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小春日和の幕間劇


ストーリー Story

●以下、猫の首輪に仕込んだテール(通信用魔法石)によって聞き取れた音声の一部抜粋。

(厚手の布が引き裂かれる音)
「あ。破れた。まあいいや。これ、いい。すごくいい。ねえ?」
(複数の猫の鳴き声)
「部屋に敷いたら絶対あったかーい。こっちのタペストリーも、降ろしちゃおー」
(厚手の布が引き裂かれる音)

「ぶらんこゆれろ、ゆれ、ゆれ、ゆれろう♪」
(風を切る音。)
「もっともっとゆーれろう♪」
(ガラスが激しくぶつかり合う音。金属がきしむ音。)
「わあ」
(ガキンと鎖が切れる音)
(たくさんのガラスが一斉に割れ砕け散る音。付随して金属製の何かがひしゃげる音。)
「なーんだ。もう落ちちゃった。だめねえ。このシャンデリア」

「(コルクを開ける音)そーねー。お天気よくなったら、外へ遊びに行こうか。ポンコツの様子、見に行こうか。あいつゆーしゃの学校の近くにいるんだって」
(猫の鳴き声)
「(液体を飲む音)そーよー、あいつが死んだら私も死ぬの。呪いでそうなってるの。ああ嫌だ、むかつく、本当にむかつく(声のトーンがどんどん険悪なものになっていく)なんで私が飼い主に媚びるしか能のない犬っころに付き合って、死(以下言葉が猫のわめき声に変じ聞き取れなくなる)」
(バリバリ電流が走る音。鈍く重い打撃音。厚手の壁が抉れる音)

●スカウト
 フトゥールム・スクエア。
 居住区域『レゼント』にある学生に人気のカレー食堂『おいらのカレー』。
「あなたたちにお目にかかるのは、これで二度目ですね」
 と言って【セム】は、メニューを狼ズ三兄弟【ガブ】【ガル】【ガオ】に差し出した。
「どうぞ、何でも好きなだけ注文してください。勘定は全部私が持ちますから」
 狼ズは食べ盛り。最近は鍛練に身を入れているので、その分腹が減るのが早い。ということで、この提案を喜んで全身全霊受け入れた。
「ビーフメガ盛り!」
「飯大盛り!」
「丸ごとチキンカリー揚げ5つつけてくれ!」
「スパイシーラムも!」
「ミートサモサも!」
 セムはがつがつ食いまくる彼らを前に、失礼、と席を立つ。タバコを吸うために――店内は禁煙だったのだ。表に出てゆっくり一本吸い切ってから再び店内に戻る。
 狼ズはちょうど腹を六分程度まで満たしたところ。食べるペースを落とし、口の中にあるものの味を心ゆくまで味わっている。
 そこでセムが話を切り出した。
「あなたがたを呼んだのは外でもない、仕事を頼みたいからです」
 それを聞いた途端狼ズは、なんとなく顔を見合わせた。
 彼らは実のところ、このセムというヒューマンの女に、ちょっとした苦手意識を持っている。
 それというのも以前彼女が自分たちを含めた学園生徒に『致死毒実験をするため、ゴブリンを捕獲してくれ』という依頼を出したことがあるからだ。たとえ魔物と言っても毒でじわじわ殺されて行く様を見るのは、彼らにとって、けして気持ちがいいものではなかった――魔物を駆逐すること自体に抵抗感はないのだが、その手段として毒を使うというのは――どうも、今一つためらいがある。
「そんなこといきなり言われてもよお」
「なあ」
「うん。俺たちもやることあるし。先公が毎日欠かさず習練出てこいってうるせーし」
 セムは彼らの及び腰な反応を見越していたか、落ち着き払っていた。
 テーブルに肘をついて両手を組み、にこやかに――社交辞令の範疇にあるにこやかさだ――言う。
「私はね、あなたたちを買ってるんですよ。この間の、ゴブリンを前にしてのあなたたちの戦いぶりには感嘆しました。それは確かに多少は稚拙だったかもしれない。でも初陣においては、皆そんなものでしょう。あなたたちはとても勇敢に戦っておられました。他の誰よりも。犠牲を厭わず前に出て」
 ガブもガルもガオも虚を突かれた。セムがこんなにはっきりした褒め言葉を口にしてくるとは思っていなかったので。
 人間誰しもそうだが、褒められて悪い気はしない。特に彼らは根が単純である。
「うん、まあな」
「俺たち伸びしろありまくりだからな」
「つか、最強だからな」
 この通り、すぐいい気になる。
 セムはすかさず『仕事』の内容について説明し始める。
「グラヌ-ゼのサーブル城はご存じですね? そこに【赤猫】という魔物が住み着いておりましてね。その魔物、ベラボウに力が強くて、並の人間どころか、並の勇者候補でも手に負いかねる相手だそうで。私は赤猫を城から退散させたいと思っているのですが、力ずくでそうするのは難しい。なにかしら策を講じなければ。そのために可能な限り多くの情報を集めたいと思っています。それにご協力いただけませんか?」
 続けて彼女は言う。以前同じ依頼を【アマル・カネグラ】含む別の生徒達に依頼し、『果て無き井戸』の一つに入ったのだが、途中で危険と判断し戻ってしまい、姿を見ることも出来なかったのだと。
 『並の勇者候補でも手に負いかねる相手』と聞いた狼ズは、内心躊躇しなくもなかった。
 しかし虚勢がそれに勝つ。
「おう、べ、別にいいぞ」
「アマルが途中まで行けたんだろう。俺たちなら、最後まで朝飯前ってもんよ」
「井戸に入るくらい楽勝だぜ」
 セムは称賛の拍手を彼らに贈る。
「さすがです、皆さん」
 店の入り口で呼び鈴が鳴った。
 見目麗しいローレライの女――【ラインフラウ】が入ってきた。セムたちのいるテーブルに向け手を振り、微笑む。
「話はまとまった?」

