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その、証明


ストーリー Story

「これは……」
 自身を中心に広がった『陣』に、【リスク・ジム】は息を飲んだ。
 最初は、何かしらの魔法陣だと思った。けれど、その認識は型を成す光の中で即座に否定された。
 それは、『陣』ではなく『図』。赤い。朱い。紅い。黄昏より昏く。焔より深く。血よりも艶めかしい、深紅の『陰陽図』。
「協力してくれて、感謝デース」
 リスクの背後に立った、髭の紳士が言う。おどけた道化の様な、けれど捉え処のない存在感。【メフィスト】と名乗った彼は、別の世界の。其処でなお異端とされる『道化の魔女』と呼称される存在。数多の理と過程を経て、此方の世界に協力する事になった彼。出会ったリスクに焦がれた失せ物を見つけた様な笑みを向け、こう切り出した。
 ――その『罪』を、少々使ってみては如何デスかー? 世界の……否さ、若き勇者達の剣の足しに――。
 断る理由はなく。
 そして、むしろ望む事で。
 だから、リスクは此処にいる。
「『饕餮』さんと、封印の止め釘である『八彩災華』の事は御存じデスネー?」
 頷く。自分は、その件の為に動いているのだから。
「何ともメンドーな方ですが、今のままおネンネしててもらうには状況が悪すぎマース。魔王さんの件についても。そして……」
 ――可哀想なロミオとジュリエットの件にしても――。
 『放っておくつもりはないデショー?』と問われ、また頷く。
 そう。自分が見たいモノ。如何なる犠牲もない、確かな未来。可能性。
 『結構な事デース』。満足そうに言って、道化の魔女は続ける。
「饕餮の封印を縛る止め釘。八彩のうち『赤土』・『蒼火』・『黒風』・『白雷』・『紫水』の五彩が挫かれ、残るは『鈍闇(にびやみ)』・『金光(ごんこう)』・『無彩(むさい)』の三彩。けれど、これ等は特に強力。正味、学園の生徒さん達だけでは重過ぎるデース」
「……犠牲が、出ると?」
「イエース」
 軽い道化じみた声。けれど、秘められる真摯さが事の危うさを如実に伝える。
「なので、『助っ人』を呼びマース」
「助っ人……?」
「そうデース。チョー強力な助っ人デース」
 一体何を、と問いかけようとした声を飲み込む。メフィストの気配が一変していた。
「『死』は常に『生』と共にありマス」
 語る声は厳かにして深淵。空気が、シンと張り詰める。
「故に、『死』を導くには道となる『生』が必要なのデス。絶対的な『死』に抗える、不変たる『生』が」
 ザワリ、と揺らぐ。空気が。世界が。怯える様に。
「ミスター・リスク。貴方は正に適任なのデス。己が罪に、己の生を縛り付けた貴方は」
 陰陽図が輝く。静かに。何かの存在を、示す様に。
「さあ、頑張ってください」
 道化が、告げる。憐れむ様に。
 
 リィイイイ……。
 
 音が、聞こえた。
 地の底の。此処でない場所。囁く様な、蟲の声。

 視界が覆われた。漆黒の羽と、青い燐。舞い上がる、数多幾多、無数の『蝶』。
 襲い来たのは、恐怖。絶望。そして、虚無。違う事なく、かつて身に受けたあの感覚。
 心臓に。魂に。爪を立てて這い上がって来るソレは正しく。
 ――命を引きずり込む、『死』の気配――。
――あん――?
 苦悶の中で、声が聞こえた。
 酷く、不思議そうな。少女の声。
――何で死なねぇんだ? コイツ――。
――この人、自分の死を『定めてる』。魂が縛られて、ソレ以外では至れない――。
 もう一つ、別の少女。
――へぇ――。
 幼い声が、笑う。
――そいつは、難儀だねぇ――。
 気づけば、舞い飛ぶ蝶の群の中に少女が二人。無羽のエリアルらしき、ツインテール。ルネサンスらしき、ショートカット。
 荒い息をつくリスクを興味深げに眺める彼女達に、メフィストが語りかける。
「応じてくれて、感謝しマース。ミス・ディアナ。ミス・レム。そして……」
 視線を向けず、恐怖に硬直するリスクの目も逸らさせながら。
「『黒死の虚神・イザナミ』……」
 リィイイイイ……。
 黒い死を纏った異形の神が、空ろな音で虚ろに答えた。

 ◆

「……此の期に及んで、饕餮の目覚めを促すか……。愚かなり、現世の者共……」
 雷鳴の様に猛く、けれど金剛の様に厳かな声が地を揺らす。
 目の前に座する異形の巨人を見上げながら、【白南風・荊都】はクフフと笑う。
「まあ、そんなに怒りんせんでくんなましな。あちらにもどうにもなりんせん事情とおっしゃるモノがあるのでありんす」
「……『魔王』の事か……」
 『でありんすねぇ』などと言って笑う荊都を胡散臭そうに睨み、巨人は言う。
「脅威に相対するに、別の脅威を持ち出すなど、其れこそが愚の骨頂であろう。其れを手にした者が、悪しき心を持たぬとは言い切れぬ。そも、其の力が人の意に添うモノかすらも伺い知れぬ。何故、其れが……」
 二つの顔。四つの眼差しが宙を仰ぐ。かつての惨劇を、憂う様に。
「幾星霜経つとも分らぬのか……」
「ま、其れが『人』とおっしゃるモノでありんすからねぇ」

 ――果てに煉獄で嘆く様がまたオツで――。

 黄金の眼差しが、ギロリと睨む。内を読まれる伝手はないが、一応体裁は整える。
「まあ、お気に入りんせんなら、しっかり査定して差しあげるがよろしいかと。かの方々が、滅尽の御方様と並ぶに足るかどうか。どの道、打ち釘の一本であるぬしを挫けねば、どうにもなりんせんので。ねぇ……」
 眼鏡の奥の目が、クニャリと歪む。まるで、その信念の先に在る悲劇に期待する様に。そして紡ぐ名は、八つの災いにて最強の其れ。
「光の災・『金光の宿儺(ごんこうのすくな)』様――」
「是非も無し」
 言って、地響きと共に立ち上がる巨体。四本の手に光が集約し、輝く黄金の剣と化す。背に負った光輪が眩く輝き、閃いた煌めきの落とした影が闇となって蠢き出す。
「来るが良い、今世の守護たる勇者達よ。その理と力を持ちて、此の宿儺を諭して見せよ。挫いて魅せよ。其れすら成せぬのならば……」
 輝き渡る金色の光。称える様に、闇が騒めく。
「そも、饕餮と並ぶに足る望み、此れ無しと知れ!」
 咆哮。迸る光が、道を造る。かの者達を、此の戦場へ導く運命(さだめ)の導。
 鳴動する光と闇。その狭間で、幻想の様に何かが揺らぐ。
 『混沌』と言う名の、幻想の扉。其れを見て。
「負ければ恐ろしい魔に喰われ、勝てば怖い魔が起きる。どっちに転んでも、まあオツな御話……。と、おっしゃるか……」
 向こうにいる、少女を思い。
「勝てなきゃ、可愛いお姫様は助けられんせんけどねぇ?」
 邪の妖女はまたクフフと哂う。
 そんな彼女を女性の形成す闇の災、『鈍闇の飛縁魔(にびやみのひのえんま)』が胡散臭そうに斜め見た。

 ◆

「ねえ、レム……」
「何だよ?」
 かったるそうな相方に、死憑きの巫女は語り掛ける。
「わたしは、わたしの世界が好きよ」
「知ってる」
「皆が命を賭して守った世界が、大好き」
「ああ」
「この世界の人達は、皆と同じくらい『綺麗』かしら?」
「知らねぇよ」
「わたし達の世界に、来るそうよ」
「だってな」
「汚されるのは、嫌だわ」
「…………」
「だからね、わたしはピエロのおじ様の召喚に応じたの」
「…………」
「見極めるわ。この世界の人達が、大丈夫なくらい『綺麗』かを。そう、例え戦うしかない相手でも……とか?」
「……気に入らなかった、どうすんの?」
「気に入らなかったら?」
 クスリと、笑う。
「決まってるじゃない?」
「決まってる?」
「そう、決まってるの」
「……あー、そうだなー」
 クスクスクスと、笑い合う。
 二人を抱く様に舞う、黒く蒼い蝶の群れ。
 リィイイイイイ……。
 死が、唄う。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 7日 出発日 2022-03-18

難易度 難しい 報酬 多い 完成予定 2022-03-28

登場人物 8/8 Characters
《比翼連理の誓い》オズワルド・アンダーソン
 ローレライ Lv22 / 賢者・導師 Rank 1
「初めまして、僕はオズワルド・アンダーソン。医者を志すしがないものです。」 「初見でもフレンド申請していただければお返しいたします。 一言くださると嬉しいです。」 出身:北国(リゼマイヤ)の有力貴族の生まれ 身長:172㎝ 体重:60前後 好きな物:ハーブ、酒 苦手な物:辛い物(酒は除く) 殺意:花粉 補足:医者を志す彼は、控えめながらも図太い芯を持つ。 良く言えば真面目、悪く言えば頑固。 ある日を境に人が触ったもしくは作った食べ物を極力避けていたが、 最近は落ち着き、野営の食事に少しずつ慣れている。 嫌悪を抱くものには口が悪くなるが、基本穏やかである。 ちなみに重度の花粉症。 趣味はハーブ系、柑橘系のアロマ香水調合。 医者を目指す故に保健委員会ではないが、 保健室の先輩方の手伝いをしたり、逃げる患者を仕留める様子が見られる。 悪友と交換した「高級煙管」を常に持ち、煙草を吸う悪い子になりました。
《不屈愛の雅竜天子》ミサオ・ミサオ
 ドラゴニア Lv18 / 魔王・覇王 Rank 1
「ミサオ・ミサオ。変な名前だろう。 この名前は誰よりも大切なあの子からもらったんだ。」 名前はミサオ・ミサオ。無論本名なわけがない。 外見年齢は20代、本年齢は不明。 本人曰く100越えてんじゃないの、だとか。 職業はギャンブラー。 学園に入る前は彫刻師、薬売りなどいくつか手に職を持っていた。 魔王コースを選んだのは、ここが楽だと思ったからだそうだ。 遠慮なくしごいてくれ。 性格はマイペースで掴み所がなく飄々としており、基本滅多に怒ることがない。 面白そうなことや仲の良い友人が居れば面白そうだとついて行き、 好きな人や大切な人にはドロドロに甘やかし、自身の存在を深く刻み付け、 飽きてしまえば存在を忘れて平然と見捨てる外道丸。 いい子には悪いことを教えたり賭け事で金を巻き上げ、 そして悪友のオズワルドや先輩先生にこってり絞られる。 恋愛したい恋人欲しいと言っているが、一途で誰も恋人を作ろうとしない。 たくさん養ってくれる人大好き。 趣味は煙草と賭け事。 特技は煙草芸、飲み比べ、彫刻。
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《ゆうがく2年生》樫谷・スズネ
 ヒューマン Lv14 / 勇者・英雄 Rank 1
「ただしいことのために、今の生がある」 「……そう、思っていたんだけどなぁ」 読み方…カシヤ・スズネ 正義感の強い、孤児院生まれの女性 困っている人には手を差し伸べるお人好し 「ただしいこと」にちょっぴり執着してる基本的にはいい人 容姿 ・こげ茶色のロングヘアに青色の瞳、目は吊り目 ・同年代と比べると身長はやや高め ・常に空色のペンダントを身に着けており、同じ色のヘアピンをしていることも多くなった 性格 ・困っている人はほっとけない、隣人には手を差し伸べる、絵にかいたようなお人好し ・「ただしいことをすれば幸せになれる」という考えの元に日々善行に励んでいる(と、本人は思ってる) ・孤児院の中ではお姉さんの立場だったので、面倒見はいい方 好きなこと おいしいごはん、みんなのえがお、先生 二人称:キミ、~さん 慣れた相手は呼び捨て、お前 敵対者:お前、(激昂時)貴様
《真心はその先に》マーニー・ジム
 リバイバル Lv18 / 賢者・導師 Rank 1
マーニー・ジムよ。 普通のおばあちゃんとして、孫に看取られて静かに逝ったはずなんだけど…なんの因果か、リバイバルとして蘇ったの。 何故か学生の時の姿だし。 実は、人を探していてね。 もし危ないことをしていたら、止めなければならないの。 生きてる間は諦めてたんだけど…せっかく蘇ったのだから、また探してみるつもりよ。 それに、もうひとつ夢があるの。 私の青春、生涯をかけた行政学のことを、先生として、みんなに伝えること。 これも、生前は叶える前に家庭持っちゃったけど、蘇ったいま、改めて全力で目指してみるわ。 ※マーニーの思い出※ 「僕と一緒に来てくれませんか?」 地方自治の授業の一環でガンダ村に視察に行ったとき、そこの新規採用職員であったリスク・ジムからかけられた言葉だ。 この時点で、その言葉に深い意味はなく、そのときは、農地の手続きの案内で農家を回る手伝いといった用件だった。 「よろしくお願いします。」 これ以降、私たちの間では、このやり取りが幾度となく繰り返されることとなる。 その後、例のやり取りを経て婚約に至る。 しかし、幸せの日々は長くは続かない。 結婚式の前夜、リスクは出奔。著作「事務の危機管理」での訴えが理解されない現状に絶望したとのことだが… 「現状の事務には限界がある。同じことの繰り返しじゃ、世界は滅ぶよ」 結婚前夜の非道な仕打ちよりも、消息を絶つほど思い詰めた彼の支えになれなかったことを今も後悔している。 ※消滅キー※(PL情報) リスク及びリョウに感謝を伝えること 片方に伝えると存在が半分消える(薄くなる) メメ・メメル校長はこのことを把握しているようで、これを逆手にとって消滅を遠ざけてくれたことがある。 (「宿り木の下に唇を盗んで」(桂木京介 GM)参照)
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に

