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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
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ぷちっと体験! 植物園実習
天谷 深澄 GM
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
なし
公開日
2019-01-22
予約期間
開始 2019-01-23 00:00
締切 2019-01-24 23:59
出発日
2019-01-31
完成予定
2019-02-10
参加人数
8 / 8
屋外の授業は往々にして天候に左右されることがあるが、この日は雲がまばらに見えるくらいの実に良い晴天で、この授業で教鞭を振るう青年、レニウス・アールングは内心安堵しながら集まった学生達の前に立っていた。 場所は学園の第一校舎、フトゥールム・パレスにある植物園、リリー・ミーツ・ローズの前だ。 「初めまして。僕はレニウス・アールング。専門は薬学になるかな。そして、今日の君達の授業を担当させて頂きます。どうぞよろしく」 学生達に対し、レニウスは懇切丁寧に自己紹介から始めた。 「今日の授業はこの植物園、リリー・ミーツ・ローズの中で三種類の植物を採取してくる、という実習になるよ。使うものがあるから、先に渡しておくとしようか」 レニウスは持参した荷物の中から紙袋を取り出し、生徒一人一人に渡していく。それが終わると今度は荷物をごそごそ漁り、くるんと丸まったスクロールを取り出した。紐の封を解いて広げると、生徒に見せながら話し始める。 「まずはこれ。この植物園内部の地図だよ。と言っても、ごく一部だけどね。この赤いルートを辿って進むと、三種類の植物がある星印の場所に辿り着ける」 羽根ペンでルートをなぞっていく。地図、と称されたものは綺麗な手描きで、ルートの途中にはいくつか丸印が付いていた。曰く、ルートを辿る際の目印となる立て札がある場所とのことだ。 「次に、君達に採ってきてもらう植物の説明をしていくよ」 手際よく次のスクロールを広げる。そこには採取する植物の簡単なイラストと、その情報が記されていた。 第一の植物、シュガーミント。青色の花に、両端が尖った楕円形の、いかにも植物の葉らしい葉を持っている。温暖な気候の地域では、割とどこでも見かけることができるようだ。 「今回の授業では葉を採取してもらうことになるんだけど、これは一番簡単かな。何も気にせず、ぷちんと摘めば終わりだね」 第二の植物、シトラーシード。人の指先ほどの小さな黄色い花を咲かせる植物だ。葉は丸みを帯び、形の良いものは綺麗なハート型に見えるのでアクセサリーやお守りのモチーフにされることが多い。 「これも採取は簡単だけど、葉が柔らかいから、無暗に力を入れると破けてしまうんだ。破けてしまっても問題はないけど、もし形をそのまま残したいなら、力をあまり加えず、ゆっくりと葉の根本から摘むといいよ」 第三の植物、ピリメライド。ラッパ状の大きく真っ赤な花が特徴的な植物だ。葉は細長く、縁もギザギザになっており、この植物が生える場所に足を踏み入れる時は肌を露出しないほうがよいと言われている。 「これはちょっと注意が必要だね。縁のギザギザに触れないよう葉の中央を持って、折るように摘むんだ。摘んだらさっき渡した紙袋に入れて持ち帰る。他の葉は一緒に入れてもいいし、そのまま持ってくるのでも構わないよ。三種類の植物の葉をそれぞれ一枚ずつ持ち帰れば授業は完了。全員しっかり持ち帰ってくるようにね」 葉を摘んで帰ってくれば良い、ということだが、レニウスの話には続きがあった。 「ちなみに、これらは全て食用で、一応生で食べることもできるんだ。だから、もし味に興味があれば、少しかじってみるといい。そのために何枚か余分に葉を摘んでも構わないよ。もちろんこれは強制ではないし、葉を実際に食べたか食べなかったか、で成績に差がつくことはない。