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どこへもかえらない(メメルの旅路)


ストーリー Story

 どうぞー、と言ってドアを開けたのはヒゲの紳士だ。
 紳士といっていいだろう。いささか珍妙な紳士ではあるが。
 ヒゲといっても頬やあごはつるつるで、生えているのは鼻の下のみ、ところがこれが立派というか立派すぎるというか、細く長く左右に伸びて、バンザイするみたいに斜め上方に飛びあがっているのだ。顔からはみ出ているあたりが実にストレンジである。先日ヒゲは左右に伸びてカールしていた。本日はバンザイスタイルだ。くわえて彼は髪をオールバックにしており、後ろ髪がライオンみたいになびいていた。服はスーツにネクタイである。
 この紳士【メフィスト】は、異世界からやってきた貴人にして奇人、しかし飄々としているが、異世界転移門の開発にたずさわり、複数の異世界とこちらの世界の橋渡し役をつとめるなど、最近の情勢をかたるうえで不可欠の存在である。
 きみたちが驚いたのは、学園長室の扉のむこうにメフィストがいたことではなかった。
 驚いたのはドアの開き方だった。
 平常なら『ほれ』だの『入れ』だの、おおよそエレガントとは言えぬ部屋の主からの呼びかけとともに、ドアが内側にすうっとひらくのが基本だった。ノックしようとしたところでドアが急に開いたり、ノックした手からとりこまれて部屋向こうに投げこまれたり、といったイタズラにあった者も少なくない。いずれにせよドアが手動で、しかも部屋の主ならぬ人物の手によって開いた記憶はあまりなかった。
 さもあろう。
 その人は現在、意識を失った状態で寝かされていたのだから。
 執務机は脇に動かしてあり、かわりに大きなベッドが設置されている。
 ベッドに横たわる彼女は、微動だにせず人形のようだ。
 シーツのように白い長衣で、膝の下まで覆われていた。
 両手を組んで胸のうえに置いている。無帽だ。
 肌には血の気がない。死んでいるのではと疑いそうになるも、耳を澄ませればかすかな呼吸音が聞こえた。
 フトゥールム・スクエア学園長【メメ・メメル】である。
「声を出して大丈夫だよ。学園長はいま、ちょっとやそっとじゃ起きない状態だから」
 きみたちの様子に気がつき、【コルネ・ワルフルド】がうなずいてみせた。コルネは笑みを浮かべているが、無理に気丈を装っているようにも見えた。
「メメルさんはいよいよー、初期化技術を受けることになったのですー」
「だからって……」
 妙に間延びしたメフィストの口調にいら立ったか、きみたちの一人は彼に詰め寄る。
「オレたちに知らせずに始めなくたっていいだろう!」
 ごく単純化して説明すれば、初期化技術とはメメルの能力を引き下げることである。世界最強クラスの魔法使いである彼女を、昨日入学したばかりの新入生同様にリセットしてしまうのだ。言いかえれば、希代の大魔法使いを常人に戻す技術ということである。
 魔王復活は自明のことになりつつある。魔王の能力が、世界に存在する魔法力に左右されるのだとすれば、メメルから魔法力を取り去ることは魔王の力を削ぐという意味で有効だ。そればかりではない。ここ数ヶ月のメメルの体調不良は、魔王復活が近づいていることの副作用なのである。死からメメルを遠ざけるにはどうしても必要な処置だった。
 だがこの技術は危険をともなう。失敗すれば死、あるいは呪わしき運命がメメルを待ち構えているという。
 メフィストに声を荒げたのは彼だけではない。
「私たちは、もう学園長に会えないかもしれない。それなのに……これじゃお別れも言えない!」
「これきり今生の別れになったとしたら、どうしてくれるんですか」
「そ、それはー、ですねー」
 眉を八の字にしてメフィストはコルネを見る。
 ごめんね、とコルネがきみたちに説明した。
「黙っていたのは、これが学園長の意志だったから。ぎりぎりまで普段通りの学園生活をつづけてほしい、っていうのがあの人の――学園長の考えだったんだ。アタシたちは学園長にしたがっただけ」
「お別れ、なんて寂しいことを言わないでください」
 白いローブ姿の魔導師が奥から姿を見せた。かがやく黄金の髪、優雅なアンダーリムの眼鏡、紅茶色の瞳で一同を見回す。【シトリ・イエライ】、魔法の専任教諭である。
「むしろ皆さんは、メメル学園長にお会いいただくことになるかと思います。それも、いますぐ」
「集まってもらったのはそのためだ」
 白い顔がぬっとあらわれた。シトリとは対称的に暗い髪色、ローブも炭のように黒い。ずっとそこにいたはずなのに、気配がしなかったため誰もが存在に気がついていなかった。魔法教諭の【ゴドワルド・ゴドリー】だ。
 咳払いしてゴドワルドは言う。
「初期化技術の成功率は低い。メフィスト氏の推測では二割程度の成功可能性しかないらしい。私とイエライ先生はメフィスト氏と協力して、これを成功に導く方策を探した」
「問題の原因は被術者――学園長自身の心理的抵抗です。たとえ学園長が技術を受け入れるお考えでも、無意識のうちに学園長はご自分の魔力を守るべく心に壁をつくってしまうでしょう」
「ですのでー」
 人差し指を立てるメフィストのかわりに、半歩踏みだしたのはコルネだ。
「アタシから……いいですか?」
「どーぞー」
 メフィストはうやうやしく一礼した。コルネが言う。
「そのブロックをなくす、あるいは少なくとも削るため、みんなには今から旅をしてほしいんだ。行き先は、学園長の心にある過去の世界!」
「いきなりの話です。面食らったとしても当然でしょう」
 シトリが補足する。
「学園長は現在、ご自身に催眠暗示をかけ過去の回想に入っています。おそらくは幼少期から、勇者のひとりとして魔王を封印したのちフトゥールム・スクエアを創設した時代、それから約二千年の学園運営……」
 ゴドリーが引き継いだ。
「ワルフルド先生が加入した時期や、みなが入学した頃もあるかもしれない。ひょっとしたらつい先日の記憶もな。いずれにしても本当の過去ではない。学園長の記憶、『こんな風だった』と覚えておられる過去なのだ。諸君にはそれぞれ、特定の時代の学園長に接触介入して暗示をかけてほしい」
「メッセージだよ。学園長ひとりが重荷を背負う必要はない、優秀な生徒がいるから、ってね☆」
「学園長はんの心に入るため、うちも協力させてもろとる」
 意外な声にきみたちはまた驚くことになった。リーベラント公女【マルティナ・シーネフォス】ではないか。
「うちは潜在的に魔法力を打ち消す力があるねん。それも、メメルはんとはむちゃくちゃ相性がいいみたいや。……いや、悪い? ともかく、うちがおったらメメルはんの心に入るためのガードはうんと下がるんや」
 メメルの心に入るためには、試す者がマルティナと手をつなぐ。そしてマルティナがメメルにふれれば、一瞬でメメルの回想に入りこむことができるという。
 コルネは拳をかためる。
「本当の過去じゃないから、多少の矛盾は大丈夫。でも複数の時代におなじ人が出てきちゃうと、驚いて学園長が目覚めてしまうかもしれないから、一人が選べるのはひとつの時代だけだよ」
 きみたちは手分けしてメメルの半生を追体験し、各時代のメメルに同じメッセージを投げかけることになる。メメルが目覚めたとき、心の障壁は消え去っているだろうか。
 シトリが言う。
「心の旅、ということになりますね」
「ボン・ボヤージュだな」
 なぜかキメ顔でゴドリーが告げた。
「あ、そのセリフちょっと言いたかったですー」
 メフィストはちょっと、うらやましげだ。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 4日 出発日 2022-04-16

難易度 普通 報酬 ほんの少し 完成予定 2022-04-26

登場人物 8/8 Characters
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《スイーツ部》ルージュ・アズナブール
 リバイバル Lv15 / 村人・従者 Rank 1
生前の記憶を失った、どこにでも居そうな村人の女性。 挨拶や返事はとてもいいが、実は面倒くさがりで、目を離すとすぐに手抜きをしようと画策するグラマラスなリバイバル。 『生前の記憶を探したい』という、ありがちな目的を達成するために学園へ来た。 名前を表すような真紅の髪が自慢。 酒好きで、節約なんて言葉は知らない。 身長は167cmほどで、体重はヒミツ★ 驚異のEを自称。もっとすごいかもしれない? 生前は海の近くに居たのか、魚や海産物の料理が得意。 特にお酒に合いそうなスパイシーなものや、煮込み料理が何故か得意。 なお、近親者に名前が4つあったり通常の3倍だったりする人はいない。 もちろん仮面や色眼鏡の人もいない。 赤いノースリーブなんて言語道断らしい。

解説 Explan

 マルティナの手に触れることで、みなさんの心はメメルの過去の世界(回想)に入っていくことができます。現実時間ではせいぜい数十秒、しかし精神世界の体感時間ではもっとずっと長く、メメルの過去を体験します。
 想定されている時代は以下の四つです。

1.幼少期(勇者歴前5年ごろ)
 メメルはまだ九歳程度です。現在では名の絶えた片田舎の農村にいるようです。両親は亡く、意地悪な伯母に育てられています。双子の兄【ルル・メメル】のことを慕っています。
 利発で魔法の潜在能力も高い彼女ですが、魔王打倒など考えもしていません。
 しかしルルはすでに魔王打倒の戦いに身を投じる考えなのでした。
 対魔王の義勇軍結成を呼びかける兵士、あるいは他地域からの避難民(魔王軍から逃げてきた)を名乗ってメメルに接触を図りましょう。

2.学園創設前(勇者歴20年ごろ)
 魔王封印には成功したものの、ルルを含め勇者六人は命を散らしました。不老不死の身になってしまったメメルは世捨て人となりました。現在よりずっと陰々とした性格で、現在のタフコーン地方の山奥に引きこもっています。
 このころメメルは勇者のための学園創設、という目標を見出し、長い隠遁生活から抜け出そうとしています。
 みなさんが演じるとしたら勇者の生き残りを探す支援者、あるいは魔王軍残党あたりでしょうか。

3.現体制への道すじ(勇者歴2011年ごろ)
 学園長室に忍び込んできた不良少女コルネ、孤独なハンター【ユリ・ネオネ】、卒業生ゴドリーとその妻、若き日の【イアン・キタザト】などが登場し、学園が何度目かの活気につつまれます。
 新入生の役割を演じるのが一般的でしょうか。

4.みなさんの入学後(勇者歴2018年~)
 過去のエピソードやイベントを追体験します。指定エピソードがある場合は提示をお願いします。みなさんはみなさん自身を演じるだけでいいので一番自然体でいられるでしょう。

(「作者コメント」につづきます)


作者コメント Comment
 それ以外の時代も可能です。
 ただし未来はもちろん、メメルの記憶があやふやな時代に行くことはできません。
 メメルにメッセージを届けることができれば役割は終了となり、他のメンバーと交代することになるでしょう。

 全員が同じ時代に行くこともできますが、数人ずつ、あるいは単独でひとつの時代に行くほうが効果的でしょう。
 複数の時代に同じ人物が出ていることにメメルが気づくと魔法がとけてしまう可能性があるので、各キャラクターはひとつの時代しか選ぶことができません。

