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コルネ・ワルフルドの結婚式


ストーリー Story

 次期学園長になることが決まった【コルネ・ワルフルド】の日常は、大きく変わっていた。
 仕事の質や量が変わったのはもちろん、色々と気遣いしないといけないことも増えている。
 そして予想もしなかった厄介事も身に降りかかろうとしてた――

◆  ◆  ◆

「貴女との婚姻を望みます」
 美丈夫な相手からの求婚に、コルネは渇いた笑みを浮かべる。
(これで何人目だっけ……?)
 正直、げんなりしている。
 バッサリと断れればいいのだが、相手は大国の大貴族。
 学園の外交を考えて相手に恥をかかせるわけにはいかない。
(こんなことになるとは思わなかったよ……) 
 次期学園長になることで、仕事や責任が圧し掛かるのは覚悟していた。
 けれどまさか、ハニートラップの如く、次から次に求婚されるのは予想外すぎる。
(学園と強い関係を作りたいってことなんだろうけど……)
 王侯貴族なら普通の習わしなのかもしれないがコルネとしては、まっぴらごめんである。
「折角の申し出ですが、アタシには御付き合いしている方がいます」
 気遣いつつキッパリ断る。しかし――
「気にしません」
 笑顔で相手は応える。
「相手の方がどなたかは存じませんが、私との婚姻をしていただければ、学園をより一層発展させてみせます」
 プロポーズというよりセールスするようにぐいぐい迫ってくる。
「別れろとは言いません。ただ、婚姻は私と結んでいただきたい。先に私との子供は必要ですが、あとは相手の方と幾ら作られても構いません。嫡子でなければ、どうとでもなります」
 かなりエグイことを言っているが、相手は自覚がない。
 それが却って、コルネを冷静にさせた。
(学園長は、こういう時どうしたんだろう……)
 理事長になる【メメ・メメル】のことを思い浮かべるが、「まぁ、メメルだし」の一言で納得できる。
 実際、メメルに求婚しようなどという恐れ知らず……ではなく、覚悟を持った者はいなかった。
(結局は、あたしが与し易いって思われちゃってるんだろうなぁ……)
 などと思いつつ、美丈夫をなんとかあしらうコルネだった。

 その一部始終を、コルネは恋人である【クロス・アガツマ】に話していた。

「――ってことがあったんだよ」
「大変だったね」
 人気のないテラスに置かれたテーブルに突っ伏すコルネを慰めるようにクロスは言った。
「もし何かあったら、言って欲しい。俺も立ち会うよ」
「ん……ありがと」
 小さく笑みを浮かべコルネは礼を言うと、胸の中の物を吐き出すように喋っていく。
「それにしても、もう少し言い方あるよね。だいたい、子供を先に作れば後はどうでもいいって、生まれた子供の将来はどうするのって話だし」
 怒るように話すコルネ。
 それを聞きながらクロスは思う。
(子供、か……)
 それは自分とコルネでは叶わない。
 なぜならクロスはリバイバルだからだ。
 未練さえあれば、実質寿命のないリバイバルだが、それは同時に、生身で生きていないことを意味している。
 生身として触れることも出来ず、食事を同じように摂ることも出来ない。
 そして同じ時を歩み生きていくこともないのだ。
 コルネは、その事を理解し、その上でクロスと生きていこうと思っているが――
(俺は、彼女の想いに、なにを返し残せるだろうか……)
 コルネの負担にならないよう表情には出さず、静かに思っていた。

 苦悩を抱くクロスに、能天気な声で髭オヤジ――異世界人である【メフィスト】が提案した。

「生身の人間になりませんかー?」
「唐突になんだ」
 人気のない場所で、突如現れたメフィストに胡散臭そうな視線を向けながらクロスは言った。
「リバイバルからヒューマンにするということか?」
「違いまーす。他の種族になって貰いまーす」
「他の種族?」
「そうでーす。近い内にー、新しい精霊王が生まれる予定なのでー、その加護を受ける新種族にならないかってことでーす」
「……詳しく話せ」
「オッケーでーす」
 詳細を話すメフィスト。
 それは次のような内容だった。

 霊玉の力を使い、新たな精霊王を生み出す。
 それにより霊玉の力を使い切り、核となっている勇者達の魂を解放。
 新たな精霊王は、魔族のように『それまで精霊王の加護を得ていなかった種族』や、『他の精霊王の加護を受けている種族』にも加護を与えることが出来る。
 加護を与えると、元々の種族としての性質と共に、新たな種族としての特質を得ることになり、それはある種の『変質』に近い。
 リバイバルの場合は、初期化の技術と合わせることで、生身の人間になることが出来る。

「――ということでーす」
 メフィストの説明を聞いたクロスは、黙考したあと尋ねる。
「具体的に、どういった変化が起こるんだ?」
「リバイバルの場合はー、元の種族であるヒューマンの体になるでしょうねー。年齢などはー、今の貴方の外見的な物に準じる筈でーす」
「ヒューマンとして生き返ると?」
「違いまーす。そもそもリバイバル自体がー、幽霊の類じゃありませんからねー。リバイバルは生身の肉体がないだけで生きてるのですよー」
「……ヒューマンとして肉体を得ることが出来るが、ヒューマンではないと?」
「そうでーす。なのでー、リバイバルになったりアークライトになったりすることは出来なくなりまーす。つまり定命の運命を受け入れるということでーす。貴方の場合はー、だいたい五十年ぐらいの寿命になるでしょうねー。リバイバルならー、未練さえあれば際限なく生きれますがー」
 生身がないまま未練を抱え生き続けるか、定命を受け入れ生身として生きて死ぬか、選べということだ。
「まぁその前にー、色々と片付けないといけないことがありますがー」
「どういうことだ?」
「異界同盟って組織がー、精霊王の力を探ってるみたいでーす。邪魔されたら嫌なのでー、壊滅して欲しいですねー。学園も準備してるみたいですしー」
「その手伝いをしろということか?」
「いえいえー、その前に貴方はー、結婚式した方が良いと思いますよー」
「……随分と踏み込んだこと言ってくれるな」
「経験者としての助言でーす。しといた方が良いですよー」
「……お前、結婚できてたのか」
「娘もいますよー。娘の彼氏の実家の蔵から金目の物持ち出したらぶっ飛ばされましたがー。まぁそれはともかくー、結婚式しておいたらどうですかー? その方が対外的にケジメがついて良いでしょうしー。ちょっかい出してくる人達の調査に割かれてる人員もー、異界同盟の壊滅に集中できるので良いと思いますしー。じゃ、そういうことでー」
 言うだけ言って去っていくメフィスト。
 あとに残されたクロスは――
「……結婚式か」
 何かを決意するように呟くのだった。

