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デート日和のセプテンバー


ストーリー Story

 瞳は澄んだ菫色。水気を帯びた眼差しは、見つめる者自身の姿を鏡のように映し出す。
 現在、そこに映り込んでいるのはこの学校の学園長、【メメ・メメル】だ。 
「ラビーリャたんよ」
 はい、と【ラビーリャ・シェムエリヤ】は抑揚を欠いた口調で答える。褐色の肌、銀色の髪、均整の取れたスレンダーな体躯、人形めいた印象を与える少女だ。
「学園生活には慣れたかえ?」
「慣れたといえば、慣れたような」
 青い鳥でも探すように、しばらく視線を天井にさまよわせてから続ける。
「……でも慣れていないといえば、慣れていませんね」
「いやどっちやねんっ! っと、一応ツッコんではみたものの、どーもラビーリャたん相手だと勝手がわからんなぁ」
「すいません」
 ラビーリャは頭を下げた。やっぱり調子狂うなァ、とメメルは口を『へ』の字型にしてしまう。
「いやいいんだよ、いいんだけど~、その、慣れたような慣れてないような、と思うのはなぜなのか教えてくれんかね、チミィ」
 ここは学長室、豪奢な革張りのソファに向かい合って座り、メメルは定例の職員面談をしているのだった。いつも遊びほうけているように見えるメメルだが、代表者らしい仕事もするのだ。たまには。
「私は……用務員ですから……ふだん、あまり生徒に接することがないから、かもしれません」
「それだ!」
 ぴょんとメメルは立ち上がった。急に立つとメメルの胸にはもれなく、わさっと揺れるというエフェクトがかかる。
「ラビーリャたん、チミに足りないのは生徒との交流だったんだよ!」
「交流……ですか。直流と交流……?」
「そういうボケいいから、マジでマジで。ともかくなラビーリャたん、資金はオレサマが太っ腹に出してやるから、男子生徒いや女子でもいいけれどもと、デートのひとつでもしてくるのだ!」
 そうだそれがいい、となぜか満足そうなメメルなのである。
「デート? ……『日付』ですか?」
「だからそういうボケはいいって、話進まなくなるから! あー、デートというのはアレだよ、ふたりきりで手をつないで歩いたりして」
「はい」
「盛り上がったらチュッチュしちゃったりして♪」
「そうですか」
「イヤ~ンバカ~ンとかしたりもするかも☆」
「急に具体性がなくなりましたね」
「だー! そんなことオレサマに言わせんな! 具体的にアレしろコレしろというのはないけど、要はふたりで買い物なり遊びなりしてこい、ってことだっつーの! いまや夏の暑さも終わって、いいアンバイにおデートが盛り上がるセプテンバーの到来、行くならこのとき! ってやつなのだよ☆」
 なんだか勝手に決められているように見えるだろうが、特に疑問をいだくこともなくラビーリャは従うことにした。
 ところで、とラビーリャは言った。
「誰と行けばいいんです?」
「ま、誰かいい相手を見つくろっとくよ、オレサマが。誰と出かけるかは待ち合わせ場所までわからんことにしておこう」
 当日をお楽しみにっ♪ となにやら嬉しげなメメルなのである。
 こういうのを世間では『ブラインドデート』と言うとか、言わないとか。
 
 ★ ★ ★

 どうもこのブラインドデートという発想が気に入ったらしい。その後もメメルは、この話を次々と職員や学園上級生に持っていくのだった。

「私が学生と? それ問題になったりしません? 校長公認って……いいんですか? え、隠密指令?」
 隠密指令と言われて、【ユリ・ネオネ】は満更でもなさそうな顔をした。

「オレがデート? 校長それマジっすか?」
「マジなのだ。マイたんにはなー、よき先輩として下級生を導く義務があると思うんだよオレサマは☆ な、頼むよ新入生のためだと思って」
 当惑した様子ながら、メメルに新入生のためと言われ【サラシナ・マイ】は断りづらそうにしている。
「ヤローと遊んだりするのはいつもやってんだけど……」
「だったら女の子ちゃんとデートするがよい☆」
「オレ女の喜びそうな場所とか知らないんすよ、いやマジで! いや自分も女っすけど……」

「……校長、私は結婚しています」
「脳内で、じゃろ」
 痛いところを突かれたらしく、【ゴドワルド・ゴドリー】はくるり振り向いて壁に頭をもたれさせた。

「お~ほっほっほ、どんと来いですわ!」
 わたくしにかしずきたい者はどんどん来るといいですことよ、となぜか【ミレーヌ・エンブリッシュ】は自信満々である。
 なお、箱入り娘だったミレーヌは生まれてこの方デートらしいデートをしたことがない。

「ごはんおごってくれるならどこでもいくの~! レストランとか」
 どこでも、と言いながらレストランと言っているあたり、さすがの【キキ・モンロ】といえよう。

「……」
 無言だ。全身甲冑の戦士【ネビュラロン・アーミット】は。
「いや~ん、ネビュラロンたん黙っててこわーい☆」

「そろそろアタシのところに来るって思ってましたっ」
 腕組みして【コルネ・ワルフルド】はメメルを待ち受けていた。
「いーですけどアタシは健康的なチョイスにしますからねっ! マラソンとかクロスカントリーとか!」
「それデートか……?」
 
 ★ ★ ★

 ころはセプテンバー、涼しくなってきた季節。
 メメルの思いつきによるブラインドデートがはじまろうとしている。
 どこへ行くかはあなたの自由だ。街で買い物か観光地でピクニックか、まさかまさかのクロスカントリーか!?

 お前もブラインドデートにしてやろうか……。
 お前もブラインドデートにしてやろうか!! 


