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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
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【想刻】悲哀の鏡銀
K GM
ジャンル
イベント
タイプ
EX
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-07-22
予約期間
開始 2020-07-23 00:00
締切 2020-07-24 23:59
出発日
2020-08-02
完成予定
2020-08-12
参加人数
3 / 8
●君の手助けがしたいんだ この春突如学園に現れた、記憶喪失のドラゴニア【カズラ・ナカノト】。 他生徒たちと様々な交流をしたことによって、彼も、すっかり学園生活に馴染んできた。最初に比べて『うれしい』、『楽しい』という感情を多く示すようになった。呼びかけに対する短い応答、仕草、表情などを通じて。 ……とはいえ、そうではあっても、大体の時間ぼーっとしている。話しかければ応えてくれるが、そうじゃないときはずっと、ぼーっとしている。時折蝶にたかられながら。 それについて皆は、記憶喪失のせいで、周囲との関わりがうまく出来ないからではないかと考えていた。彼が記憶を取り戻せる可能性があるなら、その手伝いをしたいとも。 カズラは話下手かもしれないが、とてもいい奴なのだ。だからどうしても、力になってやりたいのだ。 食堂。しゃけおにぎりを黙々食べるカズラに、集まった生徒の1人がこう切り出した。 「あのさ、カズラ、自分がどこからどうやってここまで来たか、知りたいと思わないか?」 カズラはおにぎりをゆっくり咀嚼した。じいっと考えて考えて考えて、それから困ったように首を傾ける。 「……どうやって……」 「そう、どうやって来たのか、どうして来たのか」 「どうして……」 「なあカズラ。カズラの家族が、今この瞬間にもカズラのこと探してるかも知んないんだぜ?」 「……かぞ、く?」 「そう、家族。きっとさ、心配してるよ。カズラがどこに行ったかわかんなくて……もしかして死んじゃったりしてたらどうしようって」 カズラは数秒間を置いて、再度呟いた。独り言のように。 「……かぞくって……どんなだろう」 皆はその声の響きの中に、好奇心というか、興味というか、そういうものが芽生えたのを感じとった。 なので更に熱をいれ、こう畳み掛ける。 「なあ、カズラ。探してみようよ、自分自身のこと」 「僕たち、手伝うからさ」 カズラは忙しげにこくこく頷いた。 彼は、周囲の盛り上がりに流されやすい性分なのだ。まして今は、自分自身でも大分その気になっている。 「ようっし、じゃあ、まずは家族探し一緒に頑張ろうな!」 「あのさ、思うんだ、カズラって、なんかこう、特別なんじゃないかって。もしかして、ドラゴニアの王子さまかもしんねーって」 「おーじ……? なんで……?」 「だってさ、他のドラゴニアにもないようなもの、すげーもの持ってるじゃん!」 カズラはゆるゆる自分の体を見回した。半袖にしたコート、その辺の村などで一般に見かけるような色と形のシャツ、黒いスキニーパンツ、2本のベルト、ぶかぶかボロボロな茶色のブーツ、使い古した感のあるマフラー。 王子的要素はどこにもない。 「……なにも、もってないけど……」 「何言ってんだよ、持ってるじゃん。左の目、銀色でピカピカして、すごいじゃん!」 それを聞くなりカズラは、深緑の前髪に見え隠れしている左目を、両手で覆った。他人に見られたくない恥部を隠そうとするかのように。 「……この目、すきじゃ、ない……」 「え? な、なんで? そんなにきれいなのに」 「……光りすぎるから……」 ●ひとかけらの光明? 皆は、カズラが学園に来た経緯と身体的特徴を書いた張り紙を作成した。そしてそれを、学園のいたるところに貼り付けた。『もし彼についてお心当たりのある方は、どうぞご連絡ください』との一文を添えて。 学園には数限りない人間がいる。そのうちの誰か一人くらい、彼と彼の家族の手がかりになるようなことを知っているのではないかと期待したのだ。 だがアテは完全に外れた。どんなに待ってみても連絡は来ない。 困った一同は、学園長にこの結果を報告すると共に、今後についての相談をしてみることにした。 性格に難点があったとしても彼女は、学園随一の知恵者なのだ。頼りにならないということは無いだろう。 「んー、一件も連絡なしかー。カズラたんかなり目立つ外見してるから、誰でも一度会ったら忘れないと思うんだけど、こんだけ誰もが心当たり皆無ってことは……よっっっぽど草深い田舎から出てきたとしか思えんなー」 【メメ・メメル】は腕組みをした状態で、鎮座する宙にふわふわ浮いた椅子と共にくるくる回転する。そして、後ろにいたどすこいドラゴニア教師(御年70)【ドリャエモン】に話しかける。 「なー、ドリャたん、この子に思い当たるふしないかー? 同種族だろー」 ドリャエモンは髭に劣らずふさふさした眉毛を八の字にし、考え込んだ。表情には幾らか当惑が浮かんでいる。 「思い当たるふし、のう……カズラ、もそっとこっちに来てくれんか」 言われたとおりカズラは、ドリャエモンに歩み寄った。 ドリャエモンは彼の銀色に光る左目をつくづくと眺め、言う。 「この子個人について思い当たるふしは残念ながら無いのだが……この子の目と同じ目を見たことはある。若い頃、一度だけな。かれこれ50年前のことになるか……」 「おお、賞味期限が切れてそうだけどグッドニュースじゃん☆ で、どこで見たんだドリャたん」 「オミノ・ヴルカ付近だ。そこでわしは、純種ドラゴニアの方々が飛んでいくのを目にしたことがある。その方々の瞳は確か、このような色であった……ような気がする」 ドラゴニアの純種とくれば、とてつもなくレアと言われる存在。カズラがそれに関係しているかも知れないとなれば、生徒たちもテンションが上がってくる。 「やっぱり! カズラは断然特別なんだよ!」 「そのドラゴニアたち絶対カズラの関係者だよ!」 しかしカズラ本人は、いっこうにそうなる様子がない。