 ということがあり、時期学園長であるコルネとクロスの結婚式が執り行われることになりました。
 その手伝いをして貰えるよう、課題も出ています。
 新たな出発の門出を、みなさんで盛り上げてあげて下さい。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 7日 出発日 2022-11-23

難易度 普通 報酬 通常 完成予定 2022-12-03

登場人物 4/8 Characters
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」

解説 Explan

●目的

結婚式の手伝いをする。

●方法

1 会場の設営などの手伝いをする。

会場作りの手伝いをしたり、料理を作ったり、裏方仕事の担当です。

2 来訪者のチェックや警備をする。

様々な国々や、各界の要人が結婚式に訪れます。

その受付や、警備について下さい。

訪れるNPCは、自由に出せます。

精霊王なども、お祝いに来てくれます。

3 結婚式を盛り上げる。

式の司会をしたり、あるいは何か催し物をしたり。

盛り上がることでしたら、自由に書きください。

上記の3つ以外にも、何か思いつくことがあれば自由にお書きください。


作者コメント Comment
おはようございます。もしくは、こんばんは。春夏秋冬と申します。

今回は、タイトルにもありますように、コルネの結婚式です。

どうか祝ってやってくださいませ。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリザルトに頑張ります。


個人成績表 Report
クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:168 = 112全体 + 56個別
獲得報酬:7500 = 5000全体 + 2500個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
新郎として結婚式に出場

まず先に、コルネには突然結婚式を開くことになったのを一言詫びよう
いつかは通る道とはいえ急なことだったからね、驚いたと思う

さて、自分の式だ。俺もやれることをしよう
各地域の、学園がお世話になった方々に宛てて、事前に招待状を兼ねた手紙を送る
それを読んでもらえば結婚式を執り行うことの意味も伝わるように。コルネ学園長を余計な政略に巻き込まない為だとね
あとは意図を汲んでそれぞれ言伝で広めてくれるはずだ


当日はタキシードで入場。彼女を待つ
入場したコルネの美しさには思わず見惚れて
……また一層、君を好きになってしまうな

そして、皆の前で愛を誓おう
己の指に嵌めるのはリバイバルの力で再現した指輪。本体は傍らに
近い将来、必ずこの指輪に指を通すから。少しだけ待っていて
決意を新たに、コルネの手をとって指輪を通すよ

誓いの口づけは、彼女の温もりを感じた気がした
もしかしたら、これが愛なのかもしれないな

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
コルネ先生おめでとーーーー!!!(バーン)
久しぶりに出番が来そうな気がしたから来たよ!

目的:コルネ先生を素敵にドレスアップ
と、言ってもドレスとかは流石に決まってるよね?
その辺はちゃんとしなきゃ、せっかくの結婚式なんだから

メイクをお手伝い、コルネ先生の希望も聞きつつ
化粧品セットを使って「変装」の要領で仕上げていく
どうして踊りじゃなくてこっちにって?
そんなのキレイなコルネ先生が見たいからに決まってるじゃないか

なお終わったらクロスさんにも会いに行く
こんにちは、ちゃーんと格好よくなってるか見に来たよ
バッチリきめて有象無象の心へし折ってやんなよ、はははは

ふたりとも、おめでとう

仁和・貴人 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:252 = 112全体 + 140個別
獲得報酬:10800 = 5000全体 + 5800個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
コルネ先生とアガツマくんの結婚式か・・・慶事が続くな、いいことだ。

二人にはいろいろお世話になったし、ぜひ手伝いに行こう。
会場だが、この結婚式食べ物や飲み物準備するっていってたが立食式だよな?
各国の要人とかが集まるるんだ席とか決めたらすごく・・・めんどくさいぞ?
まぁそこは俺は考えないようにしよう、後々必要になるかもだけど見させてもらって勉強するか。
料理はカプレーゼとかカナッペとか手軽に食べれて映えるやつ作っておこう

メインのお手伝いは来訪者のチェックだな。
要人の顔と名前覚えられるいい機会でもあるし・・・真面目に取り組ませてもらおうか。

式が始まったらメメたんに付いて回ろう
アドリブA、絡み大歓迎。

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:135 = 112全体 + 23個別
獲得報酬:6000 = 5000全体 + 1000個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:司会のプロ
式の司会に立候補します!
コルネ先生にはひとかたならぬお世話になってますし、
クロスさんは個人的に僕が目指してやまない高身長眼鏡軍師男子のロールモデルとして尊敬しています。
ご恩返しの機会をもらえて嬉しいので、頑張りますね!