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 4日 出発日 2019-09-23

難易度 とても簡単 報酬 なし 完成予定 2019-10-03

登場人物 8/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《人たらし》七枷・陣
 ヒューマン Lv18 / 賢者・導師 Rank 1
異世界:情報旅団テストピアという所に住んでいたが、とある仕事の最中に、この世界に強制転移してしまった。 普段は一人称おじさん。真面目、シリアスな場合はオレ。 本来は50手前のアラフィフおじさんだが、何故か30歳以上若返ってしまった。強制転移した経緯が原因と思われるが真偽は不明。 普段はいかに自分の得意分野だけで楽出来ないかを考えているダメ親父的な人間。 自分や同行する仲間が危機に陥ると気合いを入れて打開しようと真面目モードに。 厄介事に巻き込まれるのは嫌い。お金にならない厄介事はもっと嫌い。でも一度関わってしまったら何だかんだ文句言いながら根気よく取り組む。 やれば出来る人。でも基本ダメ人間。 恋愛事は興味をあまり示さない枯れ気味な人。超若返っても現状は変わらず。 どうにかして元の世界へ戻る為、フトゥールム・スクエアに入学。 転送、転移関係の魔法や装置を徹底的に調べる事が目下の目標。 魔法系の適性があったらしいので、雷系を集中的に伸ばしたいと思っている。自前で転移装置の電源を確保出来るようにしたいのと、未成熟な体躯のフォローとして反応速度メインの自己強化が主な理由。理想は人間ダイナモ。 転移直前まで一緒にいた仲間の女性3名(マナ、マリア、マルタ)の安否を心配している。 「はぁ~…どうしてこんな事になったんだ?…おじさん、ちゃんと元の世界に戻れるんだろうか…こんな厄介事は前代未聞だよ…トホホ」
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《甲冑マラソン覇者》ビアンデ・ムート
 ヒューマン Lv20 / 勇者・英雄 Rank 1
●身長 148センチ ●体重 50キロ ●頭 髪型はボブカット。瞳は垂れ目で気弱な印象 顔立ちは少し丸みを帯びている ●体型 胸はCカップ 腰も程よくくびれており女性的なラインが出ている ●口調 です、ます調。基本的に他人であれば年齢関係なく敬語 ●性格 印象に違わず大人しく、前に出る事が苦手 臆病でもあるため、大概の事には真っ先に驚く 誰かと争う事を嫌い、大抵の場合は自分から引き下がったり譲歩したり、とにかく波風を立てないように立ち振舞う 誰にでも優しく接したり気を遣ったり、自分より他者を立てる事になんの躊躇いも見せない 反面、自分の夢や目標のために必要な事など絶対に譲れない事があれば一歩も引かずに立ち向かう 特に自分の後ろに守るべき人がいる場合は自分を犠牲にしてでも守る事になんの躊躇いも見せない その自己犠牲の精神は人助けを生業とする者にとっては尊いものではあるが、一瞬で自分を破滅させる程の狂気も孕んでいる ●服装 肌を多く晒す服はあまり着たがらないため、普段着は長袖やロングスカートである事が多い しかし戦闘などがある依頼をする際は動きやすさを考えて布面積が少ない服を選ぶ傾向にある それでも下着を見せない事にはかなり気を使っており、外で活動する際は確実にスパッツは着用している ●セリフ 「私の力が皆のために……そう思ってるけどやっぱり怖いですよぉ~!」 「ここからは、一歩も、下がりませんから!」
《ゆうがく2年生》グラニテ・フロランタン
 ドラゴニア Lv11 / 賢者・導師 Rank 1
名前:グラニテ・フロランタン(偽名) 年齢:25歳 性別:女性 種族:ドラゴニア 外見:白い前髪パッツンのおかっぱ たれ目の青い目 色白 巨乳 性格:大人しくおっとりしていてマイペース 普段は余りわがままを言わない 家出したのを気にはしてる 本来の性格は寂しがりで無邪気 お菓子が大好き ちょっと世間知らず 服装:明治の女学生さんスタイル 日傘をさしている
《模範生》レダ・ハイエルラーク
 ドラゴニア Lv16 / 黒幕・暗躍 Rank 1
将来仕えるかもしれない、まだ見ぬ主君を支えるべく入学してきた黒幕・暗躍専攻のドラゴニア。 …のハズだったが、主君を見つけ支えることより伴侶を支えることが目的となった。 影は影らしくという事で黒色や潜むことを好むが、交流が苦手という訳ではなく普通に話せる。 ◆外見 ・肌は普通。 ・体型はよく引き締まった身体。 ・腰くらいまである長く黒い髪。活動時は邪魔にならぬよう結う。 ・普段は柔らかい印象の青い瞳だが、活動時は眼光鋭くなる。 ・髭はない ・服は暗い色・全身を覆うタイプのものを好む傾向がある。(ニンジャ…のようなもの) ・武器の双剣(大きさは小剣並)は左右の足に鞘がついている。 ◆内面 ・真面目。冗談はあまり効かないかもしれない。 ・立場が上の者には敬語を、その他には普通に話す。 ・基本的に困っている者を放っておけない性格。世話焼きともいう。 ・酒は呑めるが呑み過ぎない。いざという時に動けなくなると思っている為。なお酒豪。 ・交友は種族関係なく受け入れる。 ・伴侶を支えるために行動する。 ◆趣味 ・菓子作り。複雑な菓子でなければ和洋問わず作ることができる。
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に

解説 Explan

 ドキドキのエピソードです。
 NPCと、あるいはPC同士で半日のデートを楽しみましょう。
 暑い季節は終わったかもしれませんが、熱いのはまだまだこれからですよ!

(1)相手について
 ブラインドデート(双方とも誰とデートするのかは当日までわからない)という方式をとっていますが、知らぬはキャラクターばかりなり、ということで参加プレイヤー様は好きなNPCあるいはプレイヤーキャラクター(PC)を指定することができます。もちろん! 相手はメメルにお任せ、というまさにブラインドな選択も可能です!
 PC同士のデートの場合、ブラインドデートにする義務はありません。ただし双方がこのエピソードに参加している必要があります。

 プロローグには多数のNPCが登場していますが、ここに名の出ていないNPCでも自由に指定可能です!


(2)行き先について
 特に限定はしませんが、以下いくつかのスポットを提案させていただきます。

・クイドクアム
 学園都市にある大きな商業施設です。装備品や衣装を売る店が多数集まっており飲食店も豊富です。いわゆるショッピングモールですね。
 フトゥールム・スクエアの生徒にとっては『ど』定番のデートスポットだったりします。

・トロメイア大劇場
 この世界でも屈指の大きさを持つ劇場です。大ホールでは大がかりな芝居が常時行われていますが、付設の中小ホールでも音楽やコントなど、バラエティに富んだ演目が楽しめます。
 口べたなあなたは、とりあえず『見ている間は黙っていても大丈夫』という意味では安心なスポットかもしれません。

・フトゥールム・スクエア内
 広大な学園ですから、行ったことがないスポット、入ったことのない学食などを巡るだけでも一日過ごすことができるでしょう。高台や学術塔など風光明媚なポイントもあって、お金や手間をかけずとも穴場として楽しむことができます。
 なにより、学園内ということでリラックスできるはずです。


作者コメント Comment
 マスターの桂木京介です。よろしくお願いします。

 本エピソードは、息抜き的にデートを楽しむというお話になっています。
 もちろん相手は同性であっても性別不明であっても問題はありません。楽しい想い出になればいいですね。

 NPCと出かける場合、基本はメメルがこっそり企画したブラインドデートという形式になり、待ち合わせ場所でびっくりという展開になります。ですので一度も話したことがないNPCが相手でもまったく問題ありません。親しくなるきっかけにできそうですね。

 PC同士の場合、アクションプランにその旨をお書き下さいませ。この場合はブラインドデートでなくても大丈夫です。

 その他、ここで出ていない公式NPCか、私の運用してきたエピソードで登場したNPCであれば、指定をして下さっても大丈夫です!

 では次は、リザルトノベルで会いましょう。
 桂木京介でした!


個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
自分と同じ秘密情報部所属のタスクさんと同行。

歴史探訪というスタイルで、『魔王事変』や『勇者』にゆかりのある土地や史跡を巡り、
古老や神官など歴史や伝説に詳しい人々(または市井の人々)の話を聞き、
今後の勇者候補としての行動や勉強に役立てる。

可能であれば、以前授業『9時限目 捜索!城に潜む者(へぼあざらしGM)』で訪れた、
魔族【ノアー族】が拠点としていたサーブル城や夏に事件が頻発したアルチェなども訪れて魔王・魔族・勇者の足跡や情報を得たい。
無理であれば今回行ける範囲の場所で調査を行う。

出会う人々には礼を失さないように。
得られた情報はメモを取って記録。後日図書館などで関連項目を調べる。

アドリブ歓迎です。

七枷・陣 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
ラビーリャとデート…という建前な買い出し手伝い

【行動】
学園長に「来ないと図書館出禁にするゾ☆」的な脅迫めいた文を送りつけられ、仕方なしに図書館の調べ物からブラインドデートに参加
クイドクアムへGO
ド定番のデートスポット…へ行くわけもなく、用務員なラビーリャに学園で不足してるもの、これから必要になりそうな用度品系を聞いて、それの補充をしにホームセンター的な所へ買い出しに行こう
買い揃えて時間があれば、適当に食べ歩きできそうな屋台で買い食いもありかな?
…何となく、彼女を見てるとおじさんの知り合いの最初の頃を思い出すよ
って…遠目から冷やかす脅迫者の姿が見えるような…暇人かっ!?
SSM

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
秘密情報部のエリカ部長さんと同行。

魔王事変や勇者ゆかりの地や史跡を巡る歴史探訪
【事前調査】前日まで図書館に籠り
制限時間内に回れて
貴重な情報がありそうなところを調べ
デートプラン、というにはあまりに真面目すぎる旅程を組む

今回行ける範囲の場所を考慮しつつ
可能な限り部長さんの希望に沿う

万一荒事になれば
持てる技能を総動員してエリカ部長さんを守る
基本は討伐より防衛・逃走優先

学園の名に恥じぬよう
お話を聞く際は【信用】されるよう接し
そして感謝を忘れない【博愛主義】
得られた情報はメモを取り
後日図書館に籠って蔵書と付き合わせる

【料理】お弁当に色んな味のグラヌーゼ麦パンを用意
部長さんのお口にあうといいなあ

アドリブA

ビアンデ・ムート 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
*目的
この機会にデートについてしっかり学びましょう

*行動
会うまでどんな方かわからないのは怖いけれど、学園長が選んだ方なら大丈夫……ですよね?

