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燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ元ッ旦


ストーリー Story

 本日の【コルネ・ワルフルド】は振袖姿、白地に踊るは牡丹と蝶で、帯も金色のあざやかな装いだ。結った髪にかんざし挿して、やや内股で前に出る。
 ええと、と頬をかいてコルネは言った。
「明けましておめでとうございます。体調不良の学園長に代わってー……代行で乾杯の音頭をとりますワルフルドです。旧年中はお世話になりました。えー、今年もよろしくお願い申し上げますっ。星マーク!」
 星マーク? と怪訝な顔をする列席者たちを見てうろたえ気味に、コルネは手元の紙に視線を落とした。
「先生、思うんですが」
 かたわらの【イアン・キタザト】が耳打ちする。
「その星マークは、『元気に読め』っていう意味ではないかと」
「あっ」
 合点がいったような顔で、ふたたびコルネは宣言した。
「今年もよろしくお願い申し上げますっ☆ では乾杯!」
 乾杯の声が唱和する。コルネはグラスを掲げると、泡立つ大ジョッキに口を付けた。白い陶器製、自分の顔ほどもあるメガジョッキである。持ち上げるだけで難渋しそうな逸物であるにもかかわらず途中で息つくこともなく、咳止めシロップみたいに軽く空けてしまった。
 ぷはぁと口をぬぐうコルネに、イアンはいささかあきれ顔だ。
「先生いきなり飲みすぎでしょー」
「いやぁ、急に挨拶の代理まかされたもんで、緊張してノド乾いちゃって♪」
「お酒はほどほどに、ですよ。先生、お見合いパーティでも痛い目にあったみたいですけどー」
「あー……あれは、失敗でした。なので今日は、これ一杯ですませますんで」
 その一杯がデカすぎるよね? と思った様子だがイアンは特にコメントせず、自分のグラスを手にする。
 改装したばかりの学園内講堂は、床も天井もぴかぴかだ。せっかくなのでということで、今年の教職員新年会はこの場所での立食パーティとあいなったのである。これまで学食や、こぢんまりした山小屋で行っていたものと比べると規模が段違いだった。
「学園長の思いつきで、雪ふってるのに屋外開催ってこともありましたよねー。雪のうえにゴザ敷いて」
 あれは寒かったとコルネは首をすくめたが、はからずも出てしまった名前に、数秒間会話は絶えることになった。
 ようやく、イアンが言った。
「……学園長、大丈夫なんでしょうか?」
 のほほんとしていた表情が曇っている。
「うん、まあ、大丈夫って言ってますけど。本人は」
 毎年恒例の教職員新年会は、【メメ・メメル】がはりきって幕を切るところからスタートしていた。
 ところが今年はそのメメルが欠席しているのである。あえてコルネに訊く者はないが、メメルの体調不良が原因であることはすでにあきらかだった。
「オレサマはたしかにフトゥールム・スクエアの創立者であり代表者でもあるが、学園そのものではない」
 今朝、例の発作にうめきながらメメルがコルネに告げた言葉だ。
「だから行事はいつも通り進めてくれ。会場でオレサマが急に倒れたりすれば、おめでたいムードに水を差すからな……」
 いつもいる人がいるべき場所にいないのだ。火が消えたようとまでは言わなくとも、一抹の寂しさがあることは否めない。
 でも、お葬式みたいに悄然としろとメメルは言っただろうか? いや、大いに騒いでくれと言ったではないか。だからコルネは、うんと明るい声を出すのだ。
「でも今年はその分、教職員だけじゃなく学生も入れたパーティですからねっ♪」 
 会場を見わたす。例年、教職員に限っていた新年会だったが、今年は講堂という大きな会場を使うということもあり、帰省していない生徒、そもそも帰省先がない生徒も招いたのだった。なので会場はたくさんの姿で賑わっている。
 コルネ同様振袖で【フィリン・アクアバイア】が華を振りまいている。薄いブルーの絹が美しい。
 どこで仕立てたの? と訊きたくなるほどゴージャスなロイヤルレッドのドレスで高笑いしているのは【ミレーヌ・エンブリッシュ】だ。ミレーヌは宝石がじゃらじゃらついた扇子を手にしてしきりに扇いでいる。周囲がいささか引き気味なのも彼女らしい。
 いつもの服装と大差ないが、胸元に白百合のコサージュを足しているのが【キキ・モンロ】の『おめかし』のようだ。例によってキキは色気より食い気、ガツガツ音がたつほど旺盛な食欲を発揮していた。
 キキよりもっといつも通りなのは【サラシナ・マイ】で、まるっきり普段着で談笑している。相手の【エミリー・ルイーズム】がきっちりイブニングドレスを着ているのとは対称的だった。
 チーズフォンデュにおっかなびっくり手を伸ばしている(食べたことがないらしい)のは【フィーカ・ラファール】で、壁際のチェアで早くもうたた寝をはじめているのは【テス・ルベラミエ】である。【パルシェ・ドルティーナ】と【ルシファー・キンメリー】は仲良く一枚のピザを分け合っていた。(ただし割合は2:8くらいだが)
 珍しい組み合わせもあった。【ラビーリャ・シェムエリヤ】と【ネビュラロン・アーミット】だ。そもそも無口なふたりなので、テーブルを挟んで向かい合ったまま特に何も話していない。ただ、ふたりの間には丼に入った奇妙な食べ物が湯気を上げているだけである。豚骨ラーメンだった。しかし、麺の上に大きなプリンが乗っている。チャレンジ精神旺盛なメニュー『甘旨豚骨ラーメン(プリンラーメン)』というものらしい。
「……」
 無言でラビーリャは丼を押し出した。
「……」
 無言でネビュラロンは受け取った。
 そうこうしている間にイアンは、【ゴドワルド・ゴドリー】を見つけ絡みに行ってしまった。ゴドワルドは迷惑そうだが、イアンは至って楽しげだ。
 会場を眺めふと思い出したように、
「そういえば、リーベラントのほうはどうなってるかなあ……」
 ぽつりとコルネはつぶやいた。
 たまたま通りかかった【リリィ・リッカルダ】が、それこそ子ウサギのようにビクッと反応する。
「私! ……の話ですか……?」
「あ、いやいやいやキミの話をしてるわけじゃないからね! ひとりごとひとりごと~」
 今日は、ローレライ国家リーベラントでもニュー・イヤー・パーティが行われているのである。
 幾度かの衝突と交流を経て、ようやくリーベラントとは雪解けムードが形成されつつあった。公女【マルティナ・シーネフォス】から『非公式かつ友人として』招待を受け、修好のため学園代表としてリーベラントにおもむいた生徒もいるはずだ。

