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大図書館の休日~地獄の蔵書点検


ストーリー Story

「あー、諸君、図書館は人類の英知の結晶と言われておる。英知な、エッチの結晶ではないぞ☆」
「学園長、駄洒落は求めていません」
 ブ~、と【メメ・メメル】はたちまち渋い顔をした。
「エミたん、あのな、そういうときはだな、たとえ面白くなくても『ちゃうやろー!』とかツッコんでおくのが礼儀だぞ」
「そうですか」
「『赤ちゃんのことですか?』とか高度なツッコミを入れるのもアリ☆」
「意味がわかりません」
 いつも通りのメメル学園長に決して乗らないこの女性は、エルフタイプのエリアルで、名を【エミ・バナーマン】という。
 おそらくこの世界最高峰ともいえるエッ、もとい、英知の結晶、それがこの場所、フトゥールム・スクエアが誇る大図書館『ワイズ・クレバー』である。君たちはそのエントランスホールに集まっている。
 図書館はあまりに大きく、その書庫ともなれば並大抵のダンジョン以上の広大さだ。噂では内部には川が流れ谷があり、行方不明になった学生たちが、共同生活している集落まであるといわれている。
 当然これほどの規模の図書館だから司書は何人もいる。そのひとりがエミなのだ。
 エミの特徴はそのメガネにあるだろう。フレームが大きく、蝶みたいにつり上がった独特の形状をしている。暗い桃色の髪で、前髪の一部を縛ってヘアバンドで巻いていた。一部では『バタフライメガネ』とあだ名されているらしい。
「えー、エミたんが冷たいのでそろそろ本題に入るが、実は今日、わざわざ図書館の閉館日にみなに集まってもらったのはだナ、今日が年に何度かある蔵書点検の日だからなのだよ。ストレートに言うと点検の手伝いをしてくれという話だ」
 君たちは『臨時休館日』という札のさがっている図書館に呼び出されたのである。エミとメメルは司書カウンターの向こう側にいる。
「といっても、毎回全部の書籍を点検しているわけではありません。今回は、都市近郊に出没する初級モンスター関連の書籍です」
 エミは君たちにリストを配った。
「ここに掲載されている書籍をチェックしていって下さい」
 リストの紙束は、えっ! というくらい分厚い。点検対象は図書館の本すべてではなく、モンスター関連の蔵書だけ、しかも都市近郊かつ初級に限られている。それなのにこれだけの人数が必要なのだ。
「見つかったものにはリスト横の四角覧にチェック(『〆』みたいな印)を、ないものにはバツ(『×』)をつけます。簡単ですね」
 なるほど、と君たちはうなずいた。アルバイトとしては楽なほうかもしれない。
「バツ印が13個たまるたびに、その本に関連したモンスターが襲ってきます」
 なるほど、と君たちはうなず……くはずがない!
「安心してください。本物ではなく、長年図書館に蓄積した紙の精がイタズラをしているだけです。強さは本物と同程度ですが倒せば消えます」
 安心できるかー! と声が上がったがエミは無視している。
「中級や上級じゃなかっただけ良いではありませんか」
 良くないし!
「大丈夫です。死んだ人はいません。私がここに就職してからは」
 最後のそれ付け加える必要ある!? 
「本来図書館では大声での会話、食事、戦闘は御法度です。しかし点検日はそれが許されるのです。大いにどうぞ。ただし、他の書籍を傷つけたり書架を倒したり本を燃やしたりはしないでくださいね。それではよろしくお願いします」
 それだけ言うとエミは歩き出したのである。
「ついてきて下さい。書庫の該当部に案内しますので」