 それではみなさんのアクションプランを楽しみにお待ちしております!
 桂木京介でした。


個人成績表 Report
仁和・貴人 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:81 = 27全体 + 54個別
獲得報酬:2700 = 900全体 + 1800個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
メメたんが無意識に張っている心の壁を取っ払えばいいのか………
オレの好意は散々伝えてはいるが今回のはそういうのじゃないんだろうな
………魔王というよりも勇者らしい感じになってしまうが皆に協力を求めようか

メメたんの過去の世界に入る前にタスクくんと協力して学園の皆に今の状況とメメたんの為に祈ってほしいということを伝えて協力してもらう
一人でも多くこの状況を伝えたい
メメたんの思いも一緒に
味方になるとは言ったが望む行動ばかり取るとは言ってないしな

出向く時間は今現在もしくはメメたんが認識している最後の時間

「勘違いだったらゴメン
メメたんは強いさオレ達の誰も及ばないくらいにさ
だから一人ではメメたんの背負ってる荷物は運べない
でも皆なら運ぶくらいはできるんだよ?
………感じないか?今でもみんながメメたんの力になろうとしてくれるのが
これがメメたんが長い時間を使って育て上げた力の一部分なんだぜ」


アドリブA、絡み大歓迎

ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:32 = 27全体 + 5個別
獲得報酬:1080 = 900全体 + 180個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
学園長の記憶に入って、心の障壁を除く

◆時代
学園創設直前~創設時に行ってみる

◆接触
学園が創設される前の、スペル湖の湖畔に住まう、湖の番人的な感じで接触を試みる

何故、この地に学園をつくる必要があるのか
もし、魔王軍の残党に学園のことが知れたら……この地が、激しい戦いに巻き込まれるかもしれないのに

命溢れるこの湖が、魔物が蔓延る地獄になるかもしれないのに

それとも……魔王との戦いに備えるには、この地でないといけない理由でもおあり?

言えない理由でもあるのなら、無理には聞きません
が、ひとりですべてを背負うのは無理ですよ

重荷で潰れてしまったら、すべてが無駄になるのですから

☆生還パーティーの約束に賛同

エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:32 = 27全体 + 5個別
獲得報酬:1080 = 900全体 + 180個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
4:エリカ本人として入学後の時代を訪れる

学園で学んでそこそこ成長した状態
ほぼ現代で

メメたんが不安や迷い、心身の不調にある時にそばに寄り添い
ひとりで全部抱え込まないでいいこと
先生や過去の勇者たち、多くの人々が平和を望み
努力してきたことを信じていると伝え

魔族にも滅びや破壊より平和を望んでいる人が少なくない
だから、みんなの想いと力でより良い未来を迎えられる
重荷も苦しみもみんなで背負って乗り越えよう
これまでの多くの人々の願いと努力
そして先生の生徒が必ずやり遂げることを信じて欲しいと励ます

説得
会話術
博愛主義

アドリブ大歓迎
タスクさんのお遊びやパーティーには乗っかり

メメたんが目覚めたらおかえりなさいと伝える

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:40 = 27全体 + 13個別
獲得報酬:1350 = 900全体 + 450個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
【事前調査】
校長先生と学園の起源については気になって前々から大図書館で調べていた
分かったことをは仲間に共有

貴人さんの事前調査に協力
壁新聞発行

1の時代にて
ジム家の始祖アスク・ジムに同化して登場
村中の人に呼吸するように質問して回り
メメにも同じように「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」
強い魔法の才を持つメメに対し
「僕は戦うことはできませんが、それ以外のことであなたやお兄さんを支えたい。周りにも、そういう人たくさん居ます。あなたは、決してひとりじゃない」

校長先生生還後
「あなたは一人じゃない
そして
どんな姿になっても僕達の尊敬する校長先生です」

そして施術後に生還パーティーを企画することを約束

フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:32 = 27全体 + 5個別
獲得報酬:1080 = 900全体 + 180個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
●方針
『2.学園創設前』
校長が今の目標を見出す時期へ
陰々と山奥に引きこもっていた校長が、なぜ学園創設という目標に行き着き変わったのかを見てみたい

●事前準備
儀式の成功を祈って、復帰パーティの準備を

●行動
「人がで変われるなんてそうない…と、思う」
自分がそうだったように、校長にも何か変化のきっかけがあったのか。

迷い人か修行者を装って当時の校長を訪ね、できたら暮らしに寄り添って
隠棲を辞める決断に迷いがあれば励まし、力づけてあげたい。

「運命は役割のため人を生かす…と、話を聞いた事があります」
「こうちょ…メメル様が今こうして生きてて、進もうとしているのも、だからきっと大切な事なんだと私は思いたいです」

クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:32 = 27全体 + 5個別
獲得報酬:1080 = 900全体 + 180個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
行き先は3

以前本人から聞いた不良だった頃のコルネ先生も見てみたい、というのもあるかな
勿論、本来の目的も忘れていない
学園長は今まで、確かに呪いで生かされていた。ならば今度こそ、本当の意味で命を生きてほしい

コルネ先生……になる前の彼女と時を同じくして学園を訪れた新入生という役柄で動こう
奇妙なものだな、長らくマガツであることを偽っていたのに、今度はクロスであることを偽るとは……

面接に来たという理由でメメル学園長に接触する
そこでメッセージを伝えよう

勇者は力を合わせることでより強くなる
あなたは確かに仲間を失った……でも、新しくあなたを支えてくれる仲間にも出会えているはず
もう一度、勇者を信じてみませんか?

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:32 = 27全体 + 5個別
獲得報酬:1080 = 900全体 + 180個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
……背中、押しちゃったからね
思ったよりは、早かったけど

行先:3
新入生として彼女に会いに
折角だから「変装」しちゃお、これで完璧
メメル先生は多分そんなに変わらないんだろうなー
他の先生はどうだろ?…あ、初対面の「演技」しなきゃ
先生ですか?はじめましてっ!
校長…?すごいですね
こんな大きな学校だと大変じゃないんですか?

ある程度話してからこっちの主張を
ずっと昔から、こうやって色んなヒトを見守ってきたんですね
分かるよ、だって眼差しが優しいから
俺がこの学園に来てからずっと

大丈夫、俺達(勇者のたまご)は強くなれる
教えてくれるのが先生なら、それを活かすのが生徒だから
いつか、貴方の後ろじゃなくて
貴方の隣に並ぶために

ルージュ・アズナブール 個人成績:

獲得経験:32 = 27全体 + 5個別
獲得報酬:1080 = 900全体 + 180個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
学園長の記憶の世界で、学園長にメッセージを届ける

◆時代
学園長含む最初の勇者達が、魔王打倒に向けて世界を旅をしている時代を目指す

◆接触
勇者一行が、旅の苦難の最中で、絶望しそうな状況で立ち寄った港町の酒場娘として接触

予想外の苦難に塞ぎこむ勇者一行に、安いながらも心を尽くした料理と酒を用意して、通夜のように重い空気で静まり返った勇者達に、記憶にある昔話でもして……気を紛れさせてみましょう

まあ、「もう終わりだ」とか思っても、案外なんとかなりますし、生きてるからには……なんとかしないといけないんですよ
そういうときこそ、周りの話を聞いてみましょう

案外、前に進むヒントが隠れてたりするものですのよ?

リザルト Result

 思い返してみる。学園長【メメ・メメル】のこれまでを。
 半分まぶたがおりたまま、大あくびから朝礼あいさつをはじめる姿。
 陽も高いのに一杯ひっかけて、なんとも上機嫌の赤ら顔。
 眼鏡をかけて机にむかい、一心不乱に書類に目を通している様子。
 外交の場あるいは窮地でも、不敵にニヤリと見せる笑み。
 非道に対し厳然と発す無言の怒気。去りゆく者を見送る愁いの瞳。
 あるいは「だいじょうぶ、チミならできる!」と根拠もなく断じて、それでも妙な説得力とともに行く手を指す背中。
 いずれにせよ喜怒哀楽が明確に色分けされているというか、バイタリティに満ちているのがメメルだった。
 だが現在、ベッドに眠る彼女はまるで別人に見える。
 赤子のように無垢で穏やかな眠りだ。こんなメメルの姿を、かつて見たことがあっただろうか。
 声を出して大丈夫だよ、と【コルネ・ワルフルド】がうなずいてみせた。
「学園長はいま、ちょっとやそっとじゃ起きない状態だから」
 コルネは笑みを浮かべているが、無理に気丈をよそおっているようにも見えた。
 V字ヒゲをひねりつつ【メフィスト】が言い添える。
「メメルさんはいよいよー、初期化技術を受けることになったのですー」
「だからって……」
 その口調にいら立ったか、【仁和・貴人】はメフィストに詰め寄った。
「オレたちに知らせずに始めなくたっていいだろう!」
 メフィストに声を荒げたのは彼だけではない。【フィリン・スタンテッド】も気をつけながら口を開いた。
「私たちは、もう学園長に会えないかもしれない。それなのに……これじゃお別れも言えない!」
 それでもフィリンは終盤、やや声が高くなっている。【ベイキ・ミューズフェス】も問いかけた。
「これきり今生の別れになったとしたら、どうしてくれるんですか」
 淡々とした口調だが、返答次第では――という含みをもたせた凄みがあった。
「まぁまぁ」
 彼らとメフィストのあいだに入ったのは【タスク・ジム】だ。 
「決定はメフィストさんの独断ではないでしょう。まずはご説明を聞いてみませんか?」
「そ、それはー、ですねー」
 メフィストはコルネを見る。ごめんね、とコルネが説明した。
「黙っていたのは、これが学園長の意志だったから。ぎりぎりまで普段通りの学園生活をつづけてほしい、っていうのが学園長の考えだったんだ」
「学園長が」
 と言ったきり【エリカ・エルオンタリエ】は口を閉ざした。
 一人称は『オレサマ』で、名乗り通りしばしば自己中心的な言葉を口にするものの、それは見せかけで、メメルが影では学園生たちのために骨折っていることをエリカは知っている。学園長がメメルだったから、フトゥールム・スクエアは二千年近い時間(とき)の試練にも耐えたのだろう。
 つづけて【シトリ・イエライ】、【ゴドワルド・ゴドリー】の両教諭が説明し、【マルティナ・シーネフォス】が手順を述べた結果、にわかに張りつめていた雰囲気はいくらかやわらいだのである。
 だが緊張が解けたわけではない。
「……つまり、俺たちのになう責任は重大だってことだよね」
 軽く唇をかみ、【シキア・エラルド】はメメルに視線を落とした。
 初期化技術が失敗すればメメルには死、あるいはそれよりひどい運命をもたらされるという。ここに集められた八人がこれよりかわるがわるメメルの心に入り、初期化技術の障壁となっている心理的抵抗をとりのぞかねばならない。メメルのなかにはなお、無意識的にあらがおうとする部分があるためだ。おそらく機会は一度だけ、二度とは挑戦できないだろう。
 コルネが言った。
「学園長はちゃらんぽらんな人だけど、誰よりも生徒想いなのはアタシが保証するよ。みんなの説得なら聞くと思う」
 わかりました、と【クロス・アガツマ】がコルネにこたえた。
「メメル学園長は俺たちを信用して、無防備な身と記憶をさらしてくれたんだ。だったら俺たちはその気持ちにこたえるまでです。それでいいですね、コルネ先生」
 頼んだよ、とコルネはクロスにまなざしをむける。視線に熱がこもっているように見えた。
「どこまで応じられるかは、やってみなければわかりませんけれど」
 炎のような赤い髪を揺らし、【ルージュ・アズナブール】はベッドの縁に手を置く。メメルは決断した。ならばこちらも覚悟を決めねばなるまい。
 そろそろはじめません? とルージュはふりかえって告げた。
「その前に、願い出たいことがあります」
 コルネたち教師に告げたのは貴人だった。
「学園の皆に、今の状況とメメたんの為に祈ってほしいと伝え協力を求めたいんです。ひとりでも多く、この状況を伝えたいから。メメたんの想いも一緒に」
(オレは魔王・覇王コース所属だったよな)
 仮面の下で貴人は苦笑いを浮かべる。
(けどむしろ王道勇者って感じだよな、こういうの)
 メメルが目覚めていたらなんと言うだろう。やめんかバカモン、と怒るかもしれない。
(でもオレ、メメたんの味方になるとは言ったが望む行動ばかり取るとは言ってないしな)
 祈ってどうなるなどと嗤(わら)いたいヤツは嗤えと貴人は思っている。髪の毛一本ほどの影響しか与えないにしても、いい方向に向かう可能性があるなら試したい。
 まっさきに賛意をしめしたのはタスクだ。
「僕からもお願いします。どうか許可を」
「わかった」
 コルネが返答した。
「主任教師として許可するよ。でも、何人かの生徒に広めてもらうよう頼んだらすぐもどってきて。あまり時間はないから」
「そうと決まれば」
 シキアが飛び出していく。タスクも小走りでつづいた。号外の壁新聞として概要を伝えよう。
「やれそうなことは全部やったほうがいいからね」
 フィリンたちもつづいた。
 彼らが校内を回り終えると、準備を整えてマルティナが待機していた。
「気のせいかもしれんけど、外の温度が上がったような気ぃするわ。ほなはじめよか」
「お願いします」
 一同を代表してエリカが回答した。
「古い時代から順番にやってみるで」
 マルティナが片手をのばした。最初の志願者はタスクだ。
「なんや照れくさいな」
「はは、よろしくお願いします」
 タスクはマルティナの手を握った。しっかりと握りあわせる。
「行くで」
 マルティナは反対側の手をメメルに伸ばした。
 全身鏡をふたつあわせたような大きな鏡が窓際に置かれている。ゴドワルドが説明した。
「学園長の心に見えているものをこの鏡に映し出す。これで学園長の心に入っている者だけではなく、他の皆も状況をミラーれるというわけだな」
 誰もが聞き流していたが、ただひとりシトリが反応した。
「先生、そのご発言はひょっとすると、『見られる』と『ミラー(鏡)』をかけたというわけですか」
「さすがイエライ先生、鋭い感性をお持ちだ」
「お上手です」
「照れますな」
 ゴドワルドは言葉通り受け取って後頭部をかいている。シトリはにこやかにしていた。
(シトリ先生のやさしさが、かえって残酷に映りますね――)
 ベイキは言いそうになったが、つつしみ深く黙っておくことを選んだ。
 このやりとりをタスクは聞いていない。すでに魂が体からはなれ、メメルの記憶世界へと踏みこんでいたからである。