 謹賀新年!!
 魔王が滅びて2022年目の年が明けた。熱く燃え上がるような一年になるだろうか!?
 君のお正月をおしえてほしい。
 学園の新年会に参加し、友人や教職員と交流を深めているのだろうか?
 帰省して地元でくつろいでいるのだろうか?
 リーベラントの新年会に招待され、緊張しつつ学園代表の任を務めているのだろうか?
 それとも、自己鍛錬に精を出しているのだろうか?
 正義の怒りをぶつけろ、元旦!(唐突に)


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 6日 出発日 2022-01-15

難易度 簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2022-01-25

登場人物 6/6 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《甲冑マラソン覇者》朱璃・拝
 ルネサンス Lv29 / 武神・無双 Rank 1
皆様こんにちは。拝朱璃(おがみ・しゅり)と申します。どうぞお見知りおきを。 私の夢はこの拳で全てを打ち砕く最強の拳士となる事。その為にこの学び舎で経験と鍛錬を積んでいきたいと思っておりますの。 それと、その、私甘い食べ物が大好きで私の知らないお料理やお菓子を教えて頂ければ嬉しいですわ。 それでは、これからよろしくお願いいたしますわね。
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。
《タイダルウェイブ》クラン・D・マナ
 カルマ Lv10 / 黒幕・暗躍 Rank 1
異世界:情報旅団テストピアという所に住んでいたが、とある仕事の最中に、この世界に強制転移してしまった。 正式名称「Clan Destroyer 07」 本来はスレイブと言うヒューマンに近い種族の女性の筈だが、何故かカルマの種族属性を持った状態でこの地へ降り立つ。強制転移した経緯が原因と思われるが真偽は不明。 感情の起伏は非常に少なく、淡々とした物言いの為、冷徹な印象をもたれがちだが本人はどこ吹く風。 「かわいそうだけどあしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」と言わんばかりの冷たい目で見られている!と他人が思っていても、実際には今日の食事は何にすべきか?と思案してる状態だったりすることもしばしば。 本人は無自覚で感情にも表さないのだが、可愛い物が好き。 旅路では探し求めていた己のマスター(陣)、家族と言うべき女性達(マリア、マルタ)を見つけ出す事は出来ず、新たな可能性を求めて魔法学園フトゥールム・スクエアに入学することになる。 「私と同じ世界に飛ばされている。…希望的観測も甚だしいですが、見つけ出すにしろ世界間移動するにしろ、まずは体で行動するしか方法はありませんからね」 首に元いた世界から持ってたロケットを常にかけている。中身は、自分と家族の女性2人、マスターである男性が写っている写真

解説 Explan

 本作は日常シナリオです。戦闘や大きな事件は発生しません。

◆学園新年会について
 拙作『シングル・ベルを鳴らさないで』で改装が行われた学園講堂が使われます。時間帯は真昼、堅苦しいドレスコードなどはありませんし、ビッフェ形式のメニューもうんとパーティ寄りです。
 残念ながら【メメ・メメル】はいませんが、学園NPCはほとんどいます。普段あまり話さないキャラ、前から親しいキャラとわちゃわちゃ楽しみましょう。

◆リーベラントのニュー・イヤー・パーティについて
 こちらも昼間です。数ヶ月前から敵対姿勢を示していたリーベラントですが、みなさんの尽力によって方針を変えつつあります(対魔王陣営の主導権を握る、という強硬的な態度を考え直すことにした模様)。
 国家と団体の公式な会議という意味合いをもたない非公式な招待なので、基本、楽しんでいただければ十分ですが、失礼のないよう気をつけましょう。

◆NPCについて
 大半の学園NPCは新年会に来ています。公認・公式の区別はありません。ただしメメルは新年会を欠席します。
 教職員も一部メンバーはリーベラントに行っているようです。
 敵対勢力ないしそれに近いNPC(魔王軍、怪獣王女、ルガルなど)は登場しませんのでご注意ください。逆に言えば、他のあらゆるNPCは登場しますのでご安心を!


作者コメント Comment
 あけましておめでとうございます! 桂木京介です。

 物騒なタイトルですが特に意味はないので、ホットで楽しいエピソードくらいのつもりでいてくだされば十分です。
 達成すべき目標があるわけではなく基本フリーです。気負いなくお楽しみくださいませ。

 では次はリザルトノベルで会いましょう。桂木京介でした。


個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:67 = 22全体 + 45個別
獲得報酬:1800 = 600全体 + 1200個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
学園新年会でユリ先生とドーラさんの話をする

ドーラさんは魔王復活を望む魔族ではあるけれど
会って話せば、癖はあったけれど普通の楽しい人だった

「魔王は世界を滅ぼす悪であり、復活させてはいけないし、倒さなければならない」
そうでなければ、わたしたちはいい友人でいられると思う
しかしその立場の違いゆえ、火の霊玉をめぐって争うことになった
彼らはなぜそこまでに魔王を求めるのか?
ドーラさんのお父さんは愛する娘の命すら捧げようとした
魔王にすがらなければならないような弾圧や差別が行われていたのか?

わたしは魔族と呼ばれていてもサイクロプスさん、ケンタウロスさん
そしてドーラさんはわたしたちと変わらない存在にしか思えない

フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:720 = 600全体 + 120個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
●行き先と目的
リーベラントのニュー・イヤー・パーティに出席
関係者に挨拶と、パオロに謝りに

●行動
学園代表の一人として、新年のご挨拶に。
公的な立場としてはマルティナ・シーネフォスに感謝とご挨拶。
また対魔王軍の近況、対応について情報交換を

私的なお話として…パオロ君に『ごめんなさい』を。
リーベラントの方針変更で駆け引きも必要なくなったのと
表立っては言いませんが、ルガルとアレしちゃった(配慮した言い方)ので…

「騙したことは謝るが貴方と付き合う事は出来ない」
と、キッパリ。
余裕があるようなら『言葉より逞しくなりなさい』と助言

なお食い下がるなら罵倒して幻滅を誘い…憎まれてもパオロが強く生きてくれればと

クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:720 = 600全体 + 120個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
コルネ・ワルフルドに会って会話する

以前のパーティーでは、その……途中で終わってしまったからね
気を遣ってあの日はあのままにしておいたが、やはり惜しい気持ちはある

まずは新年のご挨拶と、前回聞きたかったコルネ先生のお話を改めて聞いてみよう
こういった機会でもなければ知る機会もあまりないだろうし
何を話せばいいか迷うようなら、教師になるより前のことや学園長との出会いを尋ねてみる
もちろん、辛いことや聞かれたくないことならそっとしておいてあげよう

それと……改めて気持ちを確かめてから、前回の続きも
いつもは教師としてか大きく見えるけれど、こうして向き合うと俺には思った以上に今の彼女は小さく感じるものだ

アドリブ歓迎

朱璃・拝 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:720 = 600全体 + 120個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
とある山の麓にある、拝一族の暮らす集落へ入学以来の里帰り。長である両親に挨拶し、里を出た後に生まれた妹と初対面、兄の墓へお参りした後一族の年始の一大行事、”社詣で”に参加しますわ

話は単純、集落から山の頂上にある拝一族の開祖を祭る社に一番に到着した者が今年の福狼になるというもの。兄が連覇したこの行事。今年は私が勝利をもぎとりますわ!

