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GDプロジェクトに協力しよう


ストーリー Story

 GDプロジェクト。
 それは異世界の技術を組み合わせ作られる巨大機体計画のことだ。
 発案者は、【シルク・ブラスリップ】。
 彼女は今、学園で危険な実験を行ったことで休学処分(潜入工作のための演出)となったあと、異世界出身者が中核メンバーである異界同盟と呼ばれる組織の客分となっていた。
 そこで、他のマッドサイエンティスト……――もとい、研究者達と共に、巨大機体の製造に勤しんでいる。
 そんな彼女が、ライバル研究者のリーダー格、【ヤン】に呼ばれていた。

「何の用?」
 フェアリータイプのエリアルなので、ふわふわ浮かびながらシルクはヤンに尋ねた。
「パイロットを寄こせって言うならダメよ」
 シルクのチームのパイロット、【ゼノ】は、類まれな操縦技術を使い試作段階で目を見張る動きを見せている。
 そのデータをフィードバックさせることで、シルクの研究チームはメキメキと成果を上げていた。
「ゼノは、うちの大事なパイロットなんだから。良いパイロットが欲しいなら、そこは自分で見つけて来ないと」
「道理だな」
 落ち着いた声が返ってくる。
「……なにかあった?」
 気になったシルクが声を潜めて聞き返すと、ヤンは応えた。
「この場所は盗聴対策をしてある。だから話すが、お前は学園と繋がってるな?」
「そりゃ、学園生だもの。休学中だけど」
「心配しなくても、その事で糾弾するつもは無い。むしろ協力を求めたい」
「……どういうこと?」
 ヤンの真意を窺うように尋ねると、明朗な応えが返ってきた。
「結論から話す。私も含め、研究チームを学園に保護して欲しい」
「……危機感を抱くようなことがあったってこと?」
「ああ」
 ヤンは応えると、詳細を説明し始めた。
「うちの研究チームの情報が、上に抜かれてる。それに合わせて、うちで製造中の機体の資材が流れているのを確認した。十中八九、うちのチームの研究成果を上が奪うつもりだ」
「それは……あり得るわね」
 異界同盟の壊滅のため、潜入工作をしているシルクだが、ここしばらく内部で活動している中で、下部組織の上前を撥ねるような組織だというのは感じ取っていた。
(死人兵なんてものを作ってるぐらいだし)
 死者を利用した兵隊を作り出し、異界同盟に所属している者に『死後の利用許可』を求めるような組織だ。
「研究成果だけ取られて捨てられるぐらいなら、学園に確保された方がマシってことね」
「そう取って貰って構わない」
 ヤンは平然と応えると、続けて少し悪い顔を覗かせながら続ける。
「学園に保護を求めるが、その前に、少し協力して欲しい」
「……内容によるわね」
「なに、お前にとっても悪い話じゃない。そちらの機体と、こちらの機体の模擬戦を行いたい。その協力を学園に求める」
「逃げ出す前に実験したいってことね……良い性格してるわねぇ」
「否定はしない。だが、お前も望むことだろう? 自分が作った物を、思う存分動かしたいと思うのは、作り手の性だろう?」
 そこまで言うと、続けて――
「巨大ロボットでバトルしたいって思うだろ」
「分かる」
 即答だった。
「やっぱり作るだけじゃなくて、動かしてみたいわね」
「くくくっ、さすがシルク・ブラスリップ。私がライバルと認めただけはある」
「はいはい。おだてても何も出さないわよ?」
「本音を口にしただけだ。まぁ、それはそれとしてだ。実利の面でも必要だ」
「実利?」
「ああ。うちのデータをパクってる部署だが、資材の動きが派手だ。恐らく大量生産しているはずだ。しかも死人兵をパイロットにしている可能性が高い」
「……そこまで予想できるの?」
「うちで作っている機体の性質と、死人兵の相性は良いからな」
 ヤンのチームが作っているのは、機体と操縦者の感覚を一体化させる、『人機一体型機体(エクステンションマシン)』。
 操縦者の肉体と機体を同調させることで高度な動きを実現できるが、操縦者に機体の損傷が痛みとして伝わる欠点がある。
 だが死人兵なら、死んでいるのでお構いなしというわけだ。
 それに対してシルクのチームが作っているのは、ゴーレム技術を併用した、機体にパイロットの補佐をするAIが組み込まれた『相棒型機体(パートナーマシン)』。
 操縦者が誰でもある程度は動かせる利点がある代わりに、一定以上の動きを取るには、AIと操縦者の相性が重要になってくる欠点がある。
「――とにかくだ」
 話を纏めるように、ヤンは言った。
「勝手に研究成果を盗み出すような奴らの下でこれ以上やってられんので逃げることにした。だがその前に、組織の金と資材で実験して、今ある機体をチューンナップする」
「……それを使って暴れて、逃げ出すってわけね」
「ああ。どうだ? この話、乗らないか?」
「乗った」
 笑顔で応えるシルクだった。

 そして学園に連絡が来ます。内容は――

 異界同盟の兵器部門研究者を、学園に保護要請。
 ただしその前に、巨人機体の稼働実験に協力を求む。
 その際に得られたデータで機体を強化し、異界同盟からの脱退時に使用する計画を進行中。

 というものでした。
 これを受け、学園は課題を出し、アナタ達は協力するのでした。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 7日 出発日 2022-10-29

