;



くそざこあざらし GM 

「くそざこあざらし」と申します。

ファンタジーと血生臭いのと動物が好きなおっさんです。

迅速な対応を心がけて活動しております。
皆さまどうか、よろしくお願いいたします。

担当NPC


メッセージ


作品一覧


喋る(?)スライムを捕獲せよ (ショート)
くそざこあざらし GM
 学園内のとある一角、暗くて寒い寒い森の中。  カラスの鳴き声に怯えながら、チーズのようなコケの匂いにえずきながら、ヒューマンの男は森を進んでいた。  男は森に来たかったわけではなく、ただ近道をしようと思っただけだ。  地図を見れば、その気味の悪い場所に10分ほど耐えるだけで、30分以上早く目的地にたどり着ける。森と言っても、森の切れ端のような小ささ。真っ直ぐ進めば、迷うことはない。  そう判断した5分前の自分を、男はぶん殴りたかった。 「引き返す……いや、ここまで来たら、進むのも戻るのも同じだし……。でも、これ以上は……」  迷うような男の足取りが、足元の小枝を何度も踏みつけ、パキパキという軽い音を鳴らす。  男が進むのをためらっていたのは、その先に魔物が出るかもしれないとか、そういうことではない。  ただただ単純に、『道』が怖いのだ。  男が進もうとしている道には、背のように高いゼンマイのような植物がこれでもかと生えており、男を手招きするように揺れている。  コケの匂いにえずきながら、パキパキと音を立てながら、男はしばし考え、引き返すことに決めた。  これ以上進む勇気は、男にはなかったのだ。  今しがた通ってきた道だ、引き返すだけなら、何も問題はない。  そんな男の判断は間違っていなかったが。  ただ、男は時間をかけすぎた。  迷うような男の足取りが、小枝を踏みしめる音が、客を引き寄せてしまっていた。  引き返すために振り返った男の目の前にいたのは、1匹の――。 「やぁ! ぼくは『わるいスライム』だよ!」  学園の職員室。  弁当を食っていた男教師は『その話』を聞いて、ポカンとした表情で言った。 「『喋るスライム』が出たぁ?」  その話を切り出したもう1人の男教師は、小さく頷いた。 「ええ。東の森の方で、外から来た客人が目撃されたようです。幸い、怪我はなかったようですが……ひどく動揺しているらしく。スライムが『僕は悪いスライムだ』とか言ってたとかなんとか」 「喋るスライムなんているわけねーだろ。しかもなんで、自分から『悪い』とか言ってんだよ」 「僕もそう思いますし、悪いスライムなら、さっさと倒してしまえばと思うんですが……。どこで聞いたのやら、学園長が興味津々でして」 「あー……それ以上は聞きたくない」 「『捕獲せよ』とのことです」 「……違うな。『学生に捕獲させろ』だろ?」 「流石は先輩。……僕の方で、依頼として教室に張り出すことになりました。あの森に関して何か注意事項があれば、ご教示いただきたいのですが」 「ねぇよ。真っ直ぐ進めばどこからでもすぐ出られっし、魔物も出なっ……いや、出たのか。スライムがいるってことは……。『スライムナイト』にだけ気をつけるよう言っとけ。もしかしたら出るかもしれねぇからな。変な植物に化けてる可能性もある」 「ありがとうございます」  話を切り出した男教師はぺこりと頭を下げて、職員室から出て行く。  その姿を見送りながら、もう1人の男教師は思い出したかのように呟いた。 「……そういや、あそこには変な草がやたらと生えてたな。……まぁ大丈夫か。どうせスライムだし」
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-02-13
完成 2019-03-05
第九校舎ノ闇ト戦ウ者 (ショート)
くそざこあざらし GM
 魔法学園フトゥールム・スクエアの『第二』から『第九』までの名がついた、大きな八つの校舎。それらはすべてクラブ活動のために存在しており、運動系や文科系や戦闘系や魔法系など、クラブ活動の種類によって割り当てられる校舎は異なる。  しかし、厳密に区分が存在するわけではない。例えば『魔法を使う球技』であれば、運動系にも魔法系にも割り当てることが可能だ。  その八つの校舎の内、最も『異端』と呼ぶべきは『第九校舎』。  第九校舎は『どの系統にも属さないクラブ活動』が割り当てられる校舎である。  七つの校舎でほとんどの系統をまかなっておきながら、それでもなお、どの系統にも割り当てることの出来ないクラブ活動――。  把握することが出来ないほど、数多のクラブ活動が存在する魔法学園には、誰も想像だにしないクラブ活動が存在する。  だからそれは、一部の生徒しか知らない。  