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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド
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そうよ私は蛇使い座のヲンナ
七四六明 GM
ジャンル
シリアス
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-10-15
予約期間
開始 2020-10-16 00:00
締切 2020-10-17 23:59
出発日
2020-10-24
完成予定
2020-11-03
参加人数
2 / 8
魔法学園フトゥールム・スクエア学園長【メメ・メメル】が持つ執務室の一つが開けられる。 突然の来訪者に驚いたのは最初だけで、入って来た人の顔を見るなり、メメルは嬉しそうに顔を綻ばせた。 「おっすおーっすお疲れさん☆ 景気はどう? ってか、成果はどうだった?」 「相変わらずお元気そうで何よりだわ、学園長。でも三か月間も遠征に行ってた生徒に、もう少し労いの言葉があっても良いんじゃなくて?」 もう、と【紫波・璃桜】(しば りおう)は不満そうに髪を掻き上げ、ソファに深々と腰掛ける。荷物持ちで付き添っている二体のシルキーが、代わりに深々と頭を下げた。 「成果も何も、私怒ってるのよ学園長。私がアジトを突き止めるため長く出ていたって言うのに、こっちの何の関係もないところで、アジトの手掛かりを見つけちゃうだなんて」 「んー、何のことだったかな?」 「アルチェで炸裂の種の密売人を捕まえた時、情報を吐かせたんでしょう? 当人から聞いてるわよ、まったく……」 「あちゃー、バレてたか。さすが、あのお爺ちゃんのお弟子さんだ。一体どこで知ったのやら」 「偶然よ、偶然。奴らのアジトを探してる時に聞いただけ。それに私が今日戻って来たのは、直接文句を言ってやるためだけじゃないわ」 「おぉ! 何かしら情報を掴んでくれたんだねぇ。さすが璃桜たん♪ やる時はや、る、お、と、こ♪」 「生物学的にはね。私はそう、言うなれば蛇使い座のヲンナ……そんなヲンナが手にした情報によると、近々とある盗賊が堂々と店を貸し切って、とあるお店で酒宴を開くそうよ。私としてはそこで、一網打尽にしたいのだけれど……」 「人手の問題ってわけか! 任せろ! すぐ募集してやる!」 「助かります……彼らは例の集会においても、外の警備を任される。彼らを捕まえて、正確な場所はもちろん、作戦当日の防御を薄くしたいの。まぁ、メメ・メメル学園長なら、これくらいの事はすぐ思いついたから、奴らが簡単に手配出来たんでしょうけど?」 「えぇ、どうかなぁ。買い被り過ぎかもしれないぜぇ?」 食えない人ね、と璃桜は立ち上がる。シルキーに剣を渡し、無言で任務の終了を報告した。 「ではメメ・メメル学園長? 人選はお任せします。驟雨(しゅうう)の討伐も大事ですけど、個人的にはこちらを急いで貰いたいわ。せっかく盗賊や山賊、海賊らが一気に集まる機会を見つけ出したのですもの」 「わかってるってぇ♪ もう、璃桜たんってば、そんなに眉間に皺寄せてると、刻まれちまう、ぜ♪」 「刻まれたら、それはお爺ちゃんのせいよ。この世で最も怖いのは、爪を隠せる能ある鷹と、武器を隠せる能ある人、だなんて教え込んでくれたんですからね」 「そういえば君の他のお弟子くんは、最近後輩と仲良くやってるみたいだぜ? 璃桜たんも、ようやく戻ってこれたんだし、後輩と交流でもしたらどうだい☆」 「……失礼したわ」 部屋を出た璃桜は、シルキーから鏡を受け取る。 メメルに言われた眉間の皺が気になって見ると、確かに厳つい皺が年輪として刻まれつつあるように見えた。 ――最近後輩と仲良くやっているみたいだぜ? 仲良くやっているうち、腕が鈍っていなければいいのだが。それとも弟、妹弟子らと仲良くしているその後輩とやらが、自慢の腕前を見せてくれるのか。 さすがに眉間の皺を消してくれるまでではないだろうが――。 「お手並み拝見、と行きましょうかね」 ヲンナの舌が、さながら蛇のうねる二又の舌の如く、唇を啜り舐めた。
ゴブリンを捕まえて――
K GM
ジャンル
戦闘
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-10-17
予約期間
開始 2020-10-18 00:00
締切 2020-10-19 23:59
出発日
2020-10-26
完成予定
2020-11-05
参加人数
3 / 8
●赤猫は城にいる。 サーブル城にある客間の一つ。薪がないのに暖炉ではずっと火が燃えている。暖かい。 だから【赤猫】と猫たちは、そこをたまり場にしている。 空ビンが幾つも転がり絨毯は擦り切れ毛だらけシミだらけ。カーテンは千切れてぼろぼろ。壁紙はあちこち剥がれ、腰板も床板もあますことなく引っ掻き傷がついている。部屋に置かれているグランドピアノは、蓋が壊れ鍵盤が陥没し全ての弦が千切れている。表面に施されていた重厚な螺鈿細工もはげちょろになり、見るに堪えぬ有り様。 暖炉の前の長椅子で丸くなっていた赤猫が、体を伸ばし起きてきた。 癖の強い赤毛をかき、緑の目をしばしば瞬き、うああ、とあくびをする。それから周囲を見回し、中身の詰まったビンがないことを確認する。 不満そうにうう、と声を上げ彼女は、客間を出て行く。 それに気づいた何匹かの猫がついていく。ほかの猫たちは暖かさの中にまどろみ続けている。 ●人間たちの話。 シュターニャ。 