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天っ誅ぅっ!!


ストーリー Story

「ピンポンパンポーン。皆様、本日の授業への出席、並びに、課題への参加お疲れ様です」
 間延びした声で、校内放送を使いそう告げるのは、【ダヴィヤ・スカーレット】。
 勝手に放送クラブを設立し、なぜかメメたんこと【メメ・メメル】学園長から気に入られ、その放送クラブでの活動を黙認されているダヴィヤは、
「最近、学園付近にて不審者の目撃情報が相次いでいます。また、不審火も相次いで確認されています。外出中や課題中に不審者や不審火を見かけた時は、速やかに学園に報告をお願いします」
 そう続けた。
 途端にざわつく生徒たち。
 そうして、生徒たちは身の安全を確保するために、ある者は外出を控え、またある者は不審者を探そうと学園付近のパトロールを開始。
 そうした生徒たちの動きを観察する、数人の集団がいることに、ほかの生徒たちは誰も気が付いていないのであった。



 そして、ダヴィヤの放送の翌日。
 学園エントランスの掲示物展示場に、一つの掲示物が張り出された。
 その内容は、不審者の情報を入手した。さらに、その不審者が確認された不審火の犯人である証拠も揃っている。
 僕らが動けば解決は簡単だけど、どうせならほかの生徒に経験を積ませたい。
 この『事件』を解決したい生徒は、明日、日の出と同時に放送室前に来るように――とのこと。
 その掲示物を確認し、日の出の時刻にいの一番に到着した生徒たちを待っていたのは、当然の如くダヴィヤであり。
「時間厳守。以上でこの依頼への参加を締め切ります」
 と、数人集まったのを確認して宣言し、放送室へと生徒たちを招き入れる。
 そうして部屋に入れると、鍵をかけ、ほかの生徒は入れないようにしてしまい。
「放送室というだけあって防音ですし、この場所ならば誰かに聞かれることもありません」
 そう前置きした上で、ダヴィヤは、今回の依頼の事について話し始めた。
「今回の不審者、並びに不審火の犯人は、町に住む漁業を営む【フクロ・ダ・タカレーノ】というヒューマンの男性です。年齢は二十代後半。住んでいる場所はここです」
 そして一枚の地図を、生徒たちに見せる。
 住宅街の外れの方。そこに、星マークが赤く記されていた。
「犯行の動機についてですが、漁業で思ったように魚が捕れなかったり、思ったように売値が付かなかったりとストレスを覚え、その発散の為というどうしようもない理由です」
 淡々と、恐らくは文字通りに自らの脚で集めてきた情報を、集まった生徒たちに共有するダヴィヤ。
「また、本人にも魔法の才能はあるようですが、自分に疑いの目が向かないようにするためか、自作の時限式装置を用い、自分が漁に出ている間に放火をしているようです。……この事から、警戒心が強い可能性があります」
 自分は安全な所に逃げながら、罪の無い人を不審火で脅かす。
 ……とても、許せない卑劣な行為。
「ただ、先程も言った通り彼は普段は漁に出ておりますし、その時間は明朝から夕方まで。その間は、彼の家は無防備となりますし、時限式装置を用いての放火ということで、まだ自分に疑いはかかっていないと思っているはずです。ですので、彼の家に忍び込むのは容易と考えます」
 ここで、集まった生徒たちはダヴィヤの言わんとしていることを察した。
 犯人が警戒していない今のうちに動かぬ証拠を家で見つけてこいと言いたいのだ、と。
 ――だが、
「そこで、皆さんにはこの【フクロ・ダ・タカレーノ】の家に忍び込み証拠をつかみ――」
 ここまでは予想通りだったのだが……、
「思いつく限りの罠を設置し、痛めつけて欲しいのです。これまでの放火に苦しんだ方々の思いを、恨みを、その肉体へと刻み込んでほしいのです」
 おおよそ予想していたよりも、過激な発言が飛び出してきた。
「そ、それはどの程度まで許されるのでしょうか?」
 集まった生徒の一人がダヴィヤに問う。
 罠の程度について。いたずら程度か、命を狙うものまでか、と。
 それに対しての答えは、
「当然殺してはダメです。ただ、死ななければぶっちゃけ何しても構いません」
 というもので、
「そうですね……合言葉を決めましょう」
 続いて、ダヴィヤはそんなことを呟くと……。
「生かさず殺さず逃がさず躊躇わず、というのはどうでしょう? 仕掛ける罠の程度を表すのにピッタリです」
 と、集まった生徒たちへと笑顔を向ける。
 その向けられた笑顔に、背筋が凍るほどの温度の低さを覚えた生徒たちは、首を勢いよく縦に振った。
「では決まりですね。……あ、それからもう一つ。この不審者、不審火に関する依頼は正式に町の人たちから依頼されたもので、決して私の私怨ではありません」
 説明は以上、と放送室のドアへと手をかけたダヴィヤは、言い忘れていたと振り返り。
「我々は天が裁きを下すまで待てないとの声により、天に代わって誅するだけです。それをゆめゆめお忘れなきように」
 とだけ告げて、放送室の扉を開く。
「日が昇る頃には犯人は仕事に出かけています。ですが、悠長にしている時間もありません。ここからはスピード勝負。それでは、皆様、頑張ってきてください」
 そうしてダヴィヤに送り出された生徒たちは、ある者は寮の自室へ、持ち物から罠に使えそうな物を引っ掴み。
 またある者は、購買にて罠の材料を購入し足早に。
 確認した地図の家を目指し、どんな罠にしようかと考えながら向かう。
 その背に、毎朝恒例のダヴィヤの校内放送を聞きながら。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 5日 出発日 2021-11-15