 ◇ ◇ ◇

 かえりたい――。
 かえりたい。
 あのころに、かえりたい。

 声が聞こえる。
 タスクは周囲を見わたした。
 気がつけばタスクは、単身で黒いトンネルのような場所を歩いているのだった。
 遠い先に光が見える。本能的に光を目指す。
 かえりたい、とまた聞こえた。
(そうか、これって)
 学園長の心の声ですね、と気がついたとき、出口が急速に迫ってきて、タスクは陽光に身をさらしていた。
 流水の音がする。石造りの用水路を、ゆたかな水が流れているのだ。どこかの集落らしい。眼前には農地がひろがり、額に汗して土地を耕している人々の姿も見えた。
 なぜか落ち着かない。あるべきものがないような、と考えてはたと気づく。
(そうか、水車……!)
 こういった土地につきものの水車がないのだった。まだ発明されていないのだろう。建築物も構造が弱々しげである。たしかにここは二千年の昔と見てよさそうだ。見れば人々の衣服も、麻が中心で色味に欠けていた。
 道行く人々はタスクを見ても驚いてはいない。そればかりか老人や子供には、タスクに挨拶する者もある。
「アスクさん久しぶりじゃね」
 通りがかった老婆に呼びかけられ、タスクは目を丸くした。
「アスク……ですか?」
「あんたの名前じゃろう?」
 タスクはすぐに理解した。自分はどうやら、ジム家の始祖【アスク・ジム】としてこの場のいるらしいと。実在すら疑われていた伝説の人物だ。たしかにアスクは生きていたのだと知って素直に嬉しかった。
「そうですとも」
 と笑ってごまかし、
(ご先祖様アスクなのだとしたら)
 タスクは老婆にたずねた。お困りごとはありませんかと。
「いつもすまないねえ。畑の害虫が増えとるんだよ。中央に知らせてくれんかえ」
「お安いご用です。除虫草の手配を願い出ますよ」
 当時の国土をめぐり人々の願いを聞き中央政権に伝える督郵(とくゆう)――後の時代では監察官と呼ばれる任務にアスクはついていたという。要は御用聞きだが、多くの督郵は公僕意識が低く、汚職に走る者、領民をいじめる者があとをたたなかった。地方領主なみの権力を得るほど私腹を肥やした督郵もあるらしい。しかしアスクは職務に忠実で、人一倍熱心に働き多くの人々を救ったことから、立派な人物として名を残したのだった。
「もどりしだい伝えましょう」
 手帳を取り出そうとしたが出てきたのは石版だ。不便だがいたしかたあるまい。書き方がわからないので、さらさらとメモをとるふりをしてタスクはその場をはなれた。かついでいる背嚢(ザック)がやけに重いのは、この石版が大量に入っているからだろう。
 歩きながら村人に声をかけていく。それこそ呼吸するように。
「督郵です。お困りごとがあれば、遠慮なく話してください」
 すると来るわ来るわ、数分歩くごとにタスクは声をかけられ、さまざまな陳情を聞くことになった。当時の人々の苦労がしのばれる。
 そればかりではなかった。
「魔王の侵略がはじまったという噂は本当ですか?」
 赤子を抱いた母親から声をかけられた。辺境の兵士をしていた夫から聞いたのだという。
「魔王……!」
 おそらく今は勇者歴前五年ごろにあたるだろう。魔王大戦まであと数年しかない。しかしここは過去の世界、いたずらに不安をあおってどうなるというのだ。調査します、とお茶を濁してタスクは石版に白墨を走らせた。
 やがて村はずれまで来た。太陽はすでに地平線に沈みつつある。
(あの子は!)
 タスクは気がついた。【キキ・モンロ】先輩も顔負けの粗末な服で、石造りの廟らしき場所に膝をかかえて座っている女の子がいる。八、九歳だろうか。しかし顔立ち、銀の髪、見まちがえようがない!
 近づいて声をかけた。
「督郵のアスク・ジムと言います。あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」
 幼き日のメメルは汚れた顔をしていた。靴もなく膝が丸出しだ。タスクを見上げて言う。
「こまりごと? ないよ」
 そう言ったそばから、彼女のお腹は抗議の声を上げたのである。
「お腹がすいているようですが」
「けどこまってないよ」
 まもなく「メメ!」と声をあげて、駆けてくる少年の姿があった。少年の姿を目にするや、メメルはウサギのように跳ねて彼に飛びついた。
「おにいたま!」
 兄といってもメメルと背丈はかわらない。メメルの兄、【ルル・メメル】はメメルに抱きつかれたままタスクに頭を下げた。
「督郵様、妹が何か失礼をしたでしょうか?」
 やはり九歳くらいだろうに、大人のようにしっかりとした口調だ。
「いえ、そんなことは……」
 タスクは肝を冷やしている。
(似ている……!)
 メメルに双子の兄がいたことは聞いていた。男女の双子は案外似ないという説もあるが、このふたりはまるで生き写しではないか。ルルのほうが凜々しく、いくらか眉が濃いように思えた。
「食べ物、持ってきたよ」
 ルルはメメルに藁のつつみを手渡す。
「でもこれ、おにいたまの……?」
「僕は食べてきた。伯母さんの目を盗んでこっそり取っておいた分だよ」
 遠慮なくお食べとルルは言い聞かせる。粗末なものだ。乾パンと、チーズの塊らしきものくらいしか入っていない。それでも、うまいうまいといってメメルはほおばっていた。
 直感的にタスクは悟っている。ルルは「食べてきた」と言ったがきっと嘘だ。自分の分をほとんど、妹のためにもってきたのだ。
「トクユーさん、メメはね。おにいたまがいるからなにもこまらないんだよ」
「僕もです。もっと困っている人たちを助けてあげてください」
 魔王の噂を聞きました、とルルは言った。
「いずれ魔王討伐の軍がおこるのではないでしょうか。督郵様、そのときが来たら、どうか僕もその一員に加えてほしいのです」
「メメも!」
「でも……」
「メメ、まほーいっぱいできるもーん! おにいたまをたすけるよ」
 ルルがかすかに、悲しげな目をしたことをタスクは見逃さなかった。
(幼少期から学園長は、突出した魔法の才能があったのでしょう。ルルさんは妹を戦場に出したくない。でも、彼女の才能をうずめておくのは世界の損失……そう悩んでいるのかもしれません)
 タスクはメメルに話しかけた。
「メメさんは魔法がお得意とのこと、いいですね。僕は戦うことはできませんが、それ以外の方法であなたやお兄さんを支えたい。周りにもそういう人がたくさんいます。あなたは、決してひとりじゃない」
「どういうこと?」
「いつかわかる日が来ると思います」
 うなずいてタスクは、夕陽に向かって歩き出した。

 ◇ ◇ ◇

 我に返ったタスクはマルティナから手を離し、数歩後じさって壁に背を付けた。
「終わり……ました」
「お疲れさまでした」
 ルージュはうなずき、ゴドワルドの鏡で一部始終を見ていたことを彼に伝えた。
「きっと『アスク・ジム』さまのメッセージは学園長に伝わったことでしょう。次はわたくしの番ですわね」
 ポケットからウイスキーの瓶を取り出すと、ぐいと一口含んで、
「気付け薬ですわ」
 コルク栓を留めほほえむと、ルージュはマルティナの手を取ったのである。