解説 Explan

【目的】
 『金光の宿儺』・『鈍闇の飛縁魔』・『無彩の混沌』を倒し、『封印領域』への扉を開く。

【状況説明】
 賽の河原の様な平地。

【エネミー】
【光の災:金光の宿儺(ごんこうのすくな)】
【格】
 7
【生態】
 二面四手四足、体高6メートルの鬼神。
 かつて饕餮に滅ぼされた種族の王。饕餮が目覚める事無き様に、封印の要を務める。高潔な武人。
【本能】
 『飛閃脚』:距離を無視し、瞬時に隣接する。
 『輝光転生』:背に負った光輪から光を放つ。絶えた闇を呼び起こす。
【属性得意/苦手】
 闇/闇
 物理・魔法共に有効。闇属性の場合、ダメージが倍になる。
【得意地形】
 地
【戦闘スタイル】
 近距離型。
 『光刃』:隣接したPC一体が対象。防御した場合、1~10の範囲で『削り』ダメージが入る。
【状態異常】
 無し。

【闇の災:鈍色の飛縁魔(にびやみのひのえんま)】
【格】
 5
【生態】
 女性の形の闇の怪異。
 知性は伺えるものの、言語を発する事はない。
【本能】
 対象の影に重なる。その影を具現化する。
 全ての影が撃破されれば消滅するが、『輝光転生』で再生する。
【属性得意/苦手】
 光/光
 具現化した影に対し攻撃可。物理・魔法共に有効。
 光属性の攻撃は、2倍ダメージ。
【得意地形】
 影。
【戦闘スタイル】
 特殊型。
 影子(かげこ):影の具現。1Rにつき、4体生成される。対象PCに隣接して出現。ステータス・攻撃方法は対象PCを反映。
 攻撃対象は対象PC限定。
 生成Rが過ぎると消える。
【状態異常】
 コピー対象が状態異常の能力・装備を保有していれば反映。

【無の災:無彩の混沌(むさいのこんとん)】
【格】
 無
【生態】
 4対の翼を持つ不定形の硝子玉。
 封印領域の『扉』。
 撃破する事で道が開く。
【本能】
 光と闇がある限り、干渉を受けない。
【属性得意/苦手】
 無/無
 物理・魔法共に有効。
【得意地形】
 無
【戦闘スタイル】
 特殊型。
 『魂鏡(たまかがみ)』:受けたダメージと同量のダメージを反射する(防御不可)
【状態異常】
 無し。


作者コメント Comment
【追加情報】

【NPC】
【ディアナ・ティール&レム・ティエレン】
 異世界『煉界』の住人。イザナミの巫女達。
 【メフィスト】が『助っ人』として召喚。
 目的は、煉界に干渉を始めたゆうがく世界を見定める事。
 役目は果たすが、ゆうがく世界を『不可』と見た場合、牙を剥く可能性もある。
【行動】
 PC達には存在を晒さない。遠くから戦いを見つめる。
 PC達(ゆうがく世界)を認めた場合、退去の際に饕餮との対峙において助けとなる『何か』を残す。

【黒死の虚神・イザナミ】
 ディアナに憑く『死の疑似八百万』。
 『告死の魔眼』を持ち、視線で射抜いた万物万象に絶対の死を与える。
【行動】
 エネミー3体のうち、PLが選択した1体を撃破する。
 その後、ゆうがく世界の自衛機能によって強制送還される。

 ※PL限定情報。PCはあくまでディアナ達の存在を知らない。

【白南風・荊都(しらはえ・けいと)】
 今回も煽る。

【GMより】
 もうちょいです。頑張r(字数)



個人成績表 Report
オズワルド・アンダーソン 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:10
獲得称号:---
前回は皆さんに迷惑をかけてしまった…でも、大丈夫。今は冷静です。
「でも、急がなくてはいけないのに。時間がないのに!!!」

優先順位:光災>闇災

行動基準:攻撃>サポートのオールラウンダー


隣接した際にはマドガトル、ヒドガトルで攻撃。
魔力の羽衣、アクラ・バスキューマで防御、弾けた水滴はアクエラに変えて攻撃。
希雨の恵みで仲間を癒やし、雨で濡れた部分にブリジラで動きを鈍くさせる。


影の攻撃防止に空中の水滴をブリジラで、3体を氷結。1体は槍イカか杖で殴る。
後半で命の輝きの能力を持って防御。仲間を庇います。

ミサオ・ミサオ 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:10
獲得称号:---
心情:
遠方から帰還すれば、なんだこの重苦しい雰囲気は。
新・ドロップデッドの爆発に巻き込んでやろうかい?なんて。
ま、俺達ならなんとかなるって。

優先順位:光災>闇災

戦闘:近距離攻撃メインの壁役サブ
「部分硬質化」を駆使し「龍爪撃、切り落とし」等の近距離攻撃の技能を組み合わせる。
防御に、部分硬質化と千代古令糖の守りで耐性を持たせ、我が身を盾に仲間を守る。
回復手段は特急薬草。

自身が影に囲まれた際は「立体機動、龍の翼」で空を飛び避け、回転しながら切り落とし。
「龍翼演舞:花」で仲間にバフを送りつつ、
敵の視線をこちらに向くように大翼で大きく見せ舞う。
「見ろよ魔王ども、魔王ってのは勇者達に花を送るもんだぜ」

クロス・アガツマ 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:513 = 171全体 + 342個別
獲得報酬:18000 = 6000全体 + 12000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:10
獲得称号:---
八彩たちに挑もう

撃破の優先順位は金光の宿儺>鈍色の飛縁魔>無彩の混沌
立体機動を駆使し、宿儺に攻撃されても致命傷は逃れるよう留意

縁魔に影子の生成を発動されたら、所作やタイミングを予め観測
俺に現れたらアン・デ・カースで立体機動を潰しプチコードで撃退
再度俺に現れるタイミングか、仲間に先に出ていて次は俺の番である時に、幽体化の透明によって姿を消し、影の出現を防げないか試みる

宿儺は弱点を突けるのを活かし、小魔獣召喚と併用のアン・デ・フィアによる拘束や、ダートガで攻め立てる
また、高貴たる行いで仲間への攻撃の負担も減らす
縁魔へはプチコードで弱点を突く

タナトス……いや、イザナミには無彩の混沌を破壊してもらおう

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:10
獲得称号:---
はは、お帰りって言っておこっか
え?何か聞いたか?さぁねー俺は伝えるつもりないよ、あんな言葉

・行動
撃破順位は宿儺>影>無彩
基本攻撃を行いつつ、残体力が6割以下の仲間を優先的に【演奏】で回復
宿儺からの攻撃は【シルト】で耐え、カウンターで【マド】
影出現時は【スプリーム・クラッシュ】を速攻で叩き込む
飛縁魔出現時は【マド】
残体力5割以下の際は【二段ジャンプ】「緊急回避」「跳躍」の合わせ技で回避

挑発で影が別対象へ引き寄せられれば背後から攻撃
影が本体から離れてどうするの?
俺の演技、中々だったでしょ。彼の事を信じてるから引き受けたの

もうさ、誰かを犠牲にするとかウンザリしてるんだよ
我儘、傲慢、大いに結構!

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:256 = 171全体 + 85個別
獲得報酬:9000 = 6000全体 + 3000個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:10
獲得称号:---
事前調査
饕餮の話が出て以来
大図書館でその来歴、性質、足跡等々を徹底的に文献調査

上記調査から
宿儺の来歴を何となく【推測】し
【信用】を得られるよう言葉と武力の両面で想いを伝えるよう努める

・言葉
饕餮の脅威は重々承知で宿儺の悲劇は気の毒に思うが
悲劇を繰り返さぬために僕たちは饕餮と手を携えるのだ
覚悟はあるし具体的な方法も準備中だ

・武力
ミサオさんと連携し宿儺と影子の波状攻撃に一歩も引かず
強い想いを必殺技に乗せて繰り出す

影子対策の【とある作戦】により
防御力や透明化など自衛手段を持たない仲間のコピーを優先して引付け
自分のコピーとまとめて
ミサオさんと手分けして面倒見る
晴天灰陣月下白刃で確実に数を減らしていく

樫谷・スズネ 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:10
獲得称号:---
八災もこれで最後か…
まさかこのようなことになるとは思わなかったが
行こう、大切な人を助けに行くんだろう?

・行動
対宿儺
接近時に【グリフォン返し】 敵攻撃時は【全力防御】
対峙しながらも彼の者の意思を知りたい
そして彼に私達の思いが届くように、刃と共に言葉も叩き込む

対影
近くの味方に影が生成された場合、味方の背後の影を優先して攻撃
自身の周囲にできた場合は【不屈の心】からの【全力防御】
シキアの合図があった際は彼への対処を優先に

残体力半数以下で攻撃>防御の傾向へ
出し惜しみはしないさ、全力で倒そう

マーニー・ジム 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:10
獲得称号:---
リーラブで仲間を回復
特に漆黒の鎌で身を削る貴人さんを重点的に
「若者はいっくらでも無茶しなさい
孫もお友達もまとめて面倒見てあげるからねっ」

闇災の挙動を見てクロスさんと素早く意見交換し
仲間の影を作って攻撃する能力を【推測】できたら
自身を幽体化で透明して影作成を防いでみる

ダートガで光災を
エーデンユートで光属性を指定した通常魔法で闇災を攻撃
光災、闇災の順で集中攻撃
戦況を見極め終局と見たら
大賢者ローブ効果で全力撃ちして止めを狙う

事前調査
タスクと常々ディメ世界の情報を共有していた

上記により
戦闘を見ていた謎の気配を察知し
その正体をある程度【推測】できそうな【幻視】を見る

上記に基づき
【信用】を得るよう対話

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:205 = 171全体 + 34個別
獲得報酬:7200 = 6000全体 + 1200個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:10
獲得称号:---
前回に引き続き八彩災華との戦闘だな

基本的には攻撃に回ろうと思う
まずは宿儺を目標に繋りの意味で攻撃属性を闇に変えて絶対王セイッ!でダメージを狙っていこう
時たま、絶対服従で特に飛縁魔あたりの行動妨害が狙えればと思ってはいる
宿儺、飛縁魔を倒すことができたら混沌に漆黒の大鎌の効果を使って侵食させていこう