グラヌーゼ麦やグルメバトルで出会った食材
これまで見聞きした調理法で
式の【料理】を全面プロデュース

「シェリーに口づけ」(桂木GM様)で披露した腕前にさらに磨きをかけ
外交も考慮した招待客の選定、調整、
各国文化交流を意識した演出企画、演者ブッキング、
式の準備諸々に手腕を発揮
培った【信用】と事務能力をフル活用

【事前調査】により
二人の美点を最大アピールし
二人の出会いを尊く伝える司会進行

リザルト Result

「急なことで驚かせてしまったと思う」
 結婚式をするに当たって、【クロス・アガツマ】は何より最初に、【コルネ・ワルフルド】を気遣うように声を掛けた。
「いつかは通る道とはいえ急なことだったからね。本当なら、もっと時間をかけて進めるべきだが――」
「気にしないで」
 クロスが気遣わないで済むよう、コルネは言葉を遮る。
「こういうことでもしないと、今の状況は収まらないだろうし」
 げんなりとした口調でコルネは言った。
 実際、つい先日も、コルネとの婚姻を求める使者がやって来たりと、対外的に意志を表明しないと収まりがつかない状態になっている。
 もちろんコルネが了承したのは、それだけが理由ではない。
「それに……嬉しいよ。恥ずかしいけど」
 へにゃっ、とコルネは嬉しそうに表情を緩める。
「まだ実感は湧かないけど……結婚するんだ……」
 嬉しそうに頬を緩めながら、何処か夢見るように続ける。
「結婚するなら、その……一緒に住んだ方が、いいよね……?」
 新婚生活を思い描いているのか、恥ずかしそうにうつむき、もじもじとしながら言った。
「アタシの部屋に、来る? 空きはあるし――あっ、もちろんちゃんと綺麗にして引っ越せるようにするからね!」
 その時を想像しているのか、盛り上がるコルネ。
 嬉しそうなコルネに、クロスも小さく笑みを浮かべながら応える。
「俺も手伝うよ。でもその前に、結婚式をしないと、だね」
「ぁ……うん、そうだね」
 すでに疲れたような表情を浮かべるコルネ。
 結婚式自体が嫌だというわけではない。
 ただ、規模を想像しただけで気が重い。
 コルネとしては、どうせやるなら親しい者を招いた気軽で小規模な物の方が好みだ。
 なんならしなくても、それはそれで構わない。
 だから逆に、規模を大きくせざるを得ない結婚式は想像しただけで気が滅入る。
「……色んな国の偉い人達にも、招待状さないとダメだよね……」
「ああ。今後余計なちょっかいを出されないようにするのも目的だからね」
「うぅ……考えただけで、面倒だよぅ……」
 今まで【メメ・メメル】の補佐で各国と連絡をつけていた経験があるので、リアルに大変さが解ってしまう。
「大変だけど、頑張ろう」
 コルネを元気付けるように手を重ねながら、クロスは言った。
「俺も、出来るだけのことはする。それに、皆も助けてくれるよ」
「みんなも……」
「ああ。そうだろう?」
 クロスの言葉に――
「うん」
 皆を信頼するように、コルネは笑みを浮かべた。

 その信頼に応えるように、学友達が動こうとしてくれていた。

「コルネ先生とアガツマくんの結婚式か……」
「そうだゾ☆ めでたい♪」
 満面の笑顔を浮かべるメメルに、【仁和・貴人】も同意するように応えた。
「慶事が続くな、いいことだ」
「そうだろそうだろ♪ めでたいゾ☆」
 嬉しそうなメメル。
 メメルにとってコルネは、面倒を見てきた(今では面倒を見られてる気もするが)生徒であり、どこか妹のような家族に近い間柄でもある。
 それだけに嬉しさもひとしおで浮かれていた。
「オレサマも祝ってやらんといかんナ☆」
「そうだな。オレも二人にはいろいろお世話になったし、ぜひ手伝いに行きたいな」
 何をすれば良いか考えて、ふと疑問が湧いた貴人はメメルに尋ねた。
「そういえば会場は、どうなるんだろ? 結婚式だけど、食べ物や飲み物も出すんだよね?」
「誓いのキッスだけ見せて終わり、というわけにはいかないからな」
 ちょっと考えて、メメルは続ける。
「講堂に一端集めて招待客の紹介をしてやって、そのあと結婚式を見せてから立食パーティ、って流れになるだろうな」
「……花嫁と花婿の紹介の前に、招待客の紹介をするんだ……」
「本末転倒な気がするけど、やるしかないゾ」
 ため息をつくようにメメルは言った。
「学園が、どういった勢力と繋がって優遇しているか伝える場でもあるからな」
「……格付け大会?」
「そういう場でもあるな。面倒だが、しないと逆に荒れるし……」
 格付けがされることで、それに沿う形で各勢力は動くので、未然に余計な争いを避けるためにも必要なことだ。
「こういうことしとかないと、学園に食い込む余地がある! とか思って突貫する奴も出て来るしな」
 実際コルネに求婚が来たのも、そうした流れの一環である。
「色々あるんだな……」
 真剣に考え込む貴人に、メメルはからかうように言った。
「どうしたんだ貴人クン、真剣ではないかネ☆」
「うん。だって――」
 メメルと2人きりなので仮面をしてない貴人は、素顔を向けながら応える。
「オレとメメたんの結婚式の参考にもなるし、きちんとしておきたい」
「……」
 メメルは無言になると顔を赤らめ――
「そ、そうだナ! そういう意味合いもあるナ!」
 恥ずかしいのか微妙にテンパる。
 メメルの様子に、貴人も気恥ずかしさで僅かに赤くなりながら、話題を変えるように言った。
「とにかく、格付けも考えて席順とかも決めないといけないんだな……これ、すごく……めんどくさいぞ?」
「そうだな……それに司会を用意するのも大変だ。各国の首脳級を前にして進行を捌かないといけないけど、そんな経験があるのを見つけるのは――」
「大丈夫」
 確信を込め、貴人は【タスク・ジム】の名前を口にした。
「タスクくんなら、力になってくれる」

