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学園生の日常 その3


ストーリー Story

 今日も今日とて、学園では学生たちの日常が続いている。

「いよっしゃー! セントリアに潜り込めたー!」
「マジか。おめでとう」
 友人を祝いながら学園生は言った。
「それで、どんな伝手で入ったんだ?」
「親戚のおじさんが実験材料の納入業者してたから、その手伝いしつつ地道に研究員の人達に売り込みかけてたら採用された」
「執念だねぇ。でもこれで、異世界関連の実験できるんじゃねぇか?」
「そうなると良いけど、まだ先は長ぇな。それで、そっちはどうよ」
「俺か……あ~、色々とあるなぁ」
「んだよ、歯切れ悪いな」
「学園の中とはいえ、詳しく話せんのよ。ほら、例のアレ」
「それって、例の同盟のヤツか?」
「まぁ、そんなとこ。色々と水面下で動いてるから、俺も援護に入ってんのよ」
「は~、大変だな」
「他人事みたいに言ってる場合じゃないぞ。こっちの活動が巧くいかなきゃ、セントリアの異世界研究に待ったがかかるかもしれんし」
「なんでだよ!」
「そんだけヤベーってこったよ」
「いやそれダメだろ。せっかく潜り込めたっていうのに……頼むからどうにかしてくれ」
「へいへい、せいぜい頑張るよ」
「いやもっとやる気だせ! あーもー、そんなことなら俺も何か手伝わせろ! これまでの苦労を水の泡にさせてたまるか!」
「いいね。人手は多い方が良いしな。じゃ、先生の所に行こうぜ」

 などという話が、学園では見られます。
 他にも学園生ごとに、それぞれの目的に沿った日常を過ごしています。
 中には、邪悪な何かと戦う者もいるでしょう。
 あるいは、力なき人々に手を差し伸べるため奮闘する者もいる筈です。
 ひょっとすると、過去の因縁にまつわる何かの決着をつけるため動いている人もいるでしょう。
 そうした重苦しいことだけでなく、明るい日常を送る者もいるのです。
 日常と一口に言っても、人によって千差万別。
 その日常を守るために、学園は力を貸してくれるでしょう。
 
 そんな中で、アナタ達は、どう未来を進みますか?
 自由に、好きなように、アナタ達の物語を進めてみてください。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 6日 出発日 2022-09-22

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2022-10-02

登場人物 5/8 Characters
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《新入生》神鵺舟・乕徹
 ドラゴニア Lv10 / 芸能・芸術 Rank 1
 文字通りの意味で流れ着いてやってきた、異国の侠客。  用心棒や刺客、はたまた小間使いや芸子としてあらゆる手段で食い扶持を稼いできた苦労人。切った張ったの世界に居座り続けていた為か、思考が少々短絡的。  それだけに本来はそれなりの実力を持っていたが、エイーア大陸の魔物や勇者の戦技は祖国とは勝手が違うため、経験や知識から学び直し、自らの流れに取り入れている最中である。  元の世界では、『戮妓』と呼ばれる剣闘士のようなものをしていた。屈強な戦士や魔物を舞の如き動きで殺め、強さと美しさを見世物にする、絶望の時代ならではの卑賎な稼業である。だが、滅びを求めている魔族や権力者には強く支持されており、人気のある戮妓にはパトロンが付くこともあったという。  人気はあったものの、それ以上に悍ましき本性が勝っていたからか、彼女には誰も寄り付かなかったため、生活には結構苦労していたらしい。  また、過去の果し合いにより、左目の下に裂傷を負い、更に角をねじり折られた後遺症で枯れ木の枝のような醜い角が生えるようになってしまった。が、本人は名誉の負傷としている。  尚、今の名前はかつて愛用していた脇差から借りた偽名である。  話に聞いたエイーア大陸は、魔王の居城があるとされる場所の筈だった。人などが到底住める土地ではなかったとずっと信じていた。  ようやく大陸や学園での生活に慣れてきたものの、今度は平和ボケで腕が鈍りそうになることを恐れている。  また、同性でも自分より背の高い人が多く(というより元の世界の国ではこのくらいが平均だった)、少しだけ気後れしている。  油断すると稀に訛りが強く出てしまうらしい。非常に荒っぽくまるで喧嘩腰のように聞こえるため、極力出さないようにしている。(広島弁や播州弁に似ています。難しいと思いますので、用意された台詞以外はあまりリプレイに反映しないで大丈夫です) 『何だか、妙なとこに来たみたいじゃねえ』 『消えた後に地獄でも待っとるとしたら、そんなのでも救いになり得るのかのぅ?』 『そりゃ誰もが全て見えてりゃ苦労せんわい。目を逸らせるなら、都合のいいものしか見たくないじゃろ』 『えぐい化生共がぎょうさんと。あー邪魔くさいのぅ。わっち、せっせと帰にたい』 出身地:極東の島国 身長:五尺 体重:十貫(よりは少し重いらしい) 実年齢:数え年で二十二 好きなもの:粋な音楽、刃物 嫌いなもの:説教や小言 特技:剣舞、推察 読み:カヤフネ・コテツ
《新入生》レネンヴィオラ・ウェルス
 カルマ Lv10 / 賢者・導師 Rank 1
同世界出身の仲間の求めに応じて、異世界の協力者、メフィストの助力で転移した。表向きはセントリアからの留学生となっている。 仲間二人が”能力”的に近しい、ドラゴニアに変じたのに対し、”容姿”的に近しくなるカルマに変じた。 髪は薄紫。前髪は軽くウェーブのかかった、真ん中分け。後ろ髪はパイナップルみたいな、編み込みシニヨン。 わっかのような角が生え、四肢は白磁のような外殻に覆われている。 豊満でふくよか。高貴な色香を漂わせている。 いつものんびりマイペース。めったなことでは物おじしない。だれでも、ちゃん付けで呼び、お姉さんとして接し、間延びした口調で話す。 無自覚に色香を振りまく困った人。いわゆる”いやらしさ”がなく同性でも惑わすため、なお質が悪い とにかくベタベタよく触る。スキンシップ過剰。「ふれあっていれば、お互いの気持ちが伝わり、解りあえる」と、いう信条に基づく行為であり、悪意がないので一層、質が悪い ”力なき人々の力になること” ”悪には屈しないこと” ”あきらめないこと” ”仲間を信じること” ”約束は絶対に守ること” 五つの誓いを、一応、心の片隅に置いて、まったりと過ごしている
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv17 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。

