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時の奇術師 ~森に張り巡らされた罠~


ストーリー Story

 ――瑞梨(みずり)、お前は必ず俺が……見つけ出す!

 とある町の郊外に広がる森で、夜の静寂を引き裂くように悲鳴が上がる。
「ひいっ!? 助けてくれ! 俺はこの箱をただ運ぶように言われたただの運び屋なんだ!」
「冒険者ギルドにも商業ギルドにも登録してねえヤツが何言ってやがる。怪我したくなきゃ大人しくその箱の中身を見せろ。そうすりゃ危害は加えねえって約束する」
 赤茶色の髪の中年男が尻餅をついている。
 鼻先には長剣の先端が向けられており、少しでも逃れようと男はじりじりと後ずさる。
 だが背後の木に行く手を遮られ、追い詰められてしまっていた。
 男は胸に宝石箱を掻き抱き、顔面蒼白に震えあがっていた。
 そんな彼に迫るのは中肉中背の黒髪の青年。
 年齢は二十前後だろう。
 どこにでもある革鎧に長剣という旅人風の装いをしている。
 しかしその隙の無い立ち居振る舞いは高ランクの冒険者を思わせる。
 そんな彼は男に言い聞かせるよう、ゆっくりと語り掛ける。
「俺はその箱の中身を確認する。それからお前は空箱を持ってそのまま取引現場へと向かう。……安心しろ、俺がお前を守ってやる。お前はただ取引相手に気取られないよう振る舞えばそれでいい」
「そ、そんな真似できるか! んな真似したら殺される!」
「んじゃここで死んどくか? 俺は別にこの場でその箱を奪ってもいいんだぜ」
 言葉と同時に殺気が男を射抜く。
 その威圧を受けた男は口をぱくつかせ、空気を求めるようにあえいだ。
「わ、わかった! 命だけは助けてくれ!」
 死を幻視した男は震える手で宝石箱を差し出す。
「それでいい。お前はそのまま動くな」
 そう言うと青年は鞄から魔法陣が描かれたスクロールを取り出し地面に広げると、宝石箱をその中心に置く。
「開錠は……魔術トラップは大した事ねえな。これならすぐにでも――っ!」
 スクロールに魔力を込めながら淡々と開錠作業をしていた青年だったが、突如として飛びずさった。
「おいっ、お前! 今すぐここから逃げ――!」
 青年は木の根元に座り込んでいる男に呼びかける。
 だが男は目の焦点が定まらないまま虚空を見つめていた。
 宝石箱と男を繋ぐように魔力が結びつく。
 同時に男の肉体が溶けて箱へと吸い込まれた。
「まさか、この男を触媒にした召喚魔法か!? 正しい手順を踏まないと発動するトラップ……いや、初めからもうこの男は……」
 使い捨てだった。
 初めから箱の中身の生物を召喚するために、肉体に魔術式を刻み込まれていた。
「つまりこれは最初から罠だったって事か、くそっ!」
 青年は歯噛みする。
 そんな思考をしている間に、目の前の宝石箱は光を放ち破裂する。
 すると中から複数の獣の影が飛び出してきた。
 青年は長剣を構え、油断なく呼び出された獣たちを観察する。
「カースドウルフ……それも6体とは念の入ったことだな」
 黒い瘴気を纏った異形の狼が姿を現す。
 この世の摂理から切り離された世界を害する獣。
 前準備がなければ歴戦の冒険者パーティーでも苦戦を強いられる強力な魔物が複数体同時に目の前に立ち塞がる。
 獣は青年を取り囲むと、本能に突き動かされるかのように一斉に襲い掛かって来た。
「――せあっ!」
 裂帛(れっぱく)の気合と共に1体と切り結び、転がるように背後の木の陰へと体を滑り込ませる。
 続く1体が木へと激突して弾かれた。
 残り4体のうち2体が挟み撃ちするように襲い掛かってくる。
 青年は長剣で1体の攻撃を受け止めるが、その背後からもう1体が青年の喉首めがけて大きく口を開く。
 だがそれは紙一重のところで防がれた。
 突如として頭上から飛んできた短剣がカースドウルフの上顎から下顎を貫き、地面に縫いとめたからだ。

「ニル、意外と帰りが早かったな」
 青年は背後を振り返りもせずに言った。
「まあね。君が勝手に町を出たって連絡寄越すから。嫌な予感がして慌てて追いかけてきちゃったよ」
「大正解だ。絶賛罠のど真ん中だぜ」
「カズヤ、少しは申し訳なさそうにしてはどうなんだい? 信頼が厚すぎてお兄さん泣けてきちゃうよ」
 音もなくニルと呼ばれた長身の青年が木陰から姿を現した。
 【ニルバルディ・アロンダマークォル】――切れ長の目と整った顔立ちの彼は、彼の相棒である【稲葉・一矢(いなば・かずや)】の隣に並び、双剣を構える。
「誘拐された少女が運ばれていた可能性があった。お前の帰りを待ってる時間なんてなかったんだよ。結局誘拐は起こってなかったがな。それでいいじゃねえか」
「いやいや、毛深いけど彼女達はメスだよ。素体の問題かな? 5体……うち1体が手負いだね」
「そもそも異形の獣に性別なんてあるのかよ?」
 二人は軽口を叩き合いながらも微塵も隙を見せない。
 先程はニルバルディの存在に気づいた一矢があえて隙を作り、奇襲を成立させただけだ。
 二人は周囲の状況を確認し、カースドウルフを倒す算段を立てる。
 奇襲で1体を仕留められたのは大きい。
 幸いここは障害物の多い森の中。
 時間を掛ければ確実に獣たちを仕留められるだろう。

