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【体験】スイートスパイシーハンティング!


ストーリー Story

○甘くてピリッとした回想
 ――お砂糖にスパイス。それから素敵なもの。
 そういったもので女の子は出来ているらしい。
 ならば、素敵なものを別のもの……たとえば、バターと小麦粉に変えて。
 それにほんの少しの魔法を添えてみたらもっと素敵なものが出来上がるんじゃない?
 そう思って丁寧に生地を作って、じっくり焼き上げて、ひとつひとつに想いという魔法をこめて作ってみた。
 クリスマスだもの、沢山の人が幸せになればいいな。

○そう思っていた時期が私にもありました
「いやぁ、オレサマはちょっと手助けのつもりでやってたんだぜ? いやほんと」
 肌寒さを感じる朝と昼の合間のひととき。関係者以外立入禁止の札のかかった空き教室に、その人物――【メメ・メメル】は悪びれた様子も見せずあなたたちの前にやってきた。
 傍らには机に突っ伏したまま泣きはらした表情の女子生徒がみえる。
 なにやらうわ言のように『ひどいです、あんまりです』と繰り返す彼女の言動と学園長の様子からここに集まった何人かは何かを察したようだった。
「うーん、ちょっと今しゃべれないみたいだから、オレサマが代わりに説明させてもらうゾ☆」
 星が飛んでいきそうなほど見事なウインクをし、メメルが代わりに説明する。
「この子が作ったジンジャーブレッドマンが意思を持って学園中に逃げて行ってしまったんだ」
 ジンジャーブレッドとはショウガの入った焼き菓子のことで、特に人型の形をしたものをジンジャーブレッドマンと呼称する。
 焼き菓子であるため、ひとつひとつ……もとい一体一体の背丈はそこまで大きくない。
 それが学園中に逃げて行ってしまったらしい。
 それだけならただ捕まえるだけでいいかもしれないが、意思を持っている以上、何かを企んでいるジンジャーブレッドマンもいるかもしれない。
 それがただの悪戯程度ならいいのだが!、時間がたてば経つほど意思は強くなり、取り返しがつかなくなるらしい。
「というわけでチミたちにはジンジャーブレッドマンを捕まえてきてほしい!」
 言いながらあなたたちの目の前に人数分の小袋が置かれる。
 中には白い粉が入っている。香ると少し甘い匂いがした。
「それはパウダーシュガーです。それを振りかけるとジンジャーブレッドマンは普通のジンジャーブレッドマンにもどる……そうです」
 机に突っ伏していた女子生徒がもごもごと説明をする。
 イマイチふわふわとした様子であるのは、意思を持ち始めた原因が彼女にはないから、だろう。
 その原因たる人物をちらりと見ると目をあからさまにそらしていた。
「私が作ったジンジャーブレッドマンは合計で20枚です。その、意思を持った時の『特典』で踏みつぶされたりはしないようになっているので……きっちり20枚、見つかると思います」
 お手数ですがよろしくお願いします。
 女子生徒は丁寧に頭を下げた後、再び机に突っ伏した。

 現在時刻はお昼少し前。
 日が地平線に消えてから学園の時計台が鳴るまでの間に20枚のジンジャーブレッドマンを捕獲しろ!


