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【新歓】おむすびお結び


ストーリー Story


 それを手に取り彼の為。
 具材込めるは誰の為?
 握りしめたる誰かへの想い。
 ほんの少しの人生(しお)を振りかけて。
「さぁさ、たんと召し上がれ」
 一期一会の縁を結ぶ。
 その食べ物を、人は『おむすび』と呼んだ。

「こんにちは。今、手は空いてますか?」
 大掛かりな新入生歓迎イベント、『マジック・オブ・ディライト』でにぎわう校舎を通り抜けようとしたあなたに声をかけたのは、ルネサンスの学生だった。
 手が空いているならば頼みたいことがある。
 そう言った彼の懐には蓋のついた木製の入れ物。そしてもう片方には同じく木製の平たい杓子。
 入れ物から漂ってくる甘いような香りの正体を、知っているものは少なくないかもしれない。
 学生が入れ物の蓋を開けると、柔らかな湯気と共に姿を見せたのは白くて艶やかな白米。
 そう、中にはぎっしりと炊きたてご飯がつまっていた。
「僕一人では中々手が回らなくて。もし手伝って頂けるなら手伝って頂けませんか?」
 何を?
「おむすび作りを、です」
 彼の話によると新入生歓迎イベントの一環としておむすびを配って回る予定だったようだ。
 しかし一緒に作ってくれる筈だった知り合いは別のイベントの設営の手伝いで手一杯になってしまったらしく、困っていたところに通りかかったのがあなた達だったとの事。
「なにもお礼はできませんが、出来たおむすびはいくつか召し上がってくださって結構です」
 これも何かの縁なのかもしれない。
 彼がおむすび作りに借りた教室に、あなた達は集まって手伝いを始めたのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2020-04-27

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2020-05-07

登場人物 5/8 Characters
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《奏天の護り姫》レーネ・ブリーズ
 エリアル Lv29 / 芸能・芸術 Rank 1
いろいろなところをあるいてきたエルフタイプのエリアルです。 きれいな虹がよりそっている滝、 松明の炎にきらめく鍾乳石、 海の中でおどる魚たち、 世界にはふしぎなものがいっぱいだから、 わたくしはそれを大切にしたいとおもいます。
《スイーツ部》ルージュ・アズナブール
 リバイバル Lv15 / 村人・従者 Rank 1
生前の記憶を失った、どこにでも居そうな村人の女性。 挨拶や返事はとてもいいが、実は面倒くさがりで、目を離すとすぐに手抜きをしようと画策するグラマラスなリバイバル。 『生前の記憶を探したい』という、ありがちな目的を達成するために学園へ来た。 名前を表すような真紅の髪が自慢。 酒好きで、節約なんて言葉は知らない。 身長は167cmほどで、体重はヒミツ★ 驚異のEを自称。もっとすごいかもしれない? 生前は海の近くに居たのか、魚や海産物の料理が得意。 特にお酒に合いそうなスパイシーなものや、煮込み料理が何故か得意。 なお、近親者に名前が4つあったり通常の3倍だったりする人はいない。 もちろん仮面や色眼鏡の人もいない。 赤いノースリーブなんて言語道断らしい。
《幸便の祈祷師》アルフィオーネ・ブランエトワル
 ドラゴニア Lv23 / 教祖・聖職 Rank 1
異世界からやってきたという、ドラゴニアの少女。 「この世界に存在しうる雛形の中で、本来のわたしに近いもの が選択された・・・ってとこかしらね」 その容姿は幼子そのものだが、どこかしら、大人びた雰囲気を纏っている。  髪は青緑。前髪は山形に切り揃え、両サイドに三つ編み。後ろ髪は大きなバレッタで結い上げ、垂らした髪を二つ分け。リボンで結んでいる。  二重のたれ目で、左目の下に泣きぼくろがある。  古竜族の特徴として、半月型の鶏冠状の角。小振りな、翼と尻尾。後頭部から耳裏、鎖骨の辺りまで、竜の皮膚が覆っている。  争いごとを好まない、優しい性格。しかし、幼少より戦闘教育を受けており、戦うことに躊躇することはない。  普段はたおやかだが、戦闘では苛烈であり、特に”悪”と認めた相手には明確な殺意を持って当たる。 「死んであの世で懺悔なさい!」(認めないとは言っていない) 「悪党に神の慈悲など無用よ?」(ないとは言っていない)  感情の起伏が希薄で、長命の種族であった故に、他者との深い関りは避ける傾向にある。加えて、怜悧であるため、冷たい人間と思われがちだが、その実、世話焼きな、所謂、オカン気質。  お饅頭が大のお気に入り  諸般の事情で偽名 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを胸に、学園での日々を過ごしている
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。