解説 Explan

●概要

全校集会後の、ゆうがく世界での、アフターストーリーです。

何をしても自由です。

魔王後の世界を、のんびりと満喫するも良し。
自身のまつわる因縁に関わるも良し。
この世界だけでなく、他の世界と関わっても良し。

好きに動いてみて下さい。

●舞台

学園でも、他の地域でも、または異世界でも可能です。

公式に出てきた異世界だけでなく、PCの自由設定に出て来る異世界と関連づけてもオッケーです。

また、ゆうがく世界でも、PCの故郷とか、自由に出せます。

これまでの結果を破綻させない範囲であれば、自由に出せます。

●NPC

PCに関連するNPCでも、自由に出せます。

自由にどうぞ。

●内容

自由です。

PCの設定に関する話を進めてみるのも良いですし、これまでのエピソードから話を進めても構いません。

●その他

今回の自由度の高いアフターストーリーエピソードは、連作として定期的に出して行く予定です。

なので、複数回に分けて進めるとかも出来ます。

方向性としては、ノベル形式のエピソード版、みたいな感じです。

個別にPCの話を進めるでも良いですし、複数のPCでひとつの話を進めるような内容でも構いません。

これらを進めていく中で、ネタ的に拾って、個別エピソードとして出す可能性があります。

その辺も自由度の高い物になっています。

以上です。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、フリーシナリオです。

今まで他のエピソードで進めたお話の続きでも良いですし、全く関係ない個別の話でも大丈夫です。

基本的には、連作のノベルにご参加いただくような内容になっています。

自由度が高いですので、それぞれ個別にPCの物語を進めていただいても構いません。

PC達の物語に区切りをつけるような進め方でも良いですし、他にも、何か思いついたことがあればプランにお書きください。

それに沿って進行し、描写されます。

今後もちょこちょこ出して行く予定ですので、今回一回で終わりにしても良いですし、続けて話を進めてみたりも可能です。

書いていただいたプランによっては、関連エピソードが出て来る可能性もあります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。


個人成績表 Report
クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:126 = 105全体 + 21個別
獲得報酬:4800 = 4000全体 + 800個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
コルネ先生を誘い、エルメラルダ周辺から忘れられた霧の遺跡までを歩く

ピクニックみたいなものとして楽しもう
手つかずの自然も豊富だろう。気分転換にもいいはずだ
遺跡の付近は霧も濃いだろうからしっかりエスコート

それに、遺跡群の境界内に入るにはやはり学園教師であるコルネ先生と一緒のほうがよさそうだ
魔王と決着をつけた今なら、少数で足を踏み入れたいという願いもそう邪険にはされないだろう
……あとは、一人だと遺跡入る気になれないのも、少し


遺跡についたら、コルネとよく見て回ろう
知っている景色は、もう、どこにもないけれど

……ああ、失うことは必ずしも悪いとは限らない
新しい、かけがえのない縁を得ることができたのだから

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:126 = 105全体 + 21個別
獲得報酬:4800 = 4000全体 + 800個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
コトノハ様とお茶会を
と言ってもお茶菓子がたくさんあるだけの、簡素なもの

オズマなら黙らせてるよ、この間俺の恩人殴ったし
ねぇねぇ、コトノハ様はドローレスって人知ってる?
境界線ブレてるおかげでたまに過去覗けるんだけどさ
彼女に関してだけは、遮断してるみたいで

…ふぅん、なるほどね
だからって簡単に譲る気ないけど
大体俺の体使うなっての、ねー

(出身地の話になると途端に黙り込む)
『あぁ、あんまり知らない方がいいだろ』

神鵺舟・乕徹 個人成績:

獲得経験:126 = 105全体 + 21個別
獲得報酬:4800 = 4000全体 + 800個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
わっちのいた世界に行く。魔王が栄えた世界じゃ。
この世の魔王の脅威が去ったのなら、多少は気楽に行けよう。今更下げる面などないがな。
念のため研究員共に説明し、既定の時刻までこの世界との接続を断ってもらう。もし時刻までに帰れなかったらそのまま未帰還で良い。
我が姉君(神鵺舟・燐禰)には会いたいが、叛乱を率いたのじゃ。短い時間で会えるとは思えん。
噂だけでも聞いとくか。なるべく事を荒立てんでな。
もし、ややこしい事態になってたら、ひとまず撤退する。
じゃが、あの世界の誰かは基より、メフィストなるけったいな異人も頼りとうない。所詮わっちの都合よ。
まあ、碌でもない世界であることに変わりなかったとでも騙ってやるか。

レネンヴィオラ・ウェルス 個人成績:

獲得経験:126 = 105全体 + 21個別
獲得報酬:4800 = 4000全体 + 800個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
セレスティンローザと異世界間通信をしながら。自分たちの世界に避難していたものたちの、残留と帰還の手続きをしていく。対象者全員に対し、現在のこちら側の世界情勢の報告や、今後の対応について説明をし、最終的な意思の確認をする。また、原生生物や、魔物については、一部、残すこととする。理由は、彼らが住処とした森が、魔王軍との戦闘で、いくらか焼失してしまったから


報告

魔王軍により町や集落に被害が出ている。学園生中心に復興が急ピッチで行われているが、すぐに以前の生活に。とは行かないということ

七曜の種族と魔族の軋轢は、氷解しつつあること。また、守護者やあらたなる大精霊が魔族を助けてくれるだろう。ということ

今後も行き来は可能。たたし、今回は自分の特権をもって、即決するが、次は、審査や調査等が必要となるし、不受理となる場合もあること



最終意志決定期限、及び、帰還を一週間後とし、自分を含む、同世界人の帰還も執り行う 

アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:126 = 105全体 + 21個別
獲得報酬:4800 = 4000全体 + 800個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
ココをシメールと触れ合わせたい。
シメールも長命ならココと長く付き合える友人になってもらえるかもしれない。
それがシメールの成長に良い影響もあるかもしれないと思って。
ココには「前にメフィストさんが会わせてくれた子と遊ぼうと思うんだ。でも、もしも仲良く出来そうになかったら、無理しないで言ってね」と伝える。
スペル湖畔の公園で、周囲に人がいない時にメフィストさんを呼ぶ。
上述の理由を彼に伝えて、シメールを呼んでもらえるようお願いする。
召喚されたら、「こんにちわ」と挨拶して刺激しないようゆっくりと近づく。
まずココにシメールと触れ合ってもらい、シメールが慣れてきたら用意したボールを転がしたり投げて遊ぶ。