●内幕
 ――気象予報担当者によれば、ここ一週間ほどのぐずつきが過ぎた後、グラヌーゼはしばらく穏やかな日和が続くだろうとのこと。
 大陸南部の気温は、平均より高めの傾向が、後数日ほど続く見込み。――
 
 天気予報欄を確認したセムは新聞を畳み、カフェテーブルの上に置く。向かいの席にいるラインフラウはパフェを食べながら、彼女に話しかけている。
「セム、何であの子たちに仕事を頼んだの? 言っちゃ何だけど『勇者』としてのレベルは低いでしょう」
「だからですよ。ある程度以上のレベルに達した『勇者』では向こうが警戒して、素直に釣り出されてこない危険性があるでしょう? そもそもそういう人は危険についての察知能力がすこぶる優れているから、最初から不必要な遭遇を回避しようとしますし。この前みたいに」
「それはつまり、あの子たちが無鉄砲無思慮に危険地帯へ足を踏み入れてくれそうだから、声をかけたってことね?」
「まあ、そうとってくれても構いません」
「わーるいんだー、セム」
 ラインフラウは明るく笑い、空を仰ぐ。
「言っておくけど危ないと見たら私、あなたを連れて即逃げるからね?」
 セムは物憂げに返す。
「あの子達は?」
「残念だけど、そこまで面倒見られないわ。勇者候補なら、自分でなんとかするでしょう」




エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 6日 出発日 2020-12-07

難易度 簡単 報酬 通常 完成予定 2020-12-17

登場人物 8/8 Characters
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《人間万事塞翁が馬》ラピャタミャク・タラタタララタ
 カルマ Lv22 / 魔王・覇王 Rank 1
不気味で人外的な容姿をしたカルマの少女。 愛称は「ラピャ子」や「ラピ子」など。 名前が読み難かったらお好きな愛称でどうぞ。 性格は、明るく無邪気でお茶目。 楽しいと面白いと美味しいが大好き。 感情豊かで隠さない。隠せない。ポーカーフェース出来ない。 そしてちょっと短気なところが玉に瑕。 ギャンブルに手を出すと確実に負けるタイプ。 羞恥心を感じない性質で、露出度の高い衣装にも全然動じない。 むしろ前衛的なファッション格好いいと思ってる節がある。 戦闘スタイルは我流の喧嘩殺法。 昔は力に任せて単純に暴れるだけだったが、 最近は学園で習う体術を取り入れるようになったらしい。 しかしながら、ゴリ押しスタイルは相変わらず。 食巡りを趣味としているグルメ。 世界の半分よりも、世界中の美味しいモノの方が欲しい。 大体のものを美味しいと感じる味覚を持っており、 見た目にも全く拘りがなくゲテモノだろうと 毒など食べ物でないもの以外ならば何でも食べる悪食。 なお、美味しいものはより美味しく感じる。Not味音痴。 しかし、酒だけは飲もうとしない。アルコールはダメらしい。 最近、食材や料理に関する事を学び始めた模様。 入学までの旅で得た知識や経験を形に変えて、 段々と身に付いてきた…と思う。たぶん、きっと、おそらく。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《幸便の祈祷師》アルフィオーネ・ブランエトワル
 ドラゴニア Lv23 / 教祖・聖職 Rank 1
異世界からやってきたという、ドラゴニアの少女。 「この世界に存在しうる雛形の中で、本来のわたしに近いもの が選択された・・・ってとこかしらね」 その容姿は幼子そのものだが、どこかしら、大人びた雰囲気を纏っている。  髪は青緑。前髪は山形に切り揃え、両サイドに三つ編み。後ろ髪は大きなバレッタで結い上げ、垂らした髪を二つ分け。リボンで結んでいる。  二重のたれ目で、左目の下に泣きぼくろがある。  古竜族の特徴として、半月型の鶏冠状の角。小振りな、翼と尻尾。後頭部から耳裏、鎖骨の辺りまで、竜の皮膚が覆っている。  争いごとを好まない、優しい性格。しかし、幼少より戦闘教育を受けており、戦うことに躊躇することはない。  普段はたおやかだが、戦闘では苛烈であり、特に”悪”と認めた相手には明確な殺意を持って当たる。 「死んであの世で懺悔なさい!」(認めないとは言っていない) 「悪党に神の慈悲など無用よ?」(ないとは言っていない)  感情の起伏が希薄で、長命の種族であった故に、他者との深い関りは避ける傾向にある。加えて、怜悧であるため、冷たい人間と思われがちだが、その実、世話焼きな、所謂、オカン気質。  お饅頭が大のお気に入り  諸般の事情で偽名 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを胸に、学園での日々を過ごしている
《猫の友》パーシア・セントレジャー
 リバイバル Lv19 / 王様・貴族 Rank 1
かなり古い王朝の王族の娘。 とは言っても、すでに国は滅び、王城は朽ち果てた遺跡と化している上、妾腹の生まれ故に生前は疎まれる存在であったが。 と、学園の研究者から自身の出自を告げられた過去の亡霊。 生前が望まれない存在だったせいか、生き残るために計算高くなったが、己の務めは弁えていた。 美しく長い黒髪は羨望の対象だったが、それ故に妬まれたので、自分の髪の色は好きではない。 一族の他の者は金髪だったせいか、心ない者からは、 「我が王家は黄金の獅子と讃えられる血筋。それなのに、どこぞから不吉な黒猫が紛れ込んだ」 等と揶揄されていた。 身長は150cm後半。 スレンダーな体型でCクラスらしい。 安息日の晩餐とともにいただく、一杯の葡萄酒がささやかな贅沢。 目立たなく生きるのが一番と思っている。
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」