ただ、一応実習だから、君達には色々な経験をしてほしいと思ってるんだ」 単に葉を摘むだけでは味気ないと思い、レニウスは学園に掛け合ってその辺の許可を取り付けていた。成績に関わらない部分は生徒の自主性に任せつつ、この点についての注意事項を告げる。 「味については大まかに言うと、シュガーミントは甘く、シトラーシードは酸っぱい。そしてピリメライドはとても辛いから、かじる場合は葉先をちょっとだけ噛み切るくらいにしておいたほうがいいね」 ピリメライドの辛さについては、レニウスが作成した資料の中にも朱書きで警告されていた。 「時間については特に気にしなくていいけど、あまりにも遅いようであれば見に行くよ。実習という形で自由に行動できるようにはしてあるけど、一応授業の一環である、ということは忘れないでおいてほしいかな」 最後に少しだけ、真剣な眼差しで学生の表情を確認すると、すっと身を引き、植物園への道を開けた。 「さて、僕が授業として話をするのはここまで。ここから先は君達が自分で経験して、学び取ってきてね」
コノー村のゴブリン退治
RGD GM
ジャンル
戦闘
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2019-01-22
予約期間
開始 2019-01-23 00:00
締切 2019-01-24 23:59
出発日
2019-01-30
完成予定
2019-02-09
参加人数
8 / 8
● 冬も近いというのに、その日のコノー村の天気は珍しく快晴だった。 いつもならば、こんな天気のいい日は普段ならば冬場中々外で遊べない子供たちがはしゃぎ回る姿が見られるものだが、今日に限っては子供の姿が見られない。 どこかに出かけている、という訳ではない。皆母親から外に出ないように言いつけられているのだ。 「ねー、おかあさーん。お外で遊びたいよ」 「そうね、遊びたいね。でも今はゴブリンが村の周りで悪さしてるの。お母さんはあなたに怪我してほしくないのよ。 ちょっと今いるゴブリンたちはずる賢いみたいなの。この前ゴブリンを追い払うって出かけて行った隣のお兄さん達も怪我して戻ってきたでしょう?」 「うん……じゃあもう外で遊んじゃいけないの?」 「もうちょっとだけ我慢してね」 しゅんと肩を落とす男の子と目線を合わせ、彼の母親は笑みを見せた。 「もうすぐ、勇者の人たちがゴブリンをやっつけにきてくれるんだって」 ● 「ようこそ、勇者の卵たち! 世界はキミたちを待ち望んでいる!」 魔法学園【フトゥールム・スクエア】、その一室。 近隣の村からゴブリン退治の依頼が出ていると聞いて集まった学生達を出迎えたのは、年若い女教師だ。 まだあどけなさの残る顔立ちからそう学生達とも年が離れている訳では無いだろう。最初こそ意識して凛々し気な表情を作っていたようだが、すぐにその表情は学生の中にいても違和感の無いような、人懐っこい笑みへと変わった。 「なんて、ね。そう肩肘張らなくても良いけど、ひとまず席についてもらえるかな。ここに来たってことはゴブリン退治のために集まってくれたってことでしょ?」 促されるままに着席した学生たちを前に、女性は一つ頷いて。 「まず集まってくれてありがとうね。もう聞いてるだろうけれど、今回皆にお願いしたいのは、コノー村って村で最近暴れてるゴブリン退治だよ」 知ってるかな。学園から馬車でそう遠くない場所にある、のどかな村なんだけれどね」 教師の話を要約するとこうなる。 どうも近頃、コノー村の近隣にゴブリンがねぐらを構えたらしい。 一年の終わりも近いこの時期、年越しのための食料が村に豊富にあることをゴブリンたちは知っているようで、毎年この時期はゴブリンの襲撃が活発である。 それでもいつもの年ならば村の男衆が追い払うくらいのことは出来ていたのだが、今年に限っては妙にゴブリンたちが手ごわいそうで、家畜や麦が奪われることも何回か起きてしまっているらしい。 近くの洞窟が連中のねぐらであるという所までは村で突き止められたそうだが、追い払うために洞窟へと押し入った村人たちは予想外に手痛い反撃を受け逃げ帰ってきたという話だ。 