 かえりたい――。
 あのころに。

(帰りたい……ですか)
 ルージュとて、帰りたい過去のひとつやふたつある。
 でも自分は切実に、もどることを希求しているだろうか。そもそもその過去とて、茫漠として不確かなものではないか。リバイバルの宿命だ。
 それに、もどって幸せになれるだろうか。
(学園長も――)
 長いトンネルを歩いていたはずが、いつの間にかルージュはラム酒の匂いに包まれている自分を認識した。酒の匂いだけではない。分厚い肉が焼ける匂い、揚げたタマネギと熱いバターの匂いもたちこめている。窓の外から入りこんでくる潮の匂いも。
 港町の酒場だ。二階は安宿でカウンターは中央、カウンターを囲むように木製のテーブルがならんでいる。客筋はむくつけき男が過半だが、派手なお姉さんや、丸太みたいな腕をした女船乗りもちらほら見られる。
 司令塔みたいなカウンターの内側、背後は酒棚だ。袖まくりした男物のシャツを着て、バンダナを頭に巻いた扮装でルージュはここに立っているのだった。
(あら、この酒場……見覚えが)
 生きてた頃に働いてた酒場に似ているのだった。
 飲みすぎて青い顔をしている男とその連れ数人が、おぼつかない手つきで勘定をカウンターに置いた。少々多いが、チップとしてありがたくいただくことにする。
「毎度」
 去りゆく男たちの背にルージュが声をかけると、入れ替わるようにして四人連れがカウンターに座った。
 あまり見かけない手合いだ。少なくとも船乗りではない。
 一人はやけに背が高く、黒檀みたいに黒い肌をした男だ。なめし革の鎧を着て、むっつりと黙りこんでいる。
 もう一人は女性だ。元は法衣だったのだろう。袖飾りのついた灰色ローブを着ているが、フードを頭からかぶって口元しか見せない。
 このふたりだけでも印象的だが、あとのふたりとなると格別だった。
 一人は少年、それも、はっと息を呑むほど美しい顔立ちの少年だった。獅子飾りの兜を外すと銀色の髪があらわれた。小柄だが背負った盾は分厚い鋼製だ。腰に長剣を佩(は)いている。
 もうひとりは少女だが、これがさきの少年と顔立ちがよく似ているのである。やはり銀の髪だった。刺繍飾りの青いローブ姿、樫の木とおぼしき杖を足元に置いていた。
 四人そろって衣装はひどく汚れていた。少女に至っては肩口に穴が開いている。
 すでにルージュは客の素性を見抜いている。
(学園長……? すると、よく似た彼はルル・メメルさま)
 鏡で見たあの子が、こんなに美しい少年に育つとは。メメルもすでに発育し、とりわけ胸には栄養がいっている模様だ。ただ、ルージュの知っているメメルよりはいくらか年少に見えた。
 楽しい席ではないらしい。四人とも、葬儀の参列客みたいな顔をしている。とりわけメメルの憔悴ぶりたるやひどく、今にもカウンターに突っ伏して泣き出しそうに思えた。
 ルルが口をひらいた。
「まずは、生きてここにたどり着けたことだけでも僥倖(ぎょうこう)と思うべきだろうね」
「僥倖って!」
 法衣の女性が口を開いた。ルルよりいくつか歳上のようだ。
「化け物蛸に船を破壊されて遭難、わずかな路銀をのぞけばほとんど一文無しよ。これで何を喜べっていうの!」
「大陸に渡る手段も、失ったわけだしな……」
 長身の戦士がポツリと言った。
 こらえきれなくなったのかメメルが目元をおさえる。
「おにいたま……メメが、メメが悪いの。あのとき……っ!」
「自分を責めるのはやめよう、メメ。フギさんもトゥーリャさんも、反省はあとからにしませんか? まずは何か食べましょう」
 ルルが静かに告げると、全員うなだれつつも黙った。彼の言葉には不思議な説得力があるようだ。
 すいません注文を、とルージュに声をかけようとしたルルの目の前に、茹でたエビを山ほど盛った皿が置かれた。
「あの、まだ頼んでいませんが……」
「店のおごりですわ、勇者さんたち。どうやら大変だったみたいだけど、まずはお腹に入れてくださいまし」
「ご親切に感謝します。ありがたくいただきます」
 ルルは頭を下げた。ルルはまるで当たり前のように、小皿にエビを入れメメルに渡すところからはじめた。他の仲間にも取り分け、自分は最後に取る。
「どうやら大変だったらしいですわね」
「……そうなの。ほとんど振り出しにもどったみたいなの」
 メメルがこたえた。あのオレサマ口調とはまったくちがうが声は同じだ。
 なるほどと言いながらルージュは飲み物と食事を出す。ひよこ豆のソテーに揚げたミートボール、モツの煮物などさまざまに。長身の戦士には大ジョッキになみなみ注いだエールを渡した。
「まあ、『もう終わりだ』とか思っても、案外なんとかなりますし、生きてるからには……なんとかしないといけないんですよ」
 温かい料理と同じくらい温かいルージュの言葉が、冷え切ったメメルに熱を取りもどしたらしい。
「ありがとう、お姉さん」
 いくらか血色がよくなったようだ。
 気晴らしに昔話でもいかが? とルージュは告げた。
「この島の山々に囲まれた祠(ほこら)……魔物がうごめく洞窟を抜けないとたどり着けないところに、不思議な卵を守る妖精がいるそうです」
「妖精?」
 メメルの瞳に好奇心の色が浮かんだ。
「妖精が守るのは不死鳥の卵。その背に乗せるに相応しい勇者が現れるまで……ずっと、卵を守っているとか。よく母から聞かされた昔話ですわ……でも最近、見上げた空に大きな美しい鳥を見たのは幻かしらね?」
「その話、詳しく聞かせて下さい」
 ルルも身を乗り出した。
「メメ、もしかしたらその鳥が、状況を変えてくれるかもしれないよ」
「うんっ、おにいたま!」
 雨雲が去ったような顔をメメルは見せている。ここぞとルージュはメメルに告げた。
「どうかおぼえおきくださいまし、小さな勇者さま。たとえ絶望的な状況でも、いえ、絶望的なときこそ、周りの話に耳をかたむけることが打開のきっかけになるかもしれないということを――」
 テーブルを彩るご馳走以上に、栄養ゆたかな言葉であろう。

 ◇ ◇ ◇

 気がつくと、元の世界にもどっていた。
 ルージュは目をぱちくりとする。深呼吸してから言った。
「伝えるべきことを伝えられたと思いますわ」
 短くも有意義な旅だったと思う。
「バトンタッチ、ですわね」
「ありがとう。私もやってみるわ」
 フィリンはメメルのベッドに近づく。
 フィリンの心に迷いや畏れはない。【ルガル・ラッセル】を救ったという経験があるからだ。ルガルはまだ復調しているとはいえないものの、獣化の呪いは消え去り、学園の保護のもと暮らしている。
 学園長にも安らぎを取りもどしたいとフィリンは考えていた。
(それこそが……私のできる恩返しだから)

 雨音はしない。ただ、肌が濡れる。
 山間に小糠雨(こぬかあめ)が降りそそいでいるのだ。雨合羽がわりに外套(マント)を、頭からかぶってフィリンは歩みを進めた。
 季節は初夏らしい。鬱蒼と木が茂る水墨画のような世界をひたすらに歩いた。
 歩めど雨はおさまらず、かといって大降りにもならず、外套の内側を蒸すばかりだ。雨のしずくがフィリンの首をつたい、鎖骨のくぼみをすべり落ちて胸元にこぼれていった。
 道をまちがえたのかもしれない――そう考えだしたころ、行く手に石造りの邸宅が姿を見せた。黒く塗られているので、夜ならば見つけられなかったかもしれない。
 扉までたどりついた。外側から閂(かんぬき)でもおろされているのかびくともしない。
「ごめんください」
 拳で叩いて呼びかける。
「メメル様に会いに参りました。お目通りを」
 声を上げくりかえした。
「私は修行者です。はるばるたずねて参りました。どうかお目通りを!」
 鈍い音がして扉が開いた。
「半年前までのわしであれば、会わなかった」
 メメルではなくその影ではないか、一瞬フィリンはそう錯覚したほどだ。
 同じ人物ではある。年齢もフィリンの知る姿に近い。
 しかしメメルは黒い長衣を着ており、無帽で、夜の海のような目をしていた。しかも一人称は『わし』ではないか。
(無理もない。魔王を封印した代償は、お兄さんを含む六人の仲間の死……特に、お兄さんのことはあんなに慕っていたのだから。しかも校長自身は、不老不死という終わらぬ苦悩を手にしてしまった)
 すでに魔王大戦から二十年近い年月が経過しているようだ。なのにメメルはまだ、深い闇の底にいるのか。
 膝を地に着く最敬礼の姿勢でフィリンは告げた。
「魔王を封印した七勇者のひとり、メメル様……お会いしとうございました」
「何をしに参った」
「しばし住まわせてもらえないでしょうか」
「目的は」
「道を探して」
「道、だと?」
 片眉をあげたメメルの顔は、彼女の兄ルルに似ている。
「私はさまよっているのです。自分自身の心の内の迷宮に」
 追い返されるかと思いきや、「好きにせよ」と告げてメメルは奥へ姿を消した。扉は開けたままだ。

 その日からフィリンとメメルとの同居生活がはじまった。広大な屋敷ながら住人はメメルひとりだ。フィリンは一室を与えられた。
 メメルの朝は遅い。昼前に起き出すと、朝食もとらず何時間も自室にこもって読書をしている。
 夕方になれば散歩をすることもあるが、大抵は魔法の研究をしているようだ。ときどきみずから街に買い出しに行くこともあるものの、大抵はグリフォン便で食料を買いこんでいる。頼んだこともなかったのに、メメルはいつの間にかフィリンの分の食料も購入するようになっていた。
 夕食はフィリンと一緒にとる。ただ、メメルはごく小食で、すぐに席を立ってしまう。
 そしてまた自室に籠もっている。やはり読書に精を出しているのか。フィリンが床についても、宵っ張りでいるらしい。
 フィリンはメメルの身の回りの世話をするようになった。メメルは掃除をしないので、屋敷内は荒れ放題だった。フィリンが庭を掃き床を清めるようになった。洗濯や食事の支度もフィリンの担当だ。
 問題はコミュニケーションだった。一週間ほどすごしたが、メメルに話しかけても「忙しい」とか「読書中だ」と言って相手にしてくれない。黙考しているのか、黙って景色を眺めていることも多い。
(山籠りで悟りを開こうとしている……? まさか)
 この時代の隠者のようなメメルと、フィリンの知る彼女のあいだの落差は大きすぎた。
 謎が解けたのは、フィリンが同居するようになって七日目である。
 日の出前に目が覚め、頭が冴えてしまったのでフィリンは自室を出た。
 メメルの部屋から灯が洩れている。まだ起きているのか。気になり扉の前まで行った。
「メメル様」
 ドアの前で呼びかけるが返事がない。何かあったのだろうか。胸騒ぎがした。
「入りますよ」
 ドアを開けフィリンが見たもの、それは、酒瓶を片手に大の字になって眠るメメルの姿だった。だらしなく大口を開けている。服は半分脱げていた。おつまみの類いが散乱していた。食事をあまり取らないのは、間食に原因があったようだ。
 あきれる反面、どこかほっとしながらフィリンはメメルをゆさぶった。
「メメル様……メメル様!」
「えん?」
 口元のよだれをぬぐってメメルはフィリンを見る。
「あ、まずい……! オレサマのイメージが」
「『オレサマ』?」
「これまたまずい!」
 この半年ほどで酒の味をおぼえたメメルは、毎晩のように独り酒を満喫していたらしい。
 膝をつき合わせてむきあう。
 昼間勉強しているのは本当だとメメルは言うが、夜はたいてい、アルコールの海に溺れていたそうだ。
「長くオレサマは無気力だった。ずっと喪に服していたようなものだ。だがこのところようやく、七人パーティで自分だけが生き残った理由を見出したのだ」
「運命は役割のため人を生かす……と、聞いたことがあります。メメル様が今こうして生き、進もうとしているのも、きっと大切な役割なんだと私は思いたいです」
「そうだな。二十年ちかくかかったが、自分の役割、すべきことがやっとわかった。オレサマは伝えていかなければならない」
「後継者を育成されるのですか?」
「いや、ひとりやふたりではなく、広くたくさんの人材を育成する機関を創設したい。いつか魔王がよみがえったときに備えて」
 学校を作りたいとメメルは言う。そのため、教育や経営についてずっと勉強していたという。
 フィリンの顔に笑みが浮かんだ。
「迷路から出たように思います」
「そうかね?」
「動くときがきた、そう理解しました。私も、もちろん校ちょ……メメル様も」
 フィリンは立って、さあ、とメメルに手を差し伸べた。
 メメルはその手を取った。