第九校舎に存在する、ひとつの『闇』の存在について。  第九校舎のとある一室の扉の前。  ひとりの男子生徒が扉を叩くと、中から声が聞こえた。 「合言葉は?」 「学園長は合法ロリ」 「よし、入れ」  扉が開かれると、そこには闇が広がっていた。  男子生徒は大きな革袋を握りしめながら、息を飲んで、ゆっくりと闇に足を踏み入れる。  男子生徒が数歩進むと、扉が閉じて、闇の中に炎が現れた。  その炎は聖火台のような、小さな台からあふれている。  そして、炎の前では男がイスに座っていた。 「また君か。諦めが悪いというか、なんというか、懲りない男だな。君は」  男はそう言って、男子生徒をあざ笑う。  男子生徒はギュッと、革袋を握る手に力を込めた。 「お前らのような存在を、俺は認めるわけにはいかない」 「ふむ……。君の使命とやらか? 君はよほど、自分の生まれを気にしているようだ。そんなもの、焼き過ぎた肉ほどの価値もないというのに」 「黙れ! 俺は焼肉屋の息子として! お前らの存在を認めないぞ!」 「御託はいらない。食材は持ってきたのだろう? ならば始めよう。『闇焼肉』を」  炎があふれる小さな台の上に、少し大きめの鉄板が乗せられる。  ここは『闇』のクラブのひとつ。『闇焼肉クラブ』の部室だ。  男子生徒は焼肉屋の息子として、『闇焼肉』などというふざけた存在を認めることが出来ず、こうして何度も闇焼肉クラブの部長である『闇焼肉マスター』との戦いに挑んでいる。 「ルールは覚えているか? 焼肉屋の息子よ」 「お互いに用意した食材を焼き合い、それを相手に食べさせる。タレは好きなものを使って良い。『相手の食材を食べきれず、先にギブアップした方が負け』だろ?」 「食べれないものを焼くのはナシだぞ?」 「分かってる! それはむしろ俺の台詞だ!」  男子生徒は革袋からぶ厚いステーキを取り出し、それを鉄板の上に置いた。  それに対して闇焼肉マスターは、すぐさま『平べったい何か』を鉄板に置き返す。  もうすでに、闇焼肉は始まっているのだ。 (くそっ……。相変わらず暗くて、相手が何を焼いてるのかよく分からないぜ!)  闇焼肉はその名に恥じぬよう、真っ暗で、鉄板の上がかなり見え辛くなっている。  食材の形は辛うじて分かるが、何を焼いているのか、どれぐらい焼けているのか、それらを見分けるのは、よほど目が良くなければ不可能だろう。 「さて、そろそろ頂こうか」 「なに……っ!? まだ一分も経ってないぞ!?」 「君の用意する肉は良い肉だからな。……くくっ。聞くまでもないが、覚えているだろうな? 闇焼肉では相手が食い始めると同時に、自分も食わねばならないというルールを」 (しまっ……! わ、忘れてた……っ!)  闇焼肉マスターはぶ厚いステーキにフォークを伸ばして、タレもつけずに思い切り噛み千切って、『うまっ』と呟く。  男子生徒は平べったい何かにフォークを伸ばして、甘辛いタレをつけて、それを口に運んだ。 「ぼぇっ! 甘っ!? 何焼いたんだよ!?」 「くはははっ! 『スライスしたバナナ』だっ! バカめ! 匂いで気づかなかったのか!」 「バナナ……だと!? 貴様……俺が甘いものが苦手だと知っていて……っ! まさか……バナナがトロトロになるのを避けるために速攻を!?」 「その通りだ。トロトロになるとフォークで刺せなくなるからな」 「このっ……邪道が!」 「おっと……その台詞は聞き捨てならないな」 「な……に……!?」 「このステーキ……食感や味は牛に近いが……私の舌は誤魔化せん。……魔物の肉だな、これは」 「そ……それは……!」 「貴様は以前! 一緒に昼飯を食っていた時に言っていたな! 『俺は焼肉で牛肉しか焼かない』と! 今まではその通り、牛肉しか持ってこなかったようだが……」 「や、やめろ! それ以上は!」 「私に勝つために! 闇に落ちたな! 焼肉屋の息子よ!」 「あぁ……ああぁぁぁ! うわぁぁぁ!」  男子生徒はイスから転げ落ち、闇の中に消えていく。  魔物の肉であることを言い当てられて、心が折れてしまった男子生徒は、もう戦うことが出来なかった。  あと、男子生徒はバナナが普通に嫌いだった。  闇焼肉マスターはステーキをむしゃむしゃと食べながら、闇に溶け込んでいたクラブの部員に命令する。 「その負け犬を外に放り出しておけ」 「はい。……本当に放り出して良いんですか? 部長」 「今回からそういうルールに変わった。あっ、お前忘れんなよ。次に俺が勝ったら、お前んちの焼肉奢ってもらうからな。部員全員分」 「えっ……俺そんなに負けてたっけ?」 「甘いものに弱過ぎんだよ、お前は」 「……い、嫌だ。部員全員分は嫌だ!」 「そういう約束だっただろ? まぁ頑張れよ。