スタート直後、いきなり集落の友人の女の子達が徒党を組んで襲い掛かってきますが
、学園で学んだ技で全ていなして先へ進みますわ

さらに進んで森に入ると近所のおば様や鍛冶屋の親父様等運営の妨害係が木陰から奇襲を仕掛けてきますが、推測で奇襲の可能性を読んでいたのでなんとか対処し妨害を乗り越え先へ進みますわ

そして社直前、兄の友人でライバルだった方が今年は運営最大の妨害係として登場。流石に兄と双璧をなす方、苦戦しますが何とか勝利しついに社へ到着、一番札をゲットですわ!

まだ赤ん坊の妹にも姉の威厳を示せましたし、何より兄が成した事を私も成せました。これは今年は幸先が良いですわね♪

アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:27 = 22全体 + 5個別
獲得報酬:720 = 600全体 + 120個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
行動:【ラビーリャ・シェムエリヤ】先生と【ネビュラロン・アーミット】先生と関わる。
タキシードに蝶ネクタイで新年会に参加。
一人で食べ物を取りにいき、初めて見て凄そうだから『甘旨豚骨ラーメン』を選ぶ。
その丼を持ちながら座るテーブルを探してる最中、先生二人が目に映った。
二人も同じラーメンを挟んでいる様子に、親近感がわいて近寄る。
「失礼します。こちら座って、いいですか?」と尋ね、良ければ同じテーブルにつく。
二人のどちらかがラーメンを食べるのかと気にしつつ、しばし様子見。
誰かが食べるか、食べそうになければ、俺が自分の分を食べ始める。
ラーメンを啜ってはプリンを削って、交互に食べる。
「美味しいです、ね?」

クラン・D・マナ 個人成績:

獲得経験:33 = 22全体 + 11個別
獲得報酬:900 = 600全体 + 300個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
【目的】
学園新年会へ配膳スタッフとして参加

【行動】
私はあまり深く交流の幅を広げておりませんので裏方でもてなす側に回る方が性に合っています
女性スタッフはメイド服?制服であるというのならば着ますが、私に似合うかどうか…。
そこはかとないのですが、しっくり来るのは気の所為でしょうか?

淡々と、テキパキと。配膳、補充…はたまた調理自体も行い
円滑に新年会の料理を配り回ります

一段落ついたら隅で軽く小休止をはさみましょう
おや、同じくポツンとしている方(リリィ・リッカルダ)が…
お茶とお茶菓子を差し入れましょうか
手持ち無沙汰とお見受けしましたので、よろしければどうぞ
あぁ、なるほど。貴女がマスターの言っていた…

リザルト Result

 気流が乱れてきたのでグリフォンは早めに帰し、【朱璃・拝】は険しい山道をゆく。
 岩だらけの道なき道だ。剣をならべたような岩肌もよじ登った。
 しかし朱璃の足取りは軽い。鼻歌のひとつも出るほどに。
 峠を越えて懐かしい光景を見た。
 山の麓だ。拝一族の暮らす集落、朱璃の故郷である。

 朱璃が最初に向かったのは実家だ。まだ日も昇らぬ時間だが、両親はすでに正月の礼装姿で彼女のことを待っていた。
 ただいま帰省しましたと報告する。
「元気そうだな」
 朱璃の両親は集落の長である。父も母も目を細め嬉しそうだ。わずか数年ぶりだというのに、父の顔にはずいぶんしわが増えたように思う。
「入学以来の里帰りですね……ずいぶんたくましくなって」
 という母に、びっくりして朱璃は腕をさすった。
「もしかして腕が太くなったとか?」
 まさかと父は笑う。
「面構えだよ。凜々しくなった」
「だとしたら嬉しうございますわ」
 朱璃ははにかむ。父母を前にすれば、やはり自分はまだ子どもなのだと思った。
「おねえ……ちゃん?」
 小さな体がよちよちと、危うげな足取りで入ってきた。乳母に連れられやってきたのは、朱璃が里を出た後に生まれた妹である。
 健康そうな肌の色、眼は朱璃と同じで母親に似ている。髪も朱璃同様銀色だが、かすかに赤みがかっていた。
「あなたが……!」
 手紙で存在は知っていた。でもこうして会うのははじめてだ。どう自己紹介するか迷ったが、
「はじめまして、姉ですわ」
 と朱璃は言った。姉と名乗るのがなんだかくすぐったい。
 妹はキョトンとした表情で朱璃を見ている。まだ『お姉ちゃん』が自分にとってどういう存在なのか、理解できないでいるらしい。

 兄の墓参りをすませると、朱璃は礼装を脱いで動きやすい服に着替える。
「かえるですか?」
 と尋ねる妹に、いいえと朱璃は首を振った。
「一族の年始の一大行事、『社詣で』に参加しますわ」
 さっそく柔軟体操すべく、深呼吸をはじめる朱璃である。
 社詣では集落の伝統行事だ。話は単純、集落から走り、山頂にある拝一族の開祖を祭る社を目指すのだ。一番に到着した者は今年の福狼という称号を獲得する。名誉以外の副賞はないが、福狼に輝いたものにはその年、大きな幸運がもたらされると言い伝えられていた。男女の階級はない。無差別級の一本勝負だ。
 小部族だがこの集落には、脚力自慢がたくさんいる。しかも近年は別の部族からの参加もひろく受け入れており、観光資源としているのだ。挑戦者も観客もどっと集まるため、元旦の集落は人でごった返す。
 朱璃が社詣でに参加するのはこれが初だ。昨年までは年齢制限に引っかかり挑戦できなかった。
 会場に入ると、もう端が見えないほど多数の参加者でにぎわっている。
(記憶より人が増えていますわね……)
 だがこれで尻込みする朱璃ではない。むしろ挑戦のしがいを感じる。
(兄様、見ていてくださいまし)
 そっと祈りを捧げた。
(かつて兄様が連覇したこの行事……私が真に兄の夢を継ぐにふさわしいか、この一戦にかけますわ!)
 静かな闘志を胸に秘め、朱璃はスタートラインに立つ。

