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ミラちゃん家――それぞれの準備


ストーリー Story

●保護施設――転用建屋第17倉庫――ミラちゃん家
 カサンドラはもう小一時間ほど自室で、『果て無き井戸』の調査報告書を眺めていた。そしてぶつぶつ呟き続けていた。
「……『地下道で見つかったのは、ノア一族のものとおぼしき鎧、剣――首飾り、腕輪、イヤリング、杖……』」
 彼女はこの記述に違和感を感じている。
 見つかったのはこれだけだったんだろうか。他に何かなかったのだろうか。他に何か――あったはずなのだが。
 本人はまだ気づいていないが、それは、失った記憶が少しづつ蘇ろうとしている兆しだった。

 精霊【ミラちゃん】はリンゴの若木に止まっていた。
 赤茶色に紅葉した若葉が晩秋の風に吹かれている。
 葉陰に隠れるようにして、小さな赤い果実がひとつ。ミラちゃんは形のない手で愛しげに、その実を撫でる。
 幼い声が聞こえてきた。
「ミラちゃん、どこー」
 【トマシーナ・マン】だ。
 二カ月ほど前から施設の住人となったこの幼子についてミラちゃんは、遊び友達のような意識を抱いている。向こうもどうやら、そのように思っているらしいが。

「ミーラちゃーんみっけ! そしたら、つぎはわたしがかくれるね! 十かぞえるまでうごいちゃだめよ!」
 トマシーナが精霊とかくれんぼをする声が聞こえたので【トーマス・マン】は、自然その頬をほころばせた。妹が楽しそうにしていることは、彼にとっての喜びだ。
 ここはいいところだ。村なんかよりずっと。出来ればこのままここにいたい、とも。しかしその一方で、そうするのが難しいだろうとも理解している。
 保護施設はあくまでも、事件に巻き込まれたものを一時的に保護する場所だ。永住するわけにはいかない。
 いずれまたどこかへ移らなければならなくなるだろう。正規の孤児院か、あるいは、里親のところか。幸い大人たちの様子を見るに、『村へ帰す』と言う選択肢は想定していないようだが――次に行くところが今と同等にいいところであるか、はなはだ心もとない。そもそも兄妹一緒にいられるかどうかも分からない。
(ああ、僕がもっと大きかったらなあ。それで、強かったらなあ。お金があったらなあ。そしたら、誰に頼らなくてもトマシーナの面倒を見てやれるのになあ)
 そんなことばかり考えているから、自然眉間にしわがよる。
 その背中へ暖かいものが触れた。振り向いてみれば例の貧相な犬である。
 この犬は、黒犬からの二度目の手紙を届けてきた後、ずっと施設に(時々ちょこちょこ姿が見えなくなるが)いる。どうやら黒犬からそうしろと命じられているらしい。
「黒犬、元気かなあ」
 トーマスは犬の頭を撫でてやる。
 犬は尻尾を振り、トーマスの顔をなめた。トーマスは子供らしい笑い声を上げた。
「やめろよ、くすぐったいよ」

●学園学生寮『レイアーニ・ノホナ』前
 カルマ職員【ラビーリャ・シャムエリヤ】と、ドラゴニア教師【ドリャエモン】が話し込んでいる。
 話題は保護施設にいる兄妹たちのこと。
「……そうですか。トーマスは、まだ黒犬に信頼を寄せていますか」
「うむ。あまり好ましいことではないが、こういうものは頭ごなしに否定しても仕方ないからの。かえって気持ちをこじらせ、さらに相手に傾倒してしまいかねん。今しばらく静観して……今のところ黒犬も、こちらと交渉しようという気はあるようだからの。手紙なんぞよこしてくるからには」
「……そうですか。ならいいのですけど」
 ラビーリャは顎を引き、唇に指を当てる。考え込むように。
「……保護施設はあくまでも、一時預かり所という位置付けです。もちろん黒犬の件が解決する事が前提でしょうが……この先どこへ行く予定になっているのか、はっきり教えてあげなくてはいけないのではないでしょうか。でないと、不安が募ると思うんですよ。孤児院と里親について、当ては見つかりましたか?」
 その言葉にドリャエモンは、沈んだ調子で述べる。
「……いや、どちらもまだ、なかなかの。脈がありそうなところは片端から当たっておるのだがの。二人一緒にというのがどうも難しくてな」
 太いため息をついて、それから――意を決した表情になる。
「だから、わしが引き取ってもいいかとも思うておるのよ。わしも連れ合いもドラゴニアじゃ。人間より年を取るのが遅い。あの子たちが成人するまで、十分現役でいられるからの」
 そこへ突如、馬鹿陽気な声が割り込んできた。
「おっすおーっす! 何話してんだー?」
 声の主は、やはりというか学園長【メメ・メメル】。
 いつものざっかけない調子でラビーリャたちからあれこれ聞き出した彼女は、こんな提案をしてきた。帽子の庇をちょいと持ち上げて。
「そんならもうその二人、学園に入学させたらどーだ? 寮に入れば衣食住完備されとるし、兄妹一緒にいられるじゃろ。学園は広いからなー、生徒の一人二人三人四人以下無限に増えても全然問題ナッシングだぞ☆」

●山の中
「よし、これでいい」
 【黒犬】は一息入れた。流れ落ちる水の壁を目の前にして。
 赤猫に自分の所在情報が伝わったと知った彼は、急いで坑道の入り口を埋め塞いだ。そして別の入り口を作った。
 その入り口は滝の裏側に作られている。前の入り口と違い、パッと見ただけでは全く所在が分からない。
 ここと元の坑道を繋げるために、山2つぶんほど掘り抜かねばならなかった。予定外のことにえらく時間を食ってしまった、と黒犬は苦々しく思う。
 ここならば濡れるのを嫌う赤猫が、おいそれと近寄ってこないだろう――とは思うが念のため、手下共に厳命を。
「おい、周りをよく見張っておけ。猫を見かけたらとにかく追い払え。そして俺に連絡しろ。いいな。それから、学園にいる伝令を呼び戻しに行ってこい」
 これから手紙を書かねば。学園からカサンドラを引っ張り出すために。





エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2020-11-08

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2020-11-18

登場人物 8/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《幸便の祈祷師》アルフィオーネ・ブランエトワル
 ドラゴニア Lv23 / 教祖・聖職 Rank 1
異世界からやってきたという、ドラゴニアの少女。 「この世界に存在しうる雛形の中で、本来のわたしに近いもの が選択された・・・ってとこかしらね」 その容姿は幼子そのものだが、どこかしら、大人びた雰囲気を纏っている。  髪は青緑。前髪は山形に切り揃え、両サイドに三つ編み。後ろ髪は大きなバレッタで結い上げ、垂らした髪を二つ分け。リボンで結んでいる。  二重のたれ目で、左目の下に泣きぼくろがある。  古竜族の特徴として、半月型の鶏冠状の角。小振りな、翼と尻尾。後頭部から耳裏、鎖骨の辺りまで、竜の皮膚が覆っている。  争いごとを好まない、優しい性格。しかし、幼少より戦闘教育を受けており、戦うことに躊躇することはない。  普段はたおやかだが、戦闘では苛烈であり、特に”悪”と認めた相手には明確な殺意を持って当たる。 「死んであの世で懺悔なさい!」(認めないとは言っていない) 「悪党に神の慈悲など無用よ?」(ないとは言っていない)  感情の起伏が希薄で、長命の種族であった故に、他者との深い関りは避ける傾向にある。加えて、怜悧であるため、冷たい人間と思われがちだが、その実、世話焼きな、所謂、オカン気質。  お饅頭が大のお気に入り  諸般の事情で偽名 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを胸に、学園での日々を過ごしている
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。
《新入生》リーゼ・ガルシュタイン
 カルマ Lv12 / 武神・無双 Rank 1
ん~~とね。リーゼはかみさまになるの。だって、パパがいってたんだよ。『おまえは神になるのだ。神となって魔王を打ち倒し、世界を救うのだ』って。 でも、まおうってやつ、もういないんだよね・・・リーゼずっとねてたから・・・みんな、なにもいわないけど、パパも、もういないってわかってる。リーゼにだってそれぐらいわかるよ。 _________________________________________________________ とある廃墟で、培養液に満たされた、巨大な水槽の中で眠り続けていた。建物の腐食が激しく、放置すれば下敷きになってしまうため、学園所属の研究員に保護された。 その廃墟は、魔王事変発生時、忽然と姿を消した、高名な魔導師、ゲオルグ・ガルシュタインの研究所であり、長らく、その所在は不明であった。 資料となりえるものはすべて朽ちてしまっているが、彼が創造したものと推測される。 ”父”の英才教育の賜物か、幼い見た目にかかわらず、知能は高い。だが、経験がなく、精神年齢が低いため、それを十分に生かせないようだ。天真爛漫で、ちょっとわがままな、甘えん坊。駄々をこねだすと大変なことになるが、甘いものをあげれば、すぐ大人しくなる。 『神となって、世界を救う』という意思は強固であり、どんな敵にも物怖じすることはない。 武神コースを選んだのは、武神が何かわからずに聞いたら、武術の神様と返答を得たため
《猫の友》パーシア・セントレジャー
 リバイバル Lv19 / 王様・貴族 Rank 1
かなり古い王朝の王族の娘。 とは言っても、すでに国は滅び、王城は朽ち果てた遺跡と化している上、妾腹の生まれ故に生前は疎まれる存在であったが。 と、学園の研究者から自身の出自を告げられた過去の亡霊。 生前が望まれない存在だったせいか、生き残るために計算高くなったが、己の務めは弁えていた。 美しく長い黒髪は羨望の対象だったが、それ故に妬まれたので、自分の髪の色は好きではない。 一族の他の者は金髪だったせいか、心ない者からは、 「我が王家は黄金の獅子と讃えられる血筋。それなのに、どこぞから不吉な黒猫が紛れ込んだ」 等と揶揄されていた。 身長は150cm後半。 スレンダーな体型でCクラスらしい。 安息日の晩餐とともにいただく、一杯の葡萄酒がささやかな贅沢。 目立たなく生きるのが一番と思っている。

解説 Explan

Kです。
今回はミラちゃん案件。次のステージへの準備回、という位置付けです。
行動は基本自由。今のうちに気になることをやっておいてください。

GMとしては今エピソードで、トーマス兄妹の今後について、大体の流れを作っておきたいかなと思います。
この先黒犬の行動がどう転ぶかわかりませんので、まだ時間の余裕があるうちに、きっちり将来について決めておきたいかと。二人ともこれからの人生が長いですから。

ひとまず現在NPCから出ている案は、

1・ドリャエモン先生が二人を養子として引き取る。
2・学園に生徒(勇者候補生)として編入させる。

以上の二つです。
PCからこの件に関するアクションがない場合、この案二つがこのままの形でトーマスに提示されます。
ここからはPL情報となりますが、現在の段階においてトーマスは「案1」は受け入れても、「案2」は受け入れません。黒犬が勇者を嫌っていることを知っているからです。
「案にこういう修正をしたらいいのでは?」「こういう案もあるよ?」というアイデアをお持ちでしたら、どしどしお寄せくださいませ。