解説 Explan

こんにちは、Kです。
今回の課題は日常フリーアタック。
エピソードに関連のあることをしてもよし、しなくてもよし。
それぞれの、小春日和な一日をお過ごしください。

前回仕掛けた盗聴器によりセムは、赤猫が城でどう過ごしているのかを知ることが出来ました。
その結果彼女は『早いところ赤猫を始末しないといけない』という結論に至っております。
なにしろ放置しておいたらおいただけ、城の価値ある貴重な文化財が破壊されまくっていくということが、目に見えてますので。
その布石として今回、狼ズをスカウトした模様です。
これからどういう手を打とうとしているのかは明確にしていませんが、聞けば少しは教えてくれるんじゃないかと思います。エピソード本文に出てくる赤猫の情報についても。

ちなみにですがセムは、赤猫と黒犬の呪いは解くべきではないという立場です。
片方始末すれば両方始末出来るのだから、人間にとって大きな利点ではないか。それをあえて無にする必要はない、という考えです。



各NPCの詳細については、GMページに一覧を作成してありますので、そちらをご参照下さいませ。



作者コメント Comment
ここのところ、魔物と文通してみたり交渉してみたりと忙しいエピソードが続きましたので、ここらでひとつ、コーヒーブレイク。
不穏の種が一部に垣間見えますが、基本小春日和の穏やかな日。好きなことをしてお過ごしくださいませ。



個人成績表 Report
朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:60 = 50全体 + 10個別
獲得報酬:1200 = 1000全体 + 200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
私は保護施設で色々いたしますわ。先ず黒犬の使いのわんこさん。ずっといるなら犬小屋を作ってあげた方がよいのではと思いトーマス様と一緒に製作しようかと。見習いになるなら大工仕事も覚えないとでしょうし、先ずは簡単な物から。その際材料費は経理担当のアマル様からかっぱいできますわね

その次は、施設でクリスマスパーティができればと思い、その為のクリスマスプディングを作ろうと思いますわ。ここはトマシーナ様とミラ様にも手伝っていただきましょうか。熟成が必要なので本当はもう少し早く作った方がよかったのですが。皆で願いを込めて材料をかき混ぜる習わしですので、トーマス様始め今施設にいる皆様全員にかき混ぜてもらいますわ

エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:60 = 50全体 + 10個別
獲得報酬:1200 = 1000全体 + 200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
三兄弟が心配なので後を追いかけ城へ行く

セムさんについては前回の毒実験のこともあるし
手段を選ばない気性には危険なものを感じる

経験のまだ少ない三兄弟にサーブル城を調べさせるのは荷が重い
もし赤猫に会ってしまえば、殺されてしまうかもしれない

セムさんがそれを分かっていて三兄弟を向かわせるのは
情報や宝を手に入れたい我欲の生け贄にも等しいのではないか

さすがに看過できない
三兄弟を無事帰還させ、セムさんにも行動を改めて欲しいと釘を刺したい
可能ならラピ子さんと連携

三兄弟に追いついて、赤猫に出会うと危険だと伝え、早く引き上げるよう訴える
もし、赤猫や他の魔物などに襲われたり、罠などで困っていれば
助けて学園へ連れ帰る

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:60 = 50全体 + 10個別
獲得報酬:1200 = 1000全体 + 200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆方針
まずは居候ワンコの小屋作り

その後は、ワンコが退屈したりしそうならトマシーナさんと一緒にお散歩に行ったり、合間に薬草を収穫、枯れた薬草の種を取ったり来年の準備

◆ワンコハウス
大工仕事なんてやったことないんで、自分の指を盛大に金づちでぶっ叩く未来しか見えないのが

材料を手配し、トーマスさん達にも手伝って貰って

私は言われた材料を渡したり、材料を押さえたりお手伝い

◆お散歩
ワンコ連れてトマシーナさんと一緒にお散歩
ドリャエモン先生も一緒なら、市場まで行っても大丈夫かも

花梨と蜂蜜を探したくて

◆冬支度
トマシーナさんと一緒に薬草を収穫して乾燥させたり、枯れた薬草の種を取ったりと来年の準備

花梨の蜂蜜漬けも作ろう

ラピャタミャク・タラタタララタ 個人成績:

獲得経験:75 = 50全体 + 25個別
獲得報酬:1500 = 1000全体 + 500個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
セムから情報収集

■行動
セムと話しをするのじゃ。
どこかで食事でもしながら…あちきの奢りでの。

カレー食堂で狼ズと話しておったようじゃの。
汝ら商人が奢る、即ち何か仕掛けようとしておるのじゃろう?
件の呪いの件に関わることゆえ、是非とも聞いておきたいところなのじゃ。

あちきとしては、赤猫の様子とセムの結論(赤猫始末)が聞ければよい。
手段はあえて聞くまい。おそらく手伝えぬ話じゃからのぉ。

あと、少し釘を刺しておく。
謀りでうちの後輩を鉄砲玉に利用するのは、ちと看過出来んぞ!
確かに勇者候補は命懸け、依頼を受けるのは自己責任じゃ。
だが、だからと言って無下に扱っていい訳ではない。

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:60 = 50全体 + 10個別
獲得報酬:1200 = 1000全体 + 200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
ただプラプラと散歩したり日向ぼっこしたりまったり過ごす。