 それにタスクは応えた。

「ぜひ引き受けさせてください!」
 やる気満々でタスクは言った。
「コルネ先生にはひとかたならぬお世話になってますし、クロスさんは個人的に僕が目指してやまない高身長眼鏡軍師男子のロールモデルとして尊敬しています」
 学園生としてだけでなく、タスク個人の希望もあり非常に乗り気だ。
「ご恩返しの機会をもらえて嬉しいので、頑張りますね!」
「助かるゾ☆」
 頼もしげにメメルは言うと、次いで必要な物がないか尋ねる。
「当日は招待客の紹介とかで気を使う必要があるけど、何か助けは要るか?」
「……そうですね……」
 タスクは考えて、援護要員として【マルティナ・シーネフォス】の名を口にする。
「マルティナ様なら、各国の機微にも詳しいでしょうし、助けを借りても良いですか?」
「構わないゾ☆ むしろ積極的に頼んでくれ! 学園から増員しても良いようにオレサマが話をつけておくから、好き放題しちゃっていいゾ☆」
 気軽にお墨付きを与えるメメル。
 とんとん拍子で話を進め、式の料理の話題にも繋がる。
「式の料理は、どんな物を出されるんですか? もし可能なら僕にプロデュースさせて下さい」
 それはグラヌーゼ麦やグルメバトルで出会った食材、これまで見聞きした調理法を駆使して最高の料理を出したいという意気込みだった。
「良いんじゃないか」
 料理上手な貴人も話に加わる。
「オレもカプレーゼとかカナッペとか、手軽に食べれて映えるやつ作るの手伝うよ……あ、でも、そういうのは本人達にも訊いた方がいいな」

 というわけで、クロスとコルネの元に皆で向う。

「みんなありがとう!」
 にこにこ笑顔でコルネは応える。
「すっごく助かるよ! 色々と大変だと思ってたけど、みんなが助けてくれるなら大助かりだよ!」
 気のせいか、異様に高揚したテンションで応える。
 例えるなら徹夜明けの勢いだ。
 気になったので、貴人はクロスに小声で尋ねた。
「コルネ先生、ひょっとして疲れてない?」
「……あぁ……」
 クロスは、コルネが気遣いしないで済むよう、少し離れた場所で気付かれないよう応える。
「どうも気疲れしているようでね。それに加えて、学園長になったばかりで引き継ぎの仕事なども多数抱えているから、こちらで出来ることは可能な限りしておきたい。だから手を貸してくれるのは助かるよ」
「気にしないで。力になれているなら、こちらとしても嬉しい」
 クロスに返しながら、貴人は考える。
(コルネ先生、まだこういう公式イベントに気疲れしちゃうんだな……それに結婚式といっても外交の延長みたいなもんだし……)
 どうした物かと考える。
 そうして考えている間も、式の具体的な話は進んでいく。
「結婚式なら、ウエディングドレスだナ☆ 気合入れて化粧もするんだゾ!」
「……化粧……」
 メメルに言われ、コルネは固まる。
「化粧と言われても……」
 基本的にコルネは普段しない。
 というか数えるほどしかしたことがない。
 元々の性格もあるが、学園の教師として働いている時は化粧をしている暇がないのだ。
 戦闘に駆り出されることも多かったので、匂いで気付かれないよう化粧は避けていた。
「やり方が……メメル理事長は――」
「オレサマが出来ると思うんじゃないゾ☆」
「笑顔で返されても……」
「別にオレサマは出席するだけなんだから関係な――」
「それなんですがメメル理事長」
 クロスは言った。
「コルネのヴァージンロードは、最もお世話になった親同然である、メメル理事長に出て欲しいんです」
「……え?」
 予想外とばかりに固まるメメル。
「待て、それだとオレサマも……」
「化粧などは、した方が良いかもしれませんね」
 クロスの言葉に――
「どうすんだ無理だゾ!」
 テンパるメメル。
 ピンチである。しかし救世主となるべく――

