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【想刻】鬼斬りの古龍


ストーリー Story

 春。
 フトゥールム・スクエア。
 出会いを祝福するための祭が終わり、それから数日。
 新入生の浮つく心も落ち着き始め、誇り高き学園生の一員として、ゆうしゃへの険しい道を歩み出す頃。
 
「鬼が! 鬼が出たらしいメェ〜!!」

 保健室から学園長室へ、ドタバタと走る羊のルネサンスは【メッチェ・スピッティ】先生。
 彼女曰く『鬼』が出た——と。
 しかも、出た『らしい』——と。
 学園生にはあまり馴染みがないかもしれないが、鬼という生き物は遠い東の国の魔物のようなもの。
 しかし、その姿形は千差万別。
 ゴブリンのような小さな鬼から人の大きさなど優に超える巨大な鬼まで様々で、個体によっては村や集落そのものを危機に陥れる場合がある。
 そんな『鬼』が、なぜこの学園に……?
 メッチェ先生が慌てているその真相は、数時間前にまで遡る。

-----

 学園の新入生として迎え入れられて、早数ヶ月。
 白猫のルネサンス【フィーカ・ラファール】は、学園の先輩と一緒に学園内の散策をしていた。
「なあなあ! この学園ってまだ見たことない場所がいっぱいで、ワクワクするな!」
 キラキラッ! という効果音がそのまま当てはまりそうな無邪気な笑顔で先輩に話しかける。
「そうね。普段暮らしている学生寮や学園そのものに加えて、たくさんの施設があるものね」
 マンモス校として名高いフトゥールム・スクエアの広さはとてつもなく、その敷地内に湖や火山まで含んでしまっているほどだ。
 新入生は必ずといってもいいほどその広さに驚くわけだが、フィーカは心の底から楽しんでいるようで。
 まるで公園に来た子供のように、ずっとはしゃぎまわっている。
「なあ! 火山とかもあるんだろ! おれ、見てみたい!」
 活性火山、フラマ・インペトゥス。
 活性火山とは言っても噴火活動は魔法により抑えられているので、学園生もたまに訪れることがある程度に安全は確保されている。
 その証拠に、火山周辺には噴火の痕跡など感じさせないほど豊かな森が広がっているのだ。
「仕方ないわね……少し歩くけど、体力は大丈夫?」
「だいじょうぶだ! おれは元気だからなっ!」
 そんな会話を交わしてから、どれぐらい時間が経っただろうか。
 フィーカと先輩の二人は、フラマ・インペトゥスの麓にある森に到着していた。
「これから先は斜面だから、足元に気をつけるのよ」
「だいじょうぶだ! 一気にのぼるぞーっ!」
 長い道のりの疲れなど感じさせないフィーカは、山に向かって一気に走り出す……はずが。
「いてえ!!」
 ドサーーーッ、と。
 何かにつまずいて、思いっきり頭から地面にダイブした。
「だから気をつけなさいって……ん?」
 先輩が、何かに気付く。
「ちょっと、フィーカくん! はやく起きて!」
 なんだ……? と言いながらフィーカがつまずいた『何か』を見る。
 形は……人間。
 しかしその背中にある翼と、尻尾。
 そして人間のものではない右手。
 紫色に怪しく光る甲殻は、古龍族が持つそれで。
 ボロボロになった服は奴隷のように破れており、何かから逃げてきたかのような緊迫感を感じさせる。
「せんぱい……これ、生きてるのか……?」
「ええ、かろうじて生きてはいるみたいだけど……何があったのかしら」
 見た目は……古龍族、ドラゴニア。
 しかし学園で見かけたことはなく、敵かどうかの区別もつかない。
「とりあえず火山の管理小屋にある通信魔法石を使って学園に連絡を。場合によっては保健室に運ぶわよ」
「わ、わかった……!」
 担当の先生に状況を説明。
 学園の判断は、救助。
「フィーカ! まだ体力はある?」
「まかせろ! よゆーだ!」
 力尽きたドラゴニアを担ぎ上げ、二人は学園保健室へと急ぐ。

-----

「どいて! 急病人よ!」
 保健室に駆け込む二人。
 連絡を受けていたのであろうメッチェ先生が、すでにベッドを用意してくれていた。
「おまえさま方も大変だったメェ〜、疲れてるとは思うけど、状況を説明してほしいメェ〜」
 保健委員が手当てをする中、メッチェ先生が二人に事情を聞く。
「えっと……フィーカを学園の散策に連れて行っていて、フラマ・インペトゥスに差し掛かったとき……」
「おれがひっかかった! そしたらたおれてた!」
 それ以上の情報はない。
 学園生かどうかも定かではないし、もしかしたら何かの事故に巻き込まれた可能性だってある。
「う〜ん、倒れていた理由は本人しか知らないってことかメェ〜……そしたら目覚めるまで待つメェ〜」
 そう言って二人を学生寮に返し、少し時間が経って。
「ん……あ……」
 まだ意識は朦朧としているが……そのドラゴニアが、目を覚ます。
「メッチェ先生! 目を覚ましました!」
 保健委員の声を聞いて、メッチェ先生がベッドの近くにやってくる。
「うーん、聞きたいことはいっぱいあるメェ〜……でもまずは、おまえさまのことを知りたいメェ〜。おまえさまは、何をやっていたメェ〜?」
 深緑の長い前髪から覗く銀色の目。
 その目がメッチェの髪の色を映し、薄く色を反射する。
 彼は左手でその目を隠しながら、一言。
 絞り出すように呟いた。
「…………おに、ぎり」
 戦慄した。
 保健委員だけでなく、メッチェ先生までも。
「鬼……斬り……?」
 鬼斬りがいるということは、この周辺に鬼が出ているということ。
 さらに言えば、鬼斬りまでもが痛手を負うほどの強大な敵。
「詳しく聞かせるメェ〜!」
「あ……う……」
 まだ意識が戻らない彼と、『緊急事態だメェ〜!』と問いただすメッチェ先生。
 鬼がどんな姿形をしているかだけでも、聞いておかねばならない。
「どんなヤツだメェ〜! それだけでも教えるメェ〜!」
 ドラゴニアの彼は、力を振り絞る。
 目の前にいる見知らぬ者に『おにぎり』の願いを叶えてくれ……と。
 自らが追い求めた理想を託すように。
「……しゃけ」
 その言葉を聞くと同時、メッチェ先生は走り出した。
 学園に緊急事態を伝えるために。

「鬼が! 鬼が出たらしいメェ〜!!」

 学園長に、その事態を伝える。
 鬼斬りが痛手を負うほどの鬼がいて、その鬼が鮭の形をしているということ。
 ドラゴニアの彼が倒れていた場所から考えて、学園敷地内に潜んでいるであろうということ。
 メッチェ先生の焦りを見て、学園長【メメ・メメル】も学園全体に声を響かせた。