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2022-11-08

登場人物 4/8 Characters
《ゆう×ドラ》シルク・ブラスリップ
 エリアル Lv17 / 村人・従者 Rank 1
「命令(オーダー)は受けない主義なの。作りたいものを、やりたいように作りたい……それが夢」 「最高の武具には最高の使い手がいるの。あなたはどうかしら?」 #####  武具職人志願のフェアリーの少女。  専門は衣服・装飾だが割と何でも小器用にこなすセンスの持ち主。  歴史ある職人の下で修業を積んできたが、閉鎖的な一門を嫌い魔法学園へとやってきた。 ◆性格・趣向  一言で言うと『天才肌の変態おねーさん』  男女問わず誘惑してからかうのが趣味のお色気担当。  筋肉&おっぱい星人だが精神の気高さも大事で、好みの理想は意外と高い。 ◆容姿補足  フェアリータイプのエリアル。身長およそ90cm。
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。
《幸便の祈祷師》アルフィオーネ・ブランエトワル
 ドラゴニア Lv23 / 教祖・聖職 Rank 1
異世界からやってきたという、ドラゴニアの少女。 「この世界に存在しうる雛形の中で、本来のわたしに近いもの が選択された・・・ってとこかしらね」 その容姿は幼子そのものだが、どこかしら、大人びた雰囲気を纏っている。  髪は青緑。前髪は山形に切り揃え、両サイドに三つ編み。後ろ髪は大きなバレッタで結い上げ、垂らした髪を二つ分け。リボンで結んでいる。  二重のたれ目で、左目の下に泣きぼくろがある。  古竜族の特徴として、半月型の鶏冠状の角。小振りな、翼と尻尾。後頭部から耳裏、鎖骨の辺りまで、竜の皮膚が覆っている。  争いごとを好まない、優しい性格。しかし、幼少より戦闘教育を受けており、戦うことに躊躇することはない。  普段はたおやかだが、戦闘では苛烈であり、特に”悪”と認めた相手には明確な殺意を持って当たる。 「死んであの世で懺悔なさい!」(認めないとは言っていない) 「悪党に神の慈悲など無用よ?」(ないとは言っていない)  感情の起伏が希薄で、長命の種族であった故に、他者との深い関りは避ける傾向にある。加えて、怜悧であるため、冷たい人間と思われがちだが、その実、世話焼きな、所謂、オカン気質。  お饅頭が大のお気に入り  諸般の事情で偽名 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを胸に、学園での日々を過ごしている
《ビキニマン》ソフィーア・ル・ソレイユ
 ドラゴニア Lv12 / 武神・無双 Rank 1
生き別れたパートナーを探して、学園にやってきた、ドラゴニアの少女。 金髪ゆるふわカールのロングヘアー。前髪をひまわりのヘアピンで左にまとめている。褐色肌の筋肉質で、無駄な肉は一切ないのにバストとヒップはかなり豊か。大きな翼と長い尾。火柱のような角。後頭部から下顎、鎖骨辺りまで、サンライトイエローの鱗が覆っている。 いかにも女の子らしい容姿だが、性質は男性的で、なぜ、胸に目が入らないのか、よく、男性に間違えられる。 実直で騎士道精神にあふれている。だが、敵にたいしてはわりと容赦ない。闘争本能が強く、戦いを、とくに強者との対峙を好む。そのため、いつでも戦えるよう、入浴中以外は、ビキニアーマーを着込んでいる 武器収集癖があり、手入れを決して怠らない かなりの大食漢。なんでもおいしそうに食べるが、中でも『地球』で食べた、ラーメン、炒飯、餃子が大好き。彼女曰く、『”食”の宇宙三大至宝』であるとか。 ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 5つの誓いを貫くために、日々鍛錬を欠かすことはない 諸般の事情で偽名 ある人物に、ずっと片思いをしている。勇気がなくて、告白はしていないが、それとなくアピールはしている。 酒乱なので、酒を飲ませてはいけない

解説 Explan

●目的

巨人機体の稼働実験に協力する。

●方法

潜入工作をしているシルク・ブラスリップが便宜を図ってくれるので、実験協力者として潜入できます。

潜入時に行える事は、次の三つ。

1 機体操縦者になる

機体に乗って模擬戦闘を行いましょう。

相棒となるAIが補佐してくれるので、初めてでも動かせます。

巨大ロボット戦のプレイングをお書きください。

2 AI製造に協力する

機体のAI製造に協力してください。

参加者の性格などを読み取ったりして作ることも出来ますし、真っ新のAIと会話形式で色々と「教える」ことで人格形成が出来ます。

PCに似たAIを作ったり、好みの性格(言動なども込み)AIを作ったりできます。

その他、自由にお書きください。

3 逃走時の下準備

研究員達と事前に話を通したり、逃走時の下準備をしたりできます。

これら3つの結果は、次の「異界同盟ロボット兵器部門壊滅エピソード」の際に影響が出ます。

●巨大ロボット

全長10m前後の巨大人型兵器です。

AI搭載型の『相棒型機体(パートナーマシン)』と、機体と操縦者の感覚を一体化させる、『人機一体型機体(エクステンションマシン)』があります。

どちらに乗り込んでも可能です。

どういう武装などを持っているかは、プランで書いていただければ、内容に応じて実装されます。

ただし、極端すぎるもの



エターナルブリザード

使ったら相手は問答無用で死ぬ

無敵バリアー

どんな攻撃も無効

とかは無理です。

その他、内容によって調整する可能性もありますが、基本は好きに書いて下さい。

次の「異界同盟ロボット兵器部門壊滅エピソード(決着編)」では、敵ロボットとの戦いで、今回の武装が基本装備され戦闘描写されます。

以上です。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、異界同盟ロボット兵器部門壊滅エピソード(決着編)の前振りの回になっています。

今回の内容次第で、決着編に出てくるロボット戦の描写が変化する予定です。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。


個人成績表 Report
シルク・ブラスリップ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
GDプロジェクト発動じゃあぁぁぁーッ!
(脱出計画と全体統括、相棒型機体の調整を主に担当)

●脱出計画
自分たちとヤン、それに2機の巨大ロボットが最優先で、それ以外は最小限で迅速に。
次の優先設計図と必要資材の目録で、それ以外の予備パーツとか消耗品は諦めて学園で調達し直す算段。
(そのための設計図と目録)

諦めた物品は勿体ないし脱出時の囮に使用。ひきつけて派手に爆破とか混乱を狙えれば
(ダミーのロボや重要物品ぽくおいていくなど)

●相棒型機体の調整
開発コード『GD-X1』
正式名称はアンリたちから希望あればそれで、なければ次回にも
パイロットはアンリ、AIはアルフィオーネに一任し、自分はハードウェアとアンリ、AIのすり合わせを。

