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さようなら怪獣王女~霊玉のゆくえ


ストーリー Story

 老人の名を、仮に【ガリクソン】(八十歳)としておこう。
 ガリクソンは行商人である。両天秤のかごをかつぎ毎日のように、峠を越えて荷を運ぶ。杉の古木のような細い体だが、身は鉄芯がはいっているようにまっすぐで靱(つよ)い。腰は曲がるどころか若者よりしゃんとしており、よくしなる鞭のようにきびきびと歩む。けれどさすがにこのごろは一息での山越えはきつくなった。なのでガリクソンは途中でいつも、見晴らしの良い中腹にて小休止をとることにしている。
 今日も通例通りお気に入りの平らな岩に腰を落ち着けたところで、ガリクソンの顔に笑みがこぼれた。
「いつぞやの嬢ちゃんか」
 彼の眼前の茂みから、小さな人影がまろび出たのだった。
 十歳くらいの童女(わらわめ)だ。桃色のガウンに金のベルト、やはりゴールドのまぶしいブーツ、頭には王冠が載っている。
 ガリクソンは知っている。【怪獣王女】というのだそうだ。本名は略して【ドーラ・ゴーリキ】らしい。
 前回彼が遭遇したときとは、まるで様子が異なっていた。前はもっと、大胆不敵の勢いだった。けれども今日の怪獣王女は、塩もみした水菜のようではないか。
「この前は……すまなんだ」
 申し訳なさげに王女は言った。以前少女はガリクソンに対し、言いがかりをつけ狼藉をはたらいたことがあった。
「気にせんでいい」
 寛大にも老人はそう答えた。
「事情は聞いた。それより探し物は見つかったのかい?」
 あるにはあったと王女は言う。
「あのときは本当に、暴れてすまなんだ」
 ふたたび深々とドーラは頭を下げたのである。
 老人はふおふおと笑った。
「わしも若い時分は荒(あら)くれておったものじゃ。怒ってはおらんよ」
 どうして今になって、とガリクソン老人はたずねた。
「パパ上の教えを思い出したのじゃ。自分のあやまちを認めることができるかどうか、それが人間の価値を決めると」
「そうかね」
 老人はうなずいたが、今度は笑ってはいなかった。
「……お嬢ちゃん、ひょっとするとあんた、早まったことをするつもりじゃないのか。たとえば、この世からおさらばするとか」
 目が光る。老人はドーラの口調からただならぬものを感じ取ったのである。
 ドーラが身をこわばらせるのがわかった。
「理由は、後で聞く。相談にも乗ろう」
 老人は立ち上がるともろ肌脱ぎ、筋骨隆々たる肉体をさらす。
「じゃがまず、愚行を止めねばなるまい」
 ガリクソンの眼前に炎の柱があがった。天に届かんばかりの高さだ。爆発的な熱風にガリクソンは吹き飛ばされ、錐揉みしながら宙を舞う、たっっぷり一秒ののち彼は、十数歩先の地に背をしたたかに打ち付けたのである。
「近づかんでくれ」
 ドーラは小さな卵を、何気なく放っただけだった。
「わちきは自分でかたをつける」
 老人は彼我の実力差を悟った。無念だが自分にあのお嬢を止めることはできまい。
 今自分にできるのは、危機を勇者の学校――フトゥールム・スクエアに知らせることだけだろう。
「嬢よ爺に聞かせよ! 何処(いずく)に向かう!?」
「……ズェスカ」
 ドーラは背を向けた。炎のむこうに遠ざかっていく。



 店先にさがる提灯(ちょうちん)には、『そば』の文字が筆でしたためられていた。
 提灯はやぶれ、あんぐりと口をあけた物の怪のようになっている。
 戸を開けたところで内部は無人である。テーブルには灰色のホコリがたまり、丸椅子とのあいだには網のように蜘蛛の巣が張っている。
 半人半獣、そう呼ぶしかない男がよろめきながら店に入った。怪異は右半身にとりわけ顕著だ。腕や首は銀色の毛皮におおわれ、右目は狼のそれである。伸び放題の頬ひげが体毛と一体化していた。
 男は椅子につまづき、大きな木のテーブルに倒れこむ。
 うつろな目で天井を見上げたまま、【ルガル・ラッセル】はかすれ声でうめく。
「このまんまケダモノになっちまうくらいなら」
 くたばっちまうほうが、と言いかけて目を閉じる。
 長らく食事を取っていない。飢えと体の痛みが、かろうじてルガルに理性をとどめていた。
 記憶が定かではない。わからない。どうやってこの地――ズェスカにまでたどりつくことができたのか。
 ズェスカはかつての観光地だ。乾燥地帯にあるにもかかわらず天然の温泉が湧き、観光客むけの宿がつらなって小さな街を形成していた。それなりに賑わっていた時期もあった。
 しかし時代がすすむにつれ、地道な調査や掘削によって世界各地に温泉地は増えた。ズェスカは都会から遠く、同じ温泉地でもトルミンのような歴史もなく、そもそも温泉以外の目玉にとぼしいこともあって近年は急速に寂れつつあった。
 数ヶ月前、その温泉が枯れたことにより街は完全に息の根をたたれた。街の住民はすべて土地を離れ、廃墟だけが残されたのである。
 怪獣王女ドーラ・ゴーリキが火の霊玉を入手したのはズェスカの地だ。現在、闇の呪いで獣化のすすむルガルには、どうしても火の霊玉が必要だ。呪いを中和し消し去るためには、無限とも言われる霊玉の魔力を受けなくてはならない。
 バグシュタット、トロメイア、フトゥールム・スクエア周辺からレゼント、アルチェにグラヌーゼ……ルガルはドーラの足取りを追った。だがいつも見当ちがいだったり、近づくことができたとしても、すんでのところで追いつくことができなかった。
 しかし今度こそ望みはある。ドーラらしき少女がズェスカ近郊で目撃されたのだ。
 ここはすべてのはじまりの地だ。ひとめぐりして元に戻ったとも言える。
 奪う。
 娘から火の霊玉を奪う。
 生きるためだ。ことによればひきずり出さねばならないだろう。生温かな血にまみれた心臓を。
 自分にそれができるか、まだルガルにはわからない。



 最初に言っておく、と【ガスペロ・シュターゼ】は言った。
「私は君を信用していない。エスメラルダ・アロスティア」
「あーら」
 魔族【エスメ・アロスティア】はうふふふと笑った。
「結構ですことよ、おばさま」
 扇子を口元にあてニヤニヤした表情を隠す。扇子は孔雀柄だがエスメ自身も、クジャクのように派手な身なりである。牡丹と炎柄の真っ赤なドレス、拳ふたつ分ほども高さのあるヒール履き。長い髪はプラチナで、ところどころオレンジのアクセントを入れている。狐のルネサンスだが異様な部分があった。尾が九本あるのだ。
「おば……!」
 ガスペロが怒りのこもった目をむけるも、エスメは悠然とこれを受け流した。
「無礼な呼び方はやめてもらおう」
「事実ですことよ」
「無礼だ」
「じ・じ・つっ」
 ガスペロは拳をにぎりしめるも、内輪もめする愚を悟ってか行使は控えた。
 紫のローブを着たガスペロは、でっぷりと肥った中年女性の姿をしていた。ガスペロの本体は黒い霧のような気体であり、力をふるうためには依代(よりしろ)となる人間の体を乗っ取らねばならない。だが適性のある相手でなければ定着できず、すぐに抜け落ちてしまうのだ。セントリアでの敗北後ようやく見つけた適性のある肉体が、辻占い師をしていたこの女性だったのである。
「……究極の目標は異なるだろう。だが魔王様の復活を目指しているのは同じだ。それまでは、協力しあう必要があると思わないかね?」
「同意しますわ」
 強い風が吹いている。黄色い砂ぼこりが舞い、薄黒い廃墟の表面をなでている。  
 エスメは鼻を動かし、かたむいた家のひとつに視線をすべらせた。戸口が開け放たれている。
 軒先に破れた提灯がかけてあった。『そば』と書かれている。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 5日 出発日 2022-03-24

難易度 難しい 報酬 多い 完成予定 2022-04-03

登場人物 6/6 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《猫の友》パーシア・セントレジャー
 リバイバル Lv19 / 王様・貴族 Rank 1
かなり古い王朝の王族の娘。 とは言っても、すでに国は滅び、王城は朽ち果てた遺跡と化している上、妾腹の生まれ故に生前は疎まれる存在であったが。 と、学園の研究者から自身の出自を告げられた過去の亡霊。 生前が望まれない存在だったせいか、生き残るために計算高くなったが、己の務めは弁えていた。 美しく長い黒髪は羨望の対象だったが、それ故に妬まれたので、自分の髪の色は好きではない。 一族の他の者は金髪だったせいか、心ない者からは、 「我が王家は黄金の獅子と讃えられる血筋。それなのに、どこぞから不吉な黒猫が紛れ込んだ」 等と揶揄されていた。 身長は150cm後半。 スレンダーな体型でCクラスらしい。 安息日の晩餐とともにいただく、一杯の葡萄酒がささやかな贅沢。 目立たなく生きるのが一番と思っている。
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《大空の君臨者》ビャッカ・リョウラン
 ドラゴニア Lv22 / 勇者・英雄 Rank 1
とある田舎地方を治め守護するリョウラン家の令嬢。 養子で血の繋がりはないが親子同然に育てられ、 兄弟姉妹との関係も良好でとても仲が良い。 武術に造詣の深い家系で皆何かしらの武術を学んでおり、 自身も幼い頃から剣の修練を続けてきた。 性格は、明るく真面目で頑張り屋。実直で曲がった事が嫌い。 幼児体系で舌足らず、優柔不断で迷うことも多く、 容姿と相まって子供っぽく見られがちだが、 こうと決めたら逃げず折れず貫き通す信念を持っている。 座右の銘は「日々精進」「逃げず折れず諦めず」 食欲は旺盛。食べた分は動き、そして動いた分を食べる。 好き嫌いは特にないが、さすがにゲテモノは苦手。 お酒はそれなりに飲めて、あまり酔っ払わない。 料理の腕前はごく普通に自炊が出来る程度。 趣味は武術関連全般。 鍛錬したり、武術で語り合ったり、観戦したり、腕試ししたり。 剣が一番好みだが他の分野も興味がある。 コンプレックスは身長の低さ。 年の離れた義妹にまで追い抜かれたのはショックだったらしい。 マスコット扱いしないで欲しい。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に

解説 Explan

 高い魔力を秘めた九つの霊玉は、二千年以上前に魔王を封印した勇者の魂が転生した物質であり、魔王復活のキーアイテムです。
 対魔王陣営は大半の霊玉の確保に成功しました。
 なお行方不明であった火の霊玉は、魔族ドーラ・ゴーリキ(怪獣王女と名乗っていた少女)の手にあることが判明しています。ガイドの時点では明らかになっていませんが、火の霊玉はドーラの心臓と一体化しているのです。
 ドーラはある目的をもってズェスカ(拙作『【メイルストラムの終焉】Red』に登場した地方)にあらわれました。一匹狼ルガル、そしてガスペロ&エスメの二大幹部を擁する魔王軍もズェスカに到着しています。
 少し遅れて皆さんも、ガリクソン老人の情報をたよりに同地入りしました。
 ドーラ、いや、火の霊玉をめぐる三つ巴の争いがはじまろうとしています。
 霊玉を得るのは魔王軍かルガルか、それとも皆さんか? あるいはドーラはまた姿を消すのか!?
 廃墟の街から地下道へ、決戦のときは目の前に迫っています!