ビジネスタウンの一角にある高層建築――各地で観光業を展開している『ホテル・ボルジア』の本社だ。 社長室には社長の【セム】がいる。これは珍しいことだ。不在社長と呼ばれるほど、現地視察を好む人だから。 椅子に腰掛け書類を見る彼女の肩越しに【ラインフラウ】が顔を出している。 ローレライの露を含んだ青い髪が、ヒューマンの乾いた灰色の髪へ、絡み付くように覆いかぶさる。 「学園から、例の遺品の鑑定結果の連絡が来たのね」 「ええ、やはりノア一族のものらしいとのことです。鎧も、宝飾品も、たやすく壊せる代物ではないそうですよ。魔法の強化処理が施してあるそうでね。こういうことは、あなたの方が詳しいと思いますが」 「そうね。あれを壊せるとしたら、それは普通の人間じゃない。そして、普通の魔物でもない」 「じゃあ、シャパリュがしたということですね?」 「証拠はないけどその可能性は高いわ。気になる? セム」 「なりますとも。あの城に眠っている貴重品は、他にもまだたくさんあるはずです。それが軒並みあんなざまにされでもしたら、目も当てられない――ラインフラウ、聞きたいことがあるんですけどね」 「何かしら」 「魔物というのは、生物というカテゴリーに入るということで間違いないですか?」 「そうねえ……少なくとも血肉のあるものについては、そういう理解でいいと思うけど」 そこへノックの音が響いた。 「社長、お話が――」 ●猫、お出かけしない。 赤猫は地下の奥深い場所にいた。 数限りない瓶が奥の奥まで並んでいる――ワインセラーだ。 「うふ」 満足げに喉を鳴らした赤猫はそこから、手当たり次第に瓶を引っ張り出し、抱え、客間に戻っていく。台所に入り込んで勝手に持ち出したクリスタルのゴブレットに中身を注ぎ、ぐい飲みする。それから、長椅子の上に放置していた書き付けを眺める。それは、つい最近この城に入り込んできた人間が残していったものだ。 そこには【黒犬】が現在、魔法学園フトゥールム・スクエアの近郊に潜んでいるようだと記してある。 「ふうん、ゆーしゃの学校……ゆーしゃ……」 赤猫は切れ込みのようになるまで両目をすがめた。 彼女は黒犬のことが大嫌いだ。さりとてその動向に対し無関心ではいられない。なぜならその死が自分の死に直結するからだ。 (そもそもあのポンコツが、肝心なところで臆病風をふかすなんてポンコツなことさえしてなきゃあ、あいつらが呪いをかけ終える前にバラバラに出来てたのに) 苛立ち紛れに赤猫は、しゅうっと息を吐いた。怒った猫がそうするように。細かな電流が絨毯を焦がす。長椅子の表面も同じく。 しかし彼女は、すぐさま書き付けが指定する場所に行ってみようとは考えない。感じるのだ、どうやらもう少ししたら、雨が降りそうだということを。 赤猫は猫をベースに作られた魔物なので、濡れるのがすこぶる嫌いなのである。こんな日に遠出する気には、さっぱりなれない。 ●社長、出掛ける。 セムは入ってきた重役から、つい最近底値で買い叩いた土地の整備が中断したとの報告を受けた。 原因はその周辺界隈に、ゴブリンの群れが出没したからだという。 幸いにもその土地はシュターニャに近い。なので、すぐ救援の傭兵が駆けつけてきた。だから深刻な人的被害はなかった。 だが困ったことに追われたゴブリンどもは、『ホテル・ボルジア』の所有地に逃げ込んだ。 「私有地に他人が勝手に踏み込むことは出来ません。なので、立ち入り許可を願いたいと、傭兵側から連絡が来ています。ゴブリンにつきましては、現在周囲を包囲し逃がさないようにしているので――」 そこまで聞いたところで、セムが話を遮った。 「ゴブリンは何匹ぐらい残っています?」 「ええー、と、10~15匹くらいだそうです」 セムは素早く目を動かした。何事か考えているようだった。ほんの少しの間を置いてから重役に、こう言う。 「先方には私が現場に行って許可するまで、そのまま動かないように伝えてください」 その命を受け重役は、退室して行った。 ラインフラウがセムに流し目を送る。 「セム、何かいいこと思いついた?」 「いや、思いついたというか――確認をしたいと思いましてね」 ●三兄弟、初めての実戦。 狼ルネサンス三兄弟、【ガブ】【ガル】【ガオ】は大きな廃屋……廃業して久しい古式旅館の前で、ドラゴニア老教師【ドリャエモン】に文句を垂れていた。 「なあ、なんでさっさと踏み込まねえんだよ」 「ゴブリンどもが逃げちまうぜ」 「ここまで来たなら、一気に片付けねえと」 兄弟たちの鼻息は荒い。それもそのはず、先程まで20人の傭兵たちに交じって首尾よくゴブリンを追い散らしたものだから、気が大きくなっているのだ。 ドリャエモンは彼らをたしなめた。鍛えるのに格好な課題が見つかったので参加させてみたのだが、難易度がいまいち低かったかなと思いつつ。 「ここは私有地だ。許可もなく勝手に入ってはいかん。所有者が来るまで待てい。そして目標から目を離すな。敵はもう後がない。死に物狂いになっておるはず。何をどう仕掛けて来るやもしれんのだぞ」 廃屋の周囲はぐるりと囲まれている。ほとんどがシュターニャの傭兵だが、三兄弟同様課題として討伐に参加してきた学園生徒の姿もある。彼女は何故か、分厚い手袋をはめている。そしてその手の中には、褐色の小瓶がある。 馬車がやってきた。廃屋の前で止まった。セムが中から降りて来る。ラインフラウと、それから数人の傭兵を伴って。 彼女は居並ぶ討伐隊に、こう言った。 「立ち入りを許可します。ただし、ひとつ条件があります。全部とは言いませんので、ゴブリンを2匹か3匹、生かして連れてきてくれませんか? なるべく傷をつけないようにして」 彼女は何故か、分厚い手袋をはめている。そしてその手の中には、褐色の小瓶がある。
温泉シャバダ!