剣と盾での近接戦を希望との事だったので、モーションはそれにあわせて装甲は盾の届かない死角を重点。ある程度絞る事で防御と機動性と両立できたら。

その他、アンリやアルフィオーネから装備の希望があれば、資材の足りる限りで頑張ってみる。
「○○ね…よかろう、やったろうじゃないのっ!」

アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
シルクさんから実験協力者が必要だと聞いた。
機械はよくわからないので、操縦者として参加する。
『相棒型機体』に乗り、基本の操縦から戦闘まで、AIというものにフォローをお願い。
シルクさんに、AIの調整を頼んだ。
機体は剣と盾を主装備にした、近接戦タイプにする。
戦いの中で、【衝撃享受】【二連斬り】【基本盾術Ⅳ】【基本剣術Ⅳ】の知識を働かせる。
盾で身を守りながら敵に接近し、剣で斬る。
巨大機体というのは、どんな攻撃をするかわからないので、相手についての解析や対策の助言も、してほしい。
自分でも出来るだけ、回避や受け流しをして、勝ちを狙う。

アルフィオーネ・ブランエトワル 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:315 = 112全体 + 203個別
獲得報酬:13500 = 5000全体 + 8500個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
AIの作成に協力する。元いた世界にも、こういった人型兵器はあり、操縦を助ける様々な機能が搭載されていた。それらの機能をAIに搭載可能かどうか、シルク・ブラスリップに尋ねながら、作りあげていく

AIの人格は、自分の人格をトレースし、それに微調整を加える。名前をリュミエールと名付ける。基本的には操縦士の生命の維持を最優先とする思考をを持たせる

「“光”と言う意味よ。あなたは闇を払う光になるのよ」

シルクに聞くこと

一定の動きを覚えさせて、操縦士の任意、もしくはAIの判断で発動させる機能:特に回避や防御は瞬間の判断が求められるが、即座に操縦に反映させるのは困難


操縦士が怪我などしたときの全自動モード


アドリブA

ソフィーア・ル・ソレイユ 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
人機一体型の機体のパイロットとして参加。


機体名:ソルヴィクトル

特徴:フルプレートを纏った騎士のような姿で、太陽のように黄金に輝く機体。これは魔法や光学兵器のダメージを減衰させる塗料の影響である。近接戦闘タイプで、武器は剣と盾、目から出るビーム、指先の機関砲。操縦士の行使する魔法を増幅して、放つことができる


模擬戦

まずは、ウォーミングアップという感じで、すべての機能、武装をそれぞれ、試すように戦う

「なるほどな。だいたいわかった。ここからが本番だぞ!」

射撃武器で牽制して、肉薄しての接近戦を展開。今回はあくまでデータ取りなので、相手の機体も自分の機体もダメージを受けすぎないように注意して戦う


アドリブA

リザルト Result

「来てくれて、ありがとう!」
 GDプロジェクトへの協力に集まってくれた3人に、【シルク・ブラスリップ】は弾んだ声で礼を言った。
「助かるわ。これでプロジェクトも、大きく前進ね」
「ん、頑張る」
 シルクの意気込みに応えるように返したのは、【アンリ・ミラーヴ】。
「実験協力が必要だって聞いてる。機械はよくわからないので、操縦者として参加する」
「それなら、わたしはAIの制作に協力するね」
 穏やかな声で言ったのは、【アルフィオーネ・ブランエトワル】。
「わたしの元いた世界にも、人型兵器はあったから。それに搭載されていた、操縦を助ける機能を再現できるかどうか、試してみようと思う」
「ならぼくは、操縦者として協力させて貰おうかな」
 アルフィオーネのあとに続けて言ったのは、【ソフィーア・ル・ソレイユ】。
「ぼくも、元いた世界で人型兵器には慣れている。向こうの機体との比較も含めて試してみるよ」
 そこまで言うと、疑問を口にする。
「そういえば、二種類機体があると聞いたんだが、ぼくはどちらに乗ればいいのかな?」
「そうね……」
 シルクがバランスを考え思案していると――
「うちに1人貸して貰おうか!」
 シルクのチームとはライバルの、【ヤン】が近付いて言った。
「そちらにはもう、【ゼノ】というエースパイロットがいるんだからな。こちらにスカウトしても文句はあるまい」
「ということなんだけど、いい?」
 シルクに問われ、ソフィーアは応えた。
「ああ、構わない。でも、どうせならひとつ要望があるんだ」
「要望?」
「ゼノ、というエースパイロットと勝負させて欲しい。どうせなら、強い相手と戦ってみたいんだ」
「いいわね。良いデータが取れそう」
 シルクは笑みを浮かべると、近くを通り掛かったゼノに声を掛ける。
「ゼノー、ちょっとこっち来てくれる?」
「なにかあったか?」
 怪訝な顔で近付いたゼノに事情を説明すると、彼はソフィーアに視線をぶつけながら言った。
「あんたが、俺とやり合うってことか?」
「君が、その気になってくれればね」
 視線をそらさず返しながら、ソフィーアは言った。
「君、シルクの所属パイロットの中じゃ、一番強いらしいな。完膚なきまでに叩き潰してあげるよ」
 半分演技、半分本気の挑発をぶつけてみる。
 ソフィーアは戦闘マニアの気質があるので、戦いは望む所だ。すると――
「……上等だ」
 ゼノは楽しげな笑みを浮かべ応えた。
「こちらも歯応えのある相手とやりたかったところだ。存分に、やりあおうぜ」
「もちろん。楽しませてあげるよ」
 お互い獰猛な笑みを浮かべ、楽しげに言った。それを受けて――
「では、うちに来て貰おう。機体の調整などがあれば言ってくれ」
 ヤンに言われ、ソフィーアは彼について行った。