「しょく〜ん! つよーい鮭を探して退治するのだ〜☆」


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 8日 出発日 2020-05-12

難易度 普通 報酬 なし 完成予定 2020-05-22

登場人物 8/8 Characters
《野性のオオカミ》ヘルムート・アーヴィング
 ルネサンス Lv8 / 魔王・覇王 Rank 1
「自分はヘルムート・アーヴィング。誇り高きロイニデッド出身、種族は狼のルネサンスだ。優れた軍人になるべく、この学園へと入学する事となった。諸君らと良い学友になれることを願っている。」                               ―――――――― 【性格】 軍人を目指すだけあって、堅さがある口調だが社交的に見えるよう、人前では口角を意識して上げて笑みを作っている。 己に厳しく、そして他人と一定の距離を置く様にしている。 ポーカーフェイス、冷静で居るよう意識してるが、狼なので尻尾に意識せず感情が現れてしまう。 『優れた軍人であるべき』アーヴィング家の血を引きながら、放蕩な1期生のプラムに嫌悪感をあらわにするが、半年経った現在、態度は軟化してきている。 根が善人の為、厄介事に巻き込まれがち。 【口調】 一人称:自分、僕(感情が高ぶると俺) 二人称:君、諸君、(男女共に)名前+君 「本日の授業の仲間は…諸君らか。勉学ばかりで実戦経験が乏しい自分だが、どうかよろしく頼む。」 「課題を一緒に乗り越えてきた仲間は、一生の宝だ。特に先日のマラソン大会は、少し自分に自信を持てたよ。」 「プラム…貴様さては何も考えてないな????」 【好き】 長姉 家族 酸味 【嫌い】 プラム・アーヴィング 自堕落な人間 侮られる事 傷の舐め合い
《2期生》シルワ・カルブクルス
 ドラゴニア Lv15 / 村人・従者 Rank 1
細い三つ編みツインテールとルビーのような紅い目が特徴のドラゴニア 元々彼女が住む村には、大人や数人ぐらいの小さい子供たちしかおらず同い年程度の友達がいないことを心配した両親にこの学校を薦められて今に至る 一見クールに見えるが実際は温厚な性格であり、目的である世界の平和を守ることはいわば結果論、彼女の真の目的は至って単純でただの村人として平穏に暮らしたいようである しかし自分に害をなすとなれば話は別で、ドラゴニアらしく勇猛果敢に戦う 一期生にはたとえ年下だとしても「先輩」呼びをするそうだ 「私はただの村人、できる限りのことをしただけです」 「だれであろうと私の平穏を乱す者はすべて叩き伏せます」 ※口調詳細(親しくなったひとに対して) 年下:~くん、~ちゃん 同い年あるいは年上:~さん ※戦闘スタイル 盾で受け流すか止めるかでダメージを軽減しつつ、斧で反撃するという、いわゆる「肉を切らせて骨を断つ」戦法を得意とする
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。
《模範生》プラム・アーヴィング
 ヒューマン Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
「俺はプラム・アーヴィング。ラム肉を導く修道士だ。…そうは見えない?そりゃそうだ、真面目にヤる気ないからな。ま、お互い楽しく適当によろしくヤろうぜ。ハハハハ!」                                       ■身体 178cm/85kg ■人格 身に降り注ぐ事象、感情の機微の全てを[快楽]として享受する特異体質持ち。 良心の欠如が見られ、飽き性で欲望に忠実、貞操観念が無い腐れ修道士。 しかし、異常性を自覚している為、持ち前の対人スキルで上手く取り繕い社会に馴染み、円滑に対人関係を構築する。 最近は交友関係を構築したお陰か、(犬と親友と恋人限定で)人間らしい側面が見られるように。 現在、課題にて連れ帰った大型犬を7匹飼っている。 味覚はあるが、食える食えないの範囲がガバく悪食も好む。 ■口調 修道士の皮を被り丁寧な口調の場合もあるが、普段は男口調を軸に雑で適当な口調・文章構成で喋る。 「一年の頃の容姿が良かっただァ?ハッ、言ってろ。俺は常に今が至高で完成されてんだよ。」 「やだ~~も~~~梅雨ってマジ髪がキマらないやんけ~~無理~~~二度寝決めちゃお~~~!おやすみんみ!」 「一応これでも修道士の端くれ。迷えるラム肉を導くのが私の使命ですから、安心してその身をゆだねると良いでしょう。フフ…。」 ■好き イヌ(特に大型) ファッション 極端な味付けの料理 ヤバい料理 RAP アルバリ ヘルムート(弟) ■嫌い 教会/制約 価値観の押し付け
《勇往邁進》ツヴァイ・リデル
 カルマ Lv11 / 教祖・聖職 Rank 1
「このコースに来た理由?回復って使えると便利だよ…えっ?うん、それだけ」 「僕は僕のやりたいようにやるだけさ」 容姿 ・黄色のメッシュをいれているショートウェーブ ・釣り目、少しまつげあり ・眼鏡着用、度が入ってるのか入ってないのかは不明 ・魔法陣は右手、もう一つは胸の中央 性格 ・のらりくらりのマイペース、基本的にのほほんとしてる ・穏やかであろうと努めているが、仲間が傷つけられると口調が荒れる傾向がある ・宗教に興味はあまりなく、蘇生の技術に関心を持ってコースを選択している ・ある目的を以て造られたカルマ、使命と願いを守るつもりではいるが、縛られたくはない模様。というより反抗心バリバリ ・一方的に知っている子どもたちがいるらしいが…? 好きなもの 物語、魔術本、こどもたち 趣味 おやつの食べ歩き 一人称:僕、お兄さん 二人称:きみ、激昂時:お前
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《未来を願いし者》アルシェ・スレット
 ヒューマン Lv7 / 賢者・導師 Rank 1
アルシェ・スレット、対外的にはそう名乗っている長身で病的な痩躯の学園生。おおよそ艶というものの感じられない銀髪を長く伸ばし、紫色の瞳から感情は読み取れない。肌の色を表すならば、最も適切な語句は恐らく「死体」。 コミュニケーションと礼儀の概念はあるようで、普通に話は通じる、というか誰に対しても異様に慇懃な「御座います」調で喋る。 口癖は、「ははア。」 なお、このような幽鬼じみた外見をしておきながら結構な健啖家で、料理もする。得意料理は白米にかける前提のクリームシチュー。   普段は服の中にしまっているが、白い粉状の物体が入った小瓶を首飾りにしている。。
《ゆうがく2年生》ドライク・イグナ
 ルネサンス Lv14 / 村人・従者 Rank 1
「あっしはライク・・・そう、ライクって呼んでほしいっすよ」 一人称は『あっし』『ライクさん』 二人称は『そちらさん』『~のにーさん』『~のねーさん』 ドラゴニアの方限定で『未来の我が主』 ただし、レダさんに限ってはホイッパーのにーさん 語尾は~でヤンス、~でゲス、~っスと安定しない。 三下ムーブ。 笑うのが苦手 身長:180㎝ 体重:85kg前後 好きなもの:自分を特別扱いしない人、自然に接してくれる人、美味い食べ物 苦手もの :家族、集落の人々。自分を持ちあげてくる人。 嫌いなもの:まずい食事。自分の名前。 趣味は筋トレ、狩り、釣り。 サバクツノトカゲのルネサンス 感情が豊かで涙もろい・・・が種族の特徴なのか能力が暴走しているのかよく血の涙を流す。 その血に毒性はないし、勢いよく噴射することもできないが血には変わりはないく不健康そうなのは常に貧血気味のため。 シリアスはホラーにコメディではカオスになる? ちょろい。よく餌付けされる。 将来の展望は特になく卒業までに何かしらの職につけるだけの技能を習得出来たり、ドラゴニアの主君を得られればラッキーくらいにしか考えてない。 祖流還りによる必殺技は『毒の血の涙(目からビーム)』 そこそこの量の毒性を持った血液を相手に向かって噴射する。 自分は貧血になりぶっ倒れる。 相手はびっくりする。血がかかったところが痒くなる。

解説 Explan

【目的】
 お気づきかとは思いますが、彼はおにぎりを求めているだけです。
 しかし皆さんはその事実を知らないので、学園長が言うように強いしゃけを退治してください。

【流れ】
 戦闘パート→調理パートの二部で構成されます。

 ①学園敷地内やその周辺で鮭をとりまくります。
  メインの場所はスペル湖になるでしょうが、その他の池などで探索していただいても結構です。

 ②みなさんで一定数鮭を釣り上げてください。
  その中で一番釣りが上手かった人が、見事巨大なボス鮭を釣り上げます!

 ③対峙し終わった頃、学園でドラゴニアの彼【カズラ・ナカノト】が目覚めます。
  彼は『鬼斬り』ではなく『おにぎり』を求めていただけですので、心配ないです。

 ④せっかく退治した鮭がいるので、美味しく調理しましょう。
  お腹がすいたカズラくんに、いろんな料理を振る舞ってあげてください。
  彼と仲良くなれるとなおよし、です。

【敵情報】
 ○巨大な鮭
 その名の通り巨大な鮭なので、鬼ではありません。
 釣り上げようとすると水の中に引き摺り込まれる可能性だってあります。
 泳ぎながらの戦闘も、もう一度釣り上げて陸に叩きつけてもOK。
 おすすめは遠距離攻撃で仕留めてあげることですかね。

【NPC】
 ○カズラ・ナカノト
 ・ドラゴニアの青年。
 ・基本的に無言で、身振り手振りによるコミュニケーションをとる。
 ・一人称は直前に聞いたものが移ってしまう傾向がある。
 ・言われたことには基本的に従うが、自ら行動を起こすことはほとんどない。
 ・素直で純粋だからこそ、善悪をわかり切っていない部分がある。
 ・大好物はおにぎり(特にしゃけおにぎり)

 ○フィーカ・ラファール
 ・白猫のルネサンス(ショタ)
 ・無邪気で元気な子
 ・好奇心が行動原理
 ・お菓子をあげるとほいほいついていく


作者コメント Comment
 隔週火曜日配信中の『煮ても焼いても食えない雑談』初企画!
 『みんなで学園NPCを作ろう』という素敵な企画で生まれた公式NPC『カズラ・ナカノト』くん。
 配信では彼の過去について重めの設定がついてしまったので、学園生との出会いぐらいはハッピーに華やかに彩ってあげたいものです。

 みなさんからいただいた設定はすでにプロットとして書き起こしてありますので、GM陣一丸となってカズラくんのエピソードを進めていければなあと思っております!