作者コメント Comment
Kです。
黒犬がアジトを改装しております。
その合間に今後についての手を打っておこう、とこういうことで。
カサンドラにもなんだか変化が起き始めているようであります。




個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:90 = 60全体 + 30個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
不審死事件の調査として兄妹の村を訪問。兄妹や村人の状況や心情を調査。

村へは運べるだけの食料(支援物資)を届ける。

犠牲者の家族を訪問、当時の被害者の言動やトーマスを疑う理由を訪ねる。
トーマスが話さないのが怪しいとしても、彼に複数の大人を引き裂くような事は不可能。
村人が真実を話さず、問題への対応を失敗していては、また同じような悲劇が繰り返されかねない。

 当時の兄妹の境遇や村の状態についても聞き、村で面倒を見られないなら、トーマスが何度も泥棒を行わざるをえなくなる前に学園に助けを求めて欲しかったなど、責任追及や非難に終始せず、悲劇を繰り返さないためにも、真相解明と今後について前向きな話し合いを行う。

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
このまま保護施設に保護された状態を続けるのは難しいことは、
賢いトーマスくんなら察しがついてる前提で

「どんな選択をしても、僕は君のともだちだと思ってる。
何かあれば力になりたいし、危ないときは駆け付けたい。」

という前提で、色んな選択肢を提示する方向で。

ドリャ先生のうちに住まわせてもらえば安心な生活を
自分(タスク)の故郷の村なら小さい村だけど普通の生活ができる

この施設が好きならお手伝い…ゆくゆくは職員なんて進路もあるね

たくさんの本や芸術、魔法や、魔族に興味があれば…学園においで。歓迎する。
僕が出来る限り教えるし、もっとすごい先輩に話を聞くこともできるから。

もちろん妹さんと一緒にね
それが一番大事だろう

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
トーマスさんとトマシーナさんの将来もですが、カサンドラさんのことも考えておきたいです
恐らく……そんなに、残された時間はないんだろうな

と思いますし

◆カサンドラさん
サーブル城で見た幻視の内容を話しておきます
そのうえで、必要な画材等があればドリャエモン先生にもお願いして準備
彼女が残したい作品を仕上げてもらえたら

◆トーマスさん
もし絵が好きなら、カサンドラさんに絵を教えて貰ったり、彼女の絵のお手伝いを頼んで
誰かが命を懸けて何かを為そうとする姿は、彼にとっても……よくも悪くも変化の切っ掛けになるかも
カサンドラさんも作品以外で、誰かに残せるものなのかもしれませんし

先生の養子案には賛成
当面は施設のお手伝い提案

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:90 = 60全体 + 30個別
獲得報酬:2250 = 1500全体 + 750個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
お二人の今後について、ドリャエモン先生の養子になる、という案にプラスして保護施設の職員見習いにならないか、という提案をしてみますわ


施設全体の管理やハーブ園の手入れ等、担当の者はおりますが私達も学生として授業もありますし、いつも来られる訳ではありませんから日常的に掃除や草むしり等して下さる方がいれば助かります。それに妖精番の私としても、トマシーナ様がミラ様のお相手をして下さるのはとても有り難いですし

事前に管理担当のアマル様や経理担当のタスク様ともお話してお手伝いいただく分のお給金は出してもらえるよう交渉しておきますわ。その時アマル様が変に大金を出さないようあくまで相場の額を、と念押ししておきます

アルフィオーネ・ブランエトワル 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
・エリカ・エルオンタリエに以前、トーマスの故郷の村人と交わした会話の内容、印象などを報告
「まぁ、理解はできるけど、おおよそ共感はできないわね」

・トマシーナにリーゼ・ガルシュタインを紹介
「トマシーナ、ちょっといいかしら?あなたにお友達になってほしい子がいるのだけど」


・メメル校長に学園生の中に、子供と暮らしている者がいるかどうか尋ね、もし、いるならば、二人の保護者として立候補を希望する


・各選択肢に対し、推奨するようなことはしないが、トーマスが外的な理由(誰かに気を使ってなど)で、それを排除している様子が見られれば、ただ、自分とトマシーナにとって、もっともよいと思えるものを選ぶようにと諭す

アドリブA

ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
あちきからトーマスへの提案は、学園に入学する件についてじゃ。
これは今すぐではなく、黒犬の件が落ち着いてからじっくり考えて欲しいのじゃよ。

汝、黒犬みたいな強さが欲しいと思っとるじゃろ。
強くなるにはどうしたらよい?
独学じゃ中々に難しいぞ。あちきも何年と独学でやったがサッパリじゃった。
学園は強くなるための物や施設やノウハウが揃っておる。
入学すれば、きっと汝も強くなれるじゃろうて。

ただ、さっきも言ったが、落ち着いてからじっくり考えて欲しい。
ドリャ先生の養子になった後でも入学しようと思えば出来るからの。
将来の話じゃ、焦って決めることもない。
無理強いもせぬ。汝が決めて、汝が成したいように成せばいい。

リーゼ・ガルシュタイン 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
えっと、リーゼ、あるふぃねーねにおともだちをしょーかいしてもらえるってきいたんだよ。たしか・・・うん。トマシーナちゃん。あと~ミラちゃんってせいれいさんもいるっていってたよ。たのしみだな~なにしてあそぼうかな~

あ、でも、トマシーナちゃんとおくにいっちゃうばあいもあるんだよね?そっかあ・・ざんねん。ときどきあそびにいってもいいのかな?ねーねにきいてみよっと。


トーマスにーにとトマシーナちゃんががくえんにはいったらうれしいな、ずっといっしょにいられるもんね。


パーシア・セントレジャー 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
私はカサンドラさんに、今のうちに何をしておきたいか
何を残したいか確認しておくわ