「コルネ先生おめでとーーーー!!!」
 助けを求められた【シキア・エラルド】が、勢い良くドアを開けやって来た。
「久しぶりに出番が来そうな気がしたから来たよ!」
「ありがとー!」
「よく来てくれたナ!」
 必死なコルネとメメル。
「とにかく任せるゾ☆」
「お願いするね!」
「任せて。それで、どんな服にするの?」
「え?」
「なに?」
 聞き返すコルネとメメル。
「結婚式だからウェディングドレスじゃないの?」
「それぐらいは知ってるゾ」
「いや、そうじゃなくて。どのラインのにするのかなって」
「……え?」
「……なんだ?」
「Aラインとかプリンセスラインとかマーメイドラインとか色々あるけど――」
 嫌な予感がしたのでシキアは尋ねる。
「まさかとは思うけど、ドレスとかは流石に決まってるよね?」
「……え~と」
「ノープランだゾ!」
「嘘でしょ……」
 さすがに予想外だったので、一瞬言葉を無くした後シキアは言った。
「その辺はちゃんとしなきゃ、せっかくの結婚式なんだから」
 言われても仕方のない状況である。
「うぅ、返す言葉もないよぅ」
 しゅんとするコルネに――
「大丈夫。俺がバッチリ仕上げてみせるからね」
 やる気満々でシキアは応える。
「話で聞いたけど、お邪魔虫がいるんでしょ?」
 外交目的で求婚してくる輩がいると聞いたシキアは、爪先ほども手を出せないよう完璧を目指している。
(もうこれは絶世の美男美女にしないといけないのでは?)
 基本的にシキアは、身内同士の幸せを邪魔されるのが心底気に入らないので、粉砕する気満々である。
「それじゃ、当日の服から決めよう」
 コルネとメメルを見詰めたあと提案していく。 
「コルネ先生は身長もあるしスタイルが良いから、マーメイドラインのウェディングドレスでいこう。来賓には貴族も多いみたいだし、服装でメッセージにもなるし」
「メッセージ?」
 不思議そうに聞き返すコルネに、シキアは説明する。
「貴族は表だって主張を声に出すの嫌うからさ、服とかで主張したりするんだよ。陰険だよね」
 笑顔を浮かべながら説明を続ける。
「マーメイドラインは主張性が強い服装だから、学園としてのスタンスを示せるよ。ちょっかい出してくるなってね」
 そこまで言うと、クロスにも視線を向け言った。
「花婿さんも、ちゃんとコーディネイトしてあげるからね。そうだな――」
 少し考えて提案する。
「ウェディングドレスに合せるから白を基調とするのは当然として、ネクタイとポケットチーフは黒で引き締めて……ラペルも黒にして鋭さを出そう。となると、ピークドラペルのしゅっとしたのが良いな……あっ、もちろんそれに合わせた化粧もするからね」
「化粧かい?」
 クロスは聞き返す。
「服装もだが、事前に用意した方が良さそうだな」
 クロスはリバイバルなので、基本的に身につける物は魔力で再現した物になる。
 シキアも当然、それは知っているので――
「大丈夫。前にリバイバルの花嫁さんに化粧をしたことがあるんだ。要領は分かってるから任せて」
 安心させるように言いながら提案を続ける。
「メメル理事長は、花嫁さんのエスコート役だからフォーマルで落ち着いたドレスにして、色は藍色を基調としたのが良いかな?」
「任せるゾ☆」
 とりあえず丸投げすることにしたメメル。
 そのあとも色々と詰めていくが、話を進めれば進めるほど、当日の来賓客相手のことを考えると大変さが予想できる。
「……大事になりそう」
 今からその時を考え、げっそりとしているコルネ。それを見た貴人は――
(コルネ先生……)
 折角の結婚式だというのに、仕事の延長線でしかない状況に追い込まれているのを見て、どうにかしたいと思う。なので――

「メメたーん。ちょっといい?」
 一通り段取りが終ったあと、貴人はメメルを呼んで提案する。
「来賓客招いた結婚式が終ったあとに、身内だけの開かなーい?」
「ほほぅ。それは――」
「サプライズだね」
「好いゾ☆」
 当然ゴーサインを出すメメル。
「ぱーっとやるゾ☆ ぱーっと!」
 喜ぶメメルに貴人は笑みを浮かべ、応える。
「じゃ、やろう。オレ達だけじゃ手が足りないから、みんなにも声を掛けて。勿論どちらにも知らせないってのは問題ありそうだからアガツマくんには知らせておくよ」
「頼んだゾ☆ ならオレサマは――」
「メメたんには他の人への根回しお願いしたいんだけど大丈夫かな? オレ会場の準備とかするから」
「任せろ!」
 やる気満々のメメルに――
「それじゃ、サプライズってことで驚かせよう」
 秘密だよ、というように口元に指を当てる貴人だった。
 そして貴人が学友達に声を掛けると――
「勿論手伝います!」
 タスクはノリノリで応える。
「公式な結婚式が終った後ということは、そのための時間を作らないといけませんね。だとしたら――」
 タスクは、これまで培った事務作業の経験をフルに使い計画を立ち上げる。
「来賓客に十分、コルネ先生とクロスさんのことを伝えつつ、学園側の思惑も示すために必要な時間を取った上で、交流の場も作るとして……大丈夫! いけます!」
 思案だけで青写真を描き、実現するため奔走する。
「最短で最大の効果が上げられるよう式典のスケジュールを組みます。そのためには各国の関係性も知っておいた方が良いでしょうけど、それはマルティナ様に力を貸して貰うとして……あとは学園の事務方の人達にも協力して貰いましょう。その交渉は僕がやっておきます」
「ありがとう、助かるよ」
 進行などはタスクに任せ、それ以外のサプライズ結婚式の催し物にはシキアに声を掛ける。
「好いね! やろう!」
 ウキウキでシキアは応える。
「折角だから賑やかに行こう。何か曲のリクエストあるかな?」
「それは任せるよ。コルネ先生だから、楽しい曲が良いと思う」
「オッケー。なら今から楽器の手入れしとかないとだね」
 そういうとシキアは、足取り軽く準備に動く。
 諸々の協力者を得たあと、最後にクロスに声を掛けた。
「――というわけで、サプライズ結婚式をしようと思うんだ」
「ありがとう。コルネも喜ぶよ」
 クロスは、貴人の提案に感謝を口にすると、続けて言った。
「そのサプライズ結婚式だが、コルネの母親も招待していいだろうか?」
「コルネ先生のお母さん?」
「ああ。きっと喜ぶと思うんだ」
 コルネと母親は、色々とあって音信不通の状態だ。
 元々コルネは、家出同然の状態で学園に訪れ、紆余曲折があって今の状態になっている。
 それはメメルのお蔭も大きいが、だからといってクロスは、コルネの母親を無碍にする気は無かった。
(コルネも、気にしているみたいだったからな)
 クロスは、コルネが余計な労力を使わないで済むよう、各地域の学園がお世話になった人々に宛てて、事前に招待状を兼ねた手紙を送っていたが、それに合わせ招待状を送ってはどうかと提案したのだ。
(複雑な表情をしていたが、望んでくれたからな)
 各国の重鎮が訪れる公式な結婚式の場では、下手にコルネの母親を表に出すと面倒なことが起りかねないので大っぴらに会うのは難しいが、身内だけのサプライズ結婚式なら問題は無い。
「会わせてやりたいんだ。構わないだろうか?」
「勿論。あっ、でもそれなら、公式の結婚式でも席を用意しておいた方が良いかな?」
「可能なら、お願いするよ。ただ、学園の揉め事に巻き込まれないようにしたいから――」
「席順とか、気を使った方が良いってことだね。分かった、それもタスクくんに頼んでくるよ」
「ありがとう。助かるよ」