 ◇ ◇ ◇

「お疲れさまでした」
 ベイキがフィリンをねぎらった。一週間におよぶ旅だったが、現実の時間はせいぜい十五分しか過ぎていない。
「それでは私の番ですね」

 かえりたい――。
 メメルの声を聞きながら、ベイキはカーテンをひらくようにして過去を覆うベールをめくった。

 頭にはとんがり帽子、手にはステッキに背にマント、ブーツでやわらかな草をふむ姿は、ベイキのよく知るメメルそのものだ。フィリンが会ったころから数年は経っているはずだが容貌に変化はない。旅装、連れはなく単身だ。
 木立を抜けたメメルは、まばゆい光に目を細めた。
 陽光を反射しているのは湖だった。スペル湖、鏡のごとく澄明な水面がどこまでもひろがっている。水辺はひろく、背の低い春色の草におおわれていた。
「さて……と」
 視線を湖にむけたままメメルは言った。
「おるんだろう? 話さないか?」
 すると水のほとり、葉を茂らせる楢(ナラ)の木陰から、水色の髪をもつローレライの女性が姿を見せたのである。
「お気づきでしたか」
「湖の精か」
 メメルが顔を向けると、
「そう思っていただいて結構です」
 ベイキは頭を下げた。素性をつまびらかにすれば、眠っているメメルの意識に混乱がおこる。理解にまかせておきたい。
「七勇者のひとり、メメ・メメル様ですね」
「いかにも。唯一の死にぞこないだわい」
「長く消息を絶っていたメメル様が、なにゆえにこの地に?」
「教育機関を創設しようと思ってな」
「と申しますと?」
「いわば勇者の学校だ。魔王はかならず復活する、それが明日なのか千年後か、もっと先なのかはわからんが我々は備えねばならん。奇跡的な確率で勇者があらわれるのを期待するのではなく、前もって勇者を育てることで」
 そればかりではないとメメルはつづけた。
「魔王なき時代がつづこうとも、魔法、工学、哲学や芸術、研究すべきことはたくさんある。学園は世の発展に貢献すると思っとる」
 学園用地を探しつづけていた、とメメルは言うのである。
「スペル湖の東にひろがる平野、広大なこの土地こそぴったりだ♪ 幸か不幸か都市や交易路からは遠く、まだ人の手が入っていないがそれだけ開発のしがいがある」
「お待ちください」
 冷水を浴びせるようにベイキは言う。
「この地が無人というわけではありません。我々がいます。当然ながら多数の動植物も」
「木の伐採は最小限にとどめるし土地も……」
「ちがいます。私が危惧しているのは、学園がここにできることです」
 許可できると思いますか、とベイキは両手を広げた。
「魔王軍の残党に学園のことが知れたら……この地が、激しい戦いに巻き込まれるかもしれないのに」
 ベイキは腕をひろげたままメメルに歩み寄る。湖を背にして言葉をかさねた。
「命あふれるこの湖が、魔物のはびこる地獄になるかもしれないのに」
 メメルは動じなかった。
「わかっている。まずは私に説明させてほしい」
 一人称が『私』である。このころはまだ、くだけたときしか『オレサマ』名乗りはしていなかったようだ。
「この地でないといけない理由がおありということですか?」
「そう。spell(魔法)という名前からあきらかなように、スペル湖は水のみならず、大量の魔力を含有している。魔力は自然発生をつづけており尽きることがない。私は世界を旅し、いま、直接目にして確信したのだ。この湖のもつ魔力は他に類がないと! 大がかりな術式をもちいるのに向いているのはもちろん、魔法を使うことで失った気力を回復させるにも非常に適している☆」
 加えて、とメメルは声を上げた。
「未熟な勇者の卵、あるいは、付随する学園都市の住民を守るため、私は広大なる一帯に目に見えぬ結界を張るつもりだ。もちろん邪悪な侵入者を拒む結界だぞ。結界をたもつには、大量の魔力の供給源が必要なことはわかってくれるな?」
 はっとしたようにベイキは腕を下ろした。
「つまり、学園が創設されることで安全がたもたれると」
「まだスペル湖に魔王軍残党が目を付けていないのは幸いだ。きゃつらの拠点となる恐れもあった」
 これで充分説明にはなったかもしれない。しかしメメルは帽子を脱ぎ、短い沈黙を挟んでふたたび口を開いたのである。
「さっき私は学園創設の目的を語ったよな。じつは……表向きは伏せておくつもりだが、もうひとつ目的があるのだ」
「それは?」
「まず聞いてほしい、私の考えを。……我々は、永遠に魔王には勝てないと思う」
「まさか」
 話がちがうではないか。『魔王に備える勇者の学校』ではなかったのか。
「勇者育成が間に合えば、再度封じ込めることはできるはずだ。そう信じたい。しかし魔王を完全に滅しつくすことはできない。そこから時間が流れれば、また魔王はよみがえる。何度倒そうと何度でも復活する。完全な勝利などないのだ。なぜなら魔王は」
 メメルは息を吸い、ため息のように言った。
「魔王は、恐怖そのものだからだ」
「ではどうすれば」
「異端と言われようがかまわない。私は魔王を倒すことではなく、いつか学園に迎え入れることを考えている。そのため学園には、勇者や武闘家、賢者、聖職者を育てる学科のほかに、魔王を育てる学科も用意したい。芸術家や村人、貴族の子弟の教育学科と同じようにな。滅ぼすことができん以上、共存を目指すほうがずっと健康的だろう? ほかに、黒幕など陰謀を巡らせる学科もあってもいいかもしれん。これが私の考える、魔王への備えだ」
 ベイキは慌てた。メメルが膝と両手を地につき、伏して拝むような姿勢を取ったからだ。
「だから頼む。いや、お願いする! 魔力豊富なこの地に……学園を建てさせてください!」
(学園長……!)
 自分も地に伏したいくらいだったが、私は湖の精だったと思い出し、ベイキはおごそかに告げた。
「わかりました。どうぞお立ち下さい」
「ありがとう。本当に、感謝する」
「私も設立に向けてお手伝いをしましょう。洪水に巻き込まれにくい高台にご案内します。街を作る基礎になるでしょうから。湖水を活かして資材を運ぶルートも用意します。【セシオ・ジム】という人物が以前から協力を申し出てくれていて」
「しかしそんな迷惑は……」
「お互い様ですよ。メメル様、ひとりですべてを背負うのは無理です。重荷で潰れてしまったら、すべてが無駄になるのですから」
 ところでとベイキはたずねた。
「学園はなんという名前なのです?」
「『フトゥールム・スクエア』と名付けるつもりだ。おにい……兄のルルを含む、命を散らした六人の勇者から少しずつ名前をもらって組み合わせた」

 ◇ ◇ ◇

(フギ、トゥーリャダーリャ、ルル、ムジャチオ、スクーデリア、エアリア――)
 ベイキは心の中で、メメルの唱えた七勇者の名をくりかえした。
 二千年以上昔の話だ。地名や都市の名前となって残っている名前もあるが、忘れられて久しい名前も少なくない。
(たとえば、ルルも)
 メメル最愛の兄の名も、知る者は少数だろう。長く生きたベイキすらはじめて知る名前だった。
「次はどなたが?」
 現実にもどりベイキが呼びかける。応じたのはシキアだ。
「現体制への道すじが定まる時期の学園長に会いたいな」
(……学園長の背中、押しちゃったからね)
 シキアは以前、初期化技術を試すか悩むメメルに声をかけ、彼女の決断のきっかけを作った。思ったより早く『その日』が来たのは意外だったが準備はできている。
 メメルの寝顔を見てシキアは思った。
(先生、俺、本当にこの場所のおかげで変われたんだよ。それはきっと皆、大なり小なり同じはずだから)
 だからメメルの帰るべき場所は、過去のどの場面でもなく、現在であると伝えたい。
 つづいて、
「俺も行こう」
 と口を開いたのはクロスだった。
「学園長は今まで、確かに呪いで生かされていた。ならば今度こそ、本当の意味で命を生きてほしい」
 これよりむかうのは、時期にすれば十年少々の昔だろうか。
(以前本人から聞いた不良だった頃のコルネ先生も見てみたい、というのもあるかな)
「ええで、ふたりとも来てや」
 マルティナが手招きする。

 かえりたい――。
 目を閉じると、メメルの声が流れこんでくる。
 
 水彩絵の具で描いたような空。雲ひとつない晴天だ。季節は春だろう。
 見覚えのある景色だった。それもそのはずこの場所は、学園の正門ではないか。ふむ、とあごに手をあててクロスは門を見上げる。クロスの知る門と、ほとんどかわっていないように思えた。
 ただ、見慣れないものも立っていた。
『入学式会場』
 と書かれた案内板だ。羊皮紙の簡単な地図がつけてあり、矢印で順路が示されている。
 少なくとも過去の世界ではあるらしい。
 それでも校内に入ると、せいぜい一年前なのではないかと思えてしまう。それほどにフトゥールム・スクエアの様相は変化がなかった。見覚えのある建物はあいかわらずだし、青々とした芝も同じだ。ベイキが訪れた場所――まったく何もない状態と比べると天地の差だった。
 とはいえ違和感はあった。学園ではなく自分自身に。歩幅が小さいように思うのだ。
 途中、校舎の窓に自分の姿を映してクロスは悟った。
 ……歩幅が小さいのは当然だ。若返っているではないか。ハイティーンくらいだ。
 時代にあわせたのか、自分を知る相手に気づかれないようにという配慮か。わからないが受け入れるほかなさそうだ。
 だが自分の変化以上の驚きに、間もなくクロスは遭遇したのである。
 ひょいと横合いから少女が出てきたのだ。寮のところだ。この陽気だというのにボロボロの革ジャンを着ている。はいているのも革パンだがやはりくたびれている。髪を頭の上でまとめバンダナで巻き留めているが、よく見ると赤いバンダナは制服のスカーフだ。
 横顔が見えたのはほんの一瞬で、すぐ背中しか見えなくなったが、クロスはすぐに少女を認識した。
(コルネ先生……になる前の彼女、か)
 追いかけてならぶ。
「新入生ですか? 俺もなんです」
 親しみをこめて呼びかけるも、コルネはクロスをじろりと一瞥しただけで無視した。
 コルネにはちがいない。服装も表情も、もっといえば年の頃だってまったく異なるが。
 たしかに十年ほど前のようだ。コルネはクロスの知る姿より背が低く、まだティーンエイジャーらしく幼い顔立ちだった。しかしトレードマークたる笑顔はなく、何かにいら立っているような険のある表情をしている。
(先生には荒れた時代があったというが、実際その通りらしい)
 どうやらクロス自身も、コルネと同年代に若返っているようだ。
 だが一度無視されただけで引き下がるわけにはいかない。めげずに話しかけた。
「俺はクロノスといいます、クロノス・タイム」
 とっさに作った偽名だった。いささか意味深ではあるが、深く考えなければ大丈夫だろう。
(奇妙なものだな、長らくマガツであることを偽っていたのに、今度はクロスであることを偽るとは……)
 皮肉な考えが浮かぶが表には出さず、
「コルネさんですね? 学園長から聞いています」
 偽名ついでに話も作ってしまう。名前を呼ばれてさすがにコルネも聞き流せなかったのか、舌打ちして言った。
「何の用? 話しかけてほしくないんだけど」
 氷の檻にでも入っているような返答だ。しかし言葉を引き出すことはできたのだ。気後れするまい。
「入学式に行くんでしょう? ご一緒しませんか」
 なんで、と言いかけたコルネだったが、どうにも不機嫌そうに言い直した。
「アンタ場所わかる? 講堂の」
 アタシ知んねーから、とコルネは続ける。特に下調べもせずに出てきたらしい。
「わかりますよ。ご案内しましょう」
 通い慣れた学園ですから、と言いたい気持ちをクロスはこらえた。

