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ことね桃 GM 

はじめまして、こんにちは!
ことね桃と申します。

今まで他社さんでもGMならびにMS活動をしてきましたが、
今回は初の! 初の! 学園もの!!
どんなお話を展開していこうかワクワクしております。

基本的に幸せな明るいお話が好みですが、
少しダークな戦闘ものを書くことが多いです。
でもどちらも楽しみなのでバランスよく書ければと。

皆様の学校生活のお手伝いをできるのがとても嬉しいです!
これからよろしくお願いします。

担当NPC


《先輩》メルティ・リリン
  Lv4 / Rank 1
「あの……メルティ・リリンと申します。未熟者ですが、なにとぞよろしくお願いしますっ!」 駆け出しの聖職者、というか聖職者見習い。 というのも彼女は根本的に『血』に恐怖を覚える癒し手だから。 誰も傷ついてほしくない、それでもこの世界には恐怖がすぐそこにある。 だから怯えて足を止めることは許されない。 血がどれほど恐ろしくとも、例え自身が血にまみれることがあったとしても――。 ●好きなもの:お茶にできる香草。   棚に並べた可愛らしい小瓶に入れてコレクション中。   同様にリボンやボタンなど雑貨品を集めるのも好き。 ●苦手なもの:癖の強いお肉。   猪とか熊とか、独特の味わいがあるものが苦手。 ●特技:踊ることと服やアクセサリーを作ること。   生前の生業の面影。   踊りはゆったりとしたものから   ドラムの激しい力強い楽曲まで一通り楽しめる。   今も学園の友達のために細工品を作ったり、   授業で傷んだ服があれば繕ったりと世話好きな面がある。 ●趣味:本を読むこと。   座学が比較的優秀なのは読書が根本的に好きなため。   主に各地の民話集や星々の物語が好きなようだ。 ●誰かに:基本的には敬語で、仲間には『~さん』をつけて呼ぶ。   しかし友人や年下の子には『~ちゃん』や『~くん』をつけて親しみやすく話すことが多いようだ。 ■公認NPC □担当GM:ことね桃 規約により以下の事ができません。 ・フレンド申請(受けることは可能です) ・公式クラブ以外への参加/発言

メッセージ


現在シナリオ考え中!
しばしお待ちくださいませ……(勉強中です)。

作品一覧


怯える幽霊少女と飢えた鬼達 (ショート)
ことね桃 GM
●理解不能な心の震え 「えっ、そろそろ私も戦いに行かないといけないんですか!?」  教祖・聖職コースで学ぶリバイバルの少女【メルティ・リリン】が教員の突然の提案に悲鳴のような声を上げた。  提案といっても別に特別な環境に放り込むとか、特殊な外敵と戦えと言われたわけではない。  単純に――トルミンの集落にある貴重な酪農地域へゴブリンの群れが現れ、現在は現地の自警団が対応に当たっているということと。  そして魔法学園『フトゥールム・スクエア』の学生に奴らの討伐を願いたいと依頼を受けたという、たったそれだけのこと。 「教祖・聖職コースの学生は民草に救済と希望を与える人物となることを目指すべし、そのことは重々承知の上であなたは入学したんでしょう?」 「そ、それはそうですけど……」 「だったらいつまでも座学と模擬戦だけじゃなくてきちんと外の世界を見てきなさい。勇者活動に参加しないままだと課題の評価をつけられないどころか、あなた自身の志をも否定することになるのよ?」 「でも……」  メルティの中には戦いに対する大きな心の揺れがあった。  それは自分が旅芸人の踊り子として生きていた頃――移動中に家族同然の仲間達と共に巨大な何かに襲われ、数日間逃げ回った恐怖に原因がある。 今はすっぽりと頭から消えてしまっているけれど、最期の瞬間に心を引き裂くような何かがあったのだとも。  