ことね桃 GM
ジャンル
日常
タイプ
マルチ
難易度
とても簡単
報酬
ほんの少し
公開日
2020-10-12
予約期間
開始 2020-10-13 00:00
締切 2020-10-14 23:59
出発日
2020-10-20
完成予定
2020-10-30
参加人数
3 / 16
●あらまぁ、びっくり遠足 「お前ら、毎日授業と課題で疲れてンだろ。たまにゃ温泉行こうぜ温泉ー」 武神・無双コースを担当している教師【ペトラ・バラクラヴァ】は学園の昇降口で学生達を集めると偉そうに腰へ筋骨隆々とした手を当てた。 「温泉……ですか? 温泉というとトルミンの?」 「それ以外にどこがあるってんだよ。なんかさぁ、トルミンの温泉周辺に魔物が出たってゆーからまずそいつらブッ倒してさ。で、その後に謝礼として温泉を自由に使ってほしいってさー。アタシも同行するからボランティア兼湯治に行こうぜー」 その提案に学生たちは顔を見合わせた。 魔物といえど千差万別、その辺の森にいるゴブリンのような弱い者ならともかく狂暴極まりない魔物がいるなら危険だ。 そんな彼らに対しペトラは『ははっ』と笑う。 「今回暴れてる奴らはそんなに強かねぇんだと。ただ、数が多いから自警団や傭兵だけだと心もとないってんで手を貸してほしいそうだ。だからまだ戦闘経験の少ない奴らもどんと来いって話になってる」 「……それなら良かった」 ほっとする新入生。そこでペトラは続けて指を3本立て、トルミンの温泉の特徴を紹介を始めた。 「トルミンの魅力、まずひとつめ。トルミンの中心街にほど近い大温泉郷『ギンザーン』の共同露天風呂はなんと混浴。水着着用前提で、集団で入っても問題ないぐらいの広さがある。水着も貸し出しているそうだから気兼ねなく利用してほしいそうだ」 「こ、混浴!?」 「でも変なことは考えんなよ。もし何かあったら監督責任でアタシの拳を飛ばすぜ?」 筋張った拳を力強く突き出すペトラ。 それにぶるりと震えながら学生達は黙って話の続きを聞く。 「で、ふたつめは中温泉郷『ザ・ウォウ』。ここはトルミン中心部から北東に離れた位置にある小規模な温泉郷で、白く濁った泉質が特徴の共同露天風呂がある。湯温がちっとばかり高いから長湯には向かねえが、静かな場所でのんびり休みてえって奴には向いてるかもな」 「なるほど」 「で、問題はみっつめだ。マルカス・デガラス内に秘境温泉地『セミナルーゴ』って地域があるんだが……そこは間欠泉があって熱湯が噴き出すことがあり、慣れていないと危険だ。おまけに魔物も当たり前のように居やがる。だから今回はそこの利用だけは禁止する。セミナルーゴにはギルッチ団の屯所もあることだし、治安維持は奴らに任せた方がいいだろう」 とにもかくにも、今回はトルミン周辺からザ・ウォウまでの魔物を駆逐すれば十分らしい。 ペトラは『ま、そんなに離れたとこに突っ込まなきゃ丁度いい体慣らしと息抜きになんだろ』と不敵に笑うと指の関節をゴキゴキ鳴らした。 ●温泉に着いたら何をしよう? 魔物討伐の課題は思いのほか呆気なく終了した。 それは魔物の多くがさほど強くないものだったのと、学生達に負けるまじと傭兵達が奮起したことも大きな理由である。 いずれにせよ学生達には大きな時間が与えられたわけで。 彼らは『これからどうしよう?』と顔を見合わせた。 トルミンはかつて火山活動のもとで『死した領域』とまであだ名されるほど荒れた地だったという。 しかしある修行中の勇者が温泉を発見、そこで傷を癒したことから今や見事な温泉街として発展していた。 今の学生達の目の前に広がる風景は立ち並ぶ温泉宿や土産屋、その後ろに広がる雄大な山々。 秋色に染まり始めた山の木々は少しだけアンニュイな彩りだが、それもまた美しい。 ……ヴド・ベルゲだけは火山灰の影響で殺風景な山肌を晒しているが、それもこの街ならではの光景だろう。 そんな中でさすがに遠出こそできないが、湯に浸かりながら何か物思いに耽るのはいいことかもしれない。 または親しいひとと言葉を交わし、楽しい時間を過ごすのも。 商店街でまだ見ぬ土産品やグルメを探してみるのも面白そうだ。 ――さて、あなたは帰還までの時間をどうやって過ごされますか?
闇鍋と 煮詰めて怪し 南瓜宴
むたさん GM
ジャンル
コメディ
タイプ
ショート
難易度
とても簡単
報酬
ほんの少し
公開日
2020-10-10
予約期間
開始 2020-10-11 00:00
締切 2020-10-12 23:59
出発日
2020-10-18
完成予定
2020-10-28
参加人数
3 / 8
フルトゥーム・スクエアにはさまざまなカリキュラムが組まれている。 古い生活様式や信仰を学び、現在に役立てる民俗学もその一つだ。 ●教室内 「魔王出現以前には精霊と共に行う祭事も存在した、と前回の授業でザックリ教えたと思うが……」 民俗学の教師である【ヤテラ・ヌイ】は自前のノートを捲りながら生徒たちに講義をしている。 今も昔も差異はあれども精霊への信仰が主流となっている。 現在でこそ半ばお伽噺に近しい存在となってしまった精霊だが、確実に存在するモノだ。 「残念なことにほとんどの記録が魔王の出現による混乱で消失してしまっている……」 ヌイは悲しそうな表情を浮かべる。 「まぁ当然だな。ただでさえ古い記録だ、仕方ないとしか言いようがない」 一拍おくとヌイはまたいつもの表情に戻る。 「しかしな、先生はこの前面白い資料を見つけたんだ」 ノートの隙間から取り出した一枚のボロボロな紙を生徒に見せながらヌイは続ける。 「これは遥か昔、それこそ勇者暦の始まる前。魔王出現以前に行われていた、とあるルネサンス族の祭事について書かれた作法書の写本だ」 生徒の反応は興味半分、疑い半分の懐疑的な態度だが、ヌイは気にも留めず話を続ける。 「この写本の内容は『恵みの多い月に特別な料理を集落一丸で作り、精霊に感謝しつつそれを頂く』という簡単なものだが……。ここからが面白いんだ、これを行うと土の精霊の一種、クシュクシュという精霊が現れることが多いと記述されている」 精霊という単語が出てきたあたりで生徒たちがわずかにざわめく。 「ただ、精霊たちだって暇しているわけじゃない。おそらく現れるというのは眷属、精霊の分身体のことだろう……」 ヌイはさらに一拍おいて次回民俗学の授業で行う内容を告げる。 「次の授業ではこの祭事の再現を行う。民間伝承の類は非常にあいまいなものが多い、本当か嘘かわからないものを調べるのもまた民俗学だ」 ヌイは言い終わると生徒たちにメモ用紙を配り始める。 そこには祭事に必要な料理『豊穣汁』の材料が書かれている。 「ここに書いてある内の、大釜、大量の南瓜スープは俺の方で用意しておく、君たちはそれぞれが思う『今年一番思い入れのある食材』を次の授業では忘れずに持ってくるように。あ、あと次は屋外訓練場で授業するからそのつもりで、以上」 渡されたメモには『※料理ができる子は手伝ってね』と一言文末に添えられていた。
