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春遠からじ~個人面談ファイナルシーズン


ストーリー Story

 毎朝毎夕寒いのだ。とても。
 教室にはストーブが入っている。両手をかざして火にあたっているのは【コルネ・ワルフルド】だ。
「おっとと☆」
 ドアがスライドする音に驚いて、コルネは椅子ごと一八〇度回転して向き直った。
「は……早い登場だねっ!?」
 コルネは机の上の資料入れを手にして慌ててペラペラとめくった。探しているのだ。きみの名前とプロフィールを。
 きみはいささか恐縮しつつコルネに答えた。うっかりして、と言ったかもしれないし、楽しみなあまりつい、と言ったかもしれない。あるいはもっと別のセリフかも。
 いずれにしてもコルネはうんうんと聞いて、資料をめくる手を止めた。
「じゃ、はじめるとしようか♪」
 笑顔で告げるのである。
「個人面談を!」
 魔王軍の動きが気になる今日このごろだが、フトゥールム・スクエアは学校、例年の個人面談はちゃんとある。
 コルネはぐいと身を乗り出す。きみとの距離は机一枚をはさんだだけだ。
 なんだか、いい匂いがした。

 ◇ ◇ ◇

 きみはトレーを持って学食の列にならんでいる。
 ローレライ国家リーベラントからの敵対宣言、おなじくアークライト集団との対立は、いずれも望ましい結末に収まった。ベストな解決ではなかったかもしれない、課題も残った。それでも、ベターな幕引きと言っていいのではないか。
 以上にとどまらない。異世界、霊玉、魔王軍、学園長【メメ・メメル】の不調……ここ数ヶ月、フトゥールム・スクエアをとりまく状況は本当に目まぐるしい。
 それでも学園生活はつづいており、授業もあれば空腹にもなる。当然、ランチタイムもある。
 だからきみはこうして、午前中の授業を終えて学食の列にならんでいる。変わらない日常だが、その変わらなさにこそ落ち着く。
 カレーにしようか定食がいいか、そんなことをぼんやりと考えていたとき、
「ここのオススメて何やのん?」
 背後から呼びかけられ、きみはふりむいてギョッとする。
「来てもた」
 はにかみ笑いを浮かべているのは、畏れ多くも(と、あえて書く)リーベラント公女【マルティナ・シーネフォス】ではないか。トレーを手にしてきみのまうしろにいた。
「こういうとこ一度来てみたかってん。なあ、一緒にご飯にせえへんか?」
 屈託なくマルティナは言うのだが、きみにとってはなかなかの課題だ。
 果たしてきみは、彼女を無事エスコートできるだろうか。

 ◇ ◇ ◇

 冬来たりなば、と世に言う。春遠からじと。
 たとえ極寒の季節であっても、かならず春はやってくるというたとえだ。
 フトゥールム・スクエアをとりまく状況は楽ではないかもしれない。けれど打開の未来はあるはずだし、今このときにだって、希望の萌芽は見えているのかもしれない。
 個人面談の時間だ。きみと、その人の。
 願わくば、春の気配があるものにしたい。
 さしむかいで話したい相手は誰だろう。
 教師である必要はない。上級生でも、後輩でも。異国からの客人でも。
 その人と語り合おう。
 あるいはきみの胸の内をあかそう。