だからメルティは死者となっても自分と同じ思いをする人がいないよう、聖職者の道を選んだ。  それでも戦いとなると、どうしても怖い。  無意識に愛用の本を掴む白い指を震わせた彼女へ、教師はふふっと穏やかに微笑んだ。 「大丈夫よ、あなたは癒し手の才がある。あとは一緒に戦ってくれる仲間がいれば、余程油断しないかぎりゴブリンの群れぐらいどうにでもできるはずだから」 「仲間、ですか」 「もう一端の勇者になりかけている学生もいるけれど、学園の中にはあなたと同じ発展途上の勇者見習いも多いわ。先を征く先輩と、共に歩む同輩。どちらからも学ばせてもらえることは多いはずよ。だから、気をつけていってらっしゃい」  そう言って教員は不安定に揺れるメルティの肩をぽふ、と叩いた。 ●教員からの呼びかけ 「さて、皆に頼みがあるの。メルティを連れてトルミンへゴブリン討伐に行ってくれないかしら」 「メルティっていうと……あの学園引きこもりの?」 「そう。あの子、才能はあるはずなんだけど過去に何があったのか……本物の戦いに異常なほど拒絶反応を示すのよね。申し訳ないけれど、そのフォローもお願いするわ。一度戦いを経験して、自分のやるべきことを見出せばあの子もきっと前に進めると思うの」  唐突に出された『学園引きこもり幽霊少女』の名前を出され、きょとんとするあなたに教員は軽くウィンクする。  いずれにせよ相手がゴブリンなら討伐自体はそう難しいことではない。  あとはその戦いで何をするべきか――あなたは考え始めていた。
参加人数
8 / 8 名
公開 2020-07-10
完成 2020-07-25
空の恐怖を越えて届け、癒しの心 (ショート)
ことね桃 GM
●命懸けのお届け物  元引き籠り幽霊少女【メルティ・リリン】が初めての課題を経験してから間もない頃。 「シュターニャのとある街に住む少女が難病に侵されていてね、その治療に使う薬草を届けてほしいっていう依頼が学園に来ているのよ。どう? やってみない?」  教師がイキイキした顔でメルティの肩を軽く叩いた。 「薬草を届けるの……それだけでいいんですか?」 「まぁ、基本的にはそうね。その薬草はこっちでは割と手軽に手に入るんだけど、あっちではそうじゃないみたいで。だから学生の力を借りたいんですって」 「それなら私、頑張ります! 困ってる人を見過ごすわけにはいきませんもの!」  どうやら初めての課題挑戦は彼女にとって素晴らしいものだったようだ。  だがすぐさま仲間を集めようとするメルティに教師は言う。 「ただねー……あっちは足場の危ない岩場があってね。そこにワイバーンが出るって専らの話なのよ。そいつに遭わなければすぐに課題解決できるだろうけど、遭ってしまったら気をつけて。あいつら、死ぬまで空を飛んで火を吐いて暴れまくるから厄介なのよ」 「……! 先生、何でそれを先に言ってくださらないんですかー!」  メルティは顔を真っ赤にして怒ると唇をツンと尖らせた。  しかし逃げを予感させるような怯えの表情が見えなくなったことは確かで。  それが教師にとっては何よりも嬉しかった。 ●シュターニャの岩場にて 「全く……こんな日に限って姿を見せねえとはな」  傭兵組合『シュッツェン』の組合員たちは弓や剣を手にしながらも、不満そうにため息を吐いた。  何しろここは夕日が美しく見えると評判の観光地。  観光組合『アイネ・フォーリチェ』からも早くワイバーンを仕留め、安全に観光者が訪れられるようにしてほしいと急かされているのだ。  そこで組合員がワイバーンを『古龍のバッタモン! ビビッて隠れちまってんのかよ!!』と叫んだところ、ワイバーンの群れが突然岩場の下から天をつくように舞い上がり、彼に向かって火球を吐いた。  もちろん組合員とて腕は立つ。  咄嗟に身を転がし、火球を避けた。  