リバイバルが過去のことを思い出す……リバイバル化した切っ掛けに迫るってことは、消滅と隣り合わせだもの
残したい作品があったり、自分の技術や想いを伝えておきたいなら、早めがいいわ

もし、残したい作品があるなら……誰かと共作するって手もあるかもしれないけど、私は絵はよくわからないから
だけど、師が手掛けた作品を弟子が完成させる……なんてのはロマンよね

弟子が居れば、技術も伝えられるし

トーマス君だっけ?
彼、ドリャエモン先生の養子になるなら、学園生は抵抗あるなら……カサンドラさんの弟子になって貰って施設管理の手伝いもできたらいいかも

リザルト Result

●山間の村・言いたいこと
 不審死事件の調査をするためと言う名目で、【エリカ・エルオンタリエ】は、単身【トーマス・マン】の村を訪れた。
 村に到着した後まず最初に彼女が行ったのは、多量の支援物資(食料)を村に引き渡すことと、事件の被害者家族への見舞いだった。
 この行動によって彼女は、村人らの警戒心を和らげることに成功した。彼らはすんなりと、トーマス兄妹がどのような環境にいたのか話してくれた。
 その中身は前もって【アルフィオーネ・ブランエトワル】から聞いていた話と完全に一致するものであった。
 トーマスと妹は親をなくしておじの家で世話になっていた――そもそもおじと彼の親は関係がよくなかった――おじはことに躾に厳しく、与える食事も少なかったようだ――トーマスは度々よその畑の作物を盗んでた――そのことで村の人間が厳しく当たることもあった――殺された人間たちが特に、トーマスに対して厳しかった……。
 以上のことに加えて、さらにこういう言葉も出た。
「トーマスは、なにか魔物にでもとっつかれたんでねえだろうか。そういう人間が恐ろしい力を使って暴れることがあるちうのを、聞いたことがあるで……」
 村人達がトーマスを加害者と疑っていること、それゆえ彼を恐れていることを、エリカは知る。
 これを放置していては、また同じような悲劇が繰り返されてしまう。そう危惧した彼女は力を込めて、上の疑念を否定した。黒犬が自分の協力者を得るために、暴行を行う村人を殺害したのだと確信しながら。
「いくら魔物が取り付いたとしても、彼に複数の大人を引き裂くような事は不可能です。トーマス君だけが無事だったのは、魔物に『死んでいる』と思われたからでは? 発見したとき、ひどい怪我をしていたのでしょう?」
 トーマスの怪我が死んだ人間の手によるものだと察している村人たちは、反論出来ず口を閉ざす。
 彼らにも一定の廉恥はあるのだとエリカは信じる。
 無論言いたいことは山ほどある。だが、責任追及と非難だけぶつけても状況は変わらないだろう。今は、別の言葉が入り用なのだ。
「……トーマスくんたちの面倒を村で見られないのなら、学園に連絡して欲しかったです。願わくば、彼が窃盗を繰り返す前に。今言ってもせんないことですが……今後もしまた何か困った事が起きたときは、いつでも学園を頼ってください。そのために学園はあるのです」

●保護施設・お友達はじめまして
 【トマシーナ・マン】、【ミラちゃん】そして犬が追いかけっこをしている。
 そこにアルフィオーネがやってきて、声をかけた。
「トマシーナ、ちょっといいかしら? あなたにお友達になってほしい子がいるのだけど」
「えっ、おともだち! どんなこ? どんなこ?」
「ちょうどあなたと同い年。【リーゼ・ガルシュタイン】って言うのよ。実はもうそこに来てるの。いらっしゃい、リーゼ!」
 呼びかけに応じて、のんびりした声が響いた。
「はあい、ねーねー」
 ぬん、という擬音をつけ、それはもう大きなカルマの幼女が現れた。さながら『巨人の子供』といった姿かたちだ。
 ツーサイドアップにしたゴールデンブロンドを揺らしスキップしてくる。
 振動でリンゴの若木が揺れた。
 犬が脅え尻尾を巻いて逃げ出す。
 ミラちゃんも驚き宙に飛び上がる。
「えっと、リーゼ・ガルシュタインで……す。よろしくね。トマシーナちゃんってよんでいい?」
 自分の上に影を落としてくる相手にトマシーナは、満面の笑みで応じた。
「うん、いいよ! じゃあさ、えっと、えっと、なにしようか!」
「えーとね、じゃあ、かくれんぼ!」
 二人は早速遊び始める。
 アルフィオーネは彼女らに母のような眼差しを向けた後、施設の中へ入っていった。大事な話し合いに参加するために。
 