《目的》
 火の霊玉を確保することです。ドーラやルガルの生死、魔王軍を撃破できたかどうかは成否に関係しません。

《舞台》
 ズェスカ地方の宿場町は人口数百人程度の集落でした。無計画に作られた街ゆえ、古い建物がならんでおり迷路のような構造になっています。住民は誰もいないのでいくら壊しても問題ありません。
 過去『【メイルストラムの終焉】Red』に登場した地下道は、半分近くが瓦礫に埋もれています。ですがその奥部をドーラは目指しているようです。

《戦力》
 エスメ、ガスペロともに単体で皆さん全員を相手にできるほどの手練れです。
 ルガルも必死ですのでこれまで以上の強さを発揮するでしょう。暴走状態のドーラについては未知数ですが、以前のレベルにはないはずです。
 ただし本作は、学園教師【ユリ・ネオネ】が同行します。ユリをどう使うかが成功の鍵になるかもしれません。

(作者コメント欄につづきます)


作者コメント Comment
【ドーラ・ゴーリキ】心臓が霊玉と一体化して暴走状態となり、強烈な炎を操ります。街に隣接した岩山の地下で、ある目的を達成しようとしています。
【ルガル・ラッセル】身の呪いをとくためドーラの心臓を求めています。魔王軍とは決別しており、とくにガスペロには容赦しません。理性は崩壊寸前で、手負いの獣の凶暴さを発揮します。
【ガスペロ・シュターゼ】見た目に反し身軽で金剛力の持ち主です。影のような兵士を多数引き連れています。影兵は無生物で単純攻撃しかできません。
【エスメ・アロスティア】ガスペロと組むことに不満そうです。催眠効果をもつ黄金の眼、数十歩の距離まで伸び、刃の硬度をもつ九本の尾を持ちます。強い意志の力がある人間に彼女の催眠術は効きません。
【ユリ・ネオネ】学園教師。ルガルか魔王軍幹部、ドーラのうち一人なら単身支えきれる実力があります。みなさんの指示に従います。

 次はリザルトで会いましょう!



個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
今回はドーラさんとの関係修復を目指して頑張る
ルガルにも魔王軍にもドーラさんの命は奪わせない
自分の命に代えてもドーラさんを守り
彼女とそのお父さんが求めた魔族が迫害されない世界の実現を目指す

ズェスカについては以前に訪れた時の記憶と事前調査で
施設や道路、地形などを把握

不意打ちや待ち伏せなどには充分警戒

危険な場所など味方にあらかじめ知らせておく

特に地下道については以前の記憶と合わせて効率と安全の両立を目指す

パーシア・セントレジャー 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
ドーラさんと火の霊玉の確保

◆方針
魔王軍撃破よりも、ドーラさんと霊玉確保を優先
魔王軍は足止め、撃退等の必要あれば応戦
ドーラさん、ルガルとは共闘のかたちに持っていきたい

◆追跡
今のドーラさんは、かなりの魔力量のはず
第六感を活かし魔法感知で大きな魔力を探り追跡

◆説得
この場で霊玉を切り離したら、魔王軍が即座に奪いに来る
魔王軍の妨害がなくなったら、必要なら霊玉を切り離そう

もしズェスカの再生を願うなら、自分達も思いは同じ
魔王の脅威を除いたら協力したい

等、ドーラさんの説得を試みる

◆応戦
前衛に騎士叙勲を付与し、切れたら13王女の親任を付与
その後は戦況を注視しつつリ12、リ13で味方を援護
こちらの戦力が薄いところを優先し援護しつつ、特に、ガスペロがフリーにならないよう留意

ルガル、ドーラさんと共闘がなった場合や、状況が動いて押し切るチャンスが来たり、強引に囲みを破る等の必要があれば、機をみて即座に突撃命令

フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
対ルガル特化。
可能な限り正気を戻し完全解決を目指し、最低でも自死や殺害はさせない。
因縁は勿論、他の人をおをドーラ対応やガスペロたち強敵に専念させて全体利益にもなるはず

●事前準備
もし可能なら『仮面』について学園で保管しているのを持ち出せないか
自分が使って一時でもルガルを鎮静化できないか

●行動
検討した解決案の一つ
『霊玉が暴走しているドーラからルガルに魔力を移し、暴走と呪いを相殺できないか?』
を元に、ルガルの足止めと誘導。
対ドーラでも同じ考えの人がいれば協力。

暴走状態的に以前の肌を重ねる(隠語)手段は使えないと見て(向こうが押し倒しにくるなら躊躇なく試しますが)
ルガルからの攻撃は『部位破壊』で攻撃力を削ぎつつ『衝撃享受』『不屈の心』で耐え、大声で自分とルガルの名を呼びかけ組みついて行動を妨害。
ガスペロ側に向かうなら共闘するよう動き、ルガルを守りつつ消耗を待つ。

ドーラ側がうまく魔力を移せそうなら指示位置にルガルを誘導…あるいは引きずっていく。

装備の特殊効果はすべて使い、最後まで諦めず挑む

クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:256 = 171全体 + 85個別
獲得報酬:9000 = 6000全体 + 3000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
ユリ先生には基本ガスペロを抑えてもらい、もしルガルが参戦または仲間が合流できたらエスメを狙ってもらう

俺はガスペロと連れている影兵の抑えに回る。ドーラ君とルガルの説得は皆を信じよう
ドーラ君と関連付けてシュバルツの事も聞くなどして会話による情報収集と時間稼ぎを試みる
魔王の偉大さや思想を語らせると饒舌になりそうだし、人心掌握学も活かして会話を繋げてみよう

戦闘が始まってしまったら、フォースソウルとシーソルブを使い、ガスペロと影兵、また可能な場合はエスメも巻き込んで力を削いでいき、より勢いを抑え込みやすくしよう
また、ガスペロへは逢魔抱擁で少しずつ肉体との適合を崩していけないか試してみる
もし奴を倒す好機がある場合はヒドガトルであのガスを灼き尽くそう

それと、貴人君が危うい場合はスピット・レシールで守護する。エスメが侮れないのは知っている
ユリ先生の方は、俺が彼女に動きを合わせ敵へのアン・デ・フィアで援護
彼女とドーラ君との擦れ違いを解く為にも双方には生きてもらわねば
伝えたいことは言葉で伝えてあげてください

ビャッカ・リョウラン 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:513 = 171全体 + 342個別
獲得報酬:18000 = 6000全体 + 12000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
■目的
ドーラを止める!生きさせる!

■行動
兎に角、ドーラに追いつく。
カウンタッグに騎乗して駆けて、ドーラの向かう先を目指す。
見つけたら、先回って立ちはだかるよ。

まずは言葉で止める。
とは言えいじっぱりなドーラのことだから聞いてくれないかも。
力尽くで押し通ろうとするなら、受けて立つ。
今度は通さないよ!もう二度とドーラが居なくならないようにね!

ドーラの攻撃を部分硬質化と流水の構えで受け流して耐えるよ。
熱風で吹き飛ばされたときは、龍の翼で体勢を立て直して構え直す。
そして隙あらば、二連斬りで反撃
種族的に火には強いけど、霊珠の力は強力なはず。
それでも、私は引かない!どんなにダメージを受けても立ちはだかり続ける!
逃げず折れず諦めず、だよ!

最後は必殺技で勝負だよ。
龍の大翼を広げて全速力で吶喊、命の輝きでドーラの攻撃を強引に突破して、
基本剣術で狙いを定めた必殺の耀閃斬(峰打ち)で一閃する。
この一刀に全てを込めて…疾風が如く、雷光が如く、そして雲耀にまで至れ!
行くよ!ドーラ!チェストォォォーーーーッ!!!

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
怪獣王女もとい、ドーラくんの目撃情報があったらしいな
それももともと火の霊玉の安置場所であるズェスカで
何やらただ事ではない雰囲気だったそうだが………
とりあえず、話を聞きに行こう
彼女はオレ達含め色々と狙われている………心配だ

行動指針として霊玉とドーラくんの確保
最悪ドーラくんは冷静じゃないと思うので本人の意志を無視して保護
切羽詰まったところで会話してもしょうがない
落ち着いた所で会話したいものだよ
自分ができる行動としてはエスメの足止め
ヤツ自身の戦闘能力もアレだがやっぱり最も警戒するのは強力な催眠だろう
対策を持って足止めしよう