エピソード情報 Infomation
タイプ マルチ 相談期間 8日 出発日 2020-12-22

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2021-01-18

登場人物 5/16 Characters
《新入生》クルト・ウィスタニア
 ヒューマン Lv9 / 勇者・英雄 Rank 1
「まったく……彼女はどこに行ったんだ!」 「俺は魔法はさっぱりだけど……入ったからには、頑張ってみるさ」 「もう、だれも傷つけたくない。傷つけさせない。そのための力が欲しい」 [略歴]  以前はとある国で、騎士として活躍していた。  しかし、とある出来事をきっかけに国を離れ、パートナーと共に各地を旅していた。  その道中、事件に巻き込まれパートナーとはぐれてしまう。  人の集まる魔法学園でなら、パートナーの行方の手がかりがつかめるかもしれないと考え、入学を決めた。 [性格]  元騎士らしく、任務に忠実で真面目。常識人っぷりが仇となり、若干苦労人気質。 [容姿] ・髪色…黒。 ・瞳……淡い紫。 ・体格…細マッチョ。ちゃんと鍛えてる。 ・服装…学園の制服を着ている。が、若干イタイんじゃないかと心配もしている(年齢的に)。 [口調補足] ・一人称…俺。改まった場では「私」も使う。 ・二人称…君、名前呼び捨て。目上の人には「さん」「様」をつける。 ・語尾…~だ。~だろう。目上の人には敬語。 [戦闘] ・剣を扱う。 ・「もっと守る力が欲しい」。  そう思い、最近は魔法と剣を融合させた剣技を習得したいと考えている。
《ビキニマン》ソフィーア・ル・ソレイユ
 ドラゴニア Lv12 / 武神・無双 Rank 1
生き別れたパートナーを探して、学園にやってきた、ドラゴニアの少女。 金髪ゆるふわカールのロングヘアー。前髪をひまわりのヘアピンで左にまとめている。褐色肌の筋肉質で、無駄な肉は一切ないのにバストとヒップはかなり豊か。大きな翼と長い尾。火柱のような角。後頭部から下顎、鎖骨辺りまで、サンライトイエローの鱗が覆っている。 いかにも女の子らしい容姿だが、性質は男性的で、なぜ、胸に目が入らないのか、よく、男性に間違えられる。 実直で騎士道精神にあふれている。だが、敵にたいしてはわりと容赦ない。闘争本能が強く、戦いを、とくに強者との対峙を好む。そのため、いつでも戦えるよう、入浴中以外は、ビキニアーマーを着込んでいる 武器収集癖があり、手入れを決して怠らない かなりの大食漢。なんでもおいしそうに食べるが、中でも『地球』で食べた、ラーメン、炒飯、餃子が大好き。彼女曰く、『”食”の宇宙三大至宝』であるとか。 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを貫くために、日々鍛錬を欠かすことはない 諸般の事情で偽名 ある人物に、ずっと片思いをしている。勇気がなくて、告白はしていないが、それとなくアピールはしている。 酒乱なので、酒を飲ませてはいけない
《新入生》リーゼ・ガルシュタイン
 カルマ Lv12 / 武神・無双 Rank 1
ん~~とね。リーゼはかみさまになるの。だって、パパがいってたんだよ。『おまえは神になるのだ。神となって魔王を打ち倒し、世界を救うのだ』って。 でも、まおうってやつ、もういないんだよね・・・リーゼずっとねてたから・・・みんな、なにもいわないけど、パパも、もういないってわかってる。リーゼにだってそれぐらいわかるよ。 _________________________________________________________ とある廃墟で、培養液に満たされた、巨大な水槽の中で眠り続けていた。建物の腐食が激しく、放置すれば下敷きになってしまうため、学園所属の研究員に保護された。 その廃墟は、魔王事変発生時、忽然と姿を消した、高名な魔導師、ゲオルグ・ガルシュタインの研究所であり、長らく、その所在は不明であった。 資料となりえるものはすべて朽ちてしまっているが、彼が創造したものと推測される。 ”父”の英才教育の賜物か、幼い見た目にかかわらず、知能は高い。だが、経験がなく、精神年齢が低いため、それを十分に生かせないようだ。天真爛漫で、ちょっとわがままな、甘えん坊。駄々をこねだすと大変なことになるが、甘いものをあげれば、すぐ大人しくなる。 『神となって、世界を救う』という意思は強固であり、どんな敵にも物怖じすることはない。 武神コースを選んだのは、武神が何かわからずに聞いたら、武術の神様と返答を得たため
《幸便の祈祷師》アルフィオーネ・ブランエトワル
 ドラゴニア Lv23 / 教祖・聖職 Rank 1
異世界からやってきたという、ドラゴニアの少女。 「この世界に存在しうる雛形の中で、本来のわたしに近いもの が選択された・・・ってとこかしらね」 その容姿は幼子そのものだが、どこかしら、大人びた雰囲気を纏っている。  髪は青緑。前髪は山形に切り揃え、両サイドに三つ編み。後ろ髪は大きなバレッタで結い上げ、垂らした髪を二つ分け。リボンで結んでいる。  二重のたれ目で、左目の下に泣きぼくろがある。  古竜族の特徴として、半月型の鶏冠状の角。小振りな、翼と尻尾。後頭部から耳裏、鎖骨の辺りまで、竜の皮膚が覆っている。  争いごとを好まない、優しい性格。しかし、幼少より戦闘教育を受けており、戦うことに躊躇することはない。  普段はたおやかだが、戦闘では苛烈であり、特に”悪”と認めた相手には明確な殺意を持って当たる。 「死んであの世で懺悔なさい!」(認めないとは言っていない) 「悪党に神の慈悲など無用よ?」(ないとは言っていない)  感情の起伏が希薄で、長命の種族であった故に、他者との深い関りは避ける傾向にある。加えて、怜悧であるため、冷たい人間と思われがちだが、その実、世話焼きな、所謂、オカン気質。  お饅頭が大のお気に入り  諸般の事情で偽名 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを胸に、学園での日々を過ごしている
《イマジネイター》ナノハ・T・アルエクス
 エリアル Lv23 / 賢者・導師 Rank 1
フェアリータイプのエリアル。 その中でも非常に小柄、本人は可愛いから気に入っている。 明るく元気で優しい性格。天真爛漫で裏表がない。 精神年齢的には外見年齢に近い。 気取らず自然体で誰とでも仲良く接する。 一方で、正義感が強くて勇猛果敢なヒーロー気質。 考えるよりも動いて撃ってブン殴る方が得意。 どんな魔物が相手でもどんな困難があろうと凛として挑む。 戦闘スタイルは、高い機動性を生かして立ち回り、弓や魔法で敵を撃ち抜き、時には近接して攻め立てる。 あまり魔法使いらしくない。自分でもそう思っている。 正直、武神・無双コースに行くかで迷った程。 筋トレやパルクールなどのトレーニングを日課にしている。 実は幼い頃は運動音痴で必要に駆られて始めたことだったが、 いつの間にか半分趣味のような形になっていったらしい。 大食漢でガッツリ食べる。フードファイター並みに食べる。 小さな体のどこに消えていくのかは摩訶不思議。 地元ではブラックホールの異名(と食べ放題出禁)を貰うほど。 肉も野菜も好きだが、やっぱり炭水化物が好き。菓子も好き。 目一杯動いた分は目一杯食べて、目一杯食べた分は目一杯動く。 趣味は魔道具弄りで、ギミック満載の機械的な物が好き。 最近繋がった異世界の技術やデザインには興味津々で、 ヒーローチックなものや未来的でSFチックな物が気に入り、 アニメやロボットいうものにも心魅かれている。 (ついでにメカフェチという性癖も拗らせた模様)