アドリブA 大歓迎。

アルフィオーネ・ブランエトワル 個人成績:

獲得経験:75 = 50全体 + 25個別
獲得報酬:1500 = 1000全体 + 500個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
目的

黒犬、赤猫にかけられた呪いについて、現在得られた情報、図書館での調査、それらを踏まえた上での、自分なりの考察を加え、報告書を作成。メメル校長に提出

行動

セムに、放った猫から得られた情報を要求(特に呪いに関して)。自分も彼らを討伐する気でいること、呪いを解くことには反対の立場であることを表明。利害の一致を強調。また、彼らに不用意に刺激を与えぬ事、学園生への依頼は、学園を通すように警告

カサンドラには、彼らに会ったとき、すでに呪いを解く『鍵』を得ていたのか、サーブル城の中を見れば、それを見つけられる。と、いうことだったのか、尋ねる

図書館で、ノア一族、呪い、の書籍を閲覧

「共存なんて無理よ」


アドリブA




パーシア・セントレジャー 個人成績:

獲得経験:60 = 50全体 + 10個別
獲得報酬:1200 = 1000全体 + 200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆方針
私はカサンドラさんの絵の創作のお手伝いとか、カサンドラさんがトーマスさんに絵の熱血指導してるときにやり過ぎないように、軽くフォローしたりしとこうかしら

トーマスさんが手伝った黒犬の絵も見せて欲しいし

◆お手伝い
道具を手配したり、必要ならポーズのモデルをやったり
トーマスさんの絵も見てみたいわ

もしかしたら、カサンドラさんとは作風や長所が違うかも
デッサンなんかの基本は大事でしょうけど、塗りや色使い、構図なんかは作者それぞれ

カサンドラさんの指摘した欠点も補いつつ、長所を伸ばしたら……カサンドラの弟子じゃなくて、あのトーマス・マンの師って世間に言わせられるかもよ?

とにかく、長所をほめて伸ばしましょう

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:60 = 50全体 + 10個別
獲得報酬:1200 = 1000全体 + 200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
設計ならお任せください!
役人勇者としては必須科目のひとつですので(笑)
この際保護施設に色々手を入れつつ、
トーマスくんを施設維持管理人として育てる絶好の機会ですね!

朱璃さん、ベイキさん、トーマスくんと協力して犬小屋を作る
経費は予算から捻出
【設計】は役人の父(自己紹介参照)の教えと入学後の自学をミックスした
ガチ建築知識に基づく楽しく身につくノウハウを色々と披露し
犬小屋建設という作業を通して
トーマスくんのやりがいや施設整備への興味の喚起に尽力する

それがひと段落したら【料理】で事前に用意した
グラヌーゼ麦パンのサンドイッチで休憩をはさみ
流れるように施設管理の基礎の基礎を楽しくわかりやすく教える

アドリブA

リザルト Result

●ものの見え方
 【パーシア・セントレジャー】が【カサンドラ】の様子見に訪れたとき、彼女はちょうど【トーマス・マン】にデッサン指導をしていた。
 トーマスが描いているのは無地の花瓶。年にしてはなかなか上手に描けている。
 だがカサンドラの評価は辛口だ。
「絵を逆さにしてみてトーマス――ほら、左右の膨らみが違うでしょう? 面倒がらずに測量しなさい。印象と実際の形とは違うのよ」
(随分熱血指導ね……)
 感心しつつパーシアは、フォローを入れる。駄目出しでトーマスがしょげないように。
「そうは言ってもすごいわよ。始めて一カ月もしないうちにここまで描けるなんて、やっぱり才能があるのよトーマスさんは――で、例の絵は完成した?」
 カサンドラはトーマスと顔を見合わせ、首を振った。
「いいえ、まだ。【黒犬】と【赤猫】のところは大体出来ましたが、ノアの女性のところがなかなか……」
 と言いながら、壁際のキャンバスから覆い布を取る。
 パーシアは絵に見入った。
「トーマスさんが手伝ったのは、黒犬のところ?」
「そうです。私が随時調整は加えてますが……」
 黒犬の前足は宙に浮いている。跳躍の真っ最中と言った具合だ。体の回りに渦巻く炎には本来ないはずの、明るい緑や赤が差し入れられている。
「構図が大胆ね。今にも襲いかかってきそうだわ。色使いも素敵よ」
 褒められたトーマスは照れ笑いした。
 カサンドラもパーシアが指摘した点は、十分認めているようだ。
「ええ、この子は色のセンスがあります。生き物の動きを捕らえるのも上手なようで」
 だが手放しで褒めているかというと、そうでもないようだ。褪せた青い目に憂いが見え隠れしている。
「難しいです、合作というのは。たとえ同じ対象であっても、人それぞれ見え方が違いますから、同じようには描けませんし……ところでパーシアさん、よろしければモデルをしていただけませんか?」
「ええ、いいわよ。何のモデル?」
「先ほど言いましたように、ノアの女性のポーズが決まらなくて。この人は恐らく、貴族や王族に匹敵する身分だったはずです。そういう人が追い詰められたときどういう仕草を出すものか、今一つ分かりませんで。王族・貴族コースのあなたなら、そのあたりのことをご存知なのではないかと……」
 パーシアはかつて生きていた頃の記憶を呼び覚まし、その場で演技をしてみた。
「……こんな感じかしら? 多分裾は乱さないようにしてると思うわ」
 カサンドラはデッサン帖を手にパーシアの周囲を歩き回り、一言。
「脱いでいただけます? そのほうがはっきり動きが見えますから」