芋掘りと子供たち
笹山ぱんだ GM
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
とても簡単
報酬
ほんの少し
公開日
2020-10-05
予約期間
開始 2020-10-06 00:00
締切 2020-10-07 23:59
出発日
2020-10-15
完成予定
2020-10-25
参加人数
5 / 8
●美味しい芋を堀りに行こう 秋は食べ物の季節である。美味しいものは心が幸せになるものだ。 フトゥールム・スクエアから少し歩いた場所にある原っぱ。そこには自然に出来た芋の群生地がある。 そこにある芋はとても美味しく、焼き芋にすれば甘くて頬が落ちてしまうほどだという……。だがその美味しさは掘り返して数時間しか持たないらしく、運ぶのは限度があった。 そしてもう一つ、難点があるのだ。芋の群生地の傍にはとある花が咲いている。ここしか咲いていない特別な花だ。その花の花粉には特別な効果があった。 花粉を吸ったものを数時間子供の姿にしてしまうのだ。なので芋を掘る時は全員子供の姿になってしまう。 非力な手で芋を掘り、そして焼き芋を作らなければいけない。美味しいものを食べるには、試練が必要なのだろう。 案内人の【メグル・ヴィオン】は一年に何度かこの芋の群生地を訪れ芋を食べていた。なのでこの美味しさを分けようと魔法学園の生徒たちに声をかけたのだ。 「いやぁ、いつも一人で食べるの寂しいですし、何より子供の姿で掘るのが大変なんですよね! だから君たちに手伝ってもらうのが一番だと思ったんですよ」 メグルは笑いながらもそう言った。 「焼き芋の用意とか、そういうのも持って行っていただけると嬉しいですね。あ、調味料もあればいいですなぁ、あっはっは」 荷物持ちも用意も全て学生たちにやらせる気が満々のメグルは明るく言う。いや、しかし美味しいものが食べられるのならそれも必要なことだろう。 子供の姿になった時の為に服や装備も変えなければいけないかもしれない。たるんたるんの服では芋掘りもうまくできないだろう。 「あぁ、心配なさらず。子供化は芋の群生地を離れたら数時間で元に戻るでしょう。少なくとも次の日には元に戻っていますよ」 メグルが胸を張り太鼓判を押す。子供の姿でこれからずっと生きていかなくてはいけない、なんてことにはならないようだ。 「君たちもあの芋のおいしさを知ったらきっと病みつきになりますよ!」 にへへ、とメグルは嬉し気にそう語るのであった。
【想刻】忘却の勇戦
白兎 GM
ジャンル
イベント
タイプ
EX
難易度
難しい
報酬
通常
公開日
2020-10-02
予約期間
開始 2020-10-03 00:00
締切 2020-10-04 23:59
出発日
2020-10-12
完成予定
2020-10-22
参加人数
7 / 8
●アリアドネの糸口 ――【カズラ・ナカノト】が。『オスカーという人物に、奴隷として買われた』という情報を、バグシュタット王国にて入手してから、数日の間をおいて。 【フィーカ・ラファール】とカズラは、学園教師である【シトリ・イエライ】に呼ばれ、彼の執務室に来ていた。 その場には『きみ』を含め、今までのカズラの捜索に手を差し伸べた生徒や、シトリに声をかけられる形で、今回初めて協力する者達も多く集っている。 そんな中、シトリは今までの経緯を纏めるように、質問を重ねていく。 「つまり、カズラさん。あなたは純種ドラゴニアに近いその瞳が原因で、仲間として受け入れられず」 「……うん」 「その結果。経緯は不明だが、奴隷となり。【シュリヒ】と言う男により、【オスカー】という商人へ売られた、と」 「……ん。でも、父さんと母さん、は……幸せを願って、『ナカノト』って名前をつけてくれたかも、しれなくて……それ、で……」 「もしかしたら、弟さんがいるかもしれない、ということでしたね。……そして、フィーカさん」 「はい」 「あなたの御父上は『オスカー』という名前で、ご自身もリストニアルタの出身であることを覚えてはいるが、それ以外のことは……」 「おぼえてない。そもそも『オスカー』が父さんの名前だってことも、聞いたときに、ふっと思い出しただけで」 「では、お母様の名前も?」 [……おぼえてない。『きっと、ショック過ぎて、色々忘れちゃったんだめぇ~』って、メッチェせんせーはいってた」 「なるほど。では、その『ショック』の内容については、お話できますか?」 気遣うようなシトリの言葉に、フィーカは少しだけ視線を彷徨わせてから、こくりと頷く。 「……おれの村……リストニアルタ、は。でっかいドラゴンに燃やされて、なくなったんだ」 それは遠い、子どもの頃の思い出。フィーカの話はやはり不鮮明だったが、それでも忘れられない記憶であるからか、その声には熱が籠っていた。 「なんでそうなったのかは、覚えてない。そいつがどうして村にやってきたのかも。でも、そいつがおれたちの幸せをぶち壊したのは、覚えてる」 あの日、あの夜。見たこともないほど大きくて、恐い目をしたあいつが。何もかもを壊して、燃やし尽くしたんだ。 「おれが覚えているのは、そいつを見上げて、『お前のせいだ!』って叫んでたこと。……動かなくなった母さんを、抱えて」 でも、子どもがいくら喚(わめ)いても、ドラゴンには何の痛手にもならない。 そいつは笑うように鳴いてから、悠々と飛び去って。自分たちの前から、姿を消した。 「だから、強くなって。復讐してやろうと、剣を取って。……おれ、『カリドゥ・グラキエス』って奴が、その竜だと、思って」 でも、間違って。ひどい迷惑を、いっぱいかけた。 「おれ、まだ、謝ってない。……あのときは、ごめんなさい」 俯くフィーカに首を振って応えたのは、きっと『あの時』あの場所で、炎と氷を纏いし竜の翼を折った者達だろう。 ゆえに、ふっと微笑んだシトリは、フィーカの頭を軽く撫でててから、片手をあげる。 「ベリル、地図を」 「はい、マスター」 呼び声に応えたのは、【ベリル・ドロン】と名付けられたカルマの少女だった。 