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未来に向かって


ストーリー Story

 魔王との決戦から、一月ほどが過ぎようとしていた。
 歴史的な変革ともいえるこの偉業に、世界と、そこに住まう人々の生活は、変化を見せ始めている。
 もっとも、目に見えて分かることは少ない。
 一見すればこれまでと変わらず、同じように進んでいるように見える。
 だが、違う。
 確実に変化は起り始めている。
 それは新たなる未来へ向かっての物であり、過去の清算に繋がる物でもあった――

◆  ◆  ◆

「――というわけで、霊玉の件も含めて、色々と協力して貰うぞ☆」
 学園長室で、【メメ・メメル】は異世界人である【メフィスト】に頼む。
「オッケーでーす。こちらとしてもー、この世界が安定して貰った方が余計な不安を抱えずに済むので助かりますからねー」
 2人が話しているのは、諸々の問題となりそうな物を、今の内に未然に解決しておこうというものだ。
「それで、霊玉の解放は目処がつきそうなのか?」
「とにかくー、内在する膨大な力を何かで消費する必要がありますねー。何に使うとかはー、そちら任せになりますがー」
「オッケーだ。むしろそうしてくれないと困る。異世界人に好きにさせたとか、あとで難癖つけられたら腹が立つからな」
「それなら学園生さんに協力して貰いましょー。色々とー、他にも頼みたいことはあるみたいですがー」
「まぁ、色々とあるぞ☆」
 メメルは言いながら、机に書類を広げる。
 以前なら魔法で簡単に出来たことだが、今では入学したての生徒と変わらないので多少の手間はかかる。
 もっとも、人の目につかない所で鍛錬を始めてるので、時間は掛かっても以前のような力を取り戻すことが出来るかもしれない。
 それはさておき、メメルは関係書類を広げて説明する。
「人に宿っていない霊玉、五つは学園で確保してるから、いつでも使えるな。残りのふたつは人に宿っているから、取り扱いは気をつける必要があるぞ☆」
「霊玉ひとつでもー、魔王が宿った子を受肉化する力がありましたからねー。残りの霊玉の力を消費しようと思ったらー、色々と使わないとですねー」
「それもあるが、他にも処理しないといけないことは山盛りだ」
 少しうんざりするようにメメルは言った。
「魔族との融和問題に、魔王との決戦での爪痕の復興もしないといけない。それに魔王がいなくなったから、そっちに割いてたリソースを好きに使おうって色気だしてる所もあるからなー。地味に忙しすぎて飲む暇もないぞ」
「大変ですねー。幸い人手はー、学園生さんを頼りにすれば良いですしー、その辺りの手配はお願いしますねー」
「うぅー、大変だ。労いがてら、そっちの世界の銘酒をくれても良いんだぞ☆」
「私甘党なのでー、今度甘い物持ってきますねー」
「酒に合うのを頼む」

 などという話がされ、学園生達に色々な課題が出されるのでした。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 6日 出発日 2022-07-24

難易度 普通 報酬 なし 完成予定 2022-08-03

登場人物 6/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《真心はその先に》マーニー・ジム
 リバイバル Lv18 / 賢者・導師 Rank 1
マーニー・ジムよ。 普通のおばあちゃんとして、孫に看取られて静かに逝ったはずなんだけど…なんの因果か、リバイバルとして蘇ったの。 何故か学生の時の姿だし。 実は、人を探していてね。 もし危ないことをしていたら、止めなければならないの。 生きてる間は諦めてたんだけど…せっかく蘇ったのだから、また探してみるつもりよ。 それに、もうひとつ夢があるの。 私の青春、生涯をかけた行政学のことを、先生として、みんなに伝えること。 これも、生前は叶える前に家庭持っちゃったけど、蘇ったいま、改めて全力で目指してみるわ。 ※マーニーの思い出※ 「僕と一緒に来てくれませんか?」 地方自治の授業の一環でガンダ村に視察に行ったとき、そこの新規採用職員であったリスク・ジムからかけられた言葉だ。 この時点で、その言葉に深い意味はなく、そのときは、農地の手続きの案内で農家を回る手伝いといった用件だった。 「よろしくお願いします。」 これ以降、私たちの間では、このやり取りが幾度となく繰り返されることとなる。 その後、例のやり取りを経て婚約に至る。 しかし、幸せの日々は長くは続かない。 結婚式の前夜、リスクは出奔。著作「事務の危機管理」での訴えが理解されない現状に絶望したとのことだが… 「現状の事務には限界がある。同じことの繰り返しじゃ、世界は滅ぶよ」 結婚前夜の非道な仕打ちよりも、消息を絶つほど思い詰めた彼の支えになれなかったことを今も後悔している。 ※消滅キー※(PL情報) リスク及びリョウに感謝を伝えること 片方に伝えると存在が半分消える(薄くなる) メメ・メメル校長はこのことを把握しているようで、これを逆手にとって消滅を遠ざけてくれたことがある。 (「宿り木の下に唇を盗んで」(桂木京介 GM)参照)
《猫の友》パーシア・セントレジャー
 リバイバル Lv19 / 王様・貴族 Rank 1
かなり古い王朝の王族の娘。 とは言っても、すでに国は滅び、王城は朽ち果てた遺跡と化している上、妾腹の生まれ故に生前は疎まれる存在であったが。 と、学園の研究者から自身の出自を告げられた過去の亡霊。 生前が望まれない存在だったせいか、生き残るために計算高くなったが、己の務めは弁えていた。 美しく長い黒髪は羨望の対象だったが、それ故に妬まれたので、自分の髪の色は好きではない。 一族の他の者は金髪だったせいか、心ない者からは、 「我が王家は黄金の獅子と讃えられる血筋。それなのに、どこぞから不吉な黒猫が紛れ込んだ」 等と揶揄されていた。 身長は150cm後半。 スレンダーな体型でCクラスらしい。 安息日の晩餐とともにいただく、一杯の葡萄酒がささやかな贅沢。 目立たなく生きるのが一番と思っている。

解説 Explan

●目的

以下の選択肢のどれか一つを選んで実行してください。

基本フリーシナリオなので、内容など自由にプランで盛ったりすることも可能です。

1 霊玉の魔力を何に消費するか考える

霊玉に内在する魔力を消費することで、捕らわれている過去の勇者達の魂を解放することが最終目的です。

霊玉が内包する魔力は膨大なため、ちょっとやそっとのことでは消費しきれません。

多少消費しても自動回復します。

基本フリーシナリオなので、PCがしたいことのエネルギー源に霊玉を頼る、ぐらいのノリでオッケーです。

今回のエピソードだけですべて解決、とはならないので、色々と試していくぐらいのつもりで進めて下さい。

2 魔族との融和

人間と魔族の融和に関する行動がとれます。

基本的に魔族は『精霊王の加護が受けられなかった種族』というだけですので、人間のフリしてる者もいます。

強力な魔族の眷属となった元人間もいます。

色々と過去のことから人間を信用してない者も多いです。

人間と同じように、善人もいれば悪人もいます。

自由に、自分で考えた魔族を出していただいても構いません。

魔族達とどう関わっていき、どう行動するか?