 エミと、問答無用気味に連れて行かれる生徒たちの背を見送ってメメルはしみじみとつぶやいた。
「毎度思うが……あの子には勝てんなあ……」


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 4日 出発日 2020-05-31

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2020-06-10

登場人物 8/8 Characters
《人たらし》七枷・陣
 ヒューマン Lv18 / 賢者・導師 Rank 1
異世界:情報旅団テストピアという所に住んでいたが、とある仕事の最中に、この世界に強制転移してしまった。 普段は一人称おじさん。真面目、シリアスな場合はオレ。 本来は50手前のアラフィフおじさんだが、何故か30歳以上若返ってしまった。強制転移した経緯が原因と思われるが真偽は不明。 普段はいかに自分の得意分野だけで楽出来ないかを考えているダメ親父的な人間。 自分や同行する仲間が危機に陥ると気合いを入れて打開しようと真面目モードに。 厄介事に巻き込まれるのは嫌い。お金にならない厄介事はもっと嫌い。でも一度関わってしまったら何だかんだ文句言いながら根気よく取り組む。 やれば出来る人。でも基本ダメ人間。 恋愛事は興味をあまり示さない枯れ気味な人。超若返っても現状は変わらず。 どうにかして元の世界へ戻る為、フトゥールム・スクエアに入学。 転送、転移関係の魔法や装置を徹底的に調べる事が目下の目標。 魔法系の適性があったらしいので、雷系を集中的に伸ばしたいと思っている。自前で転移装置の電源を確保出来るようにしたいのと、未成熟な体躯のフォローとして反応速度メインの自己強化が主な理由。理想は人間ダイナモ。 転移直前まで一緒にいた仲間の女性3名(マナ、マリア、マルタ)の安否を心配している。 「はぁ~…どうしてこんな事になったんだ?…おじさん、ちゃんと元の世界に戻れるんだろうか…こんな厄介事は前代未聞だよ…トホホ」
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《ゆうがく2年生》蓮花寺・六道丸
 リバイバル Lv13 / 芸能・芸術 Rank 1
名前の読みは『れんげじ・りくどうまる』。 一人称は『拙僧』。ヒューマン時代は生まれ故郷である東の国で琵琶法師をしていた。今でもよく琵琶を背負っているが、今のところまだ戦闘には使っていない。 一人称が示す通り修行僧でもあったのだが、学園の教祖・聖職コースとは宗派が異なっていたため、芸能・芸術コースに属している。 本来は「六道丸」だけが名前であり、「蓮花寺」は育ててもらった寺の名前を苗字の代わりに名乗っている。 若い見た目に不釣り合いな古めかしい話し方をするのは、彼の親代わりでもある和尚の話し方が移ったため。基本的な呼び方は「其方」「〜どの」だが、家族同然に気心が知れた相手、あるいは敵は「お主」と呼んで、名前も呼び捨てにする。 長い黒髪を揺らめかせたミステリアスな出で立ちをしているがその性格は極めて温厚で純真。生前は盲目であったため、死んで初めて出会えた『色のある』世界が新鮮で仕方がない様子。 ベジタリアンであり自分から肉や魚は食べないが、あまり厳密でもなく、『出されたものは残さず食べる』ことの方が優先される。 好きなもの:音楽、良い香りの花、外で体を動かすこと、ちょっとした悪戯、霜柱を踏むこと、手触りのいい陶器、親切な人、物語、小さな生き物、etc... 嫌いなもの:大雨や雷の音
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《2期生》シルワ・カルブクルス
 ドラゴニア Lv15 / 村人・従者 Rank 1
細い三つ編みツインテールとルビーのような紅い目が特徴のドラゴニア 元々彼女が住む村には、大人や数人ぐらいの小さい子供たちしかおらず同い年程度の友達がいないことを心配した両親にこの学校を薦められて今に至る 一見クールに見えるが実際は温厚な性格であり、目的である世界の平和を守ることはいわば結果論、彼女の真の目的は至って単純でただの村人として平穏に暮らしたいようである しかし自分に害をなすとなれば話は別で、ドラゴニアらしく勇猛果敢に戦う 一期生にはたとえ年下だとしても「先輩」呼びをするそうだ 「私はただの村人、できる限りのことをしただけです」 「だれであろうと私の平穏を乱す者はすべて叩き伏せます」 ※口調詳細(親しくなったひとに対して) 年下:~くん、~ちゃん 同い年あるいは年上:~さん ※戦闘スタイル 盾で受け流すか止めるかでダメージを軽減しつつ、斧で反撃するという、いわゆる「肉を切らせて骨を断つ」戦法を得意とする

解説 Explan

 気楽なアルバイトのつもりが、実はがっつり戦闘アドベンチャー! 地獄の蔵書点検に挑む勇者は誰だ! 君だ!

 リストから欠けた本が13冊になるたびモンスターが襲ってくるというデンジャラスな蔵書点検に挑みます。
 実際はモンスターそのものではなく、紙の精なる謎の存在がしかけてくる洒落にならないイタズラらしいですが、強さはモンスターそのもの、毒などの追加ダメージがあればそれも喰らうことになります。(毒や石化があったとしても、そのモンスターが倒されると消えます)

 そしてこのエピソードは、『あなたの考えた(初級)モンスター大募集!』という裏テーマも有しているのです。
 縛りは初級っぽいモンスターというだけなので、『ゴブリン』とか『大ネズミ』とかありがちのものでも構いませんし、オリジナリティあふれる愉快モンスター、ただしあまり強くないものを考えて、ウィッシュプランに書いてみて下さい。できればどんな特徴なのかも。するとそいつが本編に出ます!(※モンスターを考えることは必須ではありません。書かなくてもOKです)
 印象に残ったモンスターは、今後桂木や他のGMがエピソードで使うかもしれませんよ!?