シトリの補佐役であり、武神・無双コースの先輩にもあたる彼女は、指示された通りに地図を持ち、机の上に広げる。 そうして目の前に現れたのは、エイーア大陸の縮図だった。その上……円で丸く囲まれた部分――それはシトリが、とある女生徒と共に。流星雨を観測した時につけられたものだ――を、シトリの指先が押さえる。 「フィーカさん。あなたの言うリストニアルタとは、かつてこの地点に『あった』、村の名前です」 『あった』という言葉から、今はもうないのだろうと、『きみ』は気付いた。恐らくはフィーカの言う、ドラゴンの影響で。 同じように、誰もが思ったのだろう。しんとした沈黙の中、シトリは言葉を続ける。 「位置としては、グラヌーゼとエルメラルダの間となります。この村は、なんの魔力反応も観測されない夜に、突然更地となり。生存者もいないとされていましたが……」 なるほど、その原因はドラゴンの襲来であり。そしてあなたが、あの村の、生き残りだったのですね。 静かに告げるシトリは、フィーカに視線を戻した。改めて、自分の生まれた場所を知った少年は、食い入るように丸のついた部分を見つめている。 「そっか……いくら地図を探しても、見つからなかったのは。もう、村が完全になくなって、記される必要がなかったから、なんだ」 「はい。そしてこの話を知っているのも、学園長を含む、各領地の有力者に限られています。一般の方が知れば、無用な混乱を招きますからね」 ですから皆さんも、この部屋で聞いたことは、内密に。 人差し指を唇に寄せたシトリは、まるで内緒話をするかのように、集う生徒達へ笑って見せた。 けれどすぐに、その表情を真面目なものに入れ替えると、 「……いかがしますか? どうやらカズラさんの過去をさらに探るには、フィーカさんの過去をも取り戻す必要があるようです」 向かいますか? あなたが全てを失った、あの場所へ。 その言葉に、フィーカは顔をあげた。あげて、カズラを見る。青と緑の視線が、交わった。 「……カズラは、『思い出したほうが良いのか、悪いのか。わからない』っていってた。そっか、それは。こんな気持ち、なんだな」 でも。カズラは。 「自分自身に向き合うって決めた。なら、おれも……」 向き合うよ。それが答えで、次に進むべき、道だった。 ◆ しかし、リストニアルタの跡地に辿り着いた彼等を迎えたのは。歓喜の言葉だった。 「まぁ、あのヒトの言う通り! また会えて嬉しいわ、『鏡の目を持つドラゴニア(わたくしのダイヤモンド)』!」 歌うように、女が告げる。仮面により表情は見えなかったが、陶酔すらをも感じさせるその声は、どこか場違いで。 だからこそ、『きみ』は前に出る。その腕でカズラとフィーカを、庇うように。 「いやだ。わたくしの宝石に虫がついてる、潰さなきゃ」 「……だれ?」 「まぁ! 覚えてないの? わたくし、忘れたことなんて、一度もないのに!」 カズラの言葉に、女が反応する。そして何故か、べらべらと、喋り始めた。 女は『イストラトス』という犯罪集団を率いる首領であること。 そして過去に、美しい宝石であるカズラの瞳を奪うため、手下たちと共に襲撃したこと。 しかしその時、返り討ちに遭い。半分以上の手下を失ったこと。 「けれど、でもでも! それでもあなたの美しさが、わたくし、忘れられなくて!」 願い、祈り、憎んだ末に。――力を貸してくれる、『あのヒト』に出会えたこと。 「えぇ、だから! 今日が収穫祭なの、おわかり?」 「全く分かりませんが。あなたが私の大事な生徒達に、危害を加えようとしていることだけはわかります」 トン、と。シトリが大杖で地を叩く。そうして広がる魔法陣は、瞬く間に光の壁を発生させた。 その向こうには、女と、その取り巻きである男達……恐らくはイストラトスの残党だろう姿が見える。 「……今のうちに、フィーカさんは探索を。しかしこの壁も、攻撃が始まれば、長くは持ちません」 「わかった! おれの家があったあたり、探してみる!」 「お願いします。そして皆さんは、私と共に」 迎撃を。その言葉に『きみ』は、武器を構える。 ミシリと、光の軋む音がした。
誰がために鐘は鳴る――遺跡探索
鶴野あきはる GM
ジャンル
冒険
タイプ
EX
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-09-30
予約期間
開始 2020-10-01 00:00
締切 2020-10-02 23:59
出発日
2020-10-08
完成予定
2020-10-18
参加人数
3 / 8
――暗い。 ここは暗い。寒い。何もない。 ――ここはどこだ。 何もわからない。何故ここにいるのか、何をしていたのか。 ――ああ、ただ。 死にたくない。死にたくない。死にたくない。 シニタクナイ。 ●校外授業 「それでは、授業を始める」 漆黒のドラゴニア【エイデン・ハワード】は、静かに、しかし教室中に響き渡る声で宣言した。 「本日の授業は、校外にて行う。いわゆる実地訓練だ。しばし座学とする予定であったが、とある遺跡に少々不備が出た。つまり、魔物が湧いた。よって、実技訓練を兼ねた校外授業とする」 ハワード先生が言うには、こういう話だ。 遺跡というが、その実態は坑道なのだと言う。幾つもの坑道口がある為に、全てまとめて遺跡と呼ばれているような状態だ。元々は鉱山で、それなりに良質な石が取れたらしい。 今回探索を行う坑道の構造はいわゆる水平坑道と言われるもので、高低差はほぼ無い。有毒なガスや水があふれているなどの事態にはなっていないので、洞窟探索と考えても良さそうだ。 「もちろん、罠が作動しなければ、だが」 廃坑とする際、魔物などが棲みついたりしないよう、元所有者が罠を仕掛けたそうなのだ。今も稼働するとなれば、それはもしや死に直結しうる罠の可能性も捨てられない。 「もっとも、魔王・覇王はもちろん、勇者や賢者を目指すのであれば、いついかなる時でも様々な事態を想定し、準備を怠ることなく臨むべきだ」 さて、坑道の内部は木材で補強はしてあるが、いかんせん古いものだ。多少の爆発には耐えうるだろうが、積極的な破壊活動を試みたならば、天井が落ちる可能性がある。 また坑道は小規模のもので、半日あれば十分探索が可能だという。幾つかの分かれ道はあるものの、迷子になるようなことはないだろう。 湧いた魔物は、ゴブリン、キラーバット、スライムナイトと取るに足らない存在ではあるが、坑道を根城に数を増やされると厄介な存在だ。これらの討伐が、目下の目標となる。 「今回の坑道は、さして広くない。