 だが状況はそれを許さなかった――。
「――なっ、逃げやがった!?」
 カースドウルフ達は一斉に踵を返すと立ち去ってしまう。
「僕達に恐れをなしたか……いや、町の気配に感づいたんだろうね。あっちの方が獲物は豊富だから」
「冷静に言うな! 追うぞ!」
 あんな高レベルの魔物が複数町に飛び込んだならば大惨事だ。
 二人は森を駆け抜けながら作戦を立てる。
「とにかく入り口を固める。町には絶対に入れさせねえ」
「そうだね。僕と君の二人がいれば町への侵入は防げるはずだよ」
「けどそれだけだろ。チィ、こんな時にあいつが……」
 そこまで言いかけて一矢は口をつぐむ。
 もう一人の冒険者パーティーメンバーで、彼の妹の顔が頭を過ぎる。
「大丈夫。実は人員にはあてがあるんだ」
「まさかギルドに依頼を出すつもりか!? もし事情を聞かれたらどうするつもりだ?」
「そうじゃない。『学園』に頼むつもりだよ」
「学園!? まさか……!」
 一矢の頭に浮かぶのは自分達が在籍していた勇者育成の学園だった。
 その想像を肯定するようにニルバルディは微笑みながら頷く。
 二人は会話を交わしながらも息一つ乱れていなかった。
「うん、例の『鳥籠』をメメル学園長に届けたついでに話を通しておいたんだ。きっと上手い事動いてくれるはずだよ。それに今の学園には優秀な生徒が揃っているからね。もしかしたら僕らがいた頃より……ってこれは僕の願望が過ぎるかな?」
「なんでもいい。俺達だけじゃカースドウルフから町を守るので手一杯だ。手配はお前に任せる」
「了解。それじゃあ……」
 そう言うとニルバルディは掌の魔法陣から白いハトを一羽呼び出す。
 そして手早く書いた手紙を足に括りつけると、それを学園の方角に向かって飛ばすのだった。


エピソード情報 Infomation
タイプ ショート 相談期間 7日 出発日 2021-04-28

難易度 難しい 報酬 多い 完成予定 2021-05-08

登場人物 6/6 Characters
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《1期生》アケルナー・エリダヌス
 ローレライ Lv20 / 勇者・英雄 Rank 1
目元を仮面で隠したローレライの旅人。 自分のことはあまり喋りたがらない。適当にはぐらかす。 ふとした仕草や立ち居振舞いをみる限りでは、貴族の礼儀作法を叩き込まれてるようにもみえる。 ショートヘアーで普段は男物の服を纏い、戦いでは槍や剣を用いることが多い。 他人の前では、基本的に仮面を外すことはなかったが、魔王との戦いのあとは、仮面が壊れてしまったせいか、仮面を被ることはほとんどなくなったとか。 身長は160cm後半で、細身ながらも驚異のF。 さすがに男装はきつくなってきたと、思ったり思わなかったり。 まれに女装して、別人になりすましているかも? ◆口調補足 先輩、教職員には○○先輩、○○先生と敬称付け。 同級生には○○君。 女装時は「~です。~ですね。」と女性的な口調に戻る。
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《呪狼の狩り手》ジークベルト・イェーガー
 エリアル Lv8 / 黒幕・暗躍 Rank 1
あぁ?俺? 俺はジークベルト、歳は44 ……はぁ?年齢詐称??生言ってんじゃねーぞ 見た目で判断すんじゃねぇよ、クソが!! 元々は潜入や暗殺、調査専門の冒険者だ。 …見た目がこんなんだからな…こういう場所潜入し易いだろって仕事振られたんだが…なんか、よく解んねーこと捲し立てる女に無理やり入学させられたんだよ。 ホント、ワケ解んねぇとこだな、此処。 センター分けのさらりとした絹糸の様な鉛色の長い髪を緩く編んだ三つ編み、そしてアホ毛が突っ立つ。 藤色の瞳、翅脈(ヒトでいう血管)が青く光るジャコウアゲハ型の翅の白皙の美少年フェアリー ……の、様に見える合法ショタのおっさん。 身長:80cm 体重:2~3kg 見た目はショタ、中身はおっさん。目が死んでる。 発する声はどこから出てるの?と思わず言いたくなる低音。 発する言葉は皮肉と嫌味。 好きな物は酒とたばこと酒に合う肴。アサリの酒蒸しとか。 居酒屋大好きだが、見た目のせいで居づらい 子供の悪意ある「チービ!」には鉄拳制裁する 苦手なものは向かい風 空気抵抗により飛ばされる。 ヘビースモーカーで、大体喫煙所に居る。 一般的に市販されている煙草は彼の体には大きいので、 いつも紙を巻き直している。 煙管はやっぱ味が違うし、こっちの方がめんどくせぇ 最近、タバコ着火の為だけにプチヒドを覚えた。

解説 Explan

 森に逃げ込んだカースドウルフの追跡、討伐です。
 素早く力もあり、瘴気を纏っています。
 レベルも高く真っ向勝負での1対1での戦闘は非常に危険です。
 噛まれたり、怪我を負わされた場合、瘴気の影響で傷の治りが遅くなります。
 邪を払うことができればその効果を無効化したり、カースドウルフへの弱点攻撃となります。
 
 現在彼らには統率者がおらず、森の中でバラバラに行動をしています。
 木々や茂み、その他環境を活かしましょう。
 いかに先手を取り、罠を張り巡らせられるかが勝敗のカギとなります。

 森の入り口では町を守るためニルバルディと一矢が待機しています。
 そこへカースドウルフを追い込むことができれば撃破してくれます。
 彼らは過去に学園でも学んだ歴戦の冒険者です。1対1ではまず負けません。
 自力での撃破が困難な場合は彼らに頼るのも一つの戦法です。

 称号【呪狼の狩り手】――。
 課題達成時に得られます。
 森の中で自ら、または同行者と連携して1体以上仕留めることで得られます。


作者コメント Comment
 皆さまごきげんよう、SHUKAです。
 今回はシリーズものの1弾としてストーリーを書かせていただきました。
 皆様と新たな話を描けていければ嬉しいと思っております。
 よろしくお願いいたします!