しかしその焔は岩の表面を焦がし、切り立った岩先をぼろりと崩す。  もし一斉に岩場の脆い面を狙われたら危険だ。 「……ちっ、ここから落ちたら全員死んじまう。皆、一旦撤収! 態勢を整えてから再度挑むぞ!」  組合員の中で最も年長の剣士がそう言うと、彼らは弓矢でワイバーンを牽制しながら後退した。 ●その頃、学生たちは  ――この課題に参加することになったあなたは件の岩場に近づくと思わず息を呑んだ。  高所に広がる岩場、そして自然に崩れたとは思えない岩の焼け跡。  さて、ここをどう切り抜けたものか。  この地を脅かす魔物を倒し、駆け出し勇者として凱旋するべきか。  それとも慎重に草木の合間を横切り、安全に課題を達成するべきか。  メルティの顔を思わず見ると、彼女の瞳は不安そうに揺れていた。
参加人数
6 / 8 名
公開 2020-08-04
完成 2020-08-21
御霊を還す炎が揺れし夏の海 (ショート)
ことね桃 GM
●海の向こうに皆がいるから 「……キャンドル流しのお手伝い、ですか」  リバイバルの聖職見習い【メルティ・リリン】は課題の案内板を見ると『ほう』とため息を吐いた。  アルチェのとある一地域では夏に死者の魂が海の向こうから戻ってくると信じられており、秋に魂が迷わず元の居場所に帰還できるよう導き手として花の形をしたキャンドルを海へ流す行事が行われているらしい。  しかしそのキャンドルが今年は数が足りないらしく、街で手配した商品を運ぶ護衛をしてほしい……とのこと。 「この手の催しは季節関係なくどの地域でもやるものよねー。歌や踊りで死者を慰めるとか、慰霊碑を浄めるとか……。アルチェの場合は見た目が華やかだから観光客も訪れるみたいだけど」 「アルチェのはそんなに人気があるんですか?」 「まぁね。色とりどりの花が海を彩り、地域の住民が民謡を歌って踊って美味しいものを食べる。ご先祖様に自分達はまだまだ元気だから心配しないでって伝えるためにね。要はちょっとしたお祭りなのよ」 「へぇ……」  メルティはなるほど、と頷いて『この課題を受けてみたい』と教師に告げた。 「私、リバイバルですけど……先に行ってしまった仲間達に伝えたいことがあるんです。魂だけになっても今度は大切なものを守るために頑張るよって。もちろん護衛も頑張ります、しっかりやり遂げます」 「……それはいいことね」  教師はふっと微笑むとメルティの頭を撫でた。もうこれ以上彼女を支える必要はないだろうと。 ●アルチェの海を臨んで  キャンドル運搬の護衛は特にこれといった事件に脅かされることなく終了した。  時は夕暮れ――街では露店が並び、華やかな衣装を着た女性達が小舟にキャンドルを乗せていく。  そんな中、アルチェの商人が学生たちの馬車を見るや頬を緩ませる。 「ああ、ああ。助かりました……これで今年も無事に先祖の魂を送ることができます」  早速子供達にキャンドルを配り、学生たちに一礼する商人。  続けて彼はいくつかのキャンドルを手に取ると『あなた達にも』と差し出した。 「この地域では海の果てに魂の国があると信じております。皆様のご先祖や大切な方があちらにいらっしゃると信じてくださるのであれば……よろしければ」  その言葉にメルティは『ありがとうございます』と精一杯の笑顔で応じた。  かつて守れなかった仲間達のために祈りと言葉を捧げる場が欲しかったから。  一方で街は日が暮れた頃から一層華やかに賑わい出す。  ふんだんに海の幸を使った食べ物、海沿いにたわわに実った果実を用いたジュースやデザート。  そして多くの人が舞い歌う広場。  さて、あなたはどのようにこの日を過ごすのだろうか。  もっとも、しめやかに死者を悼むも。  アルチェの観光地域を満喫するも。  どちらでも死者の魂を癒し、見送ることに変わりはないのだけれども。
参加人数
4 / 8 名