アドリブA、絡み大歓迎

リザルト Result

◆I
 煉瓦壁を爪で擦(す)るような、赤茶色の砂が絶え間なく吹きつけてくる。
 強い風がやまない。砂塵もやまない。【仁和・貴人】の仮面の継ぎ目でさえも、粗い砂にうずめられていた。
 腕で視界を防ぎながら貴人は咳きこんだ。
「参ったな……これが本当にあのズェスカの宿場町か?」
 宿場町は貴人の記憶とは姿を一変させていた。
「まるで廃墟だ。廃墟の街だな」
「荒れたね」
 と【クロス・アガツマ】が応じた。砂を含んだ風がクロスの体を吹き抜けてゆく。
「前に訪れたときもたいがい寂れていたが……ここまでではなかった」
 家屋も主を失えば急速に朽ちるという。いわんや集落をや、といったところか。
 晩夏に訪れたズェスカの集落は、閑散としながらも炊煙があがり、のぼりをだしている宿や店もぽつぽつとあった。平均年齢高めながら住民も目にしたし、野菜を運ぶぼろぼろの牛車ともすれちがったものだ。
 ところが現在の集落たるやまるで遺跡だ。家屋は崩れ往来には枯れ草があふれている。瓦礫らしき黒い積み石は、倒壊した墓碑を想起させた。
(いわば街全体が墓だな)
 クロスは思ったが、不吉に感じ口には出さなかった。
「私は、ここを訪れるのははじめてだけど」
 腕をさすりながら【パーシア・セントレジャー】が言う。
「なんだか寒々しいわ。風がおさまるまでどこかで小休止しない?」
 パーシアはリバイバルだ。純然たる霊的存在ゆえ、理論上暑さ寒さは感じないとされている。しかしパーシアにも、感覚としての寒気はたしかにあった。荒涼とした平原にうち捨てられたような寒さだ。ありえないことだが、黒髪にジャリジャリした砂粒がからむようにも感じている。
「あの店、見覚えがあるよ」
 ゆくてを指すのは【ビャッカ・リョウラン】だ。ビャッカはドラゴニアの翼を折りたたみ、できるだけ風の抵抗を受けないようにしていた。
「まちがいなさそう。ほら、『そば』って書いてある」
「あそこね」
 目をすがめて【フィリン・スタンテッド】が声をあげた。それにしても砂がひどい。
 飲食店だ。といってもメニューらしいものはそばだけ、黄色がかった白い麺で、独特の香りがする黒いつゆにつけて食べる。
 天にも昇るうまさということはなかったが、なんとも忘れがたい風味だった。できればもう一度食べてみたいとフィリンは思う。だが昨夏ここを訪れた時点で、すでに店は完全閉店の準備をしていたのだ。願いがかなうことはあるまい。
「もう無人でしょうけどね」
「でも風よけにはなるんじゃない?」
 入らない? と【エリカ・エルオンタリエ】が言った。若草色のマントがはげしくはためいている。黄金の髪も大時化(おおしけ)の海のごとく風に翻弄されていた。
 隠身術にたけたフィリン、クロスを先頭にしてエリカとパーシアがつづく。後方を守るのはビャッカと貴人だ。六人を追い立てるように風は勢いを増す。
 貴人が戸を開けた。
「邪魔させてもらう」
 言う必要もなかろうが、無言で入るのもきまりが悪い。
 全員入ってビャッカが戸を閉めると、風鳴りはぐんと小さくなった。
「砂がないだけでありがたいな」
 クロスは息をつく。フィリンもビャッカも衣服の砂をはたき落としている。
「暗いわね」
 パーシアがキラキラ石を小袋から取り出した。暖かみのある光が屋内を照らす。
 中戸を開けると腰に佩(は)いた剣に手をかけ、いち早く奥までフィリンが入っていくも間もなく戻ってきた。
「やっぱり無人よ」
 すでに剣からは手をはなしている。
 だろうなと応じて貴人は椅子を引きテーブル脇に座った。黒く塗った木製、十二人はかけられそうな大テーブルだ。やれやれ、と貴人は両肘を卓に乗せようとしたが、
「動かないで!」
 そのまま、とパーシアが声を上げたので、カマキリのような姿勢で動きを止めた。
「え? あ……どうした?」
「ごめんね。単なる第六感、だけど――」
 パーシアはテーブルにキラキラ石を向ける。顔を近づけて目を細めた。
「誰かこの場所に立ち入った気がするの。それもつい最近」
 外を吹き荒れる砂がテーブルに乗っているのだ。もちろん戸の隙間から入ったものかもしれない。だが多いのではとパーシアは感じていた。
 卓の下から声がした。
「そのようね」
 このときすでに、エリカはテーブル下にもぐりこんでいたのである。
「椅子を動かした痕跡があるわ。まだ新しい」
 そうとわかれば行動の早い六人だった。疲れも忘れ手分けして証拠をさがす。
「見てこれを」 
 やがてビャッカが足跡を見つけた。埃の上に残されたものだ。
「ずいぶん大きいな」
 ビャッカに答えたのはクロスだ。自分の足と比較して首をかしげた。
「成人男性としても大きい部類に入るだろう」
 怪獣王女こと【ドーラ・ゴーリキ】は小柄である。彼女が残したものでないのはたしかだ。ビャッカはけわしい表情となる。
「ドーラがズェスカに来ているのなら、ドーラの追っ手も来ていておかしくないよ。……魔王軍だと思う?」
「可能性はある」
 クロスはうなずいた。ドーラの情報をつかんでいるのが学園だけだと信じる理由はない。
 デカいヤツってことか? と応じたのは貴人である。
「魔王軍の幹部だとしたら、あのガス人間……【ガスペロ・シュターゼ】が大ぶりの男に憑依してるとか? いや、正体は掃除機っていう【ヌル・スチュワート】のやつも背は高かったな」
「待って」
 フィリンが告げた。
「追っているのが魔王軍とは限らないわ」
 静かな声だった。しかしフィリンはその一言だけで、全員の注目を集めていた。
 ドーラを追っている人物が他にあるとすれば――。
 この場の全員が、その男のことを知っていた。
 しっ、と言うかわりにエリカが片手をあげた。
「誰かいる……!」
 エリカは戸口に体をつけ、外の様子をうかがっていたのだった。パーシアはキラキラ石を袋に収納した。
 外の砂嵐はつづいている。扉の合わせ目から見える光景も、赤茶けた渦をのぞいているかのようだ。
 しかし砂色の奔流のただなかに、あきらかに異なる色が混じっていた。
 黒。
 目を凝らして見てもやはり黒。黒い姿だった。
 人型だが人間ではないことは明らかだ。衣服も靴もあったものではない。晴れた日の濃い影が、地面から立ち上がったとしたらこのように見えるのではないか。すうっと細く背が高く、胴が極端に短い反面、手足はザトウムシのごとくひょろ長い。手に持っている剣も影そのものである。瓜のように長い頭部、その目にあたる部分から、ハンカチほどの白い布がさがっている。布は風にあおられ激しく揺れているが、ちぎれ飛びはしないらしい。
「影兵(シャドウトルーパー)……ガスペロの手駒か」
 クロスがつぶやいた。再会を喜びたい相手ではない。
「一体じゃないわね、あそこにもいる」
 パーシアは入り口とは反対方向、明かり取りの小窓をあけて外を見ている。
 裏口の前の通路を、別の影兵が横切っていくのが見えた。こちらは槍で武装している。
「私たちの存在に気づいている様子はないわ。兵を散開させて宿場町をさぐらせているようね」
 パーシアは目を細めた。シャドウトルーパーの歩みがふらついている。無機的な存在に見えるが、彼らとて砂嵐の影響はうけているのだろう。
 ビャッカは背負った妖刀に手を伸ばす。親指の腹で柄の装飾をなぞった。
「どうする? 飛び出して戦う? できれば避けたいけどね」
 少々の備えが敵にあったとしても、不意をつけば容易に突破できよう。しかしその反面、魔王軍にこちらの存在を知らせることになる。ズェスカのどこかにいるとおぼしきドーラにも。
「ビャッカさんに賛成、交戦はなるだけ回避したいわ」
 見て、とエリカは地図をひろげてテーブルに置く。以前に訪れたときの記憶、それに事前調査で得た情報をつきあわせて自作したものだ。
「敵の目を回避しつつ最短ルートをたどって洞窟内にある温泉……いえ、『元温泉』のまちがいね……の源を目指さない? きっとドーラさんも、同じ場所を目的地にしていると思うから」
 指先で地図をなぞりながらエリカは説明した。裏口から出て、できるだけ身をさらさずに網目状の街路を抜け山肌の洞窟までたどりつく。魔王軍に感づかれずに洞窟に入ることができれば最良だ。
 真の狙いこそ不明とはいえ、ドーラが向かっているのは源泉、かつて火の霊玉が鎮座していた箇所だと彼らは予想していた。
 最近ドーラと遭遇した【ガリクソン】翁によれば、彼女はおそらく霊玉と融合し、その力を持てあましている様子だったという。思い詰めたような表情だったとも聞いた。
「ドーラくんは何やらただごとではない雰囲気だったそうだな……。彼女はオレたち含め色々と狙われている………心配だ」
 早まったことをしなければいいが、という思いを呑みこみ、貴人はあごに手を当てた。急ぐ必要があるだろう。
「いまなら出られそうよ。影兵は遠ざかっていったわ」
 裏口側からパーシアが知らせた。
「こっちもオーケー」
 ビャッカは正面入口から目を凝らす。立ち去った兵が戻る様子はない。
「考えがあるんだけど」
 フィリンが言った。
「正面の戸は開け放していかない? 私たちは裏口から出る。開いた扉を見つければガスペロの兵はきっとこの店と周辺を調べる」
「どれだけ隠密行動を図っても、小さな街のことだ。いずれ見つかるリスクはある……ならばここで足止めして時間稼ぎというわけか」
 悪くないなとクロスが最初に賛意を示し、全員一致を受けてビャッカは正面の戸を開放したのである。
「一気にいくよ。えい!」
 轟音をあげ砂と風が吹きこんでくる。烈風は椅子を倒し足跡を押し流す。戸板が破れた。灯台が落ちてがちゃんと音を立てた。