●保護施設・アトリエにて
 【パーシア・セントレジャー】は、【カサンドラ】のアトリエを見回し、『踊る少女』の模写と模写の別バージョンが姿を消しているのに気づいた。
「カサンドラさん、あの絵はどこに持っていったの? 見当たらないけど」
 その質問にカサンドラは、新しいキャンバスに下書きを描きこみつつ、答える。
「ああ、あれは【ルサールカ】さんにお預かりしてもらったんです。もともと、そういうお約束でしたから……」
 絵を描くときの彼女の横顔は気迫に満ちている。キャンバスに注がれる眼光の鋭いこと。まるで猛禽だ。
(これが、画家魂っていうものかしら)
 心に呟いてパーシアは、しばしキャンバスを眺めた。
 両側を石壁に囲まれた階段だ。弧を描きながら下っていく。燃え盛る炎と弾ける電光をまとい、二匹の獣が今まさに駆け上ってこようとしている。
 一体どこを描いているのかと聞けば『果て無き井戸』だとのこと。なんでも【ベイキ・ミューズフェス】が、先だってそこを訪れた際見た幻視を教えてくれたらしい。
「赤猫、黒犬とおぼしき魔物が、ノア一族と思われる男女を手に掛けたのだそうです。男女は、サーブル城から持ち帰った遺品を身に付けていたとか」
「どうしてその光景を描こうと思ったの?」
「何か思い出せるかもしれないと思いまして。実のところ私、引っ掛かっているんです。多分、多分この話をどこか別のところで知っているんです。ノア一族の遺品は今見つかっているものだけじゃないはずなんです」
 パーシアは直感した。カサンドラの過去が蘇りつつあることを。
 リバイバル化したきっかけとなる記憶に、彼女は一歩近づいたのだ。もし完全にそれを思い出したなら、跡形もなく消滅してしまうだろう。それがリバイバルというものだから。
 パーシアはなんとなく、以前トーマスが口にした言葉を思い出した。
(恩しらずで、うそつき……随分なご挨拶よね)
 しかしよく考えてみれば、リバイバルは誰しもそうである可能性を秘めている。
(私も、自分に関わるあれこれを思い出せないことが多々あるし、どこかで大嘘ついてるかもね……)
 パーシアの胸にひたひたと心細さが満ちてくる。
 それを振り払うように彼女は、つとめて明るい声を出した。
「カサンドラさん、どうしても残したい作品とか、ある? 自分の技術とか、想いとか――そういうものがあるなら早めに表明しておいた方がいいわ。リバイバルは生きている人間以上にいつどうなるか分からない身の上だから」
「……そうですね」
 窓から差し込む日光が二人の体を透かし、床を暖めている。
「……ねえ、ちょっと手を止めて外の空気を吸わない? 今日はいい天気よ」
 パーシアの誘いかけにカサンドラは、顔を上げた。今初めて気づいたように窓の外を眺め、しみじみ言う。
「そうですね、本当にいいお天気」
 そこで扉が開き、ベイキが入ってきた。画材店の紙袋を抱えて。
「カサンドラさん、ご要望の岩絵の具、買ってきました。赤と金色の――あ、これはパーシアさん。お久しぶりです」
「こちらこそお久しぶり、ベイキさん」

●保護施設・話し合い
 施設関係者の面々――【タスク・ジム】、【ドリャエモン】、【朱璃・拝】が揃って食堂のテーブルにつき話し込んでいる。
「――ドリャエモン先生、兄妹を揃って引き取ってもよいと言ってくれる孤児院や里親は、まだ見つかりませんか」
「うむ。どうにも心もとなくての。このままではあの二人も不安じゃろう。じゃから、いっそわしが引き取ろうかと思うておっての」
「先生が、トーマスくんたちをご養子に?」
「あの子たちがよいと言ってくれればじゃがの」
「そういえばタスクさん、故郷のご家族にお二人のことをお話しされたそうですが、感触はいかがでしたか?」
「上々です。今すぐにでも迎えていいというご家庭が一軒ありました。ただ……」
「ただ?」
「そこは農家でして。であれば当然のこと、畑の世話や家畜の世話をすることになるでしょう? これまでの経緯を考えるに、そういったことをトーマスくんたちが受け入れられるのかどうか」
 三者顔を見合わせ、それぞれに考え込む。そこへ、アルフィオーネがやってきた。
「皆、お待たせ。話は進んでいる?」
 早速タスクが口を開く。
「ええ、一応。アルフィオーネさん、学園生の中に保護者になれる人がいないかどうかっていう件について、校長の返答はどうでしたか?」
「それが、まだ確認がとれてなくて……あの人肝心なときに、なかなか捕まらないのよねえ」
 続けて今度は【ラピャタミャク・タラタタララタ】が入ってくる。
「おう、遅れてすまん」
 息せき切って入ってきた彼女は、いの一番にドリャエモンへ聞く。自分が最も気になっているところを。
「のうドリャ先生、狼ズは大事無いかの? 先日のゴブリン討伐の時、死兵の狂気に思い切り当てられとったが……もしや恐怖がよみがえって震えたり、狂気が移って暴れたり、精神が不安定になったりはしておるまいの?」
 ドリャエモンはカラカラと笑い、彼女の懸念を吹き飛ばした。
「そこまで連中もやわではないぞ。あの時の戦いぶりを自らもふがいないと思っておるようでな、以前よりは鍛練に身が入っておる」
「そうか、それならいいのじゃ。いや、気がかりだったのでの」

●保護施設・かくれんぼ
「トマシーナちゃん、みっけー」
「あれー、またみつかっちゃったあ。リーゼちゃん、かくれんぼうまいねー。すごいねー」
 体が大きいから視点が高く相手を見つけやすいのだということに、トマシーナはまだ気づいていない。新しい友達を素直に褒める。
 
「えへへ……ねーねたちにあそんでもらうのもたのしいけど、トマシーナちゃんとあそぶのはもっとたのしいな」
「いっぱいあそんだら、おなかすいたねえ」
「そうだねえ。ねーねにおやつないか、きいてみよー」
 特大版幼児と普通の幼児は遊びを中断し、建物の中へ入っていく。向かう先は食堂だ。