 シキアは学園講堂を見上げる。
 入学式という看板が下がっていた。何年も使い回しているらしく、飾り付けの造花がなんとなく古い。
(俺の入学より十年ちょっと前だ。まさか俺だと気づく人もないだろうけどね)
 念のためシキアは姿を一変させていた。勝手知ったる学舎である。演劇部の部室に忍びこみ変装を遂げたのだった。
 眼鏡をかけ、髪はゆるいみつあみにする。わざとオーバーサイズの真新しい制服に袖を通した。コンセプトは『地方から出てきたばかりで垢抜けていない新入生』だ。野暮ったく扮したつもりだが、それでも気品や華が出てしまうのは、シキア生来の素質によるものだろう。
 学園は一年通して新入生を集めているが、春や秋などまとめて入学生があつまる季節には式が行われる。
「新入生だね? 入学おめでとう」
 入り口で声をかけてきたのは【ゴドワルド・ゴドリー】だ。ぎょっとしてシキアは彼を二度見してしまった。
(ゴドリー先生若い……っていうか、明るい!?)
 いつも目の下に隈があり顔色も悪く、柳の枝みたいに垂れ下がる長髪が不気味な彼のはずが、白黒反転したかのように健康的な姿なのだ。晴れ晴れとした表情、肌はつややかで髪も短い。しかも制服姿だ。
「OBのゴドリーだ。卒業したばかりなんで制服のほうが居心地がよくてね。学園に残って講師助手をしている」
 先生見ちがえましたねと言いそうになったが、シキアは初対面らしい演技をする。
「はじめまして。シ……シフォン・ハメットです」
 でっち上げの名前を名乗りつつ、どうしても気になっシキアはゴドリーの隣の女性に目を向けた。背の高いエリアル(エルフ)で、ゴドリーにぴったり寄り添うようにしている。くすんだブロンドでなかなかの美人だ。
「妻で同僚のエミリーだ」
 よろしくお願いします、とエミリーは告げた。新婚らしい。
 なぜだろう、とシキアは思った。彼女とは二度と会うことがないような気がした。
 講堂に入る。すでにたくさんの生徒でにぎやかな様子だ。壇上にはフトゥールム・スクエアの旗が飾られていた。
 空いている席に着くと、シキアの隣の席に小柄なドラゴニアの少女が座った。臙脂色の振袖を着ている。
「私たち同級生、ですわね?」
 にこりとほほえみかけてくる彼女は、驚いたことに先輩の【テス・ルベラミエ】ではないか。ずっと幼い容姿だったので、彼女が自己紹介するまで気づかなかった。テスはこの年に入学していたのか。たしかに学園には、何年以内に卒業しなければならないという規則はないはずだが……現在までつづく長い学生時代といえよう。
 やがてピアノの演奏がはじまり、終わった。
「?」
 シキアはテスと顔を見あわせる。何もはじまらない。
 やや間が空いて、
「おっすおーっす☆」
 どたどたとステージに走り出てきたのはメメ・メメルだ。おなじみのあの服装、はちきれんばかりの笑顔も同じだ。
 演壇に両手をついてメメルは言うのである。
「いやはや、最初がオレサマの挨拶だというのを忘れとった。えー、諸君の入学を歓迎する。充実した学園生活をすごすがよいゾ♪ 以上、あいさつ終わりっ☆」
 なんとも短いスピーチにびっくりしている新入生は多いようだが、シキアにとっては慣れたものだ。
(メメル先生はそんなに変わらないなー)
 なんだかほっとした。

 前のほうは嫌だとコルネが言うので、一番後列の席にクロスは腰かけて入学式をむかえた。
 こんな調子だから不真面目なままかと思いきや、式がはじまるとコルネは急変した。学園長のあいさつを皮切りに、教師らが説明する学園生活の特徴や行事予定、授業のすすめかたなどを熱心に、それこそ前のめりになって聞きはじめたのだ。大きな瞳をしかとあけ、きらきらと光すら宿らせている。
 コルネを横目で見てクロスは目元を緩めている。
(やはりこの人はコルネ先生だ。これまで荒れた生活を送っていたから素直になれないだけで、本当はこれからの日々への期待と希望で胸が一杯のようだね)
 かわいいと思った。口に出したらぶん殴られそうな気がするが。
 質疑応答の場面になった。質問すべく挙手する生徒がちらほら見られる。
 もじもじしながらコルネはクロスに小声で告げた。
「ね、ねえクロノス……頼まれてくれる?」
「え? よく聞こえませんが?」
 本当に聞こえにくかったのだがコルネはどう思ったか、
「クロノスくんお願い聞いて、って言ったの!」
 怒ったように言った。クロスはうやうやしく返す。
「わかりました。不肖クロノス・タイム、逃げも隠れもしません」
「アタシの代わりに質問して……」
「ご自身で聞いたほうが早いのでは……?」
「やだよ恥ずかしい! で、訊いてほしいのはね」
 クロスはコルネの求めに応じることにした。

 式は終わり、生徒たちはめいめい校舎に移動してゆく。昼休憩だ。
 一緒に学食に行きませんかとテスに誘われたが、用があってとシキアはこたえた。
「シフォン様は、この学園でできた私のはじめてのお友達ですわね。仲良くしてくださいまし。ではお先に」
 ぎゅっとシキアの手を握り、テスもぱたぱたと走り去っていった。彼女にもこんな時代があったのか。
(さて――)
 見とがめられないよう用心しつつ、シキアはステージ横手の階段を上がった。
 入ったのは薄暗い楽屋裏だ。舞台装置や鏡、垂れ幕などが集められている。その中央あたりに、
「あー疲れた疲れた」
 だらしなく左右の膝を大きく開けて椅子に座り、うちわを使うメメルの姿があった。一人だ。
「疲れには酒だな♪」
 椅子の脇にメメルは手を伸ばす。影になったところに一升瓶が隠してあった。
「学園長先生ですか? はじめましてっ!」 
 しかしシキアに声をかけられたものだから、メメルは大慌てで酒瓶を隠し場所にもどすのである。
「な、なにかね!? ああ新入生か」
「はい。お話がしたくて」
「おういいぞ。そのへんに座ってくれい」
 シフォンですと名乗って、シキアは純朴な口調で告げた。
「校長先生、お若いのにすごいですね。こんな大きな学校だと経営は大変じゃないんですか?」
「わはは、若いと言ってくれるのはありがたいが、人は見た目によらんものだぞい☆ まあ、大変なのはまちがいないが」
 メメルは話し好きで、シキアにいろいろと質問をしてくる。故郷を離れて寂しくないか、とか、何か困っていることはないか、というものが主だった。
(ずっと昔から、こうやって色んなひとを見守ってきたんですね……分かるよ、だって眼差しが優しいから。俺がこの学園に来てからずっと)
 ほどよく会話がこなれたころを見計らい、確信しました、とシキアは言った。
「俺たち……つまり勇者のたまごは強くなれると。教えてくれるのが先生なら、それを活かすのが生徒だから。いつか、貴方の後ろじゃなくて貴方の隣に並ぶために」
 頼もしい話だな、とメメルは満足気な顔をしたが、
「しかしなんだろうな。新入生じゃなく、熟練の生徒と話しているような気になってきたぞ」
 と首をかしげた。
「また会おう」
 数時間後のつもりでメメルは言ったのかもしれない。
「ええ、また」
 十年後のつもりでシキアは応えた。

 コルネは名残惜しげにしていたが、また後でとクロスは別れ、講堂からメメルが出てくるのを待った。
「学園長」 
 出てきたところを呼び止め話しかける。
「おうよ☆ 新入生かや」
「そうです。でもこれは学生ではなく、未来からの声だと思って聞いてほしいのです」
 笑い飛ばされるかと思いきや、メメルは神妙な顔で応じたのである。
「聞こう」
 軽く息を吸ってからクロスは語った。
「勇者は力を合わせることでより強くなる。あなたは確かに仲間を失った……でも、新しくあなたを支えてくれる仲間にも出会えているはずです。もう一度、勇者を信じてみませんか?」
「そうか」
 メメルはほほえんだ。
「忠告をありがとう。いまのオレサマは信じはじめているよ」

 ◇ ◇ ◇

 クロス、つづいてシキアが帰還すると、エリカがベッドに近づいた。
「私は、自分の入学後でお願いします」
 マルティナに告げた。
「学園長の知る私のままで、お話したいんです」

 ゆっくりと水車が回っている。麦を挽くための水車だ。
 田園風景の中をエリカは歩いていた。昨夜は凍えそうな雨が降ったものだが、今日は朝からきれいに晴れ初夏並みの暑さだ。グリフォンから降りてまだそれほど経っていないのに、もう額には汗が浮いている。
 大きな農家の前で足を止めた。土台は石を積んだものだが柱は木、壁は焼いた泥に白い塗料を塗ったものだ。タスクが見た時代の家屋に比べれば、かなりしっかりした構造である。
「ごめんください」
 柵の外から呼びかける。だが返事がないのでエリカは門扉を外して庭に足を踏みいれた。
「エリカです。入りますよ」
 でも返事をするのはヒヨコたちだけだ。数羽いる大人のニワトリはエリカに興味がないようで、虫を追いかけるほうに忙しい。
(タイミングが悪かったかしら)
 家まで入ったところで声がした。
「どうぞ。家のみんなは出かけています」
「こんにちは、お久しぶり。ピーチさん」
 エリカは相好を崩す。
「レミールちゃんも」
 と言ってエリカは、ピーチが抱く赤ちゃんに顔を寄せた。温めたミルクのようないい匂いがする。
「また大きくなったわね」
 と呼びかけると、おかげさまでと【ピーチ・ロロン】は嬉しそうな顔をする。
 以前はフリルのついた黒ずくめの服装を好んだピーチも、いまはウール地のワンピース姿である。色は白に近い灰色で、ゆったりと余裕のあるのが見てとれる。
 ピーチは、学園に反旗をひるがえした【ディンス・レイカー】の元愛人だ。ピーチはディンスにすべてを捧げたが、ディンスにとって彼女は、あまたいる愛人のひとりでしかなかった。セントリア攻防戦でも、その後異世界にて収監されるにいたっても、ディンスがピーチのことを口にしたことは一度もない。子がいることすら知らないだろうし、知ったところで興味をもつとは思えない。
「今日はみんなで街に買い出しです。私はこの子の世話があるから」
「残念、みなさんにと思って持ってきたお菓子があるのだけれど」
 エリカは持参した包みをピーチに渡した。
 赤ちゃんはしげしげとエリカを見ている。首はすわっているが、歩き出すのはまだまだ先だろう。名は【レミール・ロロン】、男の子だ。ピーチはレミールに、父親については明かさぬつもりだという。
「どう、やっていけてる?」
「おかげさまで。おじさんもおばさんも親切だし。子どももたくさんいるから、レミールのいい遊び相手になってくれると思います」
 一時は自死をはかろうとしたピーチも、すっかり穏やかになっている。
 それでも、とエリカは思わずにいられない。
 彼女もまた、魔王という存在に翻弄された犠牲者なのだと。
「エリカさん」
 ピーチは言った。
「私いま、幸せです。レミールがいて、生活もあって……だからお願いです」
 だから、とピーチは目をうるませた。
「私たちを守って。この幸せを守って……魔王から。勇者さま、お願いです」
 エリカが何か言うより早く、レミールが目を覚まして元気に泣き始めた。どうやら彼は空腹を覚えたらしかった。