お相手が完全に予想外の方でしたが、やる事は変わりません!
……ところで先生はデートとは何をするか知ってますか?

一応【事前調査】で『クイドクアム』でデートに向いてるらしい場所は調べているので、その中でネビュラロン先生が好みそうな場所を巡りながらデートをしてみます
難しいですが、先生が少しでも楽しんでもらえればそれで満足ですから
いい機会なのでデート中は先生とお話をします
プライベートに深く関わる話題は答えてくれなさそうですが、好きな事や食べ物などは教えてくれるかな?

グラニテ・フロランタン 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
むむ…む…っ!
お父様に見つかったせいで手紙が届いてしまいましたが…
なんという腹立たしい手紙なのでしょうか!
私を無能な小娘と侮っておられるのですわね!
それも好いた人も居ないだなんて…!
気になる方の一人や二人や三人居ますものー!(ムスッ

はっ!そういえば校長先生から『ブラインドデート』のお話がありましたわよね?
私も参加して明確に恋人を作ればお父様も少しは態度を軟化させるかも?
ラビーリャさんの為に理想のデートを見せてあげたいですし!

そうと決まりましたら早速参加しなくてわ♪

えっと、お相手はどちらに…
あ!貴方は…この前(シナリオで)夜にお会いしたお菓子の殿方!
ふふふ、貴方がお相手でしたら大歓迎ですわ!



レダ・ハイエルラーク 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
・デート
・警護

◆お相手
・グラニテ・フロランタンさん

◆場所
・クイドリアム

◆プレイング
・【事前調査】で大体の店を調べておく
・デート前にクッキーやマドレーヌを作って持っていく【料理Lv3】
・途中店で洋菓子を買うが、食べ歩き前提なのでベルギーワッフル等の軽いもののみ
・【会話術】で話す
・【暗視順応】【視覚強化】【聴覚強化】【危険察知】で周囲を警戒(念の為・つまづきを防ぐ等も含む)
・手元の菓子が心許なくなってきたら、店に寄って補給を行う
・グラニテさんが歩き疲れてきたと感じたら、クイドリアム内にあると思われるベンチに誘導して休憩
・行動の優先権は グラニテさん>レダ

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:3
獲得努力:3
獲得希望:3

獲得単位:0
獲得称号:---
こう言った授業ははじめてですし……お相手は先生方(GM)にお任せ

プランは一応方向性と希望場所は決めておくけど、そこはお相手のご希望も尊重し柔軟に動ければ
まだまだ学園に慣れてませんし、学園内を回るだけでも面白そうですから

まあ、他の学生さんの目に触れて、いろんな噂が立っても責任は持てませんが

学園都市が見渡せる、高いところに行きませんか?
学園の周りがどんな光景か……見たいんです

海が見えるのか
それとも、どこまでも続く地平線や山々が広がるのか

あなたは、どの方角から学園にいらしたんですか?
私は……多分、あの草原の先の山の向こう

動いたら喉も乾くでしょうし、頃合いをみて……お店でお茶でもいただきませんか?

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:5
獲得努力:5
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---
ブラインドデートな

うん、デート・・・生まれてからこのようなイベントは初めてなんだが
まぁ、どうにかなるだろ・・・

待ち合わせの目印に花かなんか持っていきたいがそれっぽいのは特級薬草位しか持ってないんだよなぁ・・・メンドイしこれでいいか
仮面の方が目立つ?
そんなことはないだろう・・・きっと。

無事合流出来たら特級薬草をプレゼントだ
自分で持ってても邪魔とか言えないしオレが花を思ってるよりも相手(多分相手女性だよな?)が持ってる方が映えるしなんとか言いくるめよう

デート自体は相手の好みに合わせて動けば問題ない・・・か?
精神分析、心理学、人心掌握学、推測辺りを駆使して楽しんでもらおうか

リザルト Result

 マジデスカ、と【七枷・陣】はうめき声を漏らした。
「ブラインドデートなんて、ナイスだと思わんか!?」
 と昨日放課後突然に、【メメ・メメル】が言ってきたのだ。これだけでもうSSM(※『そこまでにしておけよメメたん』の略)案件だというのに畳みかけるように、
「来ないと図書館出禁にするゾ☆」
 とまで言ってきたのだからSSMの二乗である。
 なお、この会話は例によって図書館内で行われており直後、ウキウキ気分で語るメメルもろとも鬼の形相の司書に追い出されることになったのも通例通りであった。……図書館出禁になるのは校長のほうなのではなかろうか。
 さてこうして、『待ち合わせ時刻と場所はこちら♪』と書かれたファンシーな水色の便箋を手に、陣はクイドクアムの中央広場までたどり着いたわけだが、そこではたと考え込む。
「人多すぎ……これでどうやって相手を探せと」
 デート日和というのか、休日のクイドクアムは待ち合わせらしき人だらけなのだった。ヒューマン、エリアル、ローレライはもちろん、ドラゴニアからカルマからアークライト、リバイバルに至るまで、年齢性別多種多様、このなかで一人一人に、校長から呼び出されたかたですかと訊いて回れというのか。
 しかし間もなく、
「あの……」
 きめ細かな褐色の肌、びっくりするほどの細身、露出度の高い服装、そして、いまひとつ生気のない瞳――水彩画のように儚(はかな)げなカルマの女性から、陣は呼びかけられたのだった。
 親しく言葉を交わしたことはないが、陣は彼女を知っていた。学園で用務員をしている【ラビーリャ・シェムエリヤ】だ。
「もしかして、今日のお相手って」
「そうみたい……ね」
 ラビーリャの手にも水色の便箋があった。
「今日は、よろしく」
「おじさんのほうこそ」
「……おじさん?」
「あ、これ一人称ね。おじさん、こんなナリしてるけど中身は中年だから。なんていうか、前世というか転生前はそうだった」
 くす、とラビーリャは微笑した。冗談だと思ったらしい。
「だとすれば、私も……正体はおばあちゃんかもしれない、よ?」
「いや、おじさんの話はホントのことで……」
「私のほうも本当かもしれない。なぜって私には、過去の記憶がない、から」
 ラビーリャは寂しそうな目をしていた。
「なんていうか、ごめん」
 陣は反射的に謝ってしまう。
 謝る必要ないよ、とラビーリャは首を振った。
「私は貴方が、うらやましい。大切な思い出がある、から」
 ラビーリャの横顔に陣は、『前世』の記憶を呼び覚まされている。かつてともに暮らしていた女性の。とりわけ、出会ったばかりの頃の。表情だけではない。たどたどしい口調、ときおりピントのずれた受け答えをするあたりも彼女と似ていた。
 そろそろ行こうか、と陣は呼びかけた。
「思い出を作りにさ」
 我ながらキザかと思ったが、こう告げたとたん、ラビーリャの表情が緩んだので良しとしたい。