 本の探し方、モンスターが出たときの反応、強敵に対する心構えなどでアクションプランを埋めてみましょう。なにも思いつかなければ、適当に台詞だけ用意しておいても対応させていただきます。
 作戦を立てるなら、チームを組んで「特に弱そうな名前のモンスター関連の本」で13冊目になるように工夫するか、出た瞬間倒すようなフォーメーションを組むとかでしょうか。(ただしどこからモンスターが出るとは言っていない)

 エミ・バナーマンは案内だけしてくれて、自分の仕事(予約本のチェックとか)をしているのでまったく助けになってくれません。ただし誰かが重傷を負うなど絶対的な窮地に陥ったときだけ出てきてくれます。
 
 では、楽しい点検を!


作者コメント Comment
 マスターの桂木京介です。よろしくお願いします!

 先日の配信でタイトルを募集して、いただいた候補のなかから思いついたエピソードです。

 うす暗くカビ臭い書庫にこもって、ヘンテコだったりベタだったりするモンスターを倒していきます。
 書架と書架の間はちゃんと戦える程度に広いという設定にしたいと思います。

 戦闘オンリーのエピソードではなく、和気あいあいと蔵書チェックを楽しむようなお話とお考え下さい。
 あなたの考えたいい感じのモンスターも楽しみにお待ちしておりますよ~!

 以上! 思いついたときだけは仕事が早い! 桂木京介でした。
 次はリザルトノベルでお会いしましょう! 


個人成績表 Report
七枷・陣 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:180 = 60全体 + 120個別
獲得報酬:4500 = 1500全体 + 3000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
図書館の蔵書点検と書架整理

【行動】
エミの指示通り、リスト使って書籍をチェック
普段利用してる分類とは別の場所だけど、勝手知ったるなんとやら
テキパキとリストを埋めて行こう

一通り点検済ませたら、ついでだし書架整理もしておく
請求記号ラベルみたいなのがあれば、それを基準に
なければ五十音順で棚の左から右、上から下に順次並べる
段の幾つかは空きスペースをわざと作り、本の表紙が見えるように立てて置く面出しでアクセントをつける

モンスターとの戦闘時には、立体機動で書架を足場に三角飛びなどで撹乱しつつ急所を蹴り倒す、プチラドの電撃であしらって行く

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
なんだかんだと図書館にはお世話になってるからな
なんでぜひ、手伝わせていただこう

自分のスぺースを陣地として(陣地作成使用)黙々とやるしかないな
なんか紛失した本が13冊発覚するたびに低級モンスターが襲って来るらしいけどあんまり警戒してもしょうがないだろ
よっぽど油断しなければ大事にはならないと思うし
いざという時のためにだろうけどメメたんいるしな

モンスターが出たら基本鎌術、三日月斬り、切り落とし、ヒ5で対応

万が一のためにスタンバってるだけだよな?
遊びに来てるだけじゃ…遊びにも来てるかもしれないさっきくだらない事こと言ってたし…



アドリブ大歓迎

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
さて、それでは張り切って書籍チェックをいたしましょう。言われた通りに記しをつけて、結果現れたのは

「・・・これは、毛玉ですわね」

と目の前に現れた円らな瞳の短い手足の生えたまん丸な毛玉を見て呟きますわ。するとこちらを見つめていた毛玉が突然呟きます

「ふむ、君は小さい頃なかなかおねしょが治らなかったようだねぇ。しょっちゅう布団に世界地図をこしらえるので友達からは『地図職人』と呼ばれていたのかね」

「いやー!止めてくださいませー!」

と思わず顔を真っ赤にして叫びますわ。どうやら攻撃力が無い代わりに、人の黒歴史を探り出しペラペラ喋るモンスターのよう。即座に全力で一欠けの塵も残さず完膚なきまでに叩き潰しますわ!

フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆方針
モンスターに備えつつ蔵書点検。
奇襲された時などは盾役

◆行動
クリスタルブレイブ片手に蔵書点検。
片手塞いでしまうので、誰かチェック担当する人と2人以上で行動。
(一人になる場合こまめに確認で対処)
バツ印が溜まってきたら『危険察知』で警戒しつつ、最寄りの戦える広めの場所を確認。

襲われた時は自分の方へと挑発、奇襲時は後輩・後衛優先で庇い受け。
損害を避けるため広い場所に移動しつつ、攻撃は『盾刺し』メインで

◆モンスター案
【カラミツタ】
種を運ばせるため絡みつく巨大なツタ。
知能も害意もなく、射程内の動くものに反応して蔦を絡めてくる。
完全に動けなくなるほどではないが、非常にうっとおしい(状態異常『散漫』)

蓮花寺・六道丸 個人成績:

獲得経験:90 = 60全体 + 30個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
アドリブ絡み歓迎
東の国が原産のモンスターを主に担当
餓鬼や一反木綿などのいわゆる妖怪みたいなものが出てくるが
短剣の技能を駆使して斬り伏せる