個人成績表 Report
フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:136 = 114全体 + 22個別
獲得報酬:3600 = 3000全体 + 600個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:呪狼の狩り手
●方針
カースドウルフの討伐と事件原因、真相について調査

●事前準備
念のため、ニルバルディと一矢に顔通し。
もし敵が街の方に向かいそうな場合は『とんでく花火』で合図すると周知

●行動
基本は罠にかけた後の攻撃だが、《罠設置》も必要ならクロスたちの手伝いを。
戦闘は『レイダー』のリーチを生かし落とし穴など罠の向こう側から攻撃。
まとまって行動し、一体ずつ集中攻撃。

対瘴気はクロスに『エンチャライズ・ボンズ』をお願いしてみる(闇≒瘴気?)
種族特性『ベア・デトル』での治療も試してみる。
前線で壁となり、『不滅の希望』を生かす。


全て撃破できたらウルフの遺体や周辺を探索。
誰かが連れ込んだり、呼び込んだ気配はないか?

アケルナー・エリダヌス 個人成績:

獲得経験:136 = 114全体 + 22個別
獲得報酬:3600 = 3000全体 + 600個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:呪狼の狩り手
◆目的
カースドウルフ5体の撃破

◆方針
仲間と協力し、匂いや餌等で敵を罠に誘い込む等し弱体化させ、各個撃破を狙う
1対1での交戦は避け、敵よりも多い数で応戦するよう心がけ、なるべく全員一団で単体の敵を始末するようにし、数の優位を確保

◆行動
危険察知で木陰や茂みに潜む敵を警戒しつつ、敵より先に敵を見つけて先手を打ったり、罠に敵を誘い込むように立ち回る
敵に風下を取られた場合は、匂い袋の中身やコショウを敵目掛けばらまいて、敵の嗅覚を撹乱できないか試みる

◆応戦
敵の瘴気を正邪の盾で防げないか試みつつ応戦
全力防御で敵の攻撃を凌ぎ、反逆精神で逆転の機会を窺う
敵に隙があれば、グリフォン返しで痛撃を与えることを狙う

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:171 = 114全体 + 57個別
獲得報酬:4500 = 3000全体 + 1500個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:呪狼の狩り手
森での狼狩りか・・・
群れてはいないみたいだしおびき寄せることが出来れば比較的安全に退治することが出来そうだな

まずは事前調査で森の中で開けた場所を探しておく
この後、森の土やらなんやらかぶってにおい対策
におい対策は自分だけでなく皆も出来るようなら行ってもらおうか
誘き寄せるのににおいでバレてカウンターってのは勘弁したいからな

そこで魔王の空間、魔物学、生物学、設計、罠設置、厚手の布を使い陣地作成、罠の設置を行う
罠を設置したらそこら辺の茂みにでも隠れよう

戦闘はマカロンボム、基本鎌術、峰討ち、絶対王セイッ! 、立体機動、ウィズマ・アーダ 、マドーガ、繋りの意味を使い攻撃して行こう

アドリブA、絡み大歓迎

クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:171 = 114全体 + 57個別
獲得報酬:4500 = 3000全体 + 1500個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:呪狼の狩り手
基本方針として、皆でなるべく纏まって行動
一匹ごとに確実に、迅速に仕留めていく

陣地作成を活かし、皆で協力してカースドウルフを迎え討つための陣地を設営

俺はスコップで穴を掘り、近くの草木を調達して即席の落とし穴を作っていこう
ただの一歩でも動きを止めれば、そこを火力で圧倒する戦略だ
他にも仲間にスコップが必要そうなら力を貸す

敵が先に現れた場合は、仲間の攻撃に合わせ回避方向に向けてアン・デ・フィアを放ち動きを止め対応

そうでなければ手筈通り罠に肉を設置し、茂みに身を隠すか透明幽体化で隠れる

そして敵の動きを封じれた時はミドガトルで奇襲
また、ある程度敵の数が減ってきたらピケセ・イ・ヌムで仲間を強化し応援だ

シキア・エラルド 個人成績:

獲得経験:136 = 114全体 + 22個別
獲得報酬:3600 = 3000全体 + 600個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:呪狼の狩り手
ともかく町に行かせるわけにはいかないね

・準備
ランタン油とジークベルトさんのハバネロソースを合わせて薄めて使うよ
量産、じゃないけどある程度量が欲しいもんね?

・行動
罠作成に協力、作成時はヒ9で使い手際よく
完成後は仲間とはぐれないように行動
敵が罠にかかれば氷蝶で【演奏】 残り魔力が3割以下時は聖水をかける
一斉に攻撃で速攻撃破を狙う、攻撃時は【プチコード】
周囲の音、特に走る音や獣の鳴き声に注意
【危機察知】【聴覚強化】をフルに活用
音が近ければ味方へ通達し、警戒
匂いもそうだけど、多分耳もいいよね?敵勢力が半数を切るまではなるべく声の音量は控えめに

ジークベルト・イェーガー 個人成績:

獲得経験:136 = 114全体 + 22個別
獲得報酬:3600 = 3000全体 + 600個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:呪狼の狩り手
事前用意
油紙


現場に向かう前に猟師にトラバサミや仕掛け縄を貸してくれる場所がないか確認
借りれる様なら貸して貰う
学園の名を出せば貸してくれると思うが、過信できねぇ

ハバネロソースはシキヤにランタン油持って貰ったからそれと混ぜて薄めかさ増し
火で一度熱して辛味をランタン油にも溶かしたいがそんな暇はないか
かさ増し薄めたハバネロソースは油紙に小分けに包んで投げやすくしとく