 ド定番のデートスポット……へ行ったりはしない。
「不足品があるから、わりとたくさん」
 ラビーリャは学校用品の買い出しを希望した。マーケットで柵や大工道具などを買い込む。
「これだろ? 探してるペンキ缶」
「うん……持ってくれるの? ありがとう」
 いいのかな、と陣は思う。でもラビーリャは楽しそうにしているので正解なのだろう。陣としても、変にベタなところに行くより楽だし、ひな鳥の世話をしてるようで悪い気はしない。
 やがて、
「タピオカドリンクだってさ。飲む?」
 大きな包みを左右に提げているので、目線で陣は屋台を指した。
「うん」
「ええと、カルマって、普通に食べ物とか……」
「大丈夫、だよ。貴方のほうこそ、平気?」
「どういう意味?」
「だって……」
 ラビーリャは真剣な表情で言った。
「あの飲み物、入ってるから……変なつぶつぶが」
 これには陣も噴き出してしまった。
 かくして誤解は解け、陣とラビーリャとテーブルについたのである。
「今日は、ありがとう。また、行きたいな」
「買い出し?」
「うん」
「変なつぶつぶも?」
「うん」
 このときラピーリャがかすかに恥ずかしげな表情を見せた。陣はなんだか、少し得をしたような気持ちになる。
「あと……校長先生も」
「校長?」
 ほら、とラピーリャが指さした柱の陰に、メメル校長がいたのである。慌てて隠れたようだが丸見えだ。
「まったくあの暇人は……っ!」
 SSM!


 学園の叡智の宝庫、それが巨大図書館『ワイズ・クレバー』だ。
 ひとり書物に囲まれ、叡智を求める少年がある。
 赤みがかった茶色の髪、色彩の異なる左右の瞳、あどけなさの残る利口そうな顔つき。
 少年の名は【タスク・ジム】。
(あれ? メメル校長? 陣さんも巻き込まれているような?)
 タスクは振り向いて、彼らが司書の【バナーマン】女史に館外に連行されるのをしばし眺めていたが、いけない、と本に向き直った。
 タスクは事前調査中なのだ。テーマは、魔王事変や勇者に関する史跡について。明日の秘密情報部フィールドワークで効率的に、できるだけ貴重な情報を得られるよう、そのいくつかをめぐる予定だった。
 しっかりと計画を立てなくては。
 なぜって、と考える。
 こんな風にして部長――【エリカ・エルオンタリエ】と出かけるのははじめてなのだから。
(ふたりきりで)
 つい、意識してしまう。
 彼女の理知的な瞳が古代の石柱を眺めている様子を想像し、さらさらとした金の髪が風に踊るさまを思い描いて、タスクはほのかに頬を染めた。
(……!?)
 自分の頭をとんとんと叩く。
 先日部長から史跡巡りに誘われて以来、どうもおかしい。
 明日のフィールドワークは、過去の知識を得て未来に備えるためのものではないか。真面目な校外学習なのだ。少なくともエリカはそのつもりに違いない。
 なのに。
 なのにどうして、気分がうわついてしまうのだろう。

 あいにくの空だった。
 雲で覆われた薄いグレー、青いものは見えない。
 風は湿り気をおび冷ややかで、肌に直接、霧吹きされているような気になる。
 でも、
「フィールドワークにはちょうどいい天候ね」
 待ち合わせ場所にあらわれたエリカは、そう言ってほほえんだ。
「暑すぎず寒すぎずだし、風の匂いからすれば雨もなさそう。長く歩くことを考えればベストコンディションじゃない?」
「そう……ですね」
 タスクもつられて表情を緩ませる。そういう考え方もあるのかと心が明るくなった。今朝起きてすぐ、グレーの空を見上げて心を曇らせていたのだ。
「行こうよ」
 彼女のパーソナルカラー、若草色のマントをひるがえしてエリカは歩き出した。
「まずはサーブル城ね」
 グラヌーゼ地方の北西部、数ヶ月前、ガーゴイル討伐のために訪れた古城だ。以前はずいぶんと薄気味悪い雰囲気だったものだが、エリカもタスクも参加した冒険により怪物が一掃されたためだろうか、城は風景画のように深閑と周囲に溶け込んでいた。
 付近住民による案内の申し出を丁重に断って、跳ね橋を渡り城の敷地に足を踏み入れた。
 光が射し込んでくるので灯火は必要ない。
 ホールを横切って謁見の間と思われる場所を訪れ、長い長方形の食卓を見つける。
「前に来たときとは、なかの様子も一変していますね」
 在りし日をしのばせるチェストのひとつに触れ、タスクは言った。
「なんというか、おどろおどろしさが消えたような」
 ええ、とエリカはうなずく。
「これが本来の姿だったのかもしれないね」
「でも、『ノアー族』が拠点としていたんでしょう? 魔族の」
「けれど……」
 エリカはしばし、言葉を探すように視線をさまよわせた。
 朽ちたテーブルも塗装の剥げた玉座も、錆びたシャンデリアですら、もの悲しさこそあれ不気味とは感じなかった。得体の知れぬ存在がうごめいていたのではなく、たしかにここに生活していた者がいたとわかったから。
「私には魔族が、それほど私たちとかけはなれた種族だったようには思えないの。少なくとも、ここを見る限りでは」
 だからこそ恐ろしいとも言えるのだ。
 エリカはそう考える。
 自分たちとはまるで共通点のない存在ではなく、食事もするし明かりも使う知的種族が、かつて世界を転覆させようとしたこと、恐怖による支配を求めていたこと、その事実に戦慄を覚えずにはいられない。
 何が彼らをそうさせたのか。
 また彼らはこの先、何を起こそうとしているのか。

 夏に事件が頻発したアルチェ地域には、見るべき史跡や古戦場がたくさんあった。
 タスクの調査が明らかにしたのは、魔王大戦の時代にも、この地域では大規模な闘いや事件が多数あったということだった。原因は特定できないものの、魔王と勇者、いずれの勢力にとっても、アルチェが重要な土地のひとつだったという推測は成り立つ。
 当時の勇者が拠点としていたといわれる、小さな村も訪れている。
「いまはのどかな風景ですよね」
 小高い丘の牧草地、羊の群れを眺めながらタスクは涼やかな風を胸に受けている。
「うん、だけどほら」
 エリカは何気なくタスクによりそった。
 彼女の長い髪が揺れ、ふわっとタスクの頬をなでた。
(部長さん……いい匂いがする……)
 たとえるならレモングラスのような。
 タスクはまた、心がうわつくのを覚えていた。
 けれどエリカはタスクの様子に気付かぬように、まっすぐ指を伸ばし眼下の光景を示すのだった。
「ここからなら、付近の村はもちろん、都市へつつく街道も一望できると思わない?」
「たしかに。攻めがたく守りがたい……戦略的にも優位な地ですね」
「二千年前の勇者も、ただやみくもに強いだけじゃなかった。地の利を活かして戦う人たちだったのよ。考えてみれば当たり前のことね」
「勇者たちは伝説だから、どうしても神がかり的な強さがあったと語り継がれがちですけれども、本当は僕たちと同じ存在のはずですものね」
「うん。伝説は伝説として尊重するけれど、勇者も、もちろん魔族についても、その実像を学んでいきたいな」
 と告げたところで、エリカはぽっと顔を赤らめた。
「……ごめん、もしかして、聞こえた?」
「え? なにがです?」
 かすかにお腹が鳴ったのだと、エリカは小声で明かしてくれた。
 むしろ慌てたのはタスクだ。
「ごめんなさい気が利かなくて! もうお昼すぎてましたね。ランチにしましょう」
 グラヌーゼ麦パン、焼いてきたんです、と告げていそいそとバスケットを開く。