 「まだ配信に顔を出したことがないよ!」という学園生の皆さん!
 手探りで始めた配信もクリエイターの皆さんのお力を借りながら、『ゆうしゃのがっこ〜!』メインコンテンツの一つと言っても過言ではないほどに成長しています。
 是非、他の学園生と素敵な世界観を追いかけていきましょう!

 メディアディレクターとして、お待ちしております!



個人成績表 Report
ヘルムート・アーヴィング 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
■効率
釣りより餌を撒き網で一気に引き上げた方が効率が良い。
大地引網といったか。【物理学/罠設置】の知識が役に立てばいいのだが。

…もし、釣り竿しかなければ【読書/地質学/推測】から良いポイントで釣る。

件の鮭が釣れたら、人間に戻るタイミングを計算し【祖流還り】中に【跳躍】し鮭までの距離を稼ぎ、人間体に戻った所で【三日月斬り】で攻撃。

■調理
生態系を破壊しないようある程度リリースするが…
折角釣ったんだ、調理するとしよう。

といっても、祖国に居た時に最低限自炊できるようにしたムニエルとかグリルくらいしか【料理】出来ないが。

大図書館からレシピ本を借りれるのであれば、【読書】である程度のものは作れる筈だ。

シルワ・カルブクルス 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
・鮭釣り
借りてきた釣竿使って、主である鮭を釣ること試みる
鮭はあるときに下流から上流へ泳ぎにくることを知っているのでそこを狙う
大物を釣り上げたら、攻撃を受け止めてそこから『通常反撃』する形で鮭を倒す

・おにぎり
注文どおり鮭入りのおにぎりを作るが、最近覚えたツナマヨや梅干などが入っているのおにぎりも『料理』しておく
また、なぜワズラがあの山で倒れこんで気になるところなので、そのあたりを聞き込みつつ親睦を深めていく

ビャッカ・リョウラン 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
おにぎりしよう!

■行動(調理とその後)
鮭を使ったおにぎりを作るよ。
何種類か作って、バリエーションを楽しめるようにするよ。

まずは定番。
鮭を塩少な目で焼いて解して、それを具として、おにぎりおにぎり。
鮭と米の絶妙な味わいを楽しめるよ。

次は鮭を推して。
鮭のハラミをあぶり焼きにして、解さず切り身で、おにぎりおにぎり。
焼きの香ばしさ、脂の旨味、鮭の美味しいところを堪能してね。

そして混ぜ込みご飯。
砕いた鮭、わかめ、白ごまをご飯に混ぜ込み、おにぎりおにぎり。
混ぜ込み独特の味のハーモニーを感じよう。



おにぎりが出来たら、カズラさん(年上なのでさん付け)に振舞って、味の感想を聞くよ。
どれが一番美味しいですか?

プラム・アーヴィング 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
■戦闘
【豪華な釣り竿】の出番。
【にぼし】を小魚代わりの餌にしてスペル湖で【集中】して釣り。
つーか、鮭って確か物凄い抵抗力を有していた様な。
無駄についた筋肉達よ、出番だぜ。

鮭鬼がヒットしたら肉質に影響与えなさそうな【マド/マドガトル/精密行動】で攻撃で。
勿論食べるに決まってるじゃないの。

■調理
山葵マシなサーモン丼で。甘め醤油&山葵って最高。
俺は新鮮生魚の良さに目覚めてしまった男。
尚、捌くのは苦手なので得意な奴に任せましてよ。

焼き鮭のオニギリ位は作れるが…
うっかり握り馴れている形にしたらごめんなァ~?

…そういやこのメンバーカラーリングが米と海苔だな?

じゃ、俺ブランド米のプラニシキって事で。

ツヴァイ・リデル 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
鬼が出た「らしい」ねー
姿を変えられる敵って厄介だし、お兄さんほどほどに頑張るぞー

・釣り
あんまりやったことないんだけどねぇ…
とりあえず「事前調査」と「水質学」と「生物学」で、鮭がいっぱいいそうな所を「推測」して
実際に釣る時は、気長にのんびり焦らずにー?
大物が出た時は手加減した【プチマド】で弱らせて
味方が釣った時も援護を、地上に出しても暴れるなら【ウィークアタック】で殴っておこう。傷めない程度に

・おにぎり握るよ
「料理」でおにぎりを握り
カズラくんにも分けてあげよう、お腹すいてるだろうし
あ、僕が食べたいから焼きおにぎりもやっちゃおう
ついでに鮭も焼こう、良いでしょ?

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
鮭・・・鮭か

旬が違う気がするのは気のせいだろうか・・・?
いや、この世界のだし空泳いでたりだとか一年中おいしく食べられたりとかする種類がいても不思議じゃないのか?

取り敢えず捕獲するとしようか
なんだっけ?ルアーに餌付けてやると食いつきがいいんだったっけか?
昔なんかで読んだ覚えがあるんだが・・・試してみるか

釣りあげたらせっかくだし美味しく調理して食べよう
鮭はいろんな食べ方があるし安いし美味いしで優等生な魚だよな
・・・おにぎり?
焼鮭つつめばいいんじゃないか?
普通の身と、ハラミ、味噌で焼いた奴の三種あれば十分じゃないか?
はらこはバラシて醤油漬けだな
・・・いやまて、はらこめしも捨てがたい

アドリブ絡み大歓迎

アルシェ・スレット 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
「ははア。色々と腑に落ちぬ点は御座いますが、まずはその鮭の討伐と参りましょう。倒れていたという方も安心させて差し上げねば。ええ、ええ。」

まずは心を無にして釣りにいそしみましょう。動かず枯れ木か何かと鮭に思われるよう気配を消して。集中と自然友愛を併用いたしましょう。

ただアルシェは見ての通りの非力で御座います。万が一力負けしそうになったら周りの皆様にも助けを求めねばなりません。

ボス鮭はプチヒドで仕留めると致しまして……釣れた鮭はその場で捌いてしまいましょう。料理Lv13を舐めていただいては困ります。卵があれば御の字。

帰ったらじっくり塩焼きでおにぎり、バター焼き、鮭鍋、刺身は昆布〆……胸が躍ります。

ドライク・イグナ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
季節外れの鮭が出たようッスね!
鮭釣る機会はなかなかないでヤンスし頑張って釣っていきたいとこでゲスな!

どのくらいの大きさなのか解んないっすけど鬼強いってことでヤンスし大きめの竿を準備していくでゲスよ
鮭は力強いし大きいしで下手したら竿おられるし持ってかれるでヤンスからね

メインの釣り場はスペル湖にするでゲス
豪華な釣り竿、気配察知、やせーの勘、生物学、隠れ身、忍び歩き、事前調査、罠設置など使えそうな技能はどんどん使って爆釣目指すッスよ!

・・・ドラゴニアの方々結構いるみたいでヤンスしここでアッピールすれば仕えることを許してもらえるかもしれないでゲスからなぁ・・・!!

