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おいでませ勇者様:春の個人MEN DANG


ストーリー Story

 ドアをノックする。ちょうど2回。
 きみの、握った手が軽く震えている。
「どーぞー☆」
 たいへんお気楽な声が返ってくるけれど、きみのほうはそうもいかない。失礼します、と言ったものの、舌はいくらかもつれている。
 入る。
 イスを引いて座る。
 殺風景な小部屋だ。正面の席、ななめがけに座っているのは、フトゥールム・スクエアの学園長【メメ・メメル】だった。春の午後ゆえ眠いのか、まぶたが半分おりている。
「よろしくお願いし……」
「あーはいはい」
 さえぎってメメルは言った。
「面接試験といってもだなぁ、はっきしいって形式的なもんだから。普段どーり答えるがヨロシ。むしろ素のチミが見たいので自然に自然に、な♪」
「はい」
 きみは少しリラックスした。といっても、メメル校長ほど露骨にリラックスはできないけれど。
 じゃあまぁはじめるか、と言ってメメルは眼鏡(老眼鏡? ダテ眼鏡?)をかけて手元の書類に目を落とす。
「えー、まずは『本校を志望した理由』と、『本校に入学したら何をしたいか』について教えてくれたまい☆」
「……志望動機、ですか?」
「そういうこと♪」
 困った。きみの胃はきりきりと痛み、額には汗が浮かびはじめた。膝までふるえはじめる。さすがメメル校長、というべきだろうか。まさかこんな質問が来るとは思ってもみなかった。
「あ、あの僕……」
「なんじゃあ? もちっと大きい声で話してくれいや」
「僕、在学生なんですけどっ!!」 
 えっ、とメメルは眼鏡をかけなおして手元の資料を見た。
「あれ? 今日は学年末の個人面談だったな。オレサマ違う書類もってきちゃった♪ てへっ、メンゴ☆」
 ぺろりと舌を出して、進級おめでとうとメメルは言った。
「じゃあ、この一年で学んだことを教えてくれりんこ☆」
 ……学んだこと、それは『メメル校長の行動は予測不可能だということ』と、きみは言おうと決めた。

 ☆ ☆ ☆

 真昼のグラウンド……の一角に設けられた障害物競争のコース。
「はーいじゃあ、その網をくぐってロープに飛びついて~」
 首からホイッスルをぶらさげた状態で【コルネ・ワルフルド】先生は言う。
「で、ロープを上まで昇りきったら、壁を乗り越えてジャンプして着地、そこから丸太の橋をダッシュで渡って飛び石に乗る。リズミカルに石を踏んでいって最後は、小麦粉の海に隠されたアメを手を使わずに取るよ~」
 簡単でしょ? とコルネは言うが、網は有刺鉄線みたいだし吊り下げられたロープの長さは身長の五倍はあるし、泥沼にかけられた丸太の橋は奈落みたいな高さに設置されているではないか。飛び石の下にいたっては剣山だ。最後の小麦粉の海だって、プールくらいあったりするという過剰なおもてなし精神が発揮されているのである。
 ぐっと拳を握ってコルネは勇気づけてくれる。
「大丈夫っ、キミならやれるよ!」
 やれるのか?
「アタシも併走するから、面談もついでにやっちゃうよ!」
 マジデスカ?
 もちろんマジらしい。入学早々すごいことになりそうだ。
 ……あと、コルネ先生の交代要員だという、あそこに控えている白い全身甲冑の人がやたらとおっかないのですが。

 ☆ ☆ ☆

 男は、どかっとカウンター席に陣取る。
 真昼の酒場、客はまばらだ。それでも、アウトローや賞金稼ぎ風の連中、傭兵らしき姿がちらほらとうかがえる。
 そのすべてが、男と目線を合わさないように顔をそむけた。
 それほどまでに、このルネサンスの男に黒い威圧感があったからだ。魔物でも背負っているかのような。
 痩せぎすの体。汚れた服。くすんだ銀色の髪に狼の耳。眼光はまるで、研ぎ澄ませた匕首だ。
 男はカウンターに何枚かの硬貨を並べた。
「これで提供できるだけの食い物をくれ。あと、水だ」
 男の目の前にショットグラスが置かれた。テキーラが注がれる。
「酒はいらん。そこまでの金はねぇ」
 しかしバーテンは震え声で、あちらのお客様からです、と告げた。
「……良い子の学園生がこんなとこ来ていいのか」
 視線を滑らせ片眉を上げて、面白くもなさそうに男は言う。
「てめぇらとは休戦中だ。飯くらい食わせろ」
 礼も言わずに【ルガル・ラッセル】はグラスをあおった。
「話がしたいだと? なら、もう一杯だ」

 ☆ ☆ ☆

 きみの肩に手が、ぽん、と置かれた。
「……教えて」
 平板なその口調は【ラビーリャ・シェムエリヤ】のものだった。
 放課後の帰路、出し抜けに背後を取られたので、きみの心臓はバクバクだ。
 しかも、
「作り方、教えて……」
 などと彼女は言う。きみの頭はさらに、無数のクエスチョンマークで埋められてゆく。
 何を? ときみは問い返した。
「こども」
 子ども!?
「の、好きそうな料理の、作り方……」 
 そういうことか。
 でも、ときみは考えざるを得ない。
 なぜ自分に?

 ★ ★ ★

 波乱の初年度を経た二年生たちよ。
 たくさんの期待といくらかの不安を抱いている新入生たちよ。
 春だ。面談の時間だ。
 教師、上級生、市井の人たちあるいは旧敵……?
 きみと差し向かいで話したい、あるいはきみから語りかけた相手との、一対一の面談がはじまる。
 相手はきみに質問するのか、それとも逆か。
 丁々発止のやりとりか、暴投連発&命がけのキャッチボールか、きみの過去が明かされる一幕となるのか。
 などと考えても仕方ないかもしれない。
 なぜってその相手はもう、きみの目の前にいるのだから!