解説 Explan

 このエピソードは体験入学対応エピソードです。

【目的】
 全員で協力してジンジャーブレッドマンをすべて捕まえる。

【場所】
 ジンジャーブレッドマンが隠れているだろうと目測される場所です。

 ○調理実習室
 ○空き教室(説明が行われた部屋)
 ○女子生徒の学生寮
 ※本来男性キャラクターが女子寮に立ち入ることはできませんが、今回は女子生徒の部屋にのみ立ち入り可能とします。
 ※やましいことをしようものなら後でひどい目に合うかもしれません。
 ○学生食堂
 ○購買
 ※このほかの部屋にももしかすると隠れているかもしれません。

【方法】
 ジンジャーブレッドマンにパウダーシュガー(粉砂糖)をかけると普通の状態に戻ります。
 また、その中には何か目的をもって行動しているものも居るかもしれません。
 その場合は目的を叶えてあげる必要もあります。

【協力者】
 当方の公認(公式)NPCに協力をお願いすることができます。
 咲良・佐久良
 https://frontierf.com/5th/mypage/mypage_top.cgi?act=room&pc_seq=821&view=other

 リーエル・アムフィリム
 https://frontierf.com/5th/mypage/mypage_top.cgi?act=room&pc_seq=4&view=other


作者コメント Comment
 ジンジャーブレッドってクッキーのことたと思っていたらケーキみたいなものも差すらしいですね。
 はじめましての方もいつもお世話になっている方も、樹志岐はじめてのマルチエピソードをよろしくお願い致します!