ぼんやり戸惑っているだけだ。 まあ、ともあれこれで、手がかりになりそうな情報が得られた。 皆は早速これからの計画を立てる。 まず『オミノ・ヴルカ』に最も近い町『トルミン』に宿を取り、そこで更にドラゴニア純種の情報を収集。それから本格的な火山探索に向かうのだ――。 ●価値のあるもの 子豚ルネサンス少年【アマル・カネグラ】はカズラについての張り紙を、カネグラ家専属の美術商(兼詐欺師)であるローレライの【ルサールカ】に見せた。 「こういうことがあるんだけど、ルサールカは何か知らない?」 「……何故私に聞くのですか、アマル坊ちゃん」 「だってルサールカ、ドラゴニアのお舅さんがいるじゃない。そこ関連で情報ないかなあと思って」 ルサールカの端正な顔が多少引きつった。 彼はこれまで、美術品への情熱を原動力とした精力的な詐欺活動を行ってきた。 その一環として、代々伝わる骨董品を持ち出させるため、旧家、貴族の娘たちを数多くたぶらかしてきた。 結果そのうちの1人(種族・エリアル)に子供が出来てしまった。 かくして現在、給金のほぼ全額を養育費として彼女に送金させられているのだ。舅(種族・ドラゴニア)の地獄のように燃え盛る強制力によって。 「止めてください。生めとも言っていないのに子を生んだ女に送金するとき以外、あの火吹獣のことは頭から追い出すように努めてるんですから」 忌々しそうに吐き捨てた後ルサールカは、常のキザな表情に戻る。 「まあ、それはそれとして、私このカズラ様については、何事も全く存じあげません」 「あ、そう」 それから狡そうにほくそ笑む。 「しかし、興味深い話ですね。もしこのカズラ様の左目が、本当にここに書かれている通りのものだとすれば、それはもう、とんでもなく――」
【水着】スプラッシューン
瀧音 静 GM
ジャンル
イベント
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
通常
公開日
2020-07-20
予約期間
開始 2020-07-21 00:00
締切 2020-07-22 23:59
出発日
2020-07-29
完成予定
2020-08-08
参加人数
8 / 8
校庭に……森が生えた。 慌てた様子でそう話す生徒に、それを聞いた生徒はこう返す。 「どうせメメたんのせいだろ?」 と。 ……どうせという扱いはともかくとして、彼の推理とも呼べない推測は見事に当たっており、森自体は学園長である【メメ・メメル】の仕業である。 ――が、生徒にとって、彼女が何かをした、という事実はさほど重要ではない。 最も重要なのは――、 「皆様おはようございます。【ダヴィヤ・スカーレット】でございます。すでにお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、校庭に森が出現しました。学園長の行ったことであり、その目的について聞いておりますので。私の口から説明させていただきます」 そう、何のためにそんなことをしたか、である。 「ただいまより、校庭に特殊な加工の施された魔法の杖がバラまかれます。その杖を振るい、『メメルでポン』と唱えますと、その杖から水が発射されます。二回被弾すればアウトとなり、森から魔法で退散させられます。森の中に最後まで残った方に、学園長より特別なご褒美があるそうです」 ……どうやら、思い付きでオリエンテーションを行おうとしているらしい。 やる気を出すためなのか、優勝賞品をボカしているのが学園長らしいといえばらしい。 「参加するにあたり、濡れることが予想されますが故に、水着の着用が推奨となっております。また、今から一時間以内に杖を取り、森に入らなかった方は参加の資格を失うとのことです」 さらには、参加したくなければしなくてもいい旨が放送で流れるが、その選択肢を取るのはごく少数。 皆、我先にと更衣室に押し寄せ、杖を取って森へと入っていく。 「試合の開始は一時間後ですが、それまでは戦闘さえしなければ何をしても自由です。今のうちに有利なポジションを確保するもよし。手回しして共闘の体勢を作るもよし。では――皆様の健闘を祈ります」 そう言って放送を終えたダヴィヤもまた、服を着替えていく。 制服から、ぬれても大丈夫な水着へ。 ……と言っても、露出の極端に少ない、水着へであるが。 そうして、彼女専用と書いてある杖を取り、 「えー、テステス。私は実況を務めさせていただきますので、なるべく私には水をかけないでください」 そう呼びかけ、試合の開始を待つのだった。
隣の黒猫
RGD GM
ジャンル
戦闘
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-07-17
予約期間
開始 2020-07-18 00:00
締切 2020-07-19 23:59
出発日
2020-07-25
完成予定
2020-08-04
参加人数
7 / 8
● 吾輩は猫である。名前はもうない。 村の人間どもは吾輩の毛並みが黒いからクロであるとか身体が少しばかり大きいからデブであるとか好き勝手言っているようだが、そんな名前が吾輩の物であるはずがない。というか前者はともかく後者は失礼だと思わぬのだろうか。 だが、良いのだ。それに吾輩が反応することこそないが、今更吾輩の名を誰かが呼ぶことなど期待してはおらぬ。吾輩の名を呼ぶ主はもういない。数年前にもう光となってこの世から消えてしまった。吾輩は立ち会うことは出来なかったが、看取った者たちは皆大往生だと口にしていた。ならば吾輩としては何も言うべきこともない。 吾輩もそれなりに老いた猫である。すぐに主の後を追えるかと思っていたが、身体に溜め込んでいた栄養は主がいなくなって数年経った今も吾輩をこの世に繋いでいる。こればかりは少し肉付きの良い体が恨めしいが仕方のない事であろう。 それに、主を失ってから今に至るまでの時間もそれほど悪いものではない。村の誇る香木で作られた、主の名が刻まれた墓標の下で日を浴びながらまどろむ時間は中々に心地が良い。風の一つも吹けば主の膝の上でブラシをかけてもらいながら眠っていた頃を思い出すことが出来る。 こうやってかつてを振り返りながら主との再会を待つだけの日々を退屈だと思わなくもないが、主は喧噪よりも静寂を愛する人だった。