エピソード情報 Infomation
タイプ EX 相談期間 5日 出発日 2022-03-06

難易度 とても簡単 報酬 ほんの少し 完成予定 2022-03-16

登場人物 8/8 Characters
《グラヌーゼの羽翼》エリカ・エルオンタリエ
 エリアル Lv33 / 賢者・導師 Rank 1
エルフのエリアル。 向学心・好奇心はとても旺盛。 争い事は好まない平和主義者。(無抵抗主義者ではないのでやられたら反撃はします) 耳が尖っていたり、整ってスレンダーな見るからにエルフっぽい容姿をしているが、エルフ社会での生活の記憶はない。 それでも自然や動物を好み、大切にすることを重んじている。 また、便利さを認めつつも、圧倒的な破壊力を持つ火に対しては慎重な立場を取る事が多い。 真面目だが若干浮世離れしている所があり、自然現象や動植物を相手に話しかけていたり、奇妙な言動をとることも。 学園へ来る前の記憶がないので、知識は図書館での読書などで補っている。
《終わりなき守歌を》ベイキ・ミューズフェス
 ローレライ Lv27 / 教祖・聖職 Rank 1
深い海の色を思わすような、深緑の髪と瞳の彷徨者。 何か深く考えてるようにみえて、さして何も考えてなかったり、案外気楽にやってるのかもしれない。 高価そうな装飾品や華美な服装は好まず、質素で地味なものを好む。 本人曰く、「目立つということは、善きものだけでなく悪しきものの関心も引き付けること」らしい。 地味でありふれたものを好むのは、特異な存在として扱われた頃の反動かもしれない。 神には祈るが、「神がすべてをお救いになる」と盲信はしていない。 すべてが救われるなら、この世界に戦いも悪意もないはずだから。 さすがに口に出すほど罰当たりではないが。 ◆外見 背中位まで髪を伸ばし、スレンダーな体型。 身長は160センチ前半程度。 胸囲はやや控えめBクラスで、あまり脅威的ではない。 が、見かけ通りの歳ではない。 時折、無自覚にやたら古くさいことを言ったりする。 ◆嗜好 甘いものも辛いものもおいしくいただく。 肉よりも魚派。タコやイカにも抵抗はない。むしろウェルカム。 タバコやお酒は匂いが苦手。 魚好きが高じて、最近は空いた時間に魚釣りをして、晩ごはんのおかずを増やそうと画策中。 魚だって捌いちゃう。
《運命選択者》クロス・アガツマ
 リバイバル Lv26 / 賢者・導師 Rank 1
「やあ、何か調べ物かい?俺に分かることなら良いんだが」 大人びた雰囲気を帯びたリバイバルの男性。魔術師であり研究者。主に新しい魔術の開発や科学を併用した魔法である魔科学、伝承などにある秘術などを研究している。 また、伝説の生物や物質に関しても興味を示し、その探求心は健やかな人間とは比べ物にならないほど。 ただ、長年リバイバルとして生きてきたらしく自分をコントロールする術は持っている。その為、目的のために迂闊な行動をとったりはせず、常に平静を心掛けている。 不思議に色のついた髪は生前の実験などで変色したものらしい。 眼鏡も生前に研究へ没頭し低下した視力のために着けていた。リバイバルとなった今もはや必要ないが、自分のアイデンティティーのひとつとして今でも形となって残っている。 趣味は読書や研究。 本は魔術の文献から推理小説まで幅広く好んでいる。 弱点は女性。刺激が強すぎる格好やハプニングに耐性がない。 慌てふためき、霊体でなければ鼻血を噴いていたところだろう。 また、魔物や世界の脅威などにも特に強い関心を持っている。表面にはあまり出さねど、静かな憎悪を内に秘めているようだ。 口調は紳士的で、しかし時折妙な危険性も感じさせる。 敬語は自分より地位と年齢などが上であろう人物によく使う。 メメル学園長などには敬語で接している。 現在はリバイバルから新たな種族『リコレクター』に変化。 肉体を得て、大切な人と同じ時間を歩む。  
《熱華の麗鳥》シキア・エラルド
 ヒューマン Lv25 / 芸能・芸術 Rank 1
音楽と踊りが好きなヒューマンの青年 近況 自我の境界線が時々あやふやになる みっともない姿はさらしたくないんだけどなぁ 容姿 ・薄茶色の髪は腰の長さまで伸びた、今は緩く一つの三つ編みにしている ・翡翠色の瞳 ・ピアスが好きで沢山つけてる、つけるものはその日の気分でころころ変える 性格 ・音楽と踊りが大好きな自由人 ・好奇心>正義感。好き嫌いがハッキリしてきた ・「自分自身であること」に強いこだわりを持っており、自分の姿に他者を見出されることをひどく嫌う ・自分の容姿に自信を持っており、ナルシストな言動も。美しさを追及するためなら女装もする。 好きなもの 音楽、踊り、ともだち 苦手なもの ■■■■、理想を押し付けられること 自己犠牲 二人称:キミ、(気に入らない相手)あんた 初対面は名前+さん、仲良くなると呼び捨て
《勇者のライセンサー》フィリン・スタンテッド
 ヒューマン Lv33 / 勇者・英雄 Rank 1
「フィリン・スタンテッド、よ……よろしく」 「こういう時、どうすれば……どうすれば、勇者らしい?」 (※追い詰められた時、焦った時) 「黙って言うこと聞け! 殴られたいの!?」 「ぶっ殺してやる! この(お見せできない下劣下品な罵詈雑言)が!!」   ###    代々勇者を輩出してきた貴族スタンテッド家(辺境伯)の令嬢。  一族の歴史と誇りを胸に、自らもまた英雄を目指してフトゥールム・スクエアへと入学する。  愛と平和のために戦う事を支えとする正義感に溢れた性格で、『勇者らしく人々のために行動する』ことを大事にする。  一方で追い詰められると衝動的に罵声や暴力に訴えてしまう未熟な面もあり、自己嫌悪に捕らわれる事も多い。 『彷徨う黄昏に宵夢を』事件で対峙したルガルとの対話から思うところあったのか、頑なな勇者への拘りは少し角がとれたようだ。 ※2022年8月追記 全校集会『魔王の復活』後、昨年クリスマスに結ばれたルガルとの子供を身籠っていた事が判明 (参考シナリオ) 恋はみずいろ L’amour est bleu https://frontierf.com/5th/episode/episode_top.cgi?act=details&epi_seq=649 ◆口調補足 三人称:〇〇さん(敬語では〇〇様) 口調:~かな、~ね? その他:キレた時は『私、アンタ、(名前で呼び捨て)、(言い捨て)』 ◆Twitter Sirius_B_souku
《メメルの婚約者☆》仁和・貴人
 ヒューマン Lv33 / 魔王・覇王 Rank 1
「面倒にならないくらいにヨロシクたのむ」                                                                                                                                                 名前の読みは ニワ・タカト 身長:160㎝(本当は158cm位) 体重:45kg前後 好きなもの:自分の言う事を聞いてくれるもの、自分の所有物、メメたん 苦手もの:必要以上にうるさい奴 嫌いなもの:必要以上の労働、必要以上の説教 趣味:料理・・・だが後かたづけは嫌い    魔王っぽく振る舞っている    此方の世界の常識に疎い所がある キャラとしてはすぐぶれる 物理と科学の世界からやってきた異邦人だが、かの世界でも世界間を移動する技術はなくなぜここに来れたのかは不明。 この世界で生きていこうと覚悟を決めた。 普通を装っているが実際はゲスで腹黒で悪い意味でテキトー。 だが、大きな悪事には手を染める気はない。 保護されてる身分なので。 楽に生きていくために配下を持つため魔王・覇王科を専攻することにした。 物欲の塊でもある。なお、彼の思想的には配下も所有物である。 服装は魔王っぽいといえば黒。との事で主に黒いもので固めていて仮面は自分が童顔なのを気にして魔王ぽくないとの事でつけている。 なお、プライベート時は付けない時もある 色々と決め台詞があるらしい 「さぁ、おやすみなさいの時間だ」 「お前が・・・欲しい」 アドリブについて A  大・大・大歓迎でございます 背後的に誤字脱字多めなので気にしないでください 友人設定もどうぞお気軽に
《マルティナの恋人》タスク・ジム
 ヒューマン Lv36 / 勇者・英雄 Rank 1
村で普通に暮らしていましたが、勇者に憧れていました。 ここで学んで一人前の勇者になって、村に恩返しをするのが夢です。 面白いもので、役所勤めの父の仕事を横で見聞きしたことが、学園の勉強とつながり、日々発見があります。 (技能はそういう方針で取得していきます) また「勇者は全ての命を守るもの、その中には自分の命も含まれる」と仲間に教えられ、モットーとしています。 ※アドリブ大歓迎です! ※家族について デスク・ジム 村役場職員。縁の下の力持ち。【事務机】 (※PL情報 リスクの子) ツィマー・ジム おおらかな肝っ玉母さん。 【事務室・妻】 シオリ・ジム まじめできっちりな妹 【事務処理】 チェン・ジム のんびりマイペースな弟 【事務遅延】 ヒナ・ジム 可愛い末っ子 【事務雛型】 リョウ・ジム 頑固な祖父 【事務量】 マーニー・ジム 優しい祖母。故人 【事務マニュアル】 タックス・ジム 太った叔父。【税務事務】 (※PL情報 リョウの子) リスク・ジム マーニーの元婚約者でリョウの兄。故人【事務リスク】 ルピア・ジム 決まった動作を繰り返すのが大好きなグリフォン。【RPA事務】 ※ご先祖について アスク・ジム 始祖。呼吸するように質問し、膨大なメモを残す。【事務質問】 「あなたのお困りごと、お聞かせいただけませんか?」 セシオ・ジム 中興の祖。学園設立に向けて、土地や制度等に絡む諸手続きに貢献。【事務折衝】 「先祖の約束を今こそ果たす時。例え何徹してもやり遂げる!」
《ココの大好きな人》アンリ・ミラーヴ
 ルネサンス Lv18 / 教祖・聖職 Rank 1
純種が馬のルネサンス。馬の耳と尻尾を持つ。 身長175cm。体重56kg。 16歳。 性格は温厚。 あまり表情を変えず寡黙。 喋る際は、言葉に短く間を置きながら発していく。 少しのんびりした性格と、言葉を選びながら喋るため。 思考や文章は比較的普通に言葉を紡ぐ。 表現が下手なだけで、年相応に感情は豊か。 好奇心も強く、珍しいものを見つけては、つぶらな瞳を輝かせながら眺めている。 群れで暮らす馬の遺伝により、少し寂しがり屋な面もある。 やや天然で、草原出身の世間知らずも合わさって時折、突拍子の無い発言をする。 好きな食べ物はニンジン。 食べていると美味しそうに目を細めて表情を和らげる。 趣味はランニング。運動自体を好む。 武術だけは、傷付ける行為を好まないため苦手。 入学の目的は、生者を癒し死者を慰める力を身に着ける事。

解説 Explan

 二年ぶりの個人面談です! 教師や先輩など、NPCとの面談(読み方は『MEN DANG』)がはじまります。
 想定しているのはNPC一名との面談ですが、希望があれば数名が相手でも対応します。

 どんな状況での面談か、想定される質問と回答、その際の行動などをアクションプランとしてご投稿下さい。予想通りか予想外か、いずれにせよ会話と行動のからまった掌編として提供させていただきます。

 プロローグで示している状況は一例です。
 かしこまった個人面談ではなくても、たまたま道で会ったとか、待ち合わせて買い物(デート?)に行くとか、展開は自由です。やってみたい展開をご提案ください!
 
 代表的なNPCを以下に記しますが、ここに書かれていない人、過去エピソードに登場した(登録されていない)NPCでも指定可能です。
 死亡したキャラクターであっても、夢で再会するという展開であれば可能とします。

 (ただし【ガスペロ・シュターゼ】など魔王軍メンバー、【ドーラ・ゴーリキ(怪獣王女)】、【ルガル・ラッセル】など敵対キャラクターは基本的に指定できません。※例外あり)

【メメ・メメル】
 学園長です。最近体調がすぐれず、公の場に出ることは少なくなりました。
 病と称して学長室に寝ていることが多いようですが、お見舞いと称して訪れてもいいでしょう。

【ミゲル・シーネフォス】
 リーベラント第二王子。父王が逝去、後継者候補の兄が辞退を表明したので、次期国王となることが決定しましたが、望んでいなかった戴冠が迫り重圧に震えています。

【リリィ・リッカルダ】【ラビーリャ・シェムエリヤ】
 リリィはラビーリャに連れられ、創作料理店『くたびれたウサギ亭』で、謎の新メニュー『クリームぜんざい抹茶スパゲティ』をごちそうになります。(そして……絶句します)

【ドクトラ・シュバルツ】
 魔王軍ですが例外的に彼女だけは登場可能です。非戦闘、食事などをともにするという状況なら会えます。


作者コメント Comment
 桂木京介です。よろしくお願い申し上げます。
 過去二回開催してきた面談シナリオ、おそらくはこれが最後となるでしょう。おなじみの人も、もちろん初参加の人も歓迎します!