次に俺が負けたら、逆に奢ってやるからさ」  男子生徒は闇焼肉クラブの部員に肩をつかまれて、無理やり立ち上がらせられる。 「無理だ! せめてバナナなしにしてくれ!」 「んん……私も相応の闇を背負っているのだ、そういうわけにはいかんな」 「いやほんと! 演技とかじゃなくてマジで! バナナだけは! バナナだけは!」 「部長」 「……さっさとそいつを連れて行け」  男子生徒は闇焼肉クラブの部員に引きずられて、第九校舎の外に放り出された。  男子生徒は泣いていた。  闇焼肉クラブの部員は20人以上いる。全員に焼肉を奢れば、かなりの出費がかかってしまうのだ。 「ちくしょう……ちくしょう……。何でこんなわけ分かんねぇクラブに……何でそんなに部員がいるんだよ……!」  その第九校舎の前で悔しがっていた男子生徒の姿を、君達は発見する。  君達が思わず『大丈夫ですか?』と手を差し伸べると、男子生徒は顔を上げて……。  そして、男子生徒は閃いた。  男子生徒は君達の手を掴みながら、懇願する。 「頼む! 俺の代わりに『闇焼肉マスター』を倒してくれ! 焼肉奢るから!」
参加人数
8 / 8 名
公開 2019-03-07
完成 2019-03-21
暗号……解いてほしいなぁ (ショート)
くそざこあざらし GM
 新入生諸君。  これは諸君らより少しばかり早く、この摩訶不思議な学園に足を踏み入れた私達からの挑戦状である。  ※追記。と見せかけた『部活紹介』だから気軽に参加してね!  ヒドロエルカリアの名の下に、満月が照らす夜、私達は「3→3」「7→3」「8←6」「1←3」「2→4」にて君達を待つ。  言うまでもないかもしれないが、上記は暗号である。  繰り返すが、これは諸君らへの挑戦状である。当然ながら、ヒントなど存在しない。  ※追記。ヒントだけど、数字の組み合わせが文字になってるよ! 「マ」は「1→4」か「6→3」。「ス」は「5→5」か「5←1」。「カ」は「6←3」みたいな感じで!  私達は諸君らを見ている。諸君らが明確な理由を持って『答え』に足を踏み入れれば、私達は諸君らの前に現れるだろう。  そして見事、現れた私達を打ち倒すことが出来れば、私達は諸君らに報酬を与えるつもりだ。  ※追記。参加してくれた新入生のみんなには、ちょっとだけ報酬をあげちゃうよ! だからぜったい! 参加してね!  私達は3名。剣を得意とする私。弓を得意とするヒューマン。そして、水の魔法を得意とするローレライだ。私達と諸君らのどちらか、最後まで立っていた方が勝者となる。  ※追記。職員室に行って『暗号クラブのイベントに参加します』って言ってくれれば、怪我をしないやわらかい武器と、紙風船の付いた帽子を貸してもらえるから、それを持って来てね! その紙風船の帽子を被って戦って、自分の紙風船を割られる前に、相手の……私達の紙風船を割れば勝ちだよ!  それでは、諸君らの健闘を祈る。  《主催》暗号クラブ  《作成》暗号クラブ部長:【クロス・ワード】  《校正・校閲》暗号クラブ:【セキュア・カルティエ】
参加人数
7 / 8 名
公開 2019-02-11
完成 2019-02-23
ドールズ・フェスティバル (ショート)
くそざこあざらし GM
 ――ひな祭り。  それはとある国の女子の健やかな成長を祈る祭りである。  そのひな祭りについて、異国の者が知らないのは当然として、とある国の者であっても、深く理解している者は少ないだろう  しかしながら――あの人形の存在だけは知っている者も多いはずだ。 「あっ、『ひな人形』だ」  魔法学園フトゥールム・スクエアの女子寮レイアーニ。  複数あるレイアーニ寮のとある寮で、ヒューマンの女生徒が共用スペースに置かれていたひな人形を指差してそう言った。  それを聞いて、女生徒の横にいたドラゴニアの少女は『ふむ』と声を漏らしてから続ける。 「これが……ひな人形というやつか。初めて見たが……聞いていたより小さいな。人形の数も少ないような気がする」 「これは3段飾りだからねぇ。本当は人形も……えーっと……何体だったっけなぁ。まぁここには10体しかいないけど、もうちょっと大きいやつだと、もっといるんだよ!」 「……曖昧だな。お前の国の風習じゃないのか?」 「しょうがないじゃん! 私だってあんまり詳しくないし!」  女生徒の言うとおり、女生徒の目の前にある赤いひな壇は3段飾りであり、小道具よりも人形を重視するタイプなのか、みっちりと10体の人形が並べられていた。  1番下の段には『五人囃子(ごにんばやし)』の5体。  真ん中の段には『三人官女(さんにんかんじょ)』の3体。  そして1番上には『内裏雛(だいりびな)』の2体。  