自由にプランにてお書きください。

3 復興などに関わる

魔王との決戦での爪痕の復興や、これまで魔王に割いていたリソースを使っての新たな活動など、自由に動けます。

基本は、社会インフラ関連をどうするか? という内容になります。

それにまつわるごたごたなど、自由に出して進めていただけます。

4 完全フリー

何をどう動くか、完全に自由です。

思いつくままにPCを動かしていただいて構いません。

異世界と関わることも自由です。

どういう異世界なのかも、自由に決めて進めることも可能です。

●NPC

好きに出せます。

PCの関連NPCも自由に出していただいて構いません。

●その他

頂いたプラン内容によっては、ネタとして新たに新規の関連エピソードが出る可能性があります。

以上です。


作者コメント Comment
今回は、アフターストーリーエピソード第四弾、になっています。

基本フリーシナリオなので、何をどうするかは自由です。

その中で、ネタとして拾わせていただき、新規にエピソードを出す可能性もあります。

今回の、霊玉などについては、そういった部分で拾わせていただいています。

PC達で協力して進めるも良いですし、個別に何か自由にするのも可能です。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。


個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
火の霊玉の力を開放
マグマと地殻変動を制御して
ズェスカの温泉を復活させ
同時に地域振興

伝令鳥として以下に匿名学園生の手紙(再生・振興計画依頼書)を送付

ドーラ・ゴーリキ:霊玉開放・制御担当
ガラ・アドム:イベント周知・調整担当
ララ・ミルトニア:イベントスポンサー担当。学園他多方面とのコネ構築

アルチェ・ボソク島:イベント連携(観光・グルメ)

サイクロプス族:イベント支援(街道や橋・トンネルの整備、住居施設建築など)
ケンタウロス族:イベント支援(飛脚業務・資材や生活必需品の運送など)

上記関係者以外にも手紙を送付、多数の参加を募り
連携・交流関係の構築を目指す

新名物グルメ:食べられる石の温泉卵開発

アドリブ大歓迎

アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
魔法犬ココの事で学園室へ相談に行く。
連れてきたココを皆に紹介して、相談内容を伝える。
・霊玉を使う事でココを普通の犬に変えられるかどうか。
・その前にまずココがどんな存在なのか詳細を調べられるか。
ココが長命なのは分かっているが、もし不老不死のようなものなら、俺が死後など次々と親しい人と死別する事になり可哀そうなので、霊玉の力を使うなどして普通の犬に変えられるか知りたい。
根源と接続しているのなら、下手に干渉して接続を切断するとココが消滅する不安もあるので、霊玉くらいの力が必要かと思った。
ただそもそもココがどれだけ長命なのか、今のままで子供が出来るのかなど、生物として具体的な事を調べてもらいたい。

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
霊玉の力だが、それぞれの元の人物の受肉化に使えないだろうか?
これは学園が所有している分だけじゃなくてすべての霊玉に当てはめたいんだけど

先代魔王を自らの命をもって封印してくれた人たちだ、少なくてもかの時代よりは平和にそして豊かになっていると思う
この光景を見てもらいたいし、今度は使命等なく自由に生きてもらいたい
なんていうか報われてほしい

・・・メメたん何も言わないけどきっと気にかけてると思うし

まぁ、ほかの陣営…各国とかが保持してる分もあるから政治的な思惑やら話になるだろうけども
それぞれ今(所有する)は陣営は違えど偉大なる勇者たちを労うためにも最終的に賛同してくれると思いたい
アドリブA、絡み大歓迎

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
魔族に対する和平交渉(物理的説得としての戦闘を含む)を学園生が取組む課題群として構築する案の完成、実施、周知を、祖母のマーニー・ジムから引き継ぐ

校長先生の経験
シトリ先生の知識を借りて課題群の原案を正式依頼として完成させていく

学園窓口と連携し数多くの依頼を明快に系統立てて発布
応募受付、編成、送り出し、実施報告受理までのサイクルが回るよう勤める

高度な【説得】【信頼】が必要なハードな交渉や
強敵との戦闘を伴う物理的説得が必要なケースには
自らが出撃!

愛刀の桜吹雪はあくまで平和のため
害意が高い場合だけ月下白刃で威嚇攻撃
晴天灰陣で防御し【肉体言語】と内観で想いを受け止めた上で
「お困りごとはありませんか?」

マーニー・ジム 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
魔族に対する和平交渉を学園生が取組む課題群として構築する案の完成、実施、周知を、孫のタスク・ジムに引き継ぐ

孫に事務経験を積ませるため
そして自分のもう一つの計画
「霊玉に内在する魔力を消費することで、捕らわれている過去の勇者達の魂を解放する」研究に注力するため

以下の優先順位で魔力を消費していく

1 学園結界の復活(新設)
かつて校長先生の魔力で貼っていた学園結界を
霊玉の膨大な魔力と、校長先生の魔術行使に代わる手段の策定により再現する
手段の候補としては霊樹やその他魔力に親和性の高い存在や物質を検討
覇王六種への協力依頼も検討
彼らと何かの連携をすることで
学園内の彼らの居場所が確固たるものになることも期待する

パーシア・セントレジャー 個人成績:

獲得経験:0 = 0全体 + 0個別
獲得報酬:0 = 0全体 + 0個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
【3】復興に関わる

◆方針
長期的方針を検討と平行し、市民の衣食住の支援や当座の仕事の斡旋等、短期的に解決すべき課題に対処

◆行動
OBのガラさんを通し、ストーカー家に市民の衣食住確保の資金や物資を融通して貰えないか相談
勿論、ストーカー家にも、市民を労働力として優先的に斡旋する等メリット提示
市民は衣食住と仕事を確保でき、ストーカー家は復興事業に食い込むチャンスと労働力を得られるWinーWinの関係を築き、短期的課題を先に片付ける