 諸々の手順を積み重ね、皆が忙しく準備をしていく。
 その全てが積み上がった、当日――

「ようこそ、おいでいただきました。招待状を拝見いたします」
 貴人は来訪者の最終チェックである、受け付けをしていた。
(招待状は本物。本人確認も、よし)
 魔法によるチェックだけでなく、事前に見せて貰った顔写真とも照合し確認する。
 参加人数が多く大変だったが、要人の顔と名前を覚えられる良い機会でもあったので真面目に取り組んでいた。
 そして来賓者達は続々と結婚式会場に入っていく。
 場所は学園講堂。
 小国に匹敵する敷地と生徒数を誇る学園の物だけあって、とてつもなく大きい。
 平気で千人単位を収容できる大きさだ。
 そこに今、各国から要人が訪れている。
 目的は、メメルから学園長の座を引き継いだコルネの結婚式に参加することであり、外交の延長だ。
 なので参列する要人の国ごとに席の配置は考えられ、抜かりはない。
 結婚式という慶事の場だけあって、参加している要人たちは一見和やかなように見えるが、その実水面下ではバチバチにやり合っている。
 何かあればそれが表に出かねないので、巧く進めていかなければならない。
 それを肝に据えながら、【タスク・ジム】は司会をしていた。
「みなさま、本日はお忙しい中、ご参列いただき、学園としても、この上もない感謝を申し上げます」
 新郎新婦の紹介より先に、参列者への挨拶を先にしないといけないのは、色々と趣旨が捻じ曲がっているようにも思えるが、政治が絡むので仕方がない。
「本日は各国より祝辞をいただいております。この場を借りて、ご紹介させていただきます」
 学園との関わり合いや国の規模、それらを全て鑑みながら、紹介の順番を変えていく。
 ここで間違えると後々禍根を残すことになるので、地味だが重要な役割でもある。
 それをすらすらと進められるのは、リーベラント王ミゲルの妹であるマルティナの助けも大きい。
 非公式な外交官として積極的に動いていたマルティナは、各国の情勢や力関係にも詳しく、それを元にタスクは進行を纏めていた。
(後で改めて、お礼を言わなきゃ)
 心の中でマルティナに感謝しつつ、タスクは司会を進めていく。
 それはスムーズで淀みなく、ちょっとしたハプニングがあっても持ち直す柔軟さがある。
 今までタスクは、こうした司会業を何度かこなしているが、特に最近になってこなした【ヒノエ・ゲム】の結婚式での司会進行の経験が生きている。
「――以上で、御参加いただきました皆様の、祝辞のご紹介を終わらせていただきます」
 一区切りつければ、すぐさま次に移る。
「続きまして、新郎新婦についてご紹介させていただきます」
(サプライズパーティに繋げなきゃいけないんだ。必要なことは可能な限り早く進めないと)
 時間調整も考え、タスクは司会進行していく。
 過不足なく、それでいて最短に。
 学園長であるコルネに興味を持って貰いつつ、クロスとの関係を理解して貰えるよう言葉に気をつけて進めていた。
(このまま進めれば――あと二十分)
 予定通りに進めていく。
(衣装の準備に手間取ってる連絡もないし、このままのペースで大丈夫だな)
 立て板に水を流すがごとく流暢に名司会者ぶりを発揮していた。