アドリブA、絡み大歓迎

リザルト Result

「雛鳥達は行ったのかい?」
「ああ、向こうから丁重な『ご招待』があったからね」
 来賓用のソファに座ってゲームをしているのは、覇王六種が一柱【無尽覇道・女華】。彼女に答えて、【メメ・メメル】は向かいの席に着く。
「随分と落ち着いてるなぁ。心配じゃないのか?」
「失礼だなぁ。オレサマのビックなお胸は今にも張り裂けそうだぞ? 可愛い可愛い生徒達の事を思って」
「あ、そ」
 バレバレの態度に、毒気が抜ける。この食わせ者、ホントに心配していない。
 まあ、それだけ信じていると言う事だろう。
「で、女華ちゃんは何の御用かな? 知らせてくれれば、こっちから出向いたんだけど」
「饕餮」
 出した単語に、メメの顔から戯けが消える。
「ああ、そっか。確か君の号は、『無尽』……」
「そうさ」
 察しの良さに感心する。
「『滅尽(ヤツ)』の対だよ。まあ、形ばかりだけど」
「にゃるほどにゃるほど。つまりは、詳しく知っていると言う事かな? 饕餮の事を」
「まあね。けど……」
 会話しながら、ゲームを続ける。学園の生徒達に勧めて貰ったモノ。なかなかに面白い。その道の同胞として、実に前途有望だ。
「私が奴について知っている事は、大体君達も知ってると思うよ。当然だろ? 奴は絶対捕食者(ハイ・プレデター)。生態系の頂点。隠す事なんて在る訳ないし、隠すべき相手もいやしない。『既存』の情報は、全部出尽くしているんだ。私の知ってる事に、今更意味なんてありゃしない。あるのは……」
 チュドーン。死んだ。
「私の、『知らない』事さ」
 すぐにコンティニュー。首を傾げるメメに、言う。
「妙な事を聞いたよ」
「む?」
「先の八災との戦いの折、饕餮の使いと名乗る女が言ったそうじゃないか? 贄の娘は、『身を清めている』と」
 確かに。【白南風・荊都】は言ったのだ。贄の姫たる【チセ・エトピリカ】は今、清めの儀の最中だと。
「何を、清めるんだい?」
 放られた言葉。けれど、メメが何かを察した様に目を細める。
「そうだよ」
 画面を見ながら、続ける。
「奴は、『食らう事』を大前提として生まれたんだ。世界のバランスを維持する為に、世界に存在するあらゆる存在・概念・現象を喰う事が出来る。どんな毒も、汚れも、呪いも」
 そう。毒も汚れも、世界の一部。万物万象を喰う饕餮にとって、それらも餌の範囲内であるが当然。
「奴の『捕食』に抗うには、奴を超える力でねじ伏せるしかないんだよ。魔王みたいに」
 だから、饕餮は魔王に手を出さない。それほどまでに、魔王は恐ろしい。
「そんな奴が、何を清めなきゃいけない? 魔力生産に長けるだけの、小娘一人に」
 確かに、道理。考えるメメ。
「正しく、私は饕餮を知っているよ。でも、知っているのはあくまで『眠る前』の饕餮なんだ」
 彼女達、覇王六種は眠っていた。永い。永い年月を。世界の流転から、外れた場所で。
「私は、眠りの中にある奴を知らない。けれど、奴は此方を知っている」
 どう言う事か?
「饕餮は、『万知の魔眼』を持ってるんだ。座したまま、世界を見晴らす目だよ。あらゆる場所の、あらゆる獲物を感知する為のモノ。ソレは、恐らく封印の褥にあっても」
 つまり、饕餮は見ている。感じている。自分が眠りについた後の、世界の歩みも。
「饕餮にとって、未知の概念がある」
 無尽が語る。
「奴は絶対捕食者。相対する存在は、全て被捕食者。ネズミがネコに向けるのは、恐怖であり。憎悪であり。敵意であり。拒絶だ。だから、奴はソレしか知らない」
 滅尽が在った、世界の事を。
「聞いたよ。御宅の雛鳥達の事を」
 女華の目が、初めてメメを。『人』を見る。
「探っていたそうだね。術を。饕餮と『共に存れる』可能性を」
「…………」
「知恵あるモノは、未知を恐れる。拒絶する。けれど、その先に進めた時……」
 チュドーン。ゲームオーバー。
「未知は奇跡を導き」
 また、コンティニューを選び。
「奇跡は、新たな道を開く」
 差し出す先は、メメ。
「案外、真理に辿り着いてるのかもしれないね。御宅の雛鳥達は」
「当たり前だな」
 受け取ったメメ。カタカタカタと。
「オレサマ自慢の、『勇者』達だ」
 響くファンファーレ。クリアの祝福。
「お見事」
 拍手をする女華に、メメはニパリと笑った。

 ◆

 眩い光の道を抜けた先は、荒涼とした礫の原。
「……まるで、東方に伝わる地獄の入り口みたいだな」
 見回した【仁和・貴人】が呟く。
「そうだな。そして……」
 【クロス・アガツマ】が見据える先。其処には、金色に燃える眼差しで皆を見下ろす異形の鬼神。
「……地獄に鬼が居るのも、また道理……か……」
 ただ立っているだけで、凄まじい覇気に震えが来る。流れ落ちる汗を拭い、クロスは乾いた声で苦笑した。
『……よくぞ臆せず参った、今世の護手達よ。まずはその意気、賞賛しよう……』
 荒々しい、けれど厳かな声が大気を揺らす。気を抜けば、それだけで張り倒されそうな猛気に抗いながら、語りかける【タスク・ジム】。
「この度のお導き、感謝します。貴方が『宿儺』様でしょうか?』
『如何にも』
 明らかな恐怖に苛まれながら、ソレでも自身をしかと見つめる少年。その様に敬意を示す様に、輝く鬼神は静かに返す。
『我こそは『金光の宿儺』。八彩災華が光の災にて、悪鬼饕餮封印の要を勤めん』
 四本の足の一本が、タスクに向かって踏み出す。甲冑に覆われた丸太の様な其れが踏み締める度、地震の様に地が揺れる。単純な質量ではない。内包する力の畏怖に大地が怯える。
『勇者を名乗る者達よ、封印要の理を持ちて問う』
 輝く四眼。一人一人を、値踏みするかの様に。
「コイツは話以上だねえ。視線が熱いに過ぎて、ソレだけで燃えちまいそうだ」
「笑えない冗談……と言いたい所だが、存外本当かも知れないな。今までの獣同然とは明らかにモノが違う。見透かされれば、途端に潰されてもおかしくないぞ?」
 せめての気晴らしにと叩いた軽口に、返ってきたのは【樫谷・スズネ 】の大真面目な言葉。実際その通りで、【ミサオ・ミサオ】は『ひええ、くわばらくわばら』と肩を竦める。
 そんなやり取りも、この重圧の中では幾許もの換気にもならず。
『汝らが望む饕餮の力は、その号に過たず滅びの力。凡ゆる種族生命を喰らい尽くす奈落の具現。其を知りて、尚の望みか?」
 受けたタスクが、皆を見る。
「大丈夫さ。考えてる事は、皆同じだから」 
 笑いながら、【シキア・エラルド】が。
「君の選択なら、異存はありません」
 真摯な声で、【オズワルド・アンダーソン】が。
 そして。
「そうよ、ガッチリ言っておあげなさい。タスクちゃん」
 祖母の【マーニー・ジム】が、笑顔でガッツポーズを決めた。
 他のメンバーも、異を唱える道理もなく。
 さればこそと、タスクは深呼吸を一つ。見つめる鬼神に正面から向かい合う。
「『宿儺ノ守』……饕餮に滅ぼされた王国の……種族の、王……」
『ほう……我が真名を……根源を知り得るか……?』
「はい、僕の推測が多分を占めますが……」
 先の戦いにおいて、『蒼火の清姫』は言った。

 宿儺と向き合え、と。

 宿儺の名に、思い当たる記憶があった。
 饕餮の事を知って以来、タスクは大図書館に通い詰めた。その存在を。性質を。姿を。知る為に。知って、理解する為に。
 共存は、共に相手を理解する事から始まる。
 未知は恐怖を生み。恐怖は拒絶を生む。
 だから、知らなければならない。未知を、既知へと変えなければならない。
 ソレがきっと、手を取り合う術となるから。
 そんな思いの元、貪る様に読み漁った資料。伝説、神話、歴史の綴り。その奥底に。ソレは、あった。

 かつて、世界に双璧無しと謳われる強大な王国があった。
 圧倒的な軍事力と高度な文明。いずれ世界の覇権を握るだろうと噂されたその王国は、されど一夜にして世界から消えた。
 場に居合わせた旅人は、畏怖と共に後世に遺す。
 かの王国を富強せしめし力。数多の術。無数の兵器。蛮勇猛る戦士達。全ては空虚な泡沫の如く。
 ただ、『一口』の元に。
 築き上げた文明も。
 広大なる王都も。
 たった一人の、赤子まで。
 欠片の一つも、遺さずに。
 何もかもが消えた更地で、旅人は見た。
 天に唾棄するが如く、血の涙と共に咆哮する鬼神の姿を。
 全てを奪われし王の、成れの果て。
 慟哭は、いつ果てるともなく響き続けた。
 いつまでも。
 いつまでも。

「……ソレが、貴方でしょう?」
『正しく』
 投げた問いに、ニヤリと笑む。
『なれば、改めて問おう。我が一族の末路を知りて、なお望むか? 饕餮の目覚めを』
「…………」
『御せると言うのか? 貴様達に。あの、冷酷にして強大なる自然摂理の怪物が』
「御するんじゃ、ありません」
『ほう? では、何とする?』
「……生きるんです。共に……」
 乾いた声で。けれど、ハッキリと。
「共に、生きるんです! この世界の、住人として!」
 告げた。
 光の鬼神が、目を細める。そして。
『ク……クハハ、クハハハハハハハハ!!』
 響き渡る、雷轟の如き笑い声。嘲笑でも、呆れでもない。ただただ、可笑しいと言う様に。
『齢百にも至れぬ脆弱卑小の小族がほざきおる! 共に生きるだと!? 共存だと!? 饕餮は機構ぞ! 情も痛みも知らぬ、絡繰り同然の厄災ぞ!? その様な代物と、如何に通う!? 如何に歩む!?』
 押し潰さんとするかの様な轟声。ビリビリと震える大気に抗い、こちらも声を張り上げる。
「饕餮の脅威は、重々承知です!」
 宿儺が声を収める。続けろと言う様に。聞いてくれるのだ。だから。
「貴方達の悲劇を、悲しみを軽んじる事は決してしません! だけど、饕餮を忌避して災厄のままにしてしまえば、また同じ悲劇が起こる! いつか! 必ず!」
 そう。饕餮が過去のままの饕餮である限り、彼はまたシステムとして動き出す。世界の天秤の均衡を保つ為、ただ喰らい続けるだけの怖ろしくも哀れな存在として。
「だから、僕達は饕餮と手を携えるんです! もう、誰も悲しまない為に! 饕餮が、誰も悲しませなくて済む様に!!」
 畏れ、遠ざけるだけでは何も変わりはしない。変えなければいけない。かつての。そして、これから起きる悲しみを良しとしないのならば。
「覚悟はあります! 具体的な方法だって、準備中です!! まだ、不完全だけど! 必ず、必ず辿り着きます!!」
 一気に吐き出し、息をつく。
 シキアが小さく手を叩き、ミサオが『お見事』と笑った。他の皆もまた、同意を示す様に宿儺を見る。
 宿儺は薄く目を閉じ、何かを思う様に宙を仰ぐ。やがて、牙の覗く口がニヤリと歪む。
 酷く、愉快だと言う様に。
『全く以って、口の減らぬワッパよ……』
 二面の顔が、また皆を見下ろす。そこにあったのは、何かに心躍らせる様な不敵な笑み。
『言葉だけなら何とでも……とも言えるが、力に勝る否定者を前にして吠えられるだけでも上等であろう。だが……』
 四本の腕が、掌を開く。それぞれに光が閃き、収束し。形作るのは巨大な斬馬刀。
 凡人では掲げる事すら叶いそうにないソレを、四本同時に軽々と肩に乗せ宿儺は告げる。
『だが、件の饕餮が口先だけで『応』と言うとは思っておるまい。荒ぶ存在を論に導くには、此方もそれ相応のモノを示さねば歯牙にもかけられぬが真理。例え其れが……』
 グォンと振り下ろされる斬馬刀。煌めく切っ先が、タスクの眼前に突き付けられる。
『痛みを伴わずには済まぬ事であったとしても』
 この期に及んでなお揺るがないタスクと仲間達を見渡し、またニヤリ。
『無論、その覚悟もあっての事であろう?』
 再び、襲いくる重圧。ソレもまた、承知の上。求める場所への道。至る為に受ける痛みは当然で。恐れるばかりでは、全ては戯言に終わる。
 だから、伝える。絶対の、決意を。
「勿論、です」
『よくぞ、申した』
 宿儺の背に浮かぶ光輪が輝き、金色の光が周囲を眩く照らし出す。
『剣を取るが良い、勇者を志す若者共よ! 其が力が望む世界を語るに値するモノか、この金光の宿儺が存分に検証しよう!』
 世界を満たす金光の中、より深く刻み出された影が蠢き出す。
『現れよ、『鈍闇(にびやみ)』! 我らが意義を、今こそ示そうぞ!!』
 呼びかけに応える様に、周囲全ての影が。闇が。宿儺の足元へと走る。
 集まった闇は実体を持ち、幻想の中から現の中へと浮かび上がる。
 長い髪の、女性の型。八彩災華、闇の災。『鈍闇の飛縁魔(にびやみのひのえんま)』。
 光の鬼神に付き従う、闇の化生。儀式の始まりを告げる様に、静々と頭を下げる。
『いざ』
「乗り越えます。必ず!」
 タスクの声に合わせて、皆もまたそれぞれの刃を構える。
 曇天の荒空を煌々と照らし、金色の王が雄叫びを上げた。