リザルト Result

 皆は、それぞれの日常を過ごしていた。

●故郷へ2人で
 霧の遺跡を目指し、【クロス・アガツマ】は【コルネ・ワルフルド】と、2人きりで向っていた。

「好い天気だね!」
 明るい声で、コルネは声を掛けてくる。
「雨でも降ったらどうしようって思ってたけど、青空一杯で気持ち好いね!」
 その声は弾んでいる。
 視線を尻尾に向ければ、機嫌好さ気に、ゆらゆらと揺れていた。
 そんなコルネに、クロスは言った。
「すまないね。わざわざついて来て貰って」
 今から2人が向かうのは、霧の遺跡。
 学園生が1人で向うには、学園としても許可が出し辛い。
 なので学園教師であるコルネに同行を頼み、一緒に向かっているのだ。
「気にしないで」 
 明るい声で、コルネは返す。
「霧の遺跡、故郷なんでしょ?」
「ああ」
 どこか懐かしむような声で応えるクロスに、コルネは変わらぬ明るい声で言った。
「魔王の脅威もなくなったんだし、良い機会だと思うよ。故郷に、報告に行くんでしょ?」
 クロスがリバイバルとして生きてきた理由を、コルネは理解している。
 リバイバルを現世に押し留める楔ともいえる未練、それはクロスにとって、魔王の存在の除去。
 自分自身の存在を消滅させてでも、魔王の存在の除去を望んでいたクロスだが、それは本来望んでいた方法では叶わず、けれど魔王の脅威は遠のいた。
 それは未来永劫保証された物ではないけれど、人々の知恵と未来を願う心があれば、きっと続いていくだろう。
 だから本来ならクロスは、すでに消滅していてもおかしくない。
 なのに『生きている』のは、本来の形で未練が解消されなかったことと――
(君がいてくれるからだろうね。コルネ)

「なら、これからはアタシのために生きてよ!」

 あの時の言葉が、クロスを現世に押し留めてくれている。
 クロスは、そう信じることにしていた。
 だからこそ、コルネと一緒に霧の遺跡に向かうというのは、単なる学園生と教師という間柄以上に意味がある。
(共に生きていく人が出来たと、報告したいからな)
 故郷には誰も残っていないけれど、それども伝えたいと思っていた。
(感傷、かな……)
 つい、物憂げな気持ちになる。すると――
「故郷に帰れるの、嬉しい?」
 どこか気遣うような声で、コルネが訊いてきた。
(顔に、出ていたかな……?)
 コルネの声の響きに、少しばかり自嘲するように思いながらも、クロスは応える。
「嬉しい、というよりは……区切りをつけられる、という気持ちの方が大きいかな」
「そうなの?」
「ああ。あの場所は、私にとって過去の証しだ。今を、何よりもこれからの未来を……コルネ、君と生きていくためには、向き合う必要があると思っているんだ」
「ぁ……」
 クロスに見詰めながら告げられ、コルネは頬を染める。
 そんなコルネが愛おしくて、クロスは自然と手を重ねていた。
「……ん」
 思わず、コルネは声が零れる。
 生身とは違う、リバイバルの不確かで、けれど確かにそこにいてくれるのだという温かさを感じ、コルネは重ねた手を繋ぐ。
 2人きりで歩きながら、クロスとコルネは、お互いを感じていた。だからこそ――
「アタシが必要なことがあったら、いつでも言って。今日だけじゃなくて、一緒にいるから」
 求めるように、コルネは言った。
 それに応えるように、クロスは返す。
「ありがとう。私も、コルネのために生きるよ。だから何かあれば、いつでも言ってくれ」
「ん……ありがとう、でも……」
「心配しなくても良い。コルネのために何か出来るなら、俺は嬉しいんだ」
「……」
 応える言葉が出て来ず、繋いだ手に力を入れるコルネに、クロスは続けて言った。
「俺が何か出来ることがあれば、支えるよ」
「ありがとう……でも、大変だよ? アタシ、学園長になっちゃったし……」
 それは力を失ったメメルの代わりに、コルネが学園長になることが選挙で決まったことだ。
「色々と、しなきゃいけないことも増えちゃいそうだし……」
「それは嬉しいね。コルネのために、してあげられることが増える」
「……っ、ばか」
 きゅっと繋いだ手に力を入れる。
 それに応えるように、指と指を絡めるようにして手を繋ぎなおすクロスだった。

 手を繋いだまま、言葉を交わし歩き続ける。
 そして、霧の遺跡に辿り着いた。

「……」
 荒れ果てた霧の遺跡を巡りながら、クロスは無言だった。
 明確な記憶はなく、けれど想い出として残る故郷とは掛け離れた場所に、過ぎ去った年月を否応なしに感じる。
 懐かしむのとは違う、遠いどこかを見詰めるような表情を見せるクロスに、コルネは声を掛けられない。
(きっと……今は、過去と再会してるんだ)
 失ったモノとの対話を言葉なく重ねているようなクロスに、コルネは邪魔をしないように無言のままでいた。
 けれど支えるように、そしてクロスがどこかに行ってしまわないように、繋いだ手をしっかりと握っている。
 だからこそ、クロスは自身を失わず、過去と対話することが出来た。
「終わったよ」
 過去の全てに応えるように、廃墟となった場所を前にして、クロスは囁くように言葉を送る。
 そこがどこかは、記憶になく。
 けれど『誰か』と語らい合った場所だと、魂の底に沈んだ想い出が囁く。
(あぁ……本当に、もう『無い』のだな) 
 廃墟を巡り、実感が刻まれる。
 遠く過ぎ去った過去は残滓すら朽ちていき、クロスの起源たるモノは消え失せている。
(元より私は……私(クロス)でしかなかったということか)
 起源たる『彼』は、リバイバルとしてクロス・アガツマが生まれた時にはどこにもなく、残響のような未練に従う自分(クロス)がいただけ。
 そのまま独りでいたなら、未練を満たすことしかできない、亡霊の如くあり続けたかもしれない。
 けれど、違った。
 学園と、そこで出会った多くの人々との縁が。
 課題をこなし、関わってきた様々な出来事が。
 クロス・アガツマという『人間』を生かし、育てていったのだ。そして何よりも――
「コルネ」
 今を生きる『生者』として、愛する者に想いを告げる。
「君がいてくれて、好かった」
 視線を交わらせ、クロスとしての真実を口にする。
「知っている景色は、もう、どこにもないけれど……俺はそれで、良いと思う」
「……本当に?」
 心配するように見詰めるコルネに、微笑みを浮かべ応える。
「……ああ、失うことは必ずしも悪いとは限らない。新しい、かけがえのない縁を得ることができたのだから」
 向かい合い、改めて両手を重ねる。
 指を絡め、手を繋ぎ、告白した。
「愛してる、コルネ。君と共に、生きる限り傍にいさせてほしい。結婚してくれ、コルネ」
「……うん」
 泣き笑いのような表情で、溢れる心を現すように涙を滲ませながら、コルネはクロスを受け入れる。そして――
「愛してる」
「うん、アタシも……大好き、クロスくん」
 両手を繋ぎながら、誓いの口づけを交わすのだった。