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2021-11-25

登場人物 4/8 Characters
《枝豆軍人》オルタネイト・グルタメート
 リバイバル Lv15 / 魔王・覇王 Rank 1
■性別■ えだまめ(不明) ■容姿■ 見た目:小柄で中性的 髪:緑のショートヘア 目:深緑色 服:生前の名残で軍服を好む。 あとなぜが眼帯をしてる。 ※眼帯に深い理由はない。 ■性格■ 元気(アホの子) 意気揚揚と突撃するが、結構ビビりなのでびっくりしていることもしばしば。 ■趣味■ 枝豆布教 ■好き■ 枝豆(愛してる) ■苦手■ 辛いもの(枝豆が絡む場合は頑張る) ■サンプルセリフ■ 「ふはっはー!自分は、オルタネイト・グルタメートであります。」 「世界の半分を枝豆に染めるであります!」 「枝豆を食べるであります!おいしいのであります!!怖くないのであります!」 「これでも軍人さんでありますよ。ビビりじゃないであります!」 「食べないで欲しいでありますー!!自分は食べ物ではないであります。」
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《這い寄る混沌》ニムファー・ノワール
 アークライト Lv20 / 王様・貴族 Rank 1
ニムファー・ノワール17歳です!(ぉぃぉぃ ニムファーは読みにくいかも知れないので「ニミィ」と呼んでくださいね。 天涯孤独です。何故か命を狙われ続けてます。 仲間やら友人はいましたが、自分への刺客の為に全て失ってしまいました。 生きることに疲れていた私が、ふと目に入った学園の入学案内の「王様・貴族コース」を見て考えを改めました。 「自分が命を狙われるこんな世界、変えて見せますわ!」 と思っていた時期が私にもありました(遠い目 今ではすっかり学園性活に馴染んでしまいました。 フレンドになった方は年齢にかかわらず呼び捨てタメ口になっちゃうけど勘弁してね、もちろん私のことも呼び捨てタメ口でも問題ないわよ。 逃亡生活が長かった為、ファッションセンスは皆無な残念女子。 な、なによこの一文。失礼しちゃうわ!