しばらくそうしているとメメたんどのがちょっかいを出しに現れるが
嗅覚強化Ⅰで紙と獣の混じった匂いを感じ、
獣の耳にも捉えにくいようにサイレントスラッシュで攻撃
『おさん狐』、決して強くはないが悪賢い、まさに『女狐』だ
もっとも、万が一本人であったとしたら避けてくれるだろうと思っていたからこそ躊躇なく攻撃できるのだが

疲れてきた頃合いを見計らって皆を呼び集め
ちまきとお茶で休憩の時間を設ける

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
本を探して、時々出てくる敵をお掃除しながら点検、整理するお仕事っぽいですね
13冊見つける度に、敵が出てくるそうなので……強敵っぽい竜とか悪魔とか書かれた本は13冊目にならないように調整

開始前に書庫の蔵書保管状況を確認し、名前の頭文字順、内容の分類順等の保管ルールを参考に本探し
所定の場所に無いものは、誤読しそうな読みの場所や、該当棚の上下段、隣の棚等の紛れ込みそうな場所も確認

見つけた本はざっと頁を捲って汚損等ないか確認し、あれば別に分けておき司書の方へおしらせして

変な生き物が出たら、生物・植物、オカルト知識で分析したり

◆応戦
応戦時は後方に下がり、祈祷で回復したりデトルで毒・麻痺を治療し仲間を支援

エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
13冊ごとに仲間に声をかけて集まり、単独の戦いにならないよう注意
仲間が危険な時にはフォロー

どうやら、とある魔法使いが蔵書を守るための番人として使っていたモンスターが
いくつか保管されているようね

戦いになっても本を焼いたり濡らしたりすることのないように注意して対応
自分はフドを使用
消耗が激しい時は一旦んで態勢を整えてから作業を再開する
戦闘で辺りを荒らしてしまった場合は、後できちんと片付ける

華鬼事件の時の仮面【墜悪】、ルガルの持っていた女神の仮面
何か頭に引っ掛かる……
都合が許せば、過去に仮面が絡んだ事件や魔法の仮面を作る職人がいなかったか
図書館の資料を調べて今後の調査の手掛かりにしたい

アドリブ大歓迎!

シルワ・カルブクルス 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
蔵書点検を行いながら、なかった書物を見つけるたびに借りてきた紙をペンで1と書き込こんで(モンスター出現時…つまり13本目の時は書き込んだ1に斜線を書き加える)