光と融けた存在を眠ると評すのはおかしな話なのかもしれないが、眠る主を無暗に邪魔するのも忍びない。 故に。この不埒な輩は除かねばならぬ。どうも主の墓標を餌と見たらしいが吾輩の猫目が黒い内はそれは叶わぬとこの辺りにいるならば理解すべきであったのだ。 相手は普段いたぶるネズミに比べれば随分と大きく力強いようだが、何、問題はない。 吾輩は猫である。猫は誇りに生きるモノ故、退くことなど出来ぬのであるから。 ● そのアリ型の魔物は『ノッソ』という村の周辺に生息しているため、『ノッソアント』と呼ばれている。 種族としては図鑑にも載るような有名なアリの魔物に似通っているのだが、その中にノッソ村の周辺に住み着いている一派がおり、好物の違いなどから有名所とは別種として扱われているらしい。 好物の違い――とはすなわち、ノッソ村特産の香木を好むか否か、という一点を指す。 ノッソ村の周辺ではとても良い香りのする木が採取できる。村の人々はそれをお香などに加工し名産品として扱っているのであるが、ノッソアントはその木を何故か気に入ってしまい定住してしまった過去があるようだ。 名産として扱う材木を好んで食べる魔物となれば当然村の住民との衝突も古くから発生している。特にこの時期は繁殖期のノッソアントが餌を求めて人里近くまでやってくるため、『フトゥールム・スクエア』にも討伐依頼が舞い込んでくることが多い。 「と、いうことで君たちには数日ノッソの村に滞在してもらい、村周辺を捜索したり迷い込んできた奴を倒したり、ノッソアントへの対応をお願いしたいんだ。毎年の依頼だから村の方も皆に色々協力してくれると思う」 出発前に依頼を受けた勇者候補生たちへ説明を行うべく、学園の教師は黒板に描かれたアリのようなイラストをこつんと拳で小突いた。 「ノッソアントは風属性。動きはそれほど素早い訳ではないけれど、身体は中々頑丈だし噛みつかれると結構痛いよ。香木が好物ではあるけれど雑食みたいで、肉にかじりつくのに遠慮はないみたいだね。もう一つ注意してほしいんだけれど、このアリ、たまに酸を吐いてくるんだよ。ダメージが大きいってのもそうだけれど、酸が防具に触れちゃうとちょっと脆くなっちゃうんだよね。防具が劣化しちゃっても学園に戻れば修理できるから破損の心配はしなくていいけれど、戦闘中に防具が劣化して、そこを食い破られて大怪我したってケースが過去に何回かあったから気を付けてね」 それじゃあよろしくね、と教師の声を背に朝方学園を出発し、馬車がノッソの村に到着したのが昼頃の話である。 教師の言っていた通り村人たちは学園から応援を呼んでの対処にはもう慣れっこのようで、やってきた勇者候補生たちを歓迎してくれた。 それだけ学園への期待値が大きいのだろうし、襲撃の頻度も高いのだろう。その証拠に簡単な自己紹介と打ち合わせを終え、村周辺の地理の把握を兼ねて軽く巡回を始めたと思ったらすぐに村人からノッソアントが共同墓地の方へと向かっていくのを見かけた、という報告を受ける。 向けられた期待に応えるのが勇者のあるべき姿である。今いる場所から墓地へ向かう道を確認し、勇者候補生たちは一斉に走り出した。 ● 村の墓地にたどり着いた勇者候補生たちの目に映ったのは、少しばかり意外な光景であった。 巨大なアリ――おそらくノッソアントと、黒猫が争い合っている姿だ。争い合っている、と言ってもノッソアントの方が体長も能力も勝っているのは一目瞭然で、黒猫はすでに痛々しいくらいに傷だらけである。 それでも猫とは思えぬほど恐ろしい威嚇の声を上げてノッソアントへ飛び掛かる黒猫を前にして、一瞬だけ周辺の確認に時間を使う。黒猫の後方に木で作られていると思わしき墓標がいくつも建てられているのが見える以上、黒猫と対峙しているのは村人が報告してきた墓地へ向かったノッソアントで間違いないだろう。村の香木が好物であるというならば、墓標を餌と定めたのだと考えられる。 だとすれば、猫さえ引き離せば墓標にかじりつくまで様子を見て、食事の瞬間の隙をつくことは出来るかもしれない。 けれど。全身に傷を負いながらなお退く姿勢を見せぬ猫はまるで、墓標を守っているようで。その気持ちを汲んでやることも勇者には必要ではないかとも思うのである。 猫と、墓標と、倒すべき魔物。どう動くべきか、各々の武器を構えながら勇者候補生たちは思考する。
【水着】プールをきれいにして
村雨 GM
ジャンル
イベント
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-07-17
予約期間
開始 2020-07-18 00:00
締切 2020-07-19 23:59
出発日
2020-07-25
完成予定
2020-08-04
参加人数
4 / 8
屋内特別闘技場『ブラーヴ・オブリージュ』、その一角に巨大なプールが設置された。 そのプールには魔法石が組み込まれており、その魔法石が集約した光を元に、観客席から見える位置にある巨大魔法石上に水中の様子が投影される。水中での模擬戦を行う為の施設である。が、多くの生徒からの希望もあって、娯楽施設としても開放することになった。その矢先。 「何かに足を引っ張られたの」 水着でプールを楽しんでいたある生徒が言う。 「泳いでいたら、急に身体が痺れて。溺れかけたんだ……あれは危なかった」 またある生徒が被害を訴えた。水中模擬戦を行っていた時にはいずれもなかった話だ。大きな事故が起きる前にとすぐさま調査が行われた。 「そこで水棲の魔物『パラライシス・エフィラ』が潜んでいることが発覚したんだ」 それと同時に、教材用の魔物が逃げていることも判明。このプールに逃げ込んでいるものと思われる。凶暴性は低いが、人を水底に引きずり込もうとする性質の魔物。模擬戦が実戦になるが、この際ちょうどいいとばかりにこれの捕獲、退治をすることになった。 魔物は水に擬態しているのか、一見プールの水に異変は見受けられない。 「この魔物は警戒心が強く、武装をしていると姿を現さないようだ」 特別な武装しないことが求められた。水着や、濡れても良い私服といったところだろう。武器も、あまり目立つものは避けるようにと。 「プールを破壊せずに捕獲もしくは退治するように」
【水着】サビア・ビーチでサマーライブ開催!