リザルト Result

 学園が主体となって行われる諸問題への対応。
 実働部隊として学園生が動く中、それを知った【エリカ・エルオンタリエ】は、自分も何か出来ないものかと考えていた。

「キイ」
 隼の姿となったエリカは鳴き声を上げる。
 風の精霊王【アリアモーレ】の眷属としての姿であるが、今その姿になっていると人の言葉が喋れない。
 この姿になった直後は人の言葉が喋れたのであるが、馴染んでしまった今では喋れないでいた。
 そんな彼女に、異世界人である【メフィスト】が応えた。
「今の形に馴染んじゃったからですねー。その分、空を飛んだりとかは巧くなってるでしょうがー、このままだとちょっと不便ですねー」
 明らかに、エリカの鳴き声の意味を理解しつつ、なにやら魔術を掛ける。すると――
「翻訳魔術を掛けましたー。どうですかー?」
「……人の言葉で喋れ、てますね」
 確かめるように人の言葉で話すエリカ。
 そこにアリアモーレが加わる。
「随分便利なものね」
「ウチの世界はー、種族間対立で絶滅戦争始めるぐらいヤバいのでー、せめて言葉ぐらいは通じるようにしとかないと致命的でしたからー」
「……殺伐とした世界ね」
「否定はしませーん。それよりー、これからどうしますかー?」
 メフィストの問い掛けにエリカは悩む。
 今エリカ達がいるのは大空の上だ。
 そこでこれからのことを話し合っている。
 切っ掛けは、学園からアリアモーレに、風の霊玉を使用する要望が来たことだ。
「霊玉の力を消費することで核となっている子達を解放する、というのは私も賛成よ」
 アリアモーレは、首に取り付けている風の霊玉を翼で撫でながら言った。
「魔王の脅威が無くなった今なら、霊玉の役割は終えているわ。余計な騒動の種にならないようにするためにも、霊玉の力を消費するのは賛成なんだけど……問題は何に力を使うかよね」
 悩ましげにアリアモーレは続ける。
「力の使い方は分かるけれど、それを使って何をどうすればいいかが思いつかないわ」
 アリアモーレは人間ではないので、人間社会に疎い。だからこそ――
「わたしに考えがあります」
 人間であるエリカが提案した。
「人間だけでなく魔族も協力し合えて、復興にも繋がることに使えたらいいと思うんです」
 そう言って詳しく説明するエリカにアリアモーレ達は賛同する。
「好いと思うわ」
「温泉は好いですねー」
 エリカが提案したのは、火の霊玉の力を開放することでマグマと地殻変動を制御し、ズェスカの温泉を復活させ地域振興にも繋げる案だ。
「どうせならボソク島とも連携して、より一層規模を大きくしたいと思っています」
 ボソク島には、土の霊玉の力を継承した【テジ・トロング】もいる。さらに言えば――
「サイクロプスさん達やケンタウロスの人達にも協力して貰って、魔族や魔物の人達との融和にも繋げたいです」
 少しでも多く、より未来に繋がるよう、夢を語るように言った。
「すぐには難しいかもしれません。でも大きな目的があれば、交流を続ける事も出来るはず。その中で信頼関係を築けるようになりたいです」
「好いわね。私も出来ることがあれば手伝うわ」
 アリアモーレが賛同する中、メフィストが懸念を口にする。
「やるとしたらー、綿密に計画を立ててですねー。環境を悪くしないようにする前提ですよねー?」
「はい」
 エリカは応える。
「生態系の保護は配慮したいです。ズェスカの人達の生活も大事ですけど、それで野生動物を絶滅させたりとかはしたくないですから」
「となるとー、生息域を動かしたりー、地形変化を事前計算して霊玉の力を使わないとですねー」
「できますか?」
「現地調査しないとですから時間が必要ですねー。あとー、他にも細々したことを手配してくれる人が要ると思いますがー、心当たりありますかー?」
「……大丈夫、だと思います」
 エリカは、これまで課題で関わった人達の顔を思い出しながら応える。
「連絡しておいた方が良いでしょうけど、今の姿だと驚かしてしまうかもしれないから……手紙を渡しておきたいんですけど、今の姿だと……」
 無理をすれば書けないことも無いだろうが、難しいことは確かだ。
 なのでメフィストが代筆を申し出る。
「内容はお願いしまーす」
「はい。それじゃ――」
 エリカは、ズェスカ温泉復活を中核とした企画書をメフィストに代筆して貰うことにした。

 エリカが企画を練っている頃、他の学園生達も話を進めていた。

「それじゃ、任せるわ」
「任せて!」
 力強く応える孫の【タスク・ジム】に、【マーニー・ジム】は書類の束を渡す。
 マーニーがタスクに託したのは、魔族に対する和平交渉を学園生が取り組むための課題群。
「諸案の原案は作っているけど、具体的に進めるには、これから詰めていく必要があるわ」
 多くが関わり、活動を続けられるよう、マーニーは難題をタスクに託す。
 それはタスクを信じているからであり、彼に今以上に成長して欲しいと願っているからだ。
(……大きくなったわね)
 少しの寂しさと大きな喜びを感じながら、マーニーからの難題を受け取るタスクに目を細めた。
 その眼差しにタスクは笑顔で応える。
「皆の力を借りて、絶対に成し遂げてみせるよ」
「頼りにしているわ。案の完成に実施、それに周知と、多くの人達の協力が必要だもの。これまでの経験を活かして、頑張りなさい」
「うん、頑張るよ。そうじゃないと――」
 僅かにタスクは言葉を詰まらせる。
 それは、消えてしまったエリカのことを思い浮かべてしまったからだ。
(エリカ部長も、魔族の人達のことを気に掛けていた。安心して貰えるように頑張らないと)
 活を入れるように気合を入れ、タスクはマーニーとは別れ、自分のするべき事に向かう。
「それじゃ、まずは先生や学園長と話をして来るよ」
「ええ、行ってらっしゃい。私は霊玉から勇者達を解放する方法を捜してみるわ」
 マーニーはタスクを見送ると、『霊玉に内在する魔力を消費することで、捕らわれている過去の勇者達の魂を解放する』計画を進めるため、その場を離れた。