 本作は自由度の高い交流シナリオです。今回は一対一の面談でなくても可能です。
 夢の中、という限られた状況になってしまいますが、二度と会えないキャラクターとの再会も可能としました。
 どんな内容でも構いません。できるだけご希望に添うような物語にしてみたいと思っています。

 あなたのご参加を楽しみにお待ち申し上げております!


個人成績表 Report
エリカ・エルオンタリエ 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
・ユリ先生とドーラさん捜索と和解、その後の魔族との共存について現実的な計画と協力を話し合う。

課題『学園生の自由な一日』において、タフコーン山近くでドーラさんが目撃されたことが分かった。
ドーラさんは暴走状態(?)にある模様で、彼女及び火の霊玉の確保のために魔王軍も動いている様子。
ドーラさんを無事保護し、前回のトラブルの謝罪と暴走状態の解除、必要であれば治療を行う。

落ちついたらドーラさんのお父さんの死について真実を説明したい。
迫害を受けていた魔族を救うためにお父さんは最愛の娘の命を捧げようとしたが
お父さんは魔族の幸せと娘の幸せを天秤にかける事への苦悩もあり、ユリ先生に自分を止めて欲しいと頼んだ。




ベイキ・ミューズフェス 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
◆目的
アントニオ氏の元に向かい、先日の非礼のお詫びとお礼を伝える

◆用意
ティーセットにお茶、お茶菓子を用意
お茶とお菓子をお出ししたら、まずは自分で先に毒味し、安全だと示して

◆面談?
アントニオ氏にお会いできたら、まずは暴挙を止めるためとは言え、城塞の物資に火を掛け混乱の坩堝としたことや、本で殴ったことをお詫びし、城内を鎮めて頂いたことに感謝を

そのうえで……自分がどのように生きてきたか
両手で足りぬ程の子が居たことを包み隠さず話し、自分はミゲルさんには釣り合わないことをお伝えして

ミゲルさんに諦めて貰うよう、お口添え頂けないかお願いを

まさか……ミゲルさんと鉢合わせたりしませんよね?
鉢合わせたら……まあ、この状況に関わった者として、お困りならばお悩みは聞きますよ

色々企てる者も居ますが、バルバラさんやパオロさん、リリィさん
あなたには、いい臣下が居るじゃないですか

ひとりで背負わず、臣下にもお任せなさい
臣下を動かし、働きを賞し……罪あらば罰する
悩んだら私でもいいし、お兄様もお父様にご相談を

可能なら花見参加

クロス・アガツマ 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
コルネ先生と個人面談を行おう
……こうしていざ座ってみると、思ったよりも近いな

名前、そしてプロフィール……
どれも俺が隠し、あるいは欺いてきたものだ
恐らくはメメル学園長からすでに一端は聞いているかもしれない。本当の俺について

だから、せっかくの個人面談でもあるし彼女にも打ち明けよう
魔王との戦いも迫っている……もうそろそろ、いい頃合いでもあるだろう
マガツとしての自己紹介、といったところか
偽らざる本当の『私』を、コルネ先生には教えよう


……それと、マグダ・マヌエーラのことも話しておきたい
彼女には感謝している。もっと早くたどり着けたなら、あるいは……
いくら話しても、詮無きことか

シキア・エラルド 個人成績:
成績優秀者

獲得経験:60 = 20全体 + 40個別
獲得報酬:2160 = 720全体 + 1440個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
メメル先生のお見舞いへ、今日の体調はどう?先生
俺?俺は……うん、体は大丈夫
喉のケアも怠ってないからね、のど飴いる?

…時間が経つのは早いね。今回は俺が会いにきたけど。
最初の面談を思い出して苦笑い
あの時から俺も変わった、と思う
良いか悪いかは、俺には分からないけど

俺はやっぱり「犠牲」っていうのは嫌いだよ
その人がいなくなったら悲しいというか
そういう悲しみから生まれる悪意は「ある」し
なので俺は色んな人に怒ってます、一人で抱え込んでた先生にもちょこっとだけ怒ってます
先生、俺達も頑張れるんだって信じてよね

花見希望、最初の時と同じように楽器を持って
…あぁ、皆を喜ばせるパフォーマー
そんなこと言ってたっけ

フィリン・スタンテッド 個人成績:

獲得経験:30 = 20全体 + 10個別
獲得報酬:1080 = 720全体 + 360個別
獲得友情:1000
獲得努力:200
獲得希望:20

獲得単位:0
獲得称号:---
◆面接(?)相手
ドクトラ・シュバルツ

◆希望状況と行動
場所はお任せ。
魔王復活とルガルの件で追い続けてます。
酒場などでバッタリなら一杯はおごりたい(対抗心むきだし)

話題は二つ

・まだルガルと組んでるのか(居場所を知ってるか)
そして
・ルガルともう関わるな

やんわり(?)と宣戦布告です。
組んでないならよし、組んでるなら覚悟しとけ。

仮面と霊玉の関係はこちらも掴んでるし、ルガルは自分が助ける…と
(半ばハッタリですが『時の奇術師(完) ~新たな旅立ち~』で話が出てたので)

一方で『【泡麗】Red,Black and Red』で話した事もあるので
魔王軍に和解の意志があるなら受け入れるし、助けてくれたことは感謝してるとも

仁和・貴人 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
面談か…
チィウドいい機会だしメメたんに御見舞がてらメフィストさん連れて行って初期化技術だの色々な新技術の説明とその新技術を使ったメメたんの治療(?)プラン説明と説得をしに行こう
できればメメたんに御見舞い行くメンバーには根回ししておこう

欲張るのが学園流らしいのでここで発揮しよう
好きな人の時間と命、そして世界の平和と平穏な日常を求めるために頑張り時だよな


花見参加
持ってるメメペイで料理や飲み物を買っていこう
現地に行く道すがら出会った人がいたら誘ってみよう
会場では盛り上げ役として楽器演奏でもしようか

アドリブA、絡み大歓迎

タスク・ジム 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
午前中
校長先生への面談を申請し受理されたので
芸能・芸術コース期待の新入生トーマス・マン君を連れて訪問し
新聞一面を飾る肖像画のスケッチを提案する
以前、先生が絵を描いて欲しがってたことをずっと覚えていて
喜んでくれるかなと思って用意した
勿論、先生の意向次第

お昼
学食の列に並んでいるとマルティナ様に声をかけられたので
前回「デートしてくれへん?」と言われたのを思い出し赤面するが
学園とリーベラントの協調のため大変お世話になった恩返しに
一念発起してエスコートすることを決意
「霎雨」の時の経験を素早く頭の中でブラッシュアップし
学園のお勧めスポットを案内する
会話術と推測で好みや価値観を把握
最適コースを選択

アドリブA

アンリ・ミラーヴ 個人成績:

獲得経験:24 = 20全体 + 4個別
獲得報酬:864 = 720全体 + 144個別
獲得友情:500
獲得努力:100
獲得希望:10

獲得単位:0
獲得称号:---
奉仕科担当教諭 【ユリア・ノイヴィント】先生と個人面談。
場所は植物園『リリー・ミーツ・ローズ』を提案。
俺(アンリ)がケーキやお茶を用意しますと伝える。
事前に面談のためのお茶会の許可を植物委員会へお願い。
当日、園内で日当たりの良い場所にテーブルとイス、朝に焼いたスフレチーズケーキとクッキー、紅茶入りのポットと食器を用意。
魔法犬ココも連れてきて先生に紹介。
ココにも「俺がとてもお世話になった先生だよ」と先生を紹介。
用意したカボチャとニンジンの犬用クッキーをココのお皿に載せる。
分けたケーキとクッキーを先生に差し出し、他に他愛ない話をした後、俺は先生の授業を受け続けたいから、魔王に必ず勝ちます、と誓う。