戦闘
風の民や気配察知等総動員して標的を探す
先輩方と待ち伏せしてもいいがその前に弱らせておきたい

見つけたらハバネロソースを投げつける
狙い目は口・目・耳かな

後は死角からの不意打ち狙いで短剣で斬りかかるくらいかね
ちっこいから期待はしてくれるなよ

リザルト Result

 森に放たれた『カースドウルフ』を討伐すべく、学園から六人の生徒たちが派遣された。
 彼らは街への出入り口を押さえている【ニルバルディ・アロンダマークォル】【稲葉・一矢(いなば・かずや)】と手短に状況確認や打ち合わせをする。
 話し合いの末、確実に街への被害を防ぐため卒業生のニルバルディと一矢には引き続き出口の守りを任せ、パーティーは森へと入っていくこととなった。

「討伐するのは5体。そのうちの1体は手負いだったか……」
 森の茂みから様子を窺う【仁和・貴人(にわ・たかと)】が呟いた。
「ここまで2体を討伐したから残りは3体ね。数が多いと同時に遭遇する危険性が高かったから、ここまで順調に来られたのはラッキーだったわね」
 すると隣の【フィリン・スタンテッド】が前に視線を向けたまま貴人に返す。
「カースドウルフが動き回っているせいか、他の動物や魔物は逃げ出したようだね。こちらとしてはターゲットに専念できるのはありがたいよ」
 さらに二人の背後で聞き耳の技能を使って周囲を警戒していた【シキア・エラルド】が小声で囁いた。
 三人の目の前には開けた場所があり、そこには少し盛り上がっている地面がある。
 これみよがしに生肉が置かれ、人間から見れば明らかに罠と分かるものだ。
「……次が来たみたいね」
 フィリンは開けた場所から風下の方向に視線を向けると表情を引き締める。
 彼女の幼さが残る顔には緊張が浮かんでいた。
 そこでは木陰に隠れながらこちらへと合図を送る【ジークベルト・イェーガー】の姿がある。
 気配を殺した彼はあらかじめ連絡場所を決めていなければ見つけるのは困難だっただろう。
 向かいでは同じく【アケルナー・エリダヌス】と【クロス・アガツマ】もジークベルトの合図を受け取ったようだ。
 間もなくそこにカースドウルフが現れた。
 数は1体、怪我はしていない個体だ。
 カースドウルフは周囲を警戒する仕草を見せてから肉へと近づいていく。
 そして――。
「落下確認、一気に仕留める!」
 フィリンと貴人は同時に飛び出していた。
 反対側ではアケルナーも飛び出し、盾を構えた状態で穴に向かって駆け出す。
 貴人は『マカロンボム』を投げつけた。
 同じタイミングで向かいのアケルナーが紙包みを穴へと投げ込む。
 それはシキアとジークベルトがランタン油とハバネロソースを混ぜ合わせ、油紙に包んで作った小袋だ。
 赤黒い煙が穴から立ち上り、目と鼻を異臭が刺激する。
 しかしフィリンはそれにも構わず宝剣『レイダー』を振りかぶって穴へと突き進んだ。
「ハァ――!」
 カースドウルフが穴から飛び出したのと、フィリンが剣でカースドウルフの鼻先を捉えたのはほぼ同時だった。
 蛇が描かれた魔法石のはまった宝剣がカースドウルフを再び穴へと叩き落とす。
 そこへ蓋をするように魔法陣が現れ、無数の腕が穴へと伸びていった。
 『アン・デ・フィア』――クロスが放った腐敗した腕を呼び出す魔法である。
 クロスは彼の魔道書『ピケセ・イ・ヌム』を開いたままアケルナーの後ろで魔法を維持している。
「カースドウルフを捕らえた。あとは頼む」
「ったく、この量でも這い上がってくるとか! ゲホッ、ゲホッ……! フィリンさんが詰めてなければ、ゲホッ、どうなっていたこと、ゲホッ、ゲホッ――!」
 シキアは盛大にむせながらも口を開いている。
「だが今回は逃がさなかったな。お蔭で楽に仕留められた」
 貴人は片腕で口鼻を押さえながらそれに応えるとペリドット・サイスを掲げる。
 大鎌のオリーブグリーンの刃が煌めき、穴の中で地面に押さえつけられたカースドウルフの喉笛が掻き切られる。

「最初はどうなる事かと思ったけど、やればなんとかなるものだね」
 森の獣道を進む中、アケルナーは仮面の下で安堵の声を漏らした。
 その感想にシキアも微笑みながら頷く。
「それには同意だよ。それぞれの役割がかっつり噛み合っていたからこそだね。もしこのメンバーでなかったらと思うとぞっとするよ」
 その言葉に全員が頷きを返す。
 緊急で出動した割にはメンバー構成がしっかりとしていた。
 前衛ではフィリンと貴人がアタッカー、アケルナーがタンクとして戦い、後衛ではクロスが魔術師として火力を振るい、それらをシキアがサポートする。
 いざという時には気配を消したジークベルトが動き、決定的な痛打を回避していた。
 緊急招集された即席パーティーにもかかわらず、メンバー構成はほぼ理想的である。
 それがここまで彼らの探索を順調なものとしていた。
 二人の会話にジークベルトも続く。
「そうだな。最初落とし穴からカースドウルフが飛び出してきた時にはどうなるかと思ったぜ。鼻を潰されて激昂していたからな。一歩間違えれば死人が出ていてもおかしくない状況だった」
「あなたには助けられたわ、ジークベルトさん」
「いいや。フィリンが引きつけていたからこその奇襲だ。気にするな」
 フィリンの感謝にジークベルトは手をひらひらと振って応える。
 外見は子供のはずなのに、どこかハードボイルド風の仕草はなんともギャップを覚える光景である。
 いくら罠を張り奇襲を仕掛けて優勢に戦えていたとはいえ、カースドウルフの身体能力を目の当たりにしたパーティーのメンバーは油断も慢心も抱いてはいない。
 適度な緊張感が高揚感と一体感を産み、実力以上の力を発揮出来ていると全員が肌で感じている。
 最初の2体とは紙一重の戦いを繰り広げていたのだった。