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 4日 出発日 2020-04-17

難易度 とても簡単 報酬 なし 完成予定 2020-04-27

登場人物 8/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《自称「モブ」》チョウザ・コナミ
 ヒューマン Lv34 / 村人・従者 Rank 1
「よーこそお出ましゆーしゃ様。 ザコちゃんの名前?…あー、チョウザ・コナミ。 お気軽気楽に『ザコちゃん』って呼んでくれていーよぉ? 面倒だったらこの記憶はまとめてポイして経験値にしたって、 全然丸っと了承了解?」 「ゆーしゃ様の近くでただ在るだけがザコちゃん。 モブへの用件ならいつでも呼びつけ招いちゃってよ。 何かの名前を呼び続け連呼とか?森の浮浪者とか? はたまた魔物に狙われ襲われな第14人目位の村人とかぁ?」 ■■ 名前:蝶座 小波(自称 身長:176cm 実年齢:20歳(自称 瞳の色:エメラルドグリーン 髪色:カラフルなメッシュ入りのマゼンタ 肌色:魚の文様が頬にある日本人肌 髪の長さ:編まれ端を結んだロング その他外見特徴:古びた布の服に大量の装飾品。 常に腰か手元に携帯する水煙草の瓶は『預かり物』だとか。 頭や腕に謎の斑模様で派手なスカーフを巻く。 一人称:ザコちゃん・(ごく稀に)あーし 二人称:『ゆーしゃ様』等の平仮名表記の立場+様 特徴+様、(稀に)名前+様 他 呼称:「ザコちゃん」呼びを望む。 「モブ」も反応するが、それ以外だと気づかない事が多い。 口調:投げやりで適当な話し方。敬語は一切使わない。 似た言葉や語感を繰り返し、まるで言葉遊びのように話す。 口先は冗談とでまかせ、ノリとハッタリで構成される。 貴族や東の国関係に妙な嫌悪を持つ。 魔法を扱う気は微塵も無いとか。 他者からの詮索、視線、物理接触、色恋話を避ける節がある。
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《甲冑マラソン覇者》ビアンデ・ムート
 ヒューマン Lv20 / 勇者・英雄 Rank 1
●身長 148センチ ●体重 50キロ ●頭 髪型はボブカット。瞳は垂れ目で気弱な印象 顔立ちは少し丸みを帯びている ●体型 胸はCカップ 腰も程よくくびれており女性的なラインが出ている ●口調 です、ます調。基本的に他人であれば年齢関係なく敬語 ●性格 印象に違わず大人しく、前に出る事が苦手 臆病でもあるため、大概の事には真っ先に驚く 誰かと争う事を嫌い、大抵の場合は自分から引き下がったり譲歩したり、とにかく波風を立てないように立ち振舞う 誰にでも優しく接したり気を遣ったり、自分より他者を立てる事になんの躊躇いも見せない 反面、自分の夢や目標のために必要な事など絶対に譲れない事があれば一歩も引かずに立ち向かう 特に自分の後ろに守るべき人がいる場合は自分を犠牲にしてでも守る事になんの躊躇いも見せない その自己犠牲の精神は人助けを生業とする者にとっては尊いものではあるが、一瞬で自分を破滅させる程の狂気も孕んでいる ●服装 肌を多く晒す服はあまり着たがらないため、普段着は長袖やロングスカートである事が多い しかし戦闘などがある依頼をする際は動きやすさを考えて布面積が少ない服を選ぶ傾向にある それでも下着を見せない事にはかなり気を使っており、外で活動する際は確実にスパッツは着用している ●セリフ 「私の力が皆のために……そう思ってるけどやっぱり怖いですよぉ~!」 「ここからは、一歩も、下がりませんから!」
《1期生》アケルナー・エリダヌス
 ローレライ Lv20 / 勇者・英雄 Rank 1
目元を仮面で隠したローレライの旅人。 自分のことはあまり喋りたがらない。適当にはぐらかす。 ふとした仕草や立ち居振舞いをみる限りでは、貴族の礼儀作法を叩き込まれてるようにもみえる。 ショートヘアーで普段は男物の服を纏い、戦いでは槍や剣を用いることが多い。 他人の前では、基本的に仮面を外すことはなかったが、魔王との戦いのあとは、仮面が壊れてしまったせいか、仮面を被ることはほとんどなくなったとか。 身長は160cm後半で、細身ながらも驚異のF。 さすがに男装はきつくなってきたと、思ったり思わなかったり。 まれに女装して、別人になりすましているかも? ◆口調補足 先輩、教職員には○○先輩、○○先生と敬称付け。 同級生には○○君。 女装時は「~です。~ですね。」と女性的な口調に戻る。
《奏天の護り姫》レーネ・ブリーズ
 エリアル Lv29 / 芸能・芸術 Rank 1
いろいろなところをあるいてきたエルフタイプのエリアルです。 きれいな虹がよりそっている滝、 松明の炎にきらめく鍾乳石、 海の中でおどる魚たち、 世界にはふしぎなものがいっぱいだから、 わたくしはそれを大切にしたいとおもいます。

解説 Explan

 教師や先輩など、NPC1名との個人面談がはじまります。
 どんな状況での面談か、想定される質問と回答、その際の行動などをアクションプランとしてご投稿下さい。予想通りか予想外か、いずれにせよ会話と行動のからまった掌編として提供させていただきます。

 いわゆる学年末面談、入学前面談を想定していますが、もちろんそれ以外のパターンも自由です。プロローグも例にすぎませんので自由にご提案ください。
 ふと道ばたで出会って立ち話したり、一緒にトレーニングで汗を流したりするのも面白いと思います。

 代表的なNPCを以下に記しますが、ここに書かれていない人、登録されていないNPCでも桂木京介が書いたことがある人なら誰でも指定可能です。

【メメ・メメル】
 学園長です。こちらを茶化しているのか仲良くなりたいだけなのか、はたまた教育者らしく教え導こうとしているのか……読めません。
 たとえば『年上と年下どっちが好み?』とか、『猫に生まれ変わったら何がしたい?』とか、学園生活に関係なさげなことも訊いてくるでしょう。
 自分の『まだ表にしていないけど明かしたい』設定がある方はメメル校長に暴露(?)してもらうというのもアリです。

【コルネ・ワルフルド】
 新入生担当の教師です。
 基本優しい人なので意地悪な質問はしてきませんが、脳筋なところがあるので、プロローグのようにアスレチックコースに挑みながらの面談もあるかもしれません。

【ルガル・ラッセル】
 学園教師ではありません。というかむしろ、全校集会『彷徨う黄昏に宵夢を』では敵だった存在です。現在は休戦を宣言していますが、決して味方ではないことにご注意ください。
 プロローグの状況は一例ですが、ひょんなことで出会った、という展開で出会うことになるでしょう。
 自分のことは語りたがらず、秘密を尋ねると口を閉ざしがちです。
 怒らせると勝手に席を離れてしまう可能性もあります。


作者コメント Comment
 桂木京介です。よろしくお願い申し上げます。
 先生や上級生、はたまた宿敵(?)との面談がはじまります。

 まだ入学したばかりの新入生さんは、面談というスタイルでご自身のキャラクターを紹介するお話にしてみてはいかがでしょう?

 二年目に入った在学生のかたは、NPC一名と交流するシナリオととらえてもよし、まだ秘密だった自分のPCの設定をあきらかにしていくシナリオとしても楽しくなると思います。

 といってもこれは遊び方の一例です。どんな内容でも構いません。できるだけご希望に添うような物語にしてみたいと思っています。

 この文章を読んでいるあなた、そうあなたです!
 あなたのご参加を楽しみにお待ち申し上げております!




個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
ルガルと話す

聞きたい事は山ほどあるけど、質問責めにしても疲れるだろうし
トラウマに触れてしまって気分を害されても本意ではないから
今回は情報を得る事より自分の境遇や考えも話しながら信頼関係を結ぶ事を目指す

ガスペロに虐待されていた様だったけど身体の方は大丈夫?

事情があってベカジボ村やリーバメントを襲撃する事になったのだと思うけれど
国などの警察機関からは凶悪犯として追われているのではないかしら?

安住の地を得られず逃げ続けるのは、とてもつらいと思う
だったら、学園で更生するということにすれば世間も納得させながら生活や身分も保証されて安心じゃない?

他にやりたいことがあれば、手を貸すこともできるかもしれない

チョウザ・コナミ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
記憶強奪ルネサンス様じゃーん。やっほー。
ザコちゃんもお水ね。食べ物はにぼしあるからいらない。
折角だしお気楽世間話でもしよーよ。なーんにもしらないし。お互い。
敵対?そーいうのいいって。ぶっちゃけどーでもいいし、結果論の成り行きだし。


色々きーていい?ほら、ザコちゃんお金使うの嫌いだから全部出すしー、話し相手にさ。
[硬貨交換]ってやつ?これ。

聞くからには、聞いた質問には答えていくかな。
黙秘権も使っていーよ。
ここにはゆーしゃ様いないし。モブならいーでしょ?ふふ。

好きなのは?ザコちゃんは自由と個性とお魚。

嫌いなのは?ザコちゃん貴族。


生まれってどんなの?
ザコちゃんは貴族。ほんとほんと。反吐っちゃうでしょ?

フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆面接(?)相手
ルガル・ラッセル

◆希望状況と行動
オープニングとほぼ同じ感じで。
場と不釣り合いにならないよう一応『変装』
(『ライア』の顔に戻っただけともいう)

酒は自らボトルもってどん、といきますが
ゴタゴタされたくない雰囲気なら場所移動はしますが。

割と喧嘩腰ですが話としては礼と近況報告。
心身の力不足の痛感、それと目標ができたのと。


目標…つまり『ルガルを救う』ですが。
救われる謂れはないって言われるかもしれませんが

「救いがいらない人はこんなとこでクダまいてないでしょ?」

と。

ルガルの近況も聞きたいけど無理そうなら一度手合わせを頼む。
休戦中?品行方正な学生なんて目の前にいないだろ?と変装中なのをいい事に

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
「コルネ先生!」

と干しブドウを食べている先生の元を訪れ、面談を申し入れますわ。私が武神への高みの途上にいるのか、無双の境地に至る道を歩めているか。示すのは言葉ではなく我が拳。という事で先生との組み手を所望いたします

目で追うのも難しい先生の動きをなんとか視覚強化で認識し、やせーの勘と危険察知で致命傷を避け、攻撃を当てられたら新陳代謝で耐えつつ魔牙で攻撃。体力が危なくなったら逆境興奮を使用し、祖流還りから即断即決で真中正拳突きを先生に放ちますわ。勝てるとは思いませんが一発でも有効打を入れたいですわ!

面談後倒れる前に一つだけ先生に質問したいと思いますわ。その後は拳で語り合った満足感を感じつつ倒れます

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:300
獲得努力:50
獲得希望:5

獲得単位:0
獲得称号:---

ビアンデ・ムート 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
ネビュラロン先生に決闘式面談のお時間をもらいたいと頼みます

面談場所は以前と同じ
でも今度は自分から申し出た事ですし、今の私の決意と持てる全てをぶつける心構えで挑みます

面談中は『太陽の盾』と技能を駆使して全力で防御
その間に、夏休みに故郷の友達に自分の目指す道を拒絶され、前の面談で先生に誓った決意が揺らいでしまったと告白
あの時の全ては嘘ではないし先生の言葉を甘く考えたつもりはなかったけれど、払われた手の痛みでようやく実感したとも伝えます

それでも今の道を諦めるつもりも、その子と分かり合えないままでいるつもりもない事
絶対にお互い納得できる答えを見つけ出します
そのためにも、もっと、もっと強くならなきゃ……

アケルナー・エリダヌス 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
剣の稽古を済ませ、宿舎に戻ろうとしたら誰かが呼び止める声が
たしか貴女は……【ミレーヌ・エンブリッシュ】先輩ではありませんか

折角お会いしたのでお茶でも……との先輩のお誘いですので、お誘いをお受けして
先輩もお立場上、内密の話もあるそうで、先輩ご贔屓の個室のお店でお茶を頂くことに

「何故、貴方は王様・貴族コース専攻でございませんの?」
と尋ねられたら、

『私はただの旅人、それでも、誰かのお役に立ちたいだけですよ』
とはぐらかし

「何故、立ち上がって仇敵を討たれませんの!」
と言われても、

『仮にそのような立場だとしても……自身の仇敵を討つ私怨で、多くの人々の命や財産を危険に晒す訳にはいかないでしょう』
と返して

レーネ・ブリーズ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
エピソード「BLACKOUT」の事件で出会えた【マジック・トム】さんとおはなししたいです。

「黒い霧」に体をうばわれあやつられてた、そしてその間の記憶もない。

なら、ねらわれたきっかけが体をうばわれる前になかったかきいてみます。

また、記憶がなくても体をうばわれたときにいたところから
さがしてそのあしどりをたどりたいです。

もちろん、それは記憶をうばうひどい事件のてかがりをさがしたい、
わたくしの想いです。

でも、ねらわれた理由がわからなければまたねらわれてしまうかも。

またそのあとのあしどりがわからないとその事件の被害者さんたちが
トムさんを犯人とおもいこむかも。

だから、わたくしは真実をさがしたいんです。

リザルト Result

 外はぎらつく陽光だが、酒場の中は暗く、しんと冷えていた。
 カウンター席、男は視線を滑らせ片眉を上げる。
「てめぇらとは休戦中だ。飯くらい食わせろ」
 礼も言わずに男はグラスをあおった。
「話がしたいだと? なら、もう一杯だ」
 どん、と音が立った。
 テキーラを瓶ごと、【フィリン・スタンテッド】が男の眼前に据えたのである。
「どうぞ。ご所望なら注いであげるわ、【ルガル・ラッセル】。注ぎ先はグラスでも、アンタの頭でも」
 鼻で笑うとルガルはグラスを突きだした。
 フィリンの服装を一瞥する。変色した綿シャツ、黒ずんだカウボーイハット、けばだったレザーのケープをポンチョのように体に巻いていた。
「学園生らしくねぇ格好だな」
「むしろ私に不釣り合いなのは、学園生としての服装のほう」
 濡れた刃のような口調を聞き流し、ルガルはテキーラを口元に運ぶ。
「どうして俺だとわかった? てめえとは、この間の騒動では顔を合わせてねえ」
「人狼状態が解けたことは皆に聞いていた。判別したのは、雰囲気」
「雰囲気?」
「ルガル、アンタと私は似ている」
「偽物ってところがか?」
「いいえ、臆病者ってところよ」
 はじかれたようにルガルが席を蹴り、殴りかかってくることをフィリンは覚悟した。岩のような拳が自分の頬にめりこむことも。
 しかし実際は、
「かもな」
 と言ってルガルは、琥珀色の液体を喉に流し込んだだけだった。
 分厚い肉と半熟卵のベーコンエッグ、黒パンの塊がカウンターに置かれた。溶けかけたバターがパンの表面を滑り落ちる。焦げ目のついた卵黄が汗をかいている。しかしルガルは手を付けない。
「で、何の用だ」
「礼を言おうと思って」
「先日の話ならお門違いもいいところだ。むしろ俺の手落ちだ。もっとはっきり言うべきだったぜ……ガスペロの野郎の正体は、あの人間の中に籠もっている影だと」
「その話じゃないから」
「じゃあ何の話だ」
「教えてもらったことへの感謝を。アンタは私が『フィリン』ではないと見抜いた。そして、本当の自分を受け入れろと叱った。まあ、言い方はもっと雑だったけどね……そのことへの礼よ」
「覚えてねえな」
「おかげでよくわかったわ、過去は隠せても捨てられないって。だから私は過去を背負ったまま強くなってみせる」
「そうかい」
 もう何杯目になるだろう。ルガルはグラスを傾けた。
「それと、もうひとつ私には目標がある」
「言ってみろ」
「……いいの?」
「自分から言い出した話だろうが。今やめられたら寝覚めが悪い」
「私はアンタのことを、救う」
 ルガルは低い声で笑った。こめかみに指を当てる。
「寝言は寝て言え」
「心身の力不足は自覚してる。けれど私だって、いつまでも同じところにとどまっちゃいない。前会ったときと同程度と思わないで」
 ルガルはもう笑っていなかった。フィリンの言葉を受け入れるでも、頭ごなしに否定するでもなく、射貫くような目を彼女に向けた。
「誰が救ってくれって言ったよ。ええ!?」
 遠目に彼らのやりとりを見ていたバーテンダーは、剣でもつきつけられたように青ざめ、話の内容を聞き取れていないのに後じさった。ルガルとフィリンのいる場所を中心に、空気が落ちくぼんだように感じたのだ。ひどく重く、暗く、それなのに煮えたぎるような熱気をともなって。
 フィリンの肌は粟立つ。二の腕から頚筋に至るまで。
 店から逃げ出したいという本能的欲求に、フィリンは拳を握りあらがった。
 すなわち、ルガルの目を見て言い放ったのである。
「救いがいらない人は、こんなとこでクダまいてないでしょ?」
 視線を外したのはルガルのほうだった。
「……くだらねぇこと言いやがる」
 瞬間、ルガルから放たれていた圧力は霧消した。
「つきあってよ、一戦。私は自分の力を試したい」
「酔って殴り合う趣味はねえ。帰りな」
「そう言わずに」
「帰れ。俺は酒が忙しい」
 ルガルは汚れた指先で皿を引き寄せた。もうフィリンを見もしない。
 静かにフィリンは息をついた。
 怪我をする覚悟で来た。下手をすれば命にかかわるかもと。
 しかし今日はこれまでのようだ。
「また会うと思ってる」
 と言ってフィリンは帽子をかぶり直し、スツールから降りたのである。
 出口で振り返ってフィリンは、ルガルの腰に仮面のようなものが括りつけられているのを見た。
 あれは何だろう? 次に会ったときにでも聞き出したい。