人数が多ければ、2つの坑道を探索してもらう。場合によっては私が引率として後ろから眺めることにするが、基本的に手出しはしない。各々準備を怠るな」 「それでは、移動する」 学園内のトーブを利用して、一瞬で件の坑道へと辿り着く。荒涼とした山腹。坑道の入り口で穴だらけになった岩肌が現れたのだった。 「――む?」 ハワード先生が眉間にシワを寄せる。 決して強大な力ではない。だが――強い意志を感じる。これは、一体、何だ。 「先生?」 生徒の一人が不安そうに声をかける。ハワード先生は口をつぐんで逡巡する。 このまま生徒だけで行かせて大丈夫だろうか。この強い意志は、悪意ではないものの、敵意になりうる強さだ。――言葉の通じる相手ならば良いが。 「――坑道の奥に『何か』がいるようだ。邪悪なそれではなさそうだが……さて、何者か」 腕を組み、坑道をじっと見つめる。ざわざわと蠢く魔物の他に、ただ1つの思念のもとうずくまる『何か』がいる。 「――『シニタクナイ』……か」 ポツリと言い、生徒がハワード先生を振り仰ぐ。ハワード先生は神妙な顔つきで、生徒を見やった。 「『何か』の調査も追加とする。心してかかるように」
ミラちゃん家――黒犬さんからお手紙
K GM
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-10-03
予約期間
開始 2020-10-04 00:00
締切 2020-10-05 23:59
出発日
2020-10-12
完成予定
2020-10-22
参加人数
6 / 8
●現在の村 学園領域にほど近い、山中のとある村。 ここではつい最近、【黒犬】という魔物に村人数人が殺されるという事件が起きた。 それを受け学園は、週一の頻度でこの村に、巡回員を派遣している。また村に魔物が舞い戻ってきていないかどうか確認するために。 しかし事件が発生してから今日に至るまで、その兆候は全くない。 だが、これは別に不自然なことではない。事件の目撃者であり当事者の【トーマス】から聞いたところによれば、黒犬の興味は一にも二にも、自分にかけられた呪いをとくことだ。 村人を襲って食ったのは、呪い解除のカギを知っている(と彼は思っている)のは【カサンドラ】の居場所を突き止めるための手駒――つまりトーマスを手なづける行為の一環だったのだろう。現に彼は黒犬を慕っている。自分を村人の暴力から救ってくれた相手として。 ……とにもかくにもこの季節、村人たちは実りの収穫に精を出す。キビ、粟、ソバ、栗、そして芋――米や小麦といった一般的な穀物はほとんど栽培されていない。うまく育たないので。 腰の曲がった年寄りたちが、地面いっぱいに敷き詰められた枯葉を踏み締め、熟れ落ちた栗を探す。足で実を取り出し、火挟みで背負いカゴに入れて行く。 「マンさんとこのトーマスは、学園へ行ったきりだてなあ」 「ああ。トマシーナもなあ」 「向こうから何か連絡はあっかい?」 「どうやら、ねえみてえだよ」 「そっかい。あれだろうか、もう村にゃ戻ってこねえだろうか」 「多分、そうなんでねえか――そのほうがいいだよ。あの子たちも、おれたちもよ。死人も出てるでよう。戻ってこられても、おっかなくてさ」 「あの子が、なんかにとっつかれたのは間違いねえて……」 「不憫と言えば、不憫じゃが」 「まあ、のう――」 煮え切らない話を煮え切らないままで終わらせた彼らは、背伸びして空を仰ぎ見、腰を叩く。 ●現在の黒犬 村から山4つ分離れた、山奥の坑道跡。黒犬の現アジト。 入り口には、手下となった犬たちが張り切って番をしている。どれも体が大きく、強そうだ。 そこへ、首に布を巻いた貧相な犬がひょいひょいやってきた。番をする犬たちへ尻尾を振り挨拶、坑道へ入って行く。 しばらくして中から轟くような咆哮が聞こえてきた。 番犬たちはその場で飛び上がり、尻尾を巻く。 さっき入って行った犬が弾丸のように飛び出してきたので、聞く。 「ナンダ」 「ナンダ」 貧相な犬はおろおろと答える。 「ワカラナイ」 黒犬は手の中にある手紙――今彼は人間に姿を変えている。そうでないと、手下が首にくくりつけてきた布を取りづらかったので――を破り捨てた。 その手紙は、トーマスが連絡役の犬に託して彼に送ってきたものだ。 手紙の冒頭には、こう書いてあった。 『カサンドラを見つけた』 そこまでは黒犬にとって朗報なので、怒るべき要素はない。 続けてこう書いてあった。 『カサンドラがいる場所は山の中の施設だけど、そこは結界で厳重に守られている。もし魔物が近づいたら、すぐさま分かるようになっている。もし魔物が出てきたら、腕に覚えのある先輩たちにすぐ集まってきてもらうよう手配しているって、僕らの面倒を見ている人達は言ってた』 そういうこともまあ、予想出来なくはなかったから、やはり怒るべき要素はない。 問題はここから後なのだ。 『カサンドラが記憶を無くしているというのは、ウソではないみたい。本人は、自分でも忘れていることを思い出したいと言っていた。だから、黒犬がもっとよく説明してあげたら、多分そう出来るんじゃないかなって思う』 このままトーマスを放置しておいたら連中に取り込まれるのではなかろうか、という懸念を黒犬は抱く。 自分がいる場所などは教えていないから、そうなったとして即危険があるわけではないにしろ、呪いの解除達成という目的が果たしづらくなるのは確実だ。 (あのガキ、早速丸めこまれやがって……) トーマスが住んでいた村に火をつけてやろうかと一瞬黒犬は思ったが、すぐ考え直した。 村が焼けても本人は痛痒を感じまい。村で迫害を受けていたのだからして、そこが被害を受けるならば、むしろ喜ぶはずだ。 黒犬は何度も舌打ちし、岩をガリガリ噛み砕きながら考える。どうしたらいいものかと。 しばらくしてから、伝令犬が首につけていた布を広げた。 洞窟の中を見回し、黒い石の欠片を拾う。そして不慣れな手つきで紙の裏に、ガリガリ何か書き始めた。 ●現在の学園 「あ、きたの」 トーマスはここ一週間ほど見かけなかった野良犬に、餌をやった。水も。とてもくたびれているみたいだったので。 犬は大いに尻尾を振って飲み食いした後、鼻を鳴らす。 トーマスは頭を撫でてやりながら、犬の首についていた布を取って、広げた。 そこには黒炭のようなもので、以下の文が記されていた。 『カサンドラに伝えろ。忘れていることを思い出したいならその隠れ家から出てこいと。そして学園の外に来いと。それなら忘れていることを初めからしまいまで全部教えてやると。それからお前、こんな手紙では詳しいことがよく分からん。