夜月天音 GM
ジャンル
イベント
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
少し
公開日
2020-07-15
予約期間
開始 2020-07-16 00:00
締切 2020-07-17 23:59
出発日
2020-07-23
完成予定
2020-08-02
参加人数
7 / 8
快晴の朝、アルチェ、サビア・ビーチ。 「青い海、白い砂浜、照りつける太陽、ハッピーが高まる季節!! 芸能・芸術コースの皆さんにはあのステージで今日一日歌って踊って、ビーチに訪れるお客さんに素敵な夏をプレゼントして貰います!」 陽気な女性教師が連れて来た学生達に、いつの間にやら砂浜に設営された屋外ステージを指さしながら授業の説明を始めた。 「演出とか曲とか楽器は色々揃えてるので心配ありません! 衣装は水着やパーカーやTシャツとかも、ふわふわの可愛いものから布面積の少ないお色気なものから、魔法素材で色や形が変わる面白い物まで色々です!」 と、準備万端ぶりを意気揚々と語る。 「ちなみに、学園の生徒がライブをする事は宣伝しているのですぐに人も集まります!」 ステージに興味を持った海水浴の客達が、ちらほらと集まり始めている。 「観客だけでなく、飛び入り参加も歓迎しているので、芸能や芸術を学んでいるからと油断しないように……いついかなる時も全力の歌と踊りで客を幸せにする事です!! これで説明は終わりです!! 準備に取り掛かって下さい!!」 女性教師は説明を終えるとパンと手を叩き、学生達を急かした。 「魔法学園の芸能・芸術コースの学生によるライブが始まりますよーーー!!」 同時に大きな声で、宣伝を行い観客集めを始めた。
【水着】鮫に歌えば
海太郎 GM
ジャンル
イベント
タイプ
EX
難易度
難しい
報酬
通常
公開日
2020-07-13
予約期間
開始 2020-07-14 00:00
締切 2020-07-15 23:59
出発日
2020-07-20
完成予定
2020-07-30
参加人数
5 / 8
●OBの苦言 その日、演奏会から帰ってきたジョニー・ラッセルは実に満足げだった。 「いやぁ、自分が教えた生徒が立派に音楽家として活躍してるのを見るほど、幸せなことはないね~」 ニコニコとご満悦に、ラッセルは赤ワインのボトルを空ける。 楽しく酔っ払い、音楽を奏でて歌いながら、教え子の活躍を思い返してまた嬉しそうに酒を飲む。 だが、ご機嫌なジョニーのもとに辛い知らせが届いた。 「ラッセル先生、これ先生宛の手紙です」 「忙しいから後にして」 「でも緊急の知らせで」 「じゃあ君が読んで。耳だけ貸すか……」 「OB会からですよ、ラッセル先生」 ジョニーはぴたりと手を止めた。 「……貸してくれ」 手紙を受け取り、文字に目を走らせる。 内容はこうだった。 ・ゴブリン退治程度の簡単な仕事で『舞踏音楽学』の必要性は証明できない。 ・歌と踊りは芸術性としてその価値を高めるべきであって、戦闘の舞台は他のものに任せればよろしい云々。 「……そっか……そうですか……」 ジョニーは深く息を吐いて髪をくしゃりとかき上げた。 酔いはあっという間に醒めてしまった。 ジョニーは部屋の中をうろうろ歩き回って考えを巡らせる。その目はやがて、友人から送られてきたSOSの手紙に留まった。 ●海開き! 鮫開き!? 「親切なみんな、良かったら次は、『舞踏音楽学』の力でフラッシャーをぶちのめしてくれないかな!」 授業が始まった途端ニコニコとそう言い出すジョニーを前に、生徒たちは呆気にとられた。 「フラッシャー……ですか?」 「そう。友人がそろそろ海開きをするんだけどね、フラッシャーの群れがそばの海を回遊していて困ってるらしいんだ。群れを壊滅、とまではいかなくても、何匹か撃退してきてほしい」 「えっ、でも先生、フラッシャーって、水の中にいるんでしょう?」 「そうだよ。だからこそ『舞踏音楽学』が挑む価値がある。音楽があって、ダンスがあれば、『舞踏音楽学』はどこででも力を発揮できるはずなんだ」 ジョニーの目は、強い光を宿していた。 「君たちの実力なら、船の上でもきっと存分に戦える。……大丈夫」 それに、とジョニーは言葉を続ける。 「特別に、今度の『勇者活動』で必要な衣服……つまり水着なんかは、こっちでお望みの物を手配するよ。舟だって出す。仕事が終わったら、海の家の友人も酒やごちそうで歓迎してくれるはずだ。……学校の課題で海豪遊なんて、悪い話じゃないだろ?」 フラッシャーとの勝負、そして夏休み前のお遊びの予感に、生徒たちは思わず、顔を見合わせたのだった。
呪雨
佐渡れむ GM
ジャンル
恐怖
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
ほんの少し
公開日
2020-07-10
予約期間
開始 2020-07-11 00:00
締切 2020-07-12 23:59
出発日
2020-07-17
完成予定
2020-07-27
参加人数
5 / 8