その並びを見て、ドラゴニアの少女はもう1度『ふむ』と声を漏らす。 「こいつらが1番偉いのか」  そして躊躇うことなく、ドラゴニアの少女は内裏雛の1体を片手で掴んで、ひな壇の上から持ち上げた。 「……えっ!? 何してんの!?」 「ん? 1番上にいたから1番偉いと思ったんだが、違ったか?」 「そうだけど! そうじゃなくて! 何で掴んでんの!?」 「ん? 近くで……見るためだが。どうかしたのか?」 「そこ掴むところじゃないし! 雑だし!」  内裏雛のお殿様の方、『男雛(おびな)』の冠から伸びる角のようなものを、ドラゴニアの少女は握りしめていた。  女生徒はひな祭りについてあまり詳しくなかったが、男雛の冠のそれが、人形を持つためのモノではないことぐらいは分かる。  それに何やら、女生徒は嫌な予感がしていた。  ひな人形は雑に扱って良いモノではない。そう刷り込まれていた女生徒は、タタリのようなモノに怯えていたのだ。  男雛を持つドラゴニアの少女を、他のひな人形達がにらみつけているように、女生徒には見えなくもない。  ――というか、にらみつけていた。 「ひぃっ!?」  叫び声を上げて、女生徒は思わずその場にへたり込む。  先ほどまで正面を見ていた五人囃子と三人官女が、首を回してドラゴニアの少女を見ていた。 「おい、どうしたっ……うおぉっ!? なんだこれ!?」  驚いて思わず、ドラゴニアの少女は男雛を放り投げてしまう。  その様子を見て、五人囃子と三人官女、合わせて8体の人形が、『カカカカカカ』と一斉に笑い声を上げる。  そして、三人官女の1体が『喋った』。 「龍の子よ、礼を言う。彼奴(きゃつ)が消えた今、我らは自由の身となった」 「おい! なんか喋ってるぞ! そういう機能があるのか!?」 「あるわけないじゃん!」 「けど喋ってるぞ!?」 「しかし、だ。童(わらし)らよ。そちらがこの城の主であるならば、そちらを生かしておくわけにはいかぬ。この城はたった今より、我らのものであるからして。生かしておくわけには――」 「って! なんかやっばいよ! 早くさっきのお殿様を――」  三人官女の台詞から何かに気づいた女生徒が、お殿様を元の位置に戻すため、ドラゴニアの少女にそれを伝えようとする。  その時、『ポン』という軽い音が辺りに響いた。 「はっ……ぐっ……!? から……だ……がっ!?」 「不味い……これは……ッ!」  女生徒達の体が痺れて、身動きが取れなくなる。  その瞬間を狙っていた三人官女の1体が、『長柄の銚子(ながえのちょうし)』と呼ばれる、長い柄のついた器を振り上げ――。 「動くなッ!」  三人官女が振り上げた長い柄のついた器が巨大化したその時、凛々しい女の声が共用スペースに響き渡った。  その声を聞いた人形達はピタリと動きを止めて、女生徒達は『麻痺』から開放される。  そしてその声の主、男雛と対の存在、『女雛(めびな)』はひな壇を降りて、女生徒達に声をかける。 「早く外へッ! ここにいてはなりませぬッ!」 わけも分からぬまま、女生徒達は女雛と共に、寮の外へと飛び出した。  立ち入り禁止の看板が置かれた、とあるレイアーニ寮。  そこで女雛に正座をさせられて、女雛に『人形の扱い方が雑すぎる』と説教を受けていたのは、件のドラゴニアの少女。  その光景を見て、立ち入り禁止の看板を置いた『とある教師』はにやりと笑う。 「せ……先生。あの……ひな人形は何なんですか?」  とある教師に近づいて、件のドラゴニアの少女と一緒にいた女生徒が聞いた。 「ん? そうだな……古代の人工的に作られたモノか、途方もない時間の祈りが人形に魔法的な効果を与えたか……。どちらにせよ、アレは研究室の奥に転がってた、古いモノだからね。何があっても、おかしくはないさ」 「よ、よく分かりませんが……そうなんですか……」  とある教師の台詞はおかしいのだが、女生徒はそれに気づかない。  そしてそのまま、とある教師は微笑みながら続ける。 「幸い、寮の中には君達しかいなかったようだ。それに、あの女雛も協力してくれると言っている。……この件は僕の方から依頼として、教室に張り出させてもらおう。このままじゃ、たくさんの女生徒が困ってしまうからね」 「……えっ!? せ、先生達でなんとかしてくれるんじゃ……?」 「ここは『フトゥールム・スクエア』だからね。この学園の生徒達ならきっと、解決できるさ。……と言っても、君やあのドラゴニアの少女の技量では厳しいか」 「き……厳しい?」 「君達2人は学園で待機……および、他の女生徒達を学園に誘導しておきなさい。寮のことは、学園の仲間達に任せると良い」 「わ、分かりました……」  女生徒はぺこりと頭を下げて、何とも言えない表情をしながら、ドラゴニアの少女の元へと駆けて行く。 「ふふ……面白いことになったな」  人形達の城と化した寮を眺めながら、とある教師は呟いた。