公開 2020-08-25
完成 2020-09-07
命知らずの冒険少年 (ショート)
ことね桃 GM
●それはちょっとした好奇心から  グラヌーゼの地に残る悲劇の痕跡――サーブル城。  そこはかつて苛政にて民を苦しめた魔族の居城。  今なお魔王との戦いの名残でまともな商業がなりたたず、困窮しているグラヌーゼの民にとっては何とも苦々しい建造物だ。  しかし城の周辺は幻惑の森をはじめとした危険な区域に囲まれており、解体しようにも手を付けられない状況でもある。  今日も今日とて年老いた民は畑の手入れをしながら忌々しい城へ視線を投げかけた。 「ああ、何とかあれを壊せないもんかねえ」 「本当にねえ。ノア一族が死んだとはいえ、噂では新しい魔族が棲みついたとか……嘘か真かわからないけどサ」 「それは困る。ただでさえ近づけないってのに、そこに棲みついたなら……例え学園に優れた学生を送ってもらっても対応しきれないかもしれないじゃないか……」  城も怖いが幻惑の森もまた恐ろしい。  ノア一族の幻惑魔法は今もなお怨念のように森に残留し、入り込んだ者をたちまち幻惑の虜にし――いつしか森の贄の如く死に追いやると言われているのだから。 「あれだなァ、もし本格的に解決するなら森ごと燃やすしかないンかな」 「それじゃ『グラヌーゼの悲劇』の再来になるだろうよ。ただでさえ乾燥してんだ、これ以上の火種は勘弁してほしいよ。それより学園や勇者様達が幻惑魔法の解呪法を探してくれる方が間違いないさ」 「だな。俺達は余計なことはせず、子供達が帰ってくる村を守るしかねえな」  ざく、ざく。  夏の終わりに刈り終えた麦畑に鍬を振るう老人達。今の彼らにはそれが精一杯だった。  ――そんな老人達の話にそっと聞き耳を立て、にんまりと笑うのはグラヌーゼのやんちゃな子供達。  彼らは祖父母や両親から常々『森にだけは行っちゃいけないよ』と言い聞かせられていたが、その奥に見える城がなんとも魅力的に思えていたのだ。 「なぁ、ノアの魔法ってアレだろ。城にまだすげぇモンが残ってるから奪われないようにかけてあるんじゃね?」 「それは俺も思ってた。だってノア一族ってすごく強い魔族で、強い魔物も連れてたんだろ? きっと普段からとんでもない価値のある食器とか飾り物とか使ってたんだろうなって」 「もしかしたら城の奥には金とか宝石がぎっしり入った宝箱があったりして……」 「馬鹿、宝箱なんてもんじゃないだろ。きっと部屋そのものがお宝みたいな場所があんだよ。絶対!」  額を突き合わせてごにょごにょごにょ。  ――そうしているうちに彼らはひとつの結論に辿り着いた。 『サーブル城に行ってお宝を見つけるぞ!』  何しろこの地は今も貧困にあえいでいる。  子供達の両親が1年のほとんどを出稼ぎに費やしているのは魔物達が豊かだった麦畑を焼き払った――過去にこの地を手酷く荒らしたからなのだ。  だったら今度はこちらが仕返しにお宝を奪っても問題はあるまい。  集めたお宝を裕福な貴族や骨董商に売り払えば大人達は出稼ぎに行く必要がなくなり、祖父母が重い鍬や鋤を持って働く必要もなくなる。  何よりも両親が帰ってきてくれるのなら子供達にとってそれ以上の喜びはない。  彼らは早速打ち合わせをすると食糧と思いつくかぎりの冒険道具を用意して、翌日に森の東部からこっそりと忍び込むことにした。 ●陽が高くとも目が昏く眩む世界  子供達はいつものように老人達が畑に向かうのを確認するや、ぼうぼうと生えた草の中を手を繋いで駆け抜け森へ向かった。  それは子供にとってかなりの距離ではあったが、好奇心と使命感に満たされた彼らにとっては疲労などあってないようなもの。 「よし、全員腰にロープをつけたな。城にはここからまっすぐ北西に向かえば着けるはずだ。幻惑魔法だの呪いだの大人達は色々言ってるけど、まっすぐに歩くだけなら迷うはずなんてない。