解説 Explan

 事件の犯人が家に居ない間に罠を仕掛けて天誅を下すシナリオです。(ホーム〇ローンとか言わない)
 散々罠に仕掛けた後、放火の証拠を突き付けて罪を認めさせることが達成条件です。
 痛めつけが足りないと罪を認めませんので、死なない程度に存分に痛めつけてください。
 犯人の【フクロ・ダ・タカレーノ】は警戒心が強く、一度罠にかかった後や、誰かが家に侵入した痕跡に気が付くと慎重に行動するようになります。
 わざと痕跡を残して行動を誘導したり、罠の順番を工夫することも時には必要になると思いますので、しっかりと相談をしたうえでどのような罠をどの場所に配置するかをプランに記入してください。
 以下、帰宅した犯人の行動順路や家の中にあるものを書いておきますので、プランを書く際に参考にしてください。

 ・犯人の行動
  帰宅後、リビングを抜けてトイレに行った後、階段を上って二階の寝室で睡眠をとります。
 
 ・犯人の家の構造
  二階建ての家で、玄関からリビングへ、リビングから風呂、トイレ、二階へと続く階段へ繋がっており、二階は寝室と書斎になっています。
  リビングには食器棚、調味料の置いてある棚、テーブルなどがあり、まだ使用されていない放火に使う自作装置が保管してあります。
  風呂には入浴道具、トイレには掃除用ブラシがあります。
  寝室はベッドとクローゼットだけで、書斎には部屋一杯の本棚と本(火属性魔法に関するもの)があります。


 存分に痛めつけた後、証拠を突き付け自白させる場面があります。
 その場面で、自分の名前を名乗るのか、それとも、正義の名の下の鉄槌として偽名を名乗るのかはお任せします。プランに特に記載のない場合、GMの独断と偏見により決めさせていただきます。


作者コメント Comment
 とてもとても久しぶりなお馬さんです。
 唐突に皆さんとわちゃわちゃしたい欲に駆られ、少し時間に余裕ができたので再び筆を執った次第。
 お忘れかもしれませんがこのお馬さんは基本的になんでもありのプランを受け付けております。
 今回のエピソードに関して言えば、「対象さえ死なないなら何してもいい(グロ表現は規制の対象なのでNG)」です。
 某映画の少年みたく、情け容赦のないパーフェクトトラップをプランに記載ください。
 罠を列挙するプランでもよし、コンボを意識して繋げるもよし、学園内のショップや家の中にあるものを想像してプランに書いてください。
 家の中にこんなのあったらこんな罠設置する! とかも書く時のお馬さんが対応すると思うのでどんどんどうぞ。
 生かさず殺さず逃がさず躊躇わず、ご唱和ください。
 ――天っ誅ぅっ!!


個人成績表 Report
オルタネイト・グルタメート 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
心情:
魚が取れなくても枝豆を取ればいいじゃない!!でありますな!

罠:
①入り口以外の出入り口になりえる場所(窓等)に落とし穴を作成
②自作装置(または、他PCの罠)の近くにマカロンボムを設置(うっかり)
③書斎の机の引き出しの中などに詰められるだけ枝豆を詰める(善意)
④お風呂の底に鳥もちを敷き詰める
⑤入り口を鳥もち祭りにする

行動:
うっかりも含めて罠を設置
自分の準備が終わったら、ほかの人のを手伝う

自分は、相手が室内に入ったら、入り口を封じようと動く⑤

相手が鳥もちに引っかかったら、目の前でずんだ餅の作成
「罪を認めるまで、食べさせるのをやめないであります!」と言いながら、
笑顔でお口にずんだ餅をスパーキング

クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
なるほど、痛い目に遭わせればいいのか

フクロが帰宅する前に彼の家をよく調べよう
証拠の位置を把握して、さらに彼が有事の際に持ち出して隠蔽しそうな重要な証拠品は予め押収
あと……未使用の放火装置もおひとつ回収