参加人数
7 / 8 名
公開 2019-02-27
完成 2019-03-16
先生! 魔物はジビエに入りますか!? (ショート)
くそざこあざらし GM
 地平線まで伸びる草原に、視界の端に映る雑木林、そしてどこまで青い空に、『キュルルル』という不思議な鳥の鳴き声。  冒険を感じずにいられないこの場所は、校庭のとある一角。  生徒達――君達は今日ここに、とある特別授業のために集まったのだが――。  その授業は『冒険』だとか『戦闘訓練』だとか、そういった類のものではない。  『調理実習』のために、メシを作るために君達は集まったのだ。 「……この場所で合ってるよな?」  エプロンを着込んだ君達の1人が不安げに言った。  君達がそう思うのも無理はないだろう。  校庭に冒険はあれど、調理実習に必要なものは何も存在しない。キッチンも調理器具も食材も、ここには何もないのだ。  ――だが、食材になり得る生き物はいた。 「ぶはははッ! その通り……ここが正解だッ! そしてェ! ここへ来たてめぇらも正解だッ!」  その叫び声が聞こえた直後、君達の前に毛むくじゃらの大男が隕石のように降ってきた。  大男の格好は『調理実習の先生』と言うよりか、『山賊』の方がしっくりくる。どう甘く見ても、とりあえず『教師』ではないだろう。  大男が着地した風圧で飛ばされそうになるのを耐えながら、砂煙でエプロンを汚しながら、君達の1人が懇願するように叫んだ。 「あなた……はぁ! 先生じゃないですよねぇ!? 違いますよねぇ!?」 「ぶはははッ! 残念だったなァ! 不正解だッ! 俺がてめぇらに『特別調理実習』を教える教師ッ! 【デイヴ・ボーガン】だッ! 2度は言わねェからなッ! よく覚えとけよッ!」  残念だが、目の前にいる山賊のような大男が『調理実習の先生』だ。  『マジかよ』という表情をする君達に向かって、面倒な前置きが嫌いなデイヴは、さっさと本題に入る。 「さぁてと……早速だがッ! 今から授業を始めるッ! この校庭に2種類の魔物を数体放ったッ! ぶっ倒して調理しろッ! 以上だッ!」 「まもっ……魔物!? どういうことですか先生!?」 「今説明しただろうがァ! 2度言わせんじゃねぇぞコラァ!」 「えぇ……」  君達の1人が質問するも、デイヴはどうやらもう言ったつもりらしい。  しかし、君達が困惑しているのは分かったのだろう。  デイヴは補足として、やや説明を付け足す。 「放った魔物は『ワイバーン』と『ボアファング』だッ! 別にどっちを狙おうが構わねェ! ぶはははッ!」 「1人1体を……倒して調理するということですか?」 「そいつぁ……てめぇらにはまだキツイだろうなッ! ぶはははッ! 1体につき……4人まで合格にしておくかッ! ぶっ倒したらその場でぶっ叫べッ! 確認しに行くからよォ! その後に調理だッ!」 「倒した時点で合格ならば、調理は必要ないのでは……?」 「あぁん!? ……まぁそうだなッ! ぶはははッ! 『味』が良けりゃ加点しとくかァ! もっとも、俺をうならせるのは難しいだろうがなァ! っと! 余った肉や骨や皮は俺の方で引き取るッ! そいつがてめぇらの報酬に変わるからなァ! 間違っても捨てんじゃねぇぞォ!」 「せっ……先生! もう少し詳しく、ワイバーンとボアファングについて教えてもらえませんか!? それと、調理器具は――」 「調理器具なんざその辺に転がってんだろうがァ! 説明は以上だッ! てめぇらの健闘を祈るぜッ! ぶはははッ!」  大きな笑い声を上げながら、凄まじい跳躍でデイヴはどこかへと消えた。  まだ状況が飲み込めず、数人が『ぽかん』とした表情で固まっていたその時、君達の1人が呟く。 「……とりあえず着替えるか」  ワイバーンとボアファングをどう仕留めれば良いのか、どう調理すれば良いのか、まだ分からないことだらけだが――。  とりあえず、この調理実習にエプロンが必要ないことは分かりきっていた。
参加人数
4 / 8 名
公開 2019-04-21
完成 2019-05-07
無人島に何か1つ持っていくとしたら? (EX)
くそざこあざらし GM