 しばらく進むと開けた場所に出た。
「ここは随分と明るい……ってわけではなさそうだ」
 この辺りが明るいのは周辺の草木が枯れ果てているからだった。
 まるでその場所だけ冬が訪れているかのように、枝の葉はすべて落ち、草は色を失っている。
 その中心では頭部を砕かれたカースドウルフの死体が転がっていた。
 ニルバルディたちの報告のとおり、街に向かうカースドウルフを食い止めるため、死体がそのまま放置されているのだ。
 シキアがカースドウルフの死体に近づいていく。
「ここがニルバルディさんの言ってた襲撃現場のようだね」
 地面にはまだ目新しい複数の獣の足跡が残っている。
 これまでの交戦で見たカースドウルフのものと同じであった。
 クロスが周囲を見回しながら言った。
「瘴気が森を蝕んでいる。このまま放置するのはまずいな。瘴気がこれ以上周囲に広がらないよう応急手当をする必要があるだろう」
「残りのカースドウルフを放置するのか?」
 クロスの提案にアケルナーが訊ねる。
「まだ相手は2体残っているんだ。いくら戦法が確立されたからとはいえ、戦う前にしっかりと体勢を立て直した方がいい。怪我の手当ても必要だろう」
 するとクロスの意見に貴人も同意する。
「アケルナーくん。さっきの戦いでは無意識に怪我を庇ったからこそ、バランスが崩れて少し出遅れたんじゃないかい? 本来なら同時に辿り着いてカースドウルフを抑え込めたはずだ。幸いフィリンくんの方に飛び出してくれたから事なきを得たけれども」
「うっ……」
 貴人がアケルナーの肩にそっと手を置く。
 するとアケルナーは小さく呻いた。
 ここまで気分が高揚していたのだろう、それまで感じていなかった痛みが肩に広がっていく。
 アケルナーは肩口に深い傷を負っていた。
 瘴気の影響か傷の回復が極端に遅く、治癒だけでなく浄化も必要になるのは明らかだった。
 そのためには腰を据えた治療が必要となる。
 そんなやりとりにジークベルトが肩を竦める。
「俺も同意だぜ。相手が相手なんだ。一つのミスが命取りになり兼ねねえよ。万全を期せるならしておいた方がいい。特にアケルナーはみんなを支える立ち位置だからな。てめぇに倒れられたらパーティーが総崩れになっちまう」
 ここまで流した汗は決して熱からくるものばかりではない。
 首筋近くを刃が通り過ぎるような『死』すらも垣間見た戦いだった。
 アルケナーだけではなく前線で戦うフィリンや貴人も浅いが無数の傷を負っている。
 戦闘に支障はないものの、瘴気が蝕む傷は長く放置するには危険なものだ。
「それじゃあここで休憩ということでいい? 瘴気に対処する者、傷の手当てをする者、周辺の見張りとチームを三つに分けたらいいと思うけど」
 フィリンの提案に皆が頷き返す。
 分担としてクロスとジークベルトが瘴気の対処を、アケルナーとフィリンが傷の手当てを、貴人とシキアが周囲の警戒に当たる事となった。
 クロスとジークベルトは口元を布で覆い、カースドウルフの死体の解体にとりかかる。
「どうやらこの場所がカースドウルフの現れた現場のようだ」
 クロスが死体の傍に転がっていた魔法石の欠片を摘まみ上げる。
「詳しいことは然るべき設備で調べる必要があるが、この場所で召喚魔法が発動したのは間違いないだろう。それもかなり高度のものがね」
 クロスは学者然とした眼差しで嬉々として欠片を見つめる。
「召喚魔法陣!? そんなものが使われていたなんて……」
 フィリンは驚きつつ、見開いた目を魔法石の欠片に向ける。
「こんな平穏な街に凶悪な魔物を解き放つとか、はた迷惑にも程がある。ってかクロス、こっち手伝え」
「ああ、すまない。つい見入ってしまった」
 ジークベルトは瘴気を放つ内臓を削ぎ落す。
 それをクロスが皮袋に詰めて封をすると、近くの木に吊り下げる。
 中には聖水が入れられていて、瘴気の発生が抑えられていた。
「これでしばらくの間は大丈夫だろう。後は地元の冒険者ギルドに任せた方がいい」
 そう言うとクロスは再び魔法石の欠片を調べ始める。
「そんなにその石は興味が惹かれるものなのかい?」
 そんな彼の熱心な様子に貴人が呼びかける。
 カースドウルフの死体処理の間にアルケナーとフィリンの治療が終わり、貴人がフィリンと見張りを交代したのだ。
 聖水を染みこませて即席の包帯とした布を傷口に巻きつける。
 そこで薬草が効果を発揮し始めると怪我が緩和されていった。
「ああ、ここまで純度の高い魔法石は見たことが無い。確かにこれならカースドウルフ程の魔物を封じることも容易いだろう」
「封じる? この中に入っていたのか?」
「正確には転送に近い概念なのだが、要するに物だけでなく生き物も持ち運べる便利な箱、と言ったところだ」
 クロスは楽し気に指先で魔法石の欠片を弄び始める。
 だが周囲の反応は違った。
「それって世界の流通の常識がひっくり返るんじゃ……」
 フィリンが表情を強張らせる。
 と、シキアが周囲に聞き耳を立てて警戒しつつも会話に混ざって来た。
「重い荷物を手一つで運べるだけでなく生き物まで運べるとなると、家畜なんかも運べたりするだろうね。馬車に箱をぎっしり詰めれば一体どれだけのものが運べることか」
 だが楽し気に語るシキアに向かい、フィリンが困った表情になる。
「確かにそうね。そうなれば素晴らしいと思うけれど、同時に危険でもあるわ。今回みたいに密輸に使われたり、とかね」
「実際我々は命の危険に晒されているわけだ」
 アルケナーが苦笑する。
「不幸中の幸いとしては、これが使い捨てのアイテムである上、相当に高価で希少なため採算が合わないというところだろう」
「へえ。実際この箱いくらくらいするんだ? この欠片だけでも結構な値段するのか?」
 ジークベルトはクロスに向かってにやりと酷薄な笑みを浮かべる。
 それは外見が十歳の少年にしてはニヒルで凶悪な笑みであった。
 さらにはいつの間にか煙草まで咥えられている。
 それは入り口でニルバルディから貰ったものだった。
 彼曰く、こういったきめ細かい気配りが人脈作りには欠かせないとのこと。
「この欠片自体は使い物にならないから価値はないね。まあ証拠物件だからどの道拾得は無理だなのだが。ちなみにこの箱一つで貴族の屋敷が土地ごと丸々一件は買えるだろう」
「確かにそれでは採算が合わないわね……」
「どおりで世間で流通していないわけだ」
 フィリンと貴人は自分と縁のない膨大な金銭の話に苦笑を浮かべるしかない。
 対してアルケナーは深刻な顔になる。
「けどそれだけ高価な物なら入手できる組織や人間は限られてくるはず……」
「その線で追いかけ、今回一矢さんは罠に嵌められたのかもしれないね」
 そんなアルケナーにシキアは肩をすくめた。
「こんな高価な物を利用するとか、組織力を考えると恐ろしいな」
 そんな会話を交わしながら、パーティーメンバーは治療と処置、物資の補充を終えたのだった。