 その頃、シキアはコルネを送り出すべく、化粧の仕上げに入っていた。

「これで、どうかな?」
 自然に見えるように、それでいて離れて見ても際立つような艶やかな化粧を終えたシキアは感想を尋ねた。
「メメル理事長も、どうかな?」
「バッチリだゾ☆」
 エスコート役なのでコルネよりは大人しめの化粧をして貰ったメメルは、笑顔で言った。
「これなら花婿も大喜びするゾ☆」
 メメルの言葉に、コルネは恥ずかしそうに笑顔を浮かべると、姿見で自分の姿を見詰める。
「……ありがとう」
 すでに感極まっているかのように涙ぐむコルネ。
「こんなに綺麗にして貰って……アタシ……」
「喜んで貰えて何よりだね」
 シキアは笑みを浮かべ言った。
「きっとクロスくんも、喜ぶよ」
「そう、かな……」
 恥ずかしそうにうつむくコルネに、シキアは言った。
「それじゃ、花婿さんに準備が出来たって言って来るね」
 クロスのいる待合室に向かおうとするシキアに、コルネが声を掛ける。
「ありがとう、本当に……でも、良かったの?」
「? どうしたの?」
「……アタシの化粧を手伝うより、踊りとかの催し物の手伝いしたかったんじゃない?」
 来賓者を歓迎するため、そうした催し物も計画されている。
 シキアが音楽や踊りが好きなのを知っているので申し訳なさそうにコルネは言ったのだ。
 これにシキアは明るい笑顔で応える。
「気にしないで。こっちを選んだのは、そうしたかったからだよ。だって――」
 親しい者を送り出す親愛を込め、シキアは言った。
「キレイなコルネ先生が見たかったからね。自信を持って、コルネ先生」
「……ありがとう」
 笑顔を浮かべるコルネに、シキアはウインクで返し、クロスの出来あがりを見に行く。
「こんにちは、ちゃーんと格好よくなってるか見に来たよ」
「アドバイス通りにしたんだが、どうだろうか?」
 珍しく緊張したような声で尋ねるクロスに、シキアは太鼓判を押すように言った。
「この上もなく完璧だね。これならコルネ先生と一緒に、みんなの目を惹くことが出来るよ」
 背中を押すようにシキアは力付ける。
「バッチリきめて有象無象の心へし折ってやんなよ、はははは」
「ああ、もちろんだ」
 シキアの言葉に力を貰ったクロスは部屋を出ると、花嫁を迎えるため、先に会場へと向かう。
 クロスの準備が整った連絡を受け、タスクは来賓者達に紹介をする。
「みなさま、新郎新婦の準備か整いました。まずは新郎である、クロス・アガツマが入場いたします。どうか拍手で、お出迎え下さい」
 タスクの言葉に合せ、スポットライトが入場口に当たり、クロスは自動で開いたドアから現れた。
 同時に拍手が広がり、無数の視線が突き刺さる。
 それは値踏みするような眼差しだったが、臆することなくクロスは進む。
(堂々とした所を見せねばな)
 学園が舐められないよう、そして学園長であるコルネが軽んじられないよう、祭壇へ向かい花嫁を待つ。そして――
「花嫁が入場いたします。変わらぬ拍手をお願いいたします」
 スポットライトが当たる中、メメルに付き添われたコルネが姿を見せ――
(綺麗だ)
 クロスはコルネの美しさに、思わず見惚れてしまう。
(……また一層、君を好きになってしまうな)
 改めて、コルネに惹かれているのだと自覚する。だからこそ――
(皆の前で愛を誓おう)
 他の誰でもなく、コルネを一番に愛しているのは自分だと証明するために、彼女を待っていた。
 それに応えるように、コルネはバージンロードを進みクロスの元に向かう。
 皆の視線が向かう中、メメルにエスコートされ進んでいき――
「コルネ」
 クロスが差し出した手に、コルネも重ねた。
「大事にするんだゾ☆」
 送り出すメメルの言葉に、クロスは誠実に応える。
「はい」
 言葉少なく、けれど万感の思いを込め応えると、コルネと視線を交わす。
「愛しているよ、コルネ」
「うん……アタシも」
 誰かに伝えるためではなく、想いを交わすために愛をささやき、2人は祭壇へと寄り添う。そして――
「これより結婚式を執り行います。誓約の見届けとして、精霊王の皆さまがお越しになっています。どうか静かに、お迎えください」
 タスクの言葉に合せ魔法陣が次々現れ八柱の精霊王全てが現れた。
 思わずざわめく会場。
 それを静かにさせるように、精霊王を代表して【イグルラーチ】が言った。
「今日の結婚式は、オレっち達が見届ける。どうか祝福してやってくれ」
 信仰の対象にすらなっている精霊王のお墨付きを得て、コルネとクロスは結婚する。
「近い将来、必ずこの指輪に指を通すから」
 祭壇に置かれた指輪を示し、クロスはコルネに言った。
 いま彼の指に嵌められている指輪はリバイバルの力で再現した物。
「少しだけ待っていて」
 決意を込め告げるクロスに、受け入れるようにコルネは応える。
「うん。待ってる」
 コルネの応えを受け止め、クロスは彼女の手を取る。
 指輪を嵌め、お互い見詰め――
「それじゃ、誓いの口づけを」
 2人は誓約を交わす。
 触れ合い重なる唇からは、お互いの温もりを感じ取れる気がした。
 それはリバイバルでは、本来は持ち得ぬ感覚。
 けれど確かに感じながら――
(もしかしたら、これが愛なのかもしれないな)
 クロスはコルネと、愛を交わし合った。

 こうして結婚式は無事に終わる。
 来賓者からの拍手と祝福を受けながら、結婚が認められた。
 めでたい。
 とはいえ喜びに浸る余裕はなく、結婚式が終れば続いて政治と外交の場へと移る。

「立食での懇談会を行います。会場にご案内させていただきますので、しばらくお待ちください」
 タスクが司会で時間を繋げている間に、コルネとクロスは衣装直しを特急で行い、立食パーティで歓談している来賓者達にあいさつ回りに向かう。
「これ、参加者の関係表です。簡略してますけど会いに行く順番も書いていますので、役に立ててください」
 あいさつ回りの直前、あんちょこを作っていたタスクがコルネとクロスに手渡す。
「ありがとう」
「いえ、気にしないで下さい」
 タスクは即座に司会に戻り、この場を利用して宣伝活動にも勤しむ。
「今回用意させていただいた料理には、グラヌーゼ地方で収穫された物もふんだんに使っています」
 復興事業の役に少しでも立てば良いと、売り込むように紹介していった。
 その間も、コルネとクロスはあいさつ回りを続ける。
 目が回るような忙しさだが、学園の看板を背負ってるので手は抜けない。
 それをフォローするように、メメルもあいさつ回りに動き、貴人は一緒について回る。すると――
「お2人の結婚式にも、ぜひ呼んでいただきたいですね」
 王族や貴族が、貴人に根回しをするように積極的に声を掛けてきた。
(これって、メメたんとオレの仲が知られちゃってるんだろうなぁ……)
 国益にも関わりかねないので、色々と皆必死なのだ。
(オレも、もっと頑張らないとな)
 静かに決意する貴人だった。

 そうした外交の場とは別に、コルネとクロスの結婚を祝うパーティの準備は着々と進む。

「折角だから、賑やかな音楽で祝っちゃおう」
 一足先に会場を後にしたシキアが、賛同者の皆と一緒に会場の準備。そうこうしている内に日が暮れていき――

「コルネ先生、おめでとー!」
 シキアは、クロスに連れられてやってきたコルネに、祝福の言葉と共に音楽を送る。
 祝福の言葉は、シキアだけでなくコルネの同僚からも次々掛けられる。
「おめでとうだメェ~」
「幸せになりなさいよ」
 花束と共に、【メッチェ・スピッティ】や【ユリ・ネオネ】達から祝いの言葉を贈られ、すでにコルネの涙腺は決壊している。
「み、みんな……嬉しいよ~」
 泣き笑いのようなコルネに、さらなるサプライズが。
「久しぶりね……コルネ」
「っ、お母さん!?」
 家出してから音信不通になっていた母親が会いに来てくれた。
「……来てくれたんだ」
「……ええ。手紙を、貰ったから……」
 再会が久しぶり過ぎてギクシャクする2人に――
「お義母さん」
 クロスが間を取り持つように言った。
「コルネさんは、俺が幸せにします。だから心配しないで下さい」
 誓うような言葉に――
「いたらない娘ですが、よろしくお願いします」
 コルネの母親は安堵するように頼んだ。