●連鎖
 小春日和の陽気に浮かされ街角散歩をしていた【仁和・貴人】は、小腹がすいてきたのでカレー食堂に立ち寄った。
 そうしたらたまたま後ろの席に【セム】と【ガブ】【ガオ】【ガル】がいて、彼らのやりとりを聞くことになった。
 【ラインフラウ】が来たところでセムは早々に席を立ち、店を出て行く。『それではグラヌーゼ行きの馬車を、明日ここによこしますので』と言い残して。
 残された狼ズは興奮冷めやらぬように、わちゃわちゃ話を始める。
「しっかし、城の魔物ってどんな奴かな」
「そんなん現地に行ってみりゃ分かるだろ」
「名前からして猫系の奴じゃないか?」
 そこで貴人が振り向き、彼らに声をかけた。
「あの、ちょっと」
 狼ズはいきなり声をかけてきた彼に、怪訝な視線を向けた。
「何だてめー、いきなり」
「何の用だ」
「……いや……君ら、詐欺にあってないか?」
「何の詐欺だよ」
「さあ、そこはよく分からないが」
 曖昧模糊な答えを受けて狼ズは、不機嫌な顔をした。からかっているのかと思ったらしい。
「は?」
「なんなんだよ。わけわかんねー」
 と言い捨て、店を出て行ってしまう。
 貴人はその反応について、別に残念がらなかった。彼も彼で、そこまで深く狼ズの身の上を案じているわけではなかったのだ。
 再度、あてどなくまったりぶらぶら歩き。
 途中【ラピャタミャク・タラタタララタ】に行き会い、今の話をする。それから、図書室に向かう。静かに昼寝するために。

 貴人の話を聞いたラピャタミャクは、大急ぎでセムを探した。そして、彼女がラインフラウとカフェにいる所を見つけた。
「おーい、セムにラインフラウ! いやいや、ちょうどよいところで会うたわ。探しておったのじゃ」
 割り込むように席に着き、フランボワーズタルトを注文。相手方に勧める。
「遠慮なくやってくれ。あちきのおごりじゃでな」
 セムは値踏みするような眼差しをラピャタミャクに注いだ。
「ラピャタミャクさん、私に何かお聞きになりたいのですか?」
「さすが商人、察しがいいの。では聞くが、汝、赤猫に何か仕掛けようとしておるじゃろ? カレー食堂で狼ズに奢っておったそうではないか」
 ラインフラウが鈴を転がすように笑う。
「さすが学園、噂が広まるのが早いわね」
「全く」
 と彼女に返したセムは、城の盗聴を行った経緯と盗聴の内容をラピャタミャクに話し聞かせた、こう締めくくる。
「あの魔物は始末するべきです。でないと損失が天井知らずに増えて行くばかりですのでね。そのためには、呪いも解くべきではないと思っています……あなたは、どうお考えで?」
「あちきは呪いは解くと決めているのじゃ。どんな利があったとしても、反故にする訳には行かないのじゃよ」
「そうすることで赤猫と黒犬に恩が売れるとお考えで?」
「いいや、全然。そんなもの期待するだけ無駄じゃろ。そうせねばトーマスを裏切ることになるし、カサンドラを嘘つきの恩知らずにしてしまう。だから呪いを解きたい。それだけのことじゃ。ところで狼ズの話に戻るがセムよ。謀りでうちの後輩を鉄砲玉に利用するのは、ちと看過出来んぞ! 確かに勇者候補は命懸け、依頼を受けるのは自己責任じゃ。だが、だからと言って無下に扱っていい訳ではない」
 強い口調で言い募るラピャタミャクに、セムは、白い歯を見せた。口元を弓なりにして。
「ご安心ください、私は彼らを無駄に危険にはさらしませんよ」
「本当かのー?」
「はい。気になるのでしたらラピャタミャクさん、明日一緒にグラヌーゼへ来ていただけませんか? それならば、彼らも心強いでしょうし」

 図書館の片隅。
 【アルフィオーネ・ブランエトワル】は『ノア一族』と『呪い』に関する書籍を読みながら、【エリカ・エルオンタリエ】と話をしている。
「呪いの発動源は、彼ら自身ではないかと思うの。『物』なら壊せば解けてしまうでしょう? 呪いを解くには相手を殺さなきゃいけない。だけどそうしたら呪いの効果で自分も死ぬ。従って呪いを解くことは出来ない――そういうことじゃないかしら?」
「なるほど。ありえない話ではないわね。どこまで行っても堂々巡り、か……厭な感じね」
「ノア一族らしいやり方よ」
「ノア一族ってそういうイメージなの?」
「文献によれば。とにかく、あの魔物たちと共存なんて無理よ。あなたは、そう思わない?」
「そうね……」
 エリカは語尾を濁らせ物思いに耽る。【タスク・ジム】から聞いた話が脳裏を掠めたのだ。彼によればセムは赤猫について、こう評していたらしい。
『あれは人間並みの知恵を持つ獣です。獣相手に取引は出来ない。物理的に排除するしかないと思います』
 とそこで、バサバサっと音がした。
 エリカがはたとそちらを向く。
 積み上げた本の一部が崩れ、付近で寝ていた貴人の頭を直撃していた。
「いってえ……」
 と呻く相手にアルフィオーネが詫びを入れた。
「あら、ごめんなさい! 近くにいるのに気づかなくて――」
 この後彼女らは成り行きで、貴人から、ラピャタミャクが聞いたのと同じ話を聞くことになった。そして、ラピャタミャクとおおむね同じ経過を辿り、自分達もまたグラヌーゼへ赴くことになった。