洞窟へ入った者からの話を聞くと、物陰に身を潜めて後ろから襲い掛かる、松明を持っている者へ投石し明りを落とす、等々ゴブリンが採るのは中々珍しい手立てを使って来たらしい。 「話を聞くに、ちょっと賢い奴がボスをやってるんじゃないかなって思うんだよ。ゴブリンにしては珍しいよね」 そこまでを話し終え、女教師は顎に手を当ててひとりごちるようにそう呟いた。 本来知能が低く、本能のままに動くとされているゴブリン。村人からの話で浮かんできた相手の作戦にしても警戒さえすればそう脅威ではないはずだが、ゴブリンがそれを行ってきたというのは少し珍しい。 まあでもさ、と、彼女は学生達の方を見て笑ってみせた。 「そこでビビっちゃ勇者が廃るってもんだよね。で、改めてなんだけれど、皆にはこのゴブリンたちを退治してほしいんだ。 現地につき次第ねぐらだっていう洞窟に向かって貰って、中のゴブリンをやっつけちゃう感じかな。 相手の住処に入るのもスマートじゃないんだけれども、村の人たちの不安も考えると次に村を襲ってくるのを待つよりはこっちから打って出て欲しいんだよね」 洞窟内は光の届かぬ闇の中らしい。そのため学園の方で明りとなる松明をいくつか用意していくが、先の話にもあった通り、松明を落とさせて光源を奪おうとするような動きもするらしいので、誰が明りを持つかは少し考えた方が良いだろう。 「勿論一網打尽にできれば言うことないけれど、最悪ボスだと思われる個体だけ倒せればいいよ。 こういう群れは大体ボスを倒せば後は烏合の衆だろうから、そこさえ押さえてもらえれば後は村の人たちだけでも何とかなると思うしね」 説明は以上だよ、と言葉を結ぶとともに、女教師は一度教卓を強く叩いた。部屋に響く鋭い音に視線が彼女へ集まる。 「あなたたちにとってこれは数ある授業の内の一つでしかありません。仮に誰もこの依頼を解決せずともあなたたちは別の授業を受けることで勇者になれるでしょう。 けれど、村の人たちにとってはそうではありません。彼らにとって、あなた達への依頼は代わりの利かないもの。そのことを、忘れないでください」 一拍。真剣だった女教師の表情に再び人懐っこい笑みが戻る。 「だから、頑張ってね。ゴブリンだからって油断しないこと、怪我しないようにね」
わがはいはケットシーである!
宇波 GM
ジャンル
ハートフル
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
少し
公開日
2019-01-22
予約期間
開始 2019-01-23 00:00
締切 2019-01-24 23:59
出発日
2019-01-29
完成予定
2019-02-08
参加人数
8 / 8
「わがはいはケットシーである!」 学園窓口に入ってきた彼を、ぽかんと見下ろす。 自分たちよりもはるかに小さな彼を、ぽかんと。 「名前はまだにゃい!」 おい、それは大丈夫なのかと心配したくなるような、どこかで聞いたセリフを彼は続ける。 しかし、よくよく聞けば、 「名前は『マダニャイ』」 ケットシーの名前は『マダニャイ』ということらしい。 名無しのケットシーかと思ったじゃないか。 人騒がせなことである。 「わがはいは学園に依頼を持ってきたのにゃ!」 マダニャイの続けた言葉に、窓口内がしん、と静まり返る。 静まり返った窓口に、その声はよく響いた。 「ケットシーが、依頼……?」 「えっと、依頼内容は護衛ということで、よろしいのでしょうか……?」 困惑した表情を押し隠す受付嬢に、二足歩行で行動する猫、ケットシーのマダニャイは勢いよく頷く。 「いかにも! わがはいはアルマレス山に咲き誇る百合の花を手に入れたいのにゃ!」 「それでは、護衛ではなく採取依頼をお勧めいたしますが」 受付嬢の言葉に、ケットシーはかぶりを振る。 「それじゃ意味ないのにゃ。わがはいは自分自身で手に入れたいのにゃ」 マダニャイはあくまでも自分自身で花を手に入れたいと言って譲らない。 「ご参考までに、護衛を頼んでまでご自身で手に入れたい、その理由をお聞かせください」 「うむ、よかろう! あれは雨が降る昼下がりのころ」 マダニャイは回想を始めた。 長く続いた思い出話を要約してみると、つまり、雨に降られて途方に暮れていたマダニャイを、暖かな家とご飯でもてなしてくれた女性に恩返しがしたい、ということらしい。 