アドリブ絡み大歓迎

リザルト Result

 学園長【メメ・メメル】から『つよ~い鮭を探して退治するのだ☆』と指示が出されて、数刻。
 もちろん学園生はスペル湖へ集っていて。
「鮭だ! 鮭を探せ!」
「くそっ、巨大な鮭ってどれぐらい巨大なんだ!」
「メメたんめ、適当な指示だしやがって!」
 ……と、彼らの悲痛にまみれた声が響く中。
 【仁和・貴人(にわ・たかと)】だけが一人、冷静だった。
「この時期にやたらと強い鮭が出たと言う話だが……旬が違う気がするのは、気のせいだろうか?」
 太陽の光を反射する真っ白な仮面を、眼鏡をなおすようにくいっと持ち上げながら。
「いや、この世界の鮭だし、空泳いでたりだとか一年中おいしく食べられたりとかする種類がいても……不思議じゃないのか?」
 スペル湖と、鮭探しに奮闘する学園生を背にして、保健室がある第一校舎へと歩き出す。
 お目当てはこの騒ぎの元凶でもある【カズラ・ナカノト】という人物なのだが。
「ナカノトくん……か。正体はわからないが、話を聞くぐらいはできるだろう」
 学園生の中でも、敷地内で倒れたドラゴニアがいるという情報を聞いている人は少ない。
 貴人がこのことを知っていたのは、かつて共に翼竜『カリドゥ・グラキエス』を討った仲間である【フィーカ・ラファール】と仲良くしていたからでもあるだろう。
 情報を精査する思考力さえあれば、違和感に気づくことは造作もなかった。
 保健室のドアを、ノックする。
「先生、いらっしゃいますか」
「誰だメェ~? あっちは忙しいメェ~」
 中には、カズラを手当てしてる【メッチェ・スピッティ】先生の姿があった。
 カズラもとっくに目は覚めているようだが、それでも動けるようになるにはもう少し時間がかかるらしい。
「一気に治癒魔法を流し込んでもいいけど、きっと体がびっくりしちゃうメェ~」
「あの……先生」
 メッチェ先生に、何気なく問う。
「この人が鬼斬りって、本当ですか……?」
 メッチェの手が、止まった。
 目が泳ぐ。
「そそそそそれはだメェ、えっとだメェ……メェ!?」
 水を飲もうと手を伸ばしたマグカップを倒してしまう。
 貴人は『やはり……』と思いながら。
「先生、早く鮭退治はしなくていいというアナウンスを……」
 彼の言葉を遮るように、メッチェ先生が震えた声で話す。
「学園長先生が……」
「え?」
「学園長先生が『面白いからそのままでいいゾ☆』って言ったのが悪いメェ~!!」
 はぁあああああ、と。
「気づいてたのか……メメたん……」
 仮面の下から、深いため息をついたのだった。

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 貴人が保健室で話しているであろう時間。
 こちらは、スペル湖のほとり。
「軍人を目指す身。学園の危機には全力で応えてこそだ」
 そんな中でも冷静だったのは【ヘルムート・アーヴィング】という、好青年な印象を受ける狼のルネサンス。
 アーヴィング。
 どこかで聞いたことがある名だが、今は一旦置いておいて。
「そうだな……釣りをするよりも網で一気に引き上げたほうが早い。誰か、手伝ってくれる人はいないか!」
「あ! はい! 私でよければ手伝うよ!」
 白銀の翼を持つドラゴニア【ビャッカ・リョウラン】が名乗りを上げる。
 釣りは得意じゃないからと、みんなの頑張りをサポートしてくれるそうだ。
「ああ、ありがとう! 助かる!」
 ヘルムートはビャッカに網の端を渡し、広げてもらうように指示する。
「鬼が出たって聞いて、なんとかしないとって!」
 彼女も役に立てて、とても嬉しいようで。
「まずは巨大な鮭を捕まえれば……しゃけ? んー、あれ、なんで鮭? って、うわ!」
 考え事をしながら網を仕掛けていると、湖の近くにあった枯れ木にぶつかってしまった。
「いたた……こんなところに木なんてあったっけ……?」
 ビャッカの目の前にあったのは、枯れ木……ではなく。
 枯れ木のように自らを自然に溶け込ませた、人間。
「ははア。これはこれは申し訳御座いません。お怪我はありませんか」
 しわがれた声の主は【アルシェ・スレット】。
「アルシェも色々と腑に落ちぬ点は御座いますが……まずは共に鮭の討伐と参りましょう。倒れていたという方も安心させて差し上げねば。ええ、ええ」
 屍人のような見た目こそしているが、中身は十分に常識人のヒューマン。
 しかし彼もまた、この騒動に巻き込まれた被害者の一人であった。
「とりあえず網は広げ終わったし、少し時間を置くとするか」
 ヘルムートの提案にビャッカが頷き。
「ええ、ええ。アルシェは場所を変えてもう少し粘りましょう」
 網に針が引っかからない位置につき、また糸を垂らして鮭がかかるのを待つ。

 そしてその三人を横目に、黙々と釣りに勤しむ人物がひとり。
 ルビーのような紅い目が特徴的な【シルワ・カルブクルス】。
 彼女はこの学園の『二期生』として学園に入学したばかりで、メメル学園長の騒動にはまだ驚いてばかりだが。
「鬼が出たといっていましたが、鮭を退治するのですか……。なにか引っかかるような気が……」
 冷静な彼女は、しっかりとこの違和感に気づいていた。
「んー、このへんでいいかなー?」
 そんなシルワの近くに、春の日差しが似合うほんわかした男性、【ツヴァイ・リデル】がやってくる。
「お、やっほー☆ 釣れてる?」
「なかなか大物は釣れませんね。鮭は下流から上流へ登ってくると聞いていたのですが……時期が違ったのかもしれません」
 そうだねー、と考えているふりをしながら、ツヴァイが竿を湖に投げる。
 投げ入れて早々、地面に竿を固定して『んーっ』と背伸びなんかしながら。
「鬼が出た『らしい』けど、鮭ってのも不思議な話だよねー。姿を変えられるって聞いたけど、よくわかんないや」
「それでも、もし本当に鬼がいたら、学園が危ないことには変わりありません。私は私の平穏を守るために、頑張りますよ」
 ツヴァイの話をシルワも否定こそしないが、それでも鬼というものを楽観視しているわけではなく。
「あはは、釣りはあんまりやったことないけど、お兄さんもほどほどに頑張るぞー」
 シルワの話をツヴァイも否定しないが、あくまで彼はマイペース。
 噛み合っているようで噛み合っていないような二人だが、その時間は少し穏やかで。
 しかし穏やかな時間は、そう長くは続かない。
「うおおお! 引いてる! 引いてるでヤンス!!」
 巨大な竿を全体重を乗せて引く【ドライク・イグナ】。
「おー、こりゃまたご立派な竿で」
 それを隣で傍観する【プラム・アーヴィング】。
 そう、こちらもアーヴィング。
 二人のアーヴィングはそのうち出会うので、もうしばらくお待ちを。
「そんなこと言ってないで! 手伝って欲しいでヤンスううう!!」
「糸引く竿を、ねえ。いいぜ、俺が手伝ってやる」
 ドライクの後ろから、おもむろに竿を握り。
 そして、こう、ぐぐぐっと。
「あああ!! イイ! イイでヤンスよプラムのにーさん!!」
「どうだ? そろそろイケそうか?」
「イケそうでヤンス!!」
 ビクビクと震える竿を必死に押さえ付け、そのあと引き上げてを繰り返す。
 体は反り上がり、息も切らしているが、もう少しだ。
「よおし、今だ!」
「ヤンスぅ!!」
 大きなしぶきを上げ、飛び出してきたのは。
「……人、でゲスぅ!?」
 天高くから近づいてくる叫び声。
「うわぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」
 どしーーーん、と。
「いてて……ご、ごめん! トカゲのにーちゃん!」
 ドライクの上に落ちたのは、森に倒れていたカズラを見つけた張本人、フィーカ・ラファールであった。
「そちらさんは……フィーカのにーさんでやんすね……」
「で、お前は何やってんだ?」
 ビショビショになったフィーカを見て、プラムが問う。
「えーっと、でっかいヤツがいないか、潜ってからさがしてた! そしたらね!」
 フィーカが指差した方向にいたのは、ヘルムート。
「あのにーちゃんが仕掛けた網にかかってたみたいだった!」
 へぇ……と、プラム。
「ヘルムート君が来てはりますやん」
 ニタァ、と。