 なにがし山、施設から離れた山中に、タスクの鋭い声が響く。
「てぇい!」
 だん、と片足を踏み出す。虚空に設定した敵めがけ光輝の剣を突き出し突進する。
 剣自身の重みに振り回されそうになる体を踏ん張りで引きとめ、後方に跳ぶ。そしてまた踏み出す。間髪入れずマドーガを発動する。魔力の球が刃の軌道上で弾けた。魔力の塊が弾け、光の拡散と鈍い音を立てる。
 ……そこでタスクは尻餅をついた。体力の限界だったのだ。
「はー……」
 大きな溜息をつき、額に滲んでくる汗を拭う。脳裏に浮かぶのは、昼にエリカと交わした言葉だ。
『すいません、僕も同行出来ればよかったのですが……施設の手入れがあって、どうにも時間が取れなくて』
『いいのよそんなの、気にしないで。大丈夫、ガブさんたちは絶対城に入らせないから』
『お願いします。その、気をつけてください』
『分かっているわ』
 心配だ、とても。本当に自分も行ければよかったのだけど――そんなことをぐるぐる考え続ける。
 そのせいで彼は、今しがたの衝撃で落ちてきた太枝を、避けることが出来なかった。

●翌日。小春日和の大工仕事
 保護施設の庭先。
 【朱璃・拝】は【ミラ様】が見守る中、鋸引きをしていた。
「なかなかいい日和ですわね。こんな日は一気に色々やりたくなりますわね♪」
 話しかけているのは板材の押さえをしている【ベイキ・ミューズフェス】(大工仕事に自信がない彼女は、今回補助作業に徹している)だ。
「ええ。本当に。絵にかいたような小春日和ですね」
 トーマスとタスクがその近くで、角材を組み上げ釘を打っている。
「タスクさん、これは何?」
「犬小屋を乗せる足台だよ。湿気対策をしないと建築の寿命が短くなってしまうからね。後、通気性も大事だ。空気の通りが悪い空間は、カビや害虫の温床になったりするんだよ、それから――」
 ちなみにこの犬小屋建設費用の一切は、タスクによる施設予算捻出と、朱璃による【アマル・カネグラ】財布資金かっぱぎによって成り立っている。
 ところで当の伝令犬はといえば――いない。多分黒犬から呼ばれたのだろう、数日前から姿を消しているのだ。
 だから【トマシーナ・マン】は寂しそうにしている。
(気分転換が必要ですね……)
 ベイキは小屋作りが八割方進んだところで作業を抜け、トマシーナに話しかけた。
「トマシーナさん、一緒にお散歩に行きませんか?」
 トマシーナは、わあ、と両手を挙げて跳びはねる。
「いく!」

●翌日。小春日和の街道筋
 人家はおろか人気もない、グラヌーゼに通じる街道。目に入るのは枯れ草と枯木立に覆われた丘陵だけ。
 一台の馬車が道の傍らに停まっている。
 狼ズ、セム、ラインフラウ、ラピャタミャク、アルフィオーネ、エリカが、その近くで話をしている。

「ガブさんたちはここで待っていて。赤猫に出会うと、とても危険なのよ。セムさんがどう言ったか知らないけど、わたしは、あれがあなたたちの手に負えるものだとは思えないわ」
 エリカがそう言った途端、セムが反論した。
「エリカさんは彼らのことを少々見くびり過ぎではないですかね? 私は十分対処出来ると思いますよ。彼らにはそれだけの潜在力がある」
 この二つの言葉のうちどちらが狼ズに響いたかと言えば――残念ながら後者だ。
「まあ、俺たち潜在力の塊だからな」
「大丈夫だ」
「やばくなったらひいていいんだし」
 エリカは己に落ち着くよう言い聞かせ、セムに相対する。
 彼女はセムの気性に危険なものを感じていた。果てなき井戸の探索といい、毒実験といい、目的のために手段を選ばなさ過ぎる。
「失礼ですが、セムさんこそ赤猫のことを見くびり過ぎていると思います。いくら城の財宝が貴重なものであると言っても、うかつに近づくのはあまりに軽はずみです。城の宝に目が眩んでいるわけではないでしょう?」
 アルフィオーネも一抹の懸念を覚え、口を挟む。
「セム、わたしは赤猫達に対してはあなたと一緒の立場だけど、今この段階で不用意に刺激を与えることには反対よ。そもそも学園生徒の依頼は学園を通さないといけない。そこを無視しているように見えるのは、とても問題が」
 直後アルコール臭が、むわっと鼻に押し寄せてきた。
「わーお。人間」
 声がしたほうを向く。
 少女の姿をした赤猫がいた。例によってべろべろに酔っている。
 馬車の馬が怯えいななき、乗客を置き去りにして走り出す。
 赤猫は瞬時に巨大な猫の姿へと変じた。
 飛び跳ねるように馬車を追い、前足で叩く。動くオモチャを追いかける猫そのままの動きで。