 ●

 午後から嵐になった。
 朝方晴れていたのが嘘のようだ。横殴りの雨が降り、強風に窓枠がガタガタと揺れる。木の葉が一斉に吹き流される様子に、めくり忘れていた日めくりカレンダーを思いだした。
 寮の自室。イスを引いた状態で両腕を机に、組んだ腕の上にあごを乗せ、【仁和・貴人】は窓の外を眺めている。仮面も机の上だ。まぶたは半分閉じていた。
 本日は休日なり。することはない。本を手にするのも億劫だ。当然、あんな状態の外に出て行く気はさらさらない。
「何かあったような気もするが……今日じゃないだろ」
 ぽつんとつぶやいた。あくびと呼ぶにも小さすぎるものを、ため息のようにふっと吐き出す。
 しかしここで晴天の霹靂。
「おい!!」
 爆発的な音。背後だ。ドアが内側に蹴破られたのだ。ノブが壁にめり込む。ハンガーが制服ごと落ちる。壁掛けの静物画すら、ものの見事に落下した。
 ふりむいて貴人はそこに一人の人物を見た。
 全身しとどに濡れ前髪から雫がしたたっている。とんがり帽子もぺしゃんこだ。白いシャツはぴったりと体に張り付き、ボディラインを否応なく強調していた。一歩、二歩と進むたびに、モップがけのような音が立つ。
 ローレライでないとすれば彼女は、外を歩いてきた学園長【メメ・メメル】に違いない!
「何の日だ」
 半月型の目でメメルは問う。
「今日、何の日だぁ!?」
 貴人は慌てて仮面を顔に押し当て、仮面の口ではなく目の位置から声を漏らす。
「ええと……」
 思いだした。
「個人面談の日……でした、よね?」
「しかも面談相手はこのオレサマだぁー! このうすらポンチ! やはり忘れとったかーっ!」
 メメルは両腕を振り上げ、ガオーと勢い込んで貴人につかみかかった。
 貴人は反射的にイスから飛び降りて避ける。
「ぐにゅっ!?」
 どこから出しているのかわからない声で叫ぶと、メメルは胸から先に机にぶつかった。
「おにょれ逃げるな! 『水から上がったワンちゃん』攻撃をくらえ!」
 メメルは振り返ると腰から上をぶんぶんシェイクし水滴を部屋中にまき散らす。貴人は冷たい速射砲を浴びた。
「うわっ! メメたんお許しを……! 忘れていたことは謝ります! 謝りますからっ!」
「悪いと思っとるならタオルのひとつでも持ってこんかー!」

 メメルは頭をタオルで包み貴人のワイシャツを着て、彼の座っていたイスの上で膝を組んでいる。腰から下はむきだしで、当然の結果として素足だ。濡れた服はとりあえず、室内にさしわたしたロープに吊していた。
 一方で貴人のほうは、反省の意を込めて板の間に正座しているのだった。いささかうなだれている。
「このたびはまことに面目ないです……」
「まー、うっかりというのは誰にでもある。そもそも、校庭にある伝説の樹の下で面談、などと設定したオレサマにも手落ちはあった、うん」
 メメルはタオルを首にかけて言った。
「そのことは良いとしてだな~、貴人たんよ」
「はい」
「このごろ少し、たるんでおりはせんかえ?」
「今日みたいにですか?」
「いや今日に限らず、だよ」
 コホンと空咳してメメルは続けた。
「なんというか、ここの生活にも慣れきってしまったというかー。いい意味での緊張感が最近の貴人たんにはないような気がするんだなぁ~、オレサマは」
 貴人は顔を上げた。メメルはすでに足を解いており、両肘を自身の膝に置いて貴人を見つめていた。
 普段通り、いや、普段にまして綺麗な水色の目だ。
 けれどもいつになく、真剣な眼差しだ。
 年中笑っている口元が、今日はまっすぐだった。
 見透かされている――貴人は直感的に思った。
 このごろ自分が、元の世界に戻ることを半ば以上あきらめかけているということを。
 そうして、学園や学園の人物に依存しきっているということを。
 ほとんど甘えているといっていい、とりわけ――。
「貴人たんには」
 その思いを断ち切るようにメメルは言った。
「後輩の模範となってもらいたいのだよ。とくに、同じような境遇の者のな」
「オレが模範に……?」
「チミならできるだろ☆」
 メメルは笑みを浮かべていた。
 自信をもってイエスとは言えないけど、と前置きして貴人は言った。
「なれるよう、努力はします」
 少し、気持ちが楽になった気がした。
「よろしい!」
 と言ったとき、メメルはすっかり日ごろの彼女に戻っている。
「ところでコーヒーいれてくれんか☆ あと茶菓子な!」
 