 こうして2チームに分かれ、それぞれ準備を開始した。

●相棒型機体
「これが、うちで作っている機体、開発コード『GD-X1』よ」
 全長10m。見上げるほどの大きさのそれは、どこか騎士を思わせる形態をしていた。
 命なき鋼の塊というより、どこか生物を思わせるフォルムをしている。
「外見は、向こうの人機一体型と大差は無いんだけど、決定的に異なってるのは、操縦者を補助するAIが組み込まれているかどうかね」
 そう言うと、手の平大の球体を示す。
「これがAIのコアよ。ミストルテインのゴーレムコアをベースに、飛空艇都市世界のアニマやスレイブの技術を応用しているわ。ある程度は、予定した性能を得ているんだけど――」
 少し言いよどんだあと、続ける。
「アニマやスレイブのような自律性を持った物にするのが、難しい所ね。あちらは、話を聞いたら魂があるみたいで、実体がないだけで生きてるらしいし」
 ある意味、新たな生命を1から作らねばいけないため、難しい所だ。すると――
「それなら、役に立てると思う」
 そう言うとアンリは、周囲を気に掛けながらシルクに尋ねる。
「ここで、秘密の話をしても大丈夫?」
「ええ。技術を盗もうとしてる奴らがいるのは分かってるから、盗聴に盗撮対策は万全よ」
「良かった。なら――」
 アンリは雷を固めたかのような宝玉を取り出す。
 するとそれは解けるように消失し、代わりに魔法陣が展開。そこから――
「お、始まってるみたいだな」
 雷の精霊王【イグルラーチ】が現れた。
「え? どういうこと?」
 驚くシルクに、イグルラーチが応えた。
「学園から話があってな。何でもAI? っての創るらしいじゃんか。それならオレっちも手を貸そうと思ってな」
 話を聞くと、人間種族であるカルマを『生命種』として創り出したのはイグルラーチとのこと。
「まぁ、カルマ達が命を持ったのは、そこにいたるまでの歴史があったんだけどな。魔法使いに使われるだけだったゴーレムが、魔法使い達と関わる内に意志を持つようになって自身を変化させていったからなんだが。AIってのも、それに近いと思わねぇか?」
 シルクの要請を聞いた学園が助力となる者を探す中で、イグルラーチも聞きつけて協力に来てくれたらしい。
「異界同盟っての、なんか色々とオレっち達のことも調べてるっぽいから、それを防ぐ意味でも協力してぇんだ。だから頼み込んで、つれて来て貰ったってわけさ」
 アンリの肩にふわりと乗ってイグルラーチは言った。
「んじゃま、ちょいと加護を与えるぜ」
 そう言うと、イグルラーチはAIコアの上をくるりと飛び、雷を思わせる魔力を注ぎこむ。
 すると、脈動するようにコアは輝きを放った。
「これでよし。ここから命を持つかどうかは、人との関わり合い次第だが、そっちはよろしく頼むぜ」
 精霊王の加護を受けたAIコアを前に、シルクは考え込んだあと言った。
「ハード面では、必要なスペックを備えてるから、問題はソフト面なのよ。それをどうにかするのに協力して欲しいんだけど」
「AIのプログラミングということ?」
 問い掛けたのは、アルフィオーネ。
「幾つか方式があると思うけど、入力者の思考を模倣させる形式なのかしら?」
 アルフィオーネが言うのは、エキスパートシステムと呼ばれるものだ。
 AIに質問と回答を行うことで精度を上げる方式で、入力者の影響が大きく出る。
 それに対し不特定多数の対象から大量の情報を得る形式、ディープラーニングの形式もあったが、今回はエキスパートシステムに近い形だった。
「ええ、その形式で進めるつもり」
 シルクが答える。
「一からプログラミングすると膨大になるから、基幹プログラムだけ組んで、それ以外は模倣代替(エミュレート)させる形式にしてるの」
「どういう方法を取るの?」
「対象者の精神と同調させて、人格をトレースするの。幸い、そういう知識を持った異世界出身者がいたから、無害で使えるわ」
「なら、わたしが教育係についてもいい?」
 アルフィオーネは言った。
「操縦士の命を第一にできるような子にしたいの」
「分かったわ。それじゃ、お願いできるかしら?」
「ええ。任せて」
 アルフィオーネがAIの教育係を引き受けてくれたので、シルクはアンリの要望を聞くことにする。
「操縦をお願いするんだけど、どういうタイプの物がいい?」
 これにアンリは熟考したあと――
「生身で戦う時と、同じタイプがいい。剣や盾で、戦えるようなの、あるかな?」
「近接戦タイプってことね。任せて、もちろん用意してあるわよ」
 そう言うとシルクは、該当の機体の前にアンリを案内する。
「近接戦制圧型、猛撃騎兵(アサルトナイト)。開発番号、GD-X1-AK」
 それは剣と盾を装備した、騎士の甲冑姿を模した姿をした機体だった。
 近接戦で戦えるよう、可能な限りの俊敏性と装甲性を兼ね備えている。
「簡単に言うと、速くて硬くて器用に動ける機体ね」
 ふわりと高く浮かぶと、ぺしぺしと装甲を叩きながら説明を続ける。
「構成素材自体を魔法で強化した上で、魔法で防御膜を展開することも出来るわ」
「……すごく頑丈ってこと?」
「ええ。設計コンセプトとして、近付いて戦えるようにするために、その距離まで攻撃を受けても耐えられるように作ってるの。ただ――」
 少し言いよどんだあと、シルクは続ける。
「この機体はスロースターターなのよ。戦闘中に魔力の出力をゆっくりあげて戦う仕組みだから」
「時間が経てば経つほど強くなる?」
「そういうこと。だから戦い方にコツが要りそうなんだけど」
「分かった。なら、生身で戦う時の、やり方で工夫する。そういうの、出来る?」
「オッケー。そういうことが出来るように調整するわ。他に、何か要望は無い?」
「……なら――」
 アンリが具体的に要望を告げると、シルクは笑顔で応えた。
「任せて。腕の振るい甲斐があるわ。やったろうじゃないのっ!」
 楽しげに言うと、メカニックチームと話し合い、アンリの要望を聞きながら調整していった。