リザルト Result

 地元の飲んべえでも、ちょっと避けそうな安酒場である。
 床は汚れ放題で黒ずんでいるし、テーブルにも脂汚れがしみこんでいる。器にいたっては、縁が欠けていないものを探すほうが難しそうだ。
 集まる客も相応で、酒であれば満足といった依存症気味の者から、顔まで煤けた傭兵崩れ、逃亡小作農のような者までいる。総じて年齢層は高め、女性は皆無ではないが少なく、髪は総白髪といった顔ぶれだった。
 だから目立った。
 若い女がふらりと入ってきたのだから。
 しかし彼女に口笛を吹いたり、ちょっかいをかけようとする者は皆無だった。
 女は極度の猫背で、目の下には墨塗りみたいな隈があり、何より強烈な『負』の気配を全身から発していたから。黒のタンクトップにホットパンツ、長い白衣という組み合わせも異様だった。
「煮込みと酒」
 ぶっきらぼうに【ドクトラ・シュバルツ】は告げ、杯に注がれた酒をすすった。
 お代わり、と言うかわりに突き出した杯を、横合いから出た手がおしのけた。
「どうぞ。私のおごりよ」
 酒の入った杯がある。
 じろりとシュバルツは隣の客を見た。小柄でフードを目深にかぶっている。
「煮込みのかわりにあんたの臓物を引きずり出してやろうか」
 シュバルツは牙をむいた。並大抵の男ならこれですくみ上がる。
 だが客は『並大抵』ではなかった。そもそも『男』ですらない。
「探したわよ、シュバルツ。あんたは会いたくなかったでしょうけど」
 フードをはらいのけ、【フィリン・スタンテッド】は刃物のような笑みを浮かべた。
「フトゥールム・スクエアの小娘かい。今この場でぶち殺す理由なら十は数えられるねえ」
 フィリンは鼻で笑った。シュバルツにそんな気がないのを見抜いていたからだ。
「こないだの迷惑料よ、一杯付き合え」
 ケッとシュバルツは毒づくと杯を一息であおった。
「礼は言わないよ」
「あんたに文明人のふるまいができるなんて思ってない、シュバルツ」
 シュバルツは酒臭い息を吐き、顔をフィリンに近づけた。
「あたしは……メシのときは人殺しはしないことにしてる」
 二人のただならぬ雰囲気を察したか、いくらかいた客は逃げるように店を出て行った。店主すら煮込みの皿を置くとカウンターの奥に隠れた。
 目をそらさずフィリンは言った。
「単刀直入に聞くけどルガルどうしてる? 知らないならいい」
「知るもんか」
「私が昔いた盗賊団じゃ、嘘つきは舌を切り取られる」
「……馬鹿にすんじゃないよ。酒おごられた相手だまくらかすほど墜ちちゃいない!」
 シュバルツの語尾が跳ね上がった。
「で、あたしにルガルのこと訊いてどうする気だい?」
「言っておこうと思って。彼は私が助ける。これ以上関わらないで」
 ぷっとシュバルツは吹いた。ゲラゲラと笑う。
「あんた、ルガルに惚れてんのかい?」
「だったら悪いか!」
 音を立ててフィリンは杯を置いた。自分で飲むためではない。店主が出てこないので酒瓶を取って注ぎ、シュバルツに押し出したのだ。
「呑め。そして私を馬鹿にするな、キモS女!」
「キモで結構、来る者拒まずだ。タダ酒は胃炎に沁みるってねえ」
 シュバルツは躊躇なく飲んで皿を押し出す。
「あたしのモツ煮込み分けてやるよ。それとも、学園のお嬢様は恐くて手が出せないかい?」
「私は奴隷だったこともある。あの頃は、泥水混じりのスープだってご馳走だった」
 フィリンはモツを口に運んだ。見てくれはひどいが味は悪くない。
「で、なんだっけ? ルガル? 馬鹿だねあんた、ああいう男はあたしみたいなヤバい女のほうが似合いさ」
「ヤバさなら私も負けていない。仮面と霊玉の関係はこちらもつかんでる。ルガルにかかわるな」
「……ふぅん、そこまでつかんでいたとはね、フィリン・スタンテッド。褒めてやるよ」
 煮込みの残りをかきこむと、シュバルツは煮込みの代金だけをテーブルに置いた。
「だけどルガルにはますます興味が出てきたさね。あたしがいただいてやるよ」
「何言ってんの。私は」
 だがフィリンは口をつぐんだ。ワンナイトスタンド(一夜限りの関係)など、シュバルツには嘲笑の対象でしかないだろう。フィリンは言葉を変えた。
「助けてくれたことは感謝してる。でも次会うときは」
「敵同士、だろ? 恋敵のほうがいいかい?」
 大笑してシュバルツは出ていった。背後から斬りかかられるなどと、夢にも思っていない足取りで。 



 暦は晩冬であろうと、すでにここには春が訪れている。
 リリー・ミーツ・ローズ、学園内の植物園だ。
 ピンク、青、黄色に赤、色とりどりのベゴニアが咲いている。左右非対称で少々いびつ、かたちもさまざまな花だが明るく美しいその姿を、学園長はこよなく好んでいるという。
 ここにもひとり、ベゴニアを愛するひとがいる。
 奉仕科担当教諭【ユリア・ノイヴィント】だ。
「咲きましたね、それも盛大に」
 花弁に指でふれ、にこりとユリアはほほえんだ。花の香を胸に吸いこむ。
 かるくウェーブのかかった亜麻色の髪、澄みきった泉のようなまなざし、笑みは幼子のように邪気がなく、声には成熟した女性のたおやかさがある。タータンチェックのワンピースに、白いカーディガンがよく似合っていた。
 ベゴニアに囲まれた陽当たりのいいスペースにひとつ、象牙色した丸テーブルが置かれている。
 籐の椅子はふたつ。
 その隣に屹立するのは、緊張気味の【アンリ・ミラーヴ】だ。
「先生、今日は、ご足労、いただきまして……」
 つっかえながらアンリは言葉を探す。口の動きは硬いが心は喜びでいっぱいだ。その証拠にアンリの尾は、麦の穂みたいに立って左右にふるふる振れている。
「どうしたの? そんなにかしこまって」
 口に手を当て、くすくすとユリアは笑った。
「自然にいきましょう。だって今日はまるで、かつてのお茶会の再現みたいだから」
「お……おぼえていてくれました!?」
「あの日は薔薇を鑑賞したけど、今日はベゴニアね。ほんとうに綺麗」
 ユリアは目を細める。同時に、アンリの両肩から気負いは消えていった。
 二年前の春、アンリはユリアのお茶会に招かれた。広大なリリー・ミーツ・ローズの敷地内で、薔薇とキュウリを採ってくるという一風変わった、でも楽しいお茶会だった。今日はそのお返しという趣旨なのだ。
 お茶会のあと現在までも、アンリがユリアと交流する機会は何度かおとずれた。いずれもアンリにとって忘れえぬ思い出だ。とりわけ、枯葉舞う公園のベンチにユリアとならんで腰かけ、一緒ににんじんのサンドイッチを味わった日の記憶は、今でもときおり、マリネにしたにんじんの甘酸っぱさとともに思い出されることがある。
「では先生、今日はよろしくおねがいします」
 晴れ晴れした気持ちでアンリは言い、ユリアのために椅子の背を引く。
「ありがとう」
 会釈してユリアは着席した。
「すこし、待っててください」
 アンリは姿を消すと、すぐにトレーを手に戻ってきた。
 テーブルに並べるのは白いソーサとティーカップ、背の高いポットだ。皿には朝に焼いたスフレチーズケーキとクッキーが載り、ポットには淹れたての紅茶が入っている。
 アンリと一緒にやってきたのはトレーだけではなかった。
「うさぎ?」
 白い小動物がぴょんぴょん跳ねるようにして、アンリの足元に馳せ参じたのだ。でもウサギに見えたのは一瞬、小動物はたちまち、元気な子犬へと姿を変えた。
「かわいい」
 ユリアは名前をたずねた。
「【魔法犬ココ】、ある課題をへて家族になった子です。普段はアニパークへ預けています」
 ココは幻惑魔法の持ち主で、見た目を自由に変えることができるのだ。アンリはココに呼びかけた。
「俺がとてもお世話になった先生だよ」
 あいさつしておいで、とまで言う必要はなかった。ココはユリアの脚に体を寄せたのである。一瞬だけネコに、ついでペンギンになってみせたのは、ココなりのサービス精神なのだろう。
 紅茶を注ぎ、ココにもカボチャとニンジンの犬用クッキーを用意してアンリも座った。
「いただきます」
 カップに唇をつけると、吐息のようにユリアはつぶやいた。
「……おいしい」
 個人面談といっても、魔王復活の気配や対魔王同盟内の動乱といった話にはならず、もっぱら日常や学園生活など、木漏れ日のように穏やかな話題がつづいた。危機が迫ろうとも、いや迫っているからこそ、心安まる時間は大切にしたかった。
 だがココの皿が空となり、二杯目のお茶がカップの底にわずかに残るようになったころ、おもむろにアンリはユリアに真剣な表情をむけたのだった。
 決意をこめて言う。
「俺は先生の授業を受けつづけたいと思っています」
 だから、と一拍おいて、
「魔王に必ず勝ちます」
 断言した。予言ではない。誓いとして。
 ユリアはうなずき、短く返した。
「信じてるわ」
 と。