 誰も、気づく者はいない。
 数多の想いを賭けた戦いの儀。世界の片隅から見つめる様に、一匹の蝶が舞っていた。
 蒼い燐を星に浮かべる、夜空の様に黒い蝶が。

 ◆

「始まったな」
「ええ」
 何処とも知れない場所で、少女二人が言葉を交わす。
「満更でもないんじゃねぇの?」
「どうして?」
「何か良さそうな顔してる。あの馬鹿共見てる時みたいに」
「そうね、さっきの演説は素敵だったわ。キュンときちゃった。でも、まだまだだから」
「お前、自分の趣味欲求満たそうとしてない?」
 【ディアナ・ティール】と【レム・ティエレン】。外の世界から来た、外の神の巫女達。命を削り合う戦場を、歌劇でも鑑賞する様な調子で戯れる。そんな二人を見つめながら、【リスク・ジム】は隣りの【道化の魔女・メフィスト】に問い掛ける。
「……余りにも、『人』の有り様からかけ離れている……。彼女達は、あの『神』は、本当に味方なのですか?」
「ハッキリ言っちゃうと、全然味方じゃないですネー」
 文字通りハッキリ言われて、愕然とする。
「ただし、確実な敵でもありまセーン」
 取り繕う様に続けるメフィスト。
「彼女達な『死』デス。死とはどの様な存在・概念にも移ろわぬモノ。ソノ行く先を定めるのは、あくまで死そのものである彼女達。そして……」
 向けた視線の先には、己らの願いを証明せんと戦う勇者達の姿。
「その運命を+に手繰り寄せる、強き魂の力だけデース」
「運命を手繰り寄せる、力……」
「ソレこそが、貴方が見たいモノでしょう? ミスター・リスク」
 頷く。そう、だから自分は……。
「あのさー、何か良さげな話してるトコ悪りぃんだけどー」
 会話を断ち切ったのは、レムの声。
「何か、やばそーなの居るみてーよ? アンタらのお仲間」
「何でスッテー!!?」
 突然の衝撃に流石に魂消るメフィスト。
「チョー! ちょっと、ミス・ディアナ! いくら何でも判断が早くありませんカー!!?」
「わたし達の『死』じゃないよ」
 ディアナは言う。
「わたし達は、『イザナミ』は死を司るけど。全ての死を統べる訳じゃない。これから『あの人』に訪れうるのは、別の理に殉ずるモノ」
「別の……理……?」
「そう。ソレは、『あの人』自身が『こう在ろう』と定めていた形。だから……」
 青い瞳が、リスクを見る。
「貴方なら、分かるでしょう?」
「!」
 確かに、答えは。
 リィイイイ……。
 憐れむ様に、蝶が鳴る。

 ◆

 間にあった筈の距離が、一瞬で埋まった。
「何!?」
 遠間からウィズマ・アーダでの攻撃を試みようとした貴人が、目の前に現れた巨体に驚きの声を上げる。
『これぞ『飛閃脚』。易々とは行かぬぞ?』
 言葉と共に掲げられる四本の斬馬刀。象る光が束ねられ、一本の更に巨大な光刃を作り出す。
『ぬぅん!』
 天を突く光の束が、覇気と共に振り下ろされる。咄嗟に取る防御態勢。掲げられた漆黒の大鎌が光刃を受け止める。しかし、降り落ちる光の奔流は止まらない。
「うぉおおお!?」
 防御してなお貫く衝撃。耐えかねた身体が弾き飛ばされ、地面を転がる。
「大丈夫!?」
 駆け付けたマーニーが、リーラブでの回復に回る。
「すまない……。しかし、厄介だ。防御してこれなら、直撃を喰らったらどうなる事やら……」
「あまり、無茶はしないで……て言っても、無駄みたいね」
 言ってる傍から、大鎌に絶対王セイッ!を発動する貴人に苦笑する。
「その大鎌の呪い、自分も受けるんでしょう? ホントに、若い子って言うのは……」
「重ね重ねすまない。だが……オレは饕餮に興味がある。魔王とは違う、破極の存在……。果たして、どんなモノなのか……」
 聞いて、マーニーはまた苦笑。
「そうね。魔王・覇王コースの貴方には、目指す形かも知れないものね。でも……」
 彼女の優しい眼差し。ソレが、見透かす様に。
「それだけじゃないわね?」
「え?」
「あの子の……オズワルド君の、為でしょう?」
 ウッと言葉に詰まり、バツが悪そうに頭をかく。
「いやまぁ……彼とは一応、『友人』みたいなモノではあるし……エトピリカくんとの事も、風の噂で聞いていたんでな……」
 困った様に言う貴人の頭を、マーニーの手が優しく撫ぜる。
「……良い子ね」
「……ソレ、魔王志望に言うのか?」
 溜息をつく背中を、気合を入れる様にバンと叩く。
「若者はいっくらでも無茶しなさい! 孫もお友達もまとめて面倒見てあげるからねっ!」
「あ、ああ……たの……」
 『頼む』と言おうとした貴人が、息を飲む。自分を凝視する彼を見て『どうしたの?』と小首を傾げる。
「いや……何でもない……。貴女も、気を付けてくれ」
 言って走り出す。その背中を見送りながら、マーニーはポツリと呟く。
「ええ、大丈夫よ。私は、まだ……」
 そう。まだ、『その時』は早いのだ。

 荒ぶ鬼神の元へ駆けながら、貴人は己に言い聞かせる。
 あれは、錯覚だ。
 受けたダメージの、後遺症だ。
 そう、そんな事が在る筈がない。
 彼女の姿が、儚く霞んで見えただなんて。

 ◆

 飛縁魔の姿が陽炎の様に揺れる。その身は地に沈み、四つに分かれた闇が伸びる。目指すのは、皆の影。
 クロス、オズワルド、ミサオにスズネ。闇が彼らの影に重なった瞬間、その影がヌルリと立ち上がる。
「うお!?」
「何だい、 こりゃあ!?」
 立ちはだかったのは、正しく己の形をした闇。具現化した影。
「訳の分からぬ事を!」
 剣を振るうスズネに返るのは、全く同じ軌道を描く全く同じ威力の剣撃。
「何!?」
「おお、まるでオウム返しじゃないか!?」
 竜爪撃をそのままお返しされたミサオも目を白黒させる。
「俺達の影を本物の様に動かす事が出来るのか。文字通り、敵は自分自身と言う訳だな」
 高みを目指すのならば、まずは己を超えて見せよ。
 そんなメッセージを投げられた様な気がして、クロスは少しだけ場違いな高揚を覚えた。

 現れては消える、鈍闇の影子。あらゆる能力をコピーするソレは、決して強くはないが弱い事も有り得ない。まるで、宿儺の手からあぶれた者を持て成す様に。影の踊子達は妖しく踊る。
「くっ!」
 全く同じ動作で槍イカを撃ち合った影が、一礼して地に沈む。束の間の、インターバル。
 滴る汗を拭い、オズワルドは大きく息を吐く。
 立ちはだかる影には、絶対の殺意は無い。機会を見れば狙って来るものの、基本は撃ち合うだけ。恐らく、生殺の役目は宿儺のモノと。そう、彼女はあくまで幕間の座興。
 それに討たれるのならば、それまでのモノに過ぎぬと言う事。
(……前の戦いでは、皆さんに迷惑をかけてしまった……)
 思い出すのは、先の紫水と白雷との戦い。想いに飲まれた自分は先走り、結果敵の手中に嵌りかけた。
 この一連の戦いは魔王との戦い、引いては世界の行く末にも影響を及ぼすモノ。だから、決して個人の感情で迷走させてはいけない。
 だから。
 だから。
(大丈夫。僕は今、冷静だ)
 そう念じ、己を納得させようとした瞬間。

 過ぎる光景。
 赤い土の園で、長い髪を枯れ風に舞わせ。
 儚く。とても儚く微笑む、彼女の姿。

 ――――っ!!
 どうしようもなく、込み上げる。
 見ない事なんて、出来る筈がない。
「でも! 急がなくてはいけないのに!! 時間がないのに!!!」
 吐き出した激情を嘲笑う様に、ケラケラと笑う声。
 向けた視線の先には、いつの間に現れたのか。宙に腰掛け、ニヤニヤしながら煙管に火を入れる荊都の姿。
「……何しに、来たんですか……?」
「クフフ。いやぁ、ずぅっと此方にいんしたよぅ? 悲劇の王子様の御雄姿を拝見したくてねぇ」
 絡みつく様な視線を送りながら、プカリプカリと煙管をふかす。
「誠、健気でありんすねぇ。どう頑張っても御姫さんが戻る筋などないでありんしょうに。そぉんなボロボロになってまで頑張り為さって」
 ふぅと吹き付ける煙。甘ったるい香りが、吐き気を誘う。
「僕が望んでやってるんです。放っておいてくれませんか?」
「そうでありんすねぇ。たぁしかに、そりゃぬしのお好きな所でありんすねぇ。けれど、件の御姫さんのお気持ちはどの様に?」
「…………」
「話は聞いておられるでありんしょう? あの御姫さんの意志でありんす? 御姫さんは、ごわっちの意思で贄の御役目をお選びになりんしたんでありんすよぉ?」
 ネットリと絡む声が、ただでさえ沸騰しそうだった脳漿を加熱させる。
「いいんでありんすかねぇ? あの御方は皆さんの……いんや、だぁ~いじな貴方様の勝ちを得る為に、身を捧げたんでありんすよ? それを、勝手な情欲でもって連れ戻そうなんて。それこそ、男の身勝手と仰るヤツじゃありんせんですかねぇ?」
「五月蠅い……」
「もつとも、ソレはソレで『人』らしくてよろしいのかもしれんせんぇ? 人なんてモノは、結局他勢よりもわっちの利益お気持ちがヒイキして然りでありんすものねぇ?」
「五月蠅い!!」
 抑え切れず、ニヤつく顔に槍イカを投げつけようとしたその時。
 横から吹き付ける、灼熱の息吹。荊都は一瞥すると、ソレに向かってフッと煙を吹きかける。煙は漆黒の風となって息吹とぶつかり、相殺した。
「やれやれ。遠方から帰還すれば、何だこの重苦しい雰囲気は。新・ドロップデッドの爆発に巻き込んでやろうかい? なんてな」
 焼け付く息吹を吹き付けたミサオが、ヘラヘラ笑いながら近づいて来る。もっとも、その目は全く笑っていないが。
「これはこれは、人が良い男(おのこ)と楽しくお話してるとおっしゃるのに。見かけに合わず無粋なお方でありんすねぇ?」
「ああ、こりゃ悪かったな。だがね、どうにもアンタの口は毒が過ぎる様だ。ソイツは正しくイイトコの坊ちゃんでね、そういうのにゃ耐性がないのさ。お相手なら、オレがしてやるよ」
 此方は此方で、怖い笑みを浮かべて手にした鎌の切っ先を荊都に向ける。
 突き付けられた刃を人差し指でツイと逸らし、荊都はまた哂う。
「嫌でありんすねぇ。少うししたおふざけでありんすよぉ。滅尽の御方は、そちらの御味方になるんでありんす? その手下(てか)のわっちが、敵な訳ないではないでありんすか? 少うし、良くない癖が出ただけでありんすよぉ?」
「味方……ねぇ?」
 悪びれもなくそんな事を宣う彼女を、妙に冷めた目で見る。
「お前さん、本当に味方かい? 否さそもそも……」
 こちらも取り出した煙管を一吸いし、ソレをピッと突き付ける。
「お前さんは、『人』なのかい?」
 荊都の顔から、初めて薄ら笑いが消える。
「……どう言う事でありんしょう?」
 妙に冷え込む声。意を得たと言う感じで、ミサオが目を細める。
「騒動を聞いて帰って来てからこっち、此度一連を調べて見たんだがね。八災共の合間にチラホラするお前さんが、どうにも宜しくないんだ」
「と、言いんすと?」
「お前さん、悪辣に過ぎんだよ」
 ポンと叩く煙管の柄。薄赤く燃える灰が、ポトリと落ちる。
「饕餮の使いを務めると言いながら、やってる事は八災を繰ってやたらと被害を増やす。此方のお人好し連中を煽って傷を抉る。ソレを心の底から愉しんでやがる。えげつない欲求を、自身で潜める事もままならないらしいな。文字通り、『本能』だ」
「……」
「ヒューマン、ドラゴニア、ローレライ、カルマにルネサンス……種族人種は数多いるが、総じて通じるのは心さ。殺しは辛い。傷つけりゃ痛い。『人』と絡められる連中は、総じて性根にそんな『良心』てぇモンがある。まぁ、中にゃあオレみたいな悪党もいるにゃいるがそれでもやらかした時の細やかな良心の呵責くらいは在るもんさ。ソレが全くないのはガチで逝っちまった狂人か、でなきゃあ文字通りの人外……そうさな、そう言うのを表現する言葉があったなぁ?」