解説 Explan

【目的】
 おむすびをたくさん作ろう!
 美味しいおむすびをたべよう!
【材料】
 お米はルネサンスの学生の実家のお米だそうです。炊きたてほっかほかです。
 一般的におむすびに入っていると美味しい食材は用意されています。
(鮭、梅干し、たくあん、そぼろ煮等)
 また、おむすびに巻くものとしては下記の食材があります。
(海苔、とろろこんぶ、薄焼き玉子等)
 変わり種食材の持ち込みも可能ですが、魔法動植物などはご遠慮下さい。
【判定】
 皆様のプラン重視で判定させていただきます。
 また、料理に有用なスキルをお持ちの場合、補正がつく可能性があります。
 今回は沢山のおむすびを用意しないといけません。皆さんがどれほどおむすびを握れたかを100面ダイスで判定させていただきます。
(各種判定はおにぎりの個数によって左右されません。完全なお遊び要素となります)


作者コメント Comment
 炊きたてご飯に塩を振りかけて海苔で巻いただけのおむすびと、とうふとワカメのお味噌汁の組み合わせは最高のご馳走だと思います。
 一期生と二期生の縁が結ばれますようにと、具材を込めて、気持ちを込めて握るおむすび。
 あなたのおむすびはどんなあじなのでしょうか。
 プランを楽しみにしております。


個人成績表 Report
仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:22 = 15全体 + 7個別
獲得報酬:540 = 360全体 + 180個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
おむすびか・・・
食べたい具材はいろいろあるが、好きな食べ方を基準に作らせてもらおうか
オレが作るのは焼きおにぎりだな
醤油で香ばしく焼いたのとネギ味噌を塗って焼いた濃い目の二種類だな
ってことでまずはひたすらに銀シャリ握りをむすぶ
ある程度の量が出来たら七輪にて網焼きだ
醤油とみその焼ける香りで気になる奴も出てくるだろうしな
料理は味は勿論だが、見た目と香りも大事だからな
おむすびはなんて言うか、香りが少ないからな
知っていれば美味しいとわかるんだが米はマイナー食材らしいしまずは興味持ってもらわないとな
おむすびだけじゃあれなんでみそ汁も用意しておこ


ま、オレが美味しく食べれば興味持つ奴も出るだろ


アドリブ大歓迎

レーネ・ブリーズ 個人成績:

獲得経験:18 = 15全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
とくべつすごいものではなく、ふつうのをつくろうとかんがえてます。

まず、イベント『マジック・オブ・ディライト』をみてまわって
その作業量のようすも確認します。

あせをかいたひとには塩むすび、疲れたひとにはうめぼし、
かんがえなければならない作業をしたひとでしたら
あっさりとした風味ですこしづついろいろ。
イベントの作業をしたひとたちのようすにあわせて数を用意してあげます。

わたくしがなにをつくりたいか、ではなくて
イベントのためにがんばるひとたちをささえてあげられるものを。

そうおもってます。

ルージュ・アズナブール 個人成績:

獲得経験:18 = 15全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
そうですわね……ほぐした塩鯖や焼いた鱈子を入れたおにぎりもいいですし、ちりめんじゃこと青紫蘇をまぜたごはんのおにぎりなんかもいいですわね
この時期は、アサリや蛤をソイソースやジンジャーで味付けしておにぎりに入れたり、ボンゴレ風のピラフでおにぎりを作るのも美味しそうですわ

材料は必要なものは持ち込んで

アサリたっぷりのボンゴレ風ピラフを炊く間に、塩鯖、焼き鱈子を入れたおにぎりを握ったり、ちりめんじゃこと青紫蘇の混ぜご飯を作っておにぎりに

蛤はソイソース、ジンジャーで味付けし一粒まるっとおにぎりの具に

ピラフは炊き上がったら乾燥パセリを散らし、磯臭さを抑えて

おにぎりの海苔は別添えで、お好きなように召し上がれ

アルフィオーネ・ブランエトワル 個人成績:

獲得経験:22 = 15全体 + 7個別
獲得報酬:540 = 360全体 + 180個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
お品書き

・おかかとちりめんじゃこのおにぎり

カツオ節、砂糖、しょうゆ、みりん、酒を水分が無くなるまで中火で炒める。いりごま、ちりめんじゃこ、ごはんと混ぜて、おにぎりに


・高菜のペペロンチーノ風おにぎり

高菜を下茹でし、水分を切る。スライスしたニンニクと、種を取り、輪切りにした唐辛子と刻んだアンチョビを、オリーブオイルで炒める。香りが出たら、高菜を入れ、全体をなじます程度にさらに炒める。包んで、おにぎりにし、軽く粉チーズをふる

・鶏そぼろのおにぎり

鶏ミンチを塩コショウで炒める。ほぐれたら、赤みそ、しょうゆ、蜂蜜を酒で解いたものを入れて、水分が無くなるまで,煮る。仕上げに軽く山椒をふる。包んで、おにぎりに

ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:

獲得経験:18 = 15全体 + 3個別
獲得報酬:432 = 360全体 + 72個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
話題のおむすびを作る

■行動
あちき特製の「悪魔のおむすび」を作るのじゃ。
怪しい名前じゃが安心せい。たぬきおにぎりとも言われている割と普通な代物なのじゃ。
足りない材料は、あちきが準備して持ち込むのじゃ。

・炊き立てのご飯。
・下味となる白だし。
・あまじょっぱい天つゆ。
・サクサクの天かす。
・風味豊かな青のり。
・隠し味にショウガとニンニクを少々。
これらを、さっくりと混ぜてなじませ、混ぜご飯にするのじゃ。
混ぜご飯になったら、それを握っておむすびにするのじゃ。

うまみたっぷりで、美味しすぎてついつい食べ過ぎてしまう。
それはまるで悪魔に取り憑かれたかのように…
とりあえず、一度食べてみるといいのじゃ。

リザルト Result

 ルネサンスの学生の持つ木製の入れ物(おひつというらしい)からは、温かな湯気とともにつややかな炊き立てご飯が顔を覗かせた。
 1人につき1つ、割り当てられたおひつには大体同じ量の白米が用意されている。
 幸せの香りに包まれて。
 さぁ、この食材をどんなご馳走にしてみようか。