◆II
 一時の狂奔だったというのか、やがて風は落ち着きを取り戻し、強風ではあるが大荒れではなくなっていた。もちろん砂もだ。
 視界が良好になった分、発見されるおそれも倍増したといえる。実際、影兵から身をひそめねばならぬ場面も何度かあった。
 それでも失敗することはなかったものの、じき洞窟だという地点まで来てフィリンはため息をついた。
「……ままならないものね」
 建物の影に身をひそめ行く手を見やる。大量の影兵が、温泉源へとつづく洞窟へと集結を開始しているのだ。行進というよりは駆け足、いや、影兵なりの疾走というべきか。誰一人声を上げないだけに不気味ではあった。洞窟付近で何かあったらしい。
 あれをすり抜けて洞窟に入るのは不可能だ。洞窟に忍び込むという作戦は破綻したことになる。
 それにしても兵の動きは慌ただしい。なかにはクロスのいる真横を通過した兵もあったが気づかなかった。
(連中の感覚があんがい鈍いのかもしれないが……それだけ緊急事態ということだろうな)
 魔王軍の網にかかった者がいるのだ。
「!」
 瞬間、落雷でもあったかとパーシアは目を疑った。けれどすぐに真相を知る。
「すごい勢いね……」
 爆発音とともに炎の柱があがったのだった。紅蓮の火柱は垂直にのび天を焦がした。大きい。膨張する赤色(せきしょく)がまばゆいほどだ。ひと抱えほどはあるのではないか。
「あれが、現在のドーラくんの力なのか」
 貴人は舌を巻く。火の霊玉の力と思ってまちがいあるまい。
 炎の柱はこれにとどまらない。たてつづけに爆音をたてた。
 だが圧倒的にドーラが勝っているわけではないらしい。
「うぬっ!」
 という叫びが聞こえた気がする。貴人にも聞き覚えのある声だ。調子こそちがうが、甘旨豚骨ラーメンを一口すすり『なんとこれは!?』とうめいた声と同じだ。
「ドーラを助けに行こう!」
 ビャッカは即断した。ドーラが源泉までたどりつく前に追いつき、魔王軍を蹴散らして彼女の身を確保する。
 それまで窮屈げに閉じていたビャッカの翼が、はじかれたように左右にひらいた。向かい風はあるがこれくらいなら平気だ。力強く羽ばたく。
 爆発的な推力がビャッカの体を押し出した。直後、騎獣カウンタッグが天空より駆けつけビャッカを背に乗せた。人騎一体となり疾駆する。
 先陣をきるビャッカを一本の矢の鏃(やじり)にみたてれば、クロス、エリカ、パーシアは矢の骨格たる箆(の)、両翼をかためる貴人とフィリンが羽根に相当しようか。
 影の兵士は背後からの急迫に即応できない。あるものは刃に、あるものは魔弾に討たれ、声なき悲鳴をあげて四散した。影が消えて残るのは顔にあった白い布のみ、その場に落ちて砂塵にまみれる。
 されど影兵は数が多い。六人が一本の矢だとしても、矢は空を駆けるのではなく黒い霧の中を飛んでいるかのごとき有様だった。百、いやその倍はいようか、声ださぬ兵たちはゆくてを阻まんとする。斬っても斬ってもきりがない。
「見えた!」
 黒い海のさきに桃色の姿がある。少女だ。特徴的なモコモコつきガウン、ブロンドヘアの頭に王冠、ドーラはガウンをひるがえしブロンドヘアを風に泳がせ、ビャッカには見覚えのない人物と交戦している。
 ドーラが卵を投げた。殻が砕けて炎の柱があがった。真っ赤な火焔はシャドウトルーパー数体を巻きこむも、肝心の標的には命中していない。標的は中年女性のようだ。裕福な商家の夫人といった姿、ふくよかと穏当な表現もできるが、贅肉のかたまりというほうが適切だ。体型はもちろん服装も、まったくもって動きやすそうに見えない。しかも首に真珠の首飾り数本をじゃらじゃらとかけているというのに、この女は猿のごとく敏捷にドーラの攻撃をかわしているのだ。
「ドーラ!」
 ビャッカの気持ちを理解したか、カウンタッグが加速する。
「ビャッカか!?」
 ドーラが足を止め顔を上げた。
 これはドーラにとって悪手だった。次の瞬間ドーラの顔面に、恐るべき商家夫人の拳がめりこんだからだ。
 怪獣王女の肉体は大地にたたきつけられた。横倒しになったドーラの頭を中心に、大地に放射状の亀裂が走る。
 ビャッカの翼が後方に空気を後方に送った。強く。
 騎獣の背中から閃光のように飛ぶ。
(あの敵……あの目、外見通りの人間じゃないよ!)
 肉体を持たぬ魔王軍幹部ガスペロ・シュターゼに相違ない。中年女性の両眼にあふれる黒い瘴気は、尋常の人間ではありえないものだ。
 ガスペロはビャッカの接近に気づいているはずだ。しかしガスペロは視線を走らせることすらせず、
「もらった!」
 組み伏せたドーラの喉に左手をかけ、右手を大きく振り上げた。
 心臓を直接抜き取ろうというのか。
(届かない!)
 伸ばすビャッカの手とドーラの体には、なお十数歩の距離がある。
 飛翔なら一息の間隔、だがその一息より迅(はや)くガスペロは目的を達成するだろう。
(抵抗してドーラ……目を開けて抵抗して!)
 ビャッカは祈るもドーラは、受け入れたかのごとく目を閉じている。
 ガスペロの腕が振り下ろされた。
 だが、商家夫人の腕は行動を完遂できなかった。
 魔王軍幹部の口から低い咆哮が漏れた。手の甲に鋭い刃が突き刺さっている。手のひらからは三角形の刃先が飛びだしていた。
 苦無(くない)だ。両刃の飛び道具である。ビャッカも、ガスペロも飛来元を探した。
「間に合った」
 紫のボディスーツ、紫のマフラー、ジャケットとマスクは漆黒、濃い青の髪をなびかせ、その人は洞窟につらなる岩山に姿を見せている。学園教師【ユリ・ネオネ】だ。
「ユリ先生――」
 ユリが来るという期待がエリカにはあった。ただ、ユリに逡巡があったことも想像はできた。
 エリカは知っている。ドーラにとってユリは父親の仇である。しかし殺害を依頼したのは、ほかならぬドーラの父自身なのだ。この背景をドーラは知らない。たとえ知っても、認めるかどうか。
 ユリの姿が見えていたのは一瞬だ。しばし平静を取り戻していた風が、ユリに呼ばれたかのように狂騒を再開したのだ。濃い砂が視界を埋める。
「しまった!」
 ガスペロが叫んだ。ガスペロの下敷きになった状態からドーラは抜けだし、洞窟へ転がりこんだのである。
 追わんとするガスペロの前にユリがたちふさがった。抜刀して斬りかかる。ガスペロは蛇のような声を漏らして跳びすさった。
 たどりついた学園生六人がガスペロを囲まんとするも、ユリは鋭い声をあげた。
「先に行って! ここは私が抑える!」
 ためらっている時間はない。
「お願いします!」
 即断しクロスは岩肌をのぼり洞窟にむかった。
「先生、あとで合流しましょう」
 横合いから出てきた影兵を斬り伏せフィリンは道を拓く。
 息を吹き返した大風が、なおも追いすがる影兵をひきはがす。
 ユリが行ったのか風の仕業か、最後に入り口をくぐった貴人の真後ろで洞窟の入り口は崩れ、埋まってしまったのだった。

◆III
 どこかから川の流れる音がする。
 外の戦いが嘘のように洞窟内は静かだった。
 キラキラ石の灯をたよりに一行は進んだ。
 霊玉が喪失して、巨大な変動があったとみえる。もともと行軍に楽な地形ではなかったものの、いっそうひどくなっているではないか。とがった岩がむきだしで、陥没した箇所、埋まった通路も少なくない。ややもすると足元に、深い穴が口を開けていたりする。肌ざわりもかつてとはちがった。前は蒸籠(せいろ)かと思うほど暑かったのに、いまではうぶ毛が凍りつきそうなほどに寒い。
「すぐにドーラさんに追いつけるかと思ったけど」
 難しそうねとエリカは言った。まるでアリの巣、洞窟内は立体迷路のような構造だったからだ。目をこらしてドーラの足取りをさぐるも、これといったものは見つからない。
 かといって魔法感知も無駄だった。たしかにパーシアは魔力を感じている。あちこちに。いや、あらゆる場所に。
(……どこもかしこも真っ赤ね)
 パーシアはため息をついた。この空間には魔力が充満しているのだ。目を閉じてもまぶたの裏が赤く点滅するほどである。濃厚な魔力の存在があらゆる方向に感じられ、ドーラの所在を検知できない。霊玉が戻ってきたと知って、ズェスカの山窟全体が活性化しているのだろうか。
「皆の意識を確認しておきたい」
 気をまぎれさせる意味もあってクロスは口を開いた。
「ドーラ君がこの洞窟を目指した理由はなんだと思う?」
 フィリンが応じる。
「彼女は霊玉の力を持てあましている様子らしいわね……あれほどほしがっていた力なのに。だからいまは、霊玉を捨てたいと考えているのかしら。この場所に」
「捨てるというより、返そうとしてるんじゃないかな」
 ビャッカが言った。老ガリクソンから聞いたドーラの言葉を念頭につづける。
「ドーラは、つぐないをしたいのかもしれない。自分が火の霊玉を奪ったことでズェスカの温泉は枯れてしまった――だから霊玉を返して、温泉をよみがえらせようと考えているのかも」
 そうねとパーシアがうなずいた。
「ドーラさんは『王女』を名乗っている。それが鍵なんじゃないかって気がするわ」
 話していれば気持ちが落ち着く。パーシアが感じる魔法的な圧力は減じていた。
「私も旧(ふる)い王族につらなる身、共感できるところがあるから。霊玉が喪われたせいで温泉は枯れ、ズェスカの人々の仕事は奪われた。ドーラさんの父上が立派な君主だったとしたら、民から真っ当な生業を奪うようなことは許さないでしょう。ドーラさん自身も、そこに思いいたって……」
 仮にも王族を名乗るのであれば、地位に甘んじふんぞり返っていていいはずがない。王族は民の支配者ではなく、民の僕(しもべ)たる存在なのだとパーシアは述べた。
「だけどさ」
 貴人が言った。
「いまのドーラ君って、霊玉と一体化しているって話だろ? 心臓が霊玉になってしまっているって……。だったら、霊玉を返すってことは自分の心臓をささげるってことにならないか?」
 だろうなとクロスが言う。
「俺は嫌いな表現だが、『死んでお詫びする』という心境かもしれない」
 クロスは眉間にしわを寄せていた。
「それだけは認めちゃだめよ。絶対!」
 エリカの声に力がこもっていた。
「統治者・王女としての責任を感じているのなら、生きてズェスカ再興のために尽くすべきでしょう。ドーラさんの命は守らなきゃならない。奪わせない。魔王軍にも、ルガルにも!」
 はっとしたようにエリカは黙った。
 ここまで、あえて告げずにきた名を口走ったと悟ったのだ。
 火の霊玉を追う勢力は三つあるはずだ。フトゥールム・スクエアに魔王軍、そしておそらくは【ルガル・ラッセル】も。闇の霊玉に呪われルガルは急激に獣人化が進行しているという。正気も失いつつあるらしい。
 彼の呪いを打ち消す手段、それが火の霊玉――ドーラの心臓である。
 ルガルはズェスカに来ているだろう。そしてドーラの心臓を奪おうとするだろう。
 しかし魔王復活を防ぐには、学園が火の霊玉を手にする必要がある。そもそもドーラを殺させるわけにはいかない。
 だがそれは、ルガルに死をもたらすことになりかねない。
(これからわたしたちは、命の選択をすることになるかもしれない)
 エリカは唇をかみしめている。
(ドーラさんを守り、ルガルを見捨てるという選択を)
 ルガルは学園の敵としてあらわれた。
 しかしその後、学園とルガルは和解とまではいかずとも、単純に敵味方と判じきれない間柄にあるのはたしかだ。結果的にそうなっただけではあるが、助け合い共闘する場面も一度ならずあった。
 そのルガルの命を捨て、ドーラの命を救う、そのような選択をできる権利が自分たちにあるのか。
 勇者として、適切な行動なのか。
(それに……ルガルは……)
 エリカは無言でフィリンを見た。
 フィリンがルガルを想っていることは、もはや公然の秘密である。
「わかってる」
 フィリンは視線をそらさない。
「任せてもらっていい? ルガルのことは、私がけじめをつけるから」
(誰かひとりでも異を唱えれば――)
 フィリンは我知らず拳をにぎりしめていた。手の内側に汗をかいている。
(――そのとき私は、どうするのだろう)
「任せるわ」
「きみに託すよ」
 しかしパーシアもビャッカも、
「正直、オレには決められないしな」
「難しい役目だと思うが、頼んだ」
 貴人もクロスもうなずいたのである。
「お願いね。わたしもあなたに賭けてみたい」
 もちろん、エリカも。
(命の選択なんてしない。ドーラさんもルガルも、救ってみせる)
 このメンバーならできるとエリカは信じる。