 眼鏡の奥の眼差しが、ピクリと引くつく。
「ああ、俺も心当たりあるよ? その言葉」
「奇遇だな。私もだ」
 何とか影を振り切って援護に来ていたシキアとスズネも、同意する。
「こないだ会った時から思ってたけど、アンタの『音』は気持ち悪いんだ。生物としての鼓動も、自然物としての音色も聞こえない。聞くに堪えない、不協和音。まるで、世界の造形物とは思えない」
「悪辣性は人の範囲では在り得なく、されど狡猾さは他の生物では到達し得ない。強いて言えば、『人』の『悪性』だけを抽出して型に詰め込んだ紛い物……」
 二人の指摘に、ミサオが指に挟んだ煙管をプラプラさせる。
「そう言う事さ。取り合えず、似合いもしない『猿真似』は止めて欲しいモンだ。お前さんみたいのと煙管(趣味)が合うなんて縁起でもないんでな。なぁ……」
 そして、三人の声が。しかと。

「――『悪魔』――」

 その存在を定義した。

 荊都の身がビクリと震え、眼鏡にひび入る奥でその眼差しが血色に光る。彼女の周囲の温度が確かに下がり、悍ましい気配が怖気る殺気と共に鎌首をもたげる。
 あまりにも明確な殺意。否、虐殺の意志。皆が身構えた瞬間。

――『看破』を、確認――。

 響いた声に、大気が凍った。

――『自己の疑似肯定による存在固定』プログラムの弱体認知。対象プログラムに対する捕食領域の最適化、完了――。

 凄まじい勢いで、何かが組み変わっていく。圧倒的な魔力。理解し切れない構築式。その場にいる皆が、荊都までもが抗う事も出来ずに立ち尽くす。そして。

――『解錠』――。

 闇と光が渦巻き、その狭間から現れるのは不規則な変形を繰り返す八枚羽の硝子玉。虹色に煌めくソレが、蝶番の様にパカンと開く。
 中に広がるのは、縦横無尽に連なる朱の鳥居と灯篭の灯り。無限の回廊。
 誰かが声を出すよりも早く。
 バクン。
 酷く、間の抜けた音。
 見れば、荊都の身体を『不可視』の『何か』が咥えていた。
 見えないのに、理解出来た。
 あまりにも、強大に過ぎる存在感だったから。

――『確保』――。

 抵抗も、悲鳴を上げる間もなかった。
 荊都の姿はあっと言う間に無限の果てへと引き込まれ、見えなくなった。
 異界の扉は再び閉まり、硝子の怪異はまた光と闇の狭間へ消える。

『今のが、『饕餮』よ』

 かけられた声に、忘我の体にあった皆が我に返る。
 鈍闇を従えた宿儺が、金色の眼差しで見下ろしていた。
『しかと見たであろう。感じたであろう。あの強大さと、不可解さを』
 硝子玉が消えた空間を示し、続ける。
『先の怪異こそ、無の災・『無彩の混沌』である。八災の最後の一柱であると共に、饕餮の座する封印領域への扉よ。かの者の前に行きたくば、光の我と鈍闇を斃し、その上で混沌を破壊せよ。さすれば、扉は解放される』
「宿儺……貴方は……」
 何かを問おうとするクロスを一瞥し、皆に問う。
『其れを踏まえて、改めて問おう。あの饕餮の在り様を見て、なお思うか? 『共に生きよう』と』
 間は、ほんの少しだけ。そして、皆がハッキリと頷いた。
『然様か。なればこれ以上の問答は無粋。仕切り直しとしよう』
 再び剣を掲げる宿儺に、クロスは問う。絶好の機会でありながら、自分達に刃を向けなかった真意を。
「待っていてくれたのか? 俺達に饕餮がどんなモノかを見せて、なお機会を……」
 宿儺の四眼がチラリと見て。
『無駄に絶やすは、惜しいと思ったまでよ』
 静かな声で、そう告げた。

 ◆

 再び始まる戦い。何か思う様子のオズワルドの肩を、ミサオが叩く。
「全く。気持ちは当然だが、もうちょい冷静になりな」
「ミサオ……僕は……」
「お前、そんなんで大好きな人の前に立てるか? 助けられると思ってんのか?」
「……」
「お前は、『前線、後方。支援も妨害も回復も、何でもできる医者であり勇者』なんだろ?」
 自分を取り戻せと諭す親友の言葉。噛み締める様に頷くと、皆の元へと走り出す。
 その背を見ながら思う事。
(……こっちは、あいつらの様な勇者になんて成り切れないのになぁ)
 ソレもまた、心の枷。振り払う様に、啖呵を切る。
「やぁやぁ魔王達よ。賭博魔王の俺が言うのもあれだが、勇者の敵である魔王同士の誼みとして引いてくれないだろうかね? 無理? せやなぁー」
 一人ツッコミの虚しさに気を使う様に、出て来た影がポンポンと肩を叩いた。

 迫る宿儺が、クロスに問う。
『話は察した。貴様ら、望みは饕餮の目覚めのみではないな? 否、寧ろ本命はそちらか?』
「否定は出来ないな」
 立体機動で宿儺の光刃を避けながら、答えるクロス。
『饕餮の贄と選ばれた娘、仲間の想い人か? 饕餮を鎮める為には有意なモノであろうに。易い情に流され、苦悶の道を選ぶか?』
 『粋だろう?』と笑う。
「あの娘が、惚れた女のために世界の命運だって賭けられる馬鹿な男と巡り合ったのが運の尽きさ! 俺達もそれに乗っかったまでだ!」
『クハハ、うつけだな! 大うつけよ!!』
「誉め言葉と取らせて貰うよ!」
 虚空に描く魔法陣。呼び出すのは小魔獣。出し惜しみの必要も、探り合いの理由もない。強化したアン・デ・フィアで絡め、ありったけをダートガでぶつけまくる。
 楽しげに響く宿儺の咆哮。土煙の中から伸びる闇。クロスの力を映そうと。
「ならば、影を落とすものを消し去ればどうかな!?」
 発動する幽体化。透明に化した身体は影を造らず、得手を潰された鈍闇が感嘆する様に震えた。

「ああ、もう!」
 突然響いた声に、皆が怪訝な顔をする。見れば、らしくもない苦い顔のタスク。
「全然駄目じゃないか! 僕はさっきから一生懸命やってるのに、足手まといばっかり! 皆、今まで何修行してたのさ!? 好き勝手な事ばかりして、肝心な所さっぱりだったんじゃない!?」
「はあ!?」
 唐突に飛んで来た罵倒に反応したのはシキア。
「好きな事ばかりって、ソレひょっとして俺に当て付けてる!?」
「おや、随分反応が早いですね? ひょっとして御心当たりでもおありですかァ!?」
 投げ返された怒声をキャッチして、更にぶん投げる。
「君に生き方どうこう言われる筋合いないんだけど!?」
「大体ですね、前から気に食わなかったんですよ!? 人が一生懸命勉学修行に明け暮れてる横で能天気にやれ音楽だ舞楽だって!!?」
 加熱していく喧嘩。皆はポカン。くっついてた鈍闇の影はオロオロ。
 どうしよう、このまんまじゃ『お前のかーちゃんデベソ!』とか言い出すんじゃないかと言う不安が湧き出した頃。
「上等だよ!! なら拳で決着つけようか!?」
「望む所ですよ! カモンカモン!!」
「りょーかい! ソコに行くまで辞世の句でも考えとけ!!」
 瞳孔かっ開いた顔で、拳をボキボキ鳴らしながら歩き出すシキア。そんな彼を慌てて抑えるスズネ。般若の様な顔で睨まれてビビる彼女の横を、文字通り影が一つ抜けていく。
 シキアをコピーしていた鈍闇の影。投影相手の感情まで映す彼女は、ままならぬ本体に代わり律儀にもタスクをぶん殴りに行く。しかし――。
「はい、ありがとうございます♪」
「……お前さん、そっち側の割には人良すぎなんじゃないかねぇ……?」
 待ち構えていたのは、悪い笑顔のタスクと背後で気の毒そうな顔してるミサオ。
 『あ』と気づいた時は既に遅く。コピー元でない相手の挙動には対応出来ず、二人の集中攻撃受けて哀れ影は無へと還る。
「ごめんね怖かったよね吃驚したよね演技だから!! 演技!!!」
 タスクに平謝りするシキアだが、その顔は実に晴々。会心の出来だったらしい。
「スズネも、ありがと。合わせてくれて助かったよ」と唐突な提案に乗ってくれた心友にもお礼と『許してね』のウィンク。
「お前、本当に演技だったか……?」
 枯れた声で返すスズネ。ガチで怖かった。

『クハハハッ! 面白い策を繰るではないか、小僧!!』
 愉快この上無しと笑う宿儺。と、その背に負った光輪が輝く。余りの眩さに目の眩んだミサオの肩を誰かが叩く。振り向くと、ソコには復活した鈍闇さん。
「お、おぅ……お早いお帰りで……」
 引き攣った笑顔にやっぱり笑顔(影だから顔とかないんだけどそんな気がした)で返すと、顔を思いっきりぶん殴った。
「……オレ、比較的罪は軽いと思うんだがなぁ……」
 キリキリ舞いしながらそんな事をボヤくミサオだったり。

「……そちらから見ても、無謀だと思うか?」
 眼前に立つ宿儺に、スズネは語り掛ける。
「それでも私は、『全員』でこの世界を守りたいと思うよ。一人が十を背負う必要はない。皆で一つずつ持てば良い……」
 そう、自分達はそうやって歩んで来たのだから。
「今すぐには無理でも、まずは私達が率先してやらないとな」
 これまでも。そして、これからも。
『……何度でも言おう。饕餮は怖ろしいモノだ。先に見た様にな。上手く行く保証は限りなく……否さ、無に等しいやも知れぬぞ?』
 念を押す様に説く宿儺。それでも。
「宿儺殿、貴方の懸念は尤もだ。私はかつて黒の王とも対峙した、あの時の恐ろしさは今でも鮮明に思い出せる。それでも、私『達』は乗り越えた。その力は必ず饕餮の摂理をも揺るがすと、私は信じている」
『……女が強き国は良きモノと成る。其方らが築く世界を、見て見たいモノだが……』
 見つめる眼差しは、正しく慈愛に満ちた王のソレ。
「……そうか、貴方は憂いてくれているのか」
 微笑みを返し、剣を構える。
「貴方の誇りに敬意を、そしてその刃に刃を!」
 掲げる剣が銘は『希望』。その輝きの中に映る彼もまた、微笑んでいる様に見えた。