 その頃、アルフィオーネはAIに行っていた自身の人格トレースを終わらせていた。

「これで完了です。あとは、対話形式で教育してやって下さい」
 AI担当の技術者に言われ、アルフィオーネはAIコアに呼びかけた。
「お誕生日、おめでとう。【リュミエール】」
「――リュミエール?」 
 呼び掛けられたコアは、仄かな輝きを明滅させながら音声で応えた。
「リュミエールって、なに?」
 どこか子供のように尋ねるAIコア――リュミエールに、アルフィオーネは応えた。
「あなたの名前。“光”と言う意味よ。あなたは闇を払う光になるのよ」
「光――闇、払う?」
 不思議そうに聞き返す。
「分からない。教えて」
 幼子が母親にねだる様に、リュミエールはアルフィオーネに尋ねていく。
「光、光子が満ちてること? 闇、光子が不足してること? 正しい?」
 どこかたどたどしく、与えられただけで自分の物にしていない知識を馴染ませるように問いを重ねていく。
 それにアルフィオーネは、慈しむように応えてやった。
「光は、外だけじゃなく、人の内にもあるの。あなたにも、きっとあるはずよ」
「外、内?」
 不思議そうに、そして好奇心を滲ませながら、リュミエールはアルフィオーネに尋ねていく。
 それは子供が、母親に尋ね教えて貰うようだった。
 たわいのない、けれど大切な言葉を積み重ね、最初は硬かったリュミエールの口調は、少しずつアルフィオーネに似ていった。その中で――
「貴女は、私に教えてくれた。私は、貴女の心を写し取った。私は、貴女にとって、なに?」
 どこか渇望するような響きを滲ませ、リュミエールは問い掛ける。
 これにアルフィオーネは、想いを口にした。
「リュミエール。わたしは、あなたを、わたしの子供のように想っているわ」
「子供……――」
 アルフィオーネの答えに、リュミエールは無言になると、今までになくコアを瞬かせる。
 それは葛藤の輝きのようでもあり、成長の光であるようにも見えた。そして――
「分かったわ!」
 リュミエールは嬉しそうに言った。
「アルフィオーネは、ママなのね!」
 これにアルフィオーネは、くすりと笑みを浮かべ――
「ええ、そうよ。リュミエール」
 コアをそっと撫でた。
 その後も、明確な口調になったリュミエールと、アルフィオーネは何度も言葉を交わし、やがて1つの命題を口にした。
「ママ。わたしは、何のために生まれたの?」
 存在意義を、リュミエールは求める。
「わたしは機体制御AI。操縦者の補助をして、助けるモノ。だから操縦者の言うことを、全部叶えた方が良い?」
「……わたしは、それを望まないわ」
 言い聞かせるように、アルフィオーネは言った。
「戦いでは生き残ることを最優先に考えなさい」
 それは戦士として、同時に守る者としての信念。
「死して戦果を残しても意味などないわ。例え敗れても、生きてさえいれば必ず、雪辱を晴らす機会が訪れる」
 コアに触れ、願うように言った。
「生きなさい。あなたも、あなたの操縦者も。生きて、守れるようになりなさい」
「生きて、守る……――」
 再びコアは、激しく瞬く。
 アルフィオーネの言葉を取り込み、成長しているのだ。そして――
「うん。守るね。生きて、守るよ」
 リュミエールは自身の存在意義を宣言した。それを聞き――
「……ありがとう」
 アルフィオーネはリュミエールのコアに触れながら、願いを口にした。
「あなたには関係ないことだけど、近々、わたしは……わたしたちは元いた世界に帰還する」
「……いなくなるの?」
 寂しそうに言うリュミエールに、アルフィオーネは微笑みながら応える。
「この世界から、離れてしまうの。世界の繋がりはつづくけれども、恐らく、当分の間、そう、数十年は来られない」
 リュミエールを見詰め、言った。
「魔王を退けたとはいえ、戦いの火種はそこかしこにある。ここ、異界同盟のように」
 託すように、言葉を送る。
「だから……わたしの代わりに、学園のみんなを助けて、守ってほしい。罪無き、力なき人々の明日を」
「……うん。安心して、ママ」
 リュミエールは、アルフィオーネの期待に応えるように返した。
「皆を守るよ」
「……ありがとう、リュミエール」
 心を通わせるような会話を続け、リュミエールをさらに成長させた頃、近くを通り掛かったシルクにアルフィオーネは言った。
「この子に、操縦者を助けるような機能をつけてあげたいの」
「いいわよ。どんな機能?」
「自動操縦が出来る機能が欲しいの。一定の動きを覚えて、操縦士の任意か、リュミエールの判断で」
「戦闘補助と緊急時の全自動モードの実装ね。任せて、それなら調整範囲内だわ」
 そう言うとシルクは、機体制作メンバーに声を掛ける。
「AI制御の調整をお願い。仕様は――」
 説明すると、続けて――
「――あとは、アンリ専用の機体を作ろうと思うから、手伝って。コンセプトの詳細はアンリの要望を聞いて欲しいんだけど、大まかには――」
 チームリーダーとして指示を出した。
 皆がテキパキと動いてくれるのを確認し、シルクはアルフィオーネに声を掛ける。
「これで大丈夫。あとは……――ここを逃げ出す時の下準備をしたいんだけど、手伝ってくれる?」
 声を潜めて訊くシルクに、アルフィオーネは笑顔で応えた。
「ええ。可能な限り手伝うね」

 そうしてシルクのチームの準備が進む中、ヤンのチームの操縦者として向かったソフィーアは要望を聞かれていた。

「可能か不可能かは気にせず欲しい機能を言ってくれ」
 ヤンは言った。
「アンタは、宇宙航行が出来るレベルの科学力がある世界の出身と聞いている。そんなアンタの意見は値千金だ。ぜひ頼む」
 これにソフィーアは笑みを浮かべ応えた。
「なら、全力で戦えるようにして欲しい」
「全力で、か」
「ああ。なにしろぼくらは、近々、元いた世界へ帰るからな」
 想い残しが無いよう、ソフィーアは要望を口にした。
「これが学園での最後の戦いとなるだろう。思いっきり暴れさせてもらう。悔いを残さないように」
「素晴らしい。望む所だ」
 狂乱じみた笑みを浮かべヤンは返す。
「それだけの想いがあるなら、戦いは素晴らしいデータを残してくれるはずだ」
 ヤンは自分のチームに向かって声を上げた。
「最高の機体を作るぞ! シルクのチームも最強の機体を作ってくる! パイロットはゼノだが、こちらも素晴らしいパイロットを確保した! この絶好の機会を逃すな!」
 雄たけびを上げるようにチームの皆は応えた。
 そして機体整備開始。
「近接戦闘タイプか?」
「ああ。それと体表には魔法や光学兵器のダメージを減衰させるようにして欲しい。元いた世界だと、特殊な塗料を塗るやり方とかもあったよ」
「なるほど……分かった、再現するから意見をくれ」
 ソフィーアの意見を積極的に取り入れ、作られたのは――
「うん。良い出来だね」
 太陽のように黄金に輝く機体を見上げ、ソフィーアは満足げに言った。
 フルプレートを纏った騎士のような姿の機体は、主武装は剣と盾。
 目からビームを放ち、指先には機関砲を装備。
 操縦士の行使する魔法を増幅して放つ機能までついていた。
「戦う時が楽しみだ」
「シルクの方で準備が出来たら――」
「準備できたわよー」
 応じるようなシルクの声に――
「頼む。思う存分、戦ってくれ」
「望むところだよ」
 ソフィーアは応え、模擬戦は始まった。