 そしてこちらはヘルムート。
「よし、そろそろいい頃だな。網を引き上げるぞ! 手が空いている者は手伝ってくれ!」
 思っている以上に重くなってしまった網を引き上げるために、ヘルムートが協力を要請する。
 近くにいたビャッカ、アルシェはもう網を引っ張る体勢に入っていて。
「ちょうど帰ってきたところだったが、なかなか面白いことになっているな」
 保健室から帰ってきた貴人が携えた竿を脇に置き、網の一端に手を伸ばす。
「私たちも行きましょうか」
「そうだねー。協力ぐらいはしても、悪くないかなー」
 シルワ、ツヴァイもそれに加わる。
「あっしも手伝うでヤンス!」
 ここでアピールすればドラゴニアの方々に気に入ってもらえるでゲス……と呟きながらドライクも参加する。
 ――そして。
「はぁい☆ ヘルムートくぅ~ん! 助けが必要かなァ?」
 プラムの言葉に、ヘルムートの口角が片方だけ上がったまま固定される。
「貴様の助けは要らん、そこで見てろ」
 ヘルムートの尻尾が逆立つ。
 隠そうとしても隠せない苛立ちが、プラムの煽りにさらに火をつける。
「釣れないねぇ~、魚だけに?」
 煽り。
「一人で引き上げられないんですかぁ~??」
 煽り。
「イカでもいるんじゃないのぉ~?」
 アオリ。
「まアまア、学園の危機で御座います故、今は皆で力を合わせると行きましょう、ええ、ええ」
 アルシェの言葉に『仕方ねぇなァ』と言いながら、不服そうではあるが、プラムも網の一端を持つ。
 ヘルムートの表情も、今は一時休戦といった感じだ。
「じゃあ、引き上げるぞ!」
 せーの! という掛け声で、皆が一気に網を引く。
「うぐぐぐ……これは、重いでヤンスねぇ……!」
 予想以上の抵抗に、湖へ引きずられそうになりながら。
 それでも少しずつ、水の中にいた生物が陸へと顔を出し始めたとき。
 網の中で暴れる『ヤツ』がいた。
「見えたぞ! あいつが巨大鮭というヤツに違いない!」
 体長3m(メメたん)ほどはありそうな巨大鮭。
 もちろんその抵抗力も強大で。
「これは、少しキツいな……!」
 貴人が網を引く手を持ち替えようとしたとき。
 巨大鮭が、網を食い破った。
「逃すな! 竿を投げて糸をかけろ!」
 同時に出た的確な指示。
 軍人を目指すヘルムートならではの判断力だろう。
「ヤンスうぅ!!」
 ドライクが巨大な竿を振りかぶっている間に。
「まかせてください!」
「アルシェも加勢致しましょう」
 シルワとアルシェが投げた針が、巨大鮭のヒレにかかる。
「よし! 魔法が使えるものは攻撃を!」
「よーし、お兄さん頑張っちゃうぞー!」
 ツヴァイが放ったプチマドは鮭の体に当たって弾け、抵抗力を少しだけ弱める。
「うまそうな鮭だな、これ攻撃したら肉質変わったりするのか?」
 プラムが放ったマドガトルもエラの部分を確実に捉える。
 苦痛にもがくように暴れ出したところを見ると、弱点はどうやらその辺りらしい。
「今だ! 引っ張れ!」
 シルワ、ドライク、アルシェの三人がタイミングを合わせて竿を引く。
 水の中で暴れる鮭も、少しずつ抵抗しているようで。
「三人で引っ張ってるのに、ものすごく重いですね……」
「それでも力を緩めたら、一気に持っていかれそうッス……」
「ええ……アルシェの腕ももう限界で御座います……」
 必死に耐える彼らの上空をビャッカが飛び、巨大鮭に近づく。
 玉網……にしては少し大きい網を振りかぶり、抵抗する鮭の頭にかけた。
 普通の魚を捕獲するぐらいな十分なサイズがありながらも、この鮭の三分の一程度しか覆うことが出来ない。
「サポートのつもりでいたけど……だいぶ重いね……!」
「でも、これなら……!」
 ツヴァイがもういちど魔法を放つと、一気に鮭の抵抗力が一気に落ち。
「よし! 一気に引き上げろ!!」
「あっしの全力でヤンスうううう!!!」
 ドライクの巨大な竿に引き上げられる鮭。
 その巨体は水面から空中へと弧を描き、虹色に輝く鱗が陽光を反射する。
 ――そして。

 グオオオオオオオオオオオオオ!!!

 ――鮭だけど、鮭じゃねえ! いや、鮭だけど!!
 皆が、そう思った。
「任せろ! 私が決める!」
 ヘルムートの祖流還り。
 白銀の狼はその前足で地面を掴み、巨大鮭との距離を一気に詰める。
 蛇に睨まれた蛙。
 狼に詰め寄られた鮭である。
 そしてその力が途絶え人間の姿へと戻るタイミングで、大きく空中へと跳躍。
 地面に打ち上げられた鮭は、為す術もなく。
 ヘルムートの『バタフライリッパー』、つまり『鎌』は。
 巨大鮭の見事な『カマ』を、三日月型に切り裂いた。

 ビチビチビチビチビチビチビチビチ!!

「ん? ビッ――」
 プラムの発言には自主規制を入れて。
「みんなすげーなー!」
 フィーカの目が学園生への尊敬できらきらと光る中。
 その鮭が動かなくなるその瞬間を、全員で見守った。

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 同刻、保健室。
 カズラ・ナカノトの意識が回復したようで。
 メッチェ先生に事の成り行きを問われている最中だった。
「ん……あぅ……」
 目が少し泳ぎ、メッチェの顔を見つめて。
「……おに、ぎり。……たべたくて」
 少し震えながら発する言葉の端端は、聞き取れないほどに小さく。
 それでも彼の中では頑張って言葉を発した部類に入るようで。
 言い終わった後には『うぅ……』といいながら枕に顔を埋めてしまった。
「うむうむ~、たくさん食べることはいいことだメェ~」
 ちょっと待ってるメェ~と言いながらメッチェが向かうのは、学園の巨大倉庫。
 日用品から購買部の在庫、そして食料庫としても使われているこの倉庫であるが。
「んー、お米お米……どこにあるメェ……」
 広すぎる倉庫の内容を全て把握している人物が、学園にどれぐらいいるのだろうか。
「あ、見つけたメェ! ……けど、お米は『炊く』必要があるメェ……」
 メェ……と考えながらお米を運ぶ。
 それもまた大量に。
 もちろん魔法で運んでいるので、重さは問題なく。
 それでもそのお米を美味しく炊く方法がわからないメッチェ先生の脳裏に、貴人の姿が思い浮かぶ。
「貴人なら知ってるかもしれないメェ~!」
 そして保健室に戻り、カズラに嬉々として話しかける。
「朗報だメェ~! おにぎり、食べられるメェ!」
 不安そうにメッチェを見つめていたカズラの表情がほわーっと明るくなり、すぐにベットから跳ね起きる。
「好きな具材は、なんだメェ?」
 ハッとしたカズラの表情。
「具材?……えっと……」
 にこやかな、本当に柔らかい顔で。
「……しゃけ!」