その後は痕跡を残さぬよう慎重に行動しつつ、リビングに通じる扉の上部に放火装置を仕掛ける
加えてわざと扉の下に足跡を薄くつけて視線を下に誘導するように仕向ける
扉を開けると放火装置が発動し、フクロの髪の毛を燃やす……そしたら頭を鎮火しようとするだろうからトイレの戸を開けておき誘導
鎮火後、頭を便器からあげた瞬間上からたらいを落とす

しっかり痛めつけて心が弱ったタイミングで押収した証拠品をつきつけ白状させよう

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:72 = 60全体 + 12個別
獲得報酬:1800 = 1500全体 + 300個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:1
獲得称号:---
近頃の連続放火魔におしおきか
まぁ、放火は故意だろうが事故だろうが大事だからな………
犯人には存分に痛い目を見てもらおうか

まずは罠等を仕掛けるのに侵入しなきゃなのだが扉を抉じ開けたりとかするとダカレーノが警戒してしまうだろう
はなっから警戒されるような作戦が持ち上がらない限りリバイバルの皆に壁抜けからの鍵開けをお願いしたいとこだな

仕掛ける罠は火が発生するのに合わせてコンボを狙ってみよう
とんでく花火が屋内で飛び交うのって怖いし実際危ないよな
罠としては出火元から時間差で発動かな
仕掛けは導火線の長さの調整でいいだろ

最終的に喚くようなら天誅って叫びながら一撃入れておこう

アドリブA、絡み大歓迎

ニムファー・ノワール 個人成績:

獲得経験:60 = 60全体 + 0個別
獲得報酬:1500 = 1500全体 + 0個別
獲得友情:300
獲得努力:50
獲得希望:5

獲得単位:1
獲得称号:---

リザルト Result

 学園を出て、受け取った地図を頼りに移動すること少し。
 【オルタネイト・グルタメート】、【クロス・アガツマ】、【仁和・貴人】、【ニムファー・ノワール】の四人は、【フクロ・ダ・タカレーノ】の住居へと到着。
 早速侵入しようとするオルタネイトだが、それをクロスに止められる。
「待て。犯人は警戒心が強い可能性があると聞いたはずだ。家に何者かが侵入した際、それを自分だけが知れるように細工をしている可能性がある」
 そう告げ、慎重に家の周りを観察。
「オレも手伝おう」
 クロスとは反対方向へ回りながら、それを手伝う貴人。
 その様子を、いつ終わるのかとソワソワしながらニムファーとオルタネイトが待っていると。
「ん?」
「お?」
 貴人とクロスが同時に何かを発見。
「地面と同化するように紐を張っているな」
「これに気付いていないと、戻ってきたフクロに警戒されてたところだ」
 ニムファー達を手招きし、紐を指差して気をつけろと促して。
「さて、それじゃあ仕掛けるとするか」
『おー!』
 四人は家へと侵入。静かに、家の中へと姿を消すのだった。



「まずは証拠の確保……。どこか隠せそうなところは――」
 家へと侵入し、最初に時限式発火装置の確保に動くクロス。
 限られた時間の中で、最優先事項を最初に消化しておけば、何かしらのトラブルが起こった時でも最低限の成果は得られる。
 そう考えての行動。
(暴発を考えると自作と言えど寝室などには隠せないはず。加えて、もしそうなったときに火事の言い訳として都合がいいのは……)
 犯人の思考を想像し、自分の中で論理を組み立て。
(リビング……か? ここなら火を使うし、多少苦しいかもしれないが言い訳に筋は通る……か)
 最初に手を付けたのはリビング。
 特に、ごちゃごちゃと片付けられていない食器棚。
 どの位置にどの食器が置いてあったかを記憶しながらどかし、奥を探ると――、
「見つけた。おーい、発火装置を見つけたぞ!」
 ビンゴ。まだ未使用の発火装置がいくつか発見された。