「その後は猫嫌いな家人に蹴り出されてしまったのにゃ。だけど、わがはいはあの温かさにいつも感謝しているのにゃ」 そしてつい先日、マダニャイはその女性が結婚することを耳にしたという。 「あの人の結婚式に、あの人が好きだと言っていたアルマレス山の花でブーケを作ってプレゼントするのにゃ! それがわがはいの恩返しなのにゃ!」 「と、いうことで、皆さんに護衛依頼です。護衛対象はケットシーひと……り? 一匹? になります。護衛対象の目的はアルマレス山に咲く百合の花。麓に近い場所なので、半日もあれば往復可能です」 学園職員はぱらぱらと資料をめくる。 「また、道中にはゴブリンの出現報告があります。ゴブリンとは小人のような体躯に醜い顔をした魔物で、徒党を組み集団で襲い掛かる魔物です。知能は低く、本能のままに動き、己の欲望に忠実な、まるで一歳から二歳児にも等しい知能レベルの魔物ですね。交渉事などはできないでしょう。 近接戦闘型で、武器は主に棍棒や斧、剣を使用していることが報告されています。知能が低いため防御のいろはは心得ておらず、盾を持つ個体は基本的にはいませんが、稀に盾を持つ個体が存在します。その個体のいる集団は大抵他の、ゴブリンよりも格上の魔物が上位に就いていることがあります。 上位の魔物は、ハイゴブリンが多く目撃されています」 「ハイゴブリンとは?」 一人が手を上げて質問をすると、職員は表情を変えぬまま、説明を続ける。 「はい。ハイゴブリンとは、言ってしまえばゴブリンの強化版の魔物です。ゴブリンよりも高い知能を有してはいますが、それでもかなり低い知能になります。こちらも交渉事ができない程度の知能ですね。 戦闘スタイルはやはり近接戦闘型で、武器はゴブリンと同じく棍棒や斧や、剣を使用します。ただ、ここに盾が装備されているという違いがありますね。盾を装備していることにより、皆さんの攻撃が弾かれてしまうおそれがあります」 いずれの場合においても、油断をすれば危険ですし、最悪の想定だってあり得ます。 職員が念を押すように注意を促せば、場の空気が一層引き締まる。 それを確認した職員は、改めて現状の説明を始める。 「また、今回の道中は整備された穏やかな山道ですが、道を挟んで両側には木漏れ日が入る程度に木が生い茂っています。隠れるには絶好の地形でしょう。 その道を抜けた先にある百合の群生地は、見晴らしの良い開けた場所で、世にも珍しい青色の百合が咲き乱れているという話です。とても美しい景観なのでしょうね」 資料を閉じた職員は、それから、と続ける。 「今回依頼人は、自分自身の手で花を入手することにこだわっております。また、贈り物の花であるため、護衛対象の他に、花にもできるだけ気を配ってあげてください」 それでは、頑張ってください。 職員はそう言って、一同と一匹を送り出した。
陰謀渦巻く?芸能大会
聖護院須天 GM
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
ほんの少し
公開日
2019-01-22
予約期間
開始 2019-01-23 00:00
締切 2019-01-24 23:59
出発日
2019-01-29
完成予定
2019-02-08
参加人数
7 / 8
フトゥールム・パレス入り口の掲示板に、ある催物の告知をする貼り紙があった。 『芸能大会開催!』 ・芸能・芸術コース主催の技能コンテストですが、全てのコースの学生が参加出来ます。 ・歌唱とダンスの二つの部門でコンテストを行います。各自得意な技能でパフォーマンスを行って下さい。 ・優勝者には記念品を贈呈。 奮ってご参加下さい! 当日の会場は第五校舎です。 芸能・芸術コースの学生向けの大会だが、彼等の歌やダンスを見たり互いに交流する機会として、毎回他コースからも多くの学生が参加してお祭り騒ぎになる大会である。 「ダンスなら行けるか……?」 眉間にシワを寄せ、貼り紙を真剣な目で睨んでいる一人の少年がいた。武神・無双コースに通うヒューマン、【クルト・オーエン】だ。金髪に青い瞳を持った高身長で筋肉質の彼は、傍目にも歌や踊りを得意とするタイプには見えない。