「それじゃあ手筈通りに」
「ああ、今度はちゃんとタイミングを合わせてみせる。確実に仕留めよう」
 フィリンとアルケナーは頷き合い、それぞれ落とし穴を挟んで向かいの茂みに隠れる。
 全員が配置につき、その時を待った。
「かかった!」
 飛び出すと同時に投げ込まれるマカロンボムとハバネロ袋。
 それは目の前のカースドウルフの味覚と嗅覚を奪うだけでなく、周囲にいる他のカースドウルフへの牽制にもなる代物だ。
 のたうち飛び出してくるカースドウルフは、フィリンの存在を視界に入れると慌てたように反対側へと飛び出す。
「逃がさない!」
 だがそこへ『正邪の盾』を構えたアルケナーが飛び込んで来た。
 全力防御でカースドウルフを受け止め、反逆精神に伴う直感で重心を移動、カースドウルフへ剣で一撃を叩き込むと、返す刃で再び斬りつける。
 『グリフォン返し』と呼ばれる剣技により再び落とし穴へと突き落とされる。
 あとはクロスの魔法で動きを奪い仕留めるだけとなる。
 だが、続く魔法は発動しなかった。
「――もう1体だ!」
 最初に気が付いたのはジークベルトだった。
 この鼻が曲がりそうな臭いの中、カースドウルフのみならず一切の獣や魔物も寄り付かない――そう思い込んでしまうのは仕方がないことだろう。
 背後からの接近に気づいたときにはすぐそこにまで迫っていた。
「チィ――!」
 寸でのところで攻撃を回避したジークベルトは、だがカースドウルフと接触して盛大に転がる。
 体格差に加えて突進の勢いは彼を木にぶつけて失神させるに十分な威力だった。
 その一体は手負いだった。
 傷口から瘴気が侵食し、肉体が腐りかけている。
 それは最初に一矢が斬りつけた1体だ。
 腐りかけの肉体は嗅覚も味覚も、視力すらも奪いかけている。
 それゆえにハバネロの効果は薄かったのだ。
 このカースドウルフは生者を憎み、生命に反応してここまでやって来た。
 アンデッドに近い特性である。
 手負いのカースドウルフはそのままクロスへと迫る。
 だが唐突にその動きは阻止される。
 彼の周りにあったトラバサミである。
 それはジークベルトが街の猟師から借り受けたものだった。
 クロスを守るために配置したそれは手負いのカースドウルフの足を挟んで自由を奪う。
「救難を出すよ!」
 その瞬間を見逃さず、フィリンはとんでく花火で合図を送る。
 2体同時遭遇ともなれば助力を得なければ危険である。
「フィリンくんとアルケナーくんはそのまま穴の1体を押さえて! オレがあの1体を仕留める!」
 指示を出しながら全速力で手負いのカースドウルフへと迫る貴人。
 一方それは自らの腐りかけた足を引きちぎり罠を脱する。
「――絶対王、セイッ!」
 ペリドット・サイスがオリーブグリーンの軌跡を描き交錯する貴人とカースドウルフ。
「……ごほっ!」
 吐血し腹を押さえて蹲る貴人はしかし油断なく背後を振り返る。
 そこには胴体を切断され、倒れ伏すカースドウルフがいた。
 シキアが横笛『凍蝶』を演奏し、穴の中を凍らせる。
 だが完全に凍る前にカースドウルフが飛び出してくる。
 フィリンの迎撃の一撃にも怯まずにのしかかり、喉笛へと喰らいつく――。
 だがそれはいつの間にか『身代わりうさぎ』に変わっていた。
「――ミドガトル!」
 すかさずそこへクロスが水の球体を乱射しぶつけて動きを鈍らせる。
「今だ、フィリンさん!」
 さらにシキアが駆け込みなけなしの魔力を込めたシルトでカースドウルフを受け止める。
 シキアは跳ね飛ばされたがその瞬間、カースドウルフの動きが完全に止まった。
 ――還襲斬星断。
 魔力によってフィリンのレイダーの刀身が伸び、鞭剣となってカースドウルフに襲い掛かる。
「ハアアアアアア――ッ!」
 渾身の斬劇はカースドウルフを斬り刻む。
 カースドウルフは悲鳴を上げることも無く斬り刻まれるとその場から動かなくなるのだった。