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 巨大鮭を討伐した学園生たち。
 強い鬼と聞いていたのもあり、すこし拍子抜けした感じで。
「これは……鬼ですか……?」
 シルワが疑問を口にする。
「ははア、アルシェもそうは思えません……他にもいるのでは……」
「そうだねー、お兄さんもちょっと腑に落ちないところはある……というか」
 鬼らしき影が他にもあるのでは、と皆が思案しているとき。
「あー。えっと、だな」
 貴人がその口を開く。
「みんなが鮭を釣っている間に、その、メッチェ先生のところに行ってきたんだが……」
 『おにぎり』の勘違いを教えようとした、そのとき。
「みなのしゅ~! ごめんなさいだメェ~!」
 そのメッチェ先生が遠くから手を振りながらこちらへと向かってくる。
 その脇にいるのは、今回の騒動を起こした張本人である、カズラ・ナカノト――と、大量の米俵。
「つよ~いしゃけ討伐、ご苦労だったメェ~。本当に申し訳ないけれど、この騒動は全部あっちの勘違いだったメェ……」
 彼女の顔が、申し訳なさそうに曇る。
「勘違いって、どんな勘違いなんですか……?」
 ビャッカの質問に、メッチェがすこし恥ずかしそうにしながら。
 『つよ~いしゃけたいじ☆』に至るまでの経緯を説明した。
「……ということだメェ。ほんとうにみなのしゅ~には迷惑をかけたメェ……」
 へなへな~と、数名がその場にへたり込む。
「あはははそっかおにぎりね、はははは……」
 ツヴァイが脱力し。
「あぁ! 『おにぎり』ですね、やっとわかりました!」
 シルワは『やっともやもやが解消された!』と言わんばかりの明るい表情で。
「しかし先生、こちらの米俵は何で御座いましょう?」
 メッチェの脇に積み上げられた米俵。
 なぜこんなものがここに? という皆の疑問をアルシェが代表して問う。
「あ、そうだったメェ! これを今から、おにぎりにしようと思ってたんだメェ!」
「あー、おにぎり? あの、米を握って作るアレ?」
 プラムがにぎにぎ、としている手は、きっと誰もが知っているおにぎりの形とは違って。
「しかし何故おにぎりなのですか?」
 プラムの言葉にかぶせ気味で、ヘルムートが先生に聞く。
「あ、そうだメェ。まずは紹介しないとだったメェ~」
 横にいるドラゴニアを手で指し。
「こちら、カズラ・ナカノトくんだメェ~! さっき話した通り、お腹が空いて倒れていたみたいだからみんなでカズラに料理を振る舞ってあげて欲しいメェ~」
 なるほどそういうことなら、と。
 どんな料理を作ろうかと各々が考えを巡らせているとき。
「カズラさんは、何か好きな食べ物とかありますか……?」
 無言のカズラにシルワが問いかけて。
 メッチェの後ろに隠れながら、カズラ。
「う……あ、えっと……」
 じーっと、シルワを見つめる。
 そしてなんとなく、目を伏せながら。
「……しゃけ」
 クールビューティな彼女の顔が、すこし綻ぶ。
「せっかく討伐した鮭がここにあるわけだし、すこし買い出しに行っておにぎりを作る準備をしましょうか」
「そうだね! おにぎりしよう!」
 ビャッカもシルワの提案に賛成する。
「それじゃあ、二人が買い出しに行ってる間にお兄さんたちは器具の準備をしちゃおうか」
 ツヴァイが男性陣をまとめ上げる。
「場所は、ここでいいだろうか」
「そうだな、ここに用意してしまおう」
 ヘルムートと貴人が調理器具を取りに行こうとしたそのとき。
「そうだメェ~! 貴人にはお願いがあったんだメェ~!」
「はい、何ですか……?」
「おいしいお米を炊く係に、任命するメェ~!」
 米俵と、飯盒(はんごう)が渡される。
 東の国の出身なら一度は使ったことがあるとされる飯盒。
 お米を炊くなら、これがうってつけの道具だ。
「もちろん料理もしてもらうので、覚悟するメェ~!」
 一番乗り気なのはメッチェ先生かもしれない。
「わかりましたよ、先生」
「そしたらアルシェは火を起こすお手伝いを致しましょう。ええ、ええ」
 素早く枯れ木を集めるアルシェと、飯盒と米を受け取った貴人。
 二人は早速、お米を炊く準備に入るのであった。
「そしたら、そうだな……調理器具を取りに行くのは……」
 ヘルムートが見渡すと、ツヴァイと目が合った。
「じゃあ僕が付いて行こうかな。ドライクくんとプラムくん……あとフィーカくんはどこかから作業台を持ってきてくれると嬉しいなー」
「了解でゲス!」
「あーいよ」
「おーけいだ!」
 と、三人の元気な返事で全員の担当が決まり、それぞれが行動を起こす。
 カズラの歓迎会も兼ねたおにぎりパーティまで、あとすこし!

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 そして数刻。
「おーい、米炊けそうだぞー。そろそろ料理のほうに移ってくれー」
 お米を蒸らす時間で、皆も鮭料理を作ってしまおうという算段。
「調味料や使えそうな具材は購買部から買ってきたので、心配しなくても大丈夫ですよ!」
 これまでの課題で数々の料理をこなしてきた学園生たちに、死角はない。
「じゃあ、おにぎりを握る人と……他にも料理をしたい人は、そっちも合わせてお願いしようかな」
「あっしは少しだけ切り身を分けて欲しいでヤンス!」
 ドライクは、料理をみんなに任せて『鮭とば』と『麹漬け』をつくるみたいだ。
 東の国に伝わる魚の調理法は様々で、基本の焼く、煮るなどの他にも、干したり漬けたりがあるらしい。
「今日すぐに食べることはできないでゲスが、この大きさを余らせるのも勿体ないッスから、保存できるように加工するのが一番でヤンスね!」
「そうだな。そしたら自分はムニエルを作るとしよう。簡単だが定番で美味しいはずだ」
「オレは味噌焼きだな……普通のやつは誰かに任せる」
「じゃあ私が塩焼きにするね!」
「アルシェは刺身も捨て難いと思います」
 様々な種族や、色んな国から人が集うフトゥールム・スクエアだからこそ可能な、プチ異文化交流だ。
 そして『鮭』という食べ物が、世界のいろんな場所で愛されて食べられている証明でもあった。
「じゃあ俺はおにぎりを握るとするかなぁ」
「そうだねー、お兄さんも焼きおにぎりとか食べたいし。ちょっと多めに握っちゃおうかなー!」
 プラムとツヴァイがおにぎりを握る。
 にぎにぎ。
 にぎにぎ。
 にぎぃ……にぎっ、にぎぎーっ。
「えーっと、プラム、くん?」
「んあ? なんだ?」
 ツヴァイの目の前に握られているのは、綺麗な三角形のおにぎり。
 綺麗に海苔も巻かれていてみるからにおいしそう……なのだが。
 問題は、プラムが握った『ブツ』である。
「あーすまねえ。うっかり、普段握り慣れてる形になっちまった」
 ネオでアームストロングなおにぎり。
「完成度は……高いね、あはは……」
 そびえ立つ巨塔は、とりあえず放置して。
「プラムくんは他に食べたいものとかないの?」
 と、話題を切り替える。
「あー、そうだなあ。山葵マシなサーモン丼はどうだ? 甘めの醤油と山椒って最高」
「いいじゃんいいじゃん、作ってみなよ!」
 ツヴァイが目を輝かせたとき。
「ま、捌くのは苦手だから得意なやつにに任せましてよ~」
 と、またにぎにぎとおにぎりを握り出すプラムであった。

 そして少し離れたところ、調理班。
「おおお! さすがは未来の我が主でヤンス!」
 麹漬けをしながらドライクがほめていたのは、ビャッカの腕前。
「まずは定番のおにぎりだね! 何種類か作って、バリエーションを楽しめるようにしよう!」
 巨大鮭から切り取った身に、薄く塩を振る。
 中身を柔らかく仕上げるために弱火でじっくり焼き、ほぐす。
 熱々だが脂が滴らない程度の、具材に適した焼鮭。
「シルワさん! これを具材にしておにぎりをお願いします!」
「わ、わかりました!」
 丁寧に握られたシルワのおにぎりは、形がとても整っていて美味しそうだ。
 買い出しの時に買ってきた梅干しやツナも取り出し、いろんなおにぎりを作っていく。
 そしてビャッカも切り身にされたハラミを取り出して。
「こっちはあぶり焼きだよ! 脂が出過ぎちゃわないよう、ほぐさずにね!」
 脂が炭火で焼ける香りが、食への本能をくすぐる。
 ドライクが今すぐにでもかぶりつきたい衝動を抑え、涎を飲み込む。
「焼きの香ばしさ、そして油のうまみ。鮭の美味しいところをいっぱい堪能してね!」
 ビャッカのお料理スキルは、まだ止まらない。
「最後は混ぜ込みご飯だよ! 普通のおにぎりとはまた違った独特のハーモニーを感じよう!」
 砕いた鮭に、アルチェ産の乾燥わかめ。そこに白ごまを混ぜ込み。
 そしてこれは、ビャッカ自身の手でおにぎりおにぎりされていく。
「うんうん、とりあえずはこんな感じかな!」
 ビャッカの前に並べられた料理はどれをみても美味しそうで。
 しかし料理の腕は、彼も負けていなかった。
 アルシェ・スレット。
 彼の料理スキルは、きっとこの中で誰よりも高く。
 みんなが料理をするために使っていた切り身も、全部彼が一人で捌いていた。
「ははア、そろそろアルシェも料理がしたい頃です」
 そう言いながら彼が取り出したのは昆布。
 刺身にした鮭を、昆布の上に並べる。
「あ、あの、これはどういう料理なのでしょうか?」
 目の前でおにぎりを握っているシルワが、不思議そうに聞く。
「こちらは昆布締めという、言わば刺身の進化系で御座います」
「刺身の、進化系。ですか……?」
「ええ、ええ。昆布の上に敷いた鮭に少しだけ塩と砂糖をかけ、きっちりと巻いて少し置いておきますと……」
 説明しながらも、アルシェの手は止まらない。
 普段から料理に慣れ親しんでいる証拠だ。
「昆布の出汁。つまりは旨味が鮭の切り身に移り、なんとも美味く仕上がるので御座います」
 確かに調理自体は難しくはなさそうだが、知らなければ出来ない、アルシェの知識による逸品である。
「しかしええ。隣から漂ってくる味噌の香りにも、心が動きますねえ」
 アルシェの隣。
 先ほどまでビャッカが調理していた場所で料理をしているのは、貴人。
「鮭はいろんな食べ方があるし、安いし美味いしで優等生な魚だよな」
 そう言いながら彼が作っているのは、味噌焼き。
 鮭の切り身を鉄板の上に敷き、味噌で焼くだけの簡単な調理だが。
 焼けた味噌の香ばしい香りは、他の調味料じゃ再現できないほどに豊かで。
「そういえばはらこが余っていた気がするな……誰も使わないか?」
 周りに確認を取り、はらこ――よく『いくら』と言われるそれを持ってくる。
 はらこを醤油漬けにしている間、小さな鍋を火にかけて、鮭の切り身を醤油と砂糖で煮る。
 煮詰まる頃には味噌焼きも完成し、はらこも十分に漬かっていて。
「よし、いい味だ」
 余っていた米と煮汁、そして少しだけ水を足して鍋でお米を炊いていく。
「ほう……初めて見る料理だ。これは何というのだ?」
 ヘルムートもムニエルを作りながら、貴人が作っている料理に興味津々で。
「これか、これは……『はらこ飯』だ。まだ完成ではないがな」
 煮汁で炊けたお米に鮭の切り身を乗せ、はらこを散らして丼にする。
 余ったはらこも醤油漬けにしてあるので、おいしくいただけるだろう。
「よし、完成だ」
 全員がそれぞれの料理を作り終える。
 メッチェ先生主催、カズラ・ナカノト歓迎会の始まりだ!