もし、モンスターが出現したら『基本斧術』で威力を上げた『通常反撃』でダメージを与える
きりょくが尽きかけたら「ちまき」で気力を回復しておく

リザルト Result

「……拙僧もいたずらは好きだが、これには困ったのう」
 いささか【蓮花寺・六道丸】も困惑せざるを得ない。
「まあ、地道に片付けてゆくしかあるまいよ」
 告げて闇無刃の鞘を払う。身が引き締まるような金属音、冷たい刀身に刻まれた傷跡に、ぴりっと走る電光が映りこんだ。
 敵は電光を発しているのである。
 敵がいるというのがそもそも異常だ。ここは図書館なのだから。
 しかしただの図書館ならいざ知らず、フトゥールム・スクエアの誇る知の結晶『ワイズ・クレバー』ならあり得る話だ!
 落ち着くべく【シルワ・カルブクルス】は呼吸を鎮めた。斧を水平に構え距離を測る。
 敵は電光を発するモンスター。ぷにょぷにょしていて半円形で水色だけど、あきらかに危険な気配がただよう。
「あれが……ビリリスライム、なのですね」
 スライムに関する書籍群、うち一冊が書架から消えていた。そのタイトルが『ビリリスライムの生態』だったのである。そしてこれは、点検で発覚した欠落図書の13冊目にあたる。
 本がないとシルワが気付いたそのとき、ポンと不可解な音立てて、眼前に出現したのがこのモンスターだった。
 この程度の敵ならと【仁和・貴人】は果敢に斬り込む。
「よっぽど油断しなければ大事にはならないだろう」
 振り下ろす一揮(いっき)は大鎌、飛ぶ蝶すら真二つにするという業物バタフライリッパー。
 決まった、と貴人は思ったがしかし、あっと声を立てる結果になった。ひょうとスライムは攻撃を避け、返礼にビリリと電撃を浴びせてきたのだ。
「くっ……マジで痺れる」
 貴人は床に両手をついてうめく。体が麻痺して動かない。実際のピリリスライムも、雷属性の魔法を吸収し相手を痺れさせることができる程度の電力を蓄電できるという。
「あのスライムは紙の精霊が生んだ幻影なのでしょう。だからその麻痺もまやかしのはずです」
 けれども――【ベイキ・ミューズフェス】は推測する。
「外見・生態ともあまりにも真に迫っているため、攻撃を受けると本当に特殊能力を有していると頭が錯覚してしまうのかもしれません」
 なるほどと【朱璃・拝】はうなずいて、
「油断できない相手ですわね。ではフィリン様」
 視線を流し【フィリン・スタンテッド】に呼びかけた。
「左右同時に攻撃するとしましょう」
「ええ」
 フィリンは片手剣を構えた。さあ、と朱璃は声を上げる。
「ぶちかましますわよ!」
「了解。ぶちかます……って、あまり言い慣れていないからこれで発音あってる?」
 もちろんこれは、フィリンではなく彼女の演じる『勇者フィリン』にとって言い慣れていないという意味だ。
 いずれにせよぶちかますことに違いはない。左手より朱璃、右手よりフィリン、惨爪と剣の描く弧は、交差しビリリスライムを引き裂いた。
「お見事!」
 と言ったところで【エリカ・エルオンタリエ】は目を疑った。
 最前までぷにょぷにょしたものがいた場所には、千々になった紙の山が存在するだけになっていたからだ。
「ああもったいない」
 と【七枷・陣】は紙山を調べ嘆息する。古い文献なのだろう。文字が書かれているがズタズタで読めない。まさかそんなことはあるまいが、探していた本があったかもしれないと考えると恐ろしくなる。
 うーむ、と貴人が立ち上がった。
「ミューズフェスくんの言ったとおりだったな。スライムが消えるとたちまちビリビリも消えてしまった」
「紙の精……心をあやつる精霊なのやもしれぬ。人騒がせなものよの」
 という六道丸の言葉を受けてベイキが提案する。
「今後12冊欠落が見つかった直後は、竜とか悪魔とか強敵っぽい名前が書かれた本はチェックしないほうがよさそうですね」
 待って待って、とエリカが手を上げた。
「ちょうど今、まとめてシリーズ本がごっそり抜けているところを見つけてしまったから、一気に12冊もチェックがたまってしまったかも」
 シルワがエリカの手元にあるリストをのぞき込んだ。
「だとしたらつぎの一冊には警戒しなくては――」
 このとき、
「……?」
 朱璃の眼前に、こぶし大の丸いものが降りてきた。ついーっと、クモが天井からぶら下がるようにして。
「毛玉ですわね……?」
 毛玉にはつぶらな瞳があり、短い手足もはえている。なんだか愛嬌があるではないか。
「――ふむ、君は小さい頃なかなかおねしょが治らなかったようだねぇ」
 ひゃっ、朱璃は声を上げた。もふもふがいきなりしゃべったのだ。
「しょっちゅう布団に世界地図をこしらえるので、友達からは『地図職人』と呼ばれていたのか、ふもふもふも」
 笑い声が『ふも』? いやそれよりも、
「いやー!」
 なぜこのもふもふは自分の黒歴史を知っているのか!
「止めてくださいませー!」
 朱璃は全身全霊全力、爆発的な一撃を叩き込んだ。
 朱璃は偶然、26冊目の欠落書籍を見つけてしまったのだった。タイトルは、『恐怖~サトリのお化けたち』だった。人の心を読むモンスターを扱った本である。こいつは『毛玉のサトリ』というらしい。攻撃力がないかわりに、人の黒歴史を探り出しペラペラしゃべるのだという。
 朱璃のクリティカルな一撃を浴び瞬時にして毛玉は紙くずに戻った。
「あの皆様……今何も聞いておられませんでしたわよね? ね?」
 朱璃は笑顔で問いかける。でも目は、まったく笑っていなかった。
「えーと、おじさんは聞いてない……よ?」
 陣は自分の口を手でふさぎ、視線を手元のリストに落とした。肩が小刻みに震えている。
「ごめんなさい。私、隠し事が苦手で」
 自分の隠しごとでもう一杯一杯なので、フィリンは黙って首を振るしかなかった。聞きました、と言っているに等しい。
 そ、それよりも、と雰囲気を変えるべくベイキは呼びかける。
「私のリストは『海のモンスター』に移りましたよ。海です、海、楽しみですね」
 地図職人のことは忘れて、海図もとい海の本を探そう。