●模擬戦
 お互い十機同士の戦闘。
 開始の号令と共に動いたのは、ソフィーアだった。
「なるほど、こういう感じか」
 操縦を開始すると同時に、五感が機体と同調し、巨人の如き高い視野で周囲を見渡す。
 肌の感覚さえあり、自分が機体になったかのようだ。
「さて。まずは、ウォーミングアップだ」
 元いた世界で、この手の知識はあるので手際が良い。
「射撃武器から試させて貰う」
 対戦相手の集団を視認。
 それだけで照準が行われ――
「ファイア」
 音声入力で目から光線を放つ。
 それよりわずかに早く、対戦相手は盾を前に出し防ぐ。
 ソフィーアの機体と同じく光学兵器の対策がしてあるのか、命中はしたが表面が白熱するだけで耐えている。
「なら、実弾はどうだ?」
 目からビームを放ちつつ、指先を向ける。
 同時に轟音を上げながら放たれる実体弾。
 実体弾で盾の表面が削れ、削れた箇所に当たったビームが、盾を弾けさせるようにしてさらに破壊する。
(実体弾で削ってから光学兵器が良さそうだ)
 あとでレポートを書く時のことも考え性能判断しつつ、逸る戦意の手綱を握るように戦いに挑む。
 対戦相手も実体弾を撃って来るが、盾を構え突進。そこから――
「魔法も試してみるか」
 ヤンに頼んでいた機能を使う。
 生身と同じように、魔力を全身に走らせ、背中に集中。
 すると竜の翼が顕現。
 羽ばたきと共に跳躍し、一気に対戦相手の只中に飛び降りた。
「なるほどな。だいたいわかった。ここからが本番だぞ!」
 機体に装備した大剣を振う。
 相手が受けやすいよう、あえて大きなモーションで振りかぶり、相手が構えた大盾に撃ち当てる。
 轟音。
 大剣と大盾がぶつかり、身体を震わせるほどの衝撃を撒き散らした。
「うん。良い感じだな」
 相手が防いだので、ソフィーアは楽しげな声を上げる。
 今回はあくまでデータ取りなので、相手の機体も自分の機体もダメージを受けすぎないように注意して戦うつもりで、序盤は訓練生を相手取る教官のような気持ちで戦っていたが――
「好いね! 強ぇじゃねぇかアンタ!」
 真正面から突っ込んでくる機体が1体。
「狼牙の氏族ゼノ! タイマン勝負を挑ませて貰う!」
「ははっ、決闘か? 好いよ。やろう!」
 ソフィーアは大剣を構え、竜爪を機体の腕に纏い、堂々と宣言する。
「フトゥールム魔法学園生ソフィーア・ル・ソレイユ! 全力でいかせて貰う!」
「望む所だ!」
 地響きをさせる勢いで、激戦が始まった。

 一対一の決闘。
 本物の戦闘であれば、他の機体も協力して潰しに掛かる所だが、今回は性能実験とデータとを兼ねた模擬戦。
 それもあり、皆はそれぞれ思い思いに戦っている。
 もちろん、アンリも例外じゃなかった。