●お茶会
「わぁ、嬉しいわぁ」
 にこにこ笑顔で、覇王六種の一角、【コトノハ】は【シキア・エラルド】とのお茶会を楽しんでいた。
「誘ってくれるなんて、おばちゃん感激やわぁ」
 ころころと笑顔を浮かべるコトノハに、シキアは苦笑するように応える。
「どうせなら、もっと盛大にした方が良かったかもしれないけど、ごめんね」
「気にせんでえぇんよ~。イケメンと一緒にお茶出来るだけで十分やもん~。それにお茶菓子も一杯やし~」
 コトノハの言う通り、テーブルには多種多様なお菓子が並べられている。
 それも味だけでなく見た目も可愛らしい物も多く、舌だけでなく目でも楽しませそうというもてなしが感じられた。
「喜んで貰えたなら良かった。コトノハ様は東方の出身って聞いたから、向こうのお菓子も用意したよ」
 そう言うと、菊の花をあしらった茶菓子が添えられた小皿を勧める。
「味も美味しいから、食べてみて」
「それじゃ、ご相伴させて貰うわぁ」
 一口食べて、その美味しさにコトノハは笑みを広げる。
「美味しいわぁ。シキアも食べぇよ。イケメンが食べとるとこ見て、お茶させて貰うからねぇ」
 いつもと変わらず全くぶれないコトノハ。
 苦笑しながらシキアもお茶菓子を楽しむ。
「楽しいわ~」
 そう言うとコトノハは、笑顔を浮かべたまま続ける。
「2人でもこれだけ楽しいんやから、人数増えたらもっと楽しいかもしれへんね。今日のお茶会は、うちと2人きりなん?」
 周囲には、人気が無い。
 そういう場所を選んでお茶会に誘ったシキアは、お茶で軽く喉を潤してから応えた。
「【オズマ】なら黙らせてるよ、この間俺の恩人殴ったし」
「そうなん? あいかわらず、やんちゃやねぇ」
 昔を懐かしむように言うコトノハを、シキアは無言で見つめた。
 その瞳は気のせいか、揺らぐように移ろいでいる。
 しかし元の色合いに戻ると、シキアはコトノハに尋ねた。
「ねぇねぇ、コトノハ様は【ドローレス】って人知ってる?」
「懐かしい名前やねぇ。どこで聞いたん?」
「聞いてないよ。『視えた』だけだよ」
 また瞳の色を揺らがせながら、シキアは言った。
「境界線ブレてるおかげで、たまに過去覗けるんだけどさ、彼女に関してだけは、遮断してるみたいで」
「そうなん? それでシキア、なんであの子のこと知りたいん?」
「なんでかな? 説明できないけど、どんな子だったか、話を聞いてみたいなって思って」
「それ、オズマの意識が混ざっとるからやって、思っとらへんよね?」
 コトノハの言葉に、シキアの瞳の揺らぎは一際強くなった。けれど――
「さぁ、どうだろ? それは無いと思うけど、その時はその時で、どうにかするよ」
 一歩間違えれば自分が消えかねないことだというのに、シキアの言葉は軽い。
 自分のことをどうでもいいと思っているのではなく、そういうこともあるさと、達観しているような気配があった。
「シキア、一回死んでもうとるから、その時の影響でてへん?」
「多分、そうだろうね。なんだが、前よりも色々と軽い気がするんだ」
 それは気持ちどころか、魂の領域まで届いてそうな話だったが、それでもシキアは平然としている。
「まぁ、それはそれで気をつけるよ。それより、ドローレスって人のこと教えて、コトノハ様」
「しゃあない子やねぇ」
 コトノハは苦笑すると、懐かしむように話し出す。
「あの子は、ええ子やったんよぉ。うちとも仲よぅしてくれて」
「そうなの?」
「そうなんよぉ。たまぁにやけど、今みたいにお茶会して……楽しかったわぁ」
 一口お茶を飲んだあと、コトノハは続けた。
「ほんまにええ子で……でもしっかりしとる子やったんよぉ。オズマがお兄ちゃんやったけど、うちから見たら、ドローレスの方がお姉ちゃんって感じやったわ」
「オズマの妹だったの?」
「腹違いやったけどねぇ」
 そこまで言うと、当時を思い出しているのか、くすりと小さく笑みを浮かべたあと言った。
「活発な子ぉで……オズマには特に遠慮のない子やったわ」
「……ふぅん、なるほどね」
 コトノハの話す様子で、おぼろげだがドローレスという人物の人となりが、シキアには感じられた。
「好い人だったんだね……だからって簡単に譲る気ないけど」
「それはそうやね。シキアみたいなイケメンおらんよぉなってもうたら世界の損失やし、シキアの身体は、シキアのもんやし」
「だよね。大体俺の体使うなっての、ねー」
 コトノハと話していると――
『お前、俺がお前の身体を使ってあいつを蘇らせようとしてるとか思ってないだろうな』
 オズマが心の中で悪態をつくように言った。
(違うってのか?)
 シキアは黙らせても良かったが、気になったので応えを返す。
(違うなら、どうする気なの?)
『訊かれたら答えると思うな。そもそもジェンダート生まれの女子は――』
 言葉の途中で、余計なことを言ったとでもいうように押し黙る。
(急に黙るなよ。ジェンダートが、どうしたんだ?)
 再び問い掛けても黙ったままのオズマに、シキアは質問を変える。
(何か色々と俺が知らないことがあるみたいだけど、そういうのは、そもそもいつぐらいから始まってるの?)
『……どういうことだ?』
(今みたいな状況になってる起源を知りたいって思っただけだよ。原因を知らなきゃ、対処できないし。それともまさか、突然理由もなく何かが起ったってわけ?)
『……』
 変わらず無言。
 これ以上聞いても無駄だと思ったシキアは、コトノハに尋ねた。
「コトノハ様。オズマの故郷って、どこなのかな?」
「唐突やねぇ。なんでそんなこと知りたいん?」
「そもそもの原因知りたいと思ったんだけど、オズマ応えなくなったから。コトノハ様なら、知ってるかなって」
「……そやねぇ、どないしようか……」
 言葉を濁すコトノハに、シキアは尋ねた。
「何かあるの? 俺が知らない方が良いことが、あるとか?」
『あぁ、あんまり知らない方がいいだろ』
 コトノハではなく、オズマが応えた。
『知らない方がいい、お前達よりよっぽど悪辣なのがいる』
(どういうこと? そんなのいるなら、知っておいた方が良いだろ)
『お互い知らないから、今のところ何もないだけだ』
(どういうことだよ)
 聞き返すシキアに、オズマは明確には答えず、謎かけのように言うだけだった。
『向こうは出られない、お前達も見つけられない』
(なに? どういうこと? わけが分からない。それでいいのかよ)
『それでいいんだよ』
 キッパリと言い切り、オズマは意識を沈め気配を遠ざけた。
(はぐらかされた……それとも逃げられた?)
 釈然としないものを感じながら、コトノハとお茶会を続けるシキアだった。