 ●

 あの日から、一年。
 静かに息を吐き、【ビアンデ・ムート】は分厚い扉を両手で押し開ける。
 屋内型コロシアム『ブラーヴ・オブリージュ』、学園生には体育館とも呼ばれるこの扉を、あの日もこうやって開け放ったものだ。
 アリーナを見おろす客席は、数千とも一万とも言われる膨大な数を収容可能だが、いまはまったくの無人だ。
 いや、アリーナも無人なのだ。
 たった一人、【ネビュラロン・アーミット】を除いては。
「自分から『決闘式面談』を希望するとはな」
 押し潰されそうだ。立っているだけなのにその人は、巨人のような圧を与えてくる。
 全身甲冑、肌は一切見せず、目の色すらうかがえない。しかし声だけは若い女性のそれだとわかる。
「辞退するなら今のうちだ」
「しません」
 ビアンデは決然と『太陽の盾』を真正面に構えた。
「ご指導、よろしくお願いします!」
 ネビュラロンは左手の木刀を振り上げた。
「その前に」
 いいでしょうか、とビアンデはためらいがちに言う。
 問答無用とネビュラロンが踏み込んでくる可能性はあった。そのほうがこの教師らしい。しかし、
「言ってみろ」
 ネビュラロンは腕を下ろしたのである。
「先日、休みの時期に」
 数ヶ月も前のことなのに、この記憶のページを繰るたびビアンデの胸は痛む。冷たい棘(とげ)を、やわらかな心臓に突き立てられているかのように。
「帰郷したんです。故郷の友達に会いました。彼女……【マリエラ】は、私がフトゥールム・スクエアに入学するきっかけとなった人です。魔物からマリエラを守ろうとして、私は大怪我を負った。己の力不足を痛感して、学園に願書を出しました」
 再会したマリエラがビアンデに示した反応は、拒絶だった。
「私はマリエラに『怖い』と言われました。彼女は、私が変わっていくことが恐ろしいというのです。危険に飛び込んでいく私はおかしいと」
 言葉に詰まり、ビアンデは数秒間隔をあけて続けた。
「私の決意、昨年先生に誓ったものが揺らいでいます。嘘ではないし、先生の言葉を甘く考えたつもりもなかったけれど、マリエラに払われた手の痛みで……実感したのかもしれません」
「ビアンデ」
 ネビュラロンは静かに言った。
「お前の意志が見えん。友人に怖いと言われた。決意が揺らいだ――それでお前はどうしたいのか」
 木刀を投げ捨てた。腰の鞘に手を伸ばす。
 抜刀の音がコロシアム内に谺(こだま)した。
「問う」
 ネビュラロンは地を蹴る。
 刃がうなる。両手大上段の一刀。ビアンデは無我夢中で盾を突き出す。
 火花が、散る。
 甲高く重い金属音。
 強い。受け損ねていたら頭蓋が割れていただろう。
「お前の人生の主人は誰だ!」
 後じさりつつもビアンデは叫んだ。
「私です!」
 押し返す。
「お前の未来を決めるのは!」
 袈裟懸けの一刀。
「私です!」
 受けた。また下がるがやはり押し返す。
「お前は何者だ!」
 水平の一刀。盾を回転めぐらせかろうじて受けた。
「ビアンデ・ムート! 勇者を目指す者!」
 もう退かない。
「よくぞ申したり! ならばビアンデ・ムート、お前は友人に誉めてもらうために勇者を目指すのか!」
 ビアンデの視界が縦にぶれた。
 足払い。ビアンデは脛を蹴り飛ばされていた。ネビュラロンがはじめて剣以外の技を使ったのだ。
「違います!」
 だが倒れない。本能的な動きで盾を頭上に突き上げた。
 読みは正しかった。どん、と天からネビュラロンの一撃が落ちた。
「私は」
「聞こえん!」
 ネビュラロンに手加減という言葉はないのだろうか。上、右、左、ビアンデが仇敵であるかのように連打を浴びせる。ビアンデはすべて紙一重のラインで防いでいた。
「私は、この道を諦めるつもりはありません!」
 ありったけの声で叫ぶ。
 自分が自分であるとは思えなかった。
 ビアンデは攻撃に転じたのだった。正面からの剣を受け、薙ぎ払うように盾を払った。
「理解してもらえなくても、私はマリエラたちを護りたい!」
 剣を水平にして一撃をしのぐと、ネビュラロンは後方に跳躍する。
「いつかはわかり合えると、願っているから」
「いいだろう」
 ネビュラロンは剣を鞘に収めた。
「その気持ちを忘れるな」
 面談は終わりだ、とネビュラロンは告げた。
「……ありがとうございました」
 立つ力が残っていない。ビアンカは地に膝をついている。
 迷いがなくなった、とは言わない。
 それでも、進む先が見えたようには思う。

 ●

 荒れ地にたたずむ露天商、焦げ茶色に日焼けした店主らしき老人は、目を閉じたまま動かない。
 日よけをさけて背をかがめ、ルガルは水入りの瓶に手を伸ばす。
「ザコちゃんもお水ね」
 しかし横合いから、さっとこれをつかんだ手があった。
「記憶強奪ルネサンス様じゃーん。やっほー」
「……また学園生かよ」
 ルガルは刃のような視線を【チョウザ・コナミ】に向ける。けれどチョウザは、町でばったり友人に会ったかのような口調を崩さない。
「また、って?」
「昨日会った」
「ふーん」
 と言ったチョウザの前に、黙って老人が手のひらを上にした。老人は、もう片方の手で炒り豆の入った袋を示している。
「食べ物はにぼしあるからいらない」
「俺も水だけでいい。手持ちがねえ」
 硬貨を取り出そうとするルガルを、チョウザは謎めいた笑みとともに止めた。
「せっかくだしお気楽世間話でもしよーよ。なーんにもしらないし。お互い」
「てめえらは敵だ」
 チョウザは笑って手を振る。
「そーいうのいいって。ぶっちゃけどーでもいいし、結果論の成り行きだし。ほら、ザコちゃんお金使うの嫌いだから全部出すしー、話し相手にさ」
 代金を老人の手に置くと、チョウザは水瓶をひとつと豆袋をルガルの手に押しつけた。
「色々きーていい? 『硬貨交換』ってやつ? これ」
「それを言うなら……いや、いい」

 菩提樹だろうか、大きな木の根元にルガルは座る。チョウザも同様にした。
「飲みきったら問答は終わりだ」
「ところでこの瓶返さなきゃだめみたいだよ? リサイクル、リサイクル」
「なら、瓶を返したら終わりだ」
「社会のルール守るのね、ルネサンス様」
「……悪目立ちしたくねぇだけだ」
 言い方に険がある。
「聞くからには、聞いた質問には答えていくから。黙秘権も使っていーよ。ここにはゆーしゃ様いないし。モブならいーでしょ? ふふ」
 ルガルは返事をしないが、かまわずチョウザは続けた。
「好きなものは?」
「知ってどうする?」
「知りたいだけ。ちなみにザコちゃんが好きなのは自由と個性とお魚」
「俺は肉だ」
 ぼそっとルガルは答えた。いい感じ、とチョウザは続ける。
「嫌いなのは? ザコちゃん貴族」
「フトゥールム・スクエアの生徒、とくに、うざい女」
「きびしーなー」
 とは言うがチョウザはまるでこたえていない。
「生まれってどんなの?」
「黙秘だ。ろくでもない、とだけ言っとく」
「気が合うねー、ろくでもないとこおんなじ。ザコちゃんの生まれは貴族。ほんとほんと。反吐っちゃうでしょ?」
「貴族が何で」
 と言いかけたがルガルは瓶に口をつけて黙った。
「今の自分の軸ってなーに?」
「軸なんざねぇ。てめぇは?」
「ザコちゃんの軸は自由。欲しかったのはそれだけだから。で、欲しいのは?」
「職を見つけなきゃな」
 このままじゃ干上がる、とルガルは言った。
「ザコちゃんが欲しいのは自由」
「さっき、自由を軸にしてるって言ってたろ」
「おんなじって? ちがうちがう。意味のほう。ぶっちゃけ、欲しいんだけど、正体がわかんないんだよね、これ。いまだに正体つかめてなくってさあ。わかる?」
「わかってたまるか。ただ……」
 ルガルは袋を手にする。炒り豆を数個つかんで口に放り込んだ。チョウザに袋の口を示すが、チョウザは首を振って煮干しを取り出した。
「ただ、自由ってんなら今は、前よりはましな気分だ」
「それからー」
「そろそろ最後にしろ」
 ルガルは空瓶を逆さにして振った。
「いーよ。じゃあ……結局ルネサンス様って何者なの?」
 いささか逡巡したようだが、ルガルは短く告げた。
「元傭兵だ。裏切るよりも裏切られるほうが専門だったが」
「そのルネサンス様を裏切らなかったのが……?」
「それ以上言うな。てめぇこそ何者なんだよ」
「ザコちゃん? ……さあ、なーんだろーね。わかんない。ただの模倣、ただの延長戦生命なだけだからさぁ。そのうちわかんのかもね。分からないまま消えるかもだけど」
 諦念か開き直りか、喉の奥からチョウザは笑みを漏らした。
「それはそれで特になんもないよ。それが結果と時のめぐりってだけ」  
「最後のとこだけは同感だ」
 ルガルは瓶を手に立ち上がる。腰に炒り豆の袋を結わえつけた。豆と同じ位置に、聖女をかたどった仮面が揺れている。
「その仮面についても黙秘?」
「ああ」
 瓶を露天商に返すと、ルガルは足を止めることなく歩み去った。 