 人魚だった。
 それからまもなくして、海らしい怪物が出たのだ。
「面妖な……これは人魚というより」
「魚人だよなー」
「拙僧も同感だの」
 意見が一致した。六道丸はふふと静かに微笑し、貴人はグッとガッツポーズを取る。
 上半身が魚で下半身が人、上半身はマグロで、下半身がたくましいパンツ一丁の男子、それも、スネのヘアーがモッサモサの! ブリーフはまばゆい白だ。ぴちぴちモサモサ現れたのである。この魚人が、何体も。
「たしか、魚人には下半身が女性というバリエーションもあるということでしたけれども」
 ベイキはこれが白昼夢かと疑っているかのように、何度か首を振って言う。
「今回は男子、それも歴戦の猛者ばかりのようですね……」
 スネ毛モサモサだけに猛者、という駄洒落ではない。たぶん。
 朱璃は一気に肌が粟立つのをおぼえた。
「大漁ですわ。嫌な意味で!」
 魚を見て鳥肌とはこれいかに。
 わあああ、背後からこの生臭いのが押し寄せて来たので陣は書架に飛びつき、瞬時にこれを蹴って反対側に飛ぶ。繰り返して距離を取る。そのたびに書架はぐらつきあるいは倒れ、無数の本をぶちまけた。
「おじさんしばらく魚食べられなくなりそうだよっ」
 ふりむきざまに放つは雷弾、これぞプチラド、スパークしてくらませる。
 魚人の攻撃はスリルでショックでサスペンス、スリリングな噛みつきとショッキングなヒレのビンタを繰り出すうえ、エラ呼吸だから地上では長く活動できないという話なのに、なかなか窒息する様子がないあたりがサスペンスフルだ。攻守怪の三拍子そろった嫌なモンスターではないか。
 書架の間から新鮮な魚人たちが攻めてくる光景はあまりにシュール、けれどもエリカはいささかも動じず、
「どこの海から来たのかしら……いずれにせよ図書館を濡らしちゃダメじゃない」
 魔法を詠唱(とな)う。名はフド、渦を巻く風の魔法だ。うねりを上げて衝突し、先頭の魚人を前のめりに倒した。
「私たち全員が多量の、しかも別々のリストを持っているから、どうしてもチェックの足並みを揃えるのが難しいみたいね」
 思案のしどころだと思いつつ、フィリンは剣を握って前に出る。ばっさり魚人を一刀すると、まな板で魚を料理しているときのあの感覚が手に伝わった。 
「見た目ばかりではなく海臭いとはのう。ここが図書館なのを忘れてしまいそうになる」
 六道丸は短剣を凪ぐ。
「こういう狂った感じはまさしくこの学園だよな。慣れてきたようでなかなか慣れない」
 同じく貴人は大鎌を薙ぐ。
「近寄らないで下さいましっ!」
 本当は本のことも配慮したいのだけどそこまでの心の余裕はない! 朱璃はもう必死で攻撃に加わっていた。
 シルワも前進する。基本斧術、学園で学び身につけた技だ。忠実に確実に斬を下すのだ。
 一尾また一尾、魚人を着実に紙に戻して、
「なんとかなりましたね」
 シルワがかく述べたとき、すでに魚人の群れは一掃されていた。
 あれだけいたというのいに、終わって見ればただ紙だらけなのがまた奇怪といえよう。

 効率は悪いかもしれないけれど、とエリカが提案した。
「まとまって調べることにしない? バラバラに書架をめぐると一気に13冊分欠けが見つかって敵の不意打ちを受けるかもしれないから」
「それがよさそうだ。いきなり出てくるのは心臓に悪い」
 貴人も異存はなかった。
「そうね。戦いは避けられないにしても、できるだけ広いスペースを確保しつつ戦いたいもの」
 クリスタルブレイブを手にしたフィリンも応じ、一同はまとまって動くことにした。
「そうするとつぎの書架は……図書館にまつわる本みたいですね」
 穏やかよの、と六道丸は笑って持参の包みを解いた。まさか図書館関係の本が凶暴なモンスターになるとは思えない。
「そろそろ一休みせねば効率が下がる頃合いであろう。東の国の菓子を持ってきたから、其方たちも食べるがよい」