お前も外に出られるんだったら出てこい。直に話が聞きたい。道案内はそこの犬がする。それが出来ないならもっと詳しく書いたものをよこせ』 トーマスは考え込んだ。 黒犬のいうことはもっともだ。こんな短い手紙では、詳細を伝え切れない。直に会って話すのが最も確かだろう。 だが、自分は勝手に学園の外に出ていいものなのだろうか。 (多分、それは駄目だ。僕は子供だし、保護されているっていうことでここにいるんだから) カサンドラは大人だが、彼女だって同様だろう。保護されてここにいるのだ。許可もなく勝手にどこかへ行くことは許されないに違いないし、そもそも許可を取りたがらないだろう。黒犬の事を怖がっているようだし。 (じゃあ、やっぱり手紙かなあ……) 結論的にはそうなるものの、トーマスは、出来れば黒犬の意志を汲んでやりたかった。 同時に、この施設で世話をしてくれている人達に、このことを全部黙ったままでいるのも悪いように感じた。 手紙を手でくしゃくしゃに、黒犬が書いた返信の『それからお前』から『書いたものをよこせ』までをもみ消す。そして、大人たちへ見せに行く。
山荘の怪異
こんごう GM
ジャンル
推理
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
通常
公開日
2020-09-30
予約期間
開始 2020-10-01 00:00
締切 2020-10-02 23:59
出発日
2020-10-09
完成予定
2020-10-19
参加人数
2 / 8
「学園の生徒さん達ですね。ようこそいらっしゃいました」 村の門をくぐった学生達を、白髪混じりの髪を七三に分けた、村長と名乗る初老の男性が出迎えた。 ここは、フトゥールム・スクエアにほど近い山間の村『オータムーン』。 林業と農業が盛んということ以外、取り立てて目を引くような物の無い、いたって普通の村だ。 そんな村の奥まった場所に、およそ場違いな建物があった。 それは、とあるヒューマンの富豪だか貴族だかが、避暑地の別荘として数十年前に建てたものだと言われていた。 別段、観光地として名が知られているわけでもないこの村に、何故そんなものを作ったのか、理由は分からない。 金持ち特有の気まぐれなのだろうと、村人達は気にも留めなかった。 別荘が出来て暫くの間は、持ち主とその家族が訪れる姿を見ることもあった。 村に適度に金を落としてくれたし、横暴な振る舞いをするわけでもなかったので、当時の村人達は好意的に受け入れていた。 当時を知る村人によると、一家の中に小さな子猫を抱いた、人形のように愛らしい少女がいたらしい。 いかにも育ちの良いお嬢様という感じで、明るく礼儀正しい子だったようだ。 「少々、悪戯好きなところがあったのが玉に瑕じゃったが……」 当時の事を知る村長は、懐かしそうに目を細めた。 悪戯と言っても、そう深刻なものではなく、微笑ましい類のものだったようだ。 ところが、ある日を境に、その一家はぱったりと姿を見せなくなってしまった。 詳しいことは分からないが、没落してしまったのでは無いかと言われていた。 管理する者が居なくなった別荘は、荒れ放題に荒れ、かつて茶会などが開かれたであろう広い庭園は雑草が生い茂り、長年にわたって風雨にさらされた建物は一部が倒壊している有様だ。 このまま放置していては村の景観を損ねるし、第一、村の子供達が遊び半分で入り込んで、怪我をしてしまう危険性もある。 そんな経緯もあって、村では近々取り壊しが行われることになっていた。 ところが、取り壊しを行う前日の夜、村の若い恋人達が別荘の敷地内に侵入した事があった。 肝試し感覚で訪れたのか、それとも別の目的があったのかは不明だが、その二人が泡を食って逃げ帰って来たのだ。 逃げ帰った彼らは、部屋の中から身の毛がよだつような唸り声が聞こえたとか、小さな女の子の笑い声が聞こえたとか、何者かが屋内を走り回る音が聞こえた、などと訴えて来たのだ。 村人の大半は半信半疑ではあったものの、何か問題が起きてからでは遅いという村長の決定で、フトゥールム・スクエアの勇者の卵達に調査を依頼してきたのだった。 「元々取り壊す予定なので、建物の損壊については、気にしていただかなくて結構です。むしろ、思いっきりやってもらったほうが、手間が……ごほん」 村長は誤魔化すように咳払いをした。 学生の一人が、この村もしくは、別荘の立っている土地に、何かいわくなどは無いのかと尋ねた。 「ううむ。とんと思いつきませんなぁ……ああ」 まるで心当たりがないとばかりに首をひねる村長だったが、何かに気付いたように声を上げた。 「そういえば、その一家の女の子ですが、病弱な子だったらしく、彼女の両親がこの村に別荘を作ったのも、その子の静養のためと聞いておりましたな。その子やその家族がどこでどうしているかまでは……」 村長は言葉を濁した。 いずれにしろ、何者かが潜んでいるらしい廃屋をそのままにしておくわけにはいかない。 山賊が隠れ家に利用しているという可能性だってあるのだ。 村の治安のためには、放置するわけにはいかない。 学生達は、準備を整え、廃別荘へと向かうことにした。
【体験】月夜に君と「____」
根来言 GM
ジャンル
イベント
タイプ
マルチ
難易度
とても簡単
報酬
通常
公開日
2020-09-11
予約期間
開始 2020-09-12 00:00
締切 2020-09-13 23:59
出発日
2020-09-22
完成予定
2020-10-17
参加人数
6 / 16