 陣太鼓が打ち鳴らされた。下腹に響く強烈な音、朱塗りの門が左右に開く。
 社詣での開幕だ!
 社詣でには独特のルールがある。こうした競技にしては珍しく、妨害行為が認められているのだ。参加者が参加者に攻撃をかけるのはもちろん、運営側が待ち伏せし、数々の妨害を仕掛けてくる。魔法や武器さえ使わなければ、ロープや落とし穴の罠も黙認なのだからすさまじい。
 開始早々、朱璃に向かって一団の女子たちが飛びかかってきた。いずれも見知った顔だ。幼なじみの友人ばかりである。
「いくよ~、朱璃!」
「本命は早めに潰さないとね!」
 ごめんねと言いながら容赦のない連携攻撃だ。けれど朱璃は驚かない。
「さっそくの洗礼ですわね。妨害ありとはいえちょっと酷くありません?」
 苦笑交じりながら五人もいる相手の動きを読み、攻撃を受けながし回避して、あるいは転ばせあるいは当て身を食わせ、たちまちのうちに全員を無力化して先を急ぐ。
 ルートは森だ。飛びこんでひたすらに走る。
 すると木陰から、
「覚悟!」
 と次々、待ち伏せが襲いかかってくるではないか。
(近所のおば様や鍛冶屋の親父様……!)
 だが素人の待ち伏せなど、朱璃にとっては児戯に等しい。気配を読みタイミングよく跳躍、木の幹を蹴り立体機動の要領で避けきった。
「甘いですわ♪」
 ロープの罠も落とし穴も朱璃には無意味だ。一気に加速し頂上へ。
 社が見えた。追走者はない。
 いよいよ、という地点で最大の妨害者が現れた。
「お前があいつを継げる者か、俺が確かめよう」
 強面の青年が鋭い目で構えを取る。かつて朱璃の兄と並び称された拳士、彼は兄のライバルであり親友でもあった。
「いざ!」
 怒濤の蹴りだ、手加減する気はないらしい。
 回避できない。膝を立てて朱璃は受ける。
 ミシッ、と骨が鳴った。
(さすがは……!)
 重く厳しい。しかし心頭滅却、朱璃は心の目を開く。
(コルネ先生の攻撃のほうが重く、厳しかったですわ!)
 朱璃は倒れない。そればかりか逆襲の手刀を見舞ったのである。
 激闘は短くも峻烈、空気が歪むほどの撃ち合いとなった。ついに、
「見事ッ!」
 青年は膝を折った。朱璃の全力攻撃を胸に受けたのだった。
「行け! 悔しいが、もう立てぬ」
 青年はそう告げたものの、口元には笑みがあった。
 朱璃が社に到達すると、観客一同がどっと湧いた。両親だけではない、妹もいる。
 朱璃は一番札を右手で握り、左手で妹を抱き上げるのである。
「お姉ちゃん、やりましたわよ!」
 頬ずりする。
 腕に妹の温かさを感じつつ、朱璃は空――その向こうにいる兄に心を馳せていた。
(兄様……やりましたわ)
 
 ◆ ◆ ◆

 空は灰色、空気は乾いて、あたり一面キンと冷える冬景色だ。
 しかしこの場所はとても暖かい。フトゥールム・スクエア講堂、新年会という名のパーティが盛大に行われているのだ。シャンデリアもテーブルもクリスマスお見合いパーティのときと同じもののはずなのに、クリスマツリーが松飾りになり、リースがしめ飾りになっただけで、雰囲気が賀正へと一変するのはなぜなのか。

 ぴったり合ったタキシード、おろしたての蝶ネクタイが映える糊のきいたシャツ、なでつけた銀の髪もきりり凜々しく【アンリ・ミラーヴ】は新年会に出席していた。当初こそ緊張気味だったアンリだがやがてリラックスし、頭の耳も、凪いだ海のごとく横を向いている。
 最初は【コルネ・ワルフルド】にあいさつに行き、いささか談笑したのちアンリはお腹の虫の抗議を聞いた。
「あ、まだなにも、食べてなかったので」
「お腹の虫のご機嫌を取ったほうがいいよ♪」  
 コルネに送り出されビュッフェに向かった。
 すごい、と絶句した。
 古今東西の料理の数々が、ところ狭しと並んでいるのだった。丸ごとローストチキンが何羽分だろう、ドカドカと並んでいるその隣に、揚げたての唐揚げが小高い山を形成している。サラダのたぐいも多種多様で、アンリが見たことも聞いたこともないような野菜が顔を見せていた。
 おせち料理なる重箱もあった。黒豆や栗きんとんの重箱、里芋やレンコンなど煮物ばかりの重箱はいささか地味だが、アンリにとって嬉しかったのはニンジンの煮物もあったところだ。濃い色合いでおいしそう。主役たるは鮮烈なる赤い色、エビの艶煮なのだった。どーんと飛び出すサイズだ。アンリが最初に味見したのはかずのこ、魚(ニシン)の卵だという。草原生まれゆえ、これまで口にしたことはなかった。
「うん?」
 プチプチとした食感、カツオ出汁がじゅわっと口中にひろがる。おいしいかどうかはさておき、印象的な食べ心地だ。
 海鮮焼きそば、一口ハンバーグなどわずかずつ試したのち、アンリは屋台を摸した一角にたどりつく。『くたびれたウサギ亭・出張店舗』と看板があった。ホットドッグやソーセージ、たこ焼きなどをその場で調理して出してくれるらしい。
「どうだい? すぐできるよ」
 前頭部を剃り上げたうえ、残った髪を長く伸ばし三つ編みに編んだ大男がエプロン姿で、アンリに人好きのする笑みを浮かべた。
 そろそろお腹にたまるものがほしかったところだ。
「えーと……」
 メニューを眺めていたところ、
「おすすめは『甘旨豚骨ラーメン』だね」
 大男が言った。うさぎ耳を揺らして断言する。
「うちの人気メニューさ。豚骨ラーメンにこいつを投入する」
 と示すその皿に、乗っているのはプリンではないか。一瞬見まちがいかと思ったがそうではないらしい。
 一瞬ためらったが、アンリはすぐに意を決した。
「じゃあ甘旨豚骨ラーメン、お願いします!」
 宣言する。バンジージャンプ気分で!

 若草色のコートをクロークに預け、【エリカ・エルオンタリエ】も学園講堂の新年会に出ている。
 教師たちに挨拶を入れ、友人らと立ち話を交わし、エリカはある人物の姿を探した。
 途上で料理にも手をつけるが、尋ね人があるのでどうしても上の空になってしまう。味はよくわからなかったがともかく詰めこんだ。
 来ていないのだろうかと不安になったとき、やっとエリカは彼女の姿を見つけたのである。
「明けましておめでとうございます、先生」
 エリカは行き着いた。【ユリ・ネオネ】のもとに。
 ユリは、柱の陰に隠れるようにしてたたずんでいる。自分の存在を消すかのように。
「おめでとう」
 短くユリは返すと、おもむろに立ち去ろうとする。
「待ってください。先生」
 お話が、と紅玉の瞳でエリカは告げた。