 学園敷地でグリフォンの背から滑り降りた。
「ありがとう」
 エリカはグリフォンの頭を優しく撫でる。人に慣れたグリフォンは、頭頂のやわらかな毛を撫でられることを好むという。獰猛そうな外見に似合わず、獅子と猛禽類の中間のような幻獣はおとなしく目を閉じ、気持ちよさそうな声で低くうなった。
「わちきには触(さわ)れんわ」 
 おっかなくての、と告げたのは【ドーラ・ゴーリキ】である。ドーラを見てエリカは目を見開いた。
「作ってもらったの、制服!?」
「まあ……な」
 ドーラは新品の制服姿だった。かつて【怪獣王女】と呼ばれたドーラはフトゥールム・スクエアに確保され、入学を選んだのだった。【ユリ・ネオネ】との対面もかない、エリカやメメルたちの口添えもあって旧怨を解消するに至ったという。
「もしかして、制服姿を私に見せに来てくれたとか?」
「そんなはずなかろうっ、たまたまじゃ、たまたま!」
 ムキになるところが逆に正直ではないか。
「お父さんも喜んでくれると思うわ」
「そうかの……いや、そうじゃろうな。パパ上は、最後には自分の宿願よりわちきを選んでくれたお人ゆえな」
 不幸にして魔族と人間は対立してしまった。だがそれが決定的な分断に終わったわけではない。溝は埋められる、エリカはそう信じている。
 なぜって魔族のドーラとは和解できたのだから。友好的な関係が築けるとわかったのだから。
(仲間や娘が幸せに暮らすこと、それがドーラさんのお父さんの望みでもある……私たちは、ともにそれをかなえよう)
「ところでグリフォン撫でてみる? 大丈夫よ、いい子だから噛んだりしないわ」
 エリカが呼びかけたが、
「ま、まだ制服を見せたい相手がおるよってな……!」
 言い残してドーラは、文字通り尻尾を巻いて退散したのである。
 何気なくふりむいてエリカは声を上げていた。
「あっ……!」
 グリフォンを撫でている人物がいたのだった。なんとメメルだ。
「オレサマに、会いに行くつもりだったんだろう?」
「その通りです。どうしておわかりに?」
「なんとなくだよ♪ それにドーラに制服を進呈したのは数日前のことだ。なんだかおかしいと思ってな」
 すでにメメルはこれが夢だと認識しているのだろう。彼女は目覚めつつあるのだ。
「学園長、これまで何度か聞いたことかもしれませんが、改めて申し上げます」
「うむ」
「私は異世界人です。記憶こそありませんが、望郷の念……帰りたいと思ったこともないわけではありません」
「だろうな」
「ですが私は、すくなくとも今の私が、帰りたいと思うのはこの場所です。温かく迎え入れ、育ててくれた人々のいる世界……この世界なんです」
 黙ってメメルは目を閉じ、エリカの言葉をかみしめるような顔をする。
「私は学びました。魔族にも滅びや破壊より平和を望んでいる人が少なくないということを。私たちみんなは、想いと力でより良い未来を迎えられると思うんです。重荷も苦しみもみんなで背負って乗り越えよう――それが私の願いです」
 だから、とエリカはメメルに呼びかけた。
「学園長はもう、ひとりで全部かかえこまないでいいんです。私にも、私たちにも背負わせてください」

 ◇ ◇ ◇

 ほとんど間断はなかった。
 エリカがもどったときにはすでに、貴人はメメルの過去に入りこんでいたのだから。

「メメたん!」
 ここがどこなのか把握するより前に、貴人は声を上げていた。
「なんじゃあ、大きな声を出さんでも聞こえとるわい」
 小指を耳に入れ、ぽりぽりとかいてメメルがこたえた。帽子はかぶらず白い長衣姿だ。
「あ、メメたん……えっと、ここは?」
 貴人は周囲を見回し、えっ! と声を上げて硬直した。
「校長室……?」
 真昼の学園長室だった。つまり出発点と同じだ。開いた窓から気持ちのいいそよ風が吹きこんでいる。
 とっさに手にふれたものに貴人はまた驚く。なめらかな木材の感触――ベッドの縁ではないか。
 まさかと思って目をやって、そのまさかであることを貴人は知った。
 ベッドにはメメルが眠っているのだった。安らかに。人形のように。
「そっちにもメメたん、こっちにもメメたん……!?」
 うろたえんでもいい、と言ったのは起きているほうのメメルだ。彼女は壁際におかれた執務机に座っているのだった。両手を机にのせ、膝を組んで挑発的な笑みを見せている。裸足だ。
「まだオレサマの本体は熟睡中だよ。まあ、半分くらい目覚めつつあるから歯ぎしりくらいしてるかもしれんが☆」
 つまりここは、とメメルは言うのである。
「夢の世界だ。ベッドのオレサマは起きん」
「そうみたい、ですね」
 貴人も理解した。学園長室にはマルティナをはじめとして何人もいるはずなのだが、自分の目の前にいるのはメメルだけだ。
「じゃあまず、オレ……メメたんに謝りたい」
「なんだね唐突に?」
「初期化技術を受けてくれと頼んだことを。成功確率のことを知らなかった、いやむしろ知らなかったのに頼んでしまったから……オレ、責任を感じてる」
「気に病むな。ちゃんと確率を知ったうえで決めたのはオレサマだよ☆」
「でもオレ、メメたんの身の上を案じなかった」
 声を詰まらせる貴人を見て、メメルはため息をつくと足をとき、執務机の上を移動して場所を空けた。
「立ち話もなんだ。座れよ。オレサマの隣に」
 貴人はしたがう。腰を下ろした場所にじわっとメメルの体温が感じられた。
「『このままじゃメメたんが死んじゃう!』と案じたからこそ、貴人タンは初期化技術を勧めてくれたんだろう? 気持ちはわかっとる。それだけでオレサマは嬉しいぞ」
「でも」
「……ここ、夢の世界のおかげで他に誰もおらんから言うが」
 えい、と手を伸ばしてメメルは貴人の仮面をもぎ取った。奪った仮面は背後に放り投げてしまう。さらにメメルは両手を使って、貴人の顔をこちらに向かせた。
「オレサマも、貴人たんのことが好きだぞ」
「えっ!? いま何て!?」
「二回も言わせんな! 貴人たんが期待しているとおりの意味だ! 以上告白終わりっ!」
 さすがに照れた様子でメメルは顔をそむけた。頬が赤い。
「だからなぁ……もし貴人たんが、『メメたん死んでくれ! 死んでくれたら魔王との戦いも終わるんだ』って言ったら……たぶん、オレサマそうしたんじゃないかな。オレサマってたぶん尽くすタイプじゃないけど、惚れた相手の真剣な言葉なら聞くくらいの素直さならある……と思う、たぶん」
「死んでなんてオレ言わないよ!」
「わーっとる! たとえだ、たとえ!」
 だからな、とメメルは言った。
「一方的に責任とか言うな。貴人たんがオレサマを選んだように、オレサマはチミを選んだのだからな☆」
「じゃあ、選ばれた男として、言わせてくれ」
 メメルはうなずいた。
「メメたん、勘違いだったらゴメン。メメたんは強いさ、オレたちの誰も及ばないくらいにさ。だからオレひとりではメメたんの背負ってる荷物は運べない。でも、みんななら運ぶくらいはできるんだよ? ここまでの旅路でみんな言ったはずだよな。それにほら、学園全体から波動が伝わってくるのを感じないか? 学園生たちが祈ってる。みんなでメメたんの力になろうとしてる。これが、メメたんが長い時間を使って育て上げた力の一部分なんだぜ」
 貴人が語り終えると、メメルは顔を上げた。
「なあ、貴人たんや」
「うん」
「キスしたこと、あるか?」
 貴人が返事するより早く、メメルは貴人の唇に自分の唇を重ねた。
 何秒か、あるいは何十秒かして、うつむき加減の姿勢でメメルは言った。
「……オレサマはあるぞ。今のを入れていいのなら、一回だけ」
 参ったなあ、とメメルははにかんだような顔をした。
「目が覚めてきた……」

 ◇ ◇ ◇

 ベッドからメメルが身を起こしている。
「おはよう」
 と言いながら伸びをする。
「夢を見ているあいだに考えたよ。過去にはいいこともあった、ずっとこのままでいいと思った時代もあった。だがな、オレサマはそのどこへも帰ったりはせんぞ。帰るべきじゃないんだ。オレサマがいるべき場所は、そう、ここだからな☆」
 だろ? と顔をめぐらせる。
「お帰りなさい、学園長」
 ベイキが一礼する。
「先生が自分の居場所、ここだって言ってくれて嬉しいよ」
 シキアは髪をかきあげた。そうでなくっちゃ、と言いたい気持ちだ。
「あっ……」
 視線がメメルと合い、貴人は慌てて視線をそらせた。仮面をしていて幸いだった。顔はきっと真っ赤だ。
 ところがそらせたまなざしが、あるものをとらえたのである。
 窓際に置かれた大きな鏡だ。
『学園長の心に見えているものをこの鏡に映し出す。これで学園長の心に入っている者だけではなく、他の皆も状況をミラーれるというわけだな』
 ゴドリーが言ったではないか。
 今さらながら貴人は思い出した。というかこれまでずっと、タスクの旅、ルージュの旅、フィリンの旅、ベイキの旅、シキアとクロスの旅、そしてエリカの旅――すべて貴人も鏡をとおして目にしていたのだ。
「あああっ……!」
 自分の旅だけ、鏡に映らなかったはずがない!
 仲間たちに目をむける。
 見たよ、と言うかわりにシキアは悠然と微笑した。
 やるね、とでも言いたげにクロスはあごをさすっている。
「……ええと」
 エリカは真っ赤だ。タスクも。ふたりして顔を見あわせている。
「お熱いことで」
 ルージュはパタパタと自分をあおぐ。
「もしかして……見た?」
 貴人がおそるおそる問いかけると、
「一部始終を」
 ベイキは笑みとともにこたえた。
「よかったわ、初々しくて」
 フィリンは感想を口にした。
「見てません!」
 メフィストは案外純情なのか、両手で顔を覆っているのである。
 シトリは困ったような顔をするだけだ。
「青春だな……」
 ゴドリーは目頭を押さえていた。自分の過去を目にしたことも関係しているのだろうか。
「見たって何を?」
 まだ事態が理解できていないのか、メメルはきょろきょろとするばかりだ。
「あー、学園長はん。あのな、じつは……」
 マルティナが鏡を示して端的に事情を述べると、間もなくメメルの絶叫が部屋を満たした。
「まぁまぁ、まぁ」
 ふたたびタスクはなだめ役を買って出るのだった。
「まずはひとつ、学園長の生還パーティーといきませんか!」

 きっかり二時間後。パーティー会場でメメルは気づいた。
 半歩先の酒瓶を取り寄せるべく手を伸ばしたのに、ぴくりとも動かないことに。
「そうか……」
 息をつく。
「学園長、どうされました?」
 気がついてエリカが問いかけた。
「なあに、大したことじゃあない」
 メメルは肩をすくめた。
「オレサマはどうやら、普通の人間に戻ったらしい」
 



課題評価
課題経験:27
課題報酬:900
どこへもかえらない(メメルの旅路)
執筆:桂木京介 GM


《どこへもかえらない(メメルの旅路)》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2022-04-12 00:16:40
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。

時代については、やりやすいのは4だけど、
他のみんながどこへ向かうのかを見て、空いた時代へ行く事も考えているわ。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 2) 2022-04-12 05:50:55
勇者・英雄コースのフィリンよ、よろしく。

話を聞いた感じ、あまりダブらない方がよさそうね
私が知りたいのは『(2)学園創設前』かな?

