも、お疲れさま」
 アンリとリュミエールはお互いを労い――
「うーん、やっぱり焼き切れてるわね」
「威力があり過ぎるからな」
 シルクとヤンは、大型化した『試作型高圧魔力収束砲』の課題点を確かめながら戦いを終わらせた。

 かくして、悪の秘密組織の拠点のひとつを、見事粉砕したシルクとアンリであった。



課題評価
課題経験:112
課題報酬:5000
悪の秘密組織のロボを粉砕せよ!
執筆:春夏秋冬 GM


《悪の秘密組織のロボを粉砕せよ!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 1) 2022-11-22 22:32:37
村人・従者コースにして諸々の根源なシルクよ、よろしくー。

…というわけでロボット大決戦ね!

あたしは相棒型機体の開発者なんで、ナビゲートと制圧後の処理が中心になる予定…
まぁ、人数が集まらなければ前線にも出るけど。みんなの都合優先してくれていいからねー

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 2) 2022-11-27 01:05:22
教祖・聖職コース、アンリ・ミラーヴ。よろしく(尻尾ぶんぶん)
シルクさん、かっこいい機体を作ってくれて、ありがとう。
まさか増えるとは、思ってなかったけど。
俺は今回も、リュミエールと一緒に、機体を操縦して戦う。

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 3) 2022-11-27 23:42:14
うん、今回もよろしくアンリ!

学園の援助もあってだいぶ数作れたわねー。

あたしも音頭(指揮)はとるつもりだけど、何か作戦あったら融通効かせるから遠慮なく言ってねー

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 4) 2022-11-28 21:00:09
出発直前でごめん。俺からの作戦は、特にない。
戦いながら、味方の機体のフォローも、出来たらやる。
ごーごー。

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 5) 2022-11-28 23:05:15
了解!
そんじゃ真っ向勝負といきましょうか。
こっちもプラン提出してくるわ。よろしくっ!