月夜に君と「____」。 空白を埋めるように、君は目を閉じ、物思いに耽る。 これは、夏の終わりのとある夜。 虫は鳴き、月は輝き、食物は色づき始める。 君は誰と、どのように過ごすのか。 夜はまだ長い。どうか、楽しいひと時を。 ●隠れる 「水面に浮かぶ月も、器に浮かぶ月もまた、風流というやつじゃの」 そう言って、彼女は月の映る杯に口づける。 月の味は苦いのか、甘いのか。隣で物欲しげな顔を見せる彼女へ、意地悪そうな笑みを浮かべ小さく喉を鳴らす。 「クク、お主も一杯どうじゃ? 月見酒、というやつじゃ」 【フィリン・アクアバイア】が奨めるその杯。 【シルフィア・リタイナー】は遠慮なく、と。その杯を受け取るやいなや。 手に持った杯から魔力を溢れさせると、一気に体内へと吸い込んでしまう。 リバイバル式、一気飲みだ。 「美味しい『ジュース』、ご馳走様でしたぁ!」 月の照らすは、小さな小山の河川敷。 そこにいるのは、2人の影と、夏の終わりを訪れる虫の声。 「おー、おー? 騙されなかったか、つれないのぅ……」 「……え、えぇぇ!? な、何か入ってたのですかぁ!? フィリンさん!?」 少し残念そうに、自分の『酒』の入った杯を横から取り出す。 その見た目は、先ほどシルフィアが飲んでいたジュース入りの杯と瓜二つだ。 「……まぁ、酒を飲んでしまっては怒られるのは妾じゃしな。……しかし、仕事前のお主を長らく留めておくわけにはいけないのぅ。残りは妾が美味しく頂こう、無理に飲む必要はないのじゃよ?」 元々、酒に混ぜて飲もうと思っていたジュースじゃしな♪ そう言って、シルフィアの飲んでいた杯を横から掻っ攫うフィリン。 ごくり。液体が喉を抜ける感触を楽しむフィリン。そして、それを恨めしそうに見つめるシルフィア。 「んー、美味しいのぅ♪ これは、飲みすぎてしまうから、シルフィアには渡せないのじゃ」 さぞかし美味しそうに自分の杯を見せつけ、そして一気に残りを飲み干してしまう。 「あーっ!? わたしのジュースぅー!?」 取り戻そうと出した手も、そこにはすでにフィリンは居らず空を切る。 「んふふー……、んはぁ。温い風と、冷たい水。そして熱い酒……、んー、たまらんのぅ」 フィリンが残りの入った酒瓶を手に取り、千鳥足で川の水に足を浸せば。すぐに丁度よく酒で火照った身体を冷たい水が冷ましてくれる。 「お、お酒は飲めませんけどぉ!? わたしにも月見ジュース、楽しませてくださぁい!」 そんなフィリンを羨ましいと、追って手を伸ばすシルフィア。その手を避けようと、一歩後ろへ下がろうとするフィリン。 そして、足場の悪い河川敷。 「わるぅ奴じゃのう。しかし、妾のせいで仕事ができなかったと言われるのも困るから、のっ……!?」 「それはそれ、これはこれですぅ~! だから、一緒に、飲みましょ……きゃっ!?」 ばちゃん。勢いよく、足を滑らせ水しぶきが2人に飛び散った。 「ふぇぇ……、せっかくの浴衣がぁ……」 本来なら、濡れるはずのないリバイバル。しかし、シルフィアが『想像』してしまった冷たい水が、いつの間にやら彼女の浴衣を濡らしてしまっていた。 「水も滴るいい女、というやつじゃの。じゃが、多分大丈夫じゃろ。丁度雲が出てきたからのう」 濡れた浴衣も、闇が隠してくれるじゃろう。小さく息を吐き、フィリンは浴衣の裾を搾る。 フィリンの言葉通り、月明りが消え、辺りに薄い闇が広がっていく。 辺りにある色といえば、辛うじて見える朧月。そして、それが映り込んだ川の水くらいか。 「……あはは。月、消えちゃいましたねぇ……、えっと、陸に上がりましょうか?」 「……無礼講、だったかの? どうじゃ、闇夜でも一杯。ジュースも酒も、幾らか用意があるのじゃが……」 「……! やったぁ、貰いますぅ!」 ●走る 「エミリーちゃーん! スライムだぞー! がおぉー!」 「きゃー! 食べられちゃうー☆」 夜店が並ぶ道を、無邪気に走る2人の少女。 可愛らしいスライムのお面を被り、追う魔王(を、目指す少女)【ルシファー・キンメリー】と追われるアイドル(を、目指す少女)【エミリー・ルイーズム】だ。 2人を照らす道は賑やかなもので、時折商売人や通行人がやんやと2人をはやし立てる。 「おじょーちゃん、これ使いなよ」 「わぁ♪ ありがとう☆」 面白がる野次馬の1人が差し出したそれを、エミリーは後ろ手で受け取った。 「もう怒ったよ! 魔王ルシファーちゃん、キミを倒してやるぞぉ☆」 「な、なんだとぉ! ……そ、それはぁ!」 ルシファーは、ワザとらしく驚き、そして怯えるフリをする。 パルシェの手に握られていたのは、小さく、色とりどりに光る剣(おもちゃ)だった。 時折剣から『きらきらきらー♪』と聞こえる声に、野次馬達は笑いを堪えるのに必死だ。 「ひっさーつ、勇者斬りぃー☆」 「ぐ、ぐあぁああー。やーらーれーたー!」 パルシェがゆっくり、ルシファーを切りつける仕草をすると、これまたゆっくり倒れるルシファー。 「へへん、どうだ……、ふふっ、な、なんだとぉ」 ゆらり、起き上がるルシファーの姿に、思わず吹き出しそうになるエミリー。 「しかーし! アタシがやられても第2、第3の魔王がいるのだー! そしてアタシが第2の魔王! 喰らえー魔王の仇―!」 「えー! 酷いよルシファーちゃん!? きゃー♪」 再び立ち上がり、がおーと両手を上げるルシファー。また逃げるエミリー。 また、鬼ごっこが始まった。 ●微睡む 「月が、綺麗ですね」 【ヤエガシ・メグリ】は月を見上げ、小さく呟いた。 「急にどうしたの?」 「昔、聞いた言葉。月を見ていたら思い出したの、どこの言葉だったかなぁ」 「月が綺麗なのは、当たり前のことじゃないか」 隣に座る【アルマ・クレーティス】の言葉に、それもそうね。と、小さく笑い、再び月を見上げる。 2人が語らうは小さな丘。 空に輝くは月、煌めくは星、聞こえるは微かな虫の音。 祭りが終わり。生徒会としての補導や巡回の仕事が終わるころには、辺りの人影はすっかり失せていた。 「ここで、寝っ転がったらもっと綺麗な眺めでしょうね」 「こんなところで寝たら、汚れてしまうよ」 「……それもそうね。それじゃあ、アルマが膝枕でもしてくれる?」 「それも素敵な提案だね。だけど……」 だけど? と言いかけたメグリの身体が宙を浮く。 「これなら汚れずに、綺麗な景色が見える。……なんてね」 「……、そうね、とても綺麗」 アルマがメグリを抱きかかえ、空を飛んだ。 頬に当たる髪を払い、先ほどより近くなった月夜に息を飲む。 「こんなに近く、何時も空を見れるなんて。羨ましいわ」 「確かに、僕たちは空を飛ぶことはできるけれど、わざわざ飛ぼうとはしないかな。……、一緒に見たいと思わせてくれるのは、君の言葉」 月光を受け、優しく光る大きな翼。暗闇のなか、優しく見つめる灰の瞳。 (アークライト……。本当に、天使様がお迎えに来たみたいな光景ね。……けれど) けれど。 彼女が羽を広げることができるのは、後、どれ程の時間なのだろう。 (アルマは、寿命なんて、気にしていないように振舞うけれど……。でも、私は) 「しんで……ほしく、ない……」 「……大丈夫。僕は死なないよ」 「……あら、言葉にでちゃったかしら? ーーーふふっ、これも昔聞いた言葉なの」 「メグリの故郷の言葉なのかな? それ、どういう意味?」 「わたしにもよくわからないわ。ーーーでも、悪い意味じゃなかった気がする」
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