●あるカルマの少女の場合
 おむすびと聞いて、【ラピャタミャク・タラタタララタ】は大慌てで彼女の目指す最高のおむすびの材料をかき集めて勢い良く教室の扉を開け放った。
「おむすびと聞いてあちきが来たのじゃぁぁーーーーっ!!」
 たっぷりと抱え込んだ食材がポロリとこぼれ落ちたのを慌てて拾いあげ、作業台に向く。
 このヒトは大丈夫なのだろうか……? 学生はやや心配そうな表情を浮かべてラピャタミャクの顔を覗き見るが、ただ一言『大丈夫』と自信たっぷりに答えて腕をまくった。
 と、言うわけでラピ子ちゃんクッキングスタート!
 まず取り出したるは丁寧に灰汁を取り除いた昆布と鰹節の出汁。
 どこまでも透き通った琥珀色のそれに塩を足せばそれだけでもおいしい汁物になる。
 けれど今回の目的はそれではない。
 出汁と天つゆを合わせたところに用意した半分量の天かすを入れると、天かすが調味料を吸って柔らかく、食べやすくなるだけではなく、全体にまんべんなく味を行き渡らせることができるのだ。
 そこに青のりで彩りと磯の風味を加え、げんきが出るようにと隠し味のすりおろしニンニクとショウガを加えれば完成。
「できたのじゃ! 悪魔のおむすびなのじゃ!」
 聞いたことのない名前のおむすびに、周囲がざわつくのを感じ、あわてて補足を加える。
「あまりのおいしさについつい食べすぎてしまう、悪魔的なおむすび。それが悪魔のおむすびなのじゃ! 物は試しで、一つ食べてみるのじゃ」
 小さめの三角おむすびを差し出され、やや戸惑った表情を浮かべた発起人たる彼は、恐る恐るといった風にそれを口に運ぶ。
「……、おいしい」
 出汁の旨味、めんつゆの甘さと塩み、天かすが入ることで油のまろやかさも加わり、ニンニクとショウガの香りが鼻を抜けていった後に、残り香のように青のりが香る。
「なるほど、こんなまぜご飯があるなんて知りませんでした。やはり沢山課題をこなしてきた方はすごいですね」
「えー? いやぁ、そんなことは……あるかもしれないのじゃー」
 素直な称賛の声にほんの少し得意げになるラピャタミャクのおむすびは握っていくうちに徐々に巨大化していく。
「……ありゃ?」
 そうして、おひつの米がなくなる頃、彼女の目の前には20個に満たない量の悪魔的においしいおむすびが並んでいた。
「ま、まぁ、ついつい食べすぎてしまうくらいのシロモノだからこれくらいがちょうどいい……のじゃ」
 それはそうとして、ニンニクの匂いが中々取れなかった彼女は、しばらく手を洗い続けていたとか。

●あるリバイバルの淑女の場合
 彼女、【ルージュ・アズナブール】は思いを巡らせていた。
 おむすびに合う具材というのは世の中に沢山ある。
 ポピュラーなのは焼き鮭、たらこ……、おかかなんていうのもいい。
(けれど、普通すぎるのもつまらないですわ)
 斬新さを、他にはないものを求めるのは学生としての性か、それとも失くしてしまった在りし日の記憶からか。
 想いを馳せたいような気持ちもあるが、それはまた別の機会に。香ばしさを加えるために炒っていたじゃこがパチリと音を鳴らして跳ねた。
「さて、そろそろ砂抜きはできたかしら?」
 水を張ったトレイを見ると、まるでパーティー会場のようにところ狭しと埋め尽くされたアサリと、蛤。
 それぞれのトレイの水を入れ換えて、緩やかな弧を描く貝の口にナイフを当てて丁寧に貝柱を切っていく。
 ぐっと力をいれて貝を開いていけば新鮮でプリプリとした身を覗かせる。
 これを千切りのショウガ、しょうゆ、砂糖などで甘辛く味付けをして、汁がなくなるくらいまで煮詰めていけば具は完成だ。
 一見なんの変哲もない白おむすび。
 しかし中を割れば仄かにショウガの香る、大きな蛤が出てくる。
(一口食べた方の、驚く顔が見てみたいわ)
 先ほど炒めていたじゃこを刻んだ青じそと合わせて混ぜてむすびながら、こぼれる笑顔。
 さぁ、アサリはニンジンやピーマンなどと一緒に炒めてピラフにしてみよう。
 ピラフだって、心を込めて結べば立派なおむすびだ。
 彼女の工程は思いの外多かったが、70ほどのおむすびを用意できた。

