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サヴァング戦闘術 基礎講座【拳王祭】 (EX)
龍河流 GM
サヴァング戦闘術 基礎講座【拳王祭】  一通の手紙に目を通した【ジョー・ウォーカー】は、小さく溜息を零した。  黒髪のオールバック、片目には眼帯。  黒いマントを羽織る姿はどこからどう見ても黒幕そのものだが、主に教鞭を取るのは魔法を使った近接格闘「サヴァング戦闘術」である。  サヴァング戦闘術は、主に徒手での戦闘を想定した近接格闘術だ。  手刀や掌底、足技を多用し、技の中にフェイントや防御、ブーストとして魔法を織り交ぜることで、中近距離での攻防において有用性が高い。  捕縛術としての側面も持つことから、勇者や魔王、武人コースの生徒だけでなく、村人・従者コースの生徒にも護身術として人気の講義だった。  基礎体力づくりを目的とした生徒から、武道を極めようとする生徒まで、幅広い学生が履修している。  のだが、それはあくまでフトゥールム・スクエア内での話だ。  一歩学外に出れば、サヴァング戦闘術は、すでに都市伝説と化した過去の遺物である。  名前が抒情詩に現れ、物語の中で目にすることはあっても、実際にサヴァング戦闘術を修めることのできる道場の数は片手で足りる。  ジョーが戦闘術を修めた道場も、今ではすでに廃れていた。  のだが。 「参ったな……」  ジョーは、再び手紙に目を落とした。  差出人は、サヴァング戦闘術の総本山の運営委員だった。  内容はこうだ。  昨今、サヴァング戦闘術の名を騙ったエセ流派の動きが盛んである。  商売をするだけならまだしも、ついに『拳王祭』と称して近接格闘の頂点を決める催しを開催し始めた。  言語道断である。  総力を持って叩き潰せ。  以上。 「……雑なんだよなぁ……」  淡々とした怒りは伝わってくるものの、実際の手段となるとこちら任せだ。  だが実際、サヴァング戦闘術の風評被害は、なかなかどうにも頭の痛い問題だ。  サヴァング戦闘術武者修行の名の下に、強奪だの恐喝だの、やりたい放題の悪党。  サヴァング戦闘術を学べば誰でも強くなれると謳い、高い入学金と講座料をぼったくる悪徳商法。  有名なくせに正規の継承者が少ないせいで、悪用の温床となっているのもまた事実だ。  自分が大切に学んできた戦闘術が穢されることは、ジョーにとっても面白くない。  とはいえ、ジョーはあくまで教員だ。  『拳王祭』を叩き潰せと言われて、ハイそうですかと爆弾を仕掛けに行くわけにもいかない。 「どうすっかね……」  喫煙室でタバコを咥えながら中空を眺め、思案に暮れる。  そんなジョーの耳に、廊下を走っていく生徒たちの声が聞こえた。 「ったく、無茶苦茶すぎるんだよなこの課外!」 「ほんとに……! レポート書くこっちの身にもなれっての!」  おそらく、課外活動の準備に追われているんだろう。  学生は大変だなぁとのんきに考えていたジョーの脳裏に、ぴんとひらめきが舞い降りた。 「というわけで、今度の課外活動は『拳王祭』への殴り込みだ」  講座を履修している生徒たちは、きょとんとジョーの顔を見た。 「先生?」 「間違えた。『拳王祭』に参加して、優勝してこい」 「殴り込みって言いませんでした?」 「もちろん、戦闘が得意な生徒だけじゃねえと思う。そういう子たちは、ガヤとブーイングでフィールドの雰囲気を変えたり、嘘の情報を流して妨害工作したり、対戦相手の控室に殴り込んでお涙頂戴のイイ話で戦意喪失させたりして、とにかく敵の士気を下げろ。何が何でも本校から優勝者を出せ。いいな?」 「なんかそれ卑怯じゃないですか?」 「バカ言え。正面切って戦うだけが戦闘じゃねえんだよ」  生徒の中には胡乱げな顔をするものもいれば、頷くものもいる。 「ハイ先生、質問です!」 「はい何だ生徒」 「お祭り、ってことは出店とかありますか?」 「おー。屋台とか色々出てるって話だ。課外しつつある程度は遊べると思うぜ」  途端、お祭好きの生徒たちの目がキラリと輝いた。  現金な奴らめ、と思いながら、ジョーは口を開く。 「とにかくだ。自分の実力を試したい戦闘好きも、戦わずに戦意喪失させるトリッキーなジャマーも、お祭り大好きなパリピも。『拳王祭』の頂点が本校の生徒になるよう、上手く協力しあってくれ」 「はーい!」  生徒たちの返事は、やけに楽しげだった。