◆IV 
 洞窟内ゆえ外は見えないが、陽はすでに沈みかけているころだろう。それくらいの時間は経過しているはずだ。
 広大な空間に彼らは到着していた。
 急傾斜の坂を登る。角度にして二十度を越えている。
 道幅は広く、全員が横一列になっても歩けるほどだ。
 くわえて天井も高い。大声を出せば反響しそうだ。
 洞窟内にしては珍しく、光る苔が生い茂っている。天井や壁も同種の苔で覆われていた。滑らないよう、しっかりと踏みしめて進んだ。
 楽な地形ではないはずだが、不思議と貴人は落ち着いている。
「いよいよ、だな」
 顔を上げた。この地形には見覚えがあった。砂嵐を抜け魔窟を抜けようやくたどり着いたのだ。
 火の霊玉が安置してあった場所だ。霊玉が失われると同時に壁が崩落し埋まったと思っていたが、なんらかの形で修復を遂げたらしい。記憶にあるよりもずっと巨大に感じられた。
 岩を削った祭壇が見える。祭壇のすぐそばに、怪獣王女ドーラ・ゴーリキの姿も。
「追いつかれたか」
 ドーラはふりかえった。
「ギリギリセーフってところかしら」
 一同の気持ちを代表するようにパーシアが言う。しかし言葉とは裏腹に、パーシアはこうも考えていた。
(追いついてほしかった、というのがドーラさんの本音かもしれないわね。無意識にせよ)
 そうであってほしいとパーシアは願った。だとすれば、救える可能性はある。
 エリカが呼びかける。
「ドーラさん、わたしたちはあなたを止めに来たの」
「……むかし」
 ぽつりとドーラは言った。
「パパ上がわちきに教えてくれたのじゃ。自分のあやまちを認めることができるかどうか、それが人間の価値を決めると」
「うん、そうだよね」
 ビャッカが進み出た。
「お父さんに賛成だよ」
 でも、ともう一歩前に出る。
「だからといって死んで詫びるとか、そんな自己満足で馬鹿なことは止めて!」
 さっとドーラの顔色が変わった。
「コズミックエッグと火の霊玉は別の存在じゃった……コズミックエッグは、ずっと前からわちきの心臓だったのじゃ。ところがわちきの考えなしの行動によって、霊玉はわちきの心臓に吸い込まれひとつになってしもうた。わちきは……もう」
 ドーラが軽く手首をひねった。その瞬間ドーラの眼前に、炎の柱が吹き上がったのである。魔力が飽和したこの洞窟の地形効果か、卵を投げる必要すらなくなっていた。
「この通り! 正真正銘の怪獣になってしもうた! 破壊しか生み出せぬ怪獣に!」
 開けた口のなかも炎で燃えている。両眼にも真っ赤な火が宿っていた。
「わちきは魔王様と結婚したら幸せになれると思うておった。魔王様の力があれば平和な世の中が作れると思っておったわ……だがちがう! これが魔王様の……魔王の力なのだとしたら、わちきはこんな力ほしくない! 終わらせる! この地を、元の姿に戻す!」
 ドーラは台座に飛び乗った。
「いまのわちきにできるのはこれだけなのじゃ!」
 異様な光景が訪れた。たとえ魔法の心得がないものであっても、魔力が赤く具現化しはじめるのが見えただろう。学園生にとっては明白だ。ドーラを中心に魔力の渦が生まれようとしている。空間が膨張し、ゆがむ。これが錯覚だとしても、ドーラの左胸が盛り上がっているのはまちがいない。心臓の位置から赤い焔が吹きだしている。心臓を引き抜こうというのか。
「やめて!」
 無我夢中でビャッカはドーラに飛びつき、はがいじめにした。
「はなせビャッカ! こうするしかないのじゃ!」
「霊玉をここに戻しても町は戻らない! その過ちを正したいのなら、生きて返さなきゃだよ!」
 ドーラはビャッカをふりほどき、熱波を放ってふきとばした。されどビャッカにも備えがある。龍の翼で体勢を立て直し空中にとどまった。攻撃を防いだ両腕は、部分硬質化でかためてあった。
 ふりかえった貴人は、こんなときに! と声を上げている。
「いや、こんなとき、だからか……もっと早いタイミングで遭遇したかったな」
 貴人は反転し漆黒の大鎌をかまえた。空間に異様な圧のかかっているこの状況下でも、鎌を形成する暗黒物質の影響か、鎌の闇色におとろえはない。
 大鎌の濡れたような刃先に、ルガル・ラッセルの姿が映りこんでいる。
 ルガルは斜面をのぼってくるのだ。
「見つけた、ぞ……」
 貴人はルガルを見て、恐怖よりも哀れみを覚えた。変わり果てた姿だった。すでにその顔の半分以上が狼、銀色の毛に覆われている。痩せ衰えた肉体は針金のように細く、震える両足でやっと立っているといった様子だ。眼球は飛び出しそうで、瞳孔は煮立てたかのようにギラギラと輝いている。
(できればいまさらでも協力関係になれれば……と思うが)
「オレは、なすべきことをしよう!」
 貴人は地を蹴りルガルに向かった。大鎌を振り上げる。
 斜め下に斬り下げる。
 ルガルに向けた刃ではない。貴人はルガルの隣をすり抜けていた。影兵がもんどり打って倒れた。
 ルガルを追うように、無数のシャドウトルーパーが斜面を駆け上ってくるのだ。丸い体型をした中年女性もつづいている。真珠はなくなり服もずたずただが、それでも商家夫人らしく見える。さすがに疲労が出たのか、顔を真っ赤にして苦しそうだ。
 クロスは冷たい笑みを浮かべ呼びかける。
「ほう……ガスペロか。ユリ先生はどうした?」
 ふうふうと息を切らしながらガスペロは傲然と告げた。
「残念だったな! あの女は私に敗れ命乞いをした。だが私は許さなかった!」
 火球が飛びガスペロの額を焼く。ガスペロは豚のような悲鳴を上げ、運動会の大玉よろしく斜面を転がり落ちていった。滑る苔があるから止まらない。
「つまらん嘘を言うからそうなる。ただ『殺した』とでも言えばうっかり信じたかもしれないが」
 クロスはやはり涼やかに、夏の花火でも見るような眼差しを向けたまま眼鏡の位置を直すのだった。ありったけの魔力をこめてヒドガトルを見舞ったのである。
 やはり虚言だったらしい。斜面の先ではユリが、忍刀でガスペロに斬りかかっている。

 ルガルと対峙しているのはフィリンだ。
 ルガルと比べるとフィリンの体型はずっと小柄である。衰弱しているとはいえ獣人化している現在のルガルなら、ほんのひと払いでもすれば吹き飛ばせそうに見えた。
 しかしフィリンは彼を止めた。ただ眼前に立ちふさがるだけで。
「ルガルは私がやる! みんなはドーラとガスペロを抑えて!」 
 宣言してルガルに踏みだした。
「久しぶりね」
「どけ……女」
 ルガルのまなざしはドーラ――火の霊玉に向かったままだ。
(また私のことがわからなくなっている……!)
 だがフィリンはうちひしがれたりしない。憐憫の涙もこぼさない。
 実力行使あるのみだ。フィリンはルガルの向こう臑(ずね)を蹴り上げたのである。
「話すときは相手を見ろやコラァッ!」
 体面を取りつくろうつもりなどとうにない。フィリンはすでに【ライア】の口調だ。
 効いたらしい。鈍い声がルガルの口から漏れた。舌でも噛んだか、狼化した口の端から血の混じった水滴が垂れている。
「……フィリンか」 
「とっとと気づけ!」
「どけ」
 ルガルは言うがフィリンは一歩も動かない。
「私が相手になってやる。来い、ルガル! ルガル・ラッセル!」
 相手だと、とルガルは足元に唾を吐いた。
「お前には関係ない。これは俺の生死の問題だ。邪魔だてするなら……」
「邪魔だてするならなんだ!? 殺すか? やれるものならやってみろ、って前言ったろうが! 生命くらいかけてやる!」
 フィリンは引かない。むしろ詰め寄る。
「それに関係ないだと? 馬鹿言うな! とっくの昔に」
 再度フィリンはルガルの、反対側の向こう臑に蹴りを入れた。さっきよりも強く。
「関係大(おお)ありなんだよおッ!」
 パーシアは二人のやりとりを見ている。騎士叙勲の祝福はフィリンに与えている。ギリギリまではフィリンに任せるつもりだ。取り返しのつかぬ展開になりかけたら止める構えだった。
 しかしまだその必要はなさそうだ。
(もしこの場面に希望があるとすれば)
 それはルガルの視線ねとパーシアは思う。
(だっていまルガルは、フィリンさんだけを見てるもの)