 ――とある休日。 「無人島でサバイバルするとしてさ」 「うん」 「何か1つだけ持っていけるとしたら、何持っていく?」  学園内のカフェで、2人の男子生徒が雑談をしていた。  無人島に何か1つだけ持っていけるなら何を持っていくか。  それは永遠のテーマであり、この世にある正解のない問題の1つだ。  ある者は自分にとって大切なモノを。  またある者は水や食料など、生き残るために必要そうなモノを。  サバイバルに自信のある者であれば、ナイフなどを持っていくだろうか。  しかし――ほとんどの者は真面目に答えないだろう。  実際そんな状況に陥るわけがないのだから、当然である。  無人島に何か1つだけ持っていけるなら何を持っていくか。  それは永遠のテーマであり、大喜利のお題のようなものだった。  質問をした男子生徒も、質問をされた男子生徒も、そんなことは理解している。  だから、質問をされた男子生徒はふざけて答えたのだ。 「俺は『ちくわ』かなぁー」 「おい真面目に答えろよ。ふふっ……おまっ……。ちくわでどうすんだよ」 「お前ちくわバカにすんなよ。武器にも……ふふっ。武器にもなるし、エサにしたら魚とか捕れそうだし、ストローにしたらどんな水でもちくわ味になるし、いざとなったら食えるし、最強だろうが」 「あー……確かに最強だわ。じゃあ俺もちくわかな」 「ふふっ……。だろ? ちくわで余裕だって」 「ならば貴様らには、ちくわだけでサバイバルをしてもらおう」 『えっ』  そんなふざけた答えに鉄槌を下すのが、『無人島クラブ』の部長、【エド・ディスカバリー】の使命である。  エドは一瞬にして男子生徒達を気絶させて、周りに隠れていた無人島クラブの部員達に運ばせた。  どこに運ばせたのかは、言うまでもない。 『ど……どこだよ!? ここ!』  目覚めた男子生徒達の目の前に広がるのは、海のように広い湖。そして足元には砂浜、背後には平地、平地の先には木々がうっそうと茂る森が見える。  ここは無人島クラブの『備品』である、学園内の湖のどこかにある無人島。 「貴様らには今から24時間! この湖に浮かぶ無人島で! ちくわだけを! ちくわだけを使ってサバイバルをしてもらう!」  無人島クラブの部員達が漕ぐ舟で仁王立ちをしながら、エドは男子生徒達に向かって叫んだ。 「はぁ!? ちょっと待っ……あっ! 俺の剣が……ちくわしかねぇ! おいてめぇ! 俺の剣をどこに――」 「黙れぇ! ちくわを望んだのは貴様らだ! 服とちくわ以外はすべて、こちらで回収させてもらった! 後で返すがな!」 「何でちくわなんだよ!? 意味が分かんねぇーよ!」 「ちくわでサバイバルが出来るのだろう!? ……これから俺が、貴様らの『サバイバル力(ぢから)』を評価してやる! 貴様らがちくわで見事なサバイバル力(ぢから)を発揮すれば! 俺は貴様らに謝罪し! ちくわを最強だと認め! いくらばかりの報酬を支払おう! ……さぁ! サバイバルスタートだ!」 「ちょっ……無理に決まってんだろ!? おい待っ……サバイバル力(ぢから)って何だよおい!」  男子生徒達を無人島に残して、エドは舟で無人島を離れていく。  残された男子生徒達はただただ呆然と、ちくわをかじることしか出来なかった。  ――また、とある休日。 「無人島でサバイバルするとしてさ」 「うん」 「何か1つだけ持っていけるとしたら、何持っていく?」  学園内のカフェで、2人の女子生徒が雑談をしていた。 「えー……私は釣り竿かなぁ。魚とか釣れたらさ、ほら。何とかなりそうじゃない?」 「じゃあ……私はマッチを持っていくわね。魚を焼けるように」 「なるほどぉ……。って、一緒に行く感じなの? ふふっ」 『その話はやめろぉぉぉ!』  女子生徒達の話を耳にして叫んだのは、あの日、無人島に連れて行かれた男子生徒達。  これから何が起こるのか、男子生徒達は知っていたのだ。  しかし、もう遅い。 「ならば貴様らには、釣り竿とマッチでサバイバルをしてもらおう」 『えっ?』  女子生徒達の後ろに現れたのは、永遠のテーマの答えを探す、無人島クラブの部長、エド・ディスカバリー。  はた迷惑なエドの噂は、新入生達の間で、瞬く間に広がった。  ――その中には君達のような、わざと連れ去られようとする者達もいたのだ。
参加人数
7 / 8 名
公開 2019-03-30
完成 2019-04-16
黒猫と20本の尻尾 (ショート)
くそざこあざらし GM