 本日は午前で学校は終了だ。放課後の広場噴水前は下校の学園生に限らず、見学者にその両親、学用品の納入業者などでごった返している。
 でも待ち合わせの相手は、探すまでもなく見つかった。
 目立つ扮装だったから。非常に。
 黒いマントに黒スーツ、極端にカールした細い口ひげ、センター分けした髪は黒く長い。
「仁和さん、ここですよー、こーこー」
 手を振る彼は【メフィスト】、異世界と学園との橋渡し役をつとめる奇妙な紳士である。考えてみれば自分も黒ずくめでマントだ。服装がかかぶっているなと【仁和・貴人】は思った。
 メフィストと連れ立ち学園長室の戸をノックする。開いとるぞ、という【メメ・メメル】の声はか細いように思った。
「メメたん……」
 貴人の声はつまった。
 まるで病人のよう、というか完全に病人だ。
 大きな執務机は脇におしのけられ、かわりにその場所にはベッドがしつらえてあった。身を起こしたメメルは水色の入院着だが、サイドテーブルからとんがり帽子を取り上げて頭に乗せた。『今から学園長の仕事をする』という意思表示のように貴人には見えた。
 メメルは先日、職員会議中に倒れ数時間意識を失った。これまでにないことだったという。体調不良をおして、盟友【クラルテ・シーネフォス】の葬儀に出席したことがこたえたのかもしれない。頬は落ち、顔色も悪い。
 大丈夫ですかとか無理はしないでと言ったところでこの人は、『オレサマは元気いっぱいだぞ☆』などと返事するに決まっている。貴人はあえてそんな話題を避け、明るい声を出した。
「ちょうどいい機会だし、メメたんの御見舞がてらメフィストさんを連れてきたんです」
 演技したつもりだが声がうわずり、「ちょうど」のあたりは震えてしまったかもしれない。動揺を表にせぬようにつづける。
「初期化技術、それに、薔薇十字教団から取り入れられそうな新技術の説明をしたくて」
「同様ですー」
 メフィストのほうは平然としている。むしろ楽しそうだ。この余裕は見習いたいなと貴人は思いながらも、メフィストと手分けして異世界技術について語った。
 しめくくりに言う。
「強大な魔力を失うというデメリットのある初期化技術ですが、それ以上にメリットがあると思います。どうかメメたん、治療を受けてください」
 メメルはずっと窓の外に視線を向けていたがやがて、
「……何パーセントだ」
 ぽつりと言った。
「え?」
「その技術、成功率は何パーセントだ?」
 メフィストが答える。
「正直に言いますー。二〇パーセントくらい、かとー」
(低すぎる!)
 貴人のはじめて聞く数字だった。まさかそんなに低いとは。
「失敗したらオレサマは光の粒子になるのか?」
「それですめばまだー、幸運ですねー」
 メフィストはその先を言わないが貴人にも想像はつく。石化か不定形生物化か……悲惨な結末しか考えられない。
 この詐欺師め! と貴人はメフィストの襟首をつかみたくなった。これだけ期待させてそんな程度の成功率なのかと。
 でも貴人は暴挙には出なかった。わかっている。自分が勝手に期待していただけなのだ。史上例のない困難な治療だ。二割も成功可能性があるのなら賭けるほかない。
(けどオレ、嫌だよ……それって、十分の八の割合でメメたんを失うってことだろう……!)
 貴人の仮面の下の表情を,知っているかのようにメメルは薄く笑った。
「しょげるな貴人たん。それから、人が悪いぞメフィストたんよ。その二〇パーを八〇パーくらいに逆転する秘策をもって来たんだろう? 顔に書いてあるゾ」
「さすが-! 校長さんにはかないませんねー」
 メフィストはくすくす笑い、『秘策』を口にしたのである。
 内容を理解すると、貴人はメメルに身を乗り出した。
「メメたんには酷かもだけど、元気で生きていられる時間をオレたち……オレにくれないか?」
 欲張りが学園流というのなら、自分だって負けていないつもりだ。

 貴人たちにかわり学園長室を訪れたのは【タスク・ジム】だ。タスクにも連れがある。いそいそと、しかし遠慮がちに現れたのは【トーマス・マン】である。
「校長先生、今日はお願いがありまして」
 メメルはトーマスに目を移した。
「オレサマの絵でも残すのか?」
「ええ。新聞一面を飾る肖像画にしたいと思いまして……覚えておいでですか? 以前、先生が絵に描いてほしがっていたことを」
「もちよ」
 相好を崩し、メメルはとんがり帽子の位置を直した。
「オレサマの遺影になるやもしれん、トーマスたん、よろしく頼むぞ」
 メメルの口調はかろやかだが内容は重い。
「遺影……ですか?」
 トーマスは狼狽し視線をさまよわせた。
 以前のタスクであれば、そんな不吉な! と絶句したかもしれない。けれど今のタスクはちがう。弱気のメメルを励ますように言った。
「いいえ、『現在の』校長先生の肖像です。元気になってから『こんなときもあったなあ』と見てもらうための記録として」
(強引かもしれない)
 タスクもわかってはいる。衰えたメメルの姿にショックも受けていた。
(でも僕が暗くなってどうする!)
 強い意志をもってメメルにむきあう。
 そうか、とメメルは笑った。頬に紅色がさす。
「なら頼む。水着姿になってやってもいいぞ♪」
「お風邪を引かれては困りますのでそのままでっ」
 トーマスにデッサンを許しつつ、メメルは頬をゆるめた。
「ところでタスクたん」
「はい」
「いま学園に、タスクたんに会いたい人が来ておるぞ♪ なぁに、すぐわかるよ」
 それが誰なのか、メメルはあえて口にしなかった。

 遅めの昼食をとるべく訪れた学生食堂。列に並んでいるときにタスクは声をかけられた。
「来てもた」
 はにかみ笑いを浮かべる【マルティナ・シーネフォス】を見て跳び上がりそうになる。
「マルティナ様、どうしてここに!?」
 黒猫のルネサンス、こうしてトレーを持っていると学園生のように見える。しかし彼女は故クラルテ王の養女、リーベラントの公女なのである。国賓だ。その重みを、まったく感じさせない口調でマルティナは言う。
「ちょうど会えてよかったわあ」
 動転したタスクは、お久しぶりですというのがやっとだ。マルティナはかまわず言った。
「前にうち、タスクはんに頼んだよな? デートしてくれへん? って」
 一般的な尺度でいえばマルティナは抜群の美少女だ。黒目がちで大きな瞳には魅了されそうになる。性格だって明るくて楽しくて、ひがみとかねたみとかいうマイナスの感情とは無縁である。学園にとっても恩人だ。一度ほころびかけたリーベラントとフトゥールム・スクエアの関係修復に、マルティナが大きな貢献をしたこともまちがいないだろう。
(でも僕は――)
 彼女の好意に甘えたくない、とタスクは思った。デートという言葉をあえて聞き流してかく答える。
「またお目にかかれて光栄です。役不足かもしれませんが、今日は僕が学園を案内します」 