 数は減じたが影兵はやはり多勢だ。
 しかしエリカは彼らを手玉にとっていた。三体がかりで槍を突き込まれても、妖精の踊りでかろやかに回避している。影の槍はエリカの髪の毛にふれることすらかなわない。
「返礼よ」
 王笏のように握ったエーデンユートをひとめぐりさせ、エリカは兵の一体を高台から突き落とし、二体を正面衝突させた。影兵二体はもつれあい、ドーラの投じた炎に巻きこまれ消滅した。
「ドーラのところには行かせないわ」
 エリカはワインレッドの視線を向けた。
 ドーラはビャッカと激しい攻防を演じている。正確には、台座に陣取り霊玉と一体化した心臓を体から飛び出させようとするドーラを、ビャッカが攻撃し止めようとしている。ドーラは暴走した力で何度もビャッカを遠ざけているが、ビャッカは決してあきらめず、そのたびに立ち上がり挑みかかっていた。
 エリカは気づいている。
(ドーラさんの心臓、元の位置に戻ろうとしている……!)
 ドーラにとって苦しい経験であろう。彼女の顔は脂汗でびっしょりだ。だが心臓を無理矢理引き抜くよりはずっといい。ドーラが生きてさえいれば、エリカには試したい手立てがあるのだ。
「……!」
 黒い塊がエリカ目がけ飛びこんできた。
 回避行動をとりかけたエリカだが、反射的に腕をひろげ塊を受け止めた。
 まとめて吹き飛ばされそうになる。だがエリカは腰を落とし尻もちをついて衝撃を殺した。
 瞬間的に判断したのだ。
 その塊が、貴人の体であると。
「サンキュー、アンド、ナイスキャッチ……と言わせてもらうよ……」
 仮面のこめかみあたりが欠け、赤い血が流れているも貴人は気丈だ。深刻なのは胸の負傷で、肺を貫かれたらしく呼吸に異音が混じっている。
「刺されて飛ばされちまった……アイツまで来てたとはな……」
「しゃべらないで。じっとしていて」
 エーデンユートを媒介にして、エリカは生命の精霊に助力を乞うた。生命の息吹(ブレス・オブ・ライフ)、貴人の体に活力を、傷に癒やしをもたらす。
「じゃじゃーん♪ ですことよ」
 斜面ではなく壁面に姿があった。プラチナの髪にオレンジのハイライト、魔王軍幹部【エスメ・アロスティア】である。九つの尾をもつ狐のルネサンスだ。いずれの尾も伸縮自在で鋼のような硬度をもつ。貴人を貫いたのもこの尾であることは言うまでもない。尾で壁をザクザクと突き刺しながら、エスメは女郎蜘蛛よろしく壁を登ってきたのだ。壁を背にし、正面をエリカと貴人に向けている。
「ガスペロのウスラバカはやっぱり役立たずですわねえ。あ、『ウスラバカ』って言ったのはガスペロには内緒よ?」
「バラそうが隠そうが、実際のところ君には関係ないと思うよ」
 思わぬ方向から声をかけられ、エスメは蛇のように細い瞳を動かした。
「なぜなら君はもう、ここでおしまいだから」
 クロスだった。薄い笑みすら浮かべ、左手をエスメに向けている。

◆V
 フィリンの蹴りと一喝は、濃いカフェインのようにルガルの眼に生気をよみがえらせたが、カフェイン同様一時的な効果だった。まもなくルガルは身をかがめ、狼そのもののようにフィリンに体当たりしたのである。剣は持っていない。必要がないのだ。すでにルガルの両腕は、狼そのものに変化していた。
 衝撃享受の心得があったところでしのぎきれない。フィリンは背を岩肌に打ち付け、ルガルの両腕に左右の肩を押さえこまれる格好となった。
「どうした! 聖夜ンときの二回戦ってならさっさとやれよ!」
 ルガルの心に呼びかける。だがルガルに返答はない。獣と化した牙でフィリンの喉笛を狙った。
(ごめん……フィリン。もらった命、使ってしまうかも)
 心のなかでフィリンは、『フィリン』に詫びている。だがそれも刹那だ。すぐに自身の弱気を叱るがごとく大声で吼えた。
「もうヤる気もねぇのか! このヘニャ○ン野郎!」
 百の箴言(しんげん)よりもひとつの挑発が効果を発することもある。
「……ッ!」
 動きの止まったルガルの頭に、質量をもつ闇が襲いかかった。
 闇属性の魔法だ。学園ではダートガと呼ばれている。球体は破裂しルガルを横倒しにした。パーシアが放ったものである。しかしことによればダートガよりも、つづくパーシアの言葉のほうがルガルには効いたかもしれない。
「どうしたのルガル!? 抱いた女の前でくらい、格好つけてみなさいよ!」
「だ……なぜ知っ……何言いやがる!」
 ルガルは隠し事のできない性格らしい。なるほど彼のこういうところをフィリンさんはかわいいと思っているのかも――とは言わずパーシアはウインクしてみせた。
「何でそんなこと言うかって? 女の勘ってやつよ?」
 やはりルガルは体力の限界だったようだ。崩れ落ち起き上がれない彼の腕を、
「行くぞ!」
 フィリンはつかんで引っ張る。
「やめろ……もう、死なせてくれ……」
「私が許さない」
 フィリンは断じた。許すものか。
「女なら見せてやったろ……男見せてみろよっ!」
 引きずっていく。

 瞬時不快げな表情になったエスメだがすぐに、うふふとクロスに嘲笑を浴びせた。
「あーら、私(わたくし)にガールフレンドをぶっ殺されたクロス・ナントカさんでしたかしらぁ?」
 怒らせて冷静さを削ぐつもりなのだろう。
 しかしクロスは動じない。
「復讐だとか仇討ちだとか、言うべきなのかもしれないな」
 だが、と告げた。古寺院の井戸のごとく閑かな心境で。
「残念ながら、不思議ともう怒りは感じていない。彼女に言われてね、悲しむなって。ならば復讐に身をやつして足を止めてはいられない……それだけだ」
 エスメは眼を見開いた。
「その余裕、いつまでつづくかしらね!?」
 エスメは光彩から黄金の光を放つ。クロスに向かってではない。エリカに。
 ……。
 …………。
 歩行者信号が点滅している。ちかちかとせわしなく点滅している。さっさと渡れと言っているかのように。
『……え?』
 エリカが足を踏み出せないでいると、信号の表示は赤に変わった。
 目の前を黒い自動車が横切った。騒々しい駆動音と排気をまきちらしながら。
 一瞬自動車の窓に映ったエリカは、髪を頭の両サイドで結っていた。口を真一文字に閉じたマネキンのような表情だった。服は赤と黒が基調である。制服姿ね、とぼんやりと思った。 
 見上げる空は狭い。高層ビル群に狭められているからだ。空は灰色、ビルも灰色だった。
『戻らないと……わたし……』
 口を言葉がついて出た。
「戻らないと……」
「ああ、戻ってきてくれ」
 ぱしっと冷たいものがエリカの頬を打った。
「戻ってきてくれ、エリカ・エルオンタリエくん。頼むよ」
 エリカの視界に飛びこんできたのは見覚えのある仮面だった。どことなく笑っているような表情、端が欠けているが問題はなさそうだ。貴人がつけている仮面である。
「わたし……夢を見ていた気がする」
「見させられてたんだ、エスメの催眠術にね」
 エリカはクロスに向かって、フドの魔法を放とうとしていたという。幸い、実行に移す前に貴人がアイテム『正妻の制裁』を使いエリカを目覚めさせたのだが。
 ショックを受けたり幻覚について考察するのは後だ。
「そうだ……エスメは!?」
「ユリ先生が相手してくれてる」
 ほら、と貴人が指さす。壁を這い回りエスメは次々と尾を伸ばしユリを狙うが、ユリは卓越した跳躍力でこれをかわし、隙あらば苦無や忍刀で応戦していた。しかも両眼をぎゅっと閉じたままで。音だけでエスメの位置を測っているらしい。
「ちいっ! チョロチョロと!」
 エスメはユリ攻撃に夢中になるあまり、徐々にドーラから引き離されていることに気がついていないようだ。
 ユリにエスメを頼んだ一方、クロスはガスペロの影兵を減らすことに注力していた。
「親玉のご登場か」
 間もなくガスペロ自身と対峙する。
「今日はシュバルツがいないようだが……ドーラ君を始末するのに彼女は邪魔、ということか?」
「答える必要はない」
 ガスペロは憮然と回答するが、クロスからすれば事実上イエスと言っているようなものである。
「聞いておきたい」
 クロスは呼びかけた。
「ガスペロ、お前にとって魔王とはそんなに崇高なものなのか?」
 むしろこの質問を待っていたのかもしれない。ガスペロは胸に手を当て、深い声で応じた。
「当然だよ」
「なぜそこまで魔王のことを……何がお前にそこまでさせる?」
 肉体派中年女性だが言葉は男性、懸命に低い声を出そうとしているだけにいささか滑稽さはあったものの、ありったけの情熱をふりしぼってガスペロはこたえる。
「現在の私はこんな状態だがかつては肉体もあった。みじめに生まれみじめに育った私をささえてくれたのは信仰……いつか偉大なる魔王様がよみがえり、私をお救い下さるという希望だったのだ! わかるか? 希望や理想はお前たちだけのものではないのだよ! 肉体は朽ち実体をもたぬ姿となったいまも、私の心は信仰で満たされている!」
 わざと大きく拍数をとり、クロスは三度、手を打ち合わせた。
「お前の話は退屈だったが、実に有意義なものになったよ。おかげで……時間はたっぷり稼げた」
 ガスペロはうめいた。いつの間にあらわれたか、目の前で貴人が大鎌をふりかぶっている。エリカも控えている。
 しかも貴人とエリカのむこう、その先では、
「いかん……!」
 決着がつこうとしていたのだった。
 ビャッカと、ドーラの。