●故郷の変革
 その日、【神鵺舟・乕徹】は、研究都市であるセントレアに訪れていた。
 理由は、ただひとつ。
 故郷への帰還をするためだ。

「因果線の接続は完了してます。いつでも戻れますよ」
 異世界転移門を管理している研究所の責任者、【ハイド・ミラージュ】は準備が出来たことを告げる。
「要望通り、向こうの世界に帰還後、規定時間が過ぎた時間軸との接点でなければ、こちらの世界との再接続が出来ないようにしています」
「それは、わっちが頼んだ通り、ということでよいのか?」
 乕徹は、元の世界に戻っている間、こちらの世界と繋がらないように頼んでいた。
 理由は、乕徹のいた世界は魔王が栄えた世界であり、その悪影響が出ることを危惧したからだ。
「わっちのせいで、こちらの世界に被害を出すわけにはいかぬ。もし時刻までに帰れなかったら、そのまま未帰還で良い」
 これにハイドは難しい顔をして応えた。
「可能は、可能です」
 指輪をひとつ渡しながら言った。
「その指輪に、こちらの世界への帰還用の術式が刻まれています。戻りたい時は、それに魔力を流して下さい。貴方の魔力でないと発動しないようになっているので、他の人には使えません」
「つまり、わっちが使おうと思わない限りは、こちらとあちらの世界が再び繋がることは無いということか?」
「少なくとも、相当難しくなります。いったん世界間の接続が断たれると、こちらから向こうの世界と再度繋げるのは困難になりますから。それで、良いんですか?」
 心配するように聞き返すハイドに、乕徹は応える。
「それで良い。向こうの世界に戻ってみたいは、所詮わっちの都合よ。こちらの世界に面倒を掛ける気はない」
 さばさばとした口調の乕徹に、変わらず心配するようにハイドは言った。
「なんだか、色々とそちらの世界も大変そうなんですが……どんな世界なんですか? こちらの世界と同じで、魔王がいるみたいですが」
「いるだけでなく、支配者であったよ。抗うために反乱を率いる者もいたが……」
 どこか懐かしげに語る乕徹に、気になったハイドは尋ねた。
「ひょっとして、反乱を率いてる人に知り合いでもいました?」
「我が姉君じゃ」
 乕徹は姉である、【神鵺舟・燐禰】を思い出しながら言った。
「わっちが向こうの世界に戻りたいのは、我が姉君に会いたいからじゃ。叛乱を率いたのじゃ。短い時間で会えるとは思えん。しばらく掛かるじゃろう」
 これにハイドは応える。
「それは大丈夫ですよ」
 世界間接続の理を説明する。
「世界は、それぞれの時間が流れてますから。向こうでどれだけ過ごそうと、こちらの世界だと最大でも数日程度過ぎた時間軸に再接続するようにしてます」
「……それはつまり、時間の流れが違うということか?」
「いえ、接続する時間軸をいつにするかが選べるということです。一度接続しちゃうと、それより過去には接続できないので注意が必要ですが」
 タイムトラベルのような真似は出来ないということらしい。
「とにかく、こちらに戻るのでしたら、今から数日後。そのタイミングを逃せば、いつ戻れるか分かりません。ひょっとすると、二度とこちらの世界には来られないかも」
「それで良い。まぁ今回は、噂だけでも聞きに行くつもりじゃ。なるべく事を荒立てんでな。もし、ややこしい事態になってたら、ひとまず撤退する」
「……そうだ、【メフィスト】さんに話聞いてみますよ。あの人なら何か手立てを知ってるかも――」
「要らぬ」
 キッパリと断る乕徹。
「向こうの世界の誰かは基より、メフィストなるけったいな異人も頼りとうない。所詮わっちの都合よ」
「ならこっちが頼るのはありですかー?」
 にょいっと現れるメフィストに、乕徹は胡乱な者を見るように目を細めながら言った。
「唐突に現れるな……それで、なに用じゃ?」
「異世界出身の人をー、いま勧誘してる所なんですよー」
 メフィストの話によると、異なる世界同士で連絡協力する連盟、『全界連盟(ワールドオーダー)』に加わらないか話をしているらしい。
「この先ー、何かの弾みで繋がることもあるかもしれませんしー、そういった時に余計な問題を回避することも考えてのものでーす」
「……そんな物に関わる余裕があるとは思えぬぞ、あちらの世界は」
「その時はその時でーす。とりあえず頭の片隅にでも置いておいて下さーい」
 言うだけ言って消えるメフィスト。
 一瞬、沈黙が過ぎ――
「ええと、それじゃ、元の世界に帰還しますか?」
「うむ、頼む」
 異世界転移門を通じ、乕徹は元の世界に帰還した。そこは――