実際にあまり歌は得意ではないのだが、彼にはこの大会に参加する理由があった。 「芸能大会だって! まりりんも参加するんでしょ?」 クルトの横から貼り紙を覗き込んだ芸能・芸術コースのフェアリー、【ムニン・フォスター】が同じコースに通う【マリエーヌ・プレナン】に話を振った。 「ええ、楽しそうね!」 マリエーヌはクルトと同じ金髪と青い瞳を持つ、小柄でスレンダーなエルフの少女である。 彼女の声を聞いたとたん、クルトはビクッと身体を震わせ背筋を伸ばして硬直した。頬がうっすらと赤く染まっている。 そう、彼はマリエーヌに恋をしていたのだ! だが、小さい頃から格闘の練習ばかりしていたクルトは非常に奥手であったため、マリエーヌに声をかけることもままならないのだった。 「……」 硬直し、無言で立ち尽くす彼の横でエリアルの少女達は会話を続けていた。 「ムニンはダンス部門に出るの?」 マリエーヌが友人に顔を向けると、肩まで伸ばしたストレートの髪がフワリと広がり芳しい香りがクルトの鼻に届く。 「もっちろん! むにむに頑張っちゃうよ☆」 明るい声でポーズを取るムニン。明るい茶色の長髪を後ろでまとめてポニーテールにし、エメラルドグリーンの大きな目をウィンクさせた。 少女達が去った後、クルトは大きなため息をついて自分の不甲斐なさを悔やんだ。 「はぁ~、せめて挨拶ぐらい出来ないのか、俺!」 そのまま肩を落とし、トボトボと寮に戻るのだった。 一方、ムニンはマリエーヌと話しながら先ほど隣に立っていた少年の事を考えていた。 (あの男の子、無双コースのクルトだっけ? あれはまりりんに惚れてるわね!) おっとりとして色恋に疎い友人に、彼を紹介してやろうと目論むフェアリー。 (芸能大会は丁度いいわね。でもむにむに一人じゃこののんびり屋さんをその気にさせるのは大変だわ) 「そうだ!」 急に大きな声を上げた友人を不思議そうに見つめるマリエーヌ。 「どうしたの?」 ムニンは手をばたばたと振って誤魔化し、マリエーヌに別れを告げた。 「あはは、なんでもないよっ☆ むにむにはちょっと用事があるから、また後でね!」 手を振り返し、どこかへと走り去っていく友人を見送ったマリエーヌはのんびりと散歩をしながら寮に帰った。 その後、ムニンは数人の学生達を呼び出して協力を要請していた。 「みんなに集まってもらったのは、まりりんのためなの☆」 彼女の要請は、芸能大会に参加してさりげなくクルトとマリエーヌの距離を縮める手伝いをして欲しいというものだ。 「あんな奥手くんとのんびりちゃんを一気にくっつけるのは無理だから、まずはお友達にしちゃいましょ~!」 意外と現実的なムニンの提案に、そのぐらいならと学生達も協力を約束した。 「それぞれ得意な事があるだろうから、やり方は皆に任せるよ☆ むにむには皆の動きを見て合わせるからね♪」 こうして、ムニン命名『クルトの恋を応援し隊』が半ば無理やり結成され、学生達は当日に向けて作戦を練り始めた。 そんな学生達を見て、ムニンは一人ほくそ笑むのだった。 (ふふふ、恋のキューピッド同士がくっついちゃう事だってあるよね☆)
はじめての魔法使い
桂木京介 GM
ジャンル
冒険
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
少し
公開日
2019-01-22
予約期間
開始 2019-01-23 00:00
締切 2019-01-24 23:59
出発日
2019-01-29
完成予定
2019-02-08
参加人数
8 / 8