●保護施設・結論
 アトリエを出たカサンドラたちは階段を下りたところで、トーマスの姿を見つけた。
 食堂の前で扉に耳をつけている。
「トーマスさん? そんなところで何をしていらっしゃるんです?」
 ベイキに声をかけられ慌てて姿勢を正した彼は、もごもご口を動かした。
「前を通りがかったら人が集まってたからさ、何かと思って……」
 その話し声が聞こえたのだろう、中からドリャエモンが出てきた。
「おお、トーマス。ちょうどよい。今呼びに行こうかと思っておったところだ。ベイキもカサンドラもパーシアも来てくれ。大事な話があるでの」
 一同はいざなわれるまま、席に着く。
 トーマスは周りの大人が何も言い出さないうち、自分からこう切り出した。
「ねえ、僕たちドリャエモン先生の養子になるの? それで、学園の生徒になるの?」
 どうもある程度自分達の話を聞いていたらしい。
 思いつつタスクは首を振った。
「ううん。まだ全然そう決まったわけじゃないよ。選択するのは僕らじゃなくてトーマスくんたちだ。トーマスくんたちがいやだって言うなら、何事も実現しないよ」
 それを聞いてトーマスは、幾らか肩の力を抜いた。そして、こう言った。
「僕、ドリャエモン先生の養子になるのはいいけど、学園には入学したくない」
 アルフィオーネはトーマスが黒犬に気兼ねしている(事実その通りだ)のではと疑い、そうする必要がないことを諭した。彼の耳に入りやすい形で。
「トーマスくん、黒犬とわたしたちが対立しているのは、カサンドラさんを巡ってのこと。この件が解決すれば、彼にとって、学園はどうでもいい存在となるわ――多分、勇者も」
 『恐らくあなたも』という部分はさすがに飲み込んで続ける。
「そのときのことを考えて、自分とトマシーナにとって、もっともよいと思えるものを選びなさい」
 それを受けてタスクが話し始める。相手の様子を見ながら。
「僕の故郷はガンダ村って言うんだけど、そこには、君達を二人とも引き受けてもいいっていう家庭があるんだ。農家さんでね……子供はいるけど、もう独り立ちして一緒には住んでない。畑を持ってて、牛も飼ってる。鶏もいて、七面鳥もいる。そりゃあ、賑やかだよ」
 トーマスは、正直気乗りがしなさそうな様子だった。
 やはり『農家』というのが引っ掛かるらしい。村と似たような環境に戻るのでは、と警戒しているのだろう。
 続いて朱璃が、第三の道を提示する。
「やはりお二人には保護者が必要ですし、先生の養子となる案は悪くないと思います。その上でただお世話になるというのが気が引けるのであれば、この保護施設の職員見習いになるというのはどうでしょう?」
 トーマスがはっと顔を上げた。
「職員見習になったら、ここに住める? ……生徒にならなくても」
 朱璃は気づいた。トーマスは生徒になるということでさえければ、ここにいたいと思っているのだということを。
 ならばその意志、後押しするにしくはない。そのために管理担当のタスク、そして経理担当の【アマル・カネグラ】と、あれこれ打ち合わせしてきたのだ。
「ええ、そうですわ。施設の手入れ等担当の者はおりますが、私達も学生として授業もありますし、いつも来られる訳ではありませんから……。それに妖精番の私としても、トマシーナ様がミラ様のお相手をして下さるのはとても有り難いですし――働いた分のお給金も出ますので」
「え、お金出るの?」
「はい。そんなに高額ではありませんが、保護施設整備事業予算のほうから、きちんと出ます」
「じゃあ、僕、それやりたい!」
 すこぶる乗り気になったらしい彼に、ラピャタミャクが言う。
「まあまあ、そうあせって結論を出すこともなかろ。今すぐではなく、黒犬の件が落ち着いてからじっくり考えて決めてもよいのじゃぞ?」
「ううん、早く決めたい。稼げるんなら僕、早く稼ぎたい……お金があったら、色んなものが自分で買えるから。トマシーナまだ小さいから、すぐ服が合わなくなるんだ。靴もさ」
 そこでパーシアが、ある思いつきを口にした。
「ねえトーマス君、それならカサンドラさんの弟子になるっていうのもいいんじゃない? 売れる絵が描けるようになれば、職員見習いだけしているだけよりも、お金が入ってくるわよ?」
 トーマスはそれに難色を示す。
「無理だよ。僕、これまで絵を描いたことなんかないもの」
 そこでカサンドラが口を開いた。
「『描いたことがない』は『描けない』とは違います、トーマス君。描きたいものがあるなら、絵は描けます……もし少しでも興味があるなら、教えてあげますよ」
 ベイキが脇から提案する。
「トーマスさん、【黒犬】を描く手伝いをするのはどうですか?」
「え?」
「カサンドラさんは今、黒犬の呪いについて色んなことを思い出すため、絵を描いておられるんです。その手伝いをするというのはどうでしょうか?」
 黒犬の役に立つことだと認識したのだろう、トーマスはコクリと頷いた。
「うん……いいよ。何が出来るかよくわかんないけど」
 そこで床のきしむ音が聞こえた。
 皆が顔を向ければ、リーゼが窮屈そうに身をかがめ、入ってくるところだった。
「あ、ねーねここにいたー」
 その後からトマシーナが入ってくる。心配そうな顔でトーマスに駆け寄る。
「にいたん、みんなあつまってなんのおはなししてたの? わたしたち、またどこかにいくの?」
 それを聞いてびっくりしたリーゼが、アルフィオーネに尋ねる。
「ねーね、トマシーナちゃんとおくにいっちゃうの?」
 アルフィオーネは笑って手を振る。
「そんなことないわよ。ね、トーマス?」
 トーマスも笑って、トマシーナの頭をなでる。
「どこにも行かないよ、ここにいるんだ。ドリャエモン先生がね、僕らの保護者に――おじいちゃんになってくれるって」
「わあ、ほんと! うれちい! おじいちゃん! おじいちゃん!」
 トマシーナはドリャエモンに突進し、大きなお腹に飛びつく。
 それを見守るトーマスに、タスクが語りかける。
「君は妹さんを守るために力やお金がいると思ってるかもしれない。それは半分しか正解じゃないと僕は思う。残り半分の正解は君はもう持っている。側にいて、そして幸せを願うことそのものだよ。それが一番大事だろう」
 拳で自分の胸を叩く。片目をつむって。
「お金や力がいるのは、きっと……周りに危険や困難がありすぎるからだ。それを出来るだけ取り除くために、先生方や仲間が頑張ってくれてる。僕もそのために全力を尽くすよ。『ゆうしゃ』だからじゃない。きみの『ともだち』だから」
 トーマスは小さな声で答えた。
「ありがとう」
 声に潤みが交じっている。
 朱璃は静かに、トーマスの肩を叩いた。
「日常の仕事もなのですが、此処には今後もお二人のように辛い目にあった子がくる事もあるでしょう。その時そのお気持ちを理解して寄り添って下さる方がいて下さればよい、とも思っております」
 ラピャタミャクは再度己の見解を述べた。押し付けがましくならぬよう心がけて。
「汝はまだまだ子供じゃ。時間はたっぷりある。気長く構えていかんとな。入学しようと思えばいつでも出来るでの。強くなるためには、独学じゃなかなか難しいぞ。あちきも何年と独学でやったがサッパリじゃった。学園は強くなるための設備やノウハウが揃っている。そこは間違いなきことじゃで」