 森の入り口、そこに張られたテントの中で貴人は一矢からの治療を受けていた。
「これでいい。あとは数日間安静にすること。替える包帯は必ず聖水に浸すこと。念のため、帰りは仲間の誰かに背負って貰え」
「ありがとうございます」
 ぎゅっと包帯で傷口の周囲を縛る。
 それは一見乱暴に見えてその実正確な手当だった。
「それにしても危なかったね、貴人君。あと少し傷が深かったら内臓に達していたよ。まったく雪合戦演習の時も君は無茶をしたよね。お兄さん心配になっちゃう」
「なんでそんなに楽しそうなんですかね?」
「いやあ、後輩の成長程嬉しいことはないからねえ。まさか君達だけですべてのカースドウルフを討伐できるとは思ってもいなかったよー、あはは」
 貴人はニルバルディに胡乱気な視線を送るがどこ吹く風である。
 そんなやり取りを見守っていたクロスが口を開く。
「ところで、あいつらは一体どこから呼び出されたんだい? 今回の件、我々にも話を聞かせてもらえるのだろうか?」
 彼の柔和で、しかし物事の真相を探るような視線にニルバルディは僅かに笑みを崩す。
「うーん、別にそれを話しても全然構わないのだけれどそれはやめとこうかな」
 ニルバルディは爽やかな笑みを浮かべながら言った。
「君達は学園の生徒だ。メメル学長には全てを話してあるから事情が知りたければあの人から話を聞くといいよ。君達にならきっと話してくれるだろう。ただしその先には今日よりも危険な戦いが待っているかもしれない。先に進むのならそれなりの覚悟を持っておいた方がいいね」
 細められた目の奥の奥――その危険な輝きを見た者は果たしてこの中に何人いただろう。
 ひとまず事件は解決し、パーティーの面々は帰路につくのだった。



課題評価
課題経験:114
課題報酬:3000
時の奇術師 ~森に張り巡らされた罠~
執筆:SHUKA GM


《時の奇術師 ~森に張り巡らされた罠~》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《呪狼の狩り手》 ジークベルト・イェーガー (No 1) 2021-04-21 21:25:01
えーと、黒幕・暗躍コースのジークベルトだ。まぁ、よろしく。

はー……で、敵は6匹、カースドウルフ。狼だが、リーダー的個体はなく現在バラバラに森の中を町に向かって疾走中って感じか。

狼だから、鼻や耳は利くだろうから、なるべく風下から近付くとかした方がいいかねぇ
どれだけ早く捕捉できるか、罠にかけるならその罠にうまく誘導できるか、かな

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 2) 2021-04-21 22:37:23
だいぶ集まって来たわね。勇者・英雄コースのフィリンよ。よろしく。

できれば先輩方の世話にならずに決着をつけたいけど…
決めておきたいのはどうやって罠にかけるか、どんな罠を仕掛けるか、ね。

かなり強敵という事だし、直接ダメージを与えるより攻撃力、機動力を削ぐようなものがいいかな…

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 3) 2021-04-22 02:36:09
賢者・導師コースのリバイバル、クロス・アガツマだ。よろしく頼む。

さて、どう動いたものかな…… 解説の通りなら、やはり罠を設置してそちらへおびき寄せるのが効果的だろうか。
もちろん、入り口に追い込んで手伝ってもらうのも可能だし、個人で何か戦術があるなら分かれてみるのも悪くはないだろう。
ただ、俺は待ち伏せて確実に叩いていく方に一票かな。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 4) 2021-04-22 02:45:48
魔王・覇王コースの仁和だ。
よろしく。


罠について少し考えたんだが、囮+妨害系の罠か餌を使った誘き寄せ系の罠がいいんじゃないかと思う。
妨害系主体の場合、少しでも掛かる確率を上げるためにな・・・
ただ、囮を使う分先手を取られる可能性が誘き寄せ系の罠を使うよりも高くなりそうだが。
誘き寄せ系の罠の場合だが、オレとしてはエサ式罠をイメージしてるんだが上手く釣ることが出来ればたやすく先手を取れそうではあるよな。

他に何かあるだろうか?

《1期生》 アケルナー・エリダヌス (No 5) 2021-04-22 06:59:30
やあ。私は勇者・英雄コースのアケルナー。よろしく頼むよ。
私も餌で釣る罠を考えてたよ。一般的に狼なんかは、人間よりも鼻が利くと言う。
それが連中の強みでもあるけど、臭いがが強いものなんかを餌にすれば……その強みを、逆に仇にできるかもしれないしね。

そうなると、逆に風上に陣取って狼への妨害に徹することもできそうだよね。
風上から、コショウや匂い袋を使ってみるのも面白そうだと思ってるよ。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 6) 2021-04-22 18:08:58
芸能コースのシキア・エラルド、今回もよろしくね

さて、考えることが多いなぁ。今のところ敵は分散、1対1は危険…っと
匂いを利用しておびき寄せるのは賛成、匂い袋なら確か購買にもアイテムあったよね
うーん、罠の仕掛け方、俺ちょっといい案まだ浮かばないから考え中
囮は確かにちょっと怖いね、多分向こうのほうがすばしっこいよ。
逆に言えば、その機動力を削げばなんとか…?

敵の能力に瘴気ってのがあるんだっけ、これ聖水で弱体化できないかなぁ
あくまで呪いの状態異常を解除する道具だけど、邪をはらうってことで

《呪狼の狩り手》 ジークベルト・イェーガー (No 7) 2021-04-22 23:55:04
おびき寄せるっていうなら、匂い袋とか干し肉(塩漬けじゃないのか?)とか…干し肉は匂いするのかわからんが、おびき寄せるエサにはなりそうだな。

……魔物はどうか知らねぇけど、風上で俺がタバコ吸ってたら来なくなるんじゃねぇかと思ったんだどうだろか。
ニコチンとかタールとかの匂いって嗅覚利く系の動物ってあんまり得意じゃなかったと思ったんだがどうだろかねぇ。

あぁ、邪を…瘴気っていうか呪いを祓うって感じでいいのかー
俺の方はとりあえず、プチコード覚えて来たけど。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 8) 2021-04-23 21:42:56
あぁ、匂いの種類で誘導するっていうのはいいかも。罠のあるルートからすごく逸れてる時とか
ただ闇雲に使うとかえって集めてしまうから、そこは使うタイミングを合わせた方がいいかな?