◆VI
 何度攻撃を食らっただろう。
 焔にくるまれるということはなかった。それでも睫毛は焼け、後ろ髪もずいぶん焦げ臭い。五体いずれも、痛みを感じない部位はないくらいだ。
「もう来るな、ビャッカ……来んでくれ……!」
 ドーラが泣いている。炎をあやつり、容赦ない攻撃をビャッカに浴びせながら泣いている。
「こんなわちきにかまうな。死なせてくれ……!」
 ビャッカは攻撃らしい攻撃をしていない。ドーラを台座から下ろすことに全力を注いだ。
 ドーラは激しく抵抗した。ダメージを受けるたびにビャッカは傷ついた。受けた生傷は数え切れない。一度などは壁に叩きつけられ、意識が遠のきかけた。
 でもそのたび、
(逃げず折れず……あきらめず、だよ!) 
 ビャッカは立ち上がった。立ち上がるたび決意は固くなった。
「私は引かない! 力づくでも死なせないよ!」
(私は迷った。ドーラと前に対峙した時、ドーラや霊珠のことで迷ったまま剣をふるった。そんな剣だから守れなかったんだ……だから、今度は迷わないよ)
「私が守りたい仲間は、今目の前にいる! 今度こそ!」
 心臓が戻りかけているせいだろう。ドーラの魔力が増していくのがわかる。
 だが肉体はどうだろう。ドーラは疲れを見せはじめていた。動きが遅くなっている。息も荒い。
(一撃で決める)
 ビャッカは剣の鞘を払った。
 狙いを定める。リョウラン家で学び、フトゥールム・スクエアで育てた基本剣術だ。刃を水平にし、上下逆に返した。
「この一刀にすべてをこめて……疾風が如く、雷光が如く、そして雲耀にまでいたれ!」
 強く羽ばたく。強く、空翔る。
 ドーラがとっさに放った火は、ビャッカの頬をかすめて飛んでいった。
 ビャッカは踏みこんだ。絶対の間合いに。
「行くよ! ドーラ! チェストォォォーーーーッ!!!」
 刃を振り抜く。
 衝撃は、鼓動ひとつ分の時間をおいて訪れた。
 ドーラは台座から落ち、気を失って地に伏したのである。

 まったく注意していなかった方向から火炎弾が飛んできた。エスメの髪に。
 ドーラが外したものだったが、エスメにそんな事情を知る余裕はなかろう。
「火が! 私の髪!」
 髪はぱっと炎上する。エスメは慌ててはたき消そうとして、尾のバランスを崩し壁からはがれ落ちた。
「ぎゃああっ!」
 パニックになったのか、わめきながら落下していく。
 地底を流れる川があった。エスメは水柱をあげた。
 火は消えたはずである。しかし彼女は浮きあがってこなかった。

 ガスペロは貴人の一閃を浴びた。
 さらに背中に数本の苦無を受けた。標的を変えたユリの助力だ。
 エリカのフドーガがとどめとなった。商家夫人は膝を折り、口から黒いガスを空に吹き上げたのである。
「おっと、いつものパターンは許さない! 備えあれば何とやらだ」
 貴人は革袋を取りだしガスにかぶせる。旅人が水やワインの運搬に使うものだ。包んだところに、
「可燃性であることを期待するよ」
 ヒドガトルを放ったのはクロスだった。
 革袋は炎上した。
「嫌だっ! 嫌だ! 魔王様の復活を見ずして消滅するなんて……」
 悲鳴のようなものが聞こえたが、まもなく閑かになった。

◆VII
 仮説だけどと断って、パーシアはルガルに言って聞かせた。
「ドーラさんにとって過剰な力をルガルに吸収させて……互いに共生するような関係を、当面の間つづける手もあるかもって考えたの」
 エリカもドーラに語りかけている。
「もちろんドーラさんが自由に霊玉の力をコントロールできれば、こんな荒療治は必要ないかもしれないけれど」
 気絶から覚めたドーラは、憑きものが落ちたように落ち着いていた。
「わかった。ためしてみよう」
「おい、俺は承知してねぇぞ」
 ルガルは起き上がる気力もなく倒れたままだが、抗議の意志はあるらしい。もっとも、往生際が悪いんだよ! とフィリンに一喝されていたが。
「それに、ドーラが俺に吸い尽くされてくたばったらどうする?」
「人の心配とか、似合わねぇんだよ!」
 またまたフィリンに怒鳴られていた。
「いちいち怒鳴んな! お前は俺をなんだと思ってやがんだ」
 憎まれ口こそきいたが、ドーラのことを考えられるほどに理性的になっているルガルの姿に、フィリンは内心安堵していた。
 まあまあ、とエリカがなだめるように言った。
「危なくなりそうならわたしたちが全力で中断するわ。任せて」
「いい? ドーラ」
 ビャッカに問われドーラはうなずく。
「やってみる。学園の皆の言葉に耳をふさいできたこと、それがわちきの最大の過ちじゃったと気づいたよ」
 いい返事だ、と貴人が言った。
「今度からは困ったらオレたちに相談してくれよな。オレたちは窮地にある友達を、黙って見捨てたりはしないから」
 ちょっと照れくさかったが、口にして悪い気はしなかった。
 試みは期待以上の効果をもたらした。
 ドーラがルガルの心臓に手を触れると、みるみるうちに、という表現が決して過剰ではない早さで、ドーラに渦巻いていた魔法の地場は沈静化し、逆に、ルガルをむしばんでいた獣人化はおさまりはじめたのだった。
「……」
 途中まで確認した時点で、無言のうちにユリは背を向けた。
「ちゃんと言わなくては、わからないこともあるのではないですか?」
 呼び止める声があった。
 クロスだ。
 ユリは最初にクロスを、次にドーラを見て、
「……そうかもしれないわね」
 その場にとどまることを選んだのである。

 ドーラが怪獣王女を名乗ることはもうあるまい。



課題評価
課題経験:171
課題報酬:6000
さようなら怪獣王女~霊玉のゆくえ
執筆:桂木京介 GM


《さようなら怪獣王女~霊玉のゆくえ》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2022-03-19 00:05:13
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。
今回はドーラさんとの関係修復を目指して頑張るわ。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 2) 2022-03-19 07:19:38
勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしく。

私は対ルガル一択ね…どんな結果にしろ、ケジメはつけるわ。
(過去に一度、霊玉なしで暴走は止めてますが今回も有効かはちょっとわからないので…)

霊玉…ドーラの心臓は、どうする?
最悪は殺してでも(略)として、何か案あれば協力はできると思う。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 3) 2022-03-19 23:07:50
魔族との不毛な憎しみの連鎖を断ち切るためにも、
ドーラさんの命は誰にも奪わせないわ。
そのためにはドーラさんと和解して、学園に保護させてもらうのがいいけれど、
どうしても理解が得られない場合は、強引になっても連れ去るぐらいかしらね。
冗談でも殺害とか言わないでね。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 4) 2022-03-19 23:57:38
勇者・英雄コースのビャッカ・リョウランだよ。よろしくね。

立ち回りはこれから考えるけれど…
私はドーラを止めに行くよ。
前回は色々迷って失敗したから、今回は迷わない。
ドーラを止めて、そして生きてもらうんだ!

コズミックエッグ(霊玉)については、
ドーラが魔王に渡す気がなくなってるなら、無理に取り出そうとせずそのままでもいいかな。
ボソク島のデジくんと同じ状態な訳だし、焦ることはないかなって。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 5) 2022-03-19 23:59:09
王様・貴族コースのパーシア。よろしくお願いします。

これは、個人的な解釈だけど……ドーラさん、ズェスカの枯れた温泉をもとに戻すために……霊玉を戻しに来たんじゃないかしら。

霊玉が喪われたせいで、温泉は枯れて、人々の生業は奪われた。
ドーラさんの父上が立派な君主だったとしたら、民から真っ当な生業を奪うようなことは許さないでしょう。
ドーラさん自身も、そこに思い至って……と、言う可能性を考えてはいるわ。

もしそうだったら、ドーラさんと霊玉を切り離す手段も考えておかないと……和解以前の問題になっちゃうかもしれないわ。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 6) 2022-03-20 18:01:32
ドーラさんが、ズェスカの再生を考えているとしたら、それはとても嬉しいことだけど、
そのために彼女が自分の命を捨てようというのであれば、それは食い止めたいわね。

ドーラさんが霊玉を元に戻すために命を捨てたとして、
単純にそれでズェスカが元の温泉町に戻るとは考え辛いわ。
それに霊玉の所有者を強引に変えようとしても、
誰が選ばれるのか、そのシステムには未知の部分が多いので
意図しない結果になってしまう可能性も予想されるわ。

枯れた温泉や去っていった住人などを戻すには、
しっかり準備して実現可能な長期の計画を行わなければいけない。

なので、現状では霊玉を強引に切り離そうとはせず、
ドーラさん自身に生きてズェスカ再生を担当をしてもらうのがいいと思うわ。
それが、その土地を治める者の責任ではないかしら?

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 7) 2022-03-21 22:45:43
まあ、ドーラさんがズェスカ復興を考えてるかも……と言うのはあくまでも推測の域を出ないけど、人々がズェスカに戻ってくるようにするなら、温泉の復活でもないと無理筋なのよね。

それに、ドーラさんから霊玉を切り離さないと、彼女はいつまでも……ルガルと魔王軍幹部連中に狙われ続けるんじゃない?
まあ、今回で切り離すのは難しいかもしれないけど、切り離す策があるなら早めに試す方がいいと思うし、元々、霊玉があった場所ならば……本来、あるべき場所に霊玉自身が戻ろうとする可能性もあるのかも。と、思ってたの。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 8) 2022-03-21 22:56:40
で、そろそろ決めといた方がいいと思うけど、誰がどいつの相手をするようにしておく?
ユリ先生に足止め頼むなら、その相手も考えないとね。

ルガルはガスペロと因縁があるようだし、うまくガスペロとルガルがやり合う状況にできれば……潰し合ってくれそうでもある。
そうなれば、ユリ先生にドーラさん足止めを頼んで、総力もしくは戦力の大半を投入してエスメに当たることもできるけど……問題は、ユリ先生とドーラさんは因縁があるようだし、ドーラさんの精神状態に霊玉の力も加わると……説得等は難しくなっちゃうかも。

その辺、どう思う?