 まったくもって穏やかな話ではなかった。
 図書館にまつわる本といっても、実際は『図書館にまつわるモンスター』の本ばかりのコーナーだったのだから。しかもその総目録を欠落本13の倍数に引き当ててしまったため、まごうことなき修羅場に突入したのである。
 図書館にまつわるモンスターなんていう狭いジャンルでありながら、現れた怪物たるや多種多様、さながら百鬼夜行だ。
「ちょ……本が飛んでくるなんておじさん聞いてないよ!」
 陣が頭を抱えて逃げる。コウモリのように羽ばたく本。ごつんごつんしてくるハードカバーの角が結構痛いというこの怪物は、そのものずばり『ブックバット』という。
「図書館の備品と言っても信じてしまいそうです」
 シルワが斧をふるう相手、それは巻物が変化した蛇『スクロールスネーク』である。中身は風刺画らしく毒を持つらしい。
「なにゆえ斯様な処に駱駝(ラクダ)が……それに、この臭気……!」
 六道丸は咳き込みつつ、ラクダが飛ばしてくるヨダレをふりはらう。
 にわかには信じがたいがラクダがいるのだ。コミックブックから飛び出したラクダが。ヘタウマ漫画だったらしくデッサンはかなり狂っているが。
「ラクダのヨダレは日焼止めになるという説を何かで読んだことがある……試したくはないけれど」
 フィリンも手こずるこのラクダ、名は『コミックキャメル』というそうな。
 ベイキと貴人は通路の両サイドから、ブックエンドが変化した怪物に攻め立てられていた。ライオンに似た高級そうなブックエンドだったのが急変、本を守護するモンスターとなったのだ。
「これは……『ライブラリアンライオン』!」
「何っ、知っているのかミューズフェスくん!?」
「ええ、なんでも木製から順に、金属製、貴金属製、宝石製とどんどん強くなっていくとか」
「宝石でできているぞあれ……!」
「だとしたら『当たり』ですね」
「全然嬉しくない!」
 だがベイキが落ちた本を書架に戻したところ、ライオンたちは動きを止めた。
 エリカはサメに襲われていた。といっても新聞紙で作った折り紙のサメだ。空飛ぶこのサメは『ジャーナルジョーズ』というらしい。
「この新聞……タブロイド紙ね。嘘、大げさ、まぎらわしい! ゴシップの三冠王みたいな新聞じゃない!」
 新聞紙は変色していて黄色い。これがホントのイエロージャーナリズム、とエリカは思った。
 朱璃は、語りかけてくる辞書に手を焼いていた。ニタニタ声で辞書はこんなことを言うのである。
「ククク……聞きましたよ、『地図職人』のお話を……」
 辞書は『ディクショナリーデーモン』というモンスターだ。攻撃はしないが標的に対し嘘やデマ、思いだしたくない話のたぐいを語りかけてくるという。
「いやー! なぜ今日は私ばかりこのような目にー!」
 朱璃はもう涙目だ。

 なんとか図書館本(正確には図書館関連モンスター本)コーナーを制覇した一同は、チェックリストの最後までたどりついていた。
 これでラストと思えばモンスター退治にも気合いが入る。現在は『モンキークロウ』という、空飛ぶ小型の猿と対決中だ。手首から肩にかけ、鴉(カラス)の翼がはえているという小型獣である。
「そっちに一匹向かいました」
 同じ有翼ならドラゴニアのほうが上手(うわて)、追いますと一声、翼ひろげシルワはモンキーに追いつくや、斧でたちまち両断した。
「夜目もきくらしいし、本当に洞窟なんかで遭遇したら大変でしょうね」
 一匹を斬り伏せ、フィリンは次を探して首をめぐらせた。
「どうやら終わりのようね」
 エリカは額の汗をぬぐう。書庫は基本冷暗だが、戦いにつぐ戦いのせいでさすがに暑い。
「なんだかどっと疲れましたわ」
 朱璃はぐったりした様子で書架にもたれかかった。
 でも充実した気持ちだ。朱璃は恩返しのつもりでこの任務に志願したのである。文字文化を持たぬ小部族出身の朱璃が本を読めるようになったのは、この図書館のおかげなのだから。
 陣は屈むと本をひろい集め。請求記号ラベルを基準に、五十音順で棚の左から右、上から下へと順次並べていく。
「整理してるのね」
 フィリンが声をかけ、陣を手伝いはじめた。
「ついでだし。普段から世話になってる所でもあるから」
 本日のメンバーで、図書館に一番こもっているのは陣だろう。休日には丸一日いることもあるくらいだ。
 陣は段にいくつか空きスペースを作り、本の表紙が見えるように立てて置いてアクセントをつけてみたりする。
「それ、面出しって言うんですよね」
 ベイキが言った。
「まるで本職みたい、すごいです」
「はは……ありがとう。でもこれ、図書館にずっといるのに成果ゼロなことで副産物みたいに身についただけのテクニックなんだよなあー」