「ちっ、こんなに降ってくるなんてついてねぇ!」 魔法学園フトゥールム・スクエアに存在する、大図書館『ワイズ・クレバー』。 ルネサンスの男子生徒、【牛尾・虎太郎】は当て所もなくフラフラと彷徨い歩いていた。 そこに突如として、激しく彼の頭部へ降り注ぐ雨、と、耳に届いているのは獣の唸り声のような雷鳴の予兆音。 彼が雨と雷から身を守るには大図書館へと逃げ込むしかないのだが――。 渋々とたまたま近くにあった大図書館への入口の一つに飛び込もうと駆け寄る。 大図書館へ赴く事などそうないだろうと思わせる、やんちゃな風貌の男子生徒。 「なるようになれ……、だな」 扉を押し開ければ、外の天候のせいもあってかわずかに薄暗い。 だが、人の利用はそれなりにあるのか、居心地悪そうに、奥へ奥へと、何かに誘われるように進み、人気の少ないゾーンへ突入してしまっていた。 不慣れな彼は図書館での作法など、特に気にも留めていない様子で奥まった場所で本棚に寄りかかる態勢で、ドサリと座り込む。 すると……、――パタリ。 座り込んだ彼の真横に人がもう一人座り込むかのように、一冊の本が落ちていた。落ちてきた? 元々は赤い表紙であったのだろうか、煤けて見えるその本は、何処かから持ち込まれた物なのだろうか。 恐る恐る手を伸ばすと、本の隙間から白い紙が貌を覗かせている。 はた、と、手が止まる。が、好奇心には勝てなかった虎太郎はその紙のみを拾い上げてしまう。 「――ギャアアアアアアアア!!!」 図書館内に響きわたる大絶叫に、図書館内でもどよめきが起こる。 何事かと慌てて駆け付けた図書委員のエリアルの女子生徒【エル・クロシェット】が目にしたのは、床に落ちた一冊の本とその本を前に恐怖で固まる男子生徒の姿だった。 彼が手に持っていた紙には、赤い文字でこう書かれていた。 【この本を見た者は呪われる】 図書委員の誰一人として、見たこともないと口を揃えて言うその本が何処から来て、どんな曰くがあるのかは誰も解らない。 解るのは、異常に怯えた男子生徒が居るということ。そして、確かにそこに存在する謎の本と呪いの宣告の紙があるという【事実】だ。 依頼者は怯える男子生徒、虎太郎の第一発見者である、エル。 彼女が語るには、その日から、虎太郎は気が付くと図書館に居て、その本を手に取っている。 今まで図書館で見かける事がなかった相手を見かける事の異常性を感じ、彼に話しかけてみた所、 「呪いの本が呼んでいる」 と、ただそれだけしか話しを聞くことができなかった。 だが、彼女には一つ、一つだけ引っかかることがあったのだ。 去年の夏に図書委員会の面々で催された、創作怪談大会。 そこで自分が語った話が、彼に振りかかった恐怖と、とてもよく似ていたのだ。
怯える幽霊少女と飢えた鬼達
ことね桃 GM
ジャンル
冒険
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
少し
公開日
2020-07-10
予約期間
開始 2020-07-11 00:00
締切 2020-07-12 23:59
出発日
2020-07-18
完成予定
2020-07-28
参加人数
8 / 8
●理解不能な心の震え 「えっ、そろそろ私も戦いに行かないといけないんですか!?」 教祖・聖職コースで学ぶリバイバルの少女【メルティ・リリン】が教員の突然の提案に悲鳴のような声を上げた。 提案といっても別に特別な環境に放り込むとか、特殊な外敵と戦えと言われたわけではない。 単純に――トルミンの集落にある貴重な酪農地域へゴブリンの群れが現れ、現在は現地の自警団が対応に当たっているということと。 そして魔法学園『フトゥールム・スクエア』の学生に奴らの討伐を願いたいと依頼を受けたという、たったそれだけのこと。 「教祖・聖職コースの学生は民草に救済と希望を与える人物となることを目指すべし、そのことは重々承知の上であなたは入学したんでしょう?」 「そ、それはそうですけど……」 「だったらいつまでも座学と模擬戦だけじゃなくてきちんと外の世界を見てきなさい。勇者活動に参加しないままだと課題の評価をつけられないどころか、あなた自身の志をも否定することになるのよ?」 「でも……」 メルティの中には戦いに対する大きな心の揺れがあった。 それは自分が旅芸人の踊り子として生きていた頃――移動中に家族同然の仲間達と共に巨大な何かに襲われ、数日間逃げ回った恐怖に原因がある。 今はすっぽりと頭から消えてしまっているけれど、最期の瞬間に心を引き裂くような何かがあったのだとも。 だからメルティは死者となっても自分と同じ思いをする人がいないよう、聖職者の道を選んだ。 それでも戦いとなると、どうしても怖い。 無意識に愛用の本を掴む白い指を震わせた彼女へ、教師はふふっと穏やかに微笑んだ。 「大丈夫よ、あなたは癒し手の才がある。あとは一緒に戦ってくれる仲間がいれば、余程油断しないかぎりゴブリンの群れぐらいどうにでもできるはずだから」 「仲間、ですか」 「もう一端の勇者になりかけている学生もいるけれど、学園の中にはあなたと同じ発展途上の勇者見習いも多いわ。先を征く先輩と、共に歩む同輩。どちらからも学ばせてもらえることは多いはずよ。だから、気をつけていってらっしゃい」 そう言って教員は不安定に揺れるメルティの肩をぽふ、と叩いた。 ●教員からの呼びかけ 「さて、皆に頼みがあるの。メルティを連れてトルミンへゴブリン討伐に行ってくれないかしら」 「メルティっていうと……あの学園引きこもりの?」 「そう。あの子、才能はあるはずなんだけど過去に何があったのか……本物の戦いに異常なほど拒絶反応を示すのよね。申し訳ないけれど、そのフォローもお願いするわ。一度戦いを経験して、自分のやるべきことを見出せばあの子もきっと前に進めると思うの」 唐突に出された『学園引きこもり幽霊少女』の名前を出され、きょとんとするあなたに教員は軽くウィンクする。 いずれにせよ相手がゴブリンなら討伐自体はそう難しいことではない。 あとはその戦いで何をするべきか――あなたは考え始めていた。