 そしてパーティは盛り上がる。

「何か曲のリクエストある? アドリブいれていいなら何でもひくよー」
 シキアは軽妙な音律でヴァイオリンを弾き語り、場を盛り上げていく。
 やんややんやと皆で騒ぐ中、メメルもご機嫌だ。
「よーし、久々に飲むゾー☆」
「メメたん、飲めなくなったんじゃ?」
「舐めるぐらいなら良いだロ☆ 酔い潰れても、貴人くんがいるじゃないかー♪」
「しょうがないなぁ。酔い潰れたら、部屋までエスコートするよ」
 メメルに振り回されるのを楽しむように、貴人は一緒にパーティを周る。
 皆が笑顔で、喜びにあふれていた。それを見て――
(良かった。みんな楽しんでくれてる)
 裏方として、司会だけでなく奔走したタスクは、混ざりたい気もあるがヘロヘロで、少し休むために場を離れる。そんな彼の傍に――
「お疲れさまやね」
 マルティナが寄り添うように声を掛ける。
「マルティナ様」
「ええよ、気張らんで。がんばってるの、うち見てたから知っとるもん」
 そう言うと、設置していたベンチの傍まで連れていき――
「少し休み。うちが傍におるから、ええやろ?」
「……はい」
 マルティナにあやすように言われ、タスクは横になる。
「少しだけ、休み――」
 倒れるように眠るタスクの頭を膝に乗せ、マルティナは囁くように言った。
「いつか、うちらも……――」
 囁くように言ったのは、皆に見える場所にいるからか?
 真意は分からず、穏やかに眠りにつくタスクだった。

 そしてサプライズパーティは、夜通し続いた。
 賑やかで楽しいパーティは、コルネとクロス、2人の新しい日々を祝福するように、皆は終始笑顔だった。



課題評価
課題経験:112
課題報酬:5000
コルネ・ワルフルドの結婚式
執筆:春夏秋冬 GM


《コルネ・ワルフルドの結婚式》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 1) 2022-11-17 21:47:13
(ばーーーーん!と扉をあけ放ち)

俺たちのコルネ先生が結婚だってこれは全力で祝うべきだよねぇ!!!
ってことで俺は化粧やらなんやらのお手伝いをしようね、最近久しぶりだから腕がなるなぁ!!!!

あ、自己紹介遅れたけど芸能コースのシキアです。今回もよろしく

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 2) 2022-11-20 13:47:00
賢者・導師コース……で、新郎のクロス・アガツマだ。よろしく頼む。
シチュノベも書き終えたので、ようやくこちらに集中できそうだ。
このような機会をいただけたのは、俺自身もとても驚いているよ……

まずは、二人が参加してくれたことに感謝する。ありがとう。
シキア君は化粧をしてくれるのか、それはとても頼りになりそうだ。
そして、俺の次は……貴人君の番かもしれないね。

結婚式だからと気負わず、教室や会議室のはじめで皆を迎えてくれたコルネ先生に感謝を伝えたり、呼べるNPCとも披露宴を通じて仲良くできる機会だと思って、思いおもいに気楽に過ごしてもらえたら嬉しい。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 3) 2022-11-21 17:58:46
遅刻帰国、御無沙汰瘡蓋~!
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。よろしくお願いいたします!

式の司会に立候補します!
コルネ先生にはひとかたならぬお世話になってますし、
クロスさんは個人的に僕が目指してやまない高身長眼鏡軍師男子のロールモデルとして尊敬しています。
ご恩返しの機会をもらえて嬉しいので、頑張りますね!

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 4) 2022-11-22 14:59:03
遅くなってすまない、仁和だ。
・・・俺も手伝いに行こう。

これが身内だけだったら余興の一つでもと思ったのだが、結婚したって広めるための公式イベントでもあるもんなぁ・・・
うーん、ちょっと相談してみるかな?

オレとメメタンの結婚式かぁ・・・できるだけ早く一人前になるつもりだけどどの位かかるやら・・・勿論、あんまり待たせるつもりはないから全力で取り組むつもりだけど。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 5) 2022-11-22 15:32:02
以下PL発言

コルネ先生はまだ要人を呼ぶ公式イベントに慣れてない様子なのでコレが終わった後にでも身内だけの結婚式を企画しようと思ってます。
コルネ先生には秘密のサプライズとして。
良かったら協力していただけると助かります。
文字数のこともあるし出来るようならで大丈夫ですよ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 6) 2022-11-22 17:35:45
なるほど。

貴人くん、乗ったっ!
ともに頑張りましょう!!

PL
相談はタイミング的に難しそうなので、
好き勝手書きながら最善を尽くします(笑)
よろしくお願いいたします!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 7) 2022-11-22 19:03:58
ちょっと早いですが、渾身のプランを書き上げました!

コルネ先生とクロスさんの門出が幸せであるよう心から祈りつつ
リザルトを待ちます。

ご一緒いただいた皆さん、ありがとうございました!

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 8) 2022-11-22 22:47:37
貴人君もありがとう、秘密の結婚式か。
分かった、許可する旨をプランに追記しておくよ。
生徒達だけで改めて言葉を伝えるいい機会にもなるし、そのサプライズは喜んでくれそうだ。