 学食の片隅、時刻は正午を少し過ぎた頃。
 茶碗にこんもり盛られたのはご飯、いや玄米、いやいやレーズンだ!
「いっただきまーす♪」
 両手を合わせ【コルネ・ワルフルド】は、これをかきこむ。これが主食にしてメインディッシュ、至福のひとときここにあり。
「コルネ先生!」
 背後から声をかけられコルネは、水をぶっかけられた猫みたいに飛び上がった。
「学園長!? 干しブドウはミネラルたっぷり鉄分も豊富で、栄養バランス的にも……って」
 なんだ、とコルネは胸をなで下ろした。銀の髪、瑠璃の瞳、コルネと似た形、けれども雪山の色した頭頂の耳――声をかけてきたのは【朱璃・拝】だったのだ。
「お食事中失礼しました」
 立てた左掌に右拳を当てた姿勢で一礼、いわゆる抱拳礼(ボウチェンリィ)を示して朱璃は言う。
「そろそろ個人面談の時期です。私は先生に面談を申し入れますわ」
 明瞭、一点の曇りもないさわやかな口調だ。
「そういうことなら」
 椀を置くとコルネは立って抱拳礼を返した。といっても見よう見まねなので左右の手が逆だがそこはご愛敬だ。
「喜んで応じさせてもらうよ☆」
 頬にはごはんつぶならぬ干しブドウつぶがついたままだが、それもまたご愛敬である。

 床の間には、鬼の頭部ほどもある『武』の一文字が書かれた掛け軸がかかっている。
 武道場、朱璃とコルネは向かい合っている。コルネは白い武道着、朱璃は赤だ。
「面談、とは面と向かって語り合うことと聞き及びます。私はコルネ先生と語り合いたいと思いますわ」
 ただし使うのは言葉ではなく、拳だ。
 わかってる、と言わんばかりにコルネはうなずく。
「いざ!」
 虎のような構えとともに、朱璃は右脚を踏み出した。
 山が動いたような気迫だ。
 武道の心得がない者であれば、朱璃の一歩だけで戦意を失っただろう。
 コルネは微笑をたたえ、春の小川のごとくゆるやかに防衛の構えを取る。
 悠揚に見える動作だが違う。朱璃は、コルネに隙を見いだせない。
 しかしためらってはいられない。
「参ります!」
 朱璃は間合いを詰めた。
 拳、拳、二打を浴びせ膝、オーソドックスだが苛烈に攻める。
「いい動きしてる☆ 鍛錬を怠ってないようだね」
 コルネは余裕だ。攻撃をすべて寸前で受け流した。それも、のれんを払うように軽く。
「私の番♪」
 鼻歌でも唄うようにしながらコルネは、電光石火の攻めに転じた。
「!」
 朱璃は息を呑む。
 鞭のよう。それも無数の。
 同時に四方から打擲されているかと錯覚する。目で追うのも難しい。あらかじめ視覚を高めていてこれである。防ぎきれない。コルネの一撃が当たるたび、皮膚が焼け骨がきしむようなダメージが走る。
 これは先生からの問いかけ……!
 訊かれている。
 この一年、何を学んだのかと。
 どれくらい成長したのかと。
 試されている。
 私が武神への高みの途上にいるのか、無双の境地に至る道を歩めているのかを!
 朱璃は踏みとどまり反撃する。魔牙で攻勢、空気を抉(えぐ)る音すら野獣のごとく。
 けれど通じない。足をかけられ体勢を崩される。
 まだまだ、とつぶやくとコルネは朱璃のあごを蹴り上げた。
 体が浮いた。
 天地が逆になる。
 頭からどっと落ちる。龍のように火花が駆け抜けた。畳敷きの武道場でなければ、朱璃は気絶していたことだろう。
 反射的に側転して追撃を避けた。
 やはり。
「うん、今のはいい☆」
 コルネが言った。朱璃がコンマ数秒前までいた場所に着地している。
 朱璃の口中は切れ、関節という関節は悲鳴を上げている。だが逆境から這い上がる力が今の朱璃にはある。追い込まれきったときに爆発する力が!
(兄様の、そして私の夢は決して揺るがない)
 立ち上がったとき、朱璃の貌(かお)は狼のそれへと還っていた。
 同時に放つ、渾身の一撃を。
 小細工はない。まっすぐな拳、うなり上げる音速の正拳だ。
「先生は」
 朱璃は叫んだ。
「何を目指して武神・無双コースに入ったのですか!」
 入った。
「見事……っ」
 脾臓のあたりに拳を受けてコルネはよろめいた。呼吸ができなくなったのか涙をにじませている。無我夢中で肘を朱璃に見舞い距離を取る。
「アタシもそろそろ本気に」
 言いかけてコルネは口をつぐんだ。
 拳を放った姿勢のまま、朱璃が意識を失っていると気付いたのである。
 脇腹を押さえながらコルネは微笑した。
「アタシがこの道を選んだ理由はね、きっとキミと一緒だよ――」

 ●

 暦は春であっても、冷たい風が吹くことはある。
 今日がまさにそれだ。ためにか外を歩く人は少ない。
 といっても【アケルナー・エリダヌス】は剣の稽古を終えたばかり、火照った体にはこの風が心地良い。追い風を背に、颯爽と宿舎への途をゆく。
 あら、と女性の声がした。
「道ばたで呼び止める無礼をお許し下さいましね?」
 振り向けば声の主は赤いドレスの女性だ。
「たしか貴女は……【ミレーヌ・エンブリッシュ】先輩ではありませんか」
 ご名答、と手の甲を口元に当ててミレーヌは笑った。
「アケルナー・エリダヌス、わたくし、貴方には前々から注目しておりましたのよ。よろしければ少し、お茶でも付き合いませんこと?」
 光栄に思います、とアケルナーはうやうやしく告げた。