 マーニーが向かった先には、相談相手となるメフィストがいた。

「学園に結界を新設するのですかー?」
「はい。それを張るための力を、霊玉に供給して貰えないかと思っています」
 マーニーは話を続ける。
「以前は、校長先生の魔力で学園結界は張られていました。それに代わる形で、霊玉には膨大な魔力を提供して貰おうと思っているんです。可能でしょうか?」
「大丈夫だと思いまーす。霊玉からの魔力の受け皿には霊樹がありますからー。一度魔力を提供すればー、あとは霊樹が周囲から魔力を集めて維持してくれるでしょー。なので問題はー、燃料となる魔力では無くー、結界を張る術者ですねー」
 マーニーは頷くと自分の考えを伝えた。
「校長先生の魔術行使に代わる手段を再現する必要があると思います。可能なら、覇王六種の方達に協力を得られれば」
「確かにあの子達ならー、どうにか出来るでしょー。しかし他の子達でも可能だと思いますしー、何か思惑があるのですかー?」
「学園に、彼らの居場所を作れればと思っているんです」
 実利だけでなく、皆で手を取り合える世界を目指し、マーニーは言った。
「理想を言えば、何も無くても、誰もが受け入れてくれることが一番良いことだと思っています。でも、まだそれは道半ばだから……まずは、お互いが協力し合える『仲間』なんだと思える状況にしたいんです」
 マーニーの願いを、メフィストは賛同する。
「良いと思いますよー。ではー、結界術自体を新しく作りましょー」
「出来るんですか?」
「大丈夫でーす。幸いー、前に張られていた結界の術式の痕跡が残っていましたからー。それを元に使い易い結界術を作りますよー」
「……それは、誰にでも使えるようなものにすることも可能ですか?」
 熱を込めて尋ねるマーニーに、メフィストは応える。
「出来ますよー。術者とは別にー、結界を張って維持する魔力源を用意する形式ですからー。魔力源を用意しないといけない代わりにー、術者の負担は減るので使い易くなりますよー」
「是非お願いします」
 前のめりになる勢いでマーニーは言った。
「魔王の脅威は無くなったと言っても、決して世界は安全なわけではないです。何かあった時に避難できる守りがあれば、戦えない人達も傷付かなくて済みます」
「それならー、小さな結界を沢山張れるような物が良いですかー」
「いえ、それだと管理が煩雑で大変なことになります。小さな町村だと負担も大変だと思いますし。だから魔法的管理が可能な国家首都や大都市に配置して、町村は有事の際にそこに避難できるようにしたいんです」
「それだとー、国とかと話をつけておかないと難しそうですねー」
「それは、私たち学園で、どうにかします」
 力強くマーニーは言った。
「国家間の協定と制度作りが必要になるでしょうけれど、それに関しては任せて下さい」
「そっちは完全にお任せしまーす。私だと無理ですー」
 お手上げというように両手を上げるメフィスト。
「はい、任せて下さい」
 やる気を見せるマーニーに、メフィストは続けて言った。
「頼もしいですねー。ではそちらはお任せするとしてー、他には何かありませんかー?」
「社会インフラの復興と開発を考えています。そちらの世界の、話を聞いて思いついたんです」
 それはメフィストの世界、煉界にいる【桃山・令花】から聞き取った知見を基にした考えだった。
「そちらの世界の蒸気技術を使って、世界中を繋げるインフラが出来れば良いと思っているんです」
「蒸気で世界を繋げるというとー、鉄道ですかー?」
「はい。これは学園だけでは無理ですから、セントリアやミストルテインの学者さん達とも協力して出来ないかと思っているんです」
「技術が進みそうで好いですねー。なんなら私の世界からー、こちらの世界に人を派遣して貰いましょうかー?」
「可能ならぜひ。もしよければ、令花さんを派遣して貰っても良いですか? 制度面などで力になって貰えそうなんです」
「分かりましたー。そちらも手配しましょー。他には何かないですかー?」
「他には……」
 少し考えてマーニーは尋ねた。
「もし霊玉の力に余裕があればですが、人形遣いの探知装置は作れませんか? いっそ人形遣いの打倒や本体発見に使えれば――」
「残念ながらそれは不可能でーす」
 心底残念そうにメフィストは言った。
「あんチクショーは、世界や神の類からの探知を避けるためー、『全知』や『遠隔探査』の類は一切効かないようにしてるのでーす。なのでアレの居場所を知るためにはー、地道にアレの残した痕跡から手繰りー、居場所を掴む必要があるのでーす。しかもー、場合によっては存在自体を擬態してる可能性もありますからー、余計に大変でーす」
「擬態、ですか?」
「そうでーす。貴女達の活躍でー、分体の1体が捕食封印されましたがー、あの時も貴女達が正体を看破してくれたので良かったですがー、そうでないと『人形遣いではない誰か』という擬態を続けていたままでしょうねー。あの時の看破が無ければー、下手すると逃げられてた可能性もありましたー」
「……本当に性質が悪いですね、人形遣い」
「そうでーす。とにかくー、人形遣いを見つけるためにはー、多くの人達の協力が必要でーす。それこそ国のような大きな組織に協力して貰ってー、怪しい事件などの情報提供や連絡組織を作らないとダメなのですがー」
「分かりました。それも協力して貰えないか協議してきます」
「お願いしまーす。頼りにしてますよー」
 メフィストの頼みに、マーニーは笑顔で応えた。

 そしてマーニーは諸問題の話し合いのため、セントリアに向かい、そこでミストルテインを始めとした国々や、煉界からの使者である令花も交え話し合いを始めていた。
 精力的にマーニーは動く。
 それは孫であるタスクも同じだった。

「助言、ありがとうございます!」
 タスクは【シトリ・イエライ】に礼を言う。
 魔族に対する和平交渉に繋がる課題群を考えているタスクだが、それを具体的にするため、多くの人達に助けを借り動いていた。
「今回いただいた助言を元に、より一層企画案を進めていきます!」
 やる気を見せるタスクに、シトリは嬉しそうに言った。
「頼もしいですね、その意気ですよ。また何かあれば、聞きに来てください。力になりますよ」
「はい、お願いします!」

 タスクは礼を言ってシトリの研究室を後にすると、今度は学園長室に向かう。
 そこには【仁和・貴人】が先に訪れていた。

「霊玉の力を使って、核となっている勇者達を受肉化できないかな?」
 学園長室に訪れた貴人は、部屋に居た【メメ・メメル】とメフィストに尋ねる。
「これは学園が所有している分だけじゃなくて、すべての霊玉に当てはめたいんだけど」
 生身の人間に宿っている霊玉、【ドーラ・ゴーリキー】に宿る火の霊玉と、テジ・トロングに宿る土の霊玉も含めて、どうにかできないかと提案した。
「お義兄さんの例もあるし、可能じゃないかなと思うんだけど」
「……みんなを復活させるってことだな」
 静かな声でメメルが応える。
 その声には、複雑な想いが込められているように感じられた。
(メメたん、気になってるよな)
 貴人は思う。
(魔王相手に、命を懸けて一緒に戦った仲間だもんな。普段は何も言わないけど、きっと気にかけてる)
 霊玉になった勇者達に対して、強い想いがある筈だ。
 それでも普段は口に出さないのは、学園長という立場と、状況を掻き回さないことを考えての物だろう。
(まぁ、ほかの陣営……各国とかが保持してる分もあるから、政治的な思惑やらの話にもなっちゃうだろうし……)
 国が絡む以上、勇者達を解放するためとはいえ、個人的ともいえる理由で霊玉を消費するのは難しいだろう。
 大義名分、あるいは霊玉を失うことによる補てんのような、代償は必要になってくるだろう。けれど――
(それぞれ今は、陣営は違えど偉大なる勇者たちを労うために、最終的には賛同してくれると思いたい)
 魔王との決戦で皆が一丸になれた時を思い出し、信じるように貴人は言った。
「メメたん、大丈夫だ」
 安心させるよう、力強く提案する。
「きっとみんな賛成してくれる。だから、受肉化の方法を考えよう。メメたんが皆と再会できるよう、オレも出来ることは全部手伝うよ」
「……そっか……」
 メメルは貴人の言葉に、小さく笑みを浮かべたあと――
「好し! そうと決まれば猪突猛進するだけだぞ☆」
 いつもの調子に戻ったメメルは、明るい笑顔で言った。