 タスクには、新入生に学園を案内した過去がある。
 その新入生は、直後に光へと戻ってしまった。
 マルティナを案内しながらタスクは、あのときのことを思い返している。
 学園はまるでテーマパークだ。お勧めスポットをめぐるタスクのエスコートに、マルティナはいちいち喜んだ。
「あれは練習用のダンジョンの入り口です。定期的に内部構造が変わるんですよ」
「すごいなあ。いっぺん入ってみたいわあ~」
 ここでマルティナはふと、思い出したように言った。
「ところで……タスクはんには彼女おるん?」
 唐突ながら直球だ! マルティナは伏し目がちになっている。
 いると回答するのは嘘だが、『その先』をふせぐ最良の回答だろう。マルティナを傷つけないためには一番のように思える。
 でも、タスクは偽りに逃げたくなかった。
「ずっと……そばで支えたい人ならいます」
「どんな人?」
 マルティナの目が、タスクを見つめている。
「尊敬してますが、同時に危なっかしさも感じる人……です」
 マルティナはしばらく無言だったがやがて、ため息をつくように言ったのである。
「うらやましいなあ」
「僕がですか?」
「ちゃうよ、その人のことがや」
 誰やの? と訊くような野暮をマルティナはしなかった。
 エリカさんです、と明かすような野暮をタスクはしなかった。



 えっ? と【エリカ・エルオンタリエ】は足を止めた。
 誰かに呼ばれたように思ったのだ。
 ふりむいても誰の姿もない。気のせいらしい。道行きを再開する。
 ほどなくしてエリカは、求めている人影を見出した。両手をメガホン状にして呼びかける。
「先生……【ユリ・ネオネ】先生!」
 聞こえているだろうか。
 なにせユリは氷水みたいな水に浮かんでいるのだから。かつて、ずっと暖かい季節に屋外お食事会が行われた湖である。そろそろ春なのに、風をさえぎるもののない湖畔はひどく寒い。
 湖岸のエリカに気づいたらしく、視線をよこすとユリは何か言った。
「聞こえません!」
 エリカは叫んだがユリは応じず、水棲動物のように潜水してしまった。
(呼ばれてる……のかしら?)
 意を決しエリカは服を脱ぎすて、下着姿で湖に飛びこんだ。

 焚き火が爆ぜた。
 エリカはマントにくるまり両手を火にあてている。唇は紫色、震えており歯の根があわない。
「無茶をして……私はウェットスーツを着ていたというのに」
 同じく火にあたりつつユリは肩をすくめていた。あのときユリは、『すぐ戻るから待ってて』と言ったそうだ。
「無茶は慣れっこですから……」
 それよりも、とエリカは気丈に告げた。
「個人面談、はじめてもらっていいですか?」
「なんでも訊いて」
「いいんですか? わたしが質問する側で」
「そのつもりで来たんでしょう?」
 ユリは目を閉じており表情は読めない。
 ご存じかと思いますが、とエリカは切り出した。話題は怪獣王女こと【ドーラ・ゴーリキ】のことだ。
「タフコーン山近くでドーラさんが目撃されたそうです。ドーラさんが最初に登場した場所です」
「そのようね」
「彼女はやはり火の霊玉を入手したのでしょう。ですが力を持てあまし暴走状態にあるようです。どう思われますか?」
「ありえることね。あの子……ドーラの心臓は、火の霊玉の代用品になりえるポテンシャルを秘めていたから。霊玉と共鳴したのかもしれない。でも、より悪い想像があるわ。ドーラは火の霊玉と一体化したのかもしれない」
「それって!」
 ユリはうなずいた。
「【テジ・トロング】と同じね。土の霊玉はあの子と一体化していた」
「テジさんはもともと、土の霊玉の要素を持って生まれていました。後天的にそうなることもありえるのですか?」
「ないとは言い切れないわ。【ゴドワルド・ゴドリー】先生や【シトリ・イエライ】先生も同じ見解よ。だとしたら暴走状態の説明がつくと思わない? 後天性だからコントロールがきかないのね」
 生ける霊玉と化したドーラ――彼女の心臓を奪うべく魔王軍は動いていることだろう。争奪戦はとうにはじまっているのだ。
「ドーラさんを無事に保護し、暴走の解除をこころみなくては……! 個人的には彼女に、トラブルの謝罪もしたいと思っています」
 エリカはいてもたってもいられない気持ちだったが、足取りをつかめない以上どうしようもないと理解もしていた。
「わかってる。私たちも捜索はつづけているわ。情報が入ればすぐに知らせるから」
 わたしは、とエリカは言った。震えはおさまっている。
「ドーラさんの、ユリ先生への憎しみを拭いたいと思っています。お父さんが魔族を救いたかったように、ユリ先生もわたしたちの世界を守りたかっただけなのだから」
 ユリは黙っている。
「何かを得るためには、大きな代償を必要とすることもあるでしょう。魔族も、ドーラさんのお父さんも、ドーラさんも、自らの幸福を願うのは当然です。だから……だから彼らを絶対悪として断じ、排除するなどということはわたしにはできません」
 ユリは音もなく立ち上がった。
「元旦のときも思ったけど――エリカさん、貴方、成長したわね。ゆるがぬ信念を築き上げている」
「わたし自身にはわかりませんが……だとすればそれは、先生をはじめとするフトゥールム・スクエアの教育のたまものです」
「嬉しい言葉ね。学園長にスカウトされたとき、私に教師なんて務まるのか自信がなかったけど……それなりにできていたみたい」
 と言うユリの口元には笑みがあった。
「そろそろ戻りましょうか?」



 授業のない空き教室、真昼。
 机をはさんで【クロス・アガツマ】は、【コルネ・ワルフルド】と向かいあっている。
(……こうしていざ座ってみると、思ったよりも近いな)
 手を伸ばせばすぐにでも、コルネの頬にふれられるだろう。
 あとは首を伸ばすだけでいい、ほんの少し。
 それだけでクロスの唇はきっと、コルネの唇に重なるはずだ。
「クロスくん、変なこと考えてない?」
 さすがは、と内心クロスは苦笑いしながらもそれを隠して、
「まさか」
 と手を振った。いやそれよりも――とっさに思いつく。
「先生、『変なこと』とはどんなことですか?」
「いや、そ……それは、変なことだよ。いわばけしからんこと!」
「だからどのように『けしからん』のです? 具体的にお願いしますよ」
 我ながら意地悪だなと思いつつ、クロスは唇がつりあがっていることを自覚している。
「口で説明するのが難しければ、コルネ先生、ひとつ俺に実演していただけませんか? 不肖クロス・アガツマ、逃げも隠れもしませんので」
 首をのばす。顔も近づける。ところが、
「もうっ!」
 コルネはクロスを突き飛ばそうとしたが、ふわりとした感覚に両手を包まれあわてて身をひいた。
「先生をからかうのはいい加減にしなさーい! それよりも面談でしょ、面談はじめるよっ!」
「残念」
 あまりふざけてもいられないだろう。クロスは居ずまいを正した。
 コホンとコルネは空咳し、手元の資料に目を落とす。
「じゃあまず名前とプロフィールをどうぞ☆」
「クロス・アガツマ、所属は賢者・導師コースで……」
 以下すべて立て板に水、つらつらとクロスは述べるもコルネからの制止がかかった。
「待って、それじゃなくて」
「と言いますと?」
「わかってる限りでいいの。本当のプロフィールをお願い。学園長から聞いたわ。セントリアでのこと」
 コルネはすでに『照れる女の子』ではなく、『教師』としての顔になっている。まなざしは、真剣だった。
 観念したようにクロスは息をついた。
「そうです。さきほどの名前も経歴も、いずれも俺が作り、人を欺いてきたものです。魔王との戦いも迫っている。もうそろそろ……打ち明けるにいい頃合いとも思っています」
「気をつけてね。リバイバルという種族は、魔法力だけでこの世にとどまっている存在だから。すべての記憶を取り戻すことは死を受け入れること……消滅につながる」
「あるいは、成仏といったほうがいいかもしれませんね」
「よしてよ。笑えない」
「すいません」
 クロスの口から自然に謝罪の言葉が出た。コルネに悲しみを与えたとわかったから。
「改めて自己紹介しましょう」
 クロスの口調が変じた。ある種の薬品のように、グラデーションをかけながら声色も調律されていく。
「私は【マガツ・クローズベルク】、賢者だ。……いや、賢者『だった』というほうが正確か。禁忌に手を染め、当時の社会から追放された身なのだから」
「禁忌?」
 コルネも、詳細までは聞かされてないらしい。
「ヘラルドという術を研究していたんだ。因果を操作し、現実をねじ曲げるタブーだ」
「たとえば世界を、アタシとキミが出会わなかったという流れにしてしまうとか?」
「もしくは死んだ人間の死を、別の事実に置き換えるとか」
 クロスは胸に痛みを覚え口ごもる。
「どうしたの? まさか……!」
「ちがう。ちがいます。記憶がすべて戻ったわけじゃない。消えませんよ、まだ俺は。最近死んだ人間――【マグダ・マヌエーラ】を思い出しただけで」
「気の毒なことになったね、彼女」
「マグダには感謝しています」
 言葉づかいがクロスに復している。
「思うんです。あの日、タラント城塞にもっと早くたどり着けていたならあるいは……と」
 いや、とクロスは首を振った。そっとつぶやく。
「いくら考えても、詮無きことか」
 マグダはリーベラントに書き置きを残していた。つまり遺書だ。最初から死を覚悟していたのだろう。
 葬儀は行わないでほしい、墓も不要だとマグダは書いていた。
 主君や仲間たちへの個別メッセージも記されていた。
 ただ一言、誰に当てたのか不明のメッセージもあった。
『悲しまないでね、イケメンさん』
 クロスだけはその意味を知っている。