 広大な学園敷地内にはいくつものカフェがある。手近なところに入るかと思いきや、ミレーヌは少し離れた店までアケルナーを案内した。
「この店はリーズナブルなのですわ。個人的に贔屓にしておりましてよ」
 それに、とミレーヌは声をひそめて告げた。
「個室もありますし、内密な話をするにはぴったりですわ」
 瀟洒な一室に通された。テーブルはマホガニー製、クッションは革張り、机にはランプの灯がともっている。
 フレーバーティとケーキのセットを楽しみつつ、学園生活など、よもやま話に花を咲かせたうえで、おもむろにミレーヌはティーカップを置いた。
「ところで貴方はなぜ、王様・貴族コース専攻でございませんの?」
 来た。
 内密な話というのはこれだろう。
 バイザー越しに眺めるミレーヌは優雅な笑みを浮かべているだけで真意は読めない。
 ミレーヌとまともに言葉を交わすのはこれがはじめてだが、すでにアケルナーは彼女が、見た目通りのお嬢様ではないと理解している。経済観念はしっかりしているし、政治事情に通じているところもうかがえた。
(とすれば私の――素性も知っているということか)
 少なくともテーブル作法から、貴族の子弟であるとは読み取っていることだろう。
 だが用心に越したことはない。アケルナーは涼やかにはぐらかすことにした。
「私はただの旅人、それでも、誰かのお役に立ちたいだけですよ」
 この態度が気に障ったらしい。ミレーヌはきっと眉を上げると、
「どうして、立ち上がって仇敵を討たれませんの!」
 声を上げたのだ。
 間違いない。
 間違いなくミレーヌはアケルナーの、いや、亡国の貴族令嬢【マルグダ・ミルダール】の物語を知っている!
 けれどここで同じように激するようでは、いかでかこの宿世(すくせ)に耐えられよう。アケルナーは水のように落ち着いた心で返した。
「仮に私がそのような身の上だとして……立てば間違いなく戦(いくさ)になります。自身の仇敵を討つ私怨で、多くの人々の命や財産を危険に晒すわけにはいかないでしょう」
「わたくしとしたことが……非礼はお許しを」
 浮かせていた腰を落とし、ミレーヌは恥じ入ったように頬を染めた。
「でもあと一つだけ。ミルダール家の屋敷が焼け、主の夫婦と一人娘を含む家人の殆どが亡くなったそうですが……あれは本当に失火だったのでしょうか?」
「世間ではそうなっています」
 と前置きしてアケルナーは続けた。
「お立場もありますし、深入りはおよしなさい。王の信任厚い宰相について、悪い風評を流すことになりますから」
 けれどミレーヌの言葉は、アケルナーの心にさざ波を起こしていた。
 蘇るは、怒りを伴う記憶。抑えきれずアケルナーは口走っている。
「槍で胸を貫かれ、首を打たれた遺体が焼死扱いになる……そんな相手ですよ?」
 昂ぶるあまり声が震えていた。
 なぜなら、一人娘の身代わりにされたその人は――!
 アケルナーははっとして口をつぐんだ。ミレーヌの顔に怯えが見えたからだ
「……この話はもうやめましょう」
 と告げて首を振った。
 私には力が足りない――アケルナー自身が一番わかっている。
 貴族の子女といっても養子で、実母は女中という自分が、どうやって一国の宰相と渡りあえるというのか。
「失礼」
 ミレーヌの手が伸びた。何の断りもなくアケルナーの仮面を取っている。
「あ、これは」
「いいではないですか。ここはわたくしと貴方、ふたりきりですもの」
 思った通り、とミレーヌはくすくす笑った。
「とても可愛らしいお顔! ねえ、今度近いうちに、ドレスを仕立てに行きませんこと?」

 ●

 市場の一隅にスペースを確保して、大道芸人が技を見せている。
 木製のイスを据えその上にまたイスを重ね、だんだんと詰んでいって塔のようにして、その頂上で逆立ちするという芸当である。
「いよいよクライマックスです!」
 演者は声を張り上げるが観客はまばらだ。
 お義理で拍手をする姿もないではないが、集金箱に硬貨を投げ込む姿となるとさらに少ない。
「さあ【マジック・トム】渾身の技……とくとご覧あれ!」
 スマートとは言いがたいのに身軽なことだ。倒立したままトムはジャンプした。
 が、その高さはせいぜい十センチ、おまけに着地に失敗してイスの塔は崩れ落ちたのである。
「だいじょうぶですか」
 そんな彼に、手をさしのべる姿があった。
 エリアルの少女、透明感のあるブラウンの髪と瞳、長い睫毛が印象的だ。
「なんとかね」
 トムは乾いた笑みを見せた。こういうのは慣れっこだという。
「きみはあのときの……!」
「はい」
 と【レーネ・ブリーズ】はうなずいた。

 トムとレーネは、例のイスを向かい合わせにして座る。
「すり傷ですんだのは不幸中の幸いだったよ」
 かつてガスペロに憑依されていた大道芸人、それが彼だ。ガスペロだった頃の刺々しさは消え、悪く言えば平凡、よく言えば人のよさそうな顔つきである。
「といっても、どさくさに紛れて今日の売り上げ全部盗られちゃったから……やっぱり不幸かな」
 はははと笑うが、それなりにこたえている様子でもある。
「黒い霧の話だったよね。訊きたいのは」
「はい、体をうばわれあやつられてた、その間の記憶もない……なら、ねらわれたきっかけが体をうばわれる前になかったか、おしえてほしいんです」
「記憶が戻ったときは気が動転してて何も言えなかったけど……今は」
 トムはため息をついた。
「……今は、あの前のことを思いだすのが、怖いんだ」
 当然かもしれないとレーネも思う。
「トムさんが目をそらしたくなるきもち、わかります。わたくしが一方的なおねがいをしているということも」
「ごめんよ。僕はフトゥールム・スクエアの勇者じゃない、臆病な人間なんだ」
「そんなことはないと思います。わたくしは、さきほどのトムさんのぶたいを見ていました。あんなにイスをつんで、のぼって、じょうずにさかだちまでして」
 それに、とレーネは重ねて言う。
「記憶をうばうひどい事件のてかがりをさがしたい、というのはもちろん、わたくしの想いです。でも、ねらわれた理由がわからなければまたねらわれてしまうかも……というしんぱいもあります」
 わたくしは真実をさがしたいんです、とレーネは言葉を重ねた。
「でもそれは、トムさんのためにもねがっているんです。そのあとのあしどりがわからないと、事件の被害者さんたちがトムさんを犯人とおもいこむかもしれませんし」
 決して多弁ではない。惹句やレトリックに満ちているわけでもない。けれども純粋なレーネの語り口は、混じりけがないだけに説得力があった。
「ありがとう、僕が狭量だった」
 トムは晴れやかな表情で告げた。
「怖いのは間違いない。でも、あの霧にこれ以上ひどいことはさせたくない。僕にも、僕以外のすべての人にも……思いだしてみるよ」
 レーネは礼を言い、トムにいくつか提案してみた。
 体を乗っ取られる前に、不審な人物に話しかけられなかったか。
 何か変わったことはなかったか。
 急かしはしない。あくまで丁寧に寄り添う。
 しばし考え込んだトムが、唐突に口にしたのは『黒い羊』という言葉だった。
「羊?」
「うん、おかしなことになる前、旅の途中で旅の羊飼いに会ったことを思いだした。ターバンを巻いていて、男なのか女なのか、正直わからないような姿で……連れているのはすべて黒い羊だった。五十頭かそこら、全部ね」
 羊飼いもまた、墨で塗ったような黒ずくめの姿だったという。トムは羊飼いと言葉を交わすことなく行き違った。だが数十歩は歩いただろうか、ふと気になって振り返ると、その羊飼いが足を止め、こちらを見ていることにトムは気がついた。
「無関係かもしれないけど……それがああなる直前の印象的な記憶だよ」

 丁重に礼を述べてレーネはトムと別れた。
 後から何か思いだしたら、学園に連絡をほしいと願い出てもいる。
 すぐにすべてがわかるとは、レーネも思っていない。
 しかし犯人との戦いは、一歩前進したと思ってもいる。