(これが本当に、わっちが生まれた世界なのか?)
 人里に足を踏み入れた乕徹は、記憶の中とはあまりにも違う光景に唖然とした。
 いつ魔王による蹂躙が起るかもわからず、人心も荒廃し乱れていた頃の名残がまるで見えない。
(人の表情に、険が無い)
 誰も彼も晴れ晴れと穏やかで、怯えも卑屈さも見えなかった。
(さては違う世界に来た……わけもないようじゃな)
 乕徹が訪れているのは、以前にも来たことのある街だ。
 その頃とは見違えているが、街の作りなど、基本的な物はそのままだ。
(元にあった物を、見映え良く作り変えたように見えるな)
 それも見てくれだけ取り繕っているのではなく、人の生活に馴染んでいる風情がある。
(……これは、何かがあったと見るべきか……姉君に会う前に、探らねばならぬか)
 不自然にならぬよう気を付けながら、街を見て歩く。
 大人だけでなく子供も平気で外を歩き、不安を滲ませる者など誰もいない。
(あれだけ荒んでいたというのに、魔族を見んどころか何と穏やかな? もしや、姉君は国を取り戻したのか?)
 そうだとしか思えない。
 だとすれば姉に会う前に、確認しておく必要がある。
 そう思い街を歩いていたが、すぐに理由を知る事が出来た。
「魔王討伐祭?」
「ああ。神鵺舟の姫大将様の勝利記念を祝う祭りだよ」
 街を歩いて回り、やたらと賑やかで出店の類が多かったので、その内のひとつで串を買い理由を尋ねると、そんな答えが返ってきた。
「姉……神鵺舟君が、魔王を討ち取ったのか?」
 にわかには信じられない。
(最後に見た姉君は、単純な強さなら、恐らく現役だった頃の学園長より強かろう。されどそれだけで魔王には勝てまい)
 疑問に思った乕徹が、どうやって倒したのか聞くと――
「何だ姐さん、魔王討伐譚が聞きてぇのか。だったら少し先の広場に行ってみな。そこで芝居がされてるからな」
 言われて向かうと、そこでは魔王が討ち取られた時のことを芝居仕立てで広めていた。
 その芝居を見て、乕徹は驚く。
(いとも容易く魔王を討った?)
 それはまさしく怪力乱神の英雄譚。
 バッサバッサと魔王に連なる者を討ち、魔王すらも一撃の元に屠る様が演じられていた。
(どういうことじゃ? あちらでは弱体化させて尚、多くの血を流さざるを得なかった相手じゃぞ。信じられん)
 不審を抱く乕徹の前で、芝居を盛り上げる講談師が高らかに口上を述べる。
「これなる奇跡は、神鵺舟君の神殺しの力。智剣の権能を振るう、姫大将の神通力!」
 口上と共に拍手が起こる中、乕徹の不審は確かな物になる。
(抜かせ、怪力乱神を語るな)
 あまりの都合の良さに、気分が悪くなる。
(それほど簡単に済むことなら、あの頃の荒んだ世は無かったわ)
 代償も無く、容易く力を手に出来る筈も無し。だが――
(然し、そうでなければこの平穏を説明できぬな)
 誰もが無事に暮らせる平穏。
 だが一皮むけば何か得体のしれぬモノが潜んでいるような気がして、乕徹は怖気を感じながら決意する。
(一旦あちらに戻って考える必要がある。少なくとも姉君は非人の力を得て、人に非ざる者になったという事か)
 人気のない場所で、帰還の指輪に魔力を流しながら、静かに思う。
(問題はあれが敵になり得るか……)
 それは未だ、見えざる霧の先に隠れていた。