 そして、具体的にどうするかを話し合おうとする。そこに――

「失礼します――って」
「タスクくん?」
 ノックをしたあと部屋に入って来たタスクに、貴人が状況を説明する。
「こっちは、霊玉の力を使って核となってる勇者達を受肉化できないか話してたんだ。タスクくんの方は、何かあるのか?」
 他の学園生達よりも親しげに、ざっくばらんに話しかける貴人に、タスクも応える。
「魔族の人達との融和をどうにかできないかと思って来たんだ。霊玉の力を使うなら、魔族の人達にも恩恵があるように使えないかな?」
「魔族にも恩恵、か……」
 タスクの提案に貴人は考える。
(言われてみれば、そうだよな……しかし魔族に恩恵というと……何があるかな? 人間じゃないわけで、魔族ごとに求める物は違うかもしれないし……そもそも人間と魔族って、精霊王の恩恵があるかないかぐらいだよな?)
 善悪では無く、精霊王の力の限界で、加護を得られる種族と得られない種族が出たというだけだ。
(……だとすれば、加護を得られれば魔族も人間も同じになるってことで……でも今いる精霊王達だけだと足らなくて……あれ、待てよ――)
 タスクの提案を切っ掛けに、貴人は1つの考えが形になっていく。そこに――
「キイ」
 鳴き声ひとつあげ一羽の隼が、メフィストが開けていた窓から入って来た。
(えっ、この隼って……)
 見知った隼に、貴人は驚く。
 それは少し前の課題で、人攫いに浚われた魔族達を救出する際、助けてくれた隼だった。
(この隼、よく考えたら前にメフィストさんと一緒に居たよな……それに何だか、知ってる気配がする)
 よく見知った誰かが傍にいるような気持ちになる。
 それはタスクも同じだった。
(この鳥は……) 
 タスクはエリカのことが思い浮かぶ。
(何か関係があるんだろうか……?)
 タスクと貴人の視線を受けながら、隼は足で掴んでいた手紙をメメルの執務机の上に落とす。
「キイ」
「読め、ってことで良いのか?」
「キイ」
 鳴き声で応える隼に、メメルは手紙を開き確認する。
「……ふむ、なるほどなるほど。これは好いものだぞ☆」
 そう言って、タスクや貴人にも中身を確認するように渡す。
「これって」
「ズェスカの温泉復活を中核とした計画書と協力要請ですね」
 貴人は考え込み、タスクは明るい顔になる。
(これは、エリカ部長が考えた物だ)
 書いてある文字は別人のものだが、書かれている内容や文章の癖はエリカの物だ。
「実現しましょう!」
 勢い込んでタスクは言った。
「関係者には僕が話をつけに行きます。魔族の人達も関われるから、和平交渉にも繋がる筈です」
「だったらオレも手伝うよ」
 貴人は言った。
「人手は多い方が良いだろうし。一緒に行った方が良いかな? それとも手分けしようか?」
 これにタスクは、少し考えたあと応える。
「手分けした方が良いと思う。その方が時間が短くて済むし。先生達やOBの人達、それにケンタウロスさん達への呼び掛けは僕が担当するよ」
「それなら、オレは他の担当を……ああ、でも、伝手がある相手はタスクに任せた方が良いかな?」
 貴人が思い浮かべたのは、【マルティナ・シーネフォス】だ。
「マルティナくん達の協力を得られたら良いと思う、国の援護があると助かるし。そっちは任せても良いかな?」
「分かった。任せて」
 引き受けてくれたタスクに貴人は安堵すると、少し迷うよう間を空けて続けて言った。
「……他には、精霊王様方に話をしに行きたい」
「どういうことですかー?」
 メフィストの問い掛けに貴人は応えた。
「魔族との確執は、精霊王からの加護が貰えてないってのもあると思うんだ。だから、魔族のための精霊王に誰かがなってくれないかなって思って……例えばだけど、誰よりも優しいエリオンタリエくんの遺志、とか」
「キイ!?」
 驚いたように鳴き声を上げる隼。
 そこにメフィストが応えた。
「霊玉の力を使えばー、新たな精霊王を創り出すことも出来るかもですねー。ただー、人間を精霊王にするのは反対でーす」
「無理、ってことかな?」
「単に精霊王と同じ力を持つ存在にすることは出来ますがー、『無限』に耐えらないのでダメですねー」
「……どういうこと?」
 疑問に思った貴人が訊くとメフィストは応えた。
「精霊王になるということはー、この世界が続く限り在り続けるということでーす。一万年かそこらなら耐えれるかもですがー、世界が在り続ける限り無限に精神を劣化させずに在り続けるのはー、人間では無理でーす。精神が摩耗して意識が無くなるか発狂するので賛同できませーん」
「……そうなんだ、じゃあ、新しい精霊王は無理ってことかな?」
「無理ではないですねー。無限に耐えられる誰かが居れば良いだけですしー。そっちは心当たりがあるのでー、どうにかしましょー」
 新たな精霊王の件はメフィストが担当するということで話がつく。

 そのあと、タスクと貴人は分担する担当を決め、それぞれ向かった。

「それじゃ、ゴーリキくんに話をしに行って来るよ」
「頼むよ。僕は、まずはケンタウロスさん達に話をつけに行くね」

 貴人は、ドーラのいるズェスカに向かい、タスクは、学園の近くに集落を構えているケンタウロス達に話をつけに行った。

「――というわけなんです。協力して貰えませんか?」
「運送や飛脚業務か……」
 タスクの申し出に、ケンタウロスの族長である【アサ】は少し考えたあと応える。
「私の部族は、協力しても構わない。だが、そちらの申し出を実現するには、私の部族だけでは数が足らん。他の部族や魔族の手も借りないと無理だぞ」
「なら、そちらとも話をつけに行きます」
 意気込むタスクに、アサは返す。
「話をつける、か……不可能とは言わんが、楽ではないぞ。魔物や魔族の中には人間に不審を抱く者もいるし、単純に気性の荒い者もいる。そういう者達には、力を示すことも必要だ」
「覚悟の上です」
 愛刀の桜吹雪を手に取り示しながら、タスクは言った。
「これはあくまで平和のための物ですが、必要であればためらいません。どれほどの害意を向けられても受け切って、訊くつもりです」
 お困りごとはありませんか?
 それはタスクが選んだ、彼の道。
 どれほど困難だとしても、手を差し伸べ望みを聞くことを諦めず、呼び掛けようと覚悟を決めている。
 それを感じ取ったアサは言った。
「それだけの覚悟があるなら、私達も協力しよう。だからそちらは良いとして、もうひとつ、人間の方は大丈夫なのか? 我らを雇う形で使うという話だが、それを継続できるだけの協力者はいるのか?」
「大丈夫です。幾つか伝手があるので、そちらともこれから話をつけに行きます」