「まずは時間がかかる罠から取り掛かるであります! え~っと……玄関以外に出入り可能な場所は――」
 家の周りをぐるりと見まわして。リビング、トイレ、風呂場にそれぞれある窓を発見。
 トイレと風呂場の窓はリビングのものと比べて小さく、人が出入り出来そうにはないが……。
「万が一という可能性もあるであります! 早速掘っていくであります!」
 備えあれば嬉しいな、とでも言いそうな雰囲気で窓のすぐ下に落とし穴を掘っていくオルタネイト。
「こっこ掘れ枝豆♪ こっこ掘れ枝豆♪」
 独特な歌を口ずさみながら、今日も元気に枝豆節を炸裂させていく。
 ――と、
「おーい。発火装置を見つけたぞ!」
 クロスのそんな呼び声が聞こえてきた。
「なんと!? 見つかったでありますか!?」
 その声を受け、クロスの下へと走るオルタネイト。
 枝豆の加護か、先程掘り始めた落とし穴はしっかりと完成していた。

 リビングで発火装置を探すクロスを置いて、二階の寝室へとやってきた貴人。
「流石に暴発して燃えることを考えるとここには保管しないだろうが、その心理の逆を突く可能性があるからな」
 ベッドとクローゼットだけの簡素な寝室。だからこそ、それらしかない、と思わせることも出来る。
「クローゼットの中はもちろんだが、ベッドの下、クローゼットと壁の間、何なら枕の中まで調べたい」
 おおよそ探す目標が違う気もするが、捜索と言えば捜索なわけで。
「秘蔵のコレクション(意味深)でも見つけたら罠に使わせてもらおう。目の前で焼かれるのはきっとクるだろうからな」
 なんとも意地悪な笑みを浮かべた貴人は、ゆっくりと腕を伸ばしてベッドの下へ。
「……ん? ――マジか、本当にあるのかよ……」
 そこには、何か雑誌のようなものが隠されているようで、その雑誌を手繰り寄せてみると……。
「うわぁ……、どっかで見たことあるぅ……」
 出てきた本は、我らが学園長【メメ・メメル】が表紙を飾るファッション雑誌、『YUYU』だった。
 きっと彼のお気に入りなのだろう、しおれたその雑誌を握りしめると、
「絶対に燃やす」
 そう決意を固くする貴人。
 そして、
「おーい。発火装置を見つけたぞ!」
 クロスが自作装置を発見したらしい。貴人は急いでクロスの所へと向かうのだった。

「罠……と言ってもあまり思い浮かびませんわね」
 顎に人差し指を当て、どんな罠にしようかと悩んでいるらしいニムファーは、
「こっこ掘れ枝豆♪ こっこ掘れ枝豆♪」
 ご機嫌にざっくざっくと落とし穴を掘っているオルタネイトを発見。
 そして……、
「そうよ! もし逃げようと窓を越えたら、落とし穴に落とした後に釣り上げてしまえばいいのよね!」
 罠を閃いたらしく、近くの木へと登っていくニムファー。
「あまり無茶をさせて折れてしまっては本末転倒ですし、これくらいで……」
 木の枝の先端にロープを結び、地面に降りて仕掛けを施し。
「ふぅ。こんなものかしら? うまく作動してくれるといいのだけど……」
 オルタネイトの仕掛けた落とし穴。そこに重なるように、輪っかを作ったロープの先端を設置したところで、
「おーい。発火装置を見つけたぞ!」
 クロスからの呼び声。
「すぐに向かいますわ!」
 漫画やアニメに出てくるダッシュの待機ポーズを取ったかと思えば、次の瞬間には残像を残してクロスの所へ。
 彼女がいたところには、寂しそうに風が吹いたのだった。