大丈夫だろ」  リーダー格の少年はそう言うと太陽の方向を確認した。太陽はしっかりと南の空に高く上がっている。視界もよし、迷う道理などない……はずだ。 「とりあえず陽が翳ってきたら帰ろうね。一応ろう石を拾ってきたから、目立つ木に印を書いておくよ」 「あとは魔物……いるのかなぁ、本当に。いたらどうしようか」 「そしたら全員ダッシュで逃げりゃいい。今までだって平原で獣を追いかけたり、悪戯しては逃げて無事だった俺達じゃんか。どうにかなるって」  慎重な仲間達に対して妙に強気な態度を示すリーダー。その様子に彼の参謀役が小さく俯く。 (そういやリーダーの兄貴も去年から出稼ぎに出てるんだよな……煉瓦職人のとこに奉公に行ったって聞いたけど。あれがやっぱり辛かったのかな……)  自分もできることなら父親と一緒に遊びたいし、存分に母親に甘えたい。  それに――あの城の怪異を乗り越えたなら村の勇者と褒められるかもしれない。  そんな虚栄心が参謀の胸を疼かせる。 「……ま、冒険は今日だけじゃないんだし。少しずつ進めていこうぜ」  参謀の提案に少年達は頷くと薄暗闇の空間に足を踏み入れていった。  それからどれだけの時間が経ったのだろう。  陽はまだ高いはずなのに子供達は既に考えることもできないほどの距離を歩いた感覚に陥り、疲労も露わに巨木の根へ腰を下ろした。 「おっかしーな……森の入り口と城の距離感からするととっくに着いててもおかしくねーのに」 「どこかで道、間違えた?」 「まさか。北西に一文字に進むだけだろ。間違えようがねえよ」  リーダーは飴玉を口に放り込み、周囲を見回す。  すると異常なことに気がついた。  同行する仲間が記していた、ろう石の白い線が彼らを囲むようにびっしりと書き込まれている。 「おい、お前! 何やってんだ!! 目印をあちこちに書いたら意味ねーだろっ!!」 「そ、そんなことないよ。僕、リーダーのすぐ後ろにいただろ!? この通り体を縄で繋いでるんだからそんな変なことできるわけないよっ」 「だったらなんだよ、これは最初から書かれてたっていうのかよ!」  リーダーは錯乱したのか仲間達に当たり散らし、縄を地面に叩きつけた。  城の影はまだ遠く、陽は怪しげな光で彼らを照らしている。  いや、あれは本物の太陽なのだろうか?  もしかしたらあれもノア一族の呪いの幻惑魔法の断片なのかもしれない。  少年たちはたちまち心が不安に揺れ――大声で泣き出した。 ●老人達の懇願  学園にグラヌーゼの老人達から縋るような文言が綴られた文書が届いたのは翌日のことだった。  彼らによると村でも選りすぐりのやんちゃ小僧達が突然姿を消したらしい。  馬が残されている一方で、食糧とランタンやフック付きの縄など遠出の際に使う道具が一通りなくなっていることから『もしかしたら幻惑の森に探検しにいったのでは……』と老人達はただひたすらに案じ、近辺を徹夜で探索までしたという。  だからこそ――教師は生徒達を集めて声を張る。 「幻惑の森は危険な場所よ。噂ではまた魔物が棲みつき始めたのではとも言われているの。だから一刻も早く子供達を救出して」 「そんなに危険なところなんですか?」 「昔あそこに棲んでいた魔族の魔法が今も侵入者の五感を惑わせ、死ぬまで森を彷徨わせると言われているわ。もし獣や魔物がいたとしても、まずは子供達の救出を最優先にして。空腹と疲れで動けなくなっているかもしれない……そこを襲われでもしたらおしまいよ」  教師の声は切実だった。  だからこそ【メルティ・リリン】はその思いに答えようと――救済の誓いを小さく口にした。
参加人数
2 / 8 名
公開 2020-09-11
完成 2020-09-28
温泉シャバダ! (マルチ)
ことね桃 GM