 タスクの伝手というのは、これまで何度か課題で関わった学園OBの【ガラ・アドム】などのことだ。
 彼の元には、【パーシア・セントレジャー】が訪れていた。

「まずは日銭を稼げるようにしないと」
 ガラの商会の応接室で、パーシアは言った。
「長期的方針も大事だけど、人心安定や治安維持のためには……人々が日々を暮らせる衣食住と仕事が最優先だものね」
 パーシアは実感を伴った言葉を口にする。
 話を聞いたガラは、それを感じ取りながらも、あえて気付かない振りをして応える。
「理想は大事だが、食う飯が無きゃ干上がるもんな、賛同するぜ。となりゃ、日払いで継続して金を出せる所に噛んで貰わなきゃなんねぇ。だから――」
「銀行業をしているストーカー家を引っ張り出すのが必要ってことね」
「そういうこった。本来なら時間を掛けたい所だが、そんなこと言ってる場合じゃねぇしな」
「ええ。早く動いた方が良いわね」
 僅かに苦い物を含んだ声で、パーシアは応えた。
 本来なら、学園とも詳細に協議して話を進めるべき事だが、今は時間が惜しい。
 それには理由がある。
 魔王の脅威が無くなった今、新たな世界で勢力拡大を目指す者達の動きは激しさを増している。
 特に商売人は動きが早い。
 各国や、様々な勢力に取り入れないかと動いており、そのうねりに多くの者達が巻き込まれ始めているのだ。
 なので速さを第一にして、ある程度は事後承諾の形で進めるのも止む無しと思っていた。
(もたついてたら、手遅れになる。商売人は目敏いものね……とはいえ、動きが早すぎる気もするけれど)
 パーシアは今回の件を進めるに当たって、自分なりに調べている。
 その中で、直感に近い胸騒ぎを抱いていた。
(悪意を持った何かが動いているような……あまり良い感じはしないわね)
 それはリバイバルになる前の経験が活かされているのかもしれない。
 魂に刻まれたそれを無視せず、パーシアは少しでも早く動こうとしていた。
「今回はスピード感が重要だから……個人として、ストーカー家を軸に商談に行くわ」
「豪気だねぇ」
 楽しげに返すガラに、パーシアは笑みを浮かべ応える。
「勿論、ガラさんも一枚噛みたいと仰るなら大歓迎」
「当然噛ませて貰うさ。こんな大勝負、乗らなきゃ商人じゃねぇ。ただなぁ――」
 悩ましげにガラは言った。
「問題は何を提示するかだ。復興事業への食い込みと労働力確保。これを軸に話をつけに行くんだろ?」
「ええ。ストーカー家に市民の衣食住確保の資金や物資を融通して貰えないか相談しつつ、ストーカー家にも、市民を労働力として優先的に斡旋するメリットを提示していくつもり」
 前にガラから聞いた話を思い出しながら続ける。
「ストーカー家が困窮してる社会的弱者を援助しているなら、乗ってくれると思う」
「確かにな。でもそれだけだと、ちょっと弱いかもな」
 軽く眉を寄せ続ける。
「ある程度の出資は引き出せると思う。ただ、そっから上を目指すんなら、より明確で規模の大きい提案が必要だ。しかもキッチリ旨味にも繋がる」
「……そうね。でもそう簡単には――」
 相談の最中、ガラの商会員が戸をノックする。
 入って来ると用件を口にした。
「学園から使いの方が来られています」
「学園から?」
 ガラは思わずパーシアに視線を向けると、彼女は無言で知らないというように首を振る。
 それを受けガラは少し考えたあと、商会員に言った。
「ここに通してくれるか?」
 しばらくしたあと部屋に入って来たのはタスクだった。
「ズェスカの温泉を核とした復興事業を進めるために力を貸して欲しいんです」
 タスクが、学園で貴人達と話した内容を伝えると、ガラはパーシアに目配せしたあと応えた。
「ボソク島も絡めて大々的にするって話だが、前にやったグルメフェスティバルみたいなのも合わせてするってことか?」
「はい。あの時協力してくれた料理人の方達にも手伝って貰って進められたらと思っています。もしイベントをすることになって司会が必要なら、僕に任せて下さい。それと企画書は、こちらになります」
 それは隼が持って来てくれた手紙に書かれていた物を抜粋した物だ。
「色々と考えられてるな……名物として食べられる石の温泉卵開発、か……面白いこと考えるけど、これってあんたが考えたのか?」
「いえ、それは――」
 エリカのことを思い浮かべながらタスクは返す。
「この企画書を記されたのは、匿名の学園生なんです。でも心配しないで下さい、ちゃんとした物で――」
 タスクが説明していると、窓の外からガラスを軽く叩く音がする。
 視線を向ければそこには、学園に訪れた隼の姿があった。
「え、なんだ!?」
「大丈夫です、協力者です」
 タスクは言うと窓を開け隼を部屋に招き入れる。
「キイ」
 隼は一声鳴くと、皆で話し合いをしていたテーブルに掴んでいた手紙を置いた。
「読め、ってことか?」
「キイ」
 隼が応えるように鳴き、ガラは中身を確かめる。
 そこに書かれていたのは、先ほどまで話していたズェスカの温泉を核とした復興事業に関する詳細な企画書と――
「異世界の技術を流用した鉄道事業か」
 ガラが口にした通り、セントレアで話し合いが始まった鉄道事業に対する協力要請だった。
 手紙の内容によると、学園生であるマーニーが提案し、協議が始まったようだ。
 その中で、協力者を求めるために連絡を回しているらしく、それに関わる手紙を隼が持って来てくれたことも書かれていた。
 そして隼の手紙は、メフィストが書いて送っているとも書いていた。
「あの髭オヤジが噛んでるのか。手紙を書いたってことは、企画者はあのおっさんか?」
「いえ、違います」
 タスクは確信を込めて言った。
「この企画を考えてくれたのは、学園生です」
「ふむ、そっか……まぁ、それならそれでいいや。今回の話は渡りに船だ。俺も全力で噛ませて貰う。その上で、分担して回らないと仕事量が多い」
 ガラはタスクに言った。
「まだこれから他にも回るんだろ?」
 企画案に記されていたのは、ガラだけでなくアルチェの領主筋とも関わる貴族関連の商人【ララ・ミルトニア】の名も挙がっている。
「俺の顔で話が出来る相手は、俺が繋ぎを入れる。だから一緒に回ろう。他にも、リーベラントも回るんだろ?」
「はい。マルティナ様に話をしに行こうと思っています」
「へぇ……そっちのコネがあるのか……ならリーベラントはそっちの伝手をメインに進めて、ミストルテインやセントリアとかは俺の方でコネ作ってるから、そこから伝手を繋げよう。あとはサイクロプスとかにも協力を頼むってことだが、そっちも俺は顔を繋いでる。一緒に回るとしよう」
「はい、お願いします」
 タスクと話をつけたあと、ガラはパーシアに言った。
「ということで、細かな所の顔繋ぎは俺達で営業してくる。だから太い金を引き出す相手として、ストーカー家からの出資話、纏めてきてくれるか?」
「ええ。何としてでも引っ張って来るわ」
「そりゃ頼もしいね。頼んだぜ」

 そして分担して話をつけにいく。
 それは貴人も同じだった。

「ズェスカの復興のためにも、力を貸してくれないかな」
 貴人の要請に、ドーラは応えをすぐには返さない。
(悩んでるのかな……しょうがないけど)
 考え込んでいるように見えるドーラに、貴人は彼女の心情をおもんばかる。
(周囲との軋轢が無くなったわけじゃない……色々と思う所はあるだろうな)
 魔王の脅威が無くなったとはいえ、魔族に対する偏見が無くなったわけではない。
 さらに言えば、魔族同士での軋轢もある。
 ドーラは一部の人間に受け入れられているようだが、逆にそれが裏切り者だと一部の魔族には思われているようだ。
(……こんな状態で、宿っている火の霊玉の力を使わせてくれと言われても、返事はし辛いだろうな……)
 ドーラを気に掛ける貴人は、気遣うように言った。
「可能な限り学園もバックアップするから心配しないでくれ。だから力を貸して貰えないだろうか?」
 これにドーラが応えようとした時だった。
 清涼な風が、ドーラ達を優しく撫でる。
「この風は……」
 ドーラは覚えのある優しい風に、空を見上げる。そこには――
「キイ」
 1羽の隼がくるりと頭上を飛んでいた。
 それはまるで、ドーラを励ましているかのように思えた。
「……そうか。そうか、分かったぞ」
 笑顔を浮かべドーラは言った。
「わちきが出来ることがあるなら、やってやる。立ち止まってなんかいられないのじゃ」
「ああ、よろしく頼むよ」
 笑顔を浮かべるドーラに、貴人は信頼を込め頼んだ。