 細い月が、夜空から少女を見下ろしていた。  少しの夜更かしなら黙認されるとはいえ、【ルーナ・レイニーデイ】は初めての夜の外出に不安が隠しきれていない。  迷うような足取りで、月の視線に怯えながら、ルーナは夜の居住区域を往く。  ルーナの姿を見れば、誰しもが『こんな時間に無理をしなくても』と思うだろう。  しかし、ルーナは『こんな時間に無理をしてでも』行きたい店があった。  ルーナが住んでいる寮の南口から真っ直ぐ進み、67個目の街灯を左に曲がり、王冠が描かれたパン屋の看板を目印に右へ曲がった先――。  路地裏に潜む猫の看板が、月と同じように目を光らせていた。  ルーナが重たい扉を開くと、暖かい空気が彼女の頬を撫で、木の香りが彼女の頬を緩ませた。  ルーナの視界に飛び込んできたのは、艶やかなカウンターテーブルと、いくつかのテーブルセット、赤い木の木目。  まだ人のいない、静かな店内はまるで小さな図書館のようだが、壁に並べられているのは本ではなく酒瓶。黄味がかった間接照明に照らされて、彼らは手に取られるのを待っている。  ――夜の酒場。  本を読むように酒と時間を楽しむ。その行為に少女が憧れていたとすれば、それは少女が背伸びをする理由になるだろう。  しかし、そうではない。  ルーナには別の目的があった。 「こ、こんばんは……」 「あら、いらっしゃい。……見ない顔ね。初めてかしら?」 「は、はい」  カウンターテーブルの向こう側に立つ少女。実際には少女ではないのだが、ルーナより年下にしか見えない、黒猫の特長を持つルネサンスの女。彼女がこの店の店主である【シャオヘイ】だ。  ルーナと目を合わせて、シャオヘイは黒い猫の耳を動かし、4本の黒い尻尾をゆらゆらと揺らす。  ルーナを警戒しているのか、それとも興味を示しているのか、シャオヘイの読めない表情にルーナがおどおどしていると、シャオヘイは『ふっ』と笑った。 「そんなに怯えなくて良いわよ。学園の生徒さんよね? それで、今日はお客さんとして来てくれたのかしら? それとも、お手伝いに? それとも――」  シャオヘイの言葉に合わせて、ルーナの足元で黒猫が『なー』と鳴く。  黒猫達は1匹や2匹ではなかった。同じような見た目をしながら、微妙に表情の違う黒猫が8匹、いつの間にかルーナを取り囲むようにして、黒猫達は集まっていた。  その黒猫達の数に対して、尾の数はさらに多い。  1匹につき2本、計16本の尾がゆらゆらと、ルーナを誘うように揺れていた。  その不思議な黒猫達を見て、ルーナは思わず笑顔になる。 「――その子達と遊びに……来てくれたみたいね」  ルーナの表情を見て、シャオヘイはそう言った。  ここは学園のどこかにある、小さな酒場『小黒(シャオヘイ)』。  猫の姿をした魔物である『ネコマタ』と戯れられる酒場である。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-03-26
完成 2019-04-08
第一回学園一厨二病決定戦開催のお知らせ (ショート)
くそざこあざらし GM
 前略。  私は【セカンド・エージェント】。言うまでもないが、偽名だ。  この度我々『機関』は新たなる『適合者』を求め、この『機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)』を発動するに至った。  まずは珈琲でも飲みながら、落ち着いて読んでほしい。  機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)によって創造されたこの文章は、『ミーム汚染』と『ラグナマグナ』を防ぐために、『第九暗号化術式(コードゼロゼロナイン)』と『削除済み(表示されていないかもしれない)』によって改変を施し、『完全非適合者』および『学園統率者の犬共』には認識出来ないようになっている。彼らには、まったく関係のない違う文章に見えているはずだ。  つまり、この文章を解読している君には適合者としての素質がある。もしくは『宵闇に選ばれし者』かもしれないが……。どちらにせよ、君は『知っている』はずだ。  ……前置きはこのぐらいにしておこう。我々には時間がない。  我々は新たなる適合者を、組織を救済する『鍵』となり得る人物を捜し求めている。  次の『マギステルの夜』までに、複数の『扉』を開かなければ、我々に未来はない。我々は『常闇の魔動書(ダークシナリオ)』に基づいて、今までいくつもの扉を開き、いくつもの『ミーム災害』を防ぎながら、学園統率者の犬の眼をかわし続けてきたが、ついに『特異点』を見つけられてしまった。  『ルベラミエの悪魔』を使ったとしても、もはや我々の『贖罪(ちから)』だけではどうにもならない。君達が――すまない。ここも安全ではないようだ。  我々は扉を開ける鍵(ちから)を持つ適合者を『選別』するために、審判の日、『久遠の舞踏会』を開くことにした。この文章が読めているのなら、頼む、久遠の舞踏会に参加してくれ。もう時間がないんだ。多少の報酬は支払う。  結果的に君が『すべての罪を背負う者』だとしても、組織に所属しろとは言わない。一時的に、我々に手を貸してくれるだけで良い。  久遠の舞踏会にはカバーストーリーとして『第一回学園一厨二病決定戦』を適応している。犬共に嗅ぎつけられることはないはずだ。心配するな。  それでは、『会場』でまた会おう。  ラ・メメタン・フトゥールム。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-03-11