個人成績表 Report
クルト・ウィスタニア 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
相変わらず不思議なことが起きるものだな…。

とりあえず虫取り網を用意したから、逃げられそうならそれで捕まえるか。
クッキーは小さそうだから【視覚強化】で見失わないようにする。

もし女性陣が少ないようなら先輩方には女子寮の探索を優先してお願いしたい。
(さすがに緊急時でもないし、女子寮に入るわけにはな…)

ソフィーア・ル・ソレイユ 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
同行者:アルフィオーネ・ブランエトワル、リーゼ・ガルシュタイン

基本的に、アルフィオーネの行動に合わせる。魔法がかかっている内は、壊れないとのことなので、捕まえるために、ある程度、強引に行く

まず、話を聞き(しゃべられるのかどうかはわからないが)アルフィオーネと相談して処遇を決める

「レーヌ、どうする?」

リーゼ・ガルシュタイン 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
おかしがうごきだすなんて、こうちょうせんせいのまほうはすごいなぁ

ほかのおかしも、いっぱい、うごきだしたらたのしそう

あ、でも、もとにもどさなきゃいけないんだった。わすれてた。

かだいはちゃんとやらないと、ねーねにしかられちゃう

このおさとうかけてあげればいいんだよね?うん、リーゼおぼえた。

リーゼがんばる!


アルフィオーネ・ブランエトワル 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
同行者:ソフィーア・ル・ソレイユ、リーゼ・ガルシュタイン

まず、作成者に、ジンジャーブレッドマンを誰かに渡したり、一緒に食べる予定ではなかったかなど、聴取し、ジンジャーブレッドマンが立ち寄りそうな場所を絞り込む【説得/信用/会話術/推測】

三人で、それらの場所に行き、見つけたら、逃げられないよう包囲する

ナノハ・T・アルエクス 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
僕は学食に行くよ。
ジンジャーブレッドマンと言えば…ヘクセンハウスかな?

ヘクセンハウスを作ってジンジャーブレッドマンを待ち伏せ。
一般技能の設計を駆使して、クッキーなどを組み上げていくよ。
せっかくだから、大きくて綺麗に仕上げたいよね。
ジンジャーブレッドマンがやって来たら、仕上げの粉砂糖で元に戻すよ。



リザルト Result

●いらっしゃーせー!(しろめ)
 ――全く。相変わらずここでは不思議なことが起きるものだ。
 食堂へ向かう道すがら、片手に新品の虫取り網を携え聞こえないように口の中でもごもごさせながら【クルト・ウィスタニア】は神経を研ぎ澄ませていた。
 この校舎のどこかから漂う甘くて刺激的な香り。彼らの通った足跡を辿るように、その背中を追う。
「こっちか……?」
 やがて感じた仄かな存在証明を頼りに彼がたどり着いたのは――購買だった。
 学生が勉学に励むための備品から、季節物の日用品やお菓子まで扱われているそこは今日も沢山の人で賑わっている。
 その中でやたらと大きく存在を主張しているポップに目が止まった。
『おしゃべり☆ジンジャーブレッドマン 限定5体!』
 まさかの購買の商品にされていた。
 しかも商品名の左上にかなり小さな字で『メメル学園長謹製』と書かれている。
 ……改めて思うがこれ確信犯なのでは? 真面目な彼の視線がどこか遠くなる。
 とにかく、購買が開いてまだ間もないからか買われてはいないようだった。
 仕入れ値0ゴールドのこちらの商品は回収させてもらおう。
「すみません」
「あ、はい?」
 店番をしている学生に一言声をかける。
 事情を説明すると納得した上で快く応じてくれるようだった。
 その人の目もどこか遠い目をしていた気がしたけれど。
 ……とにかく、容易に事が運びそうで安心した。ジンジャーブレッドマンを回収すべく手を伸ばす。だが。
 ひょい。
 避けられた。もちろん意思をもっているのだから動き回ることは想定の範囲内ではあったが、まさか避けられるとは思わなかったため、いくらか驚いた表情をした。
 いやいや、まさか。偶然だろう。
 再び手を伸ばすがやはり軽く逃げられてしまう。
「このっ、なぜ逃げる!?」
『え? 嫌だからに決まってるし』
 子供のように高いが、冬の空気のように冷たい言葉だった。
 周囲を見渡してもそのような声を持ち合わせていそうな人影はいない。つまりこれは意思を持った彼らの声なのだろう。
「嫌? 何が嫌なんだ?」
 人と話す時は視線を合わせて。例え元が物言わぬ有機物だったとしても。
『もうちょいこの場所をエンジョイしたいし』
『パーティとか開きたいよね』
『寒さを凌げる建物が欲しいにゃー』
 これがここにいる彼らの願いのようだ。ふむ、と顎に手を当てあれこれ思案する。
 彼らの住めそうな建物には心当たりがある。確か彼女が作ろうとしていた筈だ。
「君たちの願いを叶えられそうだ」
 だから少し、俺についてきてくれないか?
 クルトが手を差し伸べると、彼らは不思議そうな表情(表情はぱっと見変わった様子はないが)をして顔を見合わせたあと、その手に順番によじ登っていった。
 ――ジンジャーブレッドマンは残り15体。