 きらびやかな新年会の背景には、これを支えるスタッフの努力がある。
(人手が必要ということであれば、喜んでご奉仕させてもらうだけです。お給金もたくさん出ますし)
 仕事に邁進するスタッフの一人が【クラン・D・マナ】だ。
(私はあまり深く交流の幅を広げておりませんので、交流よりも裏方のほうが性に合っています)
 淡々と、テキパキと。配膳、補充……はたまた調理も受け持つ。八面六臂の活躍ぶりだ。
 マナは雑用が苦にならない。忙しくしているほうが性に合っているといっていい。仕事もなく暇をもてあますほうがよほど苦痛だ。疾風迅雷の裏方スタッフとして、ラピスラズリのような青い髪を稲妻のごとく、会場の端から端へとせわしなくもっていく。
 でもマナには疑問もある。女性スタッフの服装だ。
(なぜメイド服なのでしょう?)
 ヘッドドレスにロングスカート、フリルつきエプロンという扮装なのだ。機能美という意味ではフリルの必然性は不明だ。首元にあるブローチつきスカーフも大いなる謎である。全体的に、無駄にひらひらしているように感じられてならない。
(私には似合っているのかどうか……)
 自信はない。でも、
(気のせいでしょうか……そこはかとなく、しっくりきているような……)
 機能面はともかく、この扮装だと働きやすいように感じるのも事実だった。
 そんなこんなで高速作業を繰り返していたマナを、ものすごい勢いで追いかけてきた少女がある。
「待てって!」
「何か問題でも?」
「……あ、あんた、マナってんだっけ?」
 言いながら少女はぜーはーと息を切らした。ほぼ同じ速度で動いていたマナが、実に超然としているのとは好対照だ。見れば赤毛の同僚、メイド服の【ヒノエ・ゲム】である。
「そろそろ昼休憩の時間だぞ」
「疲れていませんが」
「……いいから休んでくれ、頼むから」
 結構です、と言うのではないかとヒノエは不安に思った。だが、
「依頼とあれば、断るわけにはいきませんね」
 あっさりと応じると、マナは一直線に会場の外に出て行く。
「休憩は一時間な」
 呼びかけるヒノエに、
「正確にはあと、五十九分四十秒です」
 と、超然と答えながら。

 丼を持ってテーブルを探す途上、教職員ふたりがアンリの目に映った。
 椅子つきのテーブルについている。甲冑騎士の教師【ネビュラロン・アーミット】と、用務員の【ラビーリャ・シェムエリヤ】だ。
 常にフルフェイスヘルメットをかぶっていたネビュラロンだったが、最近は素顔をさらすようになった。ラビーリャは普段同様、肌を露出した薄着だ。寒くないのだろうか。
 ふたりの目の前にはウサギのロゴ入り丼がある。
「……」
 無言でラビーリャは丼を押し出した。
「……」
 無言でネビュラロンは受け取った。
 丼で湯気をあげているのはラーメン、しかも『甘旨豚骨ラーメン』ではないか。ちゃんとプリンが載っておりプルプルと震えている。
 アンリは思わず近よって告げる。
「失礼します。こちら座って、いいですか?」
「構わない」
「どうぞ」
 アンリは会釈して座る。チェスの試合を見守る審判のような位置だ。
「それ、『甘旨豚骨ラーメン』ですね、俺もです」
「……そのようだな」
「いい選択だね」
 とはふたりして言ってくれたものの、すぐにまた無言に戻った。
「……」
 テーブルには硬直した空気が流れている。
 もともとラビーリャは無表情だし、ネビュラロンも愛想のいいタイプではない。笑顔はない。
 かといってもちろん、怒っている様子もないのだった。
 ただ、そろって無言なのだ。お通夜のように。
(もしかしてお邪魔だった……とか?)
 アンリは緊張をおぼえる。顔に出さないよう努めたが、左右の耳がパタパタと、羽ばたくように動いてしまった。
「よし」
 急にネビュラロンが言った。ひょっとしたら彼女が黙っていたのは、覚悟を固める時間が必要だったからかもしれない。
「どうぞ」
 とラビーリャから手渡された箸をとり、ネビュラロンは威勢良くラーメンと、その上に鎮座したプリンをかき混ぜはじめた。
 ネビュラロンの目に緊張の色が走っている。でもラビーリャの口元にはかすかな笑みがあった。
(なるほどラビーリャ先生が薦めて、ネビュラロン先生がチャレンジしているってことなのか)
「じゃあ俺も」
 アンリも箸を取った。
 スープをレンゲですくって飲む、濃厚な豚骨ラーメンの味だ。おいしい。
 プリンをすくって口にする。甘い。卵分の多いプリンだ。やっぱりおいしい。
 意を決し麺とプリン、さらにスープを一緒にレンゲに入れ一息で口にする。
(甘くてしょっぱい。甘辛? なんだろうこの感じ)
 刺激的じゃないけど、ふわっとしてなんだか……おいしい!
 そう、美味なのだ。これは本当に。混ぜずに交互に食べて味わう。不思議な感覚が連続する。
 ラーメンとプリン、天地ほど距離のある両者の味がハーモニーを織りなす初めての体験に踊るがごとく、アンリは耳も尻尾もせわしなく動かしながら食べ続けた。
 気がつけば完食していた。
「あの。アンリ・ミラーヴです。よろしくお願いします」
 おずおずとラビーリャに声をかけると、
「ラビーリャ・シェムエリヤ……よろしく」
 うっすらとだがラビーリャはアンリにほほえみかけてくれた。ドキリとするくらい印象的な表情だ。
「美味しいです、ね?」
 ネビュラロンにアンリが呼びかける。
「にわかには信じがたいが……同感だ」
 彼女は満足気に箸を置いた。

 ネクタイをきちんと締めて、【クロス・アガツマ】はコルネの乾杯の音頭を聞いていた。
 急ぐことはない。コルネの体が空くまで散策することにする。エリカらと立ち話に興じたり、料理をつまんでみたり。
 いくらか時間が過ぎた。
 会場を見わたせば、宴もたけなわといった状態となっていた。
 酣(たけなわ)――よく使う表現ではある。本来は『真っ最中』、つまり一番盛り上がっている状態という意味あいだが、実際は少々さかりをすぎて、だれてきたあたりを指すことが多い。
 たけなわ感のある姿がちらほら見られる。酔ってぐったりする者あり、扇子でみずからをあおぐ者あり、椅子に座ったままうつらうつらする者あり。
 そろそろご挨拶にうかがうとしよう。
 コルネ先生に。
(以前のパーティーでは、その……途中で終わってしまったからね)
 気を遣ってあの日はあのままにしておいたが、惜しい気持ちはある。
「先生、よろしいでしょうか」
 振袖姿のコルネに声をかける。コルネは一人だ。
「あっ、クロスくん……」
 コルネは頬を染めて視線をそらせた。
「明けましておめでとうございます」
「おめ……でとう」
 ぎこちない。それもそうだろう。クリスマスお見合いパーティのことは、コルネにも強い記憶を残しているはずだ。
「少しお話、できませんか?」
 クロスが呼びかける。
 コルネはうなずいた。
「……外でいい? ここ、暑くて」