「もう、大丈夫かしら?」
「はい、ありがとうございます」
 回復を終えて立ち上がるオズワルドの背を、マーニーは優しく叩く。
「頑張りましょう。もうすぐそこに、あの娘はいるわ」
 向けられる慈愛に笑顔を返し、オズワルドは言う。
「前回は感情的になってしまい、皆さんに迷惑をかけてしまいました。ねぇ。もし、僕がまた冷静さを欠けていたら、一発殴っといてくださいね」
 そんなお願いに目を丸くして、また微笑んで。
「そう言うのは、私は不得意ね。そのお役目は、そっちのお友達にお任せするわ」
 言われた貴人が、困った様に溜息をつく。つきながら。
「取り合えず、受けておこう。だが、まずはするべき事をしてからだ!」
 漆黒の大鎌に絶対王セイッ!の魔力を灯し、走り出す貴人。後を追うとするオズワルドにマーニーが声をかける。
「あの子、無茶ばっかり。しっかり支えないとね」
 振り切った顔で、『大丈夫です』と返すオズワルド。
「だって僕は、『前線、後方。支援も妨害も回復も、何でもできるお医者様』なんですから!」
 そして、走り出す。その先に、此方を向く宿儺の巨体。
『来るか。勇者よ』
「貴方達を倒せなければ、この先の彼女に伸ばせる手なんて届かない!」
 浮かび上がる影達を、シキアが、スズネが阻む。
「はは、ようやくお帰りってトコかな。チセさんからの言伝あるけど、俺は伝えるつもりないよ、あんな言葉。もうさ、誰かを犠牲にするとかウンザリしてるんだよ。我儘、傲慢、大いに結構!」
「行こう、大切な人を助けに行くんだろう?」
「そう言うこった。まあ、気張ろうや」
 並ぶミサオも、共に。
 宿儺が吼える。
『さあ、魅せてみよ! 世界に比肩すると言う、其が願いの強さを!!』
「……チセさんの所に行くんだ……だから……」
 見た貴人が、呆れた様に。
「……約束はまあ、空気を読んでおくか」
 ミサオと共に灯すは、魂の焔。
「そこをどけええええ!!!!!」
 雄叫びと共に、二つの火球が走った。

「……皆、頑張っているわ。友達の為……世界の為……」
 目に映る全てを焼き付けようとする様に、マーニーは呟く。
「綺麗ね。若い想い、強さ……皆、とても綺麗。この光を、希望を確かめられただけで、私は戻って来た意味がある……」
 そして。
「『あなた』も、そう思うでしょう?」
 見上げた先には、音も無く待っていた一匹の蝶。
「私、多分あなたを知っているわ。タスクちゃんに教えて貰った、『違う世界』のお話。其処にいた、神様。怖い怖い、『死』の神様」
 それは、あえかな知識に連ねて視えた幻。
「あなたは何故、ここにいるの? 何を、しにきたの?」
 静かに発動する、シーソルブ。求める、対話。
「あなたが死の神だと言うのなら、きっとここの誰かが死ぬのかしら? 誰かを、連れて行きたいのかしら? でも、それならお願いがあるわ……」
 届けた願いに、蝶が鱗を零す。呆れたのか。嗤ったのか。でも、確かに通じたと。
「でもね、ソレには一つ。対価が欲しいの。ねえ、其処にいるんでしょう……?」
 ニッコリ笑って、いつか愛した『彼』を呼ぶ。
「リスク……」

 精魂を燃やし尽くした皆が見つめる中で、タスクが宿儺と対峙する。
『最期を務めるは其方か……小さき勇者よ』
「はい……」
 呼ぶ言の葉は、もはや『ワッパ』でも『小僧』でもなく。笑う宿儺の顔は、何処か嬉しげで。この上なく楽しげで。
 ゆっくりと手にした剣を構える。
 それはかつて、数多の想いと願いと、呪いを受け止めた剣。あの雨の中で、全てを背負うと決意した。どんな悲しみも、罪も、怨讐も。零さず。逸らさず。明日の光の中へ連れて行こうと。
 そう。
 皆と一緒に。
 だから。
 貴方も。
「行きます……」
『参れ』
 掲げられた斬馬刀が、一つの光柱となって天を貫ぐ。今までで、最高出力の光刃。王たる彼が、勇者と認めた者達へ課す最期の試練。
 裂帛の気合と共に雪崩落ちる、金色の閃光。しかと見つめ、タスクは手の中の希望に全てを込める。
「――答えます。そして、超えます!」
 振り上げた刃が、金光を凌ぐ輝きを纏う。
 其れは正しく、『命』の焔。

「晴天灰陣・月下白刃!!」

 二つの輝きはぶつかり、片方が散った。
 遥かに待ち望んだ、歓喜と共に。

 ◆

『……我らは……変えられなかった……』
 消えゆく光の中で、宿儺は遺す。
『全てを力で治め、力で奪う。人の業を、輪廻を抜けるに叶わず……否さ、抜けようとも思い至らず、増長を続けた……』
 揺れる眼差しの中には、かの日々。
『その果て、一線を越えた我らは饕餮の『調整』の対象となった』
 あの日の恐怖。絶望。悲しみ。
『力しか知らぬ我らに、饕餮に抗う術はなかった……。全ては喰われ、無と化した』
 彼の目が、皆を見回す。焼き付けようとする様に。
『其方らは、違う術を持っている。我らが机上の戯言と捨て置いた術を、確かにその手に』
 タスクの前に、一条の光が落ちる。ソレは、宿儺の手に在った光刃の一振り。
『我らが一族、其が魂の結晶だ。其方らに託す。連れて行くが良い。何かの、役に立とう』
「宿儺様……」
『良き、仕合いであった……』
 彼の顔が、真に微笑む。満ち足りた様に。
『もし、次の輪廻が叶うなら……また、其方らと……』
 光の中に溶けていく宿儺。その輝きを背に、此方を見つめるのは鈍闇。
 ゆっくりと、感謝する様にお辞儀をして。彼女もまた、光に溶けた。
「そうか……あの人も……」
「大事な人、だったのかもな……」
 タスクが、熱くなったまなじりをグイとこすったその時。
 大気が、歪んだ。
 ハッとした皆の前に現れるのは、八翼不定の硝子玉。
「無彩の……混沌……」
 呻くクロスの横で、ミサオがやれやれと頭をかく。
「そういや、コイツが残ってたなぁ……」
「さて、私達も大概ガラクタだが……」
「もうひと頑張り……かな……」
 震える足で立ち上がろうとするスズネとシキアの横を、先に立ち上がったオズワルドがヨロヨロと通り過ぎる。
「お前で、最後だ……」
「オズワルドさん……」
 呼びかけるタスクの声も聞こえない様に。
「チセさんの所に……行くんだ……」
 手に灯す、最後の魔力。
「さっさと、壊れろぉ!!!」
 渾身の力でぶつけようとした、その時。
「やめとけ、バーカ」
 声と共に、一振りのダガーがオズワルドの頬を掠めて混沌に飛ぶ。ソレが混沌に当たった瞬間、波紋が広がる様に空間が揺れ。全く同じ衝撃が、同じ軌道でオズワルドの頬を掠めた。
 短い悲鳴と、倒れる音。
 振り返ると、心臓にダガーを突き立てられた見知らぬ少女が倒れていた。
「!」
「お~、いてて……」
 思わず駆け寄ろうとした足を止める様に、少女がムクリと起き上がって『分かったか?』等と言う。
「アイツ、受けた攻撃をまんま反射する口だぜ? しかも防御不可と来てやがる。そのザマで食らったら、100パー死ぬぜ?」
 言いながら無造作に引き抜くダガー。零れた血を拭うと、もうソコには傷跡すら残さない。
「一回死んじゃったね、レム。あと、何回かしら?」
「ああ? 腹の足しにもなってねーよ」
 唖然とする皆の前で、訳の分からない会話をもう一人の少女と交わす。
 そして、一番混乱するのはタスク。
「おばあちゃま……何で……?」
 そう。二人の少女に挟まれて手を繋ぐのは、マーニーだった。
「ごめんなさい。タスクちゃん」
「……え?」
「私の冒険は、此処で終わりみたい」
「何を言って……」
「この人と、会えたから……」
 その言葉に応じる様に歩み出て来たのは、一人の男性。見たタスクが、息を飲む。
「その人……まさか!?」
「ええ、紹介するわ。この人が、リスクよ」
 頬に真っ赤な平手打ちの痕を付けたリスクが、『初めまして。タスク君』とお辞儀をする。
 ソレを見たタスクは理解する。
 リスクは、かつて結婚前夜に蒸発したマーニーの婚約者。彼を探す執念こそが、彼女をリバイバルにし、学園でここまで研鑽を積ませた原動力。
 と言う事は……。
 瞬間、マーニーの姿が陽炎の様に揺らぐ。
「な、何だ!?」
「コレは、まさか!?」
 スズネの驚きに答える様に、クロスが叫ぶ。
 根源が幽霊と同義であるリバイバル。本来昇華する筈の魂をリバイバルとして地に繋ぎ止めるのは未練とも言える強い想い。けれど、もしその想いが成就してしまったのなら……。
「そう。私の想い、この人をひっぱたいて叶っちゃったの」
「そんな……おばあちゃま!!」
 儚く笑う祖母の元に駆け寄ろうとするタスク。けれど、その行く手を阻む様に黒い帳が世界を覆う。
「うお!?」
「今度は何だ!?」
 見れば、ソレは蝶だった。夜闇の様に黒い翅に、星の様に蒼い鱗を燃やす蝶の群れ。美しくも不安と恐怖を呼び起こす、その威容。
「こ、これって……まさか!?」
 思い当たる知識を引き出されたタスクが、驚愕する。
「そうよ。タスクちゃん」
 夜色の帳の向こうで、彼女は言う。
「私はここで終わりだけど、せめても貴方達に導を遺したい。だから……」
「お願いされたの」
「めんどくせーけどな」
 マーニーの言葉に添う様に、少女達が奏でる。
 蝶の群れは渦を巻き、凝縮し、何かの形を造り上げる。
 息を飲む皆の前に現れたのは、黒衣の身体に蒼の鱗の文様描く枯れ案山子。目も何もない、真っ白偏平の仮面。ソレが、カクリと落ちて皆を向く。
「何だ……コイツは……」
 気持ちの悪い汗が滲むを感じながら、貴人は呻く。恐怖とも脅威とも違う。命の根幹を揺るがす、『死』の気配。
 駄目だ。コイツは駄目だと、本能が喚く。
「よせ、ジムの婆さん! コイツに関わるな!!」
 咄嗟に駆け寄り、引き戻そうと試みる。けれど。
「駄目だ!!」
 飛んで来たのは、シキアのシスイノシ。不可視の言霊が、貴人を縛る。
「エラルドくん……何故……?」
「駄目だ……分かるだろ……? コイツの、『音』は……」
 リィイイイイ……。
 響く蟲の音。奏でる『ソレ』が、ユラユラと虚ろに揺れる。
「大丈夫よ。『目』はまだ開いてないから。見ても死なない」
 片輪の巫女――ディアナの言葉。聞いたタスクの心臓が跳ねる。
「それは……それじゃあ、君達はやっぱり……」
「ああ、ご存じなの? 嬉しい。そう、この子は……」