●帰還への道筋
 その日、【レネンヴィオラ・ウェルス】は、本来属する組織であるCGFへの定期連絡を行っていた。

「セティ~」
『大佐、先に言っておきますが、役職名以外では呼びませんからね』
 キリッとした表情と声で、【セレスティンローザ】は機先を制するように言う。
「え~、今日もダメなの~」
『ダメです。いつも言っていますが、階級の違いを明確にせねば指揮系統に乱れが生じ作戦遂行能力に悪影響が出る可能性があります』
「そうね~」
『……大佐?』
 いつもよりあっさりと引き下がるレネンヴィオラに、セレスティンローザは心配するような声で呼びかける。
 これにレネンヴィオラは、温和な笑みを浮かべ応えた。
「作戦も大詰めだなって思って~。少し感傷的になっちゃったの~」
『……大佐も、そちらの世界に思い入れが出来ましたか?』
「お姉さんはともかく~、2人は寂しがらないかなって思って~」
『……きっと、分かってくれます。それを問題なく進めるためにも、定期報告をお願いします』
「分かったわ~」
 レネンヴィオラは、こちらの世界で調査した情報を、空間投影型ディスプレイに映し出す。
「そちらに避難して貰った子達の~、住んでた所を確認したわ~。大半は復興が進んでるけど~、一部は難しそうね~」
『それは、現在行っている保護対象の、元世界への帰還が困難だと判断していいんでしょうか?』
「お姉さんは~、そう思ってるわ~。詳細は~、ちょっと待ってね~」
 レネンヴィオラは、魔方陣を発動させる。
『そちらの世界の技術を使えるようになっているのですね』
「こちらの世界の『人』に~、存在変換されてるからみたい~。この前~、メフィちゃんに教えて貰ったの~」
 話している内に、魔方陣から一匹の猫のように見える何かが召喚される。
「集めたデータを~、送ってちょうだい~」
「にゃあ」
 一声鳴くと、セレスティンローザに大量のデータが送られる。
『それは、前にメフィストが押し付けた物ですね』
 少し前、今回と同じようにレネンヴィオラがCGFへの定期連絡を行っていたのだが、その時にメフィストが現れて押しつけていったのだ。
 メフィストが言うには、戦艦に魂を宿らせた付喪神で、猫の姿も取れるが戦艦にも変化できるし、成長させれば元の戦艦よりも強力になるとのこと。
『データの通信規格からすると、CGFの戦艦と同じ物ですね……それ、本当に元は戦艦なんでしょうか?』
「戦艦に変身して貰って確認したから~、本物みたい~」
 こちらの世界に持ち込まれた時に初期化され弱体化しているが、段々と成長して元以上の強さになっているらしい。
『……相変わらず、ファンタジーな技術ですね。あの男、一体どういうつもりなのか……』
「全界連盟(ワールドオーダー)に参加しませんかって~、お誘い受けてるわ~」
 それは異世界間での連絡協力を行う組織らしい。
 などということを話している内に、必要な情報全てが送られ、改めて状況確認をする。
『復興状況は、良好が48%。中立が41%。残りの1割ほどが、帰還困難地域ですね』
「そうなるわ~」
 レネンヴィオラは、口頭で詳細を説明する。
「魔王軍に襲撃されて~、被害が出てる街や集落が~、事前予想よりも多かったわ~。学園の子達を中心にして~、すごい勢いで復興してるけど~、すぐに前と元通り~、とまでは進んでないわ~」
『そちらの技術水準ですと、それでも脅威的な復興速度ですが、やはり万全とまではいきませんか……それ以外の、種族間の対立などは、どうなのでしょうか?』
「そっちも大丈夫よ~。七曜の種族と魔族は~、仲良しさんになってきてるみたい~」
『軋轢は氷解しつつあるということですか?』
「そうみたい~。学園もだけど~、色々な所が~、仲良しになれるように頑張ってるわ~」
『なるほど……こちらのデータにある覇王六種という特殊個体も、守護者として動いているようですが……精霊王? という存在も守護者として対応しているようですね』
 そこまで言うと、データを読み込んでいたセレスティンローザは続けて尋ねる。
『精霊王という存在ですが、新たに発生するのですか?』
「そうみたい~。魔族の新しい守護者になって貰うだけじゃなくて~霊玉に囚われてる~魂を解放してあげるのも~目的みたいね~」
『なるほど……こちらが想定していたよりも、世界を安定させるための施策が成されているようですね』
「そうね~だから問題は~」
『そちらの世界で焼かれ消失した森などの、失われた生息圏で生存していた原生生物や魔物の取り扱いですね』
「そうなの~。下手にこちらの世界に帰還させても~よくないから~そちらの保護惑星に残って貰おうと思うの~」
『それは――可能ですね』
 セレスティンローザは本部とやり取りして応える。
『大佐の要望は付与されている権限範囲です。ですので要望に従って、こちらで手続きを――』
 説明している途中で、本部からの連絡を受けたセレスティンローザは、レネンヴィオラに状況を伝えた。
『大佐、依頼です。現在、避難者を保護している惑星に入植させて欲しいと要望が来ています。打診はダゴン星人ですが、繋げますか?』
「お願い~」
 レネンヴィオラが応じると、見た目は恐ろしいが、知的で温和な種族であるダゴン人の【ダゴン】参謀副長が映し出される。
『応じてくれ感謝する』
「あら~ダゴちゃんなのね~」
 旧知の間柄だったので話はスムーズに進む。
『――という理由で、環境が適合する惑星が他に無いのだ。そちらから得たデータから判断するに、遺伝子レベルで近しい種族であるので問題行動も起こさないはずだ』
 これにレネンヴィオラは、すまなそうに応えた。
「ダゴちゃん。ごめんねぇ~理屈としては理解できるけど~惑星まるっと譲渡するって~決めちゃったから~とりあえず保留で~」
『そうか……無理を言って、すまない。今後も協議をお願いできるだろうか?』
「分かったわ~また話し合いましょう~」
 ひとまず保留ということで、その場での話は終わった。
 色々とあったものの、話はまとまっていく。
「それじゃ~これからも行き来はできるのね~」
『はい。現時点では、大佐に付与されている権限内であれば、大佐の判断で即決が可能です。ただし本作戦終了後には、権限を本部に移譲。その後は、審査や調査等が必要となる見通しですし、場合によっては不受理となることもあると本部からは申し送りされています』
「分かったわ~。それじゃ~保護してる子達も含めて~関係者の希望を聞いて~そちらの世界に戻ることにするわ~」
『ゴールが見えてきましたね……それで、帰還はいつを想定されていますか?』
「一週間後にしようと思うの~。それだけあれば~気持ちの整理も出来ると思うし~」
『一週間、ですか』
 具体的な期日を聞いて、普段はクールなセレスティンローザにはめずらしく、顔をほころばす。
 そんな彼女を見て、レネンヴィオラはニマニマしながら言った。
「うれしそうだねぇ~セティちゃん?」
『当然です。ようやく、隊が戻り、任務を再開できますので』
「ふ~ん。でも~ホントに会いたい人は~一人だけだよねぇ~?」
『な、なにを仰るのですかっ!?』
 大赤面になるセレスティンローザに、レネンヴィオラは穏やか声で言った。
「もう少しで~また会えるわ~。楽しみに~待っててね~」
『……はい』
 表情を正そうとし、けれど喜びを隠しきれず滲ませながら、頷くセレスティンローザだった。