●あるエリアルの少女の場合
 やや時間は遡って。『マジック・オブ・ディライト』の準備に追われる生徒や職員の様子を遠目から観察している【レーネ・ブリーズ】の姿があった。
 校舎、植物園、屋内闘技場……。
 時間にして約2時間くらいだろうか。広大な学園の敷地をすべて見ることはできないが、学園がおおよそどんな様子かは把握することができた。
「……よしっ」
 準備で世話しなく動いている人たち。そんな人たちに元気と、疲れを癒すようなおむすびを。
 自分が作るべきおむすびの方向性は決まった。

 レーネの目の前には、おひつと、塩と、水。そしてこんもりと皿に盛られた梅干しがある。
 ――さて、まず一手間。
 梅干しの中から種をとりだす。種に付いた果肉もナイフで削ぎ落として、果肉と一緒に叩く。
 これに刻んだニンニクなんて加えてみるとスタミナもつくのだが、それだと好き嫌いが分かれるだろう。
 水で手を濡らしてさらに塩を広げると、塩味が全体にまんべんなく付いて、一ヶ所だけしょっぱすぎるといった事を防ぐことができる。
 手に取った白米の、ちょうど真ん中に先ほど叩いた梅肉を乗せて包み込むように握りこめば、疲れた身体にクエン酸が染み渡る、梅おむすびが完成。
 腹ペコさんにはシンプルに海苔をまいた塩むすびを用意して、お米本来の甘味を楽しんでもらおう。
 誰よりも沢山のおむすびを作り終わって、思案を巡らせる。
 このまま出してもしまっても構わないが、なにかもう一手間かけるとよりいいかもしれない。
「……そうだ!」
 そういえば誰かが面白いことを考えていたような。
 それに乗っからせて貰おう。
 いそいそとレーネは準備を進めた。

●あるヒューマンの少年の場合
 やることは沢山ある。
 効率的に、手早く終わらせる方法。それはただ黙々と作業を進める他ない。
 黙々と、淡々と。【仁和・貴人】が結ぶおむすびはキレイな正三角形の形をしていた。
 数にして80ものおむすびを量産すれば、おむすび作りは一度休憩。
 とはいえ休んでいる暇はない。水を張った鍋に頭とワタを取った煮干しを投げ入れ、それを沸かせば良い出汁が取れる。
 さらに別の鍋には昆布と鰹の合わせだしを取り、海草と豆腐を入れて味噌を溶かせば、ふわりと漂うのは今は懐かしい『故郷』の香り。
 朝の光が差し込むリビング。台所で食事の準備をする優しい人。食卓に並ぶ、大切な誰かを思って作られた食事の数々。
 ありきたりな、それでも確かな幸せがそこにはあった。
(米は香りが少ない。沢山の量を捌けるには工夫が必要だ)
 たとえば、そんな少ない『香り』を補うような何か。
「……焼くか」
 炭火で両面をじっくり、こんがりと焼いてからハケで出汁醤油をうっすらと全体に塗っていく。
 ぱちりとはぜる炭。醤油の焦げる香りは貴人と同郷の者には馴染みのある、初めてそれを見る者には珍しいものだろう。
 醤油の次は手製のネギ味噌を塗った味噌焼きおむすびだ。こちらはある程度焼いた後に海苔のかわりに大葉で挟むと爽やかな香りと共に仄かにネギの甘さを感じるおむすびが出来上がる。
「良い香り。このお出汁、すこし貰っても良い?」
 作業台からひょっこりと顔を覗かせたのは、ルネサンスの学生の呼び掛けに応じたドラゴニアの学生だった。
「あぁ、どうぞもっていってくれ」
 貴人のおむすびはこれだけではない。そのあとの『とっておき』のためにとった出汁だったが、問題ないだろう。
 彼女はあまり変わらない表情で、それでもほんの少し笑って、ありがとうと答えた。