 ――『黒死の虚神・イザナミ』です――。

「何故……ソレは、『煉界』の……」
「呼ばれたんだよ。力を貸せって、ピエロのおっさんに」
 もう片輪――レムの言葉に、スズネが。
「ピエロ……メフィストさんか!?」
「あー、そんな名前だっけ?」
「それでは、味方なのか?」
「あー、ソコは好きにしろって」
 えらく不安な返しをされて、息を飲む。けれど、ソレを見てレムはつまらなそうにピラピラ手を振る。
「あー、心配すんな。コイツの方が、もうアンタらにぞっこんだから」
「そう! そうなの!」
 嬉しそうに飛び跳ねるディアナ。
「あなた達、綺麗! とっても綺麗! 『あっちの皆』と同じ! 素敵! 大好き!!」
「は……はぁ……?」
「ソイツは……結構な事で……」
 今までの雰囲気をぶち壊すはしゃぎっぷり。コレはコレで反応に困る。
「だからよ」
 あんまり一緒にしてくれるなと言う体でレムが言う。
「聞いてやるんだとよ。このばーさんのお願い」
 そう、問題はソコ。
「マーニーさん……この様な神に、一体何を……?」
 クロスの問いに、マーニーが『それはね……』と呟いた時。
 イザナミの枯れ枝の様な手が、背後から彼女の胸を抉った。
「おばあちゃま!」
「大丈夫、痛くないわ」
 死の腕に心臓をまさぐられながら、皆の悲鳴を宥める様にマーニーは微笑む。
「私が頼んだのは、私の死……魂を文伝えに使って貰う事。チセちゃんに、皆の想いを伝えるわ」
「どう言う……事ですか?」
 訳が分からないオズワルドに。
「言った通りよ。チセちゃんに、皆が応援してる。必ず助けに来るから、諦めないで。頑張ってって、伝えるの。そう言うの、馬鹿にならないのよ? きっと、あの娘なら……」
 確信を持つ様に、彼女を見る。異形の門の、その向こう。
「駄目です! そんな事で貴女が犠牲になるなんて、チセさんだって望まない!」
「あら。マーニー・ジム、一世一代のビッグ・ミッションよ? そんな事だなんて言われたら、悲しいわ」
 オズワルドの悲痛な声を、慰める様に。
「いいのよ。最期の御奉公。あなた達の為に。未来に、捧げさせて」
「おばあちゃま……」
 彼女の意志は固く。そして摂理を変える術もなく。皆が、唇を噛んだその時。
「違うよ。マーニー」
 今まで沈黙していたリスクが、呟く様に。
「え?」
「君はまだ、消える時じゃない」
「そう言う事」
 ディアナの声と共に、イザナミが突き刺していた手を引き抜く。アッと目を閉じる皆。けれど。
「あ、あらら?」
 聞こえたのは、困惑した様なマーニーの声。見れば、今だ健在の彼女の姿。もっとも、その姿は半透明に薄れてしまっているけれど。
「おばあさま。貴女の『昇華』は、まだ『半分だけ』よ」
「ぶっちゃけ、見ててスッゲー笑えた」
 二人の小悪魔の今更な発言に、オロオロするマーニー。リスクが、語り掛ける。
「マーニー、君が想いを伝えなきゃいけない相手は僕だけじゃない。いや、僕なんかよりもっと大事な奴がいるだろう?」
「あ……」
「アイツを置き去りにするなんて、許されないさ」
 言って、リスクはバツが悪そうに笑った。

「じゃあ、お仕事よ」
 ディアナの呼びかけに、イザナミがザワリと動く。
「大事なお手紙のお通りです!」
「おめーら、伏せてた方いーぞ。死にたいんなら見学してもいーけどよ?」
 レムの声に、慌てて伏せる。
 顔を上げたイザナミ。その白磁の仮面に蒼い焔が走る。見る見る描き出すは、たった一つの異形の『目』。視線が向くは、無彩の混沌。
「さっさと、道をお開けなさい!!」
 巫女の祈り。応える様に、合わさる焦点。

 ――邪視――。

 瞬間、混沌の全身に入る罅。
 如何に人智外の災とは言え、万物万象律する死の概念に抗う術無く。
 八災最後の一柱、無彩の混沌は敢え無く微塵の綺羅と散る。
「さあ、お行き」
 イザナミの手から、一匹の蝶が飛ぶ。死告の蝶ではない、瑠璃色に輝く揚羽蝶。
 砕け散った混沌。その痕に開く門。その向こうへ、真っ直ぐに。
「自由を得た魂は、何物にも縛られない。届くわ、必ず」
 瑠璃の蝶は飛んでいく。
 主の命の欠片に、皆の願いを抱き締めて。

 ◆

――不理解――。
 聞こえた声に、チセ・エトピリカは閉じていた目を開けた。
 小さく鳴る、水音。周りに広がるのは、澄んだ。ゾッとする程に澄んだ水面。浸した身を動かし、宙を見る。
 何もない、空間。けれど、『ソレ』は居る。見つめ、尋ねる。
「何でございましょうか……? 『饕餮』様……」
 気配が揺れる。答える気配。本当に、気が向いた時だけ。
――何故、其方は今だ其方也か――?
「?」
――其方が浸る『ソレ』は、今世万物の『穢れ』を清むモノ也。如何なる穢れも、刹那を待たずして消える理。しかるに、其方は今だ其方のまま。全く、不理解――。
 考え込む気配。酷く、人臭い気配。コレはもっと超常全としたモノと思っていたのに。
 とても以外で。
 だから、ちょっとだけ。
「……私も、お伺いしたい事があります」
――如何――?
 答えがあった。
 会話が、出来る。
 それならば。
 此の水に身を浸してから、それまであった恐れが消えていた。恐れは、正しく負の感情。負を穢れと見なすならば、この水の効能は確かなモノ。であるならば。
「あなた様が食するに毒となる、私の穢れとは何なのでしょう?」
 ひゅっと、息を飲む様に虚空が揺れた。まるで、触れられる事を怖がる様に。
――其方は、不知なるモノを所持――。
「知らぬモノ?」
――肯――。
 声が続く。
――土蜘蛛をして査定。おいて正しく、贄に適と判断――。
――されど、かの『巣』に在して以降。不測が生じたモノ也――。
「それは?」
――未知の概念也。理解不能――。
 苛立つ様な響き。
 苛立つ? この、理外の神性が?
――其を既知に置換せしと、此方はかの巣を検証。結果――。
 大気が震える。慄く様に。
――かの者達は、其方と同じ未知を此方の概念に指向――。
「!」
 巣は学園。巣食う雛鳥達は、級友達。彼らを知るチセは、理解する。皆が、饕餮に向けたモノ。それが、自分にくれたモノと同じと言うのなら。
「饕餮様、それは……」
――穢れ也――。
 声が、遮る。
――此れなるは『饕餮』。万物万象の天秤定める調整器――。
――全てを解し、喰らうモノ也。其なるが知らぬモノ。理解成らぬモノ――。
――其は、正しく『穢れ』。危険なる毒物也――。
 チセは思う。
 コレは。否、この方は何なのだろう。
 聞いていた、『饕餮』の姿。異端の覇王六種。危険な絶対捕食者。滅ぼす存在、『滅尽覇道』。
 与えられた情報が象ったのは、冷酷冷淡な破壊式調節機構。一つ間違えば、魔王とはまた別の脅威と成り得る厄災。
 けれど、今感じるこの在り様はまるで。
 永き古。ソレを見た者達が、同じ種たる覇王達が。その記憶を違えたと?
 『記憶』?
 そう、記憶なのだ。記憶とは、過去のモノ。自分達が知っていたのは、およそ人の尺度では図り得ない悠久の時の果てに残された饕餮の残滓。
 『今』の饕餮ではない。
 饕餮は、あらゆる存在の天敵。恐らくは生じて以来、『拒絶』以外の感情を向けられた事はない。けれど、眠りについて幾星霜。世界の巡りから外れ、捕食の衝動も他者からの恐れも無い中。ただ全てを客観に見続ける事で、絶対のシステムに綻びが生じた。
 そして、その綻びに向けられたのが。

 『共に生きよう』と言う、未知の意志。

――此方は、システム也――。
 声が、響く。
――万物を公平に。正常に保つ天秤の護り手也――。
――そう、定められた――。
――そう、在らねばならぬ――。
――そう在る事が、存在理由――。
――然るに、然るに――。
 声が、響く。ただ困惑するだけの、哀れな慟哭が。

――何故、其方らは変えようとする? 穢そうとする――?

 ああ、そうか。
 理解する。
 同じだ。『この子』も、同じなのだ。
 贄として生まれ。
 贄として育てられ。
 贄として終わる事を宿命付けられた、自分と。
 定められ、固定された存在意義。
 迷いもなく。不安もなく。
 希望はなく。喜びもなく。
 けれど。
 自分は、変わった。
 変わる事が出来た。
 何故?
 皆が、いたから。
 『彼』が、手を取ってくれたから。
 そう、知っている。
 自分もまた、知っているのだ。
 皆と。
 あの人と。
 憧れの先にいるあの人達と、同じ術を。
 なら。
 それなら。
 ゆっくりと、立ち上がる。
 此方を、見る気配。
 しとどに濡れた巫女服が、身体に張り付く。
 華奢な身体の形が露わになれど、羞恥はない。
 それは、目の前の『この子』があまりにかけ離れた存在だから。
 なら、それを。
「……お願いがあります」
――何か――。
「自慢話を、させてください」
――自慢話――?
「はい。私の、大事な方々。先生方、友達、そして……」
 キュッと抱き締め、『その子』を見据える。
「私の、かけがえのない人の話を」
 気配が揺れる。恐れる様に。けれど、魅かれる様に。
(戦います。私も。だから、力を……)
 震える足に、力を込める。
(皆様……そして……)
 祈るのは、全てをくれた勇者達。そして。
(オズワルド様……)
 想い続ける、彼の御名。
 そっと開いた手の中には、瑠璃の輝き。
 確かに届いた命の便り。

 ◆

 砕け散った混沌。その後に大きく開いた異界への門。覗き込みながら、貴人が呆れ半分の感嘆を漏らす。
「控えめに言って、トンデモナイな……」
「さしずめ、死の神(タナトス)か……。敵に回したくはないものだな」
 一緒に覗き込んだクロスも、身震いしながら言う。何となく研究してみたい気もするが、どう考えても『触らぬ神に祟りなし』案件である。
「うわ!」
「今度はどうした!?」
 スズネ達が驚く声に見て見れば、ディアナ達の姿がノイズの様にブレている。
「あー、やっぱり来たね。コレ」
「この世界の防衛機能だっけか? イザナミの権能使ったから、強制送還だな」
 想定通りと言った感じの二人に、マーニーが語り掛ける。
「ありがとう。また、会えると良いわね」
「そうね。是非とも此方に。美味しいお茶を御馳走するわ。ああ、それと」
 招かれたオズワルドが、何かと近づく。
「手を出して」
 言われるままに差し出した手に、ディアナが何かを握らせる。
「これは……?」
「持っておいて。役に立つわ」
 微笑んで、オズワルドにそっと告げる。
「頑張ってね。愛の勇者さん」
 思わず紅くなるオズワルドの耳に、楽しそうな笑い声。そして、異界の神とその巫女二人の姿は消えた。
 まるで最初から、何もなかった様に。
 『ありがとう』と囁くマーニーに、タスクは言う。
「おばあちゃま、依頼達成です……。どうか、無茶しないで」
「ええ、もう大丈夫よ」
 言って向ける視線の先では、リスクが穏やかな顔で微笑んでいた。

 ◆

 気づけば、荊都は得体の知れない空間にいた。縦横無尽に並ぶ鳥居。灯籠の灯かり。天と思われる方向には日も月も、星も無く。地が在るべき場所もまた同じ。
「……チッ!」
 小さく舌打ちをし、翼を開く。大きな蝙蝠の形成すソレを羽ばたかせ、鳥居連なる道の一つに。
 翼が巻き起こす漆黒の風。ソレに乗って、速く遠く。けれど。
――やめなよ。無駄な事だ――。
 聞こえた声に、また舌打ちをして降りる。
――聞き分けが良いね――。
――美徳だよ。良い事だ――。
 見回せば、四方に伸びる鳥居の道。果てないその奥に、此方を見つめる気配三つ。
――『渾沌(こんとん)』、空の流を――。
――『窮奇(きゅうき)』、地の環を――。
――『檮杌(とうごつ)』、時の巡を――。
――絡め閉じて、隠理の世とせん――。
――此れ即ち『参凶ノ陣』――。
――以て此より去る事能わず――。
 謳う三重の声。全ての『道』を絶たれた事を理解し、荊都は心を整える。
「此れは此れは、渾沌大君のみならず。窮奇大君と檮杌大君まで……。して、此れはどう言う了見でありんしょうかぇ?」
 口調は平静を装えど、嫌な気配に身構える内。見透かす様に、笑う。
――どうもこうも無い。お前には此処に居て貰う――。
――程なく、『かの者』達が参る――。
――抗って見なよ。存在を、続けたくば――。
 その言葉に、嫌な予感が正しい事を悟る。即座に考えるは、強行突破。されど。
――無理だよ――。
――無理だね――。
――無理さ。『お前』では――。
 先読む如く、嘲る。
 正しく。空間の霊道も。地脈の合わせ目も。時空の流れでさえも。
 全てが捻じ曲げられ、閉じられている。
 無限回廊。
 此れでは、如何に自分であろうと。
――当然さね――。
――お前用に、あつらえたのだから――。
――堪能しておくれ。存分に――。
 文字通りの『特効呪術』。ならば、術者であるこやつらの一角を? 否。それこそ無理、無駄、無謀。三凶は饕餮直属の厄神。否さ、『端末』。欠片と言えど、饕餮の力の具現。自分一人では……。
――……だろうね。『其れ』がお前の限界だ――。
 また読まれ、嘲られる。見下されるを嫌悪する根源が、ギリと歯噛みをする。それでも、晒けるは認める事。更なる屈辱。この期に及んで尚、取り繕う。
「……はてさて、先から何を仰ってありんすのか……? わっちの様な小虫に一体全体、何の御疑いを……」
――己のみで世界の境界を越え、数千の時を経て策を練る様な輩は小虫じゃないなぁ――。
 荊都の顔から、遂に戯けの色が消える。
――此方に来てから幾星霜。世界の摂理に弾かれぬ様に、此方由来の術を学び、群れに紛れて八災を盗み……――。
――果てに饕餮の権能までも狙うとは――。
――全く、勤勉な事――。
――その他種への散災召苦が執念妄執、誠に厄介――。
「……何の事やら……」
――もう、王手だよ。白南風・荊都――。
 最後の足掻きも、切って捨てる。
――それとも、永く慣れた『真名』の方で呼んでやろうか――?
――あの、外つ神が教えてくれたよ。なぁ――。