芸術クラブ放置施設――リフォーム完成
K GM
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-07-10
予約期間
開始 2020-07-11 00:00
締切 2020-07-12 23:59
出発日
2020-07-19
完成予定
2020-07-29
参加人数
7 / 8
春から始まった芸術クラブ放置施設のリフォーム作業は、生徒達の尽力によってすこぶる順調に進んだ。 本日はいよいよ、総仕上げの段階。これをもって施設は正式に、保護施設としての運用を始めることとなる。 ●施設の外では 早朝。 学園の魔法道具技師として名高いカルマの教員、【ラビーリャ・シェムエリヤ】は、なにがし山の入り口にあるグリフォン便乗り場で荷車から降りる。大きめの道具箱を手にして。 乗り場のベンチに腰掛けていたドラゴニア老教師【ドリャエモン】が、ごっつあんな腹を揺らして立ち上がり、彼女に挨拶した。 「ラビーリャ先生、お忙しい中よう来てくださった。感謝いたしますぞ」 ラビーリャは紫の瞳を細め、たどたどしく、ゆっくり言葉を返す。 「……今はそんなに忙しくありませんので、お気になさらず……」 二人はそのまま、なにがし山を登り始める。外見年齢に相当な開きがあるので、祖父と孫娘が連れ立って歩いているように見えなくもない。 「……放置施設は、生徒達が、随分きれいにしてくれたそうですね」 「おお、まこと見違えるようになりました。新品同様に生まれ変わりましてな。見たら恐らく驚かれるだろうと思いますぞ。庭に花壇なども作られまして」 あまり話し上手ではないラビーリャは他人と会話する際、受け身になることが多い。現在行われているドリャエモンとの会話においてもそうである。 「……花壇ですか。何が植えられたんですか?」 「わしはあまり詳しくないのですが、カモミールとか、ラベンダーとかヨモギとか……いわゆる、薬草というものですかな。そうそう、林檎の木も植えられておりますな。まだ小さいものですが」 「……カモミール、ラベンダー、林檎……」 耳にした単語を反芻しながら彼女は、手付かずだったころの放置施設を思い浮かべる――リフォーム計画にはこれまで一切タッチしていないので、そのときの姿しか知らないのだ。 屋根も壁もすっかり退色し、窓は埃でくすみ切り、敷地一面雑草だらけ。その中に崩れかけたオブジェが頭をもたげているという、まさに『廃墟』と呼ぶしかない有り様だった。 「――ほら、見えてきましたぞ」 だが今日目にするものは、それとまるで違っていた。 茂っていた雑草が除去されたおかげで、敷地はぐんと日当たりがよくなった。風通しも。点在する花壇と色とりどりのオブジェ、ひょろりと生えた林檎の若木が、単調になりがちな風景へいい意味での変化を与えてる。 個性豊かな窓々も輝きを取り戻し、日の光を反射している。 ラビーリャはふわりと微笑んだ。 「……本当だ。見違えるようになりました、ね」 それから、手近なオブジェに歩み寄った。今回ここを訪れた理由である『施設の防御結界作成』に耐え得るものであるかどうか調べるために。 右手の平で礎石を撫でる。ぐるりを一巡する。確信を持って頷く。 「……うん、いけそう。土台もちゃんとしているし……」 呟いて彼女は、建物入り口にある大時計を見上げた。窓同様きれいに磨かれているが、まだ針が動いていない。 (……あれもついでに直しておこうかな……) と彼思案しているところに、小丸い豚ルネサンス男子【アマル・カネグラ】がふろしき包みを手にし、ぽてぽて走ってきた。 教師の存在に気づき足を止め、挨拶をする。 「ドリャエモン先生、ラビーリャ先生、おはようございます」 「おお、おはようアマル」 「……おはようアマル。何を持ってきたの?」 「あ、これは本です。『ワイズ・クレバー』で借りてきまして。今施設に住んでらっしゃる方からの、頼まれです」 ラビーリャの視界が不意に、鮮やかな色で一杯になる。アマルが花束を渡したのだ。 「よろしかったら、どうぞ先生。直にお会いするのは今日が初めてですので、お近づきのしるしに」 「……ありがと……」 この後ラビーリャは手早く結界作成作業に取り掛かり、一時間もかからず終了させた。 「魔法陣生成完了……これで終わりだよ」 その後数分で時計を修復し、帰っていった。別の場所の補修作業があるから、ということで。 ●施設の中では リバイバルの【カサンドラ】は、グラヌーゼで保護されてこの方ずっと、八つある隠し部屋のうちの一つで、隠れるようにして生活している。 