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 フィーカはみんなの料理をテーブルまでせっせと運んでいた。
「うおー! めちゃめちゃうまそうだなー!」
 全員で料理を作れば、その量もやはり圧巻で。
 おにぎりだけでも種類は豊富。
 定番の鮭おにぎりに、ハラミ、混ぜ込みご飯、梅、ツナマヨ、焼きおにぎり。
 そのほかにも、はらこ飯や山椒たっぷりのサーモン丼が並び。
 それらを彩るように、ムニエルや味噌焼き、昆布締めした刺身やはらこの醤油漬けが並ぶ。
 まだ完成こそしていないが、ドライクが作っていた鮭とばや麹漬けも今後の楽しみだ。
 だが一つ、どうしても腑に落ちないのが。
 ネオでアームストロングにそびえ立つ巨塔。
「おい……これはお前が作ったんだろうプラム?」
 ヘルムートの顔が引きつる。
「あー事故だよ事故、だれだって握りやすい形に整えてしまうもんだろ~? それとも何? 大きさに嫉妬した~?」
「貴様……」
 一触即発、あたりにどんよりとした雰囲気が流れ始めた時。
「はーい、今日は歓迎会、仲良くみんなで乾杯するメェ~!」
 メッチェ先生が『かんぱ~い!』という明るい声でその雰囲気を吹き飛ばした。
 隣で小さくカズラも『……かんぱい』と言っているので、きっと雰囲気は暗くないのだろう。
「それで、どーよカズラくぅ~ん、俺のおにぎり、食べる?」
 天使……というよりは天使の彫刻のような固まった笑顔で、カズラに件のブツを差し出す。
 ヘルムートはまた怒鳴りそうになったところで、メッチェ先生の顔を思い出し、とっさに怒りを沈めた。
 一方ネオでアームストロングなおにぎりを差し出されたカズラは。
「……ぅあ、えっと……おおきい、おにぎり!」
 なんともまあ無邪気な笑顔でかぶりつき。
「……おいしい!」
 と、プラムの顔をキラキラした目で見つめるのだった。
 ヘルムートはプラムの顔を極力見ないようにしているようで。
「今日は大変だったな、フィーカ。なにか食べたいものがあったら取ってやろう」
 祖国の弟を思い出してしまって敵わないヘルムートは、柄にもなくお節介を焼いてしまいそうになる。
「えーっと、あの、あれ! むにえる? が食べたい!」
 フィーカが指差しているのは、ヘルムートが作ったムニエル。
 彼曰く、『なんかじゅわ~ってなってて、いいにおいで、うまそう!』とのことだ。
 一口目を口に運んだフィーカ。
「うおー! めっちゃうまい! これ狼のにーちゃんがつくったのか!?」
 照れ笑いを隠しながら、ヘルムート。
「ああ。口に合ったようでよかった」
 冷静を装ってはいるが、その尻尾は、ゆっさゆっさと揺れており。
 こういうのも悪くないな……と思っていたそのとき。
「お、うめーじゃんこのムニエル。どうよフィーカ、俺の山椒マシ丼も食うか?」
 彼に取って最悪の相手が、この平和な世界に現れる。
「うるさいプラム! お前に食わせる鮭はない!!」
 ついに、プラムに対する対抗心が剥き出しになっていくヘルムート。
 そんな中で平和なのは、女性陣とカズラが話している一角。
 ビャッカが作った数々の料理を、カズラに食べさせているところだった。
 まずは定番鮭おにぎり。
「……おいしい、しゃけ、だ」
 カズラの顔も綻ぶ。
「やった、次はこっちも食べてみてください!」
 次に渡したのは、ハラミをあぶり焼きにして作ったおにぎり。
 滴る油の旨味は、きっとカズラにも気に入ってもらえるだろうというビャッカの自信作。
「……!!」
 カズラは、言葉を発しなかった。
 ただその顔は今までで一番驚いた表情をしており。
「……はむはむ! むぐむぐ……はむ!」
 一気に二個のおにぎりを平らげてしまった。
「あはは、そんなに食べたら喉に詰まりますよ?」
「でもビャッカさん、このハラミ、本当に美味しくて……」
 シルワもおにぎり一つをぺろりと食べてしまったらしい。
「でもまだまだいっぱいあるからね! ゆっくり食べよう!」
 こくこく、と、カズラもうなずく。
「そうだ、せっかくだからこっちも食べてもらって……」
 混ぜ込みご飯のおにぎりをカズラに勧める。
 まだまだ食べるペースが落ちないカズラ、よほどお腹が減っていたのだろう。
「……おいしい。しゃけ、だけ……じゃない、けど。おいしい」
 初めて食べる味だったのだろうか。
 一口食べて目を丸くしながらも、おいしいという評価をつけてくれた。
「カズラさん、どれが一番おいしかったですか?」
 そう聞かれたと同時。
 カズラはもう一個、ハラミのおにぎりに手を伸ばしていた。
「あはは、聞くまでもなかったですね……!」
 もぐもぐ。
 彼の笑顔が、最大の返事だったらしい。
「ねーねーカズラくん、僕たちの鮭も食べていってよ!」
 ツヴァイがカズラを呼び、貴人がいろんな料理を少しずつ皿に盛る。
 アルシェも自身が作った昆布締めの評価が気になっているようで。
「カズラ様、アルシェが作ったこの昆布締め……如何で御座いましょうか」
「……ん……おい、しい」
 初めて食べる味に、カズラだけだなく周りのみんなも驚いていた。
「おー、これはまた面白い風味がするね」
「確かに、これは美味しいな」
「そうでヤンスね、初めて食べる味ッス」
 アルシェも自分の料理を褒められてまんざらでもないらしく。
「ええ、ええ。有り難う御座います。アルシェも感激で御座います」
 その後はツヴァイの焼きおにぎり、貴人の味噌焼きと食べていき。
「最後は、これだな」
 貴人が作った最強の逸品、はらこ飯。
 もう満腹のはずなのに、食欲が湧き立つ。
「よーし! 最後までたべちゃうぞー!」
「そういえばツヴァイのにーさん、しっかり食べてるでヤンスね」
 あー、うーん? と考えながら、ツヴァイ。
「まあこだわりがあるわけでもないけど、美味しいものは好きだよー? 流石に睡眠だけじゃいざってとき危ないし。まぁ、僕はご飯より甘いものの方が好きなんだけどね」
 てへ、とでも言わんばかりにさらーっと流すツヴァイ。
「ちなみに味覚は正常。ごはんに砂糖はかけたりしないからね?」
 そして付け足すように『ご期待に沿えなくてごめんねー』と言いながら。
 貴人が作ったはらこ飯に手を伸ばす。
「あ、ツヴァイさん! 私も、少し貰っていいでしょうか?」
 シルワもいい匂いにつられてきてしまったようで。
「あ、ずるーい! 私も食べたいよ!」
 ビャッカもそれに加わる。
「そう焦るな。多めに作っておいたから、全員分ある」
 貴人が全員にはらこ飯をよそい。
 食べた者からは歓喜と称賛の声。
 締めにはちょうどいい丼だったなあと、皆がそう思っている時。
「……あ! おにぎり!」
 カズラが、ふと言葉を発した。
「おにぎり……? は、確かにたくさんあるが……」
 ヘルムートの言葉にカズラは『ぶんぶん』と首を振って、自分の髪の毛をわしゃわしゃーっとしてみせる。
「髪の毛……?」
 ヘルムートが、辺りを見渡す。
 白髪が多い面々の中に、黒髪の貴人。
 白いお米の中に、海苔。
「あはははは! お米と海苔、そっかあ!」
 ツヴァイが『あー! おなかいたい!』と言いながら笑う。
「じゃ、俺ブランド米のプラニシキって事で」
 アーヴィング産ブランド米、プラニシキ(自称)の誕生。
「は? プラニシキ?」
 そこにヘルムートの対抗心も乗っかって。
「貴様……○○ニシキなど、ブランド米を名乗るなんておこがましいぞ。そう名乗るのであれば、アーヴィング家代表としてヘルヒカリと名乗らせてもらう」
 アーヴィング産ブランド米、ヘルヒカリ(自称)、爆誕。
「あはははは! やめて、ふたりとも! ひいい!」
 ツボに入ったのか、笑い転げるツヴァイお兄さん。
 カズラも終始笑顔で、とても平和な時間が流れていたその時。
 シルワが、ふと言葉を発した。
「そういえば、カズラさんはどうして森に倒れていたんですか……?」
 確かにそうだね、と誰かが賛同する。
 カズラを見つけた張本人、フィーカだってその真相を知らないのだから、気になっているはずだ。
「……えっと、う、」
 言葉に詰まるカズラ。
「すまないな、ゆっくりでいいんだ。君のことを聞かせてくれ」
 ヘルムートが優しく諭す。
「ぅ……あ、えっと……」
 絞り出すように。
 とても、小さな声で。
「……おぼえて、ない」