 ――【人 形 使 い】――。

 白南風・荊都と呼ばれた『モノ』の目に灯りが灯る。
 万物万象に直向きける、永久に絶えぬ憎悪の焔。

 其は、数多の世界を渡り飛び。
 数多の命の絶望と滅びを望む。
 永遠不変の『悪魔』。
 其を示す、忌み名になれば――。



課題評価
課題経験:171
課題報酬:6000
その、証明
執筆:土斑猫 GM


《その、証明》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 1) 2022-03-13 22:09:31
遅刻帰国~!
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。宜しくお願い致します。

今回も、壁役で頑張ります!
光の宿儺さんは、「削りダメージ」というのが怖い感じがしますが、
耐えて見せましょう!

さて、今回もう一つ恐ろしいのが、鈍色さんの「影子」ですね。
PCのコピーが隣に出てきて、PCに直接攻撃するものと思われます。

これについては、
「コピーなので精神面もコピーする」と【推測】し、
「コピーを挑発してこちらに引付ける」という作戦を考えてみました。
作戦の肝は、タスクが、皆さんの怒りそうなことをワザと言うのですが、
本人様が、タスクが訳もなくそんなことを言わない、と【信用】して下さるなら、
コピーだけが怒って、壁役の僕に引付けられるだろう、ということです。
もし、「面白い」「有効そうだ」というご意見が多ければ、実際にプランに記載するつもりです。

そして、攻撃を完全反射する「無彩」対策。
PL情報ですが、「イザナミ」の「告死の魔眼」を、
光と闇を倒した後に、「無彩」に発動して撃破する、ということでどうでしょう。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 2) 2022-03-14 19:46:39
どーも、芸能コースのシキア。今回も元気にぶっ飛ばそうそうしよう。
ふふ、久しぶりの顔もいる。楽しくなりそう、状況は全く楽しくないけど!

俺はいつもの如く支援、なんだけど…反射やら削りやらで何だか攻撃を受ける機会多そうだから回復に回ろうか悩み中
ところで「削り」ダメージってなんだろうね、防御貫通?

タスクさんの案は面白いと思うよ、俺はオッケー。
ただ…コピー影はともかく、操ってくる方は知性あるみたいだから、毎回は通じないかも。
……俺も多少怒ったフリした方が良い?

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 3) 2022-03-14 19:51:16
あ、もう一個

PL情報の方は、俺も「無彩」に一票。
能力が厄介っていうのもあるんだけど、特に宿儺は俺達自身で倒すべきだと思う。
今までと違って悪意で向かってくる訳じゃない、だったら尚更こっちもそれぞれ思ってることを真正面からぶつけていい筈。
向こうからしたら良くないものをこっちの都合で解き放とうとしてるようなもんだからね、それなりの覚悟見せなきゃダメでしょ

『それにずっと視られてる気がする。良くないものが、外から』

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 4) 2022-03-14 19:56:58
連投ごめんねー
ともかく、倒す優先順位は宿儺>影>無彩(消滅させる)がベストかなと思う。とりあえず俺の言いたいことはそんな感じ!

『それと悪い。良くないじゃなくて、触れてはいけない類のモノと言うべきだった。』

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 5) 2022-03-14 22:36:45
シキアさん、ありがとうございます~!
しかも、追加のご提案、大変冴えてると思います!

操り手が見破り、影を上手く操れば成立しないのはご指摘の通りで、
ゆえに、この案は一発限り、そのあとはまた何か考えなきゃ、と思ってました。

ところが、シキアさんがうまく演技してくださったら、
操り手は混乱し、この策は、よりうまくいくかもしれません!

また、「宿儺は俺たち自身で倒すべき」「悪意で向かってくるわけじゃない」
この点、同感です。
というより、僕は今回のプロローグを見て何かもやもやしてたのですが、
シキアさんのお言葉で、腑に落ちた感じがして、やるべきことが明確になった気がします。

正々堂々とぶつかって、僕たちの覚悟を伝えましょう!

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 6) 2022-03-15 01:53:14
賢者・導師コースのクロス・アガツマだ。よろしく頼む。
変わらず、厳しい状況だが……乗り越えるしかあるまい。

そうだね、宿儺は俺も自分たちでどうにかしたい気持ちがある。
撃破順はそのとおりで俺も異論はない。イザナミの力を使う対象も。
この、鈍色の飛縁魔は、能動的な攻撃をするタイプでなさそうだし、それに輝光転生のせいで宿儺を先に倒さないと復活してしまうようだからね。

俺は……そうだな、試して見る予定なのは透明化によって影の出現を潰すことかな。
成功するかは不明だし、あくまで予定と思っていてくれ。
宿儺相手は属性有利でもあるし、攻撃主体で攻めていくつもりだ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 7) 2022-03-15 22:06:05
クロスさん、よろしくお願いいたします。

透明化というのは面白い発想ですね!
たしかに、見えないものに、影は出来ないですものね・・・!

では、僕の策は、影への自己対処が出来る方には、発動しないようにプランを工夫してみますね。
つまり、クロスさんの悪口は言わない、とw
もともと、もし前衛系がいたらその方には耐えてもらい、
ダメージに弱い後衛系を優先して、影を挑発していくようイメージでしたので。

《ゆうがく2年生》 樫谷・スズネ (No 8) 2022-03-16 23:27:27
勇者英雄コースのスズネだ。
ギリギリの参加だがよろしく頼む。

作戦については概ね把握した
影の出現位置と数を考えるに、四方を囲む形になるということは…集中攻撃されるのか、これは。
私に影が出た時は【全力防御】で防御して…
他の人に影が出た時は…私自身の位置にもよるが、なるべく背後の影を倒すように専念してみる。
一つでも隙間があれば、回避もある程度しやすくなるだろうからな

透明化はいいアイデアじゃないか?光を遮らなければ影はできないはずだから。

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 9) 2022-03-17 01:14:15
遅刻帰国、御無沙汰瘡蓋~~♪

こほん。賢者・導師コース、教職志望のマーニー・ジムです。
よろしくお願いいたします。

私は、リーラブによる回復でサポート出来たらと思うわ。
クロスさんの言われる透明化は、私も真似してみようかしら。

《不屈愛の雅竜天子》 ミサオ・ミサオ (No 10) 2022-03-17 03:22:18
よぉ、お久〜。
魔王・覇王コースのミサオ・ミサオだ。よろしく頼むぜ。
本当挨拶が遅れてごめんね。

作戦等々は了解だぜ、プレにも反映させとくぜ。
ただ、オレぁタスク坊っちゃんだけに壁役を担わせるのは嫌だね。オレもやる。
魔王のオレは勇者に花を持たせるためにいるもの、それでええのさ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 11) 2022-03-17 06:17:13
ミサオさん!頼りになります~!
本当は一人では心細かったんです~相手めちゃくちゃ強そうだし~!(正直)
一緒に頑張りましょう!

いよいよ今夜出発ですね!
そして満員御礼、戦力充実です!

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 12) 2022-03-17 20:16:35
わぁい人が増えたね!スズネは今回も俺の演技に付き合ってもらうよいいよね良いに決まってるよな(早口)

悩んだけどわりと火力職多そうだから回復メインに動くことにするよ。
回復しつつ隙見て魔法攻撃かな、あとは【シスイノシ】も使って妨害も。

《比翼連理の誓い》 オズワルド・アンダーソン (No 13) 2022-03-17 21:25:52
前回同様よろしくお願いします。
賢者導師専攻、オズワルド・アンダーソンです。
作戦等々は了解しました、ご丁寧にありがとう御座います。

液状化があれば影が出来にくいだろうに、持ってなくて少し悔しいです。
サポートに行くべきか少し悩みましたが、僕は持ってる技能を使ってオールラウンダーに行きたいと思っております。
(どこ行こうか悩んだ末ですみません)

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 14) 2022-03-17 22:31:00
皆さん、よろしくお願いいたします。
いつも、孫がお世話になっておりますし、
こんなおばあちゃんだけど、
いつも若い皆さんから本当にたくさんのことを学んでいるのよ。

今回は、ちょっと思いついたことがあって。
技能の目的外利用にあたる、自分でも無茶だと思うようなことなので、
ウィッシュプランで要望してみようと思うわ。

PL情報だけど、イザナミ様が出現するような展開になったら、
シーソルブを発動してみようと思うの。
きりょく減少ではなく、「相手の魔力と深く触れ合う」というフレーバー解説に着目して
イザナミ様という未知の存在と、コミュニケーションをとる手段にしてしまおう、ということなの。
これが上手くいけば、私の方から、「無災を撃退してほしい」とお願いしてみるわ。

忘れられがちだけど、私、「伝説の賭博師」の称号も持っているの。
卒業前に一度ぐらい、大博打もいいかな、って。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 15) 2022-03-17 22:48:39
ぎりぎりの参加ですまない。
魔王覇王コースの仁和だ。

前回と同じく侵食でのダメージを狙ってみるつもりだ。
無災との相性的に考えてな。


それにしてもダイス目良いな……
流石、伝説の賭博師。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 16) 2022-03-17 22:52:25
いよいよ出発が近づいてきましたね!
皆さん、よろしくお願いいたします!

今回、色々と難しくて、まとめが出来ていませんでしたね。
すみませんでした。

ギリギリですが、状況をまとめてみますので、
皆さんのプランの仕上げの参考になればと思います。

・倒す優先順位
宿儺>鈍色>無彩(イザナミにより消滅させる)

・鈍色 影(コピー)対策
挑発+信用で、仲間の悪口を言い影(コピー)の矛先だけを自分に向ける(タスク)
透明化(リバイバル組)、防御(前衛職)

・無彩 イザナミへの撃破依頼
シーソルブで魔力触れ合いによるコミュニケーション(マーニー)※ウィッシュ案件

・戦力分担
壁役 ミサオさん、タスク
属性攻撃 クロスさん、マーニー
物理攻撃 スズネさん、タスク
回復 シキアさん、マーニー
妨害 シキアさん
オールラウンダー オズさん


《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 17) 2022-03-17 22:58:43
おっと、貴人さん、了解です!
漆黒の鎌による腐食でしょうか。なるほど・・・
継続ダメージのうえ、もともと自身も喰らうはずの攻撃、となれば
確かに無彩との相性はいい・・・でも貴人さんの体が心配です。
重点的に回復してもらうよう、おばあちゃまに頼んでおきますね!

《真心はその先に》 マーニー・ジム (No 18) 2022-03-17 23:56:07
ふふっ、貴人くん、ありがと♪
孫に頼まれた通り、重点的に回復するよう書いてみたわ。

若者はいっくらでも無茶しなさい
孫もお友達もまとめて面倒見てあげるからねっ!!

皆さん、今回もご一緒いただきありがとうございます。
会議もプランも、みんな全力を尽くしたはずだから、
きっと良い結果になると信じてるわ。