●がくしょくisばとるふぃーるど
 学食はいつだって戦場だ。
 お腹を空かせた学生は食堂が開いている限りいつだってやってくるし、もちろん学生以外もやってくる。
(気配はする。けど流石にそう簡単に出てはこないよね)
 そんな戦場の最前線。邪魔にならないところで作業をするという条件で【ナノハ・T・アルエクス】はその一角を借りていた。
 目の前には依頼人たる女子生徒から聞いたレシピをもとに焼き上げたクッキーが周囲に幸せな香りを漂わせている。
 ナノハは彼らのための夜会会場――ヘクセンハウスを作り上げるつもりだった。
 まずは溶かしたチョコレート。細い線でレンガ作りの壁を描いていく。
 窓は白砂糖と、薄い板状にした飴で。ある程度外観が出来上がったら、土台に粉砂糖と水を溶いた接着剤でクッキーを組み立てていく。
 まるで自分だけの城を作っているようだ。自分の思い通りの作品ができていくとなんだかワクワクする。
『すごーい』
 あとは家の屋根を取り付けて庭に焼き菓子で作った緑を植えるだけ、と言った段階で聞き馴染みのない声がナノハの耳元に届いた。
 丸い頭に立派なカイゼル髭を蓄えた小さいヒト。ジンジャーブレッドマンが建築現場を視察に来ていた。
「気に入ってくれた?」
『そうだね、とても素敵なものをみさせてもらったよ』
 ジンジャーブレッドマンを誘い出すための作戦は成功したようだ。ならば早くこの粉砂糖をふりかけて、任務完了といこうか。
『でも』
 粉を持つ手が止まる。カイゼル髭マン(ナノハが勝手に命名した)とは別のジンジャーブレッドマンが少し悲しそうな声色で話をしていた。
『どうせならみんなでこの家に集まりたいな』
 聖夜に人間がするような団欒のひと時を。できれば、同じ時に生まれた20体の仲間みんなと。
「うーん……わかったよ」
 全て終わればヘクセンハウスは残らず胃袋に収めてしまうつもりではあったが、それが少し伸びただけのこと。
「そのかわり、君たちも手伝ってね」
『はーい!』
 元気よく手を上げた彼らが、アイシングで作られたツリーをよいしょよいしょと運ぶ。
 思わぬ助っ人の登場に建設作業は予定より早く終りそうだ。
 さらには彼らから寄せられたアイディアを元にヘクセンハウスが増築されていく。
「あはは……、これだとヘクセンハウスじゃなくてヘクセンキャッスルだね」
 焼き菓子の城。それはそれで中々魅力的かもしれない。
 あぁ、そうこうしているうちに遠くからジンジャーブレッドマンを連れた黒髪の彼がやってくるのが見える。
 ひとまず合流して……、お茶でも飲んで、まったり待つとしようか。
 ――ジンジャーブレッドマンは残り13体。