「アンリ、細かい操作は私が担当するわ」
 機体サポートAI、リュミエールが言った。
「操縦に慣れるまで、貴方に被害が出ないように立ち回るから、慌てずに操作を覚えて」
「ありがとう。分かった、少し任せるね」
 受けと回避に専念してくれるリュミエールに操縦を任せながら、アンリは改めて機能確認。
(必要な場所は、前も後ろも、見える)
 全方位モニターで、周辺の状況は映し出されている。
 その上、意識しただけでズームや拡大もされるので、戦況把握もし易い。
(これなら、大丈夫)
 アンリは二つ用意されている操縦ハンドルを左右の手で握り操作を始める。
 盾を構えながら前進。
 対戦相手が光学兵器を放とうと視線を向けて来たので、遮蔽するように盾を構える。
 命中すると同時に軽い衝撃が弾けるが、よろめくほどではない。
(盾を構えてれば平気……でも、他の攻撃が来る?)
 今までの戦闘経験から、反射的に盾を構えたまま横移動に移る。
 同時に響く射撃音。
 実体弾で削り、さらに光学兵器で追撃しようとしているのだ。
(このままだと、こっちが不利になる。だったら――)
「リュミエール」
「どうしたの?」
 呼び掛けに応えるリュミエールに、アンリは応えた。
「距離を詰めて戦う。その方が、得意だから。近付くまでのサポート、頼める?」
「もちろんよ。ダメージが最少になるよう、任せて」
 アンリの意図を汲み、リュミエールはサポートする。
 大雑把にアンリが機体を操作し、細かな制御をリュミエールが補足。
 結果、まるで生き物のような滑らかな動きで、巨大な機体が疾走する。
 その動きに驚いたのか、対戦相手は慌てたように実体弾を連続掃射。
 アンリの機体は高速で動きながら回避し距離を詰めていき――
(……誘いを掛けられてる?)
 相手の動きが単調なのに懸念を覚えたアンリは、リュミエールに尋ねた。
「相手の武装とか、分かる?」
「少し待って――解析完了。身体強化系の魔法を使う兆候があるわ。何かしかけて来るかも?」
「分かった。なら――」
 相手の狙いを看破するべく、アンリは守りを重視して盾を構えて突撃。
 盾で弾丸を受け止めながら突進してくるアンリに、対戦相手は即座に戦法を変化。
 重心を僅かに落とすと、一気に加速。
 それは野生の獣のような滑らかで力強い動き。
(祖流還り?)
 ルネサンスのアンリには、その動きは慣れ親しんだものだ。
 咄嗟に機体操作し、盾を使い捨てるようにして前に出し――
 凄まじい衝撃と轟音と共に、盾は切り裂かれ砕け散る。
 見れば、対戦相手の手には肉食獣を思わせる爪が発生し、それが盾を切り砕いたのだ。
「あちらの機体は、操縦者の魔法や種族能力を機体規模で再現できるみたいね」
「同じこと、出来る?」
「難しいわ。でも、向こうに出来ないことが出来るわ」
 リュミエールは応えると、機体が薄らと輝く。
「魔力炉から供給される魔力を、機体全体に展開したわ。これで攻撃力も防御力も機動力も、全部上がるの。ただ――」
「何かあるの?」
「出力を上げるのに時間が掛かるの。逆に言うと、時間が経てば経つほど強くなれるし、それに――」
 リュミエールは、機体の必殺技とも言える機能を伝えた。
「――決まれば、こちらが勝てるわ。それまで耐える必要があるかもだけど」
「分かった。やってみる。サポート、お願いするね」
「もちろん。任せて、貴方の力が最大に出せるよう、サポートするからね」
 1人ではなく、リュミエールと協力してアンリは戦う。
 凄まじい速度で襲い掛かる対戦相手に対し、アンリは腰をどっしりと落とし受けの構えで捌く。
 相手の爪を剣で受け、重心をズラし捌いた所で剣を振う。
 その度に、薄らと輝くアンリの大剣は、剣閃の煌めきを宙に描いた。
 アンリの戦闘技能をリュミエールがサポートし、一進一退の攻防が続き――ふわりと対戦相手は後方に跳び距離を取ると――
「ちょいタンマ」
 対戦相手が通信してきた。
「盾、新しいの取って来る? どうせなら、万全でやった方が良さそうじゃん?」
「いいの?」
「その方が楽しそうじゃん? こっちも全力出す準備するから、それでどう?」
「分かった。準備する」
 お互い武装を整えると、改めて対峙し――
「それじゃ、始めよっか」
「うん。いくよ」
 最初から全力激突。
 対戦相手は、粗流還りに技能と魔法を加えた鋭く素早い攻撃を途切れず連撃。
 対するアンリは、これまでの戦闘経験に裏打ちされた技量とリュミエールの技能を活かし、大剣と盾に輝く魔力を纏い捌いていく。
 一進一退。
 まさに互角の戦いが続き――
「一気に行かせて貰う!」
 対戦相手は過剰出力を解放し、全力突進。
 加速の勢いも乗せ、機体に具現化させた野生の爪を振う。
 対するアンリも、全力を出す。
 機体全身を輝かせ、盾と大剣で応える。
 右の切り裂く爪を盾で受け、左の貫く爪を大剣で捌き、対戦相手の体勢を僅かだが崩す。
 だが、代償は大きい。
 盾は切り砕け、大剣は爪の勢いを流した反動で亀裂が入る。
 これに対戦相手は――
(よしっ、勝った!)
 体勢は崩れているが、少し立て直せば、もう一撃なら先ほどと同じ威力の攻撃が出来る。
 勝ちを確信し――
(――あ、ヤバい)
 思い違いを悟る。
 盾と大剣を潰したアンリの動きは、それ自体が次の攻撃への繋ぎ。
 自由になった両手を、獣のあぎとのように向ける。
 同時に全身がこれまでになく白く輝き、顔や肩の甲冑が少し開き虹色の光輝を放出し――
「今よ、アンリ」
「分かった」
 アンリは膨れ上がった魔力を解放。
 高速機動で距離を詰めると、両掌に集めた魔力を収束し、一気に放った。
 狙いは、対戦相手の右腕。
 輝ける魔力の奔流が一瞬で飲み込み、吹き飛ばした。
 その勢いで対戦相手は2、3度地面を転げたあと――
「こうさーん」
 残った手を上げひらひらと動かした。

 アンリの激戦が終る頃、ソフィーアとゼノの戦いも決着が近付いていた。

「やるな!」
「君もな!」
 楽しげな声を上げながら、2人は戦いを続けている。
 苛烈な激しさを見せながら、同時に奇妙な調和も感じさせた。
 それはまさに戦闘の武装曲(ワルツ)。
 相手を打ち倒す意思を込めながら、同時に讃えるように全力を振う。その果てに――
「いくぞ!」
「来い!」
 手先の小細工は一切抜きで、真正面からぶつかった。
 相手の守りを弾くように、盾と盾をぶつける。
 轟音と共に盾は砕け、間髪入れず振るわれる大剣。
 お互い真正面から打ち合い、一瞬の拮抗の後、両者の大剣は木端微塵に砕けた。
 衝撃で、互いに体勢が崩れる。
 しかしすぐさま立て直し、ソフィーアは龍爪を機体に纏い、僅かに早く振るおうとし――
(体勢が崩れた!?)
 それは右足の関節部分の破損を原因とした、踏み込みの甘さから来るものだった。
(感覚同調してたのに気付けなかっ――違う、同調し過ぎて痛みを無視しちゃったからだ)
 それは激しい戦闘の最中、瀕死の人間が痛みを忘れ戦うのに似ている。
 あまりにも機体と操縦者の感覚が同期し過ぎたせいで、破損に気付かなかったのだ。
(それでも――!)
 体勢を崩しながらソフィーアは龍爪を振るい、対するゼノも、機体の魔力を手に集中し鋭い爪の形で固定すると突きを放つ。
 両者互いのコックピットに当たる瞬間――ぴたりと寸止めする。
「……あんたの勝ちだ」
「いや、相討ちだね」
 互いを讃えるように言いながら、2人の戦いは決着を見せた。その後――

「機体の状態を感覚のフィードバックで実感できるのはいいのだが、戦いで興奮してると結構忘れがちだからなぁ」
 ソフィーアは機体性能を褒めながら、改善点を伝えた。
「一旦冷静になるためにも、機体の状態を表示する機能があった方がいいかもな」
「同調し過ぎると自分の肉体感覚と同じになり過ぎて却って全体把握が難しくなるってことか……貴重なレポートで助かる。早速改善だ!」
 ヤンはチームと一緒になって機体調整を始めた。
 それはシルクも同じ。
「さぁ、もっと良い物作るわよ!」
 チームに発破をかけ、自分も調整に加わる。
 それもあり、さらに機体性能が良くなっていったが――

「機体は我々に譲渡して貰う」
 異界同盟の上層部から来たという一団により、風雲急を告げた。
「どういうことよ?」
 シルクが前面に出て、ヤンも含めた他のチームも喧嘩腰で対峙すると、相手は平然と言った。
「出資者である我々が成果物をどうしようと自由だ。反論は許可しない。すでに接収は始まっている」
 そう言うと回収部隊が現れ、次々持っていこうとする。
「それがあんた達の『答え』ってわけね」
「そうだが、なにか、ごふっ!」
 問答無用で試作型高圧魔力収束砲をぶっ放すシルク。
「き、貴様、こんなことしてタダで――」
「タダで済ますわけないでしょうが!」
 相手よりも先にシルクがキレた。
「あんたらなんかに渡すもんは捻子一つ無いってことよ!」
「ふざっ……調子に乗るなよ、貴様らの作った機体はすでに回収が――」

 ドン!!