日中は外に出ない。12年間魔物に追い回され消耗しているというのもあるが、第一には、自分が復活しているということを世間へ知られないためだ。 なにしろ学園は彼女の出身校なのだ。無防備に昼日中あちこち出歩くわけにはいかない。生前を知っている相手に出くわす可能性は十分ある。 「カサンドラさん、おはようございます。アマルです。頼まれていたもの、持ってきましたよ。カサンドラさんが亡くなる3年前から発行された、カサンドラさんの画集」 「……ありがとう、アマルさん――この花束は?」 「お近づきのしるしです。この間はばたばたしていて、渡せませんでしたので」 「まあ……高かったでしょう?」 「いえ、安いもので」 アマルはにこにこしながら花束を、静物デッサン用の花瓶に生けてあげた。 短い期間の間にカサンドラは、使用している部屋を、アトリエ化してしまっている。画家の習性というものなのか、時間が余るとどうしても絵を描かずにいられなくなるものらしい。 部屋の隅には油絵が二枚立て掛けてあった。 一枚はこの間チャリティーオークションで売り出した、生前の彼女の絵『踊る少女』の模写。 もう一つは――その模写の別バージョン。 踊る少女と猫と男。そこまでの要素は一緒だが、雰囲気がまるで違う。 背景は屋根ではなく岩山。少女は無邪気に楽しそうに踊っている。足元に酒ビンなどひとつも転がっていない。それを眺めている男の視線も穏やかだ。 顔も服装も一緒なのに、表情と仕草を変えて描くだけで、こうも別人のように見えるのか。 感心しつつアマルは、カサンドラに尋ねた。 「カサンドラさん、こちらの絵は新作ですか?」 「……いいえ。それは、模写した絵の最初の姿を思い出しながら描いたものです」 「え? 最初はこんなふうに描いていたんですか?」 「ええ。それを書き変えたみたいで……」 「それはまたどうして? この絵もとてもいいと思いますけど。むしろこっちのほうが、本来のカサンドラさんの絵っぽいですよね。色とか雰囲気とか」 「……色々考えてみたんですけど、私、描いた後に改めて、魔物の実物を見たんじゃないかなあと思うんです。それで、書き直したんじゃないかなあと」 「……そういえばあの少女と男については『魔物をイメージした人物画』だと、画集に説明書きがされてましたね」 「……その通りです。伝承を元にした空想画なんです、もともとは。私が覚えている範囲内では、本物を見たことはありませんでした――思い出せていない期間に、多分、何かあったんです。私と彼らの間に……その期間に描いた絵を見れば、思い出せることもあるんじゃないかと……」 眉を八の字にしてカサンドラは、考え込んだ。それから、いったん問題を棚上げするかのように、話題を変える。 「……私もだいぶ元気になりましたし、そろそろ何かお勤めをしないといけませんね……お世話になるばかりでは申し訳ないですし……」 ●いつものごとき面子 「くそー、だりーぜ」 「何で毎回俺達ゃ呼ばれるんだ。便利屋と思ってねえか、あのジジイ」 「まあ、今回でリフォームも終わりらしいからな。後もう少しの我慢だ」 【ガブ】【ガオ】【ガル】の狼ルネサンス三兄弟は、わいわい言いながら山道を登る。それぞれ大量のペンキが積まれた荷車を引きながら。 「後残ってる仕事は、壁の塗りかえだったな」 「おお。あー、そーいや庭に結界張るんだとよ。不審者対策に」 「オブジェ使うとか言ってたな」 「マジか。金かけてんな」 「こないいだのオークション、いい値で中古品が売れたんだとよ。なんかあの、屋根で踊るガキの絵、一千万だと」 「あんなのに一千万……どうかしてんな」 「あれがいけるならよ、俺らの塗ったオブジェも相当高値で売れるんじゃねえか?」 「おー、いけるいける、絶対いける」 口々に勝手なことを言いながら施設にやってきた彼らを、先に来ていた課題参加者たちが出迎える。 「おー、やっと来たな。お前達」 「早速始めよう。足場はもう組んであるから」 施設に住まう光の精霊【ミラ様】は林檎の木の小さな木漏れ日に隠れ、彼らの様子を興味しんしんに眺めていた。 今日は人間達は、一体何をするつもりなのだろう、と。
【水着】満(みつ)が欲しくば……
pnkjynp GM
ジャンル
イベント
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
ほんの少し
公開日
2020-07-06
予約期間
開始 2020-07-07 00:00
締切 2020-07-08 23:59
出発日
2020-07-14
完成予定
2020-07-24
参加人数
8 / 8