●続 小春日和の大工仕事
 完成した犬小屋はきれいにペンキを塗られ、ぴかぴかの姿。後は乾くのを待つばかりだ。
「建物の管理っていうのは難しいことじゃないよ。要は、点検作業だからね。戸の締りが悪いとか、床板に釘が出てるとか、そういった小さなことから――」
 トーマスは、グラヌーゼ麦のサンドイッチを咀嚼しながら、タスクの講義を聞いている。
 そこへトマシーナとベイキが戻ってきた。【ドリャエモン】と一緒に――何故か貴人もいる。
 朱璃は両手を広げ、トマシーナを出迎えた。
「お帰りなさい、トマシーナ様。どこまで行ってきましたか?」
「あのね、さんぽのとちゅうでおじいちゃんとあってね、たかとにいたんにもあってね、いっしょにいちばにいったの。おかいものしたの」
 ベイキは荷物を降ろし、幼子の説明に補足を加える。
「蜂蜜と花梨を買って来たんです。カサンドラさんの喉の薬を作ろうと思って。さ。トマシーナさん、一緒に薬草摘みしましょう。ジンジャー掘りも」
「はあい」
 トマシーナはベイキと一緒に庭へ向かう。スコップを片手に。
「どれ、ついでだからわしも手伝おう」
 と言ってドリャエモンもまた、庭へ向かう。大きなシャベルを肩にかけて。
「ほれ、貴人、行くぞ」
「あ、やっぱりオレ手伝う要員なんだ……」

●続 小春日和の街道筋
 馬車が馬ごと転覆し地面に叩きつけられた。
 ものが動かなくなったので興味をなくしたらしい。赤猫は少女の姿に戻り、千鳥足で戻ってくる。
 セムとラインフラウは静観の構え。
 エリカとアルフィオーネは身構える。
 狼ズがぎょっとして後ずさりする。
 ラピャタミャクは赤猫に声をかけた。遊びから気をそらせようと。
「久しぶりじゃの赤猫。ところでここだけの話なのじゃが――」
 から始めて彼女は、黒犬が赤猫に言うなと言っていたこと――呪いのこと、カサンドラのこと――を全部話して聞かせた。
 途端に赤猫が吹き出した。
「マジで? あいつそんなことしてんの?」
 腹を抱えて地面に転がり足をバタバタさせて大爆笑。
 それからクルッと起き上がり、グラヌーゼ方面へ視線を向ける。
「なーんだ、ポンコツこっちに来てるじゃない。わざわざ見に行ってやること、なかった」
 言うなりまた巨大な猫の姿になって、地をひと蹴り。疾風のようにどこかへ消えてしまう。
 ややもしてセムが言う。
「――今日のところは引き上げますか。馬車もこの有様ですし」

●小春日和の夜
 夜。照明が灯ったアトリエ。
 そこでパーシアは一枚のデッサン画を見ていた。
 花園に立つ女性。まとったドレスが散る花びらと一緒になって、風になびいている。
「これ、私?」
「はい。せっかくモデルをしてくださったんですから、ついでにあなた自身の絵も描いてみようかなと思いまして」
「是非完成させてよね。未完成の遺作なんて……嫌よ?」
 その言葉にカサンドラは、頼りない微笑を浮かべた。
「……善処します」
 アトリエの扉がノックされた。アルフィオーネが入ってくる。
「二人とも、そろそろ下に降りてきて。プディング作っているから」
「あ、はーい」
 パーシアが先に部屋を出た。アルフィオーネは残ったカサンドラに近づき、小声で尋ねる。
「ねえ、黒犬に会ったとき、すでに呪いを解く『鍵』の情報を得ていたの? サーブル城の中を見れば、それを見つけられると言うことを、前以て知っていたの?」
「……はっきりしません。でも、それが城にあるんじゃないかとは疑ってはいたはずです。黒犬の話を聞いてから……」

 調理場。
 花梨と薬草、ジンジャーを蜂蜜漬けにした瓶が棚に並んでいる。
 その前で朱璃、トマシーナ、ベイキは年の離れた姉妹のように寄り添い、仲良く生地を混ぜる。願いを込めて。それがクリスマスの習わしだから。
「私の実家ではこういう習慣はなくて、友人の貴族の子に教えてもらいましたの。彼女はもうお嫁に行ってしまいましたが。トマシーナ様も将来は素敵なお嫁さんになりたいですか?」
「うーん、それよりおひめさまになりたい」
「あら、どうして?」
「だっておうじさまをつかまえるのは、いつもおひめさまだもの。しゅりねえたんはなんになりたい?」
「世界最強の拳士ですわね」
「べいきねえたんはなんになりたい?」
「さあ、何になりましょうかねえ」
 トーマスは貴人と一緒に、オーブンから焼けたばかりのジンジャークッキーを取り出しているところ。ラピャタミャクはこっそりそれをつまみ食いし、あちっ、なんて呟いている。
 タスクは、といえば、施設の玄関で手を擦りつつ、誰かを待っている風情。
 やがて施設の門にエリアルの少女が姿を現す。金色の髪に白い肌。
 彼はほっとした色を瞳に浮かべ手を振り、駆け寄った。本当はもっと気のきいたことがしたかったのだけど、今のところはそれが精一杯だった。
「エリカ部長――お帰りなさい」
「ありがとう、タスクさん――あら、どうしたの、その頭のコブ」
「あ、これはええと……ちょっと必殺技訓練に熱が入っちゃいまして。とにかくその、ご無事で何よりです」

 学園長室。
 エリカとの対談を終えた【メメ・メメル】が唸っている。
「うーむ……『生徒の安全のため、依頼主の素性や評判は可能な範囲調べておくべき』ってのは別にいいけどな……セムたん明確に危険人物てわけじゃねーんだよな。そらまあ、評判にはアレなとこもあるが、『違法行為』は働いてねーんだよな……」
 ぼやいてから彼女は、先日アルフィオーネから提出された報告書に目を通す。
「呪いの発動源が本人たち自身……さて、どーだろーなあー……」



課題評価
課題経験:50
課題報酬:1000
小春日和の幕間劇
執筆:K GM


《小春日和の幕間劇》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 1) 2020-12-01 20:55:49
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2020-12-03 20:07:52
さて、何をしたものか・・・狼ズに絡むなら彼等の様子がおかしいので後をつける、ような感じになるのでしょうか。まだ狼ズに絡むか他の事、保護施設関係で何かするか、など思案中ですわね。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 3) 2020-12-04 21:31:30
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。