 レジャーシートをひろげ並んで座って、香ばしい麦パンを口にする。
「とてもふわふわ、それにゴマがたっぷりなのね」
「このトマトとスクランブルエッグを挟むと絶品なんですよ。お好みならマスタードマヨネーズも」
 サンドする食材をタスクはたくさん用意していた。ハムやハンバーグはもちろん、レタスやチシャ菜も豊富、チーズにいたってはゴーダ、チェダー、クリームチーズの三種類もあった。じっくり煮た豆入りの、ダルカレーのペーストもある。
 パンそのものも複数用意した。ゴマをまぶしたプレーンに加え、ジンジャーを混ぜて焼いたものは刺激的で、くるみ入りはカリカリと歯ごたえが良い。黒砂糖入りのものは甘くてまるでお菓子だ。
「すごい! 作るのに時間がかかったでしょう?」
「部長さんのお口にあえば、といろいろ工夫するのが楽しかったので苦にはなりませんでした」
「そうなの? ありがとう」
 カップ入りの紅茶を受け取り、エリカはゆっくりと喫する。
「平和で穏やかで……こんなに世界は美しいというのに」
「はい」
 美しいのは間違いない、とタスクは心の中で繰り返した。タスクにとってその『世界』には、エリカ部長も含まれている。
「魔王復活をもくろむ動きが、このところちらちらと見えるようになった」
「ですね、華鬼事件のときにも存在を感じました」
 そうよと言ったとき、エリカはわずかに眉を怒らせていた。
「華鬼事件は花見の頃、アルチェの事件がつづいたのはリゾート時期だった……楽しい催しを潰すような負の動きが出るのはどうしてなのかしら」
「みんなが浮かれているときにこれを台無しにするような動きをぶつけて、感情の振れ幅を大きくしているのかもしれません」
「鋭い着眼点ね」
 感心したようにエリカは言った。
「感情の振れ幅、そこからエネルギーでも生み出そうとしているのかも。ありがとうタスクさん、いいヒントをもらったように思う」
「そんな……たまたまですよ」
 恥ずかしそうにタスクは頭をかいた。
「それに今のは僕が、部長さんのように考えてみたから出たアイデアかもしれません」
「私のように?」
「エリカ部長さんは僕の憧れです。部長さんの背中を追いかけているうちに、こんな風に考えられるようになったのかもしれませんから……」
「そう面と向かって言われちゃうと、照れくさいな」
 でも言ってもらえて誇らしいよ、とエリカは言った。
「世界には少しずつ危機が迫っているのかもしれませんが」
 タスクは言った。
「これからも一緒にがんばりたい、勇者を目指す心を共にしていきたい……そう思っています」
「私も同じ気持ちよ」
 エリカは紅茶の残りを飲み干した。
「食後は、付近で一番古い街道を歩いてみない?」
「はい」
 次の機会には、とエリカはふと思った。
(タスクさんのことも知りたいわね)


「ブラインドデートもひとつの社会勉強だよチミィ」
 とむちゃくちゃなことをメメル校長に言われたというのに、【ビアンデ・ムート】は素直に信じることにした。
 指定された時間に校門前、休日ゆえ閑散とした場所で待つ。
(会うまでどんな方かわからないのは怖いけれど、学園長が選んだ方なら大丈夫……ですよね?)
 やがて金属の擦れ合う音が聞こえた。
 白い全身甲冑が姿を見せる。大柄ではないものの威圧感は巨木並み、フルフェイスの兜からのぞく眼光は赤い針のよう。教師の【ネビュラロン・アーミット】だ。
「ええと」
 ビアンデは『まさか』の可能性を千に一つも思わず訊ねた。
「こんにちは先生。私、校長先生に指定されてここで待っているんです。付近で誰かを探している人を見ませんでしたか?」
「私だ」
「先生が学園内を巡回していらっしゃるのはわかります。私が訊きたいのは……」
「だから私だ」
「え?」
 うなるようにネビュラロンは言った。
「校長に命じられた。言っておくが志願したわけではないぞ」
 えーっ!?
 ビアンデは膝から崩れ落ちそうになった。
 ネビュラロン先生と遊びに行けと!? ふたりだけで!?
 晴れた空をビアンデは振り仰ぐ。そして心の中で両手を合わせメメルに問いかけるのである。
(お相手交換はできませんかっ……!?)
 するとたちまち、空にメメルの顔が画大写しになったのである。きっと得意の魔法で、事前に仕込んでいたに違いない。
 メメルは言った。最高の笑顔で。
「チェンジ不可だゾ☆」

「クイドクアムで一日過ごせということだ」
 心から嫌そうにネビュラロンは言った。そうしてビアンデなどあたかも存在しないかのように大股で歩きだす。
 これを追いつつ、不思議ですねとビアンデは思った。
(ネビュラロン先生のほどの人でも、校長先生には逆らえないなんて)
 メメルに何か大きな借りでもあるのだろうか。
 とはいえデートはデートなのだ。ビアンデにはデートというものの経験はないが、ふたりで出かけて遊ぶことだというイメージはあった。
「……ところで先生はデートとは何をするか知ってますか?」
「知っていたこともあった」
 あった? 気になる言い回しだ。だが本当なのだろうとは思う。現在は顔はおろか髪の毛の先すら見せぬ甲冑騎士だが、かつてネビュラロンも、自分と同じように乙女だった時期があるはずだから。
「どこか行きたい場所はありますか」
「武器か防具でも見に行くか」
 元(?)乙女としてはトキメキ度ゼロなチョイスだが、ビアンデのほうも普通のガーリー趣味ではなかったりするので目を輝かせた。待ってましたとばかりに言う。
「はい! 盾とか見たいですね!」
 シールドの勇者ビアンデはここでも受け身なのだ。

 クイドクアムは武器防具を置く店も豊富だ。各店舗を見て歩く。
 剣に鎧兜、槍やボウガンそれに盾、手持ちのお金では買えないものばかりだが、戦士のビアンデとしては実に興味深い。
 ネビュラロンも同じらしい。機嫌が直っていくのがわかった。
「こういうラージシールドは、昔は負傷者を運ぶ担架にも使ったそうですね」
「盾を持って帰るか、盾に乗って帰れ、という言い回しがあるな」
 意外なくらい言葉を返してくれる。
「先生はやはり刀剣が好みですか」
「嫌いではない。だがもともと私は、射撃のほうが得手だった」
 ネビュラロンにしては饒舌だ。嘘はなさそうである。
「驚きました。射撃がお得意だったとは」
「利き手を失うまでの話だ」
 まずいことを言ったかもと思ったが、ネビュラロンは意に介していないらしい。さらに言う。
「それに、この世界の銃火器は遅れている。剣のほうがよほどいい」
 そうですかと言いかけてビアンデは気付いた。
「――この世界の?」
「この地域の、の言い間違いだったな」
 気になる。ネビュラロンの口調に、いささかの焦りを感じたからだ。
 過去を捨てた、とネビュラロンは言っていた。どこか別世界と言えるくらい、遠い場所から来たのだろうか。
 だがまるでごまかすかのように、
「次はメシだ」
 ぷいとネビュラロンは屋台が集まっているほうへ向かったのである。
 ビアンデはクレープを食べたが、ネビュラロンは甲冑のマスクの間から器用に、ストローでタピオカミルクティーを飲んだだけだった。
「先生面白いです!」
「……受け狙いではない」
 珍道中となったが、いくらか先生と親しくなれた気がする。