「こんなに作ってるのか」
「許せないであります! 家を焼きたいのなら、枝豆を焼いた方がよっぽどいいであります!」
「それ、お一つくださらない? 使われた側の気持ち、犯人に刻み付け差し上げますわ」
 クロスの報告を受け、集まってくる貴人、オルタネイト、ニムファー。
 一つどころか複数発見され、まだまだ犯行を重ねるつもりだった事を理解し、どこか心の奥で手心を加えようと思っていた感情は消える。
「そうだな。つまり自分も同じ目にあわされても文句は言えないってわけだな」
「そうと決まれば急いで罠を仕掛けよう。……これ、お互いが仕掛けた罠に引っかからないよう、仕掛ける場所を分けた方がいいんじゃないか?」
「ハッ!? 確かに。自分たちが罠にはまっては本末転倒であります!」
「同じ場所に仕掛ける場合は協力して、どんな風に仕掛けたかをほかの方々に共有しなければですわね」
 そうして四人は、各々がどこのどの場所に、どのような罠を仕掛けるかを確認し、行動に。
 早く仕掛け終わった者は他の者を手伝い、日が暮れるころにはしっかりと罠を張り巡らせることに成功していた。



「そろそろでありますか?」
「分からん」
 罠を仕掛け終わり、家のそばに隠れて待機する四人。
 待ちきれない、とはやるオルタネイトをなだめていると……。
「来たぞ」
 とうとう、フクロが帰宅してきた。
 その姿は、とても満足のいく成果があったとは考えられない足取りで。
 動きから、非常に苛立っていることが見て取れた。
「確認するぞ」
 フクロの姿を確認した貴人が他の三人へと声をかける。
「まずは待機、罠にかかるのを待つ」
「次に、罠にかかったことを確認したら音でどの場所の罠にかかったかの確認でありますな!」
「確認したら、次の罠への誘導が出来るなら誘導。出来ないなら、乗り込む」
「最後に皆さんで囲んで袋叩きね」
 四人が四人とも頷いて、フクロの方へと視線を向けると、まさしく家へと入る瞬間だった。
 思わず息を飲む四人。――そして、
「うわっ!? なんだこれ!?」
 フクロの叫び声が聞こえてきた。
「行くぞ!」
 それを合図に、四人がフクロの家へとダッシュする。絶対に逃がさないために。
 そして、まだまだお仕置きという名の天誅を下すために。