●ココとシメール
「アンリー♪」
 アニパークにやって来た【アンリ・ミラーヴ 】の足音に気付いた魔法犬【ココ】は、嬉しそうに尻尾を振りながら駆け寄った。
「どうしたのー? おさんぽ? おさんぽするの?」
 期待感いっぱいにアンリを見上げココは、おすわりしている。
 アンリは腰を下ろしてココの頭を撫でてあげると、ココは嬉しそうに尻尾を振りながらアンリの言葉を待っていた。すると――
「ココ。今日は、友達になってくれるかもしれない子に、会いに行こう」
「ともだち?」
 小首を傾げながらココは、つぶらな瞳でアンリを見詰める。
「ともだち、ともだち……いっしょにおさんぽするの!?」
「うん。それも良いかもしれないね」
 ココを落ち着かせるように撫でてあげたあと、アンリは説明してあげる。
「前に、ココと同じ子に、会ったことがあったよね。メフィストさんが、会わせてくれた子だよ。その子に、会いに行こうと思うんだ」
 それは魔王が創り出した最強の魔獣であり、ココと同じく世界の根源と繋がっている、今は生まれたばかりの子犬の姿をしている【シメール】のことだ。
「ボクと同じ子?」
 ココは思い出すように尻尾をゆらゆらさせると、急に興奮したように尻尾を勢い良く振りながらココは言った。
「おぼえてるー! ボクより、ちっちゃい子だよね。さいしょはビックリしてたけど、まけるもんかーってせのびしてたの」
「背伸び……」
 思い出すと、あの時シメールは後ろ足だけで立ち上がり、前足を振り上げて威嚇していたように思う。
 威嚇と言っても、シメールは生まれたばかりの子犬サイズなので、ココが鼻先をちょんと当てただけで崩れ、そのあとはココの尻尾にしがみついたりしていたので、ココがゆらゆら揺らしてあやしていたように思う。
「あのね、あの子ね、『ちょっとおおきいからってちょうしのるなよー、そんなしっぽなんか、しっぽなんか――しっぽー!』って言って、しっぽにしがみついてきたのー」
 どうやら最初は威嚇していたようだが、途中から尻尾に夢中になったらしい。
「……ココ、そういうことされて、嫌じゃなかった?」
「いやじゃないよ。あのね、いっしょにあそんで、楽しかった」
 思い出しているのか、ゆらゆらと尻尾を揺らしている。
「なら、仲良くできる? もしも仲良く出来そうになかったら、無理しないでいい――」
「なかよくするー!」
 元気一杯に、ココは応える。
「あのね、いっしょにあそんで、おさんぽして、なかよくする――あっ、そうか! だからともだちになりにいくんだ! わかったー! ともだちになるー!」
 今すぐにも駆け出しそうなほど、ココは尻尾を振っている。
(これなら、会わせても、大丈夫そうだな)
 安心したアンリは立ち上がり、ココに言った。
「それじゃ、友達になるために、会いに行こう」
「うん! いくー!」
 そしてアンリと一緒に、ココは歩き出す。
 楽しげに尻尾を振りながら一緒に歩くココに、アンリは嬉しい気持ちになる。
(これでココに友達が出来て、それがシメールにも良い影響を与えるなら、一番良いんだけれど)
 アンリが、ココをシメールと会わせる気になったのは、将来のことを考えてのことだ。
 恐らく長命なシメールならココと長く付き合える友人になってくれるだろうし、それがシメールの成長に良い影響があるかもしれないとも思っている。
 そんな期待を抱きながら、人気のないスペル湖畔の公園に辿り着く。
 人気が無いのは、シメールが普通の犬とは異なる能力を発揮する可能性があるので、それを目撃されないようにしているのだ。
 アンリはココと一緒に到着すると――
「メフィストさん?」
 呼んでみる。すると――
「なんですかー?」
 にょいっとメフィストが現れた。
「あー、おひげのおじいちゃん。こんにちはー!」
「はーい、こんにちはでーす。それでー、今日は何の用ですかー?」
 シメールとココを会わせたいとアンリが言うと――
「わかりましたー。では早速ー」
 魔方陣を展開しシメールを召喚。
「ぴっ!?」 
 召喚されたシメールは、驚いたように一瞬硬直すると、両足をすっと伸ばし尻尾をぴんっとさせながら、そのままの姿勢で横にぴょんぴょん飛ぶ。
「ぴー!」
 なめんなよこのやろー! とでもいう雰囲気を出していたが、いかんせん生まれたばかりの子犬サイズなので、笑えるぐらいにかわいいだけである。
「犬というよりネコっぽいですねー、この子ー」
「ぴー!」
 威嚇するように鳴き声を上げるシメール。すると――
「こんにちはー」
 とことことココがシメールに近付き、ちょんっと挨拶するように鼻先を当てる。
「ぴ、ぴぃ?」
 挨拶され、混乱したように固まっていたが――
「ぴぃっ」
 シメールは先ほどと同じく、両足をぴんっとさせたまま横にぴょんぴょん飛んだあと――
「ぴぃ」
 どんなもんだ、とでも言うように、お澄ましするように鼻を空に向け――
「ぴぃぃぃ」
 勢いのあまり転げた。
 そんなシメールに、ココは近付き、じゃれるように鼻先を当てる。
 するとシメールは、ココの鼻先にしがみ付くような動きを見せた。
(ココ、大丈夫かな?)
 爪で引っかかれたりしないか心配したが、そういった気配はない。
 途中から、シメールは起き上がり、ココの尻尾に狙いをつけると飛び掛かるが、ひょいっと避けられる。
「ぴぃっ」
「つかまらないよー」
 戯れ合うように遊ぶ、ココとシメール。
 そこにアンリも加わる。
「こんにちは」
 警戒されないようゆっくり近づき、腰を落として可能な限り視線を合わせる。
「ぴぃぃ……」
 身構えるシメールに――
「だいじょうぶ。ともだちになりに来たの」
 ココが安心するように声を掛けた。
 それでも最初は警戒していたシメールだったが――
「アンリ、ボール、ボールなげて!」
 ボール投げで遊んでいると、いつのまにやら積極的に加わるシメール。
「ぴぃっ!」
 ボールに勢い良く飛び付き、そのままボールの下敷きになったのをココが助けてあげたり――
「おいしいよ。いっしょにたべよう」
「ぴっ」
 アンリが用意してくれた犬用のクッキーを、ココはシメールと一緒に食べた。
「おいしいね!」
「ぴっ」
 自分のクッキーも分けてあげるココ。それは仲の好い兄弟のようだった。
 それを見ていたアンリは、メフィストに頼む。
「また、ココと一緒に遊んであげてもいいかな?」
「むしろお願いしますー」
 メフィストは言った。
「あの子は恐らくー、魔王と同じでこの世界がある限り本当の意味で殺せないでしょうからー、貴方とココちゃんで一緒に育てて貰った方が良いと思いまーす」
「魔王と同じ……それって、前と同じになるってことかな?」
「それはこれからー、あの子がどう育つかによりまーす。魔王もそうですがー、別に生まれつきの邪悪じゃありませんからー。育て方次第ですよー」
「そうなんだ……分かった、ココと一緒に、遊んであげながら育ててあげようと思う」
 メフィストは同意し、いつでもシメールを呼び出せる魔法を、アンリが使えるようにしてくれた。そして――
「また、一緒に遊ぼう」
「あそぼうねー」
「ぴぃ」
 アンリとココの呼び掛けに、まんざらでもない様に鳴いて応えるシメールだった。



課題評価
課題経験:105
課題報酬:4000
学園生の日常 その3
執筆:春夏秋冬 GM


《学園生の日常 その3》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!