 ボウルに卵を割り入れてほぐす。
 分量通りの砂糖を足し、均等になったところでレモンの皮とミルクを加えた。
 そこに薄力粉とベーキングパウダーを足して手早く丁寧にかき混ぜるのだ。ボウルに心地好い音が立つ。
 すべての過程で伝家の宝刀、泡立て器が活躍していることは言うまでもない。
 よし、とつぶやくと【レダ・ハイエルラーク】はマドレーヌの焼き型を火にかけた。焼き型にはすでにバターが塗ってある。
 終わったら次はクッキー作りだ。
 喜んでくれるだろうか、とレダは思う。
 なにぶん相手がわからないので、洋菓子が好みかどうかも当然わからない。
 ブラインドデートだとメメル校長は言った。
 誰と会うことになるかは、当日までのお楽しみだと。

「むむ……む……っ!」
 便箋を持つ手がぷるぷると震えている。
 なんと腹立たしい手紙だろうか。
 普段温厚な【グラニテ・フロランタン】も、これには腹を立てずにはいられなかった。
 いろいろあってグラニテは、所在を実家につきとめられてしまった。そうして父親から手紙が届いたわけだが、これが大層不愉快な内容なのであった。
 心配している、早く帰ってほしい……といった内容であれば情にほだされる可能性もあったかもしれない。
 ところがそういうウェットなものではなかった。正反対だ。
 手紙の中で父親はグラニテを世間知らずの小娘であるかのごとく扱い、『好いた相手もおらぬであろう』と揶揄して政略結婚の道具となるよう促したうえ、『そなたにはそれくらいしかできまい』と結んでいたのである。
 お父様はなにもわかっていらっしゃらない!
 グラニテは頭から湯気を上げる。
「私とて、気になる方の一人や二人や三人いますものー!」
 だからといって父親に今すぐ、こちらの殿方が、と紹介できるわけではないというのが悲しいかな現状だ。
 しかしここで、はっ! とひらめいた。
 先日グラニテは、メメル校長が呼びかけていたことを思いだしたのである。ブラインドデートというらしいが……。
 私も参加して明確に恋人を作れば――グラニテは思う。
 お父様も少しは態度を軟化させるかも?
「ならば早速参加しなくては♪」

 その日グラニテは日傘を差して、クイドクアムの中央広場で相手を探す。
「えっと、お相手はどちらに……」
 さすが大規模マーケット、人出は相当のものがあったが、メメル校長が用意したピンクの便箋を手にしている相手はすぐに見つかった。
 すらりとした立ち姿。黒装束。手袋も被っているフードも黒。だがそれだけに、泉のように澄んだ青い瞳が目を惹く。
「あ! 貴方は……この前、夜にお会いしたお菓子の殿方!」
 レダもすぐに気付いて目元を和らげた。
「先日は世話になった」
 彼女がくんくんと鼻を鳴らし、甘い香りがします、と言ったときの表情を覚えている。
「ふふふ、貴方がお相手でしたら大歓迎ですわ!」
「あぁ、よろしく」
 レダはフードを脱いだ。漆黒の髪がはらりと垂れる。
 わぁ、とグラニテはため息をつくように言った。
「この前は夜だから気付きませんでした。きれいな髪の色……」
「そうか? 気にしたことはなかったが」
 軽く咳払いしてレダは言う。
「グラニテの髪色こそ美しい。新雪のようで……絣模様の服にも合っている」
 まあ! と嬉しさと気恥ずかしさでグラニテは左右の頬に手を添えるのである。
「お上手ですこと!」
「え……ああ、それは、どうも」
 レダはとっさの反応に困った。お上手、とはどういう意味なのだろう。どうやら褒められているようだが……?
 やはりまだ世の中にはわからないことが多い、そんなことをレダは思うのである。彼女からもなにか、学ぶことができたらいいのだが。

 特に目的や行くべき場所があるわけではない。賑わう休日の大通りを、レダとグラニテは並んで歩いた。こうやって市場のエネルギーに接しているだけで、なんだか足取りもかろやかになる。
「もしかして今日も、お持ちではありませんか?」
「うん……?」
 と言いかけてレダはすぐに合点がいった。
「わかった。お菓子のことだ」
「甘い香りがしますもの、今日も」
「さすがだな。ご名答だ」
 レダは紙包みを手渡した。破るようにしてグラニテがこれを開くと、ほこほこした外見のクッキーが出てくる。大判で、クマさん型になっていた。
「かわいい♪ 食べるのがもったいないくらいですわ」
「試してみてくれ」
 口にしてグラニテはまた驚く。甘いだけじゃない。香ばしいだけでもない。ザクザクした小気味いい食感だったのだ。
「オートミールを材料に加えてある。歯ざわりが良くなるのはもちろん、小麦粉だけのクッキーよりも低カロリーだし栄養価も高い」
 おいしい! とグラニテは断言して、あっという間にひとつ平らげてしまう。
「これならいくらでも食べられそうですわ!」
 なおグラニテは、摂取カロリーはほぼ胸にいく体質なのでそのあたりは心配無用なのである。

 ファンシーショップや土産物店をのぞき、街角の大道芸に拍手して、合間合間にレダのマドレーヌ、それも尽きたので購入したワッフルなどを食べ歩く。
「クイドクアムのこと、お詳しいのですのね?」
「そうかな」
「だってレダさん、ほとんど迷わずスイスイ案内して下さいますもの」
 それは、とレダは口元を緩めた。
「事前にしっかりと調査をしてきたからだ。校長に言われたんだ、『相手をちゃんとエスコートせんといかんぞい、チミィ☆』と」
 ぷっ、とグラニテはふきだす。そしてしばらく口元を押さえ、呼吸が苦しくなるくらい笑っていた。
「なにかおかしなことを言っただろうか……?」
 デート前に下調べをしておいたという話は、一般的には隠しておくべきだったのか――いささかレダは焦ったが、さにあらず。
「レダさん大真面目に校長先生の口まねされますんですもの。しかもそれがそっくりで……」
「あぁ、それか。そんなに似てたかな」
 レダは安堵した。受けたことも、ちょっと嬉しかった。

 楽しい時間が過ぎるのは早い。
 クイドクアムの出口付近、休息のベンチにレダがグラニテを案内したときには、もう陽は沈みつつあった。
 楽しかった、と笑顔でグラニテは言う。
「今日は、レダさんのことをたくさん知ることができたように思いますわ。お菓子作りがお得意なだけではなく、勤勉で、紳士で」
「私も同じ気持ちだ。グラニテのことを知ることができた。話していてとても楽しかった。グラニテはきっと、とても頭がいいんだろう」
 えっ、とグラニテは目を丸くする。
「本当にそう思われます!?」
 そして思わず、半分立ち上がるほど腰を浮かせた。
「あぁ。聞き上手だし、知的好奇心も強いように思う」
 嬉しい、と胸に手をあててグラニテは言うのである。
「そのお言葉、お父様に聞かせてさしあげたいですわ」
「お父上に?」
「ええ。私のこと、世間知らずの無能な小娘と書いてよこしたのですよ、先日手紙で」
 レダにうながされ、グラニテは手紙の内容を一通り語った。といっても、『好いた相手もおらぬであろう』の部分は恥ずかしいので省いている。
「ふむ」
 レダは顎に手を当てた。
「それはもしかしたら、お父上なりに奮起を促したのかもしれないな」
「まさか」
「なぜって、家に戻れとは書かれていなかったのだろう? 世間知らずとあえて書いたのは、『勉強に励め』という言葉の裏返しかもしれない」
「!」
 グラニテは、うんと濃く淹れたミントティーを一口したときのような顔をした。
「お父様がそのような深慮遠謀をするとは思えませんわ……」
 と言ってはいるもののグラニテ自身、自分の言葉を信じ切れていない。止まりかけている独楽のように、ぐらぐらと揺れ動いている。
 彼の言うとおりかもしれない。
 グラニテは家では、政治の勉強をさせられてきた。よき統治者となるように、ということだった。けれども唐突に政略結婚としての嫁入り話が出てきて、これでは知識を活かせないと大いに反発したものである。
 その気持ちを父は理解していたというのか。
 だから連れ戻そうともせず、さらに学問せよ、と発破をかけるべく『世間知らず』呼ばわりしてきたというのか。
 だとすれば、
(『好いた相手もおらぬであろう』という文面も――?)
 家名に縛られず大いに恋愛せよ、が真意だというのか。
 グラニテは黙って空を見上げる。
 いつの間にか、砂粒のような星が出ていた。
 レダはあえて何も言わずにいた。彼女が自分の心を整理していると理解していたから。しかし、頃合いを見て、
「そろそろ戻ろうか」
 と声をかけたのだった。
「秋は寒暖差が激しい。冷える前に部屋まで送ろう」
 すっくと立つ。ごく当たり前のように手をさしのべた。
「ありがとうございます」
 グラニテはレダの手を取った。これもごく、当たり前のように。
 星明かりがほのかに、学園への道を照らしていた。