(ったく、最近は全然獲れねぇ)
 家への帰路に就くフクロは心の中で悪態をついていた。
 思うようにいかない漁のイライラを少しでも紛らわすために。
 が、
(駄目だな。こんなことしてもちっとも晴れねぇ)
 どうやら、その程度では収まらないらしく、
(こうなりゃ、明日あたりにでもどっか燃やすか)
 と、最低な考えをしながら家へ入ると――ズモッ! という異様な感触が足の裏へと伝わる。
「うわっ!? なんだこれ!?」
 思わず叫び、足を思い切り上げるが……。
 まとわりつき、絡みつく大量の鳥もちを踏んでしまったその足は、思った半分以上も持ち上がらず。
「っと!?」
 想定外の体の動きにバランスを崩し、前へと倒れこむ。
 パンッ!! パンッ!! パンパンッ!!
 フクロが倒れこむと同時に、オルタネイトがうっかり落としていたマカロンボムを下敷きにしてしまい、爆発。
 周囲に甘い匂いが立ち込める。
「なんだ!? なんなんだよっ!!?」
 意味が分からずパニックになるフクロの耳に、馴染みのある音が届いた。
 ――カチッ。という乾いた発火装置の起動する音が。
「嘘だろ!?」
 倒れこんだままの姿勢で上体を起こしたフクロの視界には、自分へと迫ってくる火がしっかりと映っていて。
「ひぃっ!」
 慌てて頭を下げるが、残念なことに火をかわし切ることは出来ず。
 チリチリという音と、髪の毛の焼ける嫌な臭いが周囲の甘い匂いを上書きしてく。
「ひぃっ! あっつ! アッツ!!」
 何とか髪についた火を消そうともがくが、なかなか消えてくれない。
 そうこうしているうちにようやく鳥もちにくっついていたブーツを脱ぐことに成功し、大慌てでリビングの奥へ。
 火を消すための水。何が何だかわからないパニック状態のまま、フクロは水を求めて風呂場へ。
 ……向かおうとして、風呂場に続く足跡を見つけた。
 今の時点で誰かの侵入があったことは明らか。であるならば、こうして足跡の伸びている風呂場にも罠が仕掛けられている可能性がある。
 そう考えたフクロは、トイレへと駆け込んで。
 頭から便器へと突っ込み、髪の火を何とか消化。
「助かった……」
 ――否。助かっているわけがない。
 安心して便器から顔を上げたフクロの脳天へ、ゴイーン! とタライが命中。
 痛みよりも衝撃と音とで驚かすその道具は、緊張の糸が切れていたフクロにクリティカルヒット。
「ひぃっ!!?」
 また半狂乱になり、家の中に居てはマズいと判断したのか、トイレの窓を破って外へ出ようとする。
 地面に着地。その後落とし穴発動。
 自分の想定していたタイミングで来ない衝撃に肩透かしを食らい、タイミングをずらして地面とキス。
 直後に足をロープにかけられ、木のしなりを利用して空中へと逆バンジー。
 視界が上下左右に目まぐるしく動き、フクロはもう自分の体がどうなっているのか分からない状態へ。
 そんな状態のフクロを、二階の窓めがけてニムファーが蹴飛ばして。
「うわぁぁぁっ!!」
 顔面から窓ガラスを突き破り、寝室へ。そこでは……。
「ちょっ!? なんで!?」
 貴人が見つけたフクロ秘蔵のコレクションが、すでに半分ほど燃えていて。
「なんだよ!!?」
 もはやまともな思考が出来ないフクロは、当然罠であるはずの『YUYU』を燃え尽きさせまいと飛びついて。
 床に塗りたくられた発火装置にも使う油によって、スィーと限りなく低い摩擦で階段へと滑っていく。
「ごっ!? がっ!!? パッ!!?」
 勢いが付いたまま階段へと放り出されたフクロは、何度もバウンドしながら一階へ。
 ズモッ! 着地したときに、嫌な音と嫌な感触がして、鳥もちの塊に落ちたことを理解した。
「少しは自分の行いを反省したか?」
「誰だ!?」
 ゆっくりとタライをもって近づくクロスに、当然の質問をするが無視されて。
「燃やされる側の気持ちは分かったか?」
「何だよ!?」
 先程の半分ほど燃えた『YUYU』を、手にした発火装置で炙りながら近付く貴人。
 そろそろ、フクロの声が涙声に変わってきた。
「三つ醜い悪行三昧」
 ニムファーの言葉に意味が分からないと首をかしげるフクロだったが、ニムファーの手に『五千兆t』と書かれたハンマーがあるのを確認。
 そんなもので叩かれるわけには、と暴れるが、しっかりと鳥もちに取り込まれており、まるで動けない。
「『魚が不作なら、枝豆を取ればいいじゃない』という言葉を知らないでありますか!?」
 その鳥もちと、枝豆を潰した餡でずんだ餅を作りながら、よく分からないお言葉を聞かせるオルタネイト。ちなみにこの鳥もちは非食用である。
「知るか!! ていうか誰だお前ら!!」
 思わず叫ぶフクロ。
 それに対し、
「誰だお前らと聞かれたら――」
「秘密結社、えだまめんであります!」
 貴人が応えようとすると、横からオルタネイトが搔っ攫っていく。
「えだ……まめん?」
「それこいつだけな。そうだな、仕置き人とでも名乗っておこうか」
 目が点になるフクロを放置し、貴人がそう名乗ると、
「では俺も、クロス・アガツマと名乗らせてもらおう」
「にむふぁーのわーるじゅうななさい!」
 四人がそうして名乗った後、
「さて、なんでこんなことになっているのか見当はつくだろ?」
「お前の罪を数えろ」
 と、フクロへと詰めるクロスと貴人。
「し、知らねぇ!」
 それでも抵抗するフクロへ、
「白状するまでずんだ餅をご馳走するでありますよ!」
「も、もがっ!」
 オルタネイトは、フクロの口へとずんだ餅(非食用)を押し込んでいく。
「ちなみに、結構大きな音とか立ててたから、周りの人が見物に来ていますわよ?」
 フクロからは確認できない窓の外を見ながらそう呟いたニムファーはにっこりとほほ笑むと。
「これから神妙にお縄につくか、もうひと暴れしてからお縄につくか、選んで構いませんわよ?」
 そう言い放つと、フクロはがっくりと項垂れた。
 ――ずんだ餅のせいで、気道を塞がれたせいで。