●想いはきっと伝わる
 女三人寄れば姦しい。とはどこの言葉だっただろうか。
 少なくとも彼女たち3人が揃っても姦しいとは言えないだろう。
 ……さらに人数が集まればまた違ったかもしれないが。
 さて、そんなわけで【アルフィオーネ・ブランエトワル】は女子生徒に話を聞いている。
「私が、願ったこと?」
「そう。あなたの想いを汲み取って、ジンジャーブレッドマンが行動していると思ったの」
 きっと心優しい女子生徒に似たのだろう。秘めたる想いを察して、その願いを叶えるために動いている、と思った。
 うぅん、と首を傾げて思い返してみる。が、思い当たる節がないと、頭を振った。
「なぁ、もういいだろう。はやく行こう」
 二人の近くに腰を下ろした【ソフィーア・ル・ソレイユ】が退屈だといった風に足をぶらぶらとさせながら急かす。
 この事情聴取の間に視界の端にチラチラと映り込んだ(ように見えた)ジンジャーブレッドマンの行方が気になって仕方ない。
 事情なんて細かいことを気にしないで、片っぱしから捕まえればいいだろうに。まったく、この昔馴染みはどうにも……、ややめんどくさい。
「リーゼはおはなしきくのもすきだよ?」
 一方、ヒトより大きな体を丸めるようにしてしゃがみこんでいるのは【リーゼ・ガルシュタイン】。彼女が、『ねー』と肩に止まる鳥に語りかければ鳥は鈴のようにないた。
 ……ところで。
「リーゼ、あなたの肩に見知らぬお客さんが乗っているみたいだけど」
 え? と驚いた表情を浮かべ、リーゼはその肩をみる。
 どうして今まで気づかなかったのだろう。彼女にとってはつまみ上げられるくらい小さい存在だけれど、纏う香りは雄弁に存在を主張していたのに。
『あっ』
 それが――ジンジャーブレッドマンが、小さな声をあげる。いたずらがバレた子供のように慌てふためくそれを、狩人と化したソフィーアがいささか乱暴に取り押さえた。
「よぉっし! 捕獲数1ッ!」
 拳を突き上げて喜ぶソフィーア。手の中でジンジャーブレッドマンはじたばたと暴れていた。
『はーなーせーよー!』
 じたばた、じたばた。その様に、周囲からたくさんの声が上がる。
『たいへんだ、ジンジャーブレッドマンがつかまった!』
『大丈夫かジンジャーブレッドマン! おい、ジンジャーブレッドマン、助けにいくぞ!』
『もちろんだ。いくぞ!』
 それは教室の机の引き出しだったり、戸棚の隅っこだったり、天井だったり。……当たり前だが名前という、各々を識別する記号が与えられてないクッキーたちが互いを呼ぶ様は中々に混乱する。
「わぁ、なんかいっぱいでてきたよ」
「……話は後ね。でてきたのを捕まえましょう」
 アルフィオーネの声にリーゼははぁい、と元気よく手を上げて追いかけっこを始める。
 そこにいるだけで圧倒されるリーゼの存在は、彼らを怖がらせるには十分だった。
『うわぁー! 怖いよぅ、姉ちゃーん!』          
 うちのいくつかは作り手である女子生徒に泣きつく。しかし、そこは依頼人たる少女の手中。
「じゃあ、安全なところにしばらくいようね」
 安全なところという名の紙袋の中は、きっと人間で言うところの牢屋に似たところなのだろうが、そのことに彼らは気づけない。
 リーゼが追い込み、ソフィーアが捕獲し、アルフィオーネが怖いと主張する彼らを諭して保護する。
 やがてこの空間のなかに隠れていた彼らをあらかた捕らえることができた。
「こいつら、仲間意識強いんだな」
 お陰でたったひとつを捕まえれば、あとは芋づる式だった。
「おともだちがつかまったら、たすけたくなるきもちは、リーゼわかるよ?」
 まるで氷鬼と呼ばれる遊びのようだ。鬼に捕まった仲間を助けに行くことができる遊び。
「……それで、貴方たちはなにをしていたの?」
 紙袋の中を覗き込みながらアルフィオーネが彼らに問う。
 せっかく不思議な魔法をかけてもらったと言うのに、ここにとどまり続けた理由を知りたかった。
 それを尋ねれば、彼らは互いに顔を見合わせてから静かに語り始めた。
『ぼくらは姉ちゃんが心配だったの』
『ねーちゃんはいっつもお菓子作ってばかりで、一人だったからさー』
 うぐ、と女子生徒の息が漏れた。図星だったのだろうか。
『だからきっかけをあげたかったんだ』
 友達を作るきっかけ。物を作る以外の楽しみを得るきっかけ。困ったときは他人に頼るきっかけ。
 けれど、もう大丈夫だと彼らは笑った。
 きっと、自分たちを作り出した優しい人はこの場に集まった人達との縁を糧に、もっと世界を広げることができる筈。
『あのね、ぼくらの最後のお願い。ぼくらを元に戻すなら、皆まとめて一緒にがいいな』
 皆一緒に。ここにいるジンジャーブレッドマン以外がどこにいるかはわからないが、一先ず……。
「なら、とりあえず学食にいきましょう」
 そこには彼らのための家が用意されているはずだから。
 ――ジンジャーブレッドマンは残り■体。