 そして各地で話が進んでいく。
 その中で、パーシアは大きな資金を動かすため、銀行業を生業としているストーカー家と話をしていた。

「――というように、長期的な計画でも動いています。ですがまずは日々の生活が出来るよう、日払いの仕事も含めて進める必要があるんです」
 パーシアの話を、ストーカー家の家長であり、筆頭頭取でもある【ブラム・ストーカー】は静かに聞いていた。
 否定も肯定もせず、情報の全てを引き出すように、パーシアが話し易いように聞き役に徹している。
 穏やかな表情を浮かべるブラムに、パーシアは言った。
「どうでしょう? もし色よいお返事を頂けるなら、私の方から学園に話をつけさせて貰います」
「分かりました。全面的に協力しましょう」
 予想以上にあっさりと受け入れるブラムに、パーシアは逆に気に掛かる。
「ありがとうございます……念を押すようですみませんが、本当に、よろしいんですね?」
「もちろんです。大波が来ると分かっているのですから、それを乗りこなす準備はしないといけませんからね」
「……失礼ですが、どういう意味ですか?」
 真意を問うパーシアにブラムは応えた。
「今回伺ったお話ですが、間違いなく大荒れになります。多くの山師も含めて、少しでも事業に食い込みに来るでしょう」
「それは……学園としても、不備が無いようにするつもりです」
「あぁ、別に学園を信じていないわけではないのです。ただ、欲というものは無軌道で御すことなど出来ない物、というだけです。それだけに、巻き添えで力なき者が巻き込まれる……日々の糧を得るのも難しい貧者や虐げられた人々、それに私達のような魔族も例外じゃない」
「魔族、なんですか?」
「ええ。私の一族は、夜天覇道アーカード様から血を受けた血族ですから。人間種族との混血が進み血族としては薄くなりましたがね。だからこそ、他人事ではないんです」
 実感を込めブラムは言った。
「自分達の身を守るためにも、今回の件、資金を出させて貰います。ですが、私達も商売人です。無駄は困ります。そうならないよう、期待しています」
「……ええ、期待には応えてみせます」
 投げられた重荷を軽々と背負うように、パーシアは強い口調で返した。

 こうして、大きなプロジェクトが実現へと向かって積み上げられていく。
 その中で、学園生達は忙しく動いていたが、時には一息つくこともある。

「……ふぅ」
 誰もいない部室で、タスクは思わず息をつく。
 仲間と共に各地を巡り、話し合いや協議の日々が続いている。
 疲労がたまっていたが、人前ではそれを見せるつもりは無いので、こういう時に疲れを覗かせてしまう。
 けれどそれを振り払うように、軽く自分の頬を叩く。
「よしっ、がんばろー」
 気合を入れ、再び各地に向かおうとした時だった。
(これは――)
 それは1枚の手紙だった。
 見覚えがある。
 親しい気配をさせる隼が持って来ていた手紙と同じ物。
 中には、ズェスカの復興に関する、より詳細な案や、各地の状況が記されていた。
 それを考えたのが誰か、タスクは感じ取る。
(やはり、消えてはいなかったんですね……でも、こんな紙切れじゃなくて……やっぱり居てほしいです)
 寂しさを感じながらも、意識を切り替える。
「さて、行こう」
 エリカも求めているであろう、皆が手を取り合える新たな世界。
 それを実現するため、苦労を厭わず動いていくのだった。

 学園生達は、それぞれ未来に向かって動いている。
 その中で、家族の将来を考え動く者もいた。

「今日は、学園室までいっしょに来てくれる?」
「ひゃん」
 嬉しそうに尻尾をふりながら、魔法犬である【ココ】は【アンリ・ミラーヴ】に応えた。
 アンリはココを撫でてあげると、一緒に学園室に向かう。
 そこに行く理由は、ココの将来を思ってのものだった。
(ココ……)
 アンリはココのことを家族のように思い、大切にしている。
 だからこそ、今だけでなく将来のことが気になるのだ。
(ココのことを、もっと知る事が出来たら……)
 アンリがそう思ってしまうのは、ココの出自にある。
 以前、世界の根源に訪れる課題を受けたのだが、そこでアンリはココの過去を知った。
 ココは、とある魔法使いにより作り出された生物で、根源と接続できるということは分かっている。
 けれどそれ以上のことが判らないでいた。
(ココの将来のためにも、知っておきたい)
 今はともかく数年、あるいは数十年後のことを考えれば、知っておく必要がある。
(ココが長命なのは分かっているけど、もし不老不死だったら……)
 根源で見た記憶を思い出す。
 作り手である老魔法使いと共に生き、亡くなった時に上げた哀しそうな鳴き声。
(俺が死んだ後で、新しく親しい人達と出会うのかもしれない……でも、不老不死なら死別を繰り返し続けることになる……それは、可哀想だ。そうならないよう、普通の犬のようになれれば……)
 そう思ってはいるが、同時に考えている。
(可哀想だと思っているのは俺の主観で、ココ自身が普通の犬になりたいと言っているわけじゃない。だから余計に、ココのことを知っておく必要がある)
 一番良い方法をアンリは思いつけているわけではなく、だからこそココにとっての最善に近付くため、少しでも多くの知識を必要としていた。
 それを得るため学園室に訪れると、そこには異世界人であるメフィストがいた。
(この人は……)
 ココの過去を知る事となった根源への訪問。
 その時の道先案内をしてくれた人物だ。
「その子のことを知りたいのですよねー?」
「解るんですか?」
「あの時ー、貴方達を根源に送った時のことですがー、私も『観て』ましたからー。気になることがあるなら答えられますよー。何を聞きたいですかー?」
「それは――」
 アンリはメフィストに尋ねる。
「霊玉の力を使って、ココを普通の犬に変えられるか教えて欲しい。でもその前に、ココがどういう存在なのか、詳しく調べられるなら調べて欲しい。出来るだろうか?」
 これにメフィストは応えていく。
「霊玉の力を使って普通の犬に出来る可能性はありますねー。それについて詳しく話す前にー、その子のことを説明しますねー」
 メフィストは、ココがどういう存在か語っていく。
「その子は根源の一部のような存在でーす。分類的にはー、受肉化した精霊の類ですねー」
「精霊?」
「そうでーす。精霊とはー、世界法則や概念なんかが実体化した物ですがー、その子の場合は根源のー、『記憶を保存する法則』が犬の姿で具現化したものでーす」
「……それって、犬では無いってこと?」
「犬でもありますしー、精霊でもあるようなものでーす。なのでこの先ー、成長することはあるでしょうがー、生物として死ぬことは無いでしょうねー。肉体的にはー、ある程度成長したら不老不死になるでしょー。殺されない限りはですがー」
「……」
 メフィストの説明を聞いて、アンリは尋ねる。
「ココが不老不死なら……この先、愛する伴侶と巡り合えたとして、子供が出来るのかな? それに……この先ずっと、親しい相手が出来ても死別を経験し続けることに……」
「その子は強い子なのでー、受け止めて生き続けることは出来ると思いますよー」
 メフィストは、アンリを気遣うように見上げるココを見詰めたあと応えた。
「子供は出来ることはありませんしー、親しい相手との死別を積み重ねることになるでしょー。ですがその全てを受け止めて生きていくと思いますよー」
「……」
 応えを迷うように無言になるアンリに、メフィストは尋ねた。
「その子を普通の犬にしたいですかー? その子は貴方のことを信頼してるみたいですからー、貴方の望みなら受け入れると思いますよー」
 これにアンリは、苦しそうに応えた。
「……分からない……ココが長命である事を不憫に思うのは俺の主観で、ココ自身が普通の犬になりたいと言っているわけじゃないから……それに、今変えてしまうと寿命も普通になるだろうから、出来ればもっと長くココと一緒にいたい……」
「ならー、その子と話してみますかー?」
「……え? 話せるの?」
「ウチの世界にはー、そういう魔法がありますからー。元々はー、契約した動物と意思疎通する魔法ですがー、その子ならお喋りできるでしょー。多分いまの成長度合いならー、5歳児ぐらいの知性を持ってると思いますしー」
「……」
 アンリは悩むように押し黙る。
 そんな彼に、メフィストは言った。
「今すぐ決めなくても良いと思いますよー。霊玉ならー、いつでも貸し出して貰えるようですしー。どうするか決めるためにー、もっと色々と知りたくなるかもしれませんしー。その時はいつでも協力しますよー」
「……いつでも、良いの?」
「いつでも良いですよー。必要なことがあればー、気軽に呼んで下さーい。その子と話したくなったなら話せるようにしますしー、普通の犬にしたいのならー、成れるようにしましょー。他にもあればー、協力しますよー。あるいはー、もしよければですがー、その子を新しい精霊王にすることもアリですねー」
「精霊王……どういうこと?」
 尋ねるアンリに、メフィストは応える。
「霊玉の力を使えばー、魔族の人達に加護を与えられる新しい精霊王にー、その子をすることが出来るのでー、お誘いしてまーす」
「ココを、精霊王にするつもりなの?」
「別に無理やりする気は無いですよー。精霊王になれる資質があるのでー、もし良ければというだけですからー。他にも資質のある子は目星着けてますしー。たとえばー」
 そう言うとメフィストは魔方陣を展開し、一匹の子犬に見える生き物を召喚した。
「それって……」
 アンリは、その生き物が何かを知っている。
(あの時、学園に攻めてきた魔物だ……)
 一度はアンリの命を奪ったことすらある、魔王が創った魔物、シメールだった。
 初期化された魔王に影響され、シメールも子犬のような姿になっていた。
「ぴっ」
 突然召喚されたシメールは、警戒するように後ろ足で立ち、前足を振り上げ、ぷるぷるしながら威嚇した。
 そんなシメールに、ココは近付き、鼻先でちょんっと押す。
「ぴぃ」
 ころんっ、とシメールは転がると、一端ココから距離を取り、尻尾にしがみつくように突進。
「ぴぃっ」
「わふ」
 尻尾にしがみついたシメールをあやすように、ゆらゆらと揺らすココ。
 それを見ながら、メフィストはアンリに言った。
「とにもかくにもー、今すぐ決める必要はないですよー。何かあればいつでも協力しますのでー」
 これにアンリは、悩むように言った。
「ココのために、何をしてあげるのがいいのかな……」
「どうするにしてもー、一緒にいて想い出を作ってあげるのが大事だと思いますよー。だってその子はー、貴方のことが大好きでしょうからー」
 メフィストの言葉を証明するように――
「ひゃん」
 アンリに親愛を示すように、ココは無邪気に見上げる。
「……ココ」
 ココに応えるように、撫でてあげるアンリだった。