さんさんと陽光ふりそそぐ学園内にあって、この一角はまるで異空間だ。 まだお昼前、ずっと青空だったはずなのに、木々に覆われて空は陰り、どこからきたのか瘴気のようなもやがたちこめている。木の枝に乗った数え切れないほどのカラスが、ギャアギャアとせせら笑うように鳴く。なかば土に戻った枯葉だらけの地面が、踏むたびにみしりと湿った音を立てた。 「……よく来た」 暗がりからぬっと現れた人影に、驚いて叫んでしまう新入生もいた。 「どうした……私の生徒なのだろう……?」 低い声である。薄ら笑いを浮かべている。 死人のような顔色をした、背の高い男だった。 ところどころに黄金の意匠をほどこした黒いコートを着ている。右手に、赤い石をはめた樫の杖を握っていた。 まだ若い……のだと思われる。といっても、目に浮かぶ表情は老人のような印象も与えた。 目の下にある隈は深く、眼球は充血していて三日くらい寝ていないように見えた。闇のように黒い髪を長く伸ばし、頬にも黒い無精ヒゲをちらほら生やしている。 しかし顔立ちは整っているので、ちゃんとした格好をして身なりを整えれば女子に人気が出るかも――と余計なことを考える生徒もいた。 「おはよう……初級魔法術の教師、【ゴドワルド・ゴドリー】だ」 皆、恐る恐る「おはようございます……」と返すほかない。 この男に似合うあいさつは、どう考えても「こんばんは」ではなかろうか。 でなければ「おやすみ」、あるいは「ご冥福をお祈りします」……? 「魔法の授業は、この『センジュの森』中央付近で行う。森の奥にトーテムが立つ広場があるはずだ。制限時間内に広場まで来るように」 制限時間? いきなりトーテム(木彫りの柱)とか言われても……? ざわつく生徒たちをゴドリーは冷ややかに一瞥した。 声を荒げたわけでもないのに、それだけで皆は水を打ったように静まる。 「私は先に行ってそこで待っている。ただし! 日没を過ぎればタイムオーバーだ。帰らせてもらうよ。脳内妻が夕食を作って待っているのでね……」 いま『脳内』って言わなかったか!? でも誰も聞き返せなかった。 「……ちゃんとひとかたまりになって移動したほうがいいぞ。はぐれて遭難でもすれば、次に見つかったときは白骨やもしれん……。それに、少々だが原生動物もいるようなのでな……肉食の……」 その言い方はなんだか楽しそうに聞こえた。 「せっかくだ。覚えたての魔法なり技術なりを試しながら来るといい。小さな怪物は追い払えばいいし、大きな怪物は……ま、自分たちで考えるんだな……」 そこまで言っておいてあとは独り言のように、 「そういえばこの森には、どこかから逃げ込んだ【餓鬼】の集団がいると聞いたな……あいつら若い女の太股にかじりつくのが大好きらしい……もちろん、『死んだ』若い女のな」 と呟いたりする。 「だが連中は火に弱いという話だ。一匹一匹は弱小だが、数で来られると面倒というもの。近づけさせないのがまず大事だろう……」 それに、とゴドリーはなぜかクワと両腕を振り上げ威嚇するようなポーズを取った。 「……あと、これが出る」 カパッと口を開く。大真面目な表情のまま。 このジェスチャーがなにを意味しているのか不明だ。 生徒たちが凍り付いたように反応しないのを見ると、 「……形態模写……モノマネだ」 ポツリと彼は言った。そうしてさらに、 「笑え」 と付け加える。 あははははは、と生徒たちは引きつった声を上げるほかない。もしかして彼、自分ではお茶目だとか思っていないか……? 「【ジャバウォック】、知ってるか? いま私がやったようなポーズのやつだ。熊がよりおっかなくなったようなモンスター、とでも思えばいいか。長い腕をしており、強力な両手の爪、それに顎をもつ。熊よりずっと好戦的で、いつも腹を空かせているようだな」 ポーズをやめてゴドリーは続けた。 「頭は悪いが恐れも知らない。弱点らしい弱点はないので、得意の爪攻撃を活かせない地形を選んで戦うべきだろう。ま、戦うとしたら、の話だが……いきなり背後からガブリとされたら防ぎようがないからな」 以上、説明は終わりだ、とゴドリーは杖を握り直した。 「せっかくだ。道中、魔法の授業の予行演習でもするがいい」 では待っているぞと言い残すと、どこに隠していたのか、ひらりとグリフォンに彼はまたがったのである。 「グリフォンを使うなどのズルは禁止だ。歩いて来い。急げば日没までには間に合う。間に合わなかったら……まあ、翌朝まで生き延びるんだな……」 そうして姿を消してしまった。 こっちは初心者なのに! と不満を言うなかれ。これがゴドリー流の授業なのである。 仕方がない。君たちは、恐る恐る森に足を踏み入れる。
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