「ご苦労様でした」
 学園へと戻った四人は、【ダヴィヤ・スカーレット】に出迎えられる。
「すでに皆様の活躍で犯人が捕まり、自供したと連絡がありました。鳥もちを外すのに苦労したらしいですが、それでも大人しく捕まってくれたと住民の方々も喜んでおります」
 そう報告を受け、四人は達成感を噛みしめる。
「時には今回のように、やり過ぎ位が丁度いい場面というものが出てくるでしょう。その場面を適切に判断することで、皆さんはさらに強くなることでしょう」
 そんな四人へそう声をかけたダヴィヤは、
「それでは、本当にお疲れさまでした。依頼達成、おめでとうございます」
 四人に、深々と頭を下げるのだった。



課題評価
課題経験:60
課題報酬:1500
天っ誅ぅっ!!
執筆:瀧音 静 GM


《天っ誅ぅっ!!》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《枝豆軍人》 オルタネイト・グルタメート (No 1) 2021-11-10 06:12:45
魚が取れなくても枝豆を取ればいいじゃない!!
オルタネイト・グルタメートであります!!

他の参加者が来てくれると嬉しいのでありますな。

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 2) 2021-11-10 13:18:29
賢者・導師コースのクロス・アガツマだ。ああ、よろしく頼む。
わかりやすく言えば、さるかに合戦ってところかな。

うーん、とりあえず髪の毛でも燃やしてみようかな?放火に使う装置を逆に利用する形で。そしたら……鎮火のために駆け込むトイレにも罠を仕掛けておくとか。
あとは、ちゃんと家にある証拠を集めておくことも明記しておこう。

《枝豆軍人》 オルタネイト・グルタメート (No 3) 2021-11-13 12:19:31
髪の毛燃やし……つるつるの未来が見えるでありますな。

逃げなれないように窓の周りには落とし穴でも作っておきたいでありますな。

あ、自分はマカロンボムがたまたま持ち物にあったでありますから、それを使おうかなと思うであります。

《這い寄る混沌》 ニムファー・ノワール (No 4) 2021-11-14 14:33:24
ニムファー・ノワール17歳です(ぉぃぉぃ

殺しちゃいけないのはネックねぇ(ぇ、そこ?

まぁいろいろ考えてみるわ

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 5) 2021-11-14 15:16:31
遅くなったが、魔王・覇王コースの仁和だ。
よろしく。

個人的には不審火騒ぎの犯人には家とか仕事道具を燃やされる気持ちを味わわせてやりたいとこだが・・・それやっちゃうと普通に火事騒ぎになるよな?
小火騒ぎぐらいなら大丈夫か?犯人タバコ吸ってるなら寝たばこを装うんだが・・・どうだろうな。

あぁ、要らないとは思うが灼熱(火傷)対策のために沈熱の草を持っていく予定だ。