欝々としていた頃から学園創設って目標に辿り着いた理由、
それに近い時代なら魔王や霊玉についての諸々も知る機会になるかもだし

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 3) 2022-04-12 18:28:59
遅刻帰国~!
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。よろしくお願いいたします!
校長先生の生還を目指して、みんなで頑張りましょう!

僕は(1)を希望します。
ジム家の先祖に扮して現れる、というのをやってみたいと思いまして。
当時の普通の人代表として、力はないがあなたの支えになるよ、一人じゃないよ、
ということを伝えられたらと思います。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 4) 2022-04-12 20:25:10
教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。

選択肢として提起されてるのは4つ。それ以外も可なれど、未来や記憶があやふやな時代は不可とのことです。
普通に動くなら、4つの時代のうちどれかでしょうか。

私は人が少なめなら(1)を考えてますが、多くなりそうなら……選択肢外の時代をかんがえてみようかなと。

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 5) 2022-04-12 22:53:46
あ、気になることができたので、学園創設直前~創設時に行ってみようかと。
なぜ、この地に学園ができたのかが気になったので……個人的な興味ではありますが。

《スイーツ部》 ルージュ・アズナブール (No 6) 2022-04-13 08:30:15
村人・従者コースのルージュと申しますわ。
よろしくお願いいたしますわね。

同じ時代にぞろぞろ行くよりは、分散した方がよさそうですし……わたくしは、最初の勇者達が、魔王打倒に向けて旅をしている時代を目指してみましょうかね。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 7) 2022-04-13 20:51:13
芸能・芸術コースのシキア。今回もよろしく。

俺はとりあえず、3に行ってみようかな~って思ってるよ
どこでもきっと、俺達も知らないメメル先生が見れるかもね

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 8) 2022-04-13 23:18:56
みなさん、よろしくお願いいたします!
満員御礼、幸先良いですね!

さて、ここで皆さんの希望をまとめてみようと思います。

1.幼少期(勇者歴前5年ごろ) タスク
1.5 魔王打倒への旅 ルージュさん
2.学園創設前(勇者歴20年ごろ) フィリンさん
2.5 創設直前~創設時 ベイキさん
3.現体制への道すじ(勇者歴2011年ごろ) シキアさん
3.5 (例)みなさんの入学直前
4.みなさんの入学後(勇者歴2018年~) エリカ部長さん
4.5 (例)つい最近~今現在

こうしてみると、いい感じにばらけましたね。
せっかく8人フルメンバーなので、全部で8になるように
その他の時代も想定してみました。
あくまで例示ですので、これに縛られる必要はもちろんないですし、
1つの時代に少人数なら重複OKと考えます。
行きたい時代を検討中の方の参考になれば幸いです。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 9) 2022-04-13 23:32:44
これはお遊び企画なのですが、思いついたので募集してみたいと思います。

プロローグに学園生のセリフが3つ登場します。
今回、いずれ劣らず校長先生にご縁のある皆さんがフルメンバーで集まったので、プロローグのあの場面に、ほかの生徒が居て発言する状況は考えにくいです。
つまり、セリフは僕たちのうち誰かが言ったというのが自然です。

そこで、以下のセリフについて立候補を募りますので、
『受け持ちたい』かつ『その希望をここに表明して構わない』方は
立候補の書き込みをしていただくと大変うれしいです。

対象のセリフは以下です。

1.「オレたちに知らせずに始めなくたっていいだろう!」
2.「私たちは、もう学園長に会えないかもしれない。それなのに……これじゃお別れも言えない!」
3.「これきり今生の別れになったとしたら、どうしてくれるんですか」

同じセリフを複数人が希望してもいいと思います。
その場合は、ハモって同じセリフを言うなど、GM様がいい感じに描写してくださるでしょう。

そして、上記セリフを選択せず、代わりに、関連したセリフやアクションも良いでしょう。
例えば、「そーだそーだ」など同調したり、「まぁまぁ、先生の話を聞こうじゃないか」など優等生的にまとめる、など。

そもそもお遊びの思い付きですので、選択や表明を指示や強制するものではありません。
もし気が向いたら、お付き合いいただけると嬉しいです。

なお、言いだしっぺのタスクは、優等生的まとめセリフの予定ですが、
他の方の動きを見て、考えを変えるかもしれません。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 10) 2022-04-14 12:47:17
たびたびすみませんが、さらなるお遊び提案です。

アクションプランの末尾に、メメたん生還パーティーを開く旨書いてみました。
今のところ、参加8人とプロローグ登場NPCでささやかに、と考えます。
文字数をあまり割けず、自分の行動は「【料理】を振る舞う」だけです。

もし気が向かれたり、文字数が余ったなどの場合は
出席、相乗り、お手伝いなどご参加いただくと大変嬉しいです。
ここでの宣言や参加予約などは必須ではないと考えており、
突然、プランに何か書いていただけるのも大歓迎です。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 11) 2022-04-14 15:18:40
遅くなってすまない。
魔王・覇王コースの仁和だ。
よろしく頼む。

行きたい時代はつい最近というか今現在だな。
タスクくんのお遊び企画1については一人称的に1になるか?
お遊び企画その2は行うことは賛成だがオレのプラン的にここにいるNPC含めたメンバー以外にも事前調査などでこの事実を伝えてメメたんのために祈って貰おうかと思ってるんだ。
数や祈りは力になるっていうだろ?
だからこのプランが通った場合ささやかには出来ないかもな・・・

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 12) 2022-04-14 22:28:23
なるほど、貴人さん。僕は賛成です。
皆さんがよければ、ささやか案は慎んで撤回します。
僕も自称報道勇者として協力…出来るかどうか文字数と相談してみます(台無し)

お遊びに両方乗っていただき感謝します。
友情って素晴らしい!!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 13) 2022-04-14 22:45:33
貴人さんに協力して壁新聞発行、と記載してみました。

イメージが違ったら調整しますのでおっしゃってくださいね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 14) 2022-04-15 01:55:43
行き先はいい感じに担当できているので
わたしは最初の通りに(4)で、ほぼ現在の時間軸に向かうわね。
自分自身としてメメたんを励ましてこようと思うわ。

タスクさんのお遊びとパーティーには、わたしも乗らせてもらうわね。

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 15) 2022-04-15 03:53:11
挨拶が遅くなって申し訳ない。賢者・導師コースのクロス・アガツマだ。よろしく頼む。

俺の行き先は3で、前に本人から話を聞いていたしコルネ先生と出会う自体にお邪魔する予定だ。
見てくれ!って具合に選択肢が用意されてるなら、大いにそれに乗っかろう。

うーむ、パーティーか……学園長が目を覚ましたときにするということだろうか?
今回は前準備の段階だし、生還パーティーなら初期化が成功してからが適切な気がするが……
だがまあ、プランに書くのはもちろん構わない。反対はしない。やりたいことを書くのがプランだからね。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 16) 2022-04-15 08:21:43
クロスさん、本当ですね!僕、大間違いしてました!

このエピソードクリア=初期化技術成功 かと思ってたんです。
でも、プロローグに「メメルが目覚めたとき、心の障壁は消え去っているだろうか。」とあることから、
今回は心の障壁を取るだけ、実際の施術はまだ先、と考えるのが妥当ですね。

ということは、パーティーは先送りが妥当、という点、クロスさんのおっしゃる通りです。

そこで、「施術後の生還パーティーを約束する」という方向に
軌道修正したいと思います。
貴人さんと部長さんには参加表明いただいてるのに申し訳ありません。
上記の方向でいかがでしょうか?

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 17) 2022-04-15 12:37:21
出発が迫ってきましたので、ここで皆さんの希望をまとめてみようと思います。

【行先】
1.幼少期(勇者歴前5年ごろ) タスク
1.5 魔王打倒への旅 ルージュさん
2.学園創設前(勇者歴20年ごろ) フィリンさん
2.5 創設直前~創設時 ベイキさん
3.現体制への道すじ(勇者歴2011年ごろ) シキアさん、クロスさん
3.5 (例)みなさんの入学直前
4.みなさんの入学後(勇者歴2018年~) エリカ部長さん
4.5 (例)つい最近~今現在 貴人さん

【プロローグ劇場】※あくまでお遊びです
1.「オレたちに知らせずに始めなくたっていいだろう!」貴人さん
2.「私たちは、もう学園長に会えないかもしれない。それなのに……これじゃお別れも言えない!」
3.「これきり今生の別れになったとしたら、どうしてくれるんですか」
4.「まぁまぁ」タスク(笑)

【その他】
・みんなでメメたんのために祈ろう! 貴人さん、タスク(壁新聞)
・生還パーティーの約束 タスク (参加表明 貴人さん、エリカ部長さん)

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 18) 2022-04-15 12:48:18
今回の方向性について、僕の思うところを書きます。

メメたんの心の障壁の正体は、「力ある自分が、すべてを背負わなきゃ」という思いに集約されるのでは、と考えます。

そこで、僕は「力はなくとも、他のことで支えたい」「あなたは一人じゃない」ということを繰り返し繰り返し伝えるプランを書いてみました。

また、このことを周知してみんなでメメたんのために祈ろう、という貴人さんのアクションにも繋がると思います。

あくまで私見ですが、参考になれば幸いです。

《スイーツ部》 ルージュ・アズナブール (No 19) 2022-04-15 19:52:33
ギリギリですが、パーティーと聞いて!
乗っかるつもりですが、文字数的に細かいこと書くのは無理っぽでしたわ!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 20) 2022-04-15 23:16:20
すみません、パーティは、メメタンの手術が成功してから、ということで、
今回はその約束をする、ということにとどめることといたします。

例えば、実施に向けて料理の準備をする、またはそのような意思を示す、
セリフを言う、などなら大歓迎です!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 21) 2022-04-15 23:21:15
今回もご一緒いただき、ありがとうございました!
我らがメメタンの心の旅路に、皆さんのプランがどのようにかかわっていくか、
とっても楽しみです!