●保護施設。その夜
 その晩、エリカが村から戻ってきた。
 彼女は何を差し置いてもまずトーマスに、おじからの言葉を伝える。
「……おじさんね……あなたたちのお父さんの分の畑の敷地……これまでずっと自分の畑と一緒に世話していたけど、名義はもとのままにしておいたんだって。いつかあなたたちのお父さんがお百姓に戻るときもあるかもしれないって思って……それでね、その敷地、あなたたちが大人になったら、改めてあなたたちの名義に書き換えておくって」
 トーマスは長い間を置いて呟いた。
「いらないよ、そんなもの」
「……それとね、あなたたちに、厳しくし過ぎて悪かったと言っていたわ」
 トーマスは再び長い間を置き、呟いた。両手をきつく握り締めて。目つきを険しくして。
「遅いよ今更」
 エリカは思った。トーマスの傷が癒されるために必要なものが足りなさ過ぎる、と。




課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
ミラちゃん家――それぞれの準備
執筆:K GM


《ミラちゃん家――それぞれの準備》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2020-11-02 00:04:11
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。

今回はトーマス兄妹の心のケアに尽力できればと思っているわ。
できれば、学園の生徒になってもらえるといいのだけど……

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 2) 2020-11-02 02:31:01
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。
よろしくお願いいたします!

学園の仲間になってもらえると嬉しいけど…
学園生になるということは、多かれ少なかれ魔や戦いに関わる、
そしてその責任が生まれるということ。
例え村人や芸術のコースでも無関係ではいられない以上…
慎重になった方がいいと、僕は思います。

現時点では、ドリャ先生の養子案が、実は一番手堅いのではないかと。
養親が学園教師というだけで、普通の子として生きることが出来ますからね。

あと、ジム家に引き取ってもらう案も考えましたが、
単に他人の家に住まうということでは、村での生活と、実はそんなに変わらないなあ、
と思い、自分の中で却下しています。
引き取り先がどんなに優しくとも、彼ら自身の気持ちとして、どうなのかなと。

そう考えると、ドリャ先生養子案も、【ベスト】にはなり得ないのかもしれません。

諦めずに、【ベスト】を探っていきたいですね!
頑張りましょう!

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 3) 2020-11-02 08:41:43
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
トーマスさんとトマシーナさんの将来もですが、カサンドラさんのことも考えておきたいところですね。
恐らく……そんなに、残された時間はないんだろうな。と思いますし。

カサンドラさんには、サーブル城で見た幻視の内容を話しておこうと思います。
そのうえで、必要な画材等があれば準備して、彼女が残したい作品を仕上げてもらえたらと。

トーマスさんは、もし絵が好きなら、カサンドラさんに絵を教えて貰ったり、彼女の絵のお手伝いを頼んでみたらどうかなとも思います。
もしカサンドラさんが作品を残せなくなっても、もしかすると……想いを受け継いだ弟子が、その世界を更に昇華させてくれるかも……なんて思うのはできすぎですかね。

まあ、トーマスさんの学園入学は本人の意向的に難しいと思いますが、家って人が居ないと傷みますし……保護施設を定期的に見て貰ったり管理したりと、学園ではなく保護施設のお手伝いをお願いしたらどうかな。
とも思ってるところです。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 4) 2020-11-02 18:49:39
とか思いつつも、彼が何が好きかとか、あんまりわかってないのもありますが。
あとで報告書見直さないと。

まあ、誰かが命を賭けて何かを為そうとする姿を間近で見るのは、彼にとっても……よくも悪くも変化の切っ掛けになるでしょうし、カサンドラさんの作品以外で、誰かに残せるものなのかもしれませんし。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 5) 2020-11-02 20:14:12
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。


今の所二つの案があるのですわね。確かにドリャエモン先生の養子になるのが一番手堅そうですが・・・。

もし学園の生徒に、というのであれば少なくともトーマス様の黒犬への意識を変えない事にはどうにもならなさそうですわね。ただ黒犬の思惑がどうあれトーマス様にとっては恩人、恩魔物?である事には変わりませんから難しいですわね・・・。

恩は恩として、悪い事をしないようにさせたい、等と思ってもらえる事が出来ればあるいは、という気もしますが、もう少し考えてみますわ。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 6) 2020-11-03 13:50:09
ミラちゃん家・家事担当。教祖・聖職専攻のアルフィオーネ・ブランエトワルです。どうぞ、よしなに

二人はだいぶ現環境に馴染んでいるので、出来れば近い環境を維持できればな。と、思っています。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 7) 2020-11-05 18:36:23
色々考えてみたけれど、わたしは今回は兄妹には接しないで、出身の村へ行って村人の話を聞いて来ようと思うわ。

兄妹のケアは保護施設に残る人に任せることになるけれど、お願いするわね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 8) 2020-11-05 21:00:02
いろいろ考えていますがベストといえるものはやはり中々思いつきませんわね・・・。

トーマス様自身は出来ればこの施設にずっといたい、という事なのであれば、保護対象ではなくこの施設の職員になる、と言った事も考えたのですがそれも難しいかもしれませんわね。ただミラ様もトマシーナ様と遊べますし、妖精番としてミラ様のお相手をして下さる方がいれば安心なのですが。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 9) 2020-11-05 23:40:43
トーマス君が黒犬に引け目を感じないでいいようにできれば、
学園生になるルートも拓けるんじゃないかしら?