 かくして、学園生達はそれぞれ動いていく。
 それは国や地域、あるいは世界全体のような大きな物もあれば、大事な家族を想う個人的な物もある。
 けれどそれは全て、新しい明日へと向かうもの。
 未来に向かって進む、学園生達であった。



課題評価
課題経験:0
課題報酬:0
未来に向かって
執筆:春夏秋冬 GM


《未来に向かって》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2022-07-18 10:55:00
(ズェスカ上空を飛ぶ隼)

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 2) 2022-07-19 21:02:20
(火の霊玉の力でズェスカの復活を目指します)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 3) 2022-07-22 06:26:45
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。
祖母のマーニーと一緒に参加します。よろしくお願いいたします!

大まかな方針としては、
僕は2、3に取り組み、祖母は1、3に取り組む予定です。

皆さんのやりたいことで、何か協力が必要なことがあれば
是非ともご相談ください!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 4) 2022-07-23 08:04:23
現在の火の霊玉の所有者である、ドーラ・ゴーリキさんに霊玉の力を開放・制御してもらい
地殻変動を起こして、ズェスカの温泉を復活させてもらおうと思います。

また、同時にその地殻変動自体をイベントとして安全な場所から見物してもらい
『奇跡の光景』を見ることで、人々に過去と現在の勇者、
そして、自らの内に存在する未来の勇者に思いをはせてもらえればと思います。

【協力要請】
・火の霊玉の所有者、ドーラ・ゴーリキ:霊玉の力の開放と制御
・商人、ガラ・アドム:イベント周知・調整役
・商人、ララ・ミルトニア:イベントスポンサー、実行役

・アルチェ・ボソク島(料理人、ガストロフ氏・辰五郎氏):イベント連携(観光・グルメ)

・サイクロプス族:巨体と器用さを生かし、街道や橋・トンネルの整備、住居施設建築など
・ケンタウロス族:俊足と戦闘力を生かし、飛脚業務・資材や生活必需品の運送、往来者の護衛・警備など

・フトゥールム・スクエア学園生:各才能を生かし、各方面のサポート

思いつく限りの支援を待っています。
よろしくお願いします。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 5) 2022-07-23 20:58:14
魔王・覇王コースの仁和だ。
よろしく。

基本、1に取り組もうと思う。
ゴーリキくん達のことも含めて。
(エルオンタリエくんに協力できることはしておこうと思う)

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 6) 2022-07-23 22:44:02
ご挨拶が遅れてごめんなさい。
賢者・導師コース、教職志望のマーニー・ジムです。
よろしくお願いいたします。

私は「霊玉に内在する魔力を消費することで、捕らわれている過去の勇者達の魂を解放する」研究に注力するつもりよ。

具体的には、以下の優先順位で魔力を消費していきます。

1 学園結界の復活(新設)
2 ミニ結界を全世界に提供
3 社会インフラの復興(開発)
4 人形遣いの探知装置

このうち社会インフラというのは、
メフィストと桃山令花さんから、ディメ世界の話を聞いて、参考にできると思うのよね。
具体的には、上下水道、魔力発電や電線網、大陸間鉄道網などを
セントリアやミストルテインの学者たちと共同研究してみたいと思っているわ!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 7) 2022-07-23 22:57:13
僕の方は、魔族に対する和平交渉(物理的説得としての戦闘を含む)を学園生が取組む課題群として構築することに取り組みます。
高度な【説得】【信頼】が必要なハードな交渉や強敵との戦闘を伴う物理的説得が必要なケースには、自分も出撃します!

あと、ズェズカのイベントで司会進行したいので、ウィッシュプランに記載しています!

今回も文字数ギッチギチで頑張りました!
皆さんのプランも楽しみにしています。

今回もご一緒いただきありがとうございました!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 8) 2022-07-23 23:37:26
おばあちゃま・・・メフィスト様の敬称抜けてるよっ!!

お詫びして訂正いたします。(DOGEZA)