●あるドラゴニアの少女(?)の場合
 カチャカチャと箸が器を打つ。たぷたぷとときほぐされた玉子が踊る。
 その傍らでは湯の沸いた鍋がぼこぼこと泡を産み出している。
 低い背丈などなんのその。【アルフィオーネ・ブランエトワル】は驚くほど手際よく作業を進めていた。
 高菜を茎の方から鍋に沈めて、葉っぱまで押し込めば深緑色の葉は鮮やかな緑色へと変わる。
 このあとさらに加熱するので下茹ではささっと、短時間でいい。その代わりしっかりと水気を切らねば後で油はねが痛い。
(いくらなんでも、熱かったり痛かったりするのは嫌ね)
 しっかりしっかり、水気を絞ったら細かくざくざくと切っていく。
 それをオリーブオイルにスライスニンニク、とうがらし、アンチョビを加えて加熱したフライパンに入れて水分を飛ばして炒めればアーリオ・オリオ……ペペロンチーノとも呼ばれる、オイルとニンニクを使った家庭料理。
 ごはんに混ぜ込めば、ニンニクの香りととうがらしの辛味、アンチョビが丁度良い良い塩梅でおいしいおむすびになるだろう。
 別の火口では甘辛く味付けをした鰹節に、空炒りしたじゃこを合わせ全体的に馴染ませたところでこちらも別の米に混ぜ合わせる。
 ある程度用意が整ったら一度おむすび作りは一休みして、別の作業だ。
 先程ときほぐしたたまごに貴人から貰った出汁を加えて、油をひいた四角い鉄鍋に卵液を流し入れ、加熱、成形していく。
(わたしには、あまり馴染みがないものだけど……)
 きっと食べる人が食べれば懐かしいと感じるのだろうか。
 柔らかな黄色のオムレツは頬張れば出汁がじんわりと口のなかに広がる、優しい味。
 両手鍋の中には貝から旨味がたっぷりとでたお味噌汁。器によそったら上に小ネギを散らして完成だ。
 おむすびに入れるために冷ましておいた鶏そぼろを包み込むように握れば、アルフィオーネのおむすびはほぼ完成だ。
 目の前に広がる60個にも迫るおむすびの野原を見下ろしてふぅ、と小さく息をつく彼女の尾は、どこか楽しそうにゆらゆらと動いていた。

●『Magic of Delight』for you!
 一期生も二期生も、老いも若いも。姿かたちはそれぞれ違えど、同じ学生。
 このお祭り騒ぎに参加しない理由がない。普段以上に学園は賑やかな様子だった。
「なぁ、どっからかいい匂いしないか?」
「ん? あぁ、確かに……あっちか?」
 催物を巡っていた学園生の元に届いた、食欲をそそる香り。貴人が仰ぐ扇子がそれを周囲に運んでいく。
「レーネが先に火を起こしておいてくれて助かった」
「いえ、わたくしこそ。便乗させて貰ってしまったので」
 レーネと貴人が比較的人通りの多い場所でおむすびを焼いていく。
「はぁい、こちらではおむすびを無料配布していますわ」
 おひとついかが? とルージュが道行く学園生に声をかけていく。
「おむすびだけじゃなくて、ちょっとしたおかずもあるのじゃ! まぁ、あちきが作った訳じゃないのじゃが!」
 ラピャタミャクはそう言いながらだし入り玉子と悪魔的おむすびを配って回る。
 玉子とおむすびを口一杯に頬張る学園生の、その口の端に付いた米粒をアルフィオーネはやれやれといった表情で優しくぬぐう。
「あ、ありがとう……?」
「どういたしまして。おむすびは逃げないからゆっくり食べてほしいわ」
 小さい彼女の背中に故郷で離れて暮らす母の姿を見て、その学生は静かに涙をこぼした。
「うまいか? ならもっと旨い食べ方を教えてやろう」
 貴人は深めの器に焼きたての焼きおむすびを入れ、千切った海苔を散らしてそこに出汁を注ぎ入れる。
「焦げた醤油と、出汁の旨味。食欲がなくてもさらさらと食べれて旨いぞ」
 この食べ方が一番好きなんだ。そう語る彼の仮面の下は……、きっと笑っていたのだろう。
 それを悟られないように、或いは誤魔化すように貴人は出汁茶漬けをかきこんだ。