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 鮭の騒動があって数日後。
 あの場にいた全員が、学園の広場に集っていた。
 もちろん、カズラやメッチェ先生もだ。
「…………」
 心配そうなカズラの表情。
「今日はね、みんなに提案があって!」
 ビャッカから話を切り出したところを見ると、あの日から話し合っていたのは女性二人か。
「カズラさんの記憶を、みんなで探してあげようと思うんだ!」
 記憶喪失のドラゴニア。
 学園にはリバイバルを始めとして、記憶の断片を失った生徒もちらほらいるので、そう珍しい話ではないのだが。
 カズラ本人から聞いた話だと、覚えているのは名前だけ。
 正確な年齢や、出身、なぜこの学園にたどり着いたかなどの一切は不明。
 外見からドラゴニアということはわかるが、その左眼はかつて見たことがないほどに、鏡のような銀色をしていて。
「確かにわからないことはたくさんありますが……私たちにできることがあると思うんです」
 少し不思議な彼の、その過去に興味があったのかもしれない。
 男性陣もそれに賛成する。
 そして、メッチェ先生。
「もちろんおまえさま方だけで、とは言わないメェ~。普段の授業が忙しいしょくーんもいるだろうから、お友達を誘ったりして少しずつやっていくといいメェ~!」
 学園生に、異議はなかった。
 カズラ・ナカノト。
 突如学園に現れた、記憶喪失のドラゴニア。
 その記憶を辿る道のりは、険しいものになるかもしれない。
「だけどいまは!」
 突如皆の前に姿を現すメメ・メメル学園長。
「入学おめでとうだぞ、カズラたん☆」
 春の終わりを告げる風が、新たな出会いを祝福するように吹いていた。



課題評価
課題経験:0
課題報酬:0
【想刻】鬼斬りの古龍
執筆:じょーしゃ GM


《【想刻】鬼斬りの古龍》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《2期生》 シルワ・カルブクルス (No 1) 2020-05-04 23:43:50
村人・従者コースのシルワ・カルブクルスです
ところで、彼は「鬼斬り」と言っているようですけど…鬼…オニ…オニギリ?
…なんだか勘違いしているような気がしますが、先に鮭を釣ってからそれを倒すことから始めるようですね
そういうことなので、よろしくお願いしますね

《野性のオオカミ》 ヘルムート・アーヴィング (No 2) 2020-05-05 22:28:02
(ぐっ…姉上…に似た容姿の方が2人も…ッ!絶対に無様は見せられないな…)
…ごほん、魔王・覇王専攻のヘルムート・アーヴィングだ。

餓鬼やゴブリンの上位互換…オーク、オーガの様なものかと思ったが鮭?
学園は変な生物・魔物が多いと聞くから、その範疇なのだろうか…。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 3) 2020-05-05 22:38:03
なーんか、カラーリングに親近感を覚えたもんで立ち寄ってみたら…何だか大変そうだな?

鮭型の鬼…オーガ、オーク…頓珍漢なそんな生物いるのかしら。
そして俺の大好きなモンは付いてるのか…なぞは深まる。
ま、ほらこんな所にお誂え向きな釣り竿もあるしよ。

五月らしくレジャーを楽しむとするか。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 4) 2020-05-06 16:15:41
俺たちは米...白米ヘッド...そんな気がしてきたな

《2期生》 シルワ・カルブクルス (No 5) 2020-05-06 17:50:25
確かに…この課題は白系の髪色の人が多いような気がしますね…。
鮭の件が終わったら、なにか料理を作りましょうか。

《野性のオオカミ》 ヘルムート・アーヴィング (No 6) 2020-05-06 20:32:53
梅干し...梅干し納豆丼...とか食べたいですね...。

釣って鬼じゃない鮭は、マリネとかキッシュとか美味しそうです。
僕はそこまで料理上手ではないので、それこそ米を炊くしか出来ませんが。

《未来を願いし者》 アルシェ・スレット (No 7) 2020-05-06 21:43:22
賢者・導師コース、アルシェ・スレットで御座います。アルシェも一応、白系統で御座いますよ。ええ、ええ。
食物の色としては……やや不適切で御座いますけれども、ねえ。(喉の奥で引きつり笑いを漏らす)

鮭となればやはりバター焼きや、あるいは軽く火を通して醤油が一番で御座いましょうか。
ええ、ええ。料理はお任せくださいまし。

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 8) 2020-05-06 22:34:36
…オールドライス(古米)感はあるけどやっぱり米が来たな…

( `・ω・´)ンンン?
遠くから海苔っぽい人影がやってき…


全員合わせてオニギリじゃねえか…

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 9) 2020-05-06 22:55:26
海苔・・・?
あぁ、髪の色のことか。
・・・これにあやかって美味いおにぎりを作れたら良いな。

それにしても鮭か・・・
焼いてよし煮てよし蒸してよし、生とは言わないが、ソルベにしても良いからな・・・なかなか万能で美味しいし安価な魚だよな。
味付けも癖がない分幅広く使えるし調理し甲斐があるよな。


《ゆうがく2年生》 ドライク・イグナ (No 10) 2020-05-06 23:13:41
村人・従者コースのライクさんッスよー。
よろしくでヤンス。

釣りができると聞いてやってきたでゲスよ。

・・・米?
何の事ッスか?

《模範生》 プラム・アーヴィング (No 11) 2020-05-07 13:35:31
なんだろうね?
ところで俺は当分はプラニシキと名乗らせてもらう。皆もそのように呼ぶように。
そして種族もブランド米のフェアリーにチェンジさせて頂きましてよ。

で、俺の一応プランをアナウンスしておくと
キャンペーンアイテムの立派な竿で釣り、鬼鮭...ヌシ的な?のをフィッシング。
余った鮭はあれだ、Delicious eating だ。

《野性のオオカミ》 ヘルムート・アーヴィング (No 12) 2020-05-07 13:44:45
ハッ...錚々たる面々に思考が停止していた。
ええと、自分は貸し出しされるであろう釣竿に加え、餌などで鮭を...
...、...ほぼ漁業ですねこれ。

まぁ、生態系を壊さない程度にリリースもしますけど。
...熊のルネサンスであればこういうの素手でも出来たんでしょうけど。

ところで貴様がxxニシキを名乗るのは傲りすぎじゃないか?
僕はアーヴィング家としてヘルヒカリと名乗らせて貰おう。(対抗心)

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 13) 2020-05-07 22:41:21
たしかに白髪銀髪が多いね。
私は一応青なんだけど、白系にも見えるかな…

う~ん、しゃけ…鮭…う~ん?
まぁ、違和感はあるけれど動くしかないよね。とりあえず頑張ろう。
どう動くかはこれから考えるよ。