おびき寄せの案は集まってきてるから、罠の内容だね
こう、フィリンさんの案を踏まえて弱体化させる罠を何個も作って……いや、似たようなものばっかりだったらかえって学習される…?(ぶつぶつ

《呪狼の狩り手》 ジークベルト・イェーガー (No 9) 2021-04-24 01:01:52
>>罠
虎ばさみ、つり上げ縄、引っかかったら障害物が降ってくる、炸裂の種を等間隔で設置(地雷)……あんまり準備かけずに作るとしたらそれくらいかね。

一番手っ取り早くて簡単な罠は…罠じゃねぇけど…森ごと燃やすだと思った。
火着けて、町の前で待ってれば火で混乱した所叩けるし、一匹くらいは焼け死ぬのも居るだろう。
まぁ…枯れ木枯草枯れ葉、乾燥した空気のコンボで鎮火は大変だろうし、下手すれば町が燃えるだろうし、魔物退治とか関係なく放火犯になっちまうし。
魔物は死んでも、百害あって一利なしだから、コレはなしだなぁ

《呪狼の狩り手》 ジークベルト・イェーガー (No 10) 2021-04-24 01:11:45
>>罠?
購買見てたら思いついたんだが、ハバネロソースぶっかけるってのもありだな
顔にぶっかければ、目も鼻も口も使いもんにならんだろうし。

《1期生》 アケルナー・エリダヌス (No 11) 2021-04-27 07:07:28
発言に間が空いて申し訳ない。
今日中に出発に向けて用意しないとね。

罠に使う道具なんかも、手分けして用意した方がよさそうだね。

>罠
ハバネロソースか。当たれば効果絶大だと思うけど、液体だし、そんなに一瓶に大量に入ってはいないだろうから、当てるには工夫が必要かもね。
例えば、他の罠に組み合わせて、少しの間動きを止めてから使うとか。

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 12) 2021-04-27 13:30:21
すまない、こちらも少し立て込んでいて遅くなってしまった。

俺はスコップを持ってきた。それと肉も用意したので、これで誘い出せると思う。
こちらはスコップを使って原始的に落とし穴でも作ってみよう。草木が茂っているので穴を隠すような材料も現地調達できるはずだ。

森を火事にするのは流石に避けたほうがいいだろう……まあ、火属性の攻撃をするくらいは時期的に延焼もないだろうが。
ハバネロソースは全ての個体にというわけにはいかないだろうが、どいつかに使ってみるのは有効そうだ。
罠や攻撃などで動きが止まったら使う、とか、そういった書き方をしてみてはどうだろう。

そうだ、誘い出すということなら、少し指を切って血を流してみるとか、そういったことも有効かもしれない。
リバイバルは血を流せないので、提案することしかできないが……

《運命選択者》 クロス・アガツマ (No 13) 2021-04-27 13:38:35
連投を失礼する。
戦略についてなんだが、誘い出したら一匹一匹を皆で確実に仕留めていくという方針でどうだろうか?
時間をかければ複数体と戦うことにもなりかねない、迅速に数を減らしていくのが効果的かなと。

また、そういったことを考慮すると、やはり皆である程度まとまって行動するのが良いと思う。
だが、別行動したいとか、二手に別れようとか、別の考えがあれば遠慮なく言ってくれ。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 14) 2021-04-27 15:59:44
>みんなで行動
敵が強力であること考えたらまとまった方がいいと思う
…複数なキツイなら1対複数を繰り返せ、だね
クロスさん落とし穴作ってくれるなら、ハマった敵に武器で「氷結」状態にできるか試して見る
うまくいけばそのまま袋叩きにできそうだしね

>持ち物
「一滴足せば味が破壊されるほどの辛さ」ってことなら、少量でもある程度の効果は発揮されるかな、ハバネロソース。それなら実際の物より多めに辛い水用意できるかな
持ち物は「聖水」持っていくのは確定として、あともう一個の持ち物どうするか…

《呪狼の狩り手》 ジークベルト・イェーガー (No 15) 2021-04-27 20:46:22
んじゃ、俺は落とし穴以外の罠作るか、近くの町で調達できるか確認して見るかー

>持ち物
ハバネロソース、薄めて使うなら水じゃなく、油か度数の高い酒で薄めろよ。
唐辛子の辛味は水には溶けにくいから、辛味にばらつきが出ると思うしな……ホントは薄めるなら火にかけて一度沸騰させたいんだけどなー。そんな暇ないよなー
…俺、ポケットは一つだけだから、ハバネロソース持って行くからよ、シキヤはランタンの油か…消毒液か、うん、それどちらか持って行ってくねぇかね?そうすりゃ、罠仕掛ける時にちゃちゃっと薄めるからよ。

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 16) 2021-04-27 21:32:09
丁度ランタンの油持ってたらから、課題にはそっちを持っていくことにするね!
っとと、時間もそんなにないからそろそろプランまとめないと…

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 17) 2021-04-27 22:31:59
ギリギリになってすまない。

取り敢えずオレは厚い布を持っていくつもりだ。
落とし穴の補助に使えるだろう。
後は自分たちのにおい対策か?
折角エサでおびき寄せても自分等のにおいでバレタラ意味ないしな。
一応、プラン内で皆にも行うよう提案してみるが・・・

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 18) 2021-04-27 22:32:47
ごめん、色々考えこんでたらギリギリに…
まとまっての行動、一匹ずつ確実にってクロスの方針ね。

>罠について
落とし穴系なら、私は武器のリーチを生かして上から攻めるのがいいかな。
血は…やってみる?慣れてるし、少し垂らすくらいなら問題ないけど

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 19) 2021-04-27 22:41:04
血はいいかもと思たが、止血と傷をふさぐ手段と自分のにおい対策が行えないと狙われないか?

囮になるんだったらかなりいい案だとは思うが・・・