●あらまぁ、びっくり遠足 「お前ら、毎日授業と課題で疲れてンだろ。たまにゃ温泉行こうぜ温泉ー」  武神・無双コースを担当している教師【ペトラ・バラクラヴァ】は学園の昇降口で学生達を集めると偉そうに腰へ筋骨隆々とした手を当てた。 「温泉……ですか? 温泉というとトルミンの?」 「それ以外にどこがあるってんだよ。なんかさぁ、トルミンの温泉周辺に魔物が出たってゆーからまずそいつらブッ倒してさ。で、その後に謝礼として温泉を自由に使ってほしいってさー。アタシも同行するからボランティア兼湯治に行こうぜー」  その提案に学生たちは顔を見合わせた。  魔物といえど千差万別、その辺の森にいるゴブリンのような弱い者ならともかく狂暴極まりない魔物がいるなら危険だ。  そんな彼らに対しペトラは『ははっ』と笑う。 「今回暴れてる奴らはそんなに強かねぇんだと。ただ、数が多いから自警団や傭兵だけだと心もとないってんで手を貸してほしいそうだ。だからまだ戦闘経験の少ない奴らもどんと来いって話になってる」 「……それなら良かった」  ほっとする新入生。そこでペトラは続けて指を3本立て、トルミンの温泉の特徴を紹介を始めた。 「トルミンの魅力、まずひとつめ。トルミンの中心街にほど近い大温泉郷『ギンザーン』の共同露天風呂はなんと混浴。水着着用前提で、集団で入っても問題ないぐらいの広さがある。水着も貸し出しているそうだから気兼ねなく利用してほしいそうだ」 「こ、混浴!?」 「でも変なことは考えんなよ。もし何かあったら監督責任でアタシの拳を飛ばすぜ?」  筋張った拳を力強く突き出すペトラ。  それにぶるりと震えながら学生達は黙って話の続きを聞く。 「で、ふたつめは中温泉郷『ザ・ウォウ』。ここはトルミン中心部から北東に離れた位置にある小規模な温泉郷で、白く濁った泉質が特徴の共同露天風呂がある。湯温がちっとばかり高いから長湯には向かねえが、静かな場所でのんびり休みてえって奴には向いてるかもな」 「なるほど」 「で、問題はみっつめだ。マルカス・デガラス内に秘境温泉地『セミナルーゴ』って地域があるんだが……そこは間欠泉があって熱湯が噴き出すことがあり、慣れていないと危険だ。おまけに魔物も当たり前のように居やがる。だから今回はそこの利用だけは禁止する。セミナルーゴにはギルッチ団の屯所もあることだし、治安維持は奴らに任せた方がいいだろう」  とにもかくにも、今回はトルミン周辺からザ・ウォウまでの魔物を駆逐すれば十分らしい。  ペトラは『ま、そんなに離れたとこに突っ込まなきゃ丁度いい体慣らしと息抜きになんだろ』と不敵に笑うと指の関節をゴキゴキ鳴らした。 ●温泉に着いたら何をしよう?  魔物討伐の課題は思いのほか呆気なく終了した。  それは魔物の多くがさほど強くないものだったのと、学生達に負けるまじと傭兵達が奮起したことも大きな理由である。  いずれにせよ学生達には大きな時間が与えられたわけで。  彼らは『これからどうしよう?』と顔を見合わせた。  トルミンはかつて火山活動のもとで『死した領域』とまであだ名されるほど荒れた地だったという。  しかしある修行中の勇者が温泉を発見、そこで傷を癒したことから今や見事な温泉街として発展していた。  今の学生達の目の前に広がる風景は立ち並ぶ温泉宿や土産屋、その後ろに広がる雄大な山々。  秋色に染まり始めた山の木々は少しだけアンニュイな彩りだが、それもまた美しい。  ……ヴド・ベルゲだけは火山灰の影響で殺風景な山肌を晒しているが、それもこの街ならではの光景だろう。  そんな中でさすがに遠出こそできないが、湯に浸かりながら何か物思いに耽るのはいいことかもしれない。  または親しいひとと言葉を交わし、楽しい時間を過ごすのも。  商店街でまだ見ぬ土産品やグルメを探してみるのも面白そうだ。  ――さて、あなたは帰還までの時間をどうやって過ごされますか?