 木漏れ日の下で、待っているのがその人だろうか。
 そうに違いない――【ベイキ・ミューズフェス】は胸の前で手を握りあわせた。
 涼しげな表情をした少年だ。整った顔立ち、色白で美少年といっていいだろう。膝を出した短パン姿だが清潔な印象がある。
「こんにちは、あなたがメメル校長先生に言われて来た……?」
「ああ、【サラシナ・マイ】ってんだ。よろしく頼まあ」
「よろしくお願いします」
 深々と頭を下げる。深緑の髪がゆったりと揺れた。
 互いに簡単に自己紹介する。マイは上級生で、少し前まで問題児として『プリズン・スクエア』と呼ばれる学園内更正施設に入っていたという。
「だからまあ、反面教師みたいなもんだ。マネしないようにな」
「そんなに自分を卑下しないでください」
 髪と同じ、深い色の瞳でベイキは言った。
「こうやって来て下さっただけで、私にとっては素敵な先輩です」
「そうか……うん、ありがとな」
 あまり言われ慣れていない言葉だったらしく、マイは鼻の頭をかいた。
「行くか、まだ来て日が浅いんだろ? 学園内を案内するぜ」
「お願いします」
 と歩みかけたところで、ベイキは木の根につまづいた。小さく声を上げてよろめくも、
「おっと」
 マイが即座に手を伸ばし、ベイキの手を握って支えた。もう片方の手はベイキの腰に当てている。
「大丈夫か?」
「助かりました」
 なんとなく見つめ合う格好になった。数秒、そうしていたが、
「そうだ」
 とマイが言った。
「オレ、こんななりしてっけど女だからな」
 だから触ってるけど安心してくれ、というようなことを告げたがそれにかぶせるように、
「ええ、わかっています」
 ベイキはにこりとして言ったのだった。
「そうなのか? オレよく男と間違えられるんだけど」
「手が、小さいですもの」
 ベイキを立たせると、なるほど、とマイはしばらく自分の手を見つめていた。

 学園の敷地を歩く。
 学舎はそれこそ無数に存在し、建物ひとつひとつもきわめて大きい。学食や購買、寮のたぐいもほうぼうにある。
「すげーだろ。学園内の移動でも、グリフォンを使うことが珍しくないんだ」
「学園そのものが街のようですね」
 歩いている学生をちらほら見かけた。その大半はマイを知っているらしく、手を振ったり声をかけてきたりする。
「マイさんは有名人なんですね」
「悪名高いだけかもよ」
「いいんですか? 他の学生さんの目に触れて、いろんな噂が立っても……」
「へへ、すごい美人と歩いてた、って噂されるんならむしろイイかもな」
「またまた」
 ベイキはくすくすと笑った。

 こんなに高いなんて!
 屋上で足をすくませる。風も強い。ベイキはしがみつくようにマイの腕をつかんでいた。
「学園都市が見渡せる高いところに行きませんか?」
 と希望して、ベイキは魔法塔のひとつに案内されたのだ。
 ここからだと校舎は文庫本くらいだし、歩いている生徒なんてアリより小さい。鳥たちだって、はるか低い場所を飛んでいるではないか。
「ちょっとしたもんだろ?」
「かなり迫力がありますね」
 ベイキは四方を見渡した。
 森や山、湖、合間合間に学舎が点在しているのがわかる。
 海のきらめきも。久方ぶりに目にする碧さだ。
「海、好きなのか?」
 ずっと見ていることに気付いたようで、マイが声をかけてきた。
 ベイキはうなずく。
「生まれた街にも海があったし、海賊に捕まったりと嫌な思い出も多いけど……やっぱり、海は嫌いになれないんです」
 だって、と髪をなびかせながら言う。
「海って綺麗なものも穢らわしいものも……分け隔てなく抱いて受け入れてくれますから。それでいて、容赦なく牙を剥く荒波のような激しい一面もあります」
 この学校みたいだな、とマイがつぶやくのが聞こえた。
「あなたは」
 とマイに振り返りベイキは問いかけた。
「どの方角から学園にいらしたんですか?」
「オレ?」
 マイは困ったように頭に手を当てた。山のほうを指す。
「あっちかな。実はあんま思いだしたくねーんだ、故郷のこと。悪ぃがオレはこの話題パスな。で、ベイキは?」
「私は……たぶん、あの草原の先の山の向こう」
 ベイキは目を細め、巡礼者として歩み来た方角を見つめていた。
 なんとなく言葉を失って、ふたりはそうしてしばし黙っていた。
 やがてベイキが、夢の中にいるような口調で言った。
「喉、乾きませんか? 下りてお店でお茶でもいただきません?」

● 
 難題に直面中の【仁和・貴人】である。
「ブラインドデート、行っといで☆」
 昨日メメル校長はこう言い放ち、貴人が返事もしないうちに待ち合わせ場所と時間を書いたメモを手に押しつけて姿をくらませたのだった。
(……生まれてからこのようなイベントは初めてなんだが)
 すっぽかすわけにはいかないだろう。相手も同様の体で待っていたとしたら、ひどすぎる話ではないか。
 まぁ、どうにかなるだろ、と腹をくくってその朝、貴人は念入りに歯磨きしてから部屋を出た。
 せっかくだから、と目印がわりに花束を持参している。
 といっても、
(それっぽいのは特級薬草位しかないんだよなぁ……)
 だが『メンドイし』という理由で、薬草を束にしてブーケ状に包装紙とリボンでとめたものを貴人は手にしているのである。
 指定された場所は自然公園だ。緑が多くて気持ちいい。入り口にさしかかると、
「よう☆」
 メメルが立っている。遠目でもはっきりわかる巨乳、しかし珍しくサッシュベルトを巻いたチェック柄のワンピースを着用している。靴もヒールのあるものだ。帽子も家に置いてきたらしい。
「校長?」
「メメたんでよいぞ☆」
「じゃあメメたん、待ち合わせ場所にまで登場なんて、冷やかしですか」
「冷やかしなら隠れてするわい」
「ではどうして?」
 すると校長は両手を腰のところ組んで、もじもじしつつ言ったのだった。
「オレサマがデートの相手だと言ったら……ビビる?」
「帰らせていただきます」
「待てやコラー!」
 メメルは無助走でドロップキックを貴人に見舞った! まともに浴びて貴人は吹っ飛ぶ。
「オレサマも夢見るお年頃! たまにはキャッキャウフフもしたいわえ☆」
「自分で夢見る年頃って……だいたいメメたん実年齢は……?」
 しかしドロップキック第二弾を危惧して貴人はやめた。
「たまにはこういうおめかしもしたいわけだよ、女子として」
 ドヤァとメメルはスカートを両手で左右にひろげて見せる。
「たしかにイメチェンには成功してます」
「かわいいと言え」
「命令か! まあ、かわいいと言えんこともないです」
 実際わりとかわいいとは思ったが、ど頭にプロレス技を繰り出す相手を素直には褒めにくい。
「それにしても貴人たんよ、デートの場に仮面はなかろーて」
「目印になっていいんじゃないですかね。あ、目印といえば」
 貴人は花束もとい薬草束を差し出した。キックを受けてもとっさに守り切ったので無事だ。
「これ、プレゼントです」
 アホかと怒られるかと思いきや、
「へへ、ありがと♪ 花とは気がきいとるな」
 男子に花をもらうなんていつ以来かなー、と嬉しそうにメメルは受け取ったのである。
「白い花もついてますがメインは薬草ですけどね」
「その注釈は気がきいておらん」