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 10) 2020-11-06 03:53:38
正式職員でなはくて、見習い。と、言う形ならあるいはいけるかも?

村人になら、わたしも一度、話をしたことがあるわ。予備知識として提供できるけど必要かしら?
(PL:ミラちゃん家――保護案件発生のリザルト参照を)


《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 11) 2020-11-06 07:43:29
トマシーナさんはミラ様と仲良しですし、黒犬の手下ワンコは施設に居る訳ですから、仲良しのミラ様やワンコのお世話するってのを口実に……施設に通って貰って、施設の管理を手伝って貰うのならば、黒犬の助けにもなるとトーマスさんも思ってくれませんかね?

ドリャエモン先生のお宅でワンコを世話するのは、先生のご家族を戦いに巻き込む可能性も出てくるので避けたいですし、ワンコ的にも慣れた施設の方が居心地いいかもしれませんから。

とこじつけてみる。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 12) 2020-11-06 15:39:32
>アルフィオーネさん
助かるわ。ありがとう。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 13) 2020-11-06 20:03:20
そうですわね、ドリャエモン先生の養子案に+αする形で、施設職員見習いとして通ってもらう、という形で提案してみてもいいかもしれませんわね。やはりまだ子供という事で保護者は必要でしょうし、その上でそれが気が引けるというのであれば、という事で。見習いですのでそんなには出ないでしょうがお給金も出るのであれば、とりあえず衣食住の心配はないと思いますから貯金も出来るかと思いますし。

私も学園の生徒になってくれるのでしたらそれがいいとは思うのですが、やはり黒犬に対する意識が変わるなりするのに時間はかかるでしょうし。ただ私達以外のフトゥールム・スクエアの生徒とも関わっていく事になるでしょうからその中でゆうしゃを目指したい、と思ってくれるようになるかもしれませんわ。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 14) 2020-11-06 20:26:11
ひとまず先述の形で提案してみると仮プランを書いておきましたわ。施設の管理担当がアマル様、経理担当がタスク様ですので事前にお話ししてその場合お給金を出してもらえるようお話する形にしておきましたので、もし字数が大丈夫でしたらタスク様も「話を聞いた」程度で一言書いていただけたら幸いですわ

勿論最終的にどうするかはトーマス様とトマシーナ様がお決めになる事ですからあくまで提案のみですけれど。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 15) 2020-11-07 03:01:11
>エリカさん
では、プランにわたしが村人との会話の内容、受けた印象をエリカさんに伝える。と、記します

わたしは、黒犬の件が解決すれば、黒犬と対立する理由がなくなるから、学園に入ることに引け目を感じることはない。と、伝えることにします。ですが、あくまで当人の意思を尊重したいので、推奨はしません。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 16) 2020-11-07 08:38:09
悩んでる間に出発日になってしまいました!すみません~!

難し過ぎて全然答えが出ないのですが…現時点の僕の見解を開示します。 

「どんな選択をしても、僕は君のともだちだと思ってる。
何かあれば力になりたいし、危ないときは駆け付けたい。」

という前提で、色んな選択肢を提示する方向で。

ドリャ先生のうちに住まわせてもらえば安心な生活を
ジム家は暖かく迎えてくれるよ。小さい村だけど普通の生活ができる

たくさんの本や芸術、魔法や、魔族に興味があれば…学園においで。歓迎する。
僕が出来る限り教えるし、もっとすごい先輩に話を聞くこともできるから。

…みたいなことを考えてます。

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 17) 2020-11-07 16:36:47
らぴゃたみゃくたらたたららた!
魔王・覇王コースのラピャタミャク・タラタタララタじゃ。
ギリギリのタイミングじゃが、よろしくなのじゃ。

あちきからは、学園への入学の案について話そうと思うのじゃ。
ただ、これは今すぐではなく、黒犬の件が落ち着いてからじっくり考えて欲しいとも言っておくのじゃ。
もしドリャ先生の養子になったとしても、その後からでも入学しようと思えば出来るじゃろうし。
将来の話じゃ、焦って決めることもない。

あと、これは別件じゃが、
ちと狼ズのことが気になるから、ドリャ先生に様子を聞いてみるのじゃ。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 18) 2020-11-07 19:43:40
わたしからはもう一つ、トマシーナに友達になってくれそうな子を紹介しようと思っているわ。武神・無双コースのリーゼ・ガルシュタインという子よ。彼女には、難しいことは理解しづらいだろうから、トマシーナと仲良くして欲しい。と、いうことと、万が一の時は、トマシーナを守るようにいい含めてあるわ

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 19) 2020-11-07 21:26:50
王様・貴族コースのパーシア。よろしくお願いします。
私は久々の保護施設案件だけど、そろそろ佳境って感じね。

とりあえず、私はカサンドラさんメインで動くわね。
あの兄妹とは一方的な面識だけだし……あ、わんこのお世話はしてみたいかも。