参加人数
4 / 8 名
公開 2021-05-17
完成 2021-06-28
最強のスイーツが食べたい。 (EX)
龍河流 GM
 来る日も来る日も雨続きだった。 「……あーあ。こんなんじゃ気分が上がらないね……」  退屈そうに溜息をつくのは、学園教師の【ジョニー・ラッセル】だ。  ひょろっと高い背。丸メガネにくしゃくしゃのくせっ毛。着ている服はひと目で上等と分かるが、ボタンがなくなっていたり、袖がほつれていたりと、あまり大切に着られている様子はない。 「どこの誰だろうね、雨の音は天のハーモニーだなんてほざいたバカは。音感には恵まれなかったんだろうな。ノイズの嵐で僕は気が滅入る」  彼は教室で音楽を奏でている生徒たちを困ったように見渡した。  そして、パン、パン、と数度手を叩く。 「やめだよ、やめ、やめ。……やっぱり雨の日は、どの楽器も調子悪いね。例えるなら連日徹夜続きの状態で本番を迎えた最悪のコメディエンヌって感じだ。みんなめいめいに努力は見えるけど、そんな日は楽器を休ませてあげたほうがいい」  生徒たちは顔を見合わせた。  だが、こうなったらジョニーは演奏をさせてくれない。  演奏者と楽器は常に寄り添うべきである、というのがジョニーの持論だ。だからこそ、楽器にいらない負荷をかけるような演奏を、彼は好まない。 「さて……こうも雨天続きじゃ、全然ハッピーになれないよ。僕ら芸術家は人々に喜びを届けるのがその努めだけど、こんな日は、普段と少し趣向を変えてみよう。たとえば、そう。耳からじゃなくて、目から。あるいは舌から、喜びを届けるって具合にさ」 「えぇと、つまりどういうことですか?」  怪訝そうな生徒に問われ、ジョニーは大げさに両手を広げた。 「要するにさ! 雨の日でも幸せになれて、元気が出るような何かを考えるのをーー……今日の課題にします!」 「今思いつきませんでした?」 「とんでもない! 僕はいつでも、世界をハッピーにすることを考えてるよ!」  取ってつけたような言葉を胡散臭がる生徒も居たが、そこは、芸能・芸術コース。本質的に、楽しくてワクワクすることを好む生徒は多い。  結果、あれよあれよと言う間に生徒を主導に、課題の内容が決められていく。 「というわけで! 今日の課題は、最強のスイーツ大会にします!」  と、生徒の一人が声を高らかに、開幕宣言を行った。 「なにそれ」  きょとんとするジョニーに、生徒たちは口々に今回のルールを説明する。  曰く。  準備期間は一週間後。  来週のジョニーの授業に、各々が考える最強のスイーツを持ち寄ること。  チーム戦も可とするものとする。  勝敗の判定は、見た目を選考基準としたクラスジャッジ、および、味を基準としたジョニージャッジの二つの基準から行うものとする。  なお、スイーツの条件はあくまで「持ち寄る」ことであり、作者の自他を問わないものとする。 「……なるほどねー」  ジョニーは楽しそうに笑った。 「面白そう! じゃあ、来週の授業はそれで!」  こうして、雨期スイーツの頂点を決める戦いの火蓋は、切って落とされたのだった。
参加人数
2 / 4 名
公開 2021-05-29
完成 2021-07-29

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