三兄弟が心配なので様子を見に行こうと思っているわ。
セムさんについては前回の毒実験のこともあるし、
手段を選ばなさすぎるみたいで危うさを感じるわね。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 4) 2020-12-05 07:07:20
教祖・聖職専攻のアルフィオーネ・ブランエトワルです。どうぞ、よしなに

わたしはカサンドラさんやセムさんに話をきいたり、図書館で調べものをしたりなどして、呪いについて考えをまとめたいとおもっているわ

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 5) 2020-12-05 19:03:52
>行動
私は保護施設の方で日常的な事をしようと思いますわ。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 6) 2020-12-05 21:54:18
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。
今回は色々できそうですね。個人的には保護施設に居候中のワンコにワンコハウスを作ったりしたいのですが、大工仕事なんてやったことないんで、自分の指を盛大に金づちでぶっ叩く未来しか見えないのが。

材料は手配して、トーマスさんに手伝って貰うかな。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 7) 2020-12-05 21:58:20
そうそう。私、設計とかもからっきしなんで、小屋の出来上がりが歪んだり大変なことになりそうな気がするので、誰か設計とか手伝って貰えるとありがたいところです。
いよいよ困ったら、アマルさんとかドリャエモン先生に頼るか。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 8) 2020-12-06 01:43:48
遅刻帰国~!
勇者・英雄コースのタスク・ジムです!よろしくお願いいたします!

設計ならお任せください!役人勇者としては必須科目のひとつですので(笑)
フリーアタックなら、この際保護施設に色々手を入れつつ、
トーマスくんを施設維持管理人として育てる絶好の機会ですね!
朱璃さん、ベイキさん、よろしくお願いいたします!

セムさんの危うい作戦についても気になりますが…う~む。

《人間万事塞翁が馬》 ラピャタミャク・タラタタララタ (No 9) 2020-12-06 03:45:17
らぴゃたみゃくたらたたららた!
魔王・覇王コースのラピャタミャク・タラタタララタじゃ。

う~ん、色々悩ましいが…
セムと話してこようかと思うのじゃ。
何はともあれ、赤猫の情報を聞いておきたいからのぉ。

危うい作戦とやらは、呪いを解きたいあちきとは対立になるから、詳しくは聞かないつもり。
ただ、少し釘を刺しておきたいところじゃな。
狼ズを鉄砲玉前提に使おうとするのは、ちと看過出来んのじゃ。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 10) 2020-12-06 07:12:59
王様・貴族コースのパーシア。よろしくお願いします。
私はカサンドラさんの創作のお手伝いとか、カサンドラさんがトーマスさんに絵の熱血指導してるときにやり過ぎないように、軽くフォローしたりしとこうかしら。

黒犬の絵も見せて欲しいし。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 11) 2020-12-06 17:06:31
>ベイキ様
実は私も犬小屋を作る事を考えておりまして、一応プランに書いたのですがトーマス様と3人いれば製作も大丈夫そうですわね。製作費はアマル様からかっぱいでくるつもりですわ

あとは施設でクリスマスパーティができればと思って、それ用のクリスマスプディングをトマシーナ様達と作ろうかと思っておりました。本当はもう少し早めに作り始めた方がよかったのですけれど。熟成した方が美味しくなりますので

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 12) 2020-12-06 17:08:23
あ、すみません、タスク様の書き込みを見落としておりましたわ。それでは4人で協力すればかなりの物が出来そうですわね。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 13) 2020-12-06 18:39:19
いよいよ今日いっぱいですので、下書きをしてみました!

犬小屋は4人で頑張りましょう!お昼にはサンドイッチも用意しましたよ!
そして午後は流れるようにトーマス君に「楽しい施設管理」の授業を(笑)

そして、エリカ部長さん、当日は同行出来ず(多分行動2つは採用されない)
申し訳ないですが、
【事前調査】でセムさんの話を聞き、事前に部長さんに情報共有しようと思います。
狼兄弟さんたちをよろしくお願いします。

そして、余った文字数で、施設のある山中で新たな種族特性を特訓してみることにしました!
「魔法剣マドーガっ!」とか熱いですよね!(わくわく)

運動した後は甘い物がおいしいですよね!
朱璃さんのプディング楽しみですっ!
・・・て、クリスマスのでしたか。気が早かったですね(><)

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 14) 2020-12-06 21:23:21
あ、ギリギリですがプディングを作る際、願い事を唱えながら材料をかき回すという習慣がありまして。その場にいる皆様にかきまぜてもらうと書きましたがもし字数に余裕があれば一言願い事を書いたりしていただけると幸いかもですわ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 15) 2020-12-06 22:10:22
朱璃さん、素敵な企画をありがとうございます!
月並みな願いですが、書いてみましたよ!

皆様、今回もご一緒いただき、ありがとうございます!
皆様のフリーアタックが、どんなふうになるか、楽しみですね!

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 16) 2020-12-06 23:07:07
タスクさん、朱璃さんお手伝いや予算確保ありがとうございます。
と言っても、私は器用ではないので、本当にお手伝いレベルになりそうですが。

とりあえず、お手伝いしながら、ワンコが退屈したりしそうならトマシーナさんと一緒にお散歩に行ったり、合間に薬草を収穫したり、枯れた薬草の種を取ったり来年の準備を。

カサンドラさんは喉が弱そうですし、市場に花梨でもあれば買ってきて、薬草と一緒に蜂蜜に漬けておいてもよさそうですね。