「ひっ! なんだ!?」
 突如響く爆発音。
 それは機体の回収に向かった先で起った物だ。
「はーはっはっはぁ! 見事に引っかかってくれたわね!」
 高らかにシルクは言った。
「あんたらが回収に向かったのはダミーロボよ! 余計なことしようとしたら爆発するようにしてあったのよ!」
「き、貴様ら! 図ったな!」
「それはあんたらでしょうがー!」
「ぎゃー!!」
 ぶっ飛ばされる異界同盟上層部員。
「こっちにリソースよこさないあんたらが悪いのよ! まっ、元からアッチ側なんだけどねーっ!」
 そう言いながらシルクは、仲間に声を掛ける。
「さぁ、逃げるわよ! 設計図と資材目録以外は捨てていってもいいわ! このまま学園と合流よ」
 シルクの呼び掛けに応じ、機体や車両で皆は一目散に逃走。
 異界同盟は追おうにも、仕掛けられた爆弾に巻き込まれそれどころではなかった。

 そして無事、学園に合流。
 一通りの手続きや事情聴取を終わらせた後、ヤンがシルクに近付き言った。
「大半の資材は爆破したが、幾らかは持っていかれたかもしれん」
「それで良いのよ。狙い通りってやつね」
「どういうことだ?」
「アルフィオーネと協力して、仕掛けをしてるのよ」
 話を聞くと、アルフィオーネの元いた世界の技術を流用し、マーカーを仕掛けているとのこと。
「これであいつらが、いつどこで動き出すかも掴めるわ。きっちり、あたし達を利用しようとしたツケは払って貰わないとね」
「ふっ、ふふっ、いいぞシルク・ブラスリップ。その時は我々も協力しよう」
「頼むわよ。倍返し以上にしてやらないとね!」
 シルクの呼び掛けに、力強く応えるヤン達であった。

 かくして、無事に脱出を成功させ、機体と製造技術を確保する学園生達であった。



課題評価
課題経験:112
課題報酬:5000
GDプロジェクトに協力しよう
執筆:春夏秋冬 GM


《 GDプロジェクトに協力しよう》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 1) 2022-10-22 07:20:07
ドーモ、GDプロジェクト主任マッドサイエンティストのシルクです。よろしく…

え、いや、ちょっとマジで?
マジでメカ戦やっちゃっていいわけ?
(PL註.というわけで中の人ともどもすっごい混乱中です。拙に協力者募集)

えー、あたしのチームはGD世界(グロリアスドライブ)の技術に、空挺都市(俺の嫁とそそらそら)世界の人工生命『アニマ』『スレイブ』技術を掛け合わせたAI協力型の『相棒型機体』で開発を進めてるわ。

あたしはフェアリータイプだし開発者なのでパイロットは予定なし…誰もいなければやるけど、期待しないでよ?
メンバーの集まり具合にもよるけど『逃走時の下準備』と全体調整を主にしようかなっと。
(なので、割と好き勝手弄っていただいて大丈夫です)

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 2) 2022-10-24 23:18:26
教祖・聖職コース、アンリ・ミラーヴ。よろしく(尻尾ぶんぶん)
よくわからないけど、大事なことだと聞いたから、手伝う。
知らない事ばかり、だから俺は操縦者になる。
AI搭載型にする。
戦い方は考えてるところ。

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 3) 2022-10-27 08:55:17
1名様いらっしゃーい。
今回もよろしくね、アンリ

操縦者たのめるなら、あたしは先の宣言通りバックアップでいくわね。

AIの性格とか、得意分野とか希望ある?
戦い方がわかればこっちもそれに合わせて調整してみるから、よければよろしくねー

《ビキニマン》 ソフィーア・ル・ソレイユ (No 4) 2022-10-28 03:04:39
人型機動兵器の操縦士が入り用ときいて参上したぞ。

ぼくが元いた世界での所属先、CGFでは、人型機動兵器の操縦は基本技能だ。まぁ、実戦では使ったことはないが、問題ない。

人機一体型の機体をかりうけることにしよう。痛いのは慣れている。

《幸便の祈祷師》 アルフィオーネ・ブランエトワル (No 5) 2022-10-28 03:10:43
教祖・聖職者専攻の、アルフィオーネ・ブランエトワルよ

どうぞ、よしなに

ソフィ―が言った通り、わたしも一応、操縦技術は習得はしているのだけど、わたしはAIの作成を手伝わせてもらうわね。

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 6) 2022-10-28 07:59:24
みんな、よろしく。

>シルクさん
返事が遅れて、ごめん。自分一人で、やるところだった。
AIは特に決めてない。戦い方は、剣と盾の近接戦、かな。
考える時間、少ないから、合わせにくかったら、機体を別々で、やる?
どちらの案も、考えておく。

《ゆう×ドラ》 シルク・ブラスリップ (No 7) 2022-10-28 20:32:57
結構集まれたわね。
ソフィアとアルフィオーネもよろしくねー

AIはアルフィオーネがやってくれるなら、あたしはハードのほう担当させてもらおうかしら。

>アンリ
剣と盾の近接タイプね。承ったわ
あたしの方はざっくり基礎理論固めって感じだから合わせは全然大丈夫よ

《ココの大好きな人》 アンリ・ミラーヴ (No 8) 2022-10-28 23:34:16
>シルクさん
ありがとう。本番では、よろしく。