参加人数
3 / 16 名
公開 2020-10-12
完成 2020-10-29
アルマレスに抱かれし邪悪 (ショート)
ことね桃 GM
●山に隠された神殿 「おーい、お前らー。今回は山で体力づくりをしてもらうぞこのヤロー!」  武神・無双コースのガチムチ女教師【ペトラ・バラクラヴァ】は課題案内板の前に立つと、板に貼り付けた紙をコンコンと小突いてみせた。  そこで初々しさの残る学生が挙手、質問をする。 「山というとトルミンですか?」 「いんや、トロメイアのアルマレス山だ」 「えっ……あそこ超高い山じゃないですか! まさかそこを全力で踏破してこいとかいうんじゃないですよね?」  ざわっと戸惑いの声を上げる学生達。するとペトラはからからと笑う。 「まさか、アタシの授業じゃあるまいし」  ……お前の授業ならやるのか。そんな青ざめた顔を気にすることなく彼女は解説を続ける。 「実はだな、アルマレスの中腹に避難所兼神殿として整備された洞窟があるんだが……そこにガーゴイルが棲みついたらしいんだよ。で、民間人の案内人や神官が踏み込むのは危険だってんで、うちの学園に連中を討伐してほしいって連絡があったワケ。そこまではいいな?」 「はい」  とりあえず素直に頷く学生達。その反応に満足したのかペトラは口元を吊り上げると『まぁ、ここからが問題なんだがな』と告げた。 「その神殿には山の自然精霊を模した石像が12体、並んでいる。ガーゴイルと精霊の石像を見分けるのはそう難しくない、真っ当な精霊像はそれぞれ自分が加護するものを持っている意匠だからな。例えば岩の精霊なら岩石を担いでいたり、木の精霊なら苗木を掲げ、実りの精霊なら果実の入った籠を抱き、水の精霊なら水瓶に手をかけている。土の精霊なら地面に手を伸ばして土を掴もうとしているようなポーズをしているという話だ。……ただし今までヒトが近寄れなかった分だけガーゴイルがどれだけの数が潜り込んでいるのかわからないっていう状況が問題なんだよな」 「それなら石像を片っ端から壊せば?」 「馬鹿野郎、そんな罰当たりなことをしたらトロメイアの神官連中どころか住民にまで学園生が白けた目で見られることになんだろ。どいつがガーゴイルか見極めて、他の石像や神殿が傷つけられる前にブッ倒せっていうなんともヘイトな課題だよ」  ペトラはそう言って肩を竦めると『ひとまず案内人は既に手配してある。洞窟までは最短ルートで行けるから道程で悩むことはない』と告げ、眉を顰めた。 「あとはこいつはアタシからの助言だ。ガーゴイルって奴は知性はないが飛行能力があり、相手の動きを見極めようとする知恵もある。それを考えると……正直体どころか頭も使わなきゃならねえ課題だ。やる気のある奴は後でアタシに声を掛けな」  こう言い残して校庭に出ていくペトラ。学生達が『どうする?』と顔を見合わせるなかに【メルティ・リリン】の姿もあった。 (石の怪物……困っている人がいるのなら頑張らないと、ですね) ●洞窟の前で 「……ここが件の洞窟です。一応途中までは先遣隊が蝋燭で目印をつけましたが、途中からはほぼ暗所となりますのでお気をつけて。最後の蝋燭からまっすぐ進んだ先に神殿があります」  案内人はそう言うと学生達から預かった荷物を肩から下ろし、一息ついた。彼はここで皆の帰還を待つという。 「ここまでのご案内、ありがとうございます。必ず皆様に喜んでいただけるよう力を尽くしますので、帰りもなにとぞよしなに」  メルティはそう言うと小さなランタンを括りつけた杖を手に仲間達と歩き出した。  必ずガーゴイルを倒し、ここを清浄な祈りの場に戻してみせると誓いながら。
参加人数
2 / 8 名
公開 2020-11-07
完成 2020-11-22
毛糸に想いを込めて、あなたと (マルチ)
ことね桃 GM