 会場から出てマナは目撃した。つららの垂れ下がる軒先で、白い息を吐きながら文庫本を読んでいる少女を。
 真新しい制服姿、やや桃色の入った乳白の髪、大きな眼鏡をかけていた。寒かろうに、少女は震えながらページをめくっている。
 すぐにマナは会場内に戻る。
 たちまちマナは眼鏡の少女のもとに、温かい茶と軽食をもって現れた。
「よろしければどうぞ」
 きゃ、と小さく少女は声を上げた。
「どうしたのですか? この場所の外気温は、あなたの許容範囲から外れているようですが」 
「でも中は……知り合いも少なく落ち着かなくて」
 入学したばかりなので――と少女は付け足した。髪は水のような流体だ。ローレライ族なのだ。
「新入生なのですか?」
「はい、【リリィ・リッカルダ】と言います」 
(あぁ、なるほど)
 マナは合点がいったように言う。
「貴女がマスターの言っていた……」
「マスター、って?」
 マナは自身が仕えている『マスター』の名を明かした。自身の名前も。マスターと自分の関係も簡単に。
 たちまちリリィは表情を一変させた。本をポケットにしまうとつかみかかるようにして、
「ということはあなたも異世界人ということですか!?」
 輝く目で問いかける。さっきまでとは様相が一変していた。
「しかもあの方の同居人……って、妻ですか! あの方結婚してたんですかっ!」
 うかつな返事でもしようものなら噛みつかれそうだ。
「誤解です。婚姻関係ではありません」
「では恋人!?」
「該当しないと思います。そもそもアニマとマスターの関係はそういった性質ではなく……」
 ごく簡単ながら説明すると、やっとリリィは落ち着きを取り戻したのである。
「でも、異世界の人なんですよね。せめてお話、聞かせてくれませんか。マナさんのいた世界について」
 マナはマスターから聞いて知っている。リリィが、異世界にひとかたならぬ興味を抱いているということを。
 求められれば応じたい。それがマナの性状である。
「異世界のお話、ですか? 私はあまり会話術に長けませんので、かいつまんででよろしければ……」
 ごく簡単ながら、この世界の人間が理解できる言葉を選んで概要を説明した。マスターについても触れる。
「……と言うこともありましたね、マスターの情報集力はテストピア内でも高い方なのですが、自前の利益に関連するとそこそこ精度が劣化します。わざとかこの宿六、と毒づきたくなるレベルです。端的に申し上げてポンコツですね。気苦労が絶えません」
「ポンコツだのなんだのには同意できませんが、やっぱりうらやましいです」
「なぜですか」
「そこまで気軽に話せる相手がいて。私、友達いませんから……」
 異世界に行きたいとか、学園に転入したのもそのためです、とリリィは言う。
「だから環境を変えた、あるいはまた変えたいというわけですか」
 マナは静かに告げた。
「リリィ様、そのお考えは正しくて、間違ってます。環境が変わっても、当事者の心持ちが変わらなければ何の成果も得られなかったと感じてしまうでしょう。それがわかった上で意志が変わらないのなら、私個人としては応援したく思います」
「ありがとうございます。今日、つい逃げてしまったのもいけないですよね」
「かもしれません。でも、おかげで私は、リリィ様と知り合うことができました」
 そうだ、とマナは言う。
「友達、というお話が出ましたね。こんな私でよければ、リリィ様と友誼を結びたいと思いますが……」
 いかがでしょう、と言うマナの両手を、リリィはかじかんだ手でしっかりと握ったのである。 

 クロスとコルネは連れだって講堂を抜け出した。
 外は雪景色だ。昨夜にも降雪があったのだった。
 テラスに位置どる。小高い丘が見えるあたりだ。
(衆目の中でのほうが理想だったのだが……まあ、彼女には照れもあるだろうし)
 と考えるクロスは、直後目を丸くすることになる。
「ごっめ~ん!」
 コルネが両手を合わせ、深々と頭を下げたのである。
「クリスマスのとき本当に本当にごめんっ! 迷惑かけたよねっ!」
「迷惑だなんてそんな。むしろいい思い出だと」
「アタシ、あのときのこと全然覚えてないんだ! めっちゃくちゃ酔っ払ってて……」
「全然……まさか。どのあたりからですか」
「イアン先生が去ったあたりから」
(そこ一番いいところじゃないか!)
 にもかかわらず、
「酔ってトイレでリバースしたことは覚えてるんだよね……」
 コルネは頬をかくのである。
(泥酔時の失敗談、ということで終わってしまうのか……)
 クロスは成仏(?)する勢いで絶望しかけた。
 いやしかしと気を取り直す。
 酔った上の行動でも、まったくの別人に変わるわけではない。正直になっただけではなかろうか。
 それに、きっかけがあれば記憶は修復できるかもしれない。コルネはリバイバルではなく、れっきとした生者(?)なのだから。
(終わってはいない。むしろここからだ、大事なのは)
「あの夜、先生のお話を聞けませんでした。聞きたかったんです、教師になるより前のことや、学園長との出会いとか……」
「そういえば言いかけたかなー? じゃあ今日は続きってことで」
「そう、『続き』です」
 実はねとコルネは言った。
「アタシ、親とうまくいってないんだ。故郷からは家出同然で飛び出した」
「意外です」
「そう? 父親はいなかったし、ネグレクトっていうか母親にも無視されてた。グレてたよ。悪いこと、結構やってた」
 そういうのを『ヤンチャ』って武勇伝みたいに言う人いるけどね、と苦笑いする。
「自慢になんてならないよ。反省ばっかり。唯一胸を張れるのは、弱い者イジメだけはしなかったってこと」
「そうだったんですか……」
「フトゥールム・スクエアにだってね、泥棒するつもりで入り込んだんだ。よりによって学園長室に」
 金目の物を見つくろっていたところで、メメルと鉢合わせしたという。
「それで学園長にコテンパンにのされた、とか?」
「逆。学園長はニッコリ笑って『欲しいものは全部もってけ♪』って言ったんだ。『でもここに残るのなら、オレサマはチミにもっといいものをあげよう☆』って……」
「もっといいもの、とは?」
「『教育だ』だって。『ここの学生になれ☆』って、あの人は言ったよ」
 コルネにとって大切な思い出らしい。目が潤んでいる。
「いま考えたら、学園長って魔法で、窓にもドアにも関係者以外入れないようロックをかけてんだよね。まんまと罠にかかっただけかも、アタシ」
 かくしてコルネは学園生となり、長じて教師になったのである。
「アタシが教師やってるのは学園長のモノマネ、あの人みたいに、行き場のない子に未来への道筋を作ってあげたいから」
 いつもは教師として大きく見えるコルネが、このときばかりは小さく見えた。
 顔つきが戻っていたからかもしれない。傷つき孤独だった少女時代に。
「先生、貴重な話を明かしてくださり感謝します」
「クロスくんこそ、聞いてくれてありがとう。明かしついでに言うけど、ホントはクリスマスパーティのときのこと、途切れ途切れだけど覚えてる。ていうかだんだん思い出してきた」
「先生……俺は」
 言いかけたクロスの唇に、コルネの唇が触れた。
 ほんの軽いタッチ。
 だけどそれはまちがいなく、キスだった。
「はい、『続き』♪」
 コルネは頬を染めている。
「まさか先にされてしまうとは」
 主導権を取るつもりが取られてしまった。でもこれだけは言いたい。
「ふふ、顔が赤いですね。もしかして酔ってしまいましたか?」
「クロスくんも赤いよ」
「死者との口づけは味気ないでしょうか」
「ううん、むしろいい感じっ☆」
 クロスは口元をほころばせた。
「だったら先生もう一度、会場内で唇をいただいてよいでしょうか?」
「やだよ恥ずかしい! 見られちゃうじゃない!」
「ものは考えようですよ」
 意地悪な笑みをクロスは浮かべる。
「見られるのではありません、見せる、ということでいかがです……?」