 ノッカーに手をかけるより前に、ドアのほうが内側に開いた。
「ちょっと体調が戻ってきたな☆ そのまま入ってくれい」
 学園長室、メメルの声がする。
「では、遠慮なく」
 と告げて【シキア・エラルド】――とりあえず地の文ではこう呼ぶことにしよう――は学園長室の緋毛氈(ひもうせん)を踏んだ。
「オレサマはこの通りだ。寝ぼすけみたいですまん」
 シキアの目に映るメメルは、ベッドから身を起こして片手をあげている。
「楽にしててよ、先生は病人なんだから。今日の体調はどう?」
「とりあえず今はオーケーといったところだ。おせっかいな生徒が多いせいで、おちおち死んでもおれん♪」
 でも、とメメルはいぶかしむ。
「シキアたんこそどうなのだ? ……いや、別の名で呼んだほうがいいのか」
「呼び名? どっちでもいいよ」
 シキアは髪をかきあげた。こういう仕草のひとつひとつに、意識せずとも匂いたつような色気のにじむ彼だった。
「体調の話だったね? 俺は……うん、体は大丈夫。喉のケアも怠ってないし。のど飴いる?」
「おう」
 シキアがとりだした虹色の包み紙を、メメルは受け取って中身を口にした。
 清涼な息を吐きながら言う。
「ハッカか」
「うん。薬草を練り込んでいるからちょっと苦いよ」
「なぁに良薬口に苦しと……いやこれマジ苦いな! しかし気に入った☆」
 メメルが笑い出す。シキアも笑った。しばらくそうやって笑い合っていたが、
「それで」
 ポツリとシキアが言った。
「……時間の経つのは早いね。今回は俺が会いにきたけど」
 シキアはやはり笑顔だが、現時点のそれは苦笑いに近い。
「前の面談は三年ほど前だったか」
 メメルも感慨深げだ。光陰矢のごとし。二千年を超える年齢のメメルであっても、感じる時間の長さは常人と同じである。
 昨日のことのように、とまで書けば嘘になろう。でもシキアはあの日突然、第五学舎の空き教室までたずねてきたメメルとのやりとりを細部までよく覚えている。一心不乱にダンスの練習をしていたシキアは、メメルの拍手で我に返ったのだった。
『チミは誰だい? 自分ではどう思う?』
 面談の終盤、メメルが口にした言葉だ。
『……俺はシキアです』
 わずかな逡巡を挟んで彼はこたえた。
『音楽が好きな、ただの人間ですよ』
 あのときから俺も変わった、と思う。
(良いか悪いかは、わからないけど)
 今、同じ質問をメメルからされたら、同じ回答ができるかはわからない。このところ彼のなかでは『オズマ』と『シキア』の境界がじわじわと薄らぎつつあり、現在のメメルとの会話に限れば、大半はオズマのほうが主導権を握っている状態だった。ざっくばらんな口調になっているのもそのためだ。
 でもシキアの中の『シキア』は、『オズマ』と争おうとはしていなかった。少なくともこのひとときは。
(お互い見ている方向性は現在は一緒なので、まだ大丈夫……だよな?)
 力を振るうことを今さら止めるわけにはいかない、という諦念に似た決意もあった。現実逃避ではない。現実を認め、引き受けるという覚悟だ。
「先生、はっきりと言うよ」
「なんでも言ってくれ。でもほめ言葉がいいなぁ」
 カコッ、とメメルの口中でハッカ飴の転がる音がした。
 残念ながらシキアには、リクエスト通りのものを与える気はなかった。
「俺はやっぱり『犠牲』っていうのは嫌いだよ」
 のど飴と同じだ。甘いだけの言葉に薬効はない。
「その人がいなくなったら悲しいというか、そういう悲しみから生まれる悪意は『ある』し。なので俺は色んな人に怒ってます。一人で抱えこんでた先生にも、ちょこっとだけ怒ってます。先生、もうちょっと俺たちを信じてよ。俺たちも頑張れるんだ。先生が全部背負う必要はないでしょう?」
 話し手はオズマか、シキアか。
 交互に顔を出しているようだが、語る内容にはブレがない。
「……理想と現実はちがう、と訳知り顔の大人なら言いそうだな」
「先生」
「オイオイ、オレサマがそんな大人であってたまるか♪ おかげで決心がついたわい」
 近いうちに初期化技術を受けるつもりだ、とメメルは言った。
 応援するよ、とシキアは言った。
「先生の選択を」