「ミーンミンミンミン……」 夏の風物詩、生後1時間でその生涯を終えるというセミ科の原生生物。 『ヒトトキトモシビ』が、遺言にほど近い産声を上げる。 ここは魔法学園フトゥールム・スクエア内のとある森の中。 そして彼らが生息地として密集している森でもある。 彼らの魂の叫びはオーケストラとなって耳に命の主張をたたきつける。 些か喧噪が過ぎる。いや、少々耳障りがひどい。というかうるさい。 だが、そんな騒音にも夏の暑さにも負けず、今日も『授業』という名目の下で。 学園生達は汗水を垂らしながら行軍していた。 その集団の先頭には、1人の教師。 それに続く生徒達は、まるで人形のように言葉も発さず彼の後に続いている。 セミの喧噪と夏の暑さ、そしてヒトが森を歩く微かな音が入り交じるこの空間は。 それら以外に不純のない、ある種の静寂と安寧に満ちていた。 しかし、その平穏は長くは続かない。 「あちぃな……」 誰かが言った。 言ってしまった。 「これは『がまん』を高めるための『欲求掌握学』! 泣き言をいうとは何事か!」 教師の喝が飛ぶ。 ついでに教師の光輝く頭皮から澄んだ液体も弾け飛んだ。 それは先程つい口を滑らせてしまった男子生徒の額を直撃し……。 「……水。みず………ミズ!」 彼に天啓をもたらす事となる。 ◆◆◆ 「つーわけで、ボーイズ&ガールズぅ~! オレっちと一緒に、水着でシャゲナベイベーしない?」 課題のバツとして髪の毛を失った賢者・導師コースの男子生徒【トレット・リンバース】が広場でそんな事を叫び始める。 一体どうしたの? と心配する声もあれば。 あいつ、遂に輝きの向こう側へいっちまったか……。と諦めを示す声もあれば。 理解を超えた存在として、逆に認識の外へ彼を追いやるものもいた。 だが、興味本位かたまたまか。『あなた』はその声に耳を傾けてしまった。 「……オレ、理解っちまったんだ。欲求を掌握するにはどうすれば良いか。簡単な話だぜ。満たされれりゃいいんだよっ!」 瞳の中に星の光を宿したような真っ直ぐな瞳を輝かせながら、彼は発言を続ける。 「おおっと。だがこれでもオレは賢者導師を専攻する端くれだ。勿論人には迷惑をかけやしねぇ。あくまで己の中のパトスを燃やすだけさ」 そうして大体5分ほどの熱弁を聴いた後、観衆の1人が彼に問いかける。 「で、具体的にはどうやって欲求を満たすの? というかあなたの欲求って何?」 「水……だよ……」 「水?」 「水着、だよおぉ~~~!!」 広場に、ヒトトキトモシビが驚きで数匹絶命してしまいそうな響きが轟いた。 「俺達の燃え上がる青春の情熱を、水着にぶつけちまおうぜ!!!」 ◆◆◆ それから数日。 トレットと彼に誘われた学園生数名は、海を観光の名所とする街、『アルチェ』の『フィオレモール』を訪れていた。 「知ってるとは思うが、ここフィオレモールはアルチェの街の入口から、遊泳用に解放されている『サビア・ビーチ』までを結ぶ大通りだ」 夏のシーズン。今が正に稼ぎ時という事もあって、商人や観光客、街の住民などがごった返しているこの大通り。 モールの名にふさわしく、通り沿いには至る所に露天や商店が建ち並んでいた。 販売しているものは、装飾品や食べ物などだけでなく、水着や浮き輪といった、遊泳に必要な商品も多数揃っている。 「まぁ、既製品でよければこの大通りで大抵の水着は買えるだろうぜ。学園の購買部でも扱っていないような、ここだけ限定の品々もあるかも知れねぇな!」 トレットは振り返ると、口元に指をかけ静かに囁く。 「おおっと、間違っても裏通りに入るなよ? この街は観光都市だからな。突然魔物に襲われる的な身の危険はねぇが、美男美女のあんたらみたいなピチピチの学園生は上手い魚だ」 彼は声を震わせながら静かに告げる。 「知らねぇうちに店に連れ込まれてあやしげな水着を試着させられるかも知れねぇからなぁ……?」 ◆◆◆ フィオレモールを散策すると言った数名と別れを告げ、トレットと残った一行は、観光地区から反転。 現アルチェの領主【ダンテ・ミルトニア】が整備を行う前の、古くからの町並みが残される漁業地区へと赴いていた。 「こっちには何があるのかって? ああ、『星の洞窟』っていうところがあるんだけどよ。あそこは魔物が出る事もあるから地元住民もあんまり近づかなくてよ」 そんな所に行って大丈夫なのか? その問いにトレットは笑顔で応える。 「ああ。魔物が住み着いてんのは基本洞窟の中。そこまで近づき過ぎなかったり、近くにある海の奥へいかなきゃ問題ねぇさ」 それより大事なことが別にある。そういうトレットの目に真剣味が増した。 「洞窟の手前には、衣類の素材になるような原生生物が結構いてよ!」 彼曰く、地元民も繁殖のし過ぎに困っている節があり、事前に申請を出しておいたので、一狩りしても問題はないらしい。 「勿論、命は命。狩り過ぎ注意で頼むぜ? 後、魔物と接触しそうな危険地域には行かねぇこと。これでもオレは引率担当になるわけだ。言うこと聞かなきゃ、分かるよなぁ?」 トレットはそれまでの課題で鍛え上げた筋肉を隆起させる。 余談だが、およそ賢者や導師に相応しくないそれは、主に拳を振るう課題で戦果を上げているらしい。 「回収した素材は、オレの知り合いの店でオリジナルの水着に加工してやんよ。そいつは水着中毒でな。素材があればお代は要らねぇそうだ」 それから暫く。 星の洞窟がほど近い海辺に辿り着いた一行の目の前には、多種多様な生命の息吹が広がっていた。 「さぁ、水着作りの始まりだぜ!」 声高に叫ぶ彼に、誰かが問うた。 何故そこまで水着に拘るのか? 「決まってんだろ。……詰まってんだよ。水をしたらせながら、アオハル色に煌めく一時の情熱(トモシビ)がよ」 こうして、トレットと過ごす若干暑苦しい夏の一日が幕を開けた。
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