 木賃宿というものらしい。
 薄暗い室内はカビ臭く、ほうぼう蜘蛛の巣が張っている。
 破れかけた戸板を押し開け、【エリカ・エルオンタリエ】は室内に踏み入った。
「探したわ」
「遅かったな」
 ルガルは泰然と、壁にもたれて待っていた。
 寝具らしいもののない板の間、一人で使うには広い。
 この宿はたいてい相部屋だというのに、ルガルが内包する凶暴なものが人を遠ざけるのだろうか。
「わたしの来訪を……?」
「俺を探してるエリアルがいるって聞いた。なら想像がつく」
 出て話さない? と言いたくなる気持ちをエリカは押し殺す。雰囲気に呑またと思わせたくなかった。カバーが剥がれ変色している腰掛けを引き寄せて座る。
「てめぇら俺につきまとって何のつもりだ。ガスペロの情報なら、もう話す気はねぇぜ」
 言いながらルガルは腰に手を回している。そこに仮面が結わえ付けてあることが見えた。
 ルガルが仮面を持ち歩いているという情報をエリカは得ている。
 しかもそれが聖女の面というのが奇妙だ。
 たしかに女性の面だった。アルカイックスマイルというのか、面はその口元に穏やかな微笑を浮かべていた。ルガルと仮面の組み合わせはひどく不釣り合いに映った。
 警戒心を抱かせてはいけない、エリカは仮面に目を向けぬよう意識する。
「ガスペロに虐待されていたようだけど、身体の方は大丈夫?」
「まだ死ぬ予定はねぇ」
 よかった、とエリカは心から言った。
「何がよかったものか。俺に力が戻ったら、あいつの仇を討ちに学園生を闇討ちするかもしれねぇぞ」
 ルガルの言う『あいつ』が、ジャックを指していることに疑いはない。
 野犬は恐れを見せた人間を噛むという。
 だからエリカは、ルガルとしかと目を合わせて言った。
「その心配はしていない。あなたは闇討ちを仕掛けるタイプではないから。やるなら堂々と正面から来るでしょうね」
「……言ってろ」
 ルガルはそっぽを向いた。
 訊きたいことは山ほどある。しかし今日、エリカは彼を質問責めにするつもりはない。気分を害されても本意ではないし、少しでも信頼関係を築きたかったからだ。
「ルガル、あなたにも事情があってベカジボ村やリーバメントを襲撃することになったのだと思うけど……そのせいで凶悪犯として追われているのよね」
「批難しに来たのならお門違いだぜ」
「そうじゃない。わたしは提案に来ただけ」
 どういう意味だ? とルガルは言った。
「単刀直入に言う。学園に来ない? 安住の地を得られず逃げ続けるのは、とてもつらいと思う。学園で更生するということにすれば、世間も納得させながら生活や身分も保証されて安心じゃないかしら」
 ぷっ、とルガルが吹きだした。
 彼が笑うところをエリカは初めて見たかもしれない。
「エリカと言ったか、お前、あきれたお人好しだな! 寝首をかかれるとは思わないのか」
「さっきも言ったけど、そういうタイプではないと信用しているわ。あきれたお人好しかもしれないけど、わたしは発言に責任は取る。最悪、この命でね」
 立派だな、とルガルは悪態をついた。
「だがそういうのはな、背負うもののない人間だけが言える言葉だ」
「かもしれないね、わたしにはあなたの言う『背負うもの』、つまり過去がないから」
「何だと?」
「わたしは学園に来る前の記憶がないの。もし誰かが『記憶を取り戻す方法がある』と言ってきたら、リスクがあってもその話に乗ってしまうと思うわ。だからあなたたちを責める気にはなれない」
 ルガルはぼりぼりと頭をかく。
「見た目と学園生という肩書きだけで、あなどっていたことだけは、謝る。フトゥールム・スクエア、お前らはとんでもない連中だな……先日会ったやつも、その前のも」
 けどな、と続けた。
「俺は硬いものが好みだ。岩とか、鉄とか、ぶん殴ったら砕けるものが。だがお前らはまるで泥沼だ。殴っても手応えがないどころか、逆に飲み込まれちまいそうになる」
 出てってくれ、とルガルは言った。
「沼は苦手だ。俺の生きる場所じゃねえ」
 これ以上押しても印象が悪くなるだけ、と悟ってエリカは立ち上がった。
 その背を追うようにルガルが言った。
「だが落とし前は付けるつもりだ」
 彼が落とし前を付ける相手は学園なのか、ガスペロらの勢力なのか、それとも自身の人生なのか、それをエリカは問わなかった。
 かわりに言った。
「そのときを待っているわ」
 と。



課題評価
課題経験:0
課題報酬:0
おいでませ勇者様:春の個人MEN DANG
執筆:桂木京介 GM


《おいでませ勇者様:春の個人MEN DANG》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《自称「モブ」》 チョウザ・コナミ (No 1) 2020-04-13 00:07:46
記憶強奪ルネサンス様じゃーん。やっほー。こないだの廃村ぶりー。
ザコちゃんもお水ね、お金取るなら泥水でもいーよ。食べ物は煮干しあるからいらない。

せっかくだから色々きーちゃお。
お金はザコちゃん出すんだしー、許されんでしょ。質問した分聞かれたことはなんでも答えるけどさぁ。
戦いとか学園に関して以外で聞くこととかあんのかな。まいっか。ないなら聞きまくるだけだし。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 2) 2020-04-13 00:08:04
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。
わたしはルガルに会ってみるつもりよ。
聞きたいことや知りたいことはたくさんあるけれど、焦って質問責めにしないように
接し方には充分気を付けて、今後に繋がるようにできればと思っているわ。

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 3) 2020-04-13 07:05:13
芸能・芸術コースのエルフ、レーネです。
学園長先生に「ディンス・レイカー」というひとのこととかきいてみたいともおもいますけど、
今回はマジック・トムさんとおはなしすることをかんがえてます。
ルガルというひともそうですけどトムさんも学園の外の方ですから、
かさなるとかありましたらご相談させていただきたいです。
ひつようでしたら学園長先生にかえたりもしますから。
よろしくおねがいします。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 4) 2020-04-13 07:46:58
勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしくね。

面接先…って言い方はメタいけど、ルガルが学園に乗り込んで来てるなら私もいくわ。
あいついったい何を考えてるのよ…
(本編は私事に終始すると思います…)

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 5) 2020-04-13 12:07:05
ストーリーではルガルは学園にのりこんできたというより、
学園生がこなさそうなところでごはんにしてたら
学園生がきておはなしするかんじになった、みたいですね。


《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 6) 2020-04-13 20:17:25
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

ルガルも気になりますけど、私はコルネ先生とお話させてもらおうかと思っておりますわ。

《1期生》 アケルナー・エリダヌス (No 7) 2020-04-14 08:58:55
勇者・英雄コースのアケルナーだよ。よろしく頼むよ。
まだ決めかねてるけど、学園長に捕まって振り回されてるか、ミレーヌ先輩に捕まっているか……どちらかだと考えてるよ。

学園長に捕まる人が多そうなら、ミレーヌ先輩に捕まってるかな。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 8) 2020-04-14 18:01:13
魔王・覇王コースの仁和だ。
・・・うん、メメたんに捕まってると思う。

《甲冑マラソン覇者》 ビアンデ・ムート (No 9) 2020-04-14 20:38:08
勇者・英雄コースのビアンデ・ムートです。
私は今のところはネビュラロン先生のところに行こうかなと思ってます