 そのとき、少し離れた場所で、
「オう精が出るノウー★」
 あれ? と貴人は振り返った。【メメ・メメル】ではないか。ひょっこりと書棚の間から姿を見せたのである。
「遊びに来たんですか?」
「何ヲ言うか。手伝いにキタんだよ★」
「それはどうも。でもチェックは終わりましたが」
「なラご褒美をやロう」
 言うなりメメルは貴人に体を寄せてきたのである。するりと腕を伸ばし、ふにゅっとやわらかな肉体を密着させて。
「え……あの、メメたん?」
 唇が近づいてくる。
「オレサマのキッスじゃゴ褒美になラない?」
 甘い香りがした。
 間一髪、というべきか。
 フフフと含み笑い。六道丸の声がしたのである。
「ここいらが東から流れ込んできた妖怪たちの資料が集まっている一帯であったとは。懐かしいことよ。よく和尚に読み聞かせてもらった妖怪変化の書がそろっておる」
 六道丸は、闇無刃の切っ先をメメルに向ける。
「メメたんどのに化けて騙そうとするとは、狡賢い奴よ。お主、おさん狐だな? 精気を吸う妖怪変化、拙僧が立ち会ったとは運がなかったのう」
「え?」
 ぎょっとして貴人はメメルを見た。
 垂れ目のメメルが今は吊り目、すべすべした肌は毛に包まれ、帽子の下から三角形の耳が飛び出している。頬から長いヒゲも生えているではないか!
 甲高い声で叫ぶやメメルもといおさん狐は貴人を突き飛ばした。ニタリと笑って舌なめずりする。
「何事ですの!?」
 飛び込んできた朱璃は足首を取られ転倒しそうになった。ツタのようなものが絡みついている。ツタはうねうねとうねり、朱璃の足首から腿へと這い上がってくる。さらには別のツタが、尖端を朱璃の胸に向けている。
「動かないで!」
 剣をふるいフィリンは朱璃を解放した。だがツタはひるまない。さらなる腕を伸ばさんと身をくねらす。
「なっ、なんですのこれ……?」
「『絡蔦(カラミツタ)』ね。種を運ばせるため絡みつく巨大なツタ。知能も害意もない邪魔なだけの存在だけど……でも、どうしてこんなところに?」
 駆けつけたベイキは、危ないと言って頭上を示した。
 ヤツメウナギに似た怪物が、べろんと垂れ下がっているのだ。『アスピレイトランプレイ』と言い、主として水中に住む生物だ。人体に吸着しエネルギーを吸うというから、見た目こそ異なれどおさん狐と同様の生物といえよう。
「東方から流入したものと考えられており、彼の地では『吸精鰻』と呼ばれているそうですね」
 ベイキは首をすくめた。できれば触れずに倒したい。
 シルワは斧を構えじりじりと距離を詰める。メメルに化けたおさん狐、吸精鰻、そして絡蔦――戦う必要がありそうだ。
「本の精の仕業でしょうね。しかし、チェックリストはすべて片付いたはず……」
「もう一枚、リストがあったとしたら……どうかしら」
 エリカが声を上げた。
「そうでしょう? エミさん!」
 すると申し訳なさそうに、本棚の影から【エミ・バナーマン】が姿を見せたのである。しゅんと身を小さくしてエミは言う。
「私は皆さんとは別に予約本の調査をしていました。ですが私のチェックリストまで、欠落13冊目で怪物が発現するとは……うかつでした」
「エミ、その本はなんていうタイトルなんだ?」
 陣が聞いた。
「と……東方の……」
 エミは真っ赤だ。
「東方の?」
「『東方のエッチ系モンスター大全』ですっ!」
「なんだってー!」

 その後モンスターが一掃されたことは言うまでもない。
 この事件ののち、八人へのエミの対応はずっと良くなったという。



課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
大図書館の休日~地獄の蔵書点検
執筆:桂木京介 GM


《大図書館の休日~地獄の蔵書点検》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2020-05-27 00:05:13
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。
よろしくね。

《人たらし》 七枷・陣 (No 2) 2020-05-27 01:34:15
賢者・導師コースの七枷陣だよ。
おじさんはこの図書館に結構入り浸ってるけど、偶には別のジャンルを手伝うのもいいかもねぇ。気分転換になるだろうし。
モンスターは適当にあしらいながら、点検と…一通りやったら書架整理でもしといてやろうかねぇ。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 3) 2020-05-27 12:31:33
勇者・英雄コースのフィリンよ、よろしく。
図書館にこんな恐ろしい仕掛けがあったなんて…
と、ともあれ私は前衛コースだし、モンスターに備えながら点検メインかしらね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 4) 2020-05-27 22:41:43
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

悪戯好きな精霊様がおられるのですね。まぁ出てくるものは蹴散らしながら点検を進めますわね。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 5) 2020-05-28 08:22:48
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
本を探して、時々出てくる敵をお掃除しながら点検、整理するお仕事っぽいですね。
個人的には、人魚と逆(上半身が魚で下半身が人)みたいなモンスターとか居ないかな……とか思ってます。

地上だと、ビチビチするだけで終わりそうですが……。

《ゆうがく2年生》 蓮花寺・六道丸 (No 6) 2020-05-28 22:14:56
拙僧は蓮花寺・六道丸。
ふむ、図書館の蔵書点検か。東方の妖怪なんかを記したものもあるかのう?

《2期生》 シルワ・カルブクルス (No 7) 2020-05-28 23:39:11
村人・従者コースのシルワ・カルブクルスです
よろしくお願いします

それにしても、何冊か紛失した書物があるとモンスターが現れる仕組みですか…。もしかしたら、わたしたちがしらないモンスターとかも現れるかもしれませんね

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 8) 2020-05-30 19:49:04
プランは提出しましたわ。皆様のモンスターも楽しみにしておりますわね。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 9) 2020-05-30 21:43:13
魔王・覇王コースの仁和だ。
モンスターも気になるが・・・メメたんは万が一の時のためにいるんだよな?

あと数時間で出発だな。
プランの提出し忘れには気を付けよう・・・