完成 2019-03-26
黄金のちくわ像を奪還せよ! (ショート)
くそざこあざらし GM
 ――ちくわ祭り。それは学園より南方にある小さな村で催される、ちくわに感謝する春の祭りである。  ちくわ祭りの歴史は古く、さかのぼること数10年ぐらい前、村を襲った魔物の大群を、突如として現れた謎の武芸者がちくわを吹き矢のように使って退治したことから、村人達はその武芸者ではなく、ちくわを崇めるようになった。なぜ武芸者ではなくちくわなのかは、恐らく、村人の誰も武芸者の顔を覚えていなかったからだろう。  ちくわ祭りは村の中心にある広場で執り行われ、広場には様々な練り物の屋台が立ち並び、広場の中央にはご神体である『黄金のちくわ像』がまつられる。  このちくわ像を、ちくわ像がまつられているやぐらを中心として、その周りで『ちくわ踊り』と呼ばれるヘッドバンギングに似た踊りを踊ることが、ちくわ祭りの醍醐味だ。  ――そんなちくわ祭りに向けて村人達が準備をしていたその時、事件は起こった。 「何やってんだ『雷蔵』ぉぉ! ご神体を元の場所に戻せぇぇ!」 「そんなことをして許されると思っとるのか!? さっさと戻さんか!」 「うるせぇんだよクソジジイ共!」  雷蔵と呼ばれた青年――【毬栗・雷蔵】(いがぐり らいぞう)は黄金のちくわ像を片手に、村人達を見下ろす。  黄金のちくわ像は祭りの最高責任者、つまり村長にしか触れることの許されない、神聖なモノだ。  黄金のちくわ像がまつられているやぐらに上ることも、黄金のちくわ像を普通のちくわのように片手で掴むことも、雷蔵には許されていない。  だが、そんなことは雷蔵に関係なかった。 「意味分かんねーんだよ! こんな祭り! 何がちくわだよ! 何でこんなもんまつってんだよ!」 「それ以上はよせ! 雷蔵! ちくわ神(しん)の怒りを買うぞ!」 「買わねーよ! ちくわもちくわ神の怒りも俺は買わねーよ! だいたい何なんだよ! ちくわ神って!」  村の外れというか、もはや村の外と言ってもいいぐらい、平原にポツンと建つ一軒家に住んでいる雷蔵は、大のちくわ嫌いだった。  そんな雷蔵が黄金のちくわ像を手にした理由は、1つしかない。  この祭りを台無しにするためだ。 「ちくわ祭りを中止するまで! この黄金像は俺が預かった! このわけ分かんねーちくわを返してほしかったら! こんな祭り中止しろ! さっさとやめちまえ!」  黄金のちくわ像を片手に、雷蔵はやぐらを跳び下り、家に向かって駆け出した。 『追いかけろぉぉ! 雷蔵を捕まえるんだぁぁ!』  村人達は当然、雷蔵を追いかける。  だが――雷蔵が隠し持っていた『細長い筒』を構え、走りながらそれを使って吹き矢を飛ばすと、矢が命中した村人は『眠りこけてしまったり』、『体が痺れて動けなくなった』。  おまけに雷蔵は恐ろしいほど速く、吹き矢を当てられなかった村人達も、雷蔵に追いつくことは出来ない。  そして、さらに――。 「うおっ!?」 「おい、大丈夫か!? 何が起こっ――うわっ!?」 「『落とし穴』だ!」  突発的ではなく、作戦を立てた上での、入念に準備した上での犯行だったのだろう。雷蔵は家の周りに落とし穴を掘っていた。  落とし穴の深さは数メートル。自力で抜け出せなくはないが、抜け出すのにはやや時間がかかる、ちょっと深めの落とし穴。運が悪ければ、足を捻挫したりしてダメージを負ってしまうだろう。  落とし穴の上には見えないようにフタとカモフラージュが施されていて、微妙に他の場所と色が違うような気もしなくはないが、それぐらい分かり難いモノであり、村人達には判断がつかない。  村人達は雷蔵の家から離れたところで立ち止まり、雷蔵が帰宅するのを見守るしかなかった。 「いいか! ちくわ祭りをやめる気になったら言え! 落とし穴を踏みまくって、黄金像を取り戻しに来ても無駄だぞ! どうせ、お前らじゃ俺には追いつけねぇ!」  捨て台詞――ではないのだが、雷蔵は最後にそう言って、家の中へと閉じこもった。  このままでは、ちくわ祭りを中止するしかない。  いや別に、黄金のちくわ像がなくても祭りは出来るのだが、やはり村人達としては、黄金のちくわ像がなければ締まらないのだ。  誰しもが諦めるようなため息をつく中――。 「……『学園』に依頼しよう」  村長が、そう言った。
参加人数
3 / 8 名
公開 2019-04-30
完成 2019-05-17

リンク


サンプル