●スイートスパイシーハンティング!
 斯くて、彼らは一同に集った。
 一同に集いたいと願ったモノ、皆でパーティを開きたいと思ったモノ、作り手の少女を想って留まったモノ。
 一同に介した彼らは、ナノハたちの作った屋敷を囲むように互いに手を取りキャロルの音に合わせてダンスを踊る。
 生まれてたった数時間。されど一生忘れることのない楽しいひととき。
 やがて太陽が地平線に完全に隠れようとする頃、彼らの魔法は白くて甘い粉砂糖によって解かれる。
 嗚呼、しっかり点呼を取るのを忘れていた。
 いち、に、さん。その場にいた合計18のジンジャーブレッドマンは物言わぬ存在に戻っていった。
 ……18?
『ふぁー、いい湯加減だなぁ』
 食堂に残されたひとつのカップ。そこに注がれたココアと、浮かべたマシュマロ。その上に……。
『一度でいいからお風呂に入ってみたかったんだなぁ』
『おいらはココアを飲んでみたかったんだ』
 それぞれ呑気にバスタイムを楽しむモノと、ココアを手ですくい飲むジンジャーブレッドマンがいた。
「……大丈夫、なのか?」
 堅焼きであるものの、クッキーである彼らがふやけてしまうのではないか。不安な声をクルトが上げる。
「いいんじゃないか? 踏んでも壊れないってことは水分で湿気ないってことだろ?」
「そういうこと、でいいのかなぁ」
 ソフィーアはややめんどくさそうに話すが、それにナノハは苦笑いを浮かべた。
「まぁ、今日一日あちこち歩き回ったのだから、一服くらい必要よ」
 カップを6つトレイに乗せてアルフィオーネが厨房の奥から現れた。
 リーゼがそれを香る。ただよう甘い甘い香りは、ジンジャーブレッドマンが入っているソレと同じ香りがした。
「もしかしてココア?」
「はい、よかったら皆さんでお茶会をしませんか?」
 後ろでお茶菓子を手にした女子生徒が貴方たちへそう誘いかけると、わぁい! とリーゼがその場で跳ねた。
 ただ2体。残ったジンジャーブレッドマンたちと時計台の鐘が鳴るまでのつかの間、ささやかなお茶会を貴方たちは楽しんだのだった。
 ところで。
「お茶菓子がジンジャーブレッドマンなのはどういうことなんだ……?」
 言いながら自分達がほぼ半日かけて集めたそれを口に運べば、白い化粧の施されたそれはピリリと香ってどこまでも甘かった。

 ――ジンジャーブレッドマンの回収、完了!



課題評価
課題経験:22
課題報酬:0
【体験】スイートスパイシーハンティング!
執筆:樹 志岐 GM


《【体験】スイートスパイシーハンティング!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!