 本日のユリはめずらしくスカートだ。ジャケットにこそワンポイントで紫色が入っているも、それを除けばすべて黒、影と一体化したような姿だった。
「質問があるようね?」
 ユリに逃げたり、話を逸らす気はないようだ。真正面からエリカを見ている。
「はい」
 魔族についてうかがいたいのです、とエリカは言った。
「ドーラさんのことを話します」
 正式名称はもっと長いが、縮めて【ドーラ・ゴーリキ】と呼ばれている少女をエリカは思い浮かべる。
 ドーラはルネサンス、トカゲ系というのは少々珍しいが、トカゲのルネサンスは学園にも在学している。『魔族』といったところで、まるきり異質の存在ではなかった。
 ドーラは幼い。年齢はやっと二桁に届く程度だろう。
「魔王復活を望む魔族ではあるけれど……会って話せば、クセはあったけれど普通の楽しい人でした」
 ドーラは無邪気だった。無邪気すぎるほどに。
「無邪気に『魔王様』と口にし、魔王との結婚を、やはり無邪気に夢見ていました」
 ここだけが、エリカとドーラの唯一相容れないポイントである。
「わたしたちにとって魔王は世界を滅ぼす悪であり、復活させてはいけないし、倒さなければならない存在――この相違さえなければ、わたしたちはいい友人でいられたと思います」
「魔王復活に備える……学園長がフトゥールム・スクエアを創設した理由ね」
 ユリは言った。
「約二千年前、勇者歴元年と知られている年に、九人の勇者が魔王を封じた」
 知っているかもしれないけど、と前置きして続ける。
「勇者九人のうちひとりが、現在の【メメ・メメル】学園長よ。他の八人は魔王封印のために魂を犠牲にした。彼らの崇高な魂は、霊玉という物質に具現化したことは言い伝え通り。霊玉のひとつは、学園長にとって双子のお兄さんの魂だそうね」
 学園長に兄が! エリカがはじめて聞く話だった。
 メメルにとって魔王は兄の仇なのだ。魔王復活を防ぎ万が一のときにはふたたび打倒する、これがメメルと兄との約束なのだ。
 軽い衝撃を受けたことはまちがいない。それでもエリカは言葉を重ねた。
「立場の違いゆえ、ドーラとは火の霊玉をめぐって争うことになりました……。わたしは知りたいのです、ユリ先生」
 決意を込めて、エリカはユリと向かいあう。
「教えてください。彼らはなぜ魔王を求めるのですか? 魔族と呼ばれていてもサイクロプスさん、ケンタウロスさん、そしてドーラさんは、わたしたちと変わらない存在にしか思えません」
 回答を得るまで一歩も退かない覚悟だった。
「ドーラさんのお父さんは、愛する娘の命すら捧げようとしたと聞きました。魔王にすがらなければならないような弾圧や差別が行われていたのですか?」
「いい生徒に育ったようね。教師として嬉しく思うわ。だとすれば教師として、正面から答えるしかないでしょう」
 ユリは静かに息を吸い、吐いた。
「そう、この世界の多くの地域では、魔族に対する弾圧も差別もある。学園生の大半は因襲の薄い地域の出身、学問文化が進み差別意識を払拭した地域だったり、辺境すぎて魔王の脅威にほとんどさらされなかった土地だったり、あるいは貴方みたいに、異世界にルーツがあったりね。だから学園内ではあまり、この問題は表面化してこなかった。学園にいれば世界に影の部分があることは忘れがちだけど……否定はできない」
「魔族が魔王にすがろうとしているのは、魔族が虐げられていることの裏返しなのですね。魔王は彼らにとっての救世主ということですか」
 問いかけの口調こそとってはいるが、エリカはすでに答を知っていた。
 魔族といっても、とユリは言う。
「人間と異種族ではないの。魔王に恭順していた支配階級の後裔というだけのことよ。先祖は自分の意思で魔王に従ったのかもしれないけど、子孫には何の罪もない」
「だとすれば……!」
 勢いこんでエリカは言う。 
「魔族というだけで、魔王と同質の存在として排除するのはちがうのではないですか? わたしたちが克服すべきは、異なる物に対する恐れのはずでしょう」
「……返す言葉もないわ。学園長がドーラに入学を提案したのも、同じ気持ちだったからだと思う」 
 一方で、とエリカは言う。
「魔王軍を名乗り、争いを先導している存在には警戒しなければならないと思います。彼らにわたしたちの無知や偏見、恐れから来る分断を利用されてはいけない」
 わたし、とエリカは宣言した。
「ドーラさんに再会し関係を修復したい。真実を知り、それがいかに残酷で絶望的でも、希望を捨てない勇者でありたい。そう考えています」
「私……」
 ユリは一瞬言葉に詰まったが、ややあってこう言った。
「……私も、協力するわ」
「信頼しています。ユリ先生」
 心から出た言葉だった。
 エリカが戦う相手は魔王軍かもしれない。しかし真に相対すべきは、この世界に長く横たわる悲劇なのだ。
 勇者という剣は、悲劇の連鎖を断ち切るためにある。
 