 デート自体は相手の好みに合わせて動けば問題ないかな――というのが貴人の事前予想だったが、相手が悪かった。
 メメルは公園に浮かべたボートにジェット噴射の魔法をかけ、
「わーははは☆ 亜光速ボート登場!」
「ギャー!」
 デート中のカップルウオッチングに行こうとし、
「やつら木陰に消えたぞ! カップル警察として行くほかない!」
「自分もデート中では……?」
 あげく、茂みにエッチ本が落ちてないか探そうなどと言い出した。
「ロマンティックよな?」
「どこが!」
 今も、
「あの丘に登るぞー!」
 などと号令するメメルに丘陵に猛ダッシュさせられ、貴人はゼエゼエと肩で息をするはめになったのだった。
「……全然デートっぽくない。これぞメメたん、マジメメたん……」
 登りきった貴人だが、メメルの姿がないことに気がついた。
「おーい」
 見れば中腹あたりで、メメルはへばって座り込んでいるのだった。
「なにやってんです」
 降りていくと、疲れたと彼女は言う。
「やっぱ踵(かかと)のある靴でダッシュはキツいな~」
「当たり前でしょ」
 さっとメメルは手を出した。
「でもてっぺんには行きたい。手を引いてくれ☆」
「あなたもいい大人でしょうが」
「嫌ならおんぶでもいいよ☆」
 豊かすぎるバストのメメルを背負うと、どうなるのか貴人は少し想像してみた。
「行きますよ」
 と告げてメメルの手をとり、貴人は丘を登るのだ。
「えへへ、やっぱ優しいな貴人たんは」
「メメたんをほっとけないだけです」
 手をつないで自然公園を歩く。
 この光景がまさしくデートだということに、貴人はまだ気付いていない。



課題評価
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課題報酬:0
デート日和のセプテンバー
執筆:桂木京介 GM


《デート日和のセプテンバー》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2019-09-19 00:04:40
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。
当初は先生の誰かと同行しようかと思っていたけれど、
お誘いを受けたから、今回はタスクさんと一緒に行ってみようと思うわ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 2) 2019-09-19 00:38:36
勇者・英雄コースの、タスク・ジムです。
よろしくお願いします!

今回はですね~、久しぶりに、とあるイタズラを仕掛けるつもりなんです。

デートというワクワクできゃっきゃうふふの授業に、
ガッチガチの戦闘用装備で参入し、ガチの調査プランを記載して
幸せカップルを横目に、延々と世界のなぞに迫り続ける…
そんな二人がいたら、面白いなあ、と思い、挑戦してみることにしました。

このヘンテコ企画のパートナーは、秘密情報部のエリカ部長さんです。
調査先は魔物の巣窟サーブル城や、事件が相次いだアルチェ、はたまた図書館に籠って調べもの三昧など色々候補は出てますが、絞りきれていない状況です。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 3) 2019-09-19 06:08:11
教祖・聖職コースベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
こう言った授業ははじめてですし……お相手は先生方(GM)にお任せも面白そうかなと思ってます。

プランは一応方向性と希望場所は決めておくけど、そこはお相手のご希望も尊重し柔軟に動ければ。
まだまだ学園に慣れてませんし、学園内を回るだけでも面白そうですから。

まあ、他の学生さんの目に触れて、いろんな噂が立っても責任は持てませんが。

《模範生》 レダ・ハイエルラーク (No 4) 2019-09-19 09:09:21
黒幕・暗躍専攻のレダ・ハイエルラークだ。
宜しくな。

私はグラニテと共に参加するつもりだ。
ゆっくりと各地を回るのもいいだろうな。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 5) 2019-09-19 20:47:06
>タスクさん
わたしはこの世界の歴史に興味があるから、名勝・史跡巡りをしてみない?
行った先で、昔の事に詳しい長老さんや神官さんなんかに話を聞いてみたいわ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 6) 2019-09-20 12:28:44
>エリカ部長さん
いいですね!そうしましょう。
「名勝・史跡巡り」一見、ありそうなデートに見えるのも、面白いですね♪

万が一のための戦闘用装備と戦闘プランですが…
幸か不幸か、ハロウィーンイベント授業の出発日が同日なので、
同じ装備・作戦を流用出来そうですね。
僕は、両・片手の剣・盾いずれかで検討中ですが、
二人で行動するなら、僕は防御に寄せた方が良いかもしれませんね。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 7) 2019-09-20 13:31:24
魔王・覇王コースの仁和だ。
よろしく。

今のところ、パートナーもいなければ行くとこも決まって無いノープランってヤツだ。


ブラインドデートって言うのなら相手にお任せしても楽しめるんじゃないのか・・・とな。

《人たらし》 七枷・陣 (No 8) 2019-09-20 21:28:45
賢者・導師コースの七枷陣だよ。よろしくねぇ。
おじさんは…デートってやる柄でもないんだけどねぇ…。
まぁ、適当にやるさ。

《甲冑マラソン覇者》 ビアンデ・ムート (No 9) 2019-09-21 12:01:43
挨拶が遅れましたが、勇者・英雄コースのビアンデ・ムートです。皆さんよろしくお願いします

私も具体的な行動はさほど決まってませんが、せっかくの機会なので色々勉強させてもらおうかなと思ってます

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 10) 2019-09-21 20:47:12
ビアンデさんも、勉強目的で来られたんですね。
いつも努力されてて、頭が下がります。
お互い、良い学びが得られるよう、ベストを尽くしましょうね!

お相手が決まってる方、ブラインドを楽しむ方、色々ですね。
自称☆報道勇者としては、スクープの予感にうずうずしています♪

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 11) 2019-09-22 18:05:15
いよいよ今夜出発、ドキドキですね!
ひとまずプランは仕上げましたが、何かあれば調整します。

もうひとつが大変なことになってますが、
デートも大事ですものね(笑)

《ゆうがく2年生》 グラニテ・フロランタン (No 12) 2019-09-22 20:25:16
私も挨拶が遅れてごめんなさいですわ;
賢者・導師コース所属、ドラゴニアのグラニテ・フロランタンですわ!

…………両親をギャフンと言わせる為にも私には恋人が必要なんですの!
レダさんと回りたいと思ってましたのでよろしくお願いしますわ♪

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 13) 2019-09-22 22:56:33
グラニテさん、初めまして!勇者・英雄コースのタスク・ジムです。
ご両親をギャフンと言わせる、というのがどういうご事情か、記者としては気になりますが…
お相手はレダ先生なんですね。美味しいデートになりそうですね。

レダ先生、ご無沙汰いたしております。
先生に料理を習ったおかげで、今回のデートにはお弁当を用意してみることにしましたよ♪

そんなわけで、エリカ部長さん、楽しみにしててくださいね!

さて、ドッキドキのブラインドデート、もしくはオープンデート(?)
いよいよ出発ですね。
プランの出し忘れ等不測の事態に十分気を付けて、
楽しむにしろ、勉強にしろ、そして恋愛も、お互い全力を尽くしましょう!


《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 14) 2019-09-22 22:56:48