 ポットから、【ベイキ・ミューズフェス】は茶をそそぐ。
 茶うけはシナモンを利かせたアップルパイだ。食器は青磁に統一している。
 前(さきの)リーベラント代王【アントニオ・シーネフォス】の表情はやわらいだ。
「馳走になる」
 線が細く表情には陰があるものの、涼しげな眼をした青年だ。かつて、対魔王陣営の盟主たらんとしてフトゥールム・スクエアに敵対宣言を出し、心の弱みにつけこまれ操られていたとはいえ、リーベラントの守旧勢力を糾合して内乱を目論んだ人物とは、にわかには信じがたいものがあった。すっかり毒気が抜け、水煮にした白いアスパラガスのようである。
 本日アントニオは父王クラルテの葬儀参列の返礼と、メメルの見舞いのため学園を訪れていたのだった。学園長室から出た彼に、ベイキは声をかけ私室へ招待した。
 ベイキ自身、カップから茶を飲み、焼き菓子を一口した。
「どうぞ。毒は入っていません」
「かたじけないが無用なことだ。左様な用心は現在の余……いや、私には必要ない」
 アントニオは菓子を口に運んだ。すばらしい、と言う。
 ベイキは頭を下げた。
「まずは申し上げたく。暴挙を止めるためとはいえ、物資に火をかけ城塞を混乱の坩堝(るつぼ)としたことや、本で殴ったことをお詫びします。城内を鎮めて頂いたことには感謝を」
「感謝したいのは私だ。貴公らがいなければ、混乱の坩堝になっていたのはリーベラント全土だったやもしれぬ」
 アントニオはしおらしい。過去の経緯からイキり散らかしていたイメージがあるが、本来はこういう人間なのかもしれない。
 貴公のことを知りたい、と前代王は言った。
「わが弟【ミゲル・シーネフォス】が求婚したと聞いたが」
 アントニオは楽しげだが、ベイキは冷や水を浴びせる気持ちで言う。
「その話ですが」
 不釣り合いに思いますとベイキは言い、自身の半生を包み隠さず明かした。
 両手で足りぬほどの子を産んできたこと、幾度も悲劇に見舞われてきたことも。
「まだ生きてる子も、わかってる限りでふたりはいます」
 アントニオも驚いたようで、黙ってベイキの言葉を待った。
「呪いはとけています。ですがその影響か、勇者や賢者といった英雄の子しか宿せない身体になったと学園の医者に言われました。私は、ただの孕(はら)み腹でしかないのです――勇者の。子の成せない身では、あの方のお側に仕えるのは難しく……」
 意外なことが起こった。アントニオが笑ったのである。
「ミューズフェス殿、むしろその話は幸いに思ったぞ」
「どういう意味でしょう?」
「貴公があれを英雄になるように鍛えてくれればいいではないか」
 それがいいそうしよう、となにやら独り合点しているアントニオである。なんという楽天性か。妹マルティナの影響かもしれない。
 部屋のドアにノックの音が響いた。
「失礼する」
 姿を見せたのはなんと当のミゲルだ。息せききって、
「兄上、急用とは? 宮中で話せば済むのにフトゥールム・スクエアに呼びつけて……あっ」
 ミゲルは絶句した。ここがベイキの部屋だと気がついたらしい。
「貴公も聞いておくべきかと思ってな」
 申し訳ない、とアントニオはベイキに頭を下げて言った。
「もう一度、さきの話をお願いしたい」
 威勢が良かったのは最初だけだ。ベイキの話が終わるころにはミゲルはうなだれている。 
(ミゲルさん、置いてけぼりになった子犬みたいな顔して)
 私の経歴に気後れしたのでしょうとベイキは思った。
「恋は熱病のようなもの。覚めたとしても……」
 と言いかけたベイキに、否とミゲルは首をふる。
「ベイキ殿、話を聞いてますます、私の気持ちは高まった。あなたを幸せにしたい。ともに歩みたい。しかし私に勇者の資格があるか、そう自問すると……自信がない。王冠への重圧も感じている」
 ベイキは微笑した。
「しっかりしてくださいな。急な戴冠となり重荷を感じてるでしょうが……あのとき学食の裏での元気はどこに行ったんです? 卒業して、まずは聖職を目指す者としてでよろしければ、お悩みくらいはお聞きしますよ」
 いい臣下もいらっしゃるとさらに言い、宝石のような言葉を添えた。
「そのうえで望まれるのなら、先のことも、ふたりで考えましょう。答えを急いでもいいことはありませんから。ねえ、陛下?」
 ミゲルの顔に光がさした。



 あざやかな緋は、木蓮(モクレン)の花の色。
 白木蓮もある。緋と重なり桃色の光をなげかける。
 学園の庭、景観のいい芝生のうえに敷物をひろげた。
「桜はまだですが、木蓮の花は見ごろですね」
 タスクは重箱をあけ色とりどりの料理をふるまう。唐揚げポテサラ玉子焼き、素朴で嬉しい組み合わせだ。
 彼の呼びかけで、ちょっと早いお花見が開催されたのである。
「ええねえ、あの花、リーベラントにはないわぁ」
 マルティナが敷物に正座している。エリカの隣だ。
「暖かくなったわね」
 ちょっと前まで寒中水泳していたことは明かさず、エリカは小皿をユリに手渡した。
「メメル先生が来られなかったことだけが残念だね。でも……」
 と言うのはシキアだ。貴人が言葉を継ぐ。
「桜が散るまでには、メメたんも元気になっているはず。そしたらまた一緒に花見だ!」
 貴人の発言は皆にとっての希望だ。
「そんな手段が……」
 メフィストの話にクロスはしきりとうなずいている。貴人の言葉は実現するかもしれない。
「あれは?」
 クロスが最初に気がついた。ベイキがやってくる。女王のように、ベイキは左右に王族を引き連れていた。
「お兄はん? ふたりとも!?」
 マルティナが素っ頓狂な声をあげた。



課題評価
課題経験:20
課題報酬:720
春遠からじ~個人面談ファイナルシーズン
執筆:桂木京介 GM


《春遠からじ~個人面談ファイナルシーズン》 会議室 MeetingRoom

コルネ・ワルフルド
課題に関する意見交換は、ここでできるよ!
まずは挨拶をして、一緒に課題に挑戦する仲間とコミュニケーションを取るのがオススメだよ!
課題のやり方は1つじゃないから、互いの意見を尊重しつつ、達成できるように頑張ってみてね!

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 1) 2022-03-01 00:19:16
賢者・導師コースのエリカ・エルオンタリエよ。よろしくね。

《勇者のライセンサー》 フィリン・スタンテッド (No 2) 2022-03-03 22:34:13
勇者・英雄コースのフィリンよ、よろしく。
事件の後だしリーベラント王国に顔出ししておきたいけど、ドクトラ・シュバルツ…もう一度会っておくべきかな。うーん

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 3) 2022-03-03 23:47:56
ご挨拶が遅れ申し訳ありません。教祖・聖職コースのベイキ・ミューズフェスです。よろしくお願いします。

ちょいと、アントンさんのところに行ってみようかなと。
そのまま、ミゲルさんと鉢合わせなんてことはないでしょうし。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 4) 2022-03-03 23:49:22
遅刻帰国~!
勇者・英雄コースのタスク・ジムです。よろしくお願いいたします!

今回は個人MEN-DANG!ということで、やりたいこといっぱいです!

今のところ、校長先生のお見舞いか、マルティナ様とご飯をご一緒するか、いずれかもしくはいずれも!?を検討中です!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 5) 2022-03-04 00:04:25
個人面談なので、会議する内容は特には無いのかなあ、とは思ったのですが…

桂木GM様の最初の個人面談エピソード
【ドキドキ☆春の個人面談っ!】のオマージュとして、
面談の日の夜に花見で打ち上げ、というのウィッシュに書いてみたいと思います!

もしよかったら、ご参加いただけると嬉しいです。
文字数コストは最少で「花見参加」の4文字から、と、お得ですよ!(笑)

《熱華の麗鳥》 シキア・エラルド (No 6) 2022-03-04 21:08:22
芸能・芸術コースのシキアです、よろしくね

俺、特にこの人!ってのもいないし
心配だからメメル先生のお見舞いにいくつもり

(お花見、と聞いて思わず笑みがこぼれ)
そういえばお花見したね。そっかぁ、もうそんなに時間経ったんだなぁ…

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 7) 2022-03-05 06:33:59
シキアさん、本当に、随分経ちましたね…
色んなことがありましたね…

シキアさんの演奏、あの時のように、また聞きたいです!

《終わりなき守歌を》 ベイキ・ミューズフェス (No 8) 2022-03-05 21:07:01
色々と盛り込んだら、結構すごいことに……もし、お花見に合流できたら、豪華ゲストがおともかもしれません。
まあ、さすがにそこまで都合よくはならないかもですが。

《メメルの婚約者☆》 仁和・貴人 (No 9) 2022-03-05 22:05:06
魔王・覇王コースの仁和だ。
御見舞いという名の面談をしようと思う。

あぁ、花見には参加させてもらうからな。

《グラヌーゼの羽翼》 エリカ・エルオンタリエ (No 10) 2022-03-05 22:46:41
わたしはユリ先生と、ドーラさんの捜索と救助について話し合おうと思うわ。

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 11) 2022-03-05 22:50:38
今回も難産でしたが、何とか書けました!
結局、校長先生お見舞いとマルティナ様のエスコートの2本立て!
欲張り無双らしく、欲張ってみましたよ!

やはり校長先生は大人気ですが、
こちらは被っても問題ないですし、同行も歓迎です。
我らが担当教官(つまりGM様)がいい感じに演出してくださるでしょう☆

僕のお見舞いの内容は、以前のエピソードを踏まえたものを考えました。
喜んでもらえると良いのですが・・・

ベイキさん、豪華ゲストさんですか!?楽しみです!
貴人さん、ご参加ありがとうございます。嬉しいです!

《マルティナの恋人》 タスク・ジム (No 12) 2022-03-05 23:44:15
皆さん、それぞれに検討されていることが、どうかうまくいきますように。
そして、それぞれどんなリザルトになるのか、すごく楽しみです!

今回もご一緒いただきありがとうございました!