「お疲れさまです。みなさんのお陰で助かりました!」
 助けを求めてきたルネサンスの学生は貴方たちを労いにやってきた。
 彼の提案したおむすびの無料配布は好評で、作ったほとんどが学園生の胃袋の中に消えていった。
「さて、余ってしまったおむすびがもったいないですし、スープを作ってくれた方もいるみたいですから皆さんでいただきましょうか」
 心ばかりのお礼だと笑ったその学生が、貴方たちの先輩に当たる学生であったことを知るのは、また別の話である。

 春の暖かな日差しの中。様々な由縁でこの学園へやって来た学生が、同じ食事を食べて『おいしい』と言い合う幸福。
 それはまさしくMagic of Delight(歓びの魔法)に違いなかった。
 ――ようこそ『フトゥールム・スクエア』へ。
 これから始まる、これから紡がれるあなたの物語はどんな色だろうか。

 ところで。
「あっ」
 アルフィオーネが突然声をあげて頭を抱えた。
「わたしとしたことが、デザートのおまんじゅうの用意を忘れてた……!」
 騒がしくもどこか穏やかな時間は過ぎていった。



課題評価
課題経験:15
課題報酬:360
【新歓】おむすびお結び
執筆:樹 志岐 GM


《【新歓】おむすびお結び》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 1) 2020-04-23 23:46:38
芸能・芸術コースのエルフ、レーネです。

とくべつすごいものではなく、ふつうのをつくろうとかんがえてます。
あせをかいたひとには塩むすび、疲れたひとにはうめぼし、
それ以外でしたらあっさりとした風味ですこしづついろいろ。
イベントの作業をしたひとたちのようすにあわせて数を用意してあげたいです。

よろしくおねがいします。

《スイーツ部》 ルージュ・アズナブール (No 2) 2020-04-24 08:40:38
村人・従者コースのルージュ・アズナブールと申しますわ。
よろしくお願いしますわね。

そうですわね……ほぐした塩鯖や焼いた鱈子を入れたおにぎりもいいですし、ちりめんじゃこと青紫蘇をまぜたごはんのおにぎりなんかもいいですわね。
この時期は、アサリやハマグリをソイソースやジンジャーで味付けしておにぎりに入れたり、ボンゴレ風のピラフでおにぎりを作るのも美味しそうですわ。

折角の勇者の学校なんですから、冒険しませんとね。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 3) 2020-04-24 11:54:49
魔王・覇王コースの仁和だ。
ただ結ぶのもいいが焼きたのも美味いよな?
って事で焼きおにぎりを作っていこうと思う。

時間があるようなら汁物も用意したいところだがどうだろうな?

《スイーツ部》 ルージュ・アズナブール (No 4) 2020-04-24 12:42:10
なるほど……焼くねえ。
リゾット風の味付けのごはんに、チーズを乗せて焼いたらドリア風のおにぎりなんてのもできるかしらね?

《奏天の護り姫》 レーネ・ブリーズ (No 5) 2020-04-24 19:09:22
焼きおにぎりはよさそうですね。いろいろ工夫もできそうですし。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 6) 2020-04-25 06:15:15
わたしは、アルフィオーネ。
どうぞ、よしなに。

お肉、お魚、お野菜の三種のおにぎりを作る予定。

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 7) 2020-04-26 03:55:11
魔王・覇王コース、ラピャタミャク・タラタタララタ!
よろしく頼むのじゃ。

定番ものから変わり種ものまで揃っておるのぉ。
だとすれば、あちきは…悪魔のおむすび(たぬきおにぎり)を作ってみるのじゃ。