●その毛糸は誰のために? 「……んしょ……よいしょっと」  大きな木箱が学園の廊下を左右に行ったり来たり。  幽霊少女の【メルティ・リリン】が珍しく大きな箱を抱えて学園寮に向かっている。  そこに丁度居合わせたのは女教師の【ペトラ・バラクラヴァ】。  彼女はメルティの抱える箱をひょい、と持ち上げると『思ったより軽いな。こいつはどうした』と問うた。 「あの……それは毛糸の箱です。そろそろ本格的に寒くなりますし、それに12月の行事でも靴下とか……必要とされる子供達もいるのではと思って。先生にご迷惑をおかけするわけにはいきませんので、これぐらいは自分で……」 「いいっていいって。どうせ寮まで大した距離はねえんだ。それにしても年末に向けて編み物で奉仕活動ってわけか。真面目な優等生だねェ」  ペトラはそう茶化すように言いながらもメルティの歩調にあわせて寮へ向かう。  彼女は授業がいかにスパルタ方式であろうとも学生のプライベートに関しては意外と親切なのだ。  事実、ペトラは砕けた口調でメルティの活動に関心を示す。 「毛糸っつーとあれか、靴下以外にも色々作んのか?」 「はい。帽子や手袋にマフラー。時間がある時は毛糸のパンツやベストを作ることもあります」 「へー、アタシゃあんな細かい作業耐えらんないね。木の棒とか鉤付きの棒でちくちくやるんだろ?」 「でも良い毛糸で作ったものは何年も使えますから……」  メルティはそう言うと箱から毛糸を一玉取り出した。 「トルミンのように身体を温められる場所があるのならともかく、グラヌーゼのように冷えやすい地域では体を壊される方も少なくないでしょう。そういう場所でもし長く愛用されるのならきっとこの子達も幸せだと思います」 「ふぅん。でもこの量は消化しきれんのか? ぶっちゃけひとりでやるには無理だろ」 「ふふ、大物を作るとあっという間になくなってしまうのですよ。赤ちゃんのお帽子や靴下ぐらいならほんの数玉で十分ですけれど、羽織物だと時折足りなくなってしまうこともあるのです」  そんな会話を重ねていくうちに――メルティの私室に到着。デスク脇に木箱をどかんと置くとペトラはふう、と息を吐いた。 「……にしても、お前って今年からやっと課題を始めたばかりだろ。授業での成績は悪かねえが、課題はきっちりこなさねえと色々間に合わなくなるんじゃねえか?」 「それはまぁ……でも私、リバイバルですから! 体がない分、気合で乗り切ります!」 「いや、それは駄目だろ……リバイバルだって精魂尽きりゃ消失するんだからよ。ま、今年はある程度割り切って時間を使えよ。でないとぶっ倒れちまっても仕方ねえんだからな」  ペトラはそう言って退室、扉を閉めたところで肩を竦めた。 (メルティか……ああ見えて頑固だからなぁ。こうなったら仲間に声をかけてみるか)  大きな角をポリポリ掻いてペトラは課題案内板のもとへ行く。  ボランティア活動兼編み物の手習いなら学生達も気軽に参加できるだろうし、完成品を寒冷地に贈れば学園の知名度も上がり頼りにしてくれる地域も増えるかもしれないと。 ●ペトラ先生の課題内容  案内板の前でどーんと仁王立ちするペトラの前に無理矢理集められた学生達は明らかに怯えていた。  何しろ鬼の如き厳しい授業で名の知れた彼女のこと。  きっと格の高い魔物相手に軽装で突撃してこいとか、冬山の難関ルートを時間制限付きで攻略してこいというような難題を突き付けてくると思っていたのだ。  しかし彼女は言う。 「あー、今回の課題は『編み物』だ。年末の奉仕活動だと思って、靴下とか防寒具とか作ってこい。これも寒冷地で向かう際には必要な経験になるかもしれないからな」  ――不器用だが、要は毛糸を有効活用して世の中に役に立つようにと。  そのほんわかした内容に学生達は思わず目を丸くする。  もしかしたら明日あたり槍が空から降ってくるのではと逆に不安になる学生がいたぐらいに。  そこで毛糸の扱いを知らぬ学生が手を挙げた 「あの、自分は編み物をしたことがないのですが……教えてくれる先生がいるのでしょうか」  するとペトラはにっと笑った。 「ああ、その点は大丈夫だ。この学園には編み物に気合の入った奴がいるからな。そいつに聞きゃあどうにかなんだろ」  この点のいい加減さにおいてはやはりいつも通りだが――こうして学生達はメルティとともに編み物に興じることになるのだった。
参加人数
6 / 16 名
公開 2020-12-02
完成 2020-12-17

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