 ◆ ◆ ◆

 さすが水の王国――【フィリン・スタンテッド】は舌を巻いた。
 滝のように流れる水でできた門が左右に動くと、やはり水でできた宮殿への通路を開いたのである。
 ファンファーレが鳴った。奏でているのは、パールレッドの軍装をしたリーベラント兵の楽団だ。
 学園代表の一人として、フィリンはリーベラントの招待に応じていた。
 ホールに通される。奥に玉座があるが空席だ。代王【アントニオ・シーネフォス】は心を病み休養中、退位する考えという噂は真実らしい。その隣には副座があり、アントニオの弟【ミゲル・シーネフォス】が座っている。ミゲルは学園からの来客一同を見回したのち、なぜか悄然と頭を垂れた。
 階(きざはし)から駆け下り一同を迎えたのは、アントニオとミゲルとは血のつながらぬ妹【マルティナ・シーネフォス】である。
「今日は新年会を楽しんでってな! たいしたモンないけど!」
 マルティナの口調は屈託がない。でもフィリンは知っている。ローレライが人口の九割近くを占めるリーベラントにおいて、王の養女でありルネサンスという立場のマルティナは、天真爛漫に振る舞い国民の融和につとめているのだ。もちろん、一旦は途切れた学園とリーベラントの間の架け橋にもなろうとしている。
 フィリンはマルティナの前に膝をつき、正式な礼を示した。
「その節はお世話になりました。今年も……いえ、今年こそ改めて対魔王軍にお互い頑張りましょう」
 普段のマルティナであれば、『やめてやそんな他人行儀は』とさえぎったことだろう。しかし王弟(正確には代王の弟)の前ということもあり、フィリンの手を取り立たせるにとどめた。
「フィリンさん、うちらとフトゥールム・スクエアは友達や。お互い頑張ろな」
(リーベラントの半数以上は、フトゥールム・スクエアとの対立に反対し、同盟の強化を求めていると聞く)
 フィリンは楽団に目を向けた。
(でも三割から四割くらいは、対魔王陣営を率いるのはリーベラントだという強硬論に同調しているらしい)
 敵意のこもった視線を感じる。
 強硬論者の主張の根底にあるのは無知だとフィリンは考える。学園のことを知らないから敵意を抱くのだ。今日は良い印象を残したい。少なくともこちらには敵意はないと伝えたい。
 この場にいる人間に与える印象は、リーベラント全土に波及するに違いないから。

 パーティが始まった。立食スタイルである。
 豊富な海の幸がならぶ食卓だった。立派なトラウトサーモンやキャビア、クロマグロなどの料理だ。
 にこやかにしつつも、フィリンは情報交換を忘れない。
 ミゲルが話してくれた。
「魔王軍がセントリアに急襲をかけるという噂がある。軍勢が必要なら言ってくれ」
「ありがたいお申し出です。学園も、リーベラントにもしものことがあれば救援の手を惜しみません」
 言ってしまってから、『リーベラントにもしものことがあれば』という言葉にフィリンは不安を感じた。アントニオ代王なら、『リーベラントに窮地はない。見くびらないでもらおう』と激怒したかもしれない。しかしミゲルは少年のように純粋な顔で、「そう願いたい」と告げた。
 最初こそ硬い雰囲気だったが、フィリンをはじめ学園側が胸襟を開く姿勢を示したこと、マルティナなど融和をはかる人々が積極的に親しげな空気を醸成したことで、パーティはなごやかなムードへと変わっていった。
 ほっとフィリンが息をついたとき、【パオロ・パスクヮーレ】が話しかけてきた。
「なかなか声をかけられずすまなかった」
「お構いなく。あなたもリーベラント側の親フトゥールム・スクエア派、両者の融和に骨折ってくれたみたいね」
「うぬぼれてもいいのかな?」
「どういう意味?」
「僕に会いに来てくれたんだろう?」
(あなたって、本当に楽天家)
 それがパオロの長所だとは認めたい。しかし裏返せば哀しいくらいの底抜けでもある。
「私は学園の代表としてきただけ。パオロ、あなたにはごめんなさいと言いたい」
「何を謝る? クリスマスに姿を消したことかい? 僕は気にしてない」
 こうなれば言わざるを得ない。
「もういいわよね、お互い?」
「えっ?」
「元々あなたは、私を騙すために学園に来たんでしょう? 私もあなたと同じ。話してすぐ気づいたから、逆に利用させてもらった。それだけ」
「確かに最初はそうだった。でも、君に惹かれたのは嘘じゃない」
 フィリンの冷ややかな視線はパオロの熱をさらに高めた。
「信じてくれ。君が好きなんだ。愛してる、フィリン!」
 懇願するような目をする。
 フィリンは沈黙した。パオロはきっと本気だ。
 こうなったら幻滅してもらうほかない。
 荒々しく告げる。
「いい加減理解しろやクソが! 作ってやったってことだよ、お前向きに!」
 パオロは絶句した。フィリンは彼に詰め寄る。
「僕が悪かったのなら……」
「ちゃんと聞けフニャチン野郎! それとも、一晩抱かれてやりゃ満足か!?」
 パオロが怒るかとフィリンは思った。
 その場に泣き崩れるかとも。
 どちらでもなかった。
「フィリン……優しいんだね、君は」
「私が!? どうしたらそういう発想になんだ」
「そうやって憎まれ役になろうとしている。嬉しいよ、僕のためにそこまでしてくれて。そして謝る。君に悪役を演じさせてしまって。……僕は君に対しては、あまりに力不足だった」
 パオロの目尻には涙があったが、爽やかな、爽やかすぎるほどの笑みがあった。
「負け惜しみかもしれないけれど、僕は君のおかげで成長できたと思いたい。ありがとうフィリン、そして、さよなら」
「パオロ、覚えておいて」
 フィリンはほほえんだ。演技ではなく心から。
「言葉より逞しくなりなさい」
「努力するよ」
 告げてパオロは立ち去った。
 振り返ることもなかった。 


 



課題評価
課題経験:22
課題報酬:600
燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ元ッ旦
執筆:桂木京介 GM


《燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ元ッ旦》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2022-01-09 00:12:25
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。

わたしはユリ先生に会って、怪獣王女ドーラさんの話をしようと思うわ。
わたし一人で行くのもいいし、誰か一緒になる事もOKよ。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 2) 2022-01-09 00:34:34
武神・無双コースのルネサンス、朱璃・拝と申します。どうぞよろしくお願いしますね。

具体的にまだ何をしようというのは考え中ですが、コルネ先生とお話ししようかと思っておりますわ。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 3) 2022-01-09 08:08:21
あけましておめでとうございます…でいいんだっけ?
勇者・英雄コースのフィリンよ。本年もよろしくお願いします。

こういう時、校長はいないのよね…リーベラントからもお誘いが来てるけど、どうしたものかしら。
(ネビュラロン先生か、リーベラントでパオロ君のところにいっていると思います)

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 4) 2022-01-09 14:32:28
賢者・導師コースのクロス・アガツマだ、よろしく頼む。
それと、あけましておめでとう。

以前いいところで終わったので、またコルネ先生のところに顔を出す予定だ。
なにはともあれ、今はつかの間の平和というものを謳歌しよう。

《甲冑マラソン覇者》 朱璃・拝 (No 5) 2022-01-14 20:39:28
コルネ先生とお話しようかと思いましたが、やはり里帰りする事にいたしますわ。