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 9) 2022-03-21 23:17:47
>相手について

私はルガルと因縁あるし、優先対象だから、そちら行くわよ。
ガスペロと噛み合わせて半共闘に持ち込むのは試してみるけど、暴走状態のようだし、どこまでできるかな。

>霊玉について

まずドーラと一体化したままで霊玉としての力は行使できるのかな?
使えない場合、(殺してでも略は最終手段として)、分離する方法を考えとかないとまずいかも。

逆に一体化状態のまま使えそうなら、ルガルを正気に戻すのに力貸してもらえるとありがたいけど…
(こっちはそもそも霊玉の力でいいのか、って疑問もあるけど…)

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 10) 2022-03-21 23:30:29
> ズェスカ復興の件について
エリカが言った通りかな。
お蕎麦屋さんも元々閉めるつもりだったぽいし、温泉だけ復活しても微妙かなぁ…
寒村の維持と廃村の復興じゃ労力とか必要なものとか全然違うからね。
いずれ霊珠を開放することを考えると、霊珠に依存しない方法を探りたいところ。
まぁ、すぐに結果も結論も出ない話だから追々考えたいかな…

> ユリ先生
う~ん、悩ましいけれど…
ドーラと一人で対峙させるのは何だかお互いに良くない気がするから、会わせるのはドーラが落ち着いてからにしたいところ。
私としては、魔王軍のどちらかに対応してもらいたいかな。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 11) 2022-03-22 00:03:05
> 相手について
私はドーラの方に行くよ。
前回の霊珠のやり取りの件もあるし、ユリ先生から過去の話も聞いた以上、引く訳には行かないからね。

> 火の霊玉について
う~ん、詳しい事は霊珠に詳しい精霊王様や有識者に話を聞いてから判断や対策を検討したいかな。
心臓との融合例はデジくんな訳だけど…
この時は保護や護衛をしてたけれど、切り離すとかの話は全然してなかったし、気にもしてなかったし。
狙われるなら狙われるで学園やどこかの拠点に来てもらうとか手はあると思う。
まぁ、その前例と同じ話かどうかは何とも言えないけれど、
とりあえず情報もなしに焦って早まってもしょうがないかなぁって感じかな。

あと、私自身ドーラを殺す気がないし、生きてもらう事前提で動くから、
今回はそれ以外のことは考えないようにしてるよ。
ゴーリキ(ドーラのパパ上)の二の舞なんてゴメンだからね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 12) 2022-03-22 02:46:29
まず、殺してでもというのは絶対に無し。
それをやってしまったら、わたしたちは目的のために手段を選ばない
残虐な悪魔に成り下がってしまうわ。

その上で、ドーラさんと霊玉の切り離しも、今回は魔王軍の襲撃への対応と、
ドーラさん(霊玉)を確保をするのだけで手いっぱいになると思うので、
今回はドーラさんを守って退却戦を行い、分離やズェスカの復興、
ルガルの解呪などは、次回以降の機会に行うというのが
実現可能なラインじゃないかしら?

わたしの行動としては、今言ったことを前提に、
ドーラさんの確保と彼女を守りながらの撤退を行うつもりよ。
そうは言っても、エスメやガスペロも簡単には逃がしてくれないだろうから
防戦の為にも全力を尽くさないといけないわね。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 13) 2022-03-22 07:07:02
状況的に追っ手への対処で手一杯になる可能性は否めないけど、ドーラさんも目的(霊玉の力を戻しにいくのかどうかは別にしても)を達成するまでは退かない覚悟みたい。
ドーラさんが説得にも応じない場合は、力ずくで確保する?

それとも……ドーラさんの目的を達成させて連れ帰る等、ある程度、こちらも譲歩することも考えておく?
(メタな話になりますが、ここで霊玉切り離しとならないと、尺の都合で「いつの間にか終わってた」となる可能性もあるかも。との考えがあったので、その辺のご意見もお尋ねしたかったところです。もちろん、そこまでの余裕がないのも理解してますので、定まった方針には従いますので)

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 14) 2022-03-23 00:17:55
目的として優先されるのは霊玉の確保であり、それ以外の事はどうなっても良いとの事だけど、
現実問題として、わたしたちのしたこと・しなかったことは後々に影響が出てくるわ。
わたしたちは勇者たるフトゥールム・スクエアとして、
していいこと・するべきではないことというのは、考えて行動するべきよ。

それに付随して懸念するのは、霊玉獲得のためにドーラさんが殺害される事。
または、ドーラさん自身がズェスカ再生の為や自責の念で自害してしまうこと。

ドーラさんの目的が自害であった場合、それを遂げさせるわけにはいかないわ。
もちろん説得は試みるけれど、魔王軍や場合によってはルガルの攻撃も防がないといけないので
時間やプランの文字数的にもきつくなるわね。

だから、今回は霊玉の切り離しについては後回し。
テジ君も融合した存在なわけだし、霊玉の力を使う機会についても
先でどうにかするのがいいと思うわ。

ドーラさんがズェスカにとどまって何かをしたいとしても、
『今回は』霊玉とドーラさん自身の安全のためにも退避してもらった方がいいわ。
説得が無理な場合は、多少強引になっても連れていくしかないと思うわ。



《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 15) 2022-03-23 03:57:26
挨拶が遅れて申し訳ない……
賢者・導師コースのクロス・アガツマだ。よろしく頼む。

テジくんが特に暴走は起こさず、ドーラ君が暴走気味になっているのは、おそらく彼女が元々霊玉に代わる贄に相応しい体質として生まれたからだろう。大きな力をふたつも内包していれば身に余るというものだ。
プランに書く予定だが、そこで、メメル学園長の治療法の力がリセットされる点を利用すれば、宿す力をどちらか一方のみに出来るかもしれない。……成功するかはまだ不明だが……大いに可能性はある。
それも踏まえて、俺も彼女を助ける方針に一票だ。

戦闘では、俺はエスメを抑えるほうに立候補する。
幹部の二人とはどちらも交戦経験はあるが、ガスペロは戦うたびに強さが変わる印象だ……タネが分かっているエスメの方が俺には戦いやすいと思う。
なんにせよ、最低でもドーラ君かルガルのどちらかの力を借りられなければ今回はかなり厳しいと思う。
魔王幹部を抑えているうちに、誰かが説得に向かい、共同戦線を張る……という流れが理想だと思うが、どうだろう?

それと、ユリ先生にはガスペロ、できれば影兵に対抗してもうひとり、が俺はいいのではと考えている。
相談の上でエスメかルガルになっても可だし、もしその場合は俺もバランスを見て移動しよう。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 16) 2022-03-23 06:43:59
じゃあ、ドーラさんが目的を達成したいと言っても、説得もしくは肉体言語での説得……力業で黙らせるとも言うけど。その方向でいいかしら。

で、その流れで思ったんだけど、ドーラさんは暴走する力を抑えきれない風だし、ルガルは火の霊玉の力で仮面の呪縛を抑えたい。
じゃあ、ドーラさんの過剰な力を、ルガルに吸収させて……互いに共生するような関係を、当面の間続ける手もあるのかな。

と、思ったのよ。

ドーラさんには、「この場で霊玉を切り離したら、魔王軍が即座に奪いに来るから、魔王軍の妨害がなくなったら、必要なら霊玉を切り離すことも考える。ズェスカ再生を願うなら自分達も思いは同じ」等と、この場での早まった行動を思いとどまるように話してもいいかなと。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 17) 2022-03-23 06:49:25
で、さっきの仮説とも言いがたい願望とも言えるけど……試してみてもいいかしら?
もちろん、魔王軍幹部等と戦う人の援護をしながらね。

まずは、ドーラさんを説得し、その後……どうにかしてルガルを正気にさせて……ちょっと、カマかけるような挑発してもいい?(何故かフィリンさん見ながら)

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 18) 2022-03-23 21:47:41
全体としてはドーラと霊玉確保を第一優先ね。了解。
そちらを

>ドーラさんの過剰な力を、ルガルに吸収させる
よかった、ちょうど私も同じ案を考えてたところ。
その案で協力してもらえるならありがたいし、こちらも協力できると思う

>パーシア
その聞き方だといい返事は難しいわね…
何をするのか全く分からないし…
(PL註:個人を悪し様に言うわけではないのですが、すいません。この手の話の振り方で過去イヤな目に数度遭っており、あまり不用意に同調できない感じです。勿論、行動を強要する権利は誰にもないので、何も言わず好きにしても別によろしいかと思いますが)


《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 19) 2022-03-23 22:24:32
ギリギリになってすまない。
魔王・覇王コースの仁和だ。

ドーラと霊玉の確保は了解した。

エスメを抑えるよう動こうと思う。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 20) 2022-03-23 22:25:06
>ドーラさんの過剰な力を、ルガルに吸収させる
じゃあ、私は味方を援護しつつ、まずはドーラさんへの声掛けを試みるわ。
問題はルガルを……どうやって冷静にさせるかよね。

>フィリンさん
残る時間もないし、多分、私が言おうとしてることは、フィリンさんがルガルに言いそうな気もするし……フィリンさんが似たことを言った場合に、更に一言的にウィッシュでねじ込めれば。と条件付きで考えてるわ。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 21) 2022-03-23 22:39:11
>パーシア
ありがとう。
こちら大丈夫よ。

ルガルについては私が何とかしてみるわ。
みんなはドーラの方に専念してもらって大丈夫。

あと可能性だけど…霊玉の魔力を求めてるようだし、ガスペロたちとの因縁を無視して動く可能性もあるかなって懸念してる。
そうなった場合、ガスペロがフリーハンドにならないよう抑えを用意しておいた方がいいかもしれないわね

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 22) 2022-03-23 23:05:24
貴人君がエスメに向かうなら、俺は影兵も懸念してガスペロの抑えに向かったほうが良さそうかな。
それで、結局ユリ先生はどこに行ってもらうのがいいだろうか?

ドーラ君の説得には三人向かうようだし、魔王軍幹部がやや少ない気はするが、その分早く説得に成功できればリターンも大きいか。
ガスペロへはシュバルツとの近況なども話してみて時間稼ぎを試みてみるよ。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 23) 2022-03-23 23:24:28
>ユリ先生
この流れだと、ガスペロが手薄だしガスペロの方に回って貰うのがいいかも……とも思うけど、そうなるとエスメ相手が仁和さんだけになるのよね。

いっそ、ユリ先生にエスメ足止め一任でもとも思うけど、調整する時間が……基本はガスペロ相手で、ルガルがガスペロ相手に参戦したらエスメにタゲ切り替えとかできるかしら……。

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 24) 2022-03-23 23:26:59
了解した、文字数を追加して、こちらのプランにそのように書き加えておくよ。

《猫の友》 パーシア・セントレジャー (No 25) 2022-03-23 23:30:08
あ、文字数追加しないといけないなら、私は文字数追加済みで余裕あるから、書き加えても大丈夫よ。

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 26) 2022-03-23 23:39:13
問題ない、うまく全部入ったし、今更コインを惜しむこともない。
気遣い感謝する。

《大空の君臨者》 ビャッカ・リョウラン (